図1は、本発明の1実施例構成図を示す。図1は1次電子ビーム31をサンプル13に照射しつつ平面走査し、発生した2次電子、反射された反射電子を第1の検出器であるシンチレータ9で光に超高速変換し、この変換された光を第2の検出器であるMPPC4により増幅して信号を出力する構成により、超高速に信号電子(2次電子、反射電子など)を検出することが可能となる。
図1において、電子銃1は、1次電子ビーム31を発生する熱陰極型、TFE、フィールドエミッタ、光励起型等の公知のものである。
電子銃制御装置2は、電子銃1が1次電子ビーム31を発生するように、高電圧、バイアス電圧、熱陰極型電子銃の場合にはフィラメント加熱電源などを供給する公知のものである。
偏向電極3は、2段の偏向電極である偏向電極(上)3-1、偏向電極(下)3-2から構成され、X方向、Y方向に対となって所定の偏向電圧を印加し、1次電子ビーム31を2段偏向し、サンプル13の上でXおよびY方向に走査する公知のものである。
電子ビーム走査制御装置322は、偏向電極3に所定の走査用の電圧を印加し、サンプル13の上に1次電子ビーム31を細く絞ってXおよびY方向に走査するためのものである。
シールド管41は、サンプル13から放出された2次電子が軸上を上方向に走行することを抑止し、シンチレータ9の方向に向かわせるために負の電圧を印加するためのものである。
通過阻止用バイアス5は、サンプル13から放出された2次電子が軸上を上方向に通過しないようにするための、シールド管42に通過阻止用の負のバイアス電圧である。
バイアス回路61は、MPPC4にバイアス電圧を印加するものである(図6などを用いて後述する)。
MPPC4は、Multi-Pixel Photon Counterの略であって、ガイガーモードAPD(アバランシェダイオート)をマルチピクセル化したフォトンカウンテイングデバイスである(図6などを用いて詳述する)。
増幅器6は、MPPC4で増幅された信号を増幅するものである。
PC7は、パソコンであって、プログラムに従い各種処理、制御を行うものである。
表示装置8は、画像などを表示するディスプレイである。
シンチレータ9は、電子(2次電子、反射電子など)を光に超高速に変換・増幅するものである(後述する)。
メッシュ10は、サンプル13から放出された2次電子などを吸引する加速用の電圧を印加するものである。
傘11は、サンプル13から放射された2次電子などが、メッシュ10に印加された電圧により加速されシンチレータ9に効率良好に衝突するような電界を形成するものである。傘11は非磁性で導電性の金属等からできている。
対物レンズ12は、1次電子ビーム31を細く絞ってサンプル13に照射するものである。
サンプル13は、観察、検査、測長対象の試料(フォトマスク、ウェハーなど)であって、必要に応じてサンプルバイアス回路14によってバイアス電圧を印加するものである。
サンプルバイアス回路14は、サンプル13にバイアス電圧を印加するものである。
次に、図2から図5に従い、サンプル13から放出・反射された電子(2次電子、反射電子など)を図1のシンチレータ9およびMPPC4を用いて高感度、かつ超高速に検出・増幅する構成について詳細に説明する。
図2は、本発明の要部説明図(その1)を示す。図2の(a)はメッシュ10を検出器(第1検出器+第2検出器)の前面の全体(反射電子検出部331および+2次電子検出部321)に配置した例を示し、図2の(b)はメッシュ10を検出器(第1検出器+第2検出器)の前面の2次電子検出部321に配置した例を示す。それ以外は同じ構成である。
図2の(a)において、検出器(第1検出器+第2検出器)34は、図1の第1の検出器であるシンチレータ9と、第2の検出器であるMPPC4とを重ねた構造を有する検出器であって(図6から図10およびその説明参照)、内側に反射電子検出部331を有し、外側に2次電子検出部321を有するものである。高いエネルギーの反射電子は中心に集まり、低いエネルギーの2次電子は周辺部に集まるので、中心部分に反射電子検出部331を設け、その外側に2次電子検出部321を設け、反射電子と2次電子とを分離してそれぞれ検出可能にしたものである。
メッシュ10は、正の電圧を印加し、サンプル13から放出された低いエネルギーの2次電子を加速するものであって、ここでは、検出器34の反射電子検出部331および2次電子検出部321の両者の全面の前方に配置した例を示す。この場合には、サンプル13から反射したエネルギーの高い反射電子は軸の上方向にガウス分布となり、軸により近い図示の反射電子検出部331で多くが検出される。一方、サンプル13から放出されたエネルギーの低い2次電子は高電圧の印加されたメッシュ10の方向に加速され、図示の2次電子検出部321、更に若干は内側の反射電子検出部331に衝突して増幅・検出される。しかし、全体として2次電子検出部321における2次電子成分の方が多くなり、結果として2次電子を検出しているとみなすことができる。
また、図2の(b)において、メッシュ10が2次電子検出部321の前面の部分にのみ配置し、反射電子検出部331の前面の部分にないので、2次電子は全部2次電子検出部321に加速・吸引された2次電子の全部を増幅・検出することが可能となる。
以上のように、検出器(第1検出器+第2検出器)34の前面にメッシュ10を配置して正の電圧を印加することにより、サンプル13から放出された低いエネルギーの2次電子などを加速・吸引して外側の2次電子検出部321で増幅・検出し、一方、サンプル13で反射した高いエネルギーの反射電子などは内側の反射電子検出部331で検出・増幅することが可能となる。
この際、1次電子ビーム31を対物レンズ12で細く絞ってサンプル13に照射したときに放出される2次電子のエネルギーは0.1eVないし1.数eVであり、これがメッシュ10に印加された10KVで加速されるので、検出器34を構成する第1検出器であるシンチレータ9に衝突するときの当該2次電子の変動割合は(0.1eV~1.数eV)/10,000であり、約±0.01%となる。即ち、サンプル13から放出された2次電子はメッシュ10に印加した10KVで加速され、シンチレータ9に衝突するときの当該2次電子のエネルギーの変動は約±0.01%ないしそれ以下に一定のエネルギーになるように調整されることとなる。その結果、サンプル13から放出された2次電子のエネルギーを一定(ここでは10KV±0.01%に一定)にしてシンチレータ9に入力し、2次電子の数に正確に対応した光の量(数)に変換することが可能となる。そして、光に変換した後、第2検出器である例えばMPPC4で増幅して当該2次電子の数に対応した信号を検出することが可能となる。
また、サンプル13で反射した反射電子は、1次電子の例えば10KVとほぼ同じエネルギーを有するので、第1検出器であるシンチレータ9に入力するときには、上述した2次電子の場合と同様に、その変動は約0.01%ないしそれ以下であり、サンプル13から反射電子の数に対応した信号を検出器34から出力することが可能となる。以下順次詳細に説明する。
図3は、本発明の要部説明図(その2)を示す。図3は、エネルギーフィルター101をサンプル13と検出器(第1検出器+第2検出器)34との間に配置し、エネルギーの高い反射電子33と、エネルギーの低い2次電子32とを分離し、反射電子検出部331および2次電子検出部321で分離してぞれぞれ増幅・検出する構成にしたものである。
図3において、EXB101は、エネルギーフィルターであって、電界と磁界の両者を印加して電子(反射電子、2次電子)のエネルギーの違いにより図示のように偏向角を異ならせて分離し、それぞれを独立して検出するためのものである。EXB101を設けて電子のエネルギーの低い電子(2次電子など)を外側の2次電子検出部321で増幅・検出し、電子のエネルギーの高い電子(反射電子など)を内側の反射電子検出部331で増幅・検出することが可能となる。
以上のように、サンプル13と検出器(第1検出器+第2検出器)34との間のエネルギーフィルター101を配置し、エネルギーの低い電子(2次電子など)を外側の2次電子検出部321で増幅・検出し、エネルギーの高い電子(反射電子など)を内側の反射電子検出部331で増幅・検出することが可能となる。
図4は、本発明の要部説明図(その3)を示す。図4は、図2の(b)の2次電子検出部321を下方向に下げてサンプル13に可及的に近づけ、該サンプル13から放出された2次電子を効率良好に補集できるように工夫、即ち、サンプル13から見て開口を大きくし、かつ前面にメッシュ10を設けて高電圧(例えば10KV)を印加し、サンプル13から放出された2次電子を加速・吸引し、効率良好に増幅・検出を可能にしたものである。
以上のように、2次電子検出部321をサンプル13に近づけて開口を大きくし、該サンプル13から放出された2次電子を、該2次電子検出部321の前面に配置したメッシュ10に高電圧(例えば10KV)を印加して効率良好に加速して補集し、増幅・検出することが可能となる。
図5は、本発明の要部説明図(その4)を示す。図5は、メッシュ10の電位を制御して差分を検出するようにしたものである。
図5の(a)は、バイアス無し(メッシュ10に正の10KV印加した通常の状態)の例を示す。この図5の(a)の場合には、図示のように、検出器34で反射電子+2次電子の両者を検出できる。
図5の(b)は、バイアス有りの状態を示す。この図5の(b)の場合には、例えばメッシュ10に2次電子が反射されて検出できない程度の電圧(数Vないし数十Vの負の電圧)を印加するので、2次電子が検出できなく、エネルギーの高い反射電子を増幅・検出できる。
以上のように、任意の電圧をメッシュ10に印加すれば、印加電圧以上のエネルギーの電子のみが検出器34に衝突して増幅・検出することが可能となる。両者の差分を取ればどちらか一方の電子数あるいは電子量を正確に検出できる。
図6は、本発明の検出器例を示す。図6は、検出器34を構成する第2検出器であるMPPC4の概略構成を示すものであって、図6の(a)はMPPC写真(斜視図)を示し、図6の(b)は模式図を示し、図6の(c)はMPPCの等価回路例を示す。
図6の(a)において、1次電子通過穴は、1次電子ビームが通過する穴である。当該穴を通過した1次電子ビームは対物レンズ12で細く絞られてサンプル13の上を照射しつつ平面走査され、2次電子を放出および反射電子を反射する。
図6の(b)は、下方向からMPPC4とその前面に配置したメッシュ10を見た概略図(シンチレータ9は省略)である。中心に1次電子通過穴があり、MPPC4の前面にメッシュ10が配置され、当該メッシュ10には正の高電圧(例えば10KV)を印加し、サンプル13から放出された2次電子を一定エネルギーに加速した後に、当該MPPC4とメッシュ13との間に配置したシンチレータ9(図示しない)に衝突させて光に変換し、この光を図示のMPPC4に入射して増幅を行い、信号を出力する。
図6の(c)は、MPPCの等価回路例を示す。MPPC4は、複数のD1(アバランシェダイオード)を図示のように並列配置し、更に、R1(クエンチング抵抗)をそれぞれに直列に接続したものを並列接続して構成される。光がある1つのD1(アバランシェダイオード)に入力するとガイガーモードにある当該D1が放電して電流を流し、電流が流れるとR1(クエンチング抵抗)により電流制限されて放電電圧以下となり当該放電が停止し、1つのパルスが出力される。2つの光子が同時入力すると並列になり、約2倍のピークを有するパルスが出力される。同様に、n個の光子が同時入力されるとn倍のパルスが出力されることとなる。
バイアス電源43は、D1に印加してガイガーモード状態に保持するためのバイアス電圧を印加する電源である。
電流検出装置44は、D1で生成されたパルス電流を検出し、電圧信号に変換するものである。
以上のような構成を有するMPPC4を用いることにより、サンプル13から放出された2次電子、反射された反射電子を一定エネルギーにしてシンチレータ9で光に変換した後、当該MPPC4で超高速かつ高精度に増幅して検出することが可能となる。
次に、図6のMPPCについて特徴を説明する。
図6に示すような数ミクロン角の小さなAPD(D1)を数十から数万個以上の大量に並列配置した全体として数mm角のデバイスがMPPC4である。このMPPC4は浜松フォトニクス(登録商標)等から購入できる。これよりも小さなデバイスを作製して用いても良い。従来のPMT(光増倍管)と比較して1万分の1以下の体積しかない。シリコンからなる板状の固体素子であり、PMTのようなガラスや真空封じ部分を持たないため非常に堅牢である。デバイス単体の重さはgオーダーと非常に軽い。
MPPC4を構成する各APD(D1)は、図6の(c)に示すように、クエンチング抵抗R1と呼ばれる、雪崩増幅制御用の抵抗を介して電気的に並列に接続されている。並列回路の一端は50Vから100V程度の雪崩現象を制御するためのバイアス電源43に接続され、もう一端はヴァーチャルアース入力の電流検出装置44に接続される。MPPC4のアレイを構成する各APD(D1)には僅かながら特性バラつきがあるので、アレイ全体に印加するバイアス電圧はアレイを形成する全てのAPD(D1)素子がガイガーモードになるように実験的に決定する。各ガイガーモードにあるAPDは光子が一個入力されると増幅率が100万倍にも達する雪崩増幅が起こる。もちろん他の増幅率を持つ電圧に設定してもよい。
各APDには電流制限用の決まった値を持つクエンチング抵抗R1が接続されており、端子には一定の電圧が印加されているので、雪崩増幅が起こるとAPDの電気抵抗は無視できるほど小さくなり、丁度スイッチのように働くためクエンチング抵抗R1に一定の電流が流れる。各APDは並列に接続されているので、出力端に接続された電流検出装置44には、各APDで生じた雪崩電流の総和が出力される。
MPPC4には大量のAPDが空間的に広がって配置してあるので、入射された光子が同じAPDに入射する確率は極めて小さい。そのため例えばMPPD4に1個の光子が入力されれば1単位の電流が生じ、同時にN個の光子が入力されればN単位の電流が生じる。この性質から何個の光子あるいは電子がMPPC4に同時入射したかを出力電流から知ることが出来る。出力信号は入射光子数に比例したアナログ信号なので、AD変換装置を使ってデジタル信号に変換しPCに取り込んで画像化に用いる。各APD素子が出力する電流はクエンチング抵抗R1の値に依存し厳密には一定ではないので、厳密に一定になるように、コンピュータ上で規格化処理を行っても良い。
また、信号加算方式として各APDが雪崩状態にあるか否かをシリコンチップ内部で一旦0,1のデジタル信号に変換した後に、デジタル積和演算を行って、雪崩状態にあるAAPDの個数を算出しMPPC4全体の総出力とする方式のデジタルMPPCを用いることも出来る。この場合は予め出力がデジタル信号に変換されているので、AD変換装置でデジタル信号に変換する必要は無い。また、信号加算結果は非常に正確である。このような集積化ICでは、チップ内部で画像処理を行うことも出来る。
図7は、本発明の検出器機例(その2)を示す。図7は、検出器34を構成する第1検出器、第2検出器であるシンチレータ9、MPPC4を、図1の装置に組み込んだ場合の概略構成を示すものである。
図7の(a-1)は検出器34の上面図を示し、図7の(a-2)は断面図を示し、これらはメッシュ10が無い場合の構成例を示す。
図7の(a-1)において、MPPC4は中心に1次電子ビーム用穴を開けられ、この穴の部分を上から下方向に1次電子ビームが通過し、図1の対物レンズ12で細く絞られてサンプル13の上を照射しつつ平面走査する。
図7の(a-2)は、断面図を示す。サンプル13から放出された2次電子は、シンチレータ9に印加された正の電圧(例えばここでは5KV)で加速・吸引されて当該シンチレータ9に衝突し、2次電子を光に変換する。変換された光は、MPPC4に入射し、増幅されて信号を出力する。この際、シールド管41に負の電圧を印加し、2次電子が軸上を上方向に走行することを抑止し、シンチレータ9に印加された正の電圧の方向に走行し、2次電子の集光効率を良好にする。
また、図7の(b-1),(b-2)は、メッシュ10を図示のサンプル13とシンチレータ9との間に設け、メッシュ10とシンチレータ9との間に正の加速電圧(図示では5KV)を印加(図7の(a-1),(a-2)では正の電圧をサンプル13とシンチレータ9との間に印加)し、かつサンプル13とメッシュ10との間にも正の電圧(例えば数Vないし数十V)を印加し、サンプル13から放出された2次電子を効率良好に補集するようにしたものである。他は、図7の(a-1),(a-2)と同様であるので、説明を省略する。
ここで、図7の構成を詳細に説明する。
図7において、図1の電子銃1で発生して加速した1次電子ビーム31をサンプル13の直上に配置した対物レンズ12で所望のビームスポットサイズに成るように縮小してからサンプル13の表面に走査し、サンプル13の表面で生じた2次電子や反射電子などの信号電子をシンチレータ9とMPPC4とかなる検出器で検出する。信号電子は1次電子ビーム31が照射されたサンプル13の表面の点から垂直方向に円錐状に広がりながら上昇してくるため、信号電子は1次電子ビーム軸に対して軸対称に分布しやすい。信号電子を効率よく検出するためには、1次電子が通過するための穴(1次電子ビーム用穴)を検出器の中心に設け、1次電子ビーム軸の近傍に配置する必要がある。
そのため、図7の(a-1),(b-1)に示すように、MPPC4の受光面に直接にシンチレータ9を設け、シンチレータ9の表面には薄いアルミ導電性薄膜が被覆してある。アルミ薄膜は、入射する電子がシンチレータ9の表面に帯電するのを防止するのが主な目的であるが、シンチレータ9が発生した光がMPPC4の外に漏れて来ないように反射防止膜としても機能する。MPPC4の上のシンチレータ9は屈折率を考慮した接着剤で付けても良いし、シンチレータ9を直接蒸着やCVDあるいはスパッタ等で堆積しても良い。シンチレータ9としては、無機シンチレータ、直接遷移型半導体シンチレータ、セラミック材料や重原子含有プラスチック・シンチレータ、内殻遷移の発光を用いるハロゲン化物シンチレータあるいは液体等を用いることができる。
また、1次電子ビームが通過する穴(1次電子ビーム用穴)があり、周辺部の電界や磁界が1次電子ビームに影響しないようにシールド管41が設けられている。1次電子ビームはシールド管41の中を通過する。シールド管41は非磁性材料で出来ており、直径数mm幅、厚みは1mm以下である。検出器とシールド管41の間にはどうしても隙間が出来る。隙間に電子が当たると検出されないため、導電性の傘形状をした部材を用いて電界を外に張り出し、電子を反発させて、隙間に電子が入り込まずに検出器の方に向かうようにしている。
また、検出器の目前でシンチレータ9を光らせるための電子加速を行う場合は、図7(b-1),(b-2)に示すように、シンチレータ9から数mm離した所に開口率が高い(90%以上が望ましい)導電性のメッシュ10を配置して、メッシュ10とシンチレータ表面に設けた導電性薄膜の間に1から10kV程度の電圧を掛ける。メッシュ10
自身にも、サンプル13の表面で発生した信号電子が到達するように、サンプル13に対して10V程度僅かにプラスに電位を掛けておくことが望ましい。放電しないようにこの空間は10のマイナス3乗パスカルより高い真空状態に保つことが望ましい。
図8は、本発明の検出器例(その3)を示す。1次電子ビームをリング状にし、対物レンズ12で1つの細い点に絞ってサンプル13を照射しつつ平面走査する場合の概略構成を示す。他は図7と同様であるので説明を省略する。
図8の(a-1)は検出器34の上面図を示し、図8の(a-2)は断面図を示し、これらはメッシュ10が無い場合の構成例を示す。
図8の(a-1)において、MPPC4はリング状に1次電子ビーム用リング状穴を開けられ、この穴の部分を上から下方向にリング状の1次電子が通過し、対物レンズ12で細く絞られて点となり、サンプル13の上を照射しつつ平面走査する。
図8の(a-2)は、断面図を示す。サンプル13から放出された2次電子は、シンチレータ9に印加された正の電圧(例えば5KV)で加速・吸引されて当該シンチレータ9に衝突し、2次電子を光に変換する。変換された光は、MPPC4に入射し、増幅されて信号を出力する。この際、リング状のシールド管41に負の電圧を印加し、2次電子が軸上を上方向に走行することを抑止し、シンチレータ9に印加された正の電圧の方向に走行し、2次電子の集光効率を良好にする。この際、シンチレータ9、MPPC4とから構成される検出器の中心部分で2次電子、反射電子を検出することが可能となり、検出効率を高めることが可能となる。
また、図8の(b-1),(b-2)は、メッシュ10を図示のサンプル13とシンチレータ9との間に設け、メッシュ10とシンチレータ9との間に正の加速電圧(図示では5KV)を印加(図8の(a-1),(a-2)では正の電圧をサンプル13とシンチレータ9との間に印加)し、かつサンプル13とメッシュ10との間にも正の電圧(例えば数Vないし数十V)を印加し、サンプル13から放出された2次電子を効率良好に補集するようにしたものである。他は、図8の(a-1),(a-2)と同様であるので、説明を省略する。この際、シンチレータ9、MPPC4とから構成される検出器の中心部分で2次電子、反射電子を検出することが可能となり、検出効率を高めることが可能となる。
ここで、図8は、1次電子ビームとして中空電子ビーム(ホロビーム)を用いることに特徴がある。中空電子ビームはリング状のビームであり、大電流電子ビームを利用する時に電子同士の反発を防止する意味で使用される場合がある。通常のビームと同じように対物レンズ12によってサンプル13の表面の1点に絞ることが出来る、
図8の(a-1)、(b-1)に示すように、中心部にもシンチレータ9を配置してその周辺部に1次電子が通過するリング状のシールド管41を設ける。必要に応じて、リング状のシールド管41の外側にもシンチレータ9を配置することが出来る。このようにすることで、サンプル13の表面で発生した電子(2次電子、反射電子など)が完全に垂直方向に上昇した場合でも、真上に存在するシンチレータ9できちんと検出できる特徴がある。1次電子ビーム軸の周辺部に飛んだ信号電子はリング状のシールド管41の外側に配置したシンチレータ9で検出される。
図9は、本発明の検出器例(その4)を示す。図9は、検出器34を構成する第1検出器、第2検出器であるシンチレータ9、MPPC4を円周方向に例えば4分割し、図1の装置に組み込んだ場合の概略構成を示すものである。
図9の(a-1)は検出器34の上面図を示し、図9の(a-2)は断面図を示し、これらはメッシュ10が無い場合の構成例を示す。
図9の(a-1)において、MPPC4は中心に1次電子ビーム用穴を開けられ、周囲の部分は円周方向に4分割され、各部分は衝立431で電子や光が隣接する各部分に入らないように遮断され、中心の穴の部分を上から下方向に1次電子ビームが通過し、図1の対物レンズ12で細く絞られてサンプル13の上を照射しつつ平面走査する。
図7の(a-2)は、断面図を示す。サンプル13から放出された2次電子は、4分割されたシンチレータ9に印加された正の電圧(例えば5KV)で加速・吸引されて当該シンチレータ9に衝突し、2次電子を光に変換する。変換された光は、4分割されたMPPC4に入射し、増幅されて信号を出力する。この際、シールド管41に負の電圧を印加し、2次電子が軸上を上方向に走行することを抑止し、4分割されたシンチレータ9に印加された正の電圧の方向に走行し、2次電子の集光効率を良好にする。
また、図9の(b-1),(b-2)は、メッシュ10を図示のサンプル13とシンチレータ9との間に設け、サンプル13と4分割されたシンチレータ9との間に正の加速電圧(図示では5KV)を印加し、かつ4分割されたシンチレータ9とメッシュ10との間にも正の電圧(例えば50V)を印加し、サンプル13から放出された2次電子を効率良好に補集するようにしたものである。他は、図7の(a-1),(a-2)と同様であるので、説明を省略する。
ここで、図9の構成を詳細に説明する。図9は4CH(4分割)の検出器を利用した場合を示す。4CHの検出器は、サンプル13の表面で発生する電子の飛び出す方向に関する情報を得るために利用する。検出された各CHの信号を足したり引いたりすることで、必要な成分を抽出して電子の飛び出している方向を知ることが出来る。3Dの情報を得ることが出来る。各検出器が出力する感度は必ずしも均一では無いので、適当な係数を掛けることで各チャンネルの出力感度が同じに成るように校正して用いる。これらの情報を利用するとサンプル13の表面構造のエッジ情報の強調や、3D情報を取得することが出来るようになる。
また、図9に示すように1次電子ビームが通過する場所にはシールド管41を設け、1次電子ビームの軸に対して軸対称になるように電気的に独立した検出器を配置する。高さも同じに成るようにする。検出器の配置は平面状だけでなく、1次電子ビーム軸に沿って高さ方向に立体的に配置しても良い。
また、1次電子ビームが通過するシールド管41から四方に衝立状の電極を伸ばして、シンチレータ9を取り囲んで検出器に飛来する信号電子の検出範囲を分離することが出来る。シールド管41および衝立431には、信号電子に対して反発力を生じるバイアス電圧が印加されている。サンプル13から来た電子はこの反発力により、シンチレータ9の方に曲がって飛んでいく。信号電子はそれぞれの検出器で検出され、増幅装置に電気信号が送られる。
図10は、本発明の検出器例(その5)を示す。図10は、検出器34を構成する第1検出器、第2検出器であるシンチレータ9、MPPC4を円周方向に例えば4分割、かつライトガイド45(図10の(a-1),(a-2))、レンズ46(図10の(b-1)、(b-2))で光を集束してより小さいMPPC4を用い、これを図1の装置に組み込んだ場合の概略構成を示すものである。
図10の(a-1)は検出器34の上面図を示し、図10の(a-2)は断面図を示し、これらはメッシュ48が無い場合の構成例を示す。
図10の(a-1)において、MPPC4は中心に1次電子ビーム用穴を開けられ、周囲の部分は円周方向に4分割され、各部分は衝立47で電子や光が隣接する各部分に入らないように遮断され、中心の穴の部分を上から下方向に1次電子ビームが通過し、図1の対物レンズ12で細く絞られてサンプル13の上を照射しつつ平面走査する。
図10の(a-2)は、断面図を示す。サンプル13から放出された2次電子は、4分割されたシンチレータ9に印加された正の電圧(例えば5KV)で加速・吸引されて当該シンチレータ9に衝突し、2次電子を光に変換する。変換された光は、4分割されたMPPC4に入射し、増幅されて信号を出力する。この際、シールド管41に負の電圧を印加し、2次電子が軸上を上方向に走行することを抑止し、4分割されたシンチレータ9に印加された正の電圧の方向に走行し、2次電子の収集効率を良好にする。
また、図10の(b-1),(b-2)は、メッシュ48を図示のサンプル13とシンチレータ9との間に設け、サンプル13と4分割されたシンチレータ9との間に正の加速電圧(図示では50V)を印加し、かつ4分割されたシンチレータ9とメッシュ10との間にも正の電圧(例えば5KV)を印加し、サンプル13から放出された2次電子を効率良好に補集するようにしたものである。また、図10の(b-2)では、図10の(a-2)のライトガイド45の代わりに、レンズ46を用いてシンチレータ9で発生した光を小さいMPPC4に導くようにしている。他は、図10の(a-1),(a-2)と同様であるので、説明を省略する。
ここで、図10の構成を詳細に説明する。図10は、電子ビーム照射によりシンチレータ9で発生した光を縮小してMPPC4に照射する例を示す。MPPC4は単一のAPDとは異なり、MPPC4の全体の面積を増やしても、各APDの電気容量が増加しないため、電子検出速度の劣化は見られないという優れた特徴がある。しかしながら、MPPC4の面積が大きくなると、面積に比例してダークノイズと呼ばれる、熱雑音に起因したノイズが増加する。このノイズは絶対温度に比例するので、冷却すれば減少できるが、真空装置内部に冷却装置を持つと、装置が極めて複雑となり、体積が増加し、かつ、コストも上がりメインテナンスも大変になるため、MPPC4の良いところが消えてしまいかねない。一方、MPPC4の面積を小さくすると電子の検出効率が下がり、画像SNRが劣化する。
本発明では、この点に注目し、電子検出効率を高く保ちながら、MPPC4の面積は出来るだけ小さくすることに成功した。まず、サンプル13の表面で発生する電子を光に変換するシンチレータ9の面積は必要十分に出来るだけ大きく取る。具体的には、実験あるいは電子軌道シミュレーションを用いて、信号電子が飛来する場所を求め、その場所に必要十分な大きさを持つシンチレータ9を配置する。
これにより、サンプル13の表面で発生した信号電子の検出効率を高める。一方、シンチレータ9で発生した光は光学素子を用いて収束あるいはその断面積を縮小した後(図10の(a-2)のライトガイド45、図10の(b-2)のレンズ46などで縮小した後)に、MPPC4に照射する。このようにすると、電子検出効率の高さは大きなシンチレータ9によって担保され、ダークノイズの小ささは出来るだけ小さなMPPC4を用いることで実現される。
ここで、用いるMPPC4には出来る限りAPDアレイを構成する各APDの寸法が小さく(数ミクロン以下)素子数が数万個以上、MPPC4の面積が1平方mm以下が望ましい。シンチレータ9で発生した光を縮小するためには、図10の(a-2)に示すように、ライトガイド45を用いる方法や図10の(b-2)に示す光学レンズ46を用いる方法などがある。更に、反射鏡、フレネルレンズやホログラフィックレンズ、回折素子を用いることで縦方向の寸法を短くする効果を得ることも出来る。ライトガイド等をフォトン検出デバイスに接触させて用いる場合には、不要な反射が起こって信号損失を起こさないように接触する部材の屈折率を合わせ、反射防止用の膜を新たに挿入することが望ましい。更に、MPPC4に入射する波長成分を選択するために、波長選択用光学フィルターを間に入れてもよい。
図11は、本発明の他の実施例構成図(その1)を示す。この図11は、サンプル13から放出された電子が加速されてシンチレータ9を発光させた光を、ライトガイド91で面積縮小し、シンチレータ9の面積よりも小さなMPPC4に入射する例を示す。他の構成は図1と同様であるので、説明を省略する。
図11において、ライトガイド91は、ガラスやアクリル等の単一素材やガラスファイバー等の束からなるものである。
MPPC4は、一辺が数ミクロン角のAPDを大量にアレイ状に並べたデバイスである。APDはバイアス電圧を印加していくと、最初は普通のフォトダイオードが示す増幅率である。しかし、50V程度の閾値電圧を超えると一気に増幅率が上昇し、ついにはガイガーモードと呼ばれる、1個の電子(あるいは光子)が入射すると100万倍近くの増幅を行う動作モードに達する。ガイガーモードではMPPC4の外部から入射した一個の電子を検出出来る感度を持つが、内部の熱揺らぎによって1個の電子が発生した場合も同様の増幅を行うため、1つだけ入射した電子(光子)と熱によって発生した電子を区別することは出来ない。従ってこれらはノイズの原因に成る。熱電子の発生は、APDの面積に比例する。つまり、APDの面積が大きいほど熱電子の発生頻度は多くなり、雑音が増加する。
一方、サンプル13から放出される信号電子は、広い範囲に渡って散らばって放出されるため、信号電子を効率よく検出するためには、検出器は出来るだけ大きな面積を持っていた方が有利である。
以上のように2つの要求はお互いに矛盾する。本発明ではこの矛盾を解決するために、電子を検出するためのシンチレータ9の面積は出来るだけ大きく取り、シンチレータ9で発生した光を縮小することで、出来るだけ小さな面積を持つMPPC4に入力することにより、高検出効率と低雑音を両立する方法を見つけた。図11では、入射側と出射側の面積比が異なるライトガイド91を用い、面積の広い方はシンチレータ9に接続を行い、面積の小さい方はフォトン検出装置であるMPPC4に接続した例を示す。
大きな面積を持つシンチレータ9で発生した光は、ライトガイド91により縮小されて、小さな面積を持つフォトン検出装置であるMPPC4に導かれ、電流に変換される。このようにすることで高効率検出と低ダークノイズの両立が実現できる。
図12は、本発明の他の実施例構成図(その2)を示す。この図12は、サンプル13から放出された電子が加速されてシンチレータ9を発光させた光を、レンズ51で面積縮小し、シンチレータ9の面積よりも小さなMPPC4に入射する例を示す。他の構成は図1と同様であるので、説明を省略する。
図12において、レンズ51は、光を縮小するレンズである。図では1枚レンズ構成を示しているが、複数のレンズを用いても良い。例えば平行ビームを入射すると縮小された平行ビームが出射するようなレンズ系を用いても良い。サンプル13に1次電子ビームを照射して発生した信号電子はメッシュ10などに印加された正の電圧(例えば10KV)に加速・吸引されてシンチレータ9に衝突する。衝突した電子は大量に光を放出する。放出された光をレンズ51で断面積が10分の1以下になるように集光して面積縮小し、フォトン検出デバイスであるMPPC4に入射する。入射した光を受けてMPPC4は増幅して検出電流を出力する。
以上のような構成を採用することにより、MPPC4の面積はシンチレータ9の面積の10分の1以下になるため、シンチレータ9と同じ面積のMPPC4を用いた場合と比較してダークノイズを10分の1以下にすることが可能となる。
図13は、本発明の他の実施例構成図(その3)を示す。図13は、電子レンズ53を用い信号電子(2次電子、反射電子など)を縮小して検出器(シンチレータ9+MPPC4)に入力した構成例である。他の構成は図11、図12と同じであるので説明を省略する。
図13において、電子レンズ53は、サンプル13からの信号電子(サンプル13から放出された2次電子、反射された反射電子など)を当該電子レンズ531の開口よりも小さい面積に縮小する電子レンズであって、静電レンズ、磁界レンズである。ここでは、シンチレータ9に入射する前に、サンプル13の表面で発生して漂っている信号電子(2次電子など)を予め第1の開口を持つ静電レンズあるいは磁界レンズ等の電子レンズ531を用いて断面積を縮小してエネルギー加速した後に、第1の開口よりも小さな面積を有するシンチレータ9あるいはその部分に照射する構成に特徴がある。信号電子を第1の開口よりも小さなサイズのフォトン検出装置であるMPPC4で検出する。
以上のように構成することにより、シンチレータ9もMPPC4も双方とも小さくすることが出来る。そのため、ダークノイズを下げることはもちろん、小さなシンチレータ9のサイズで良いためシンチレータ9のコストを下げることが出来る。また、MPPC4のサイズを小さく出来るので鏡筒内の配置に自由度が生まれる。レンズやライトガイドを介さないので、信号損失が小さく出来、高品質な画像形成に寄与する。このように検出器が非常に小さく出来るので、1つの電子ビーム装置の中に、多数を配置し多くの電子ビームを同時にサンプル13の表面に照射したさいに生じる信号電子群を同時に測定できるようになる。
図14は、本発明の他の検出器説明図(その1)を示す。図14の(a)は全体構成図を示し、図14の(b)は電子ビームアパチャの例を示す。
図14の(a)において、照射レンズ51は、電子銃1で発生させた1次電子ビームを並行にするものである。
電子ビームアパチャ52は、並行にされた1次電子ビームから所定の細い部分を複数、抽出して複数の1次電子ビームを形成するためのものであって、例えば図14の(b)に示すように、円形の絞りを複数設けたものである。このようなアパチャーは電気的に開閉できるブランキング式のアパチャーを用いても良い。
支持部53は、MPPC54,シンチレータ53からなる検出器を保持するものである。
第1縮小レンズ56は、電子ビームアパチャ52を通過した複数の1次電子ビームを縮小する第1番目のレンズである。
第2縮小レンズ57は、第1縮小レンズ56で縮小された複数の1次電子ビームを、更に縮小して細く絞った複数の1次電子ビームを、サンプル13の上に照射しつつ平面走査するためのものである。
次に、図14の構成の動作を詳細に説明する。
(1)図14において、電子銃1で発生した1次電子ビーム31を照明レンズ51で一旦並行ビームに変換した後、1次電子ビームアパチャ52を通過させて、複数本の1次電子ビームに成型する。1次電子ビームの本数に比例してサンプル13の表面に同時照射される1次電子ビームの本数が増加する。電子ビームアパチャ52の中心に1次電子ビームを通過させてしまうと、1次電子と2次電子の軌道が別々になるように2次電子検出装置の配置が困難となるため、複数の穴は周辺部に設けることが望ましい。
(2)成型した複数の1次電子ビームは当該1次電子ビームが通過できるように穴を設けた支持部53を通過して第1縮小レンズ56および第2縮小レンズ57を通過してビーム径が圧縮された後、サンプル13の表面にほぼ垂直に照射する。
(3)照射された電子はサンプル13の表面にて2次電子を発生させる。発生した2次電子はサンプル13とシンチレータ55の表面に設けられた導電性膜との間に印可されたバイアス電圧(例えば10KV)によって加速され第2縮小レンズ、第1縮小レンズと通過したのちシンチレータ55に入射される。シンチレータの高さが2次電子の焦点位置になるようにバイアス電圧を調整する。つまりシンチレータ表面において1次電子スポットの像が出来るように調整する。
(4)シンチレータ55、MPPC54からなる検出器は2次電子軌道計算を行って、2次電子が戻ってくる場所に設置する。検出器は予めアレイ状に大量に配置しておいて、各素子に対してアドレス等を設け必要に応じてコンピュータ等から電気的に選択利用できるようにしても良い。この機能により、バイアス電圧変更に伴う2次電子の軌道変化に対応できる。
以上のようにして、分割された複数の1次電子ビームをサンプル13に照射して発生した2次電子はそれぞれの検出器(シンチレータ55、MPPC54)にて同時並行的に検出されるため、高速に画像取得を行うことが可能となる。
図15は、本発明の他の検出器説明図(その2)を示す。図14が支持部53、MPPC54,シンチレータ55から構成されるのに対し、当該図15はMPPC54,透明支持部531、シンチレータ55の構成したものである。他の構成は図14と同じであるので説明を省略する。
図15において、透明支持部531は、検出を行うシンチレータ55を透明な部材で支持したことに特徴があるものである。透明支持部532に使う透明部材は、レンズ、ホログラム等種々の光学素子を使用する。これら光学素子を利用したことを、シンチレータ55で発生した光を縮小あるいは拡大あるいは位置を移動させることが可能となる。つまり、電子検出器をどこにでも配置できるようになる。
図16は、本発明の他の検出器説明図(その3)を示す。図16は、図15のサンプル13の上にメッシュ58を設け、サンプル13の表面にて発生した2次電子を第2縮小レンズ57に入射する前に所望の加速エネルギーに加速し、2次電子の検出効率を向上させることに特徴がある。
図16において、メッシュ58は、サンプル13の上に設けたメッシュであって、該サンプル13から放出された2次電子を加速(例えば5KV)するものである。このメッシュ56をサンプル13の上に設け、これに加速電圧(例えば5KV)を印加して当該2次電子を加速し、加速された2次電子が第2縮小レンズ57、第1縮小レンズ56を通過し、さらに加速されて最終的にシンチレータ55に衝突する。2次電子の発生後、直ぐに加速することで、発生した2次電子が分散して散るのを避けることが可能であり検出効率を向上できる。
図17は、本発明の他の検出器説明図(その4)を示す。図17は、図16に対して更にメッシュ59をシンチレータ55の上に設け、第2縮小レンズ57、第1縮小レンズ56を通過する2次電子のエネルギーが一定の状態にあるようにし、設計どおりに軌道を進む(第2縮小レンズ57、第1縮小レンズ56の機械的な形状などの影響を受けないようにして設計どおりの軌道を進む)ようにしたものである。
図17において、メッシュ59は、シンチレータ55の前面に設けたメッシュである。
メッシュ58は、サンプル13の前面に設けたメッシュである。ここでは、メッシュ59,58は、同一電位に保持し、第2縮小レンズ57、第1縮小レンズ56を通過する2次電子に周囲の幾何的構造が影響しなく、設計どおりに軌跡を通るようにしたものである。そして、ここでは、メッシュ58には図示のように例えば5KV(2次電子を加速する電圧)、メッシュ59には10KV(当該メッシュ59を通過した2次電子を加速する電圧)を印加する。
以上のように構成することにより、複数の1次電子ビームをサンプル13の上に照射しつつ並列に平面走査すると、サンプル13から複数の1次電子ビームに対応した2次電子、反射電子がそれぞれ放出、反射され、これら放出、反射された複数の2次電子、反射電子がメッシュ58で上方向に並列にそれぞれ加速され、一定エネルギーで第2収縮レンズ57、第1縮小レンズ56を通過し、メッシュ59を通過し、当該メッシュ59とシンチレータ55との間に印加された正の電圧(例えば10KV)で並行に複数の2次電子、反射電子をそれぞれ加速しシンチレータ55でそれぞれ並列に光に変換され、これら変換された複数の光がそれぞれ並列にMPPC54でそれぞれ増幅・検出され、信号を並列出力することが可能となる。
この際、高いエネルギーに加速された電子(反射電子など)は内側に、低いエネルギーに加速された電子(2次電子など)は外側に軌道を取るので、分割された複数の検出器(シンチレータ55、MPPC54)によりそれぞれ並列に検出され、出力されることとなる。
図18は、本発明の検出器説明図(その5)を示す。図18は、照射した1次電子ビームのサイズよりも高い分解能が実現し、かつ、スループットが向上できることに特徴がある。以下詳細に説明する。
(1)図18において、電子銃1から1次電子を放出させたのち所望エネルギーになるように加速し中空状の電子ビーム(図18の(b)参照)を発生させて対物レンズ121により1点に収束させてサンプル13に照射する。加速電圧は1KVから50KV程度を利用する。
(2)中空電子ビーム(ホロビーム)は同心円状にくり抜いた電子ビームアパチャ52に対して並行電子ビームを照射レンズ51により均一に照射することで発生できる。同心円状の穴は小さな穴を多数用いて同心円状にしても良いし、四角形を用いたり、2重に取り囲んでも良い。これらのアパチャーは大量のアパチャーアレイを電気的に開閉できるようなブランキングアパチャー形式でもよい。そのアレイの一部を選択的に開閉して同心円状のアパチャーを形成しても良い。さらに収差を小さくするために凹レンズとなる格子レンズや薄膜レンズを用いても良い。
電子ビームアパチャ52は、チタンやMO,W等の非磁性材料で作製し、コンタミ防止のため100℃以上に加熱しておくことが望ましい。帯電防止のため導電性を有することが望ましい。
(3)発生させた中空電子ビームは対物レンズ121により一点に絞られる。絞られた1次電子ビームは偏向電極122により、XY平面を走査する。偏向電極122は対物レンズ121の上、下などの必要な場所に配置できる(図18では対物レンズ121の下側に静電電極122を配置)。
(4)絞られた1次電子ビームはサンプル13に照射され、2次電子を発生する。発生した2次電子は非常に低いエネルギーをもち、あらゆる方向に放出されるため、そのままでは対物レンズ121で点像を形成できない。本実施例ではサンプル13の直上のメッシュ58に正の加速電圧を印加し、発生した2次電子のほぼ全てが所望のエネルギーになるように加速される。この加速電圧によって2次電子群の持つエネルギーばらつきが相対的に減少し、1つの均一なエネルギーを持つ2次電子ビームとなる。したがって、このエネルギーは高いほど、エネルギーの均一度は向上する。
(5)所望のエネルギーに加速された2次電子は対物レンズ121を通過し、最終的にシンチレータ55に衝突して発光が最適になるようにメッシュ59で加減速された後、当該シンチレータに衝突し発光する。発光した光は、直接的あるいは反射鏡を介してMPPC4の複数に分割された各部分で検出される(高感度のCCDあるいはCMOSデバイスでもよい).
(6)図18に示すように、検出される光の点は対物レンズ121によって所望のサイズに絞られた1次電子ビームによって発生する2次電子の拡大像である。また、この点像は1次電子ビームの偏向に対応して動的にXY走査されたものになる。光の点の拡大像は1次電子ビームの照射点における2次電子発生量分布情報を有している。1次電子ビームの走査周期を利用して画像解析を行って光の点の詳細な輝度分布を画像から抽出するとスポットサイズよりも小さな領域におけるサンプル表面の変化を抽出できる。つまり、1次電子ビーム光学系の分解能を上げることが出来る。これは丁度10本の鉛筆の芯を束ねて絵を書いたようなもので、輝度分布測定を行って10本に分離すれば、それぞれの鉛筆が書いた分解能画像が得られるのと同じである。
(7)例えば、10nmの1次電子ビームのスポットサイズから発生した2次電子を電子光学系と光学系を用いて10,000倍に拡大すると100ミクロン程度の点になる。現在の2次元光検出デバイスの最小ピクセルサイズは1ミクロン程度なので、これらの点の輝度分布は2次元光検出デバイスで十分に分離検出可能である。この点像をコンピュータで連続的に抽出しそれぞれのピクセルに対応するように各部分の輝度に分け、適正な画像を形成するように回転補正や輝度補正などの画像処理を高速で行い、1枚の画像を再構成できるようにピクセルを正しい順番に並び替えると、ビームサイズよりも小さい分解能の画像を得ることができる。これらの処理は必ずしもリアルタイムで行う必要はないので、画像を取得後、画像処理用のコンピュータで必要な処理を行ってもよい。
(8)例えば光の点を4分割してそれぞれのピクセルに対応させれば実質的に2.5nmのビームサイズで照射したのと同じ分解能が得られ、かつ、4倍のスループットが得られる。通常は分解能を上げるとスループット低下が起こるが、本方式では分解能とスループットを両方上げることが出来ることが特徴である。
(9)より高い分解能を得るためには、シンチレータ構成物が均一細かいことが非常に重要である。粒子状シンチレータを用いる場合には粒子のサイズをナノメートルオーダーにすることによって、高い分解能を得ることが可能となる。プラスチック・シンチレータなどでは、ナノレベルで均一である。蛍光顕微鏡ではナノオーダーの分解能が実現できるので、その程度に分離できていれば、1つの点を複数のビーム成分に分離できる。
(10)以上の方法はマルチビーム形式の複数ビームを極近傍に集めたのと同じ効果がある。一方、通常知られているマルチビーム方式とは逆にレンズの軸中心部だけを利用するためレンズ歪が小さく、収差補正が不要となり、容易にマルチビーム検査装置を実現できる。この効果は、ビームスポットサイズを大きくしても小さくしても得られるため、高分解能で超高速あるいは低分解能で超々高速の検査装置を実現することが可能となる。逆に、ビームサイズを最初から小さくし、光検出装置の分解能を上げれば、従来では実現不可能な1nmを切る分解能かつ、高いスループットを実現できる。特に、高分解能を実現する場合、ホロービームでは、静電反発による電子ビーム広がりが起こりにくいため、電子ビームを細く絞ることが容易となる。
従来のマルチビーム検査装置とは異なり、検出した2次電子を垂直方向に引き上げビームセパレータを使用しないで直接電子を検出するため収差が小さくより高い分解能や効率が実現できる。
さらに、以上の方法では画像解析によってビームを分離するため、マルチビーム検査装置で問題となるビームの並んでいる方向が問題とならないため、XYステージを等速度連続的に移動させて高速検査を行う形式の検査装置に容易に展開できる。