JP7303637B2 - インホイールモータ駆動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の歯車を有する歯車式の減速部を備えたインホイールモータ駆動装置であって、特に、減速部の最終歯車(出力歯車)をはすば歯車としたインホイールモータ駆動装置に関する。
車輪の内部に配置されるインホイールモータ駆動装置は、車輪を駆動するモータ部と、車輪が取り付けられる車輪ハブ軸受部と、モータ部の回転を減速して車輪ハブ軸受部に伝達する減速部とを備える。減速部における減速機構としては、従来から、複数の歯車を有する平行軸歯車減速機構が採用されている。
特開2017-165392号公報(特許文献1)には、インホイールモータ駆動装置の減速部が、モータ部のモータ回転軸と結合する入力軸、入力軸と結合する入力歯車、車輪ハブ軸受部の回転輪と結合する出力軸、出力軸に設けられた出力歯車(最終歯車)、入力軸および出力軸と平行に延びる中間軸、中間軸に設けられた中間歯車を含み、出力軸の両端が、第1軸受および第2軸受によってそれぞれ回転支持される構成が開示されている。また、特許文献1には、減速部の歯車をはすば歯車とすることで、歯当たりを良くすることも開示されている。
特開2017-165392号公報
上記特許文献1に開示された出力軸の支持構造によれば、第1軸受および第2軸受によって出力軸を安定して両持ち支持することができるため、車輪ホイールから車輪ハブ軸受部の回転輪に外力が付与されても、出力軸の変位を抑制して、減速部の歯車の偏摩耗等を防止できるという効果が得られる。また、特許文献1では、減速部の歯車としてはすば歯車が適用されているため、高い静寂性が見込まれる。
しかしながら、はすば歯車は、歯スジのねじれ方向(ねじれ角)に応じて噛合い部にアキシアル荷重(軸方向力)が発生するという特性がある。そのため、出力軸に設けられた出力歯車にはすば歯車を適用した場合、中間歯車との噛合い部に掛かるアキシアル荷重の影響によって出力歯車自体が傾くおそれがある。したがって、高い静寂性を実現するためには、出力歯車の傾きを抑制する技術が望まれる。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、減速部の最終歯車としての出力歯車にはすば歯車を適用した場合に、出力歯車自体の傾きを抑制することのできる、インホイールモータ駆動装置を提供することである。
この発明のある局面に従うインホイールモータ駆動装置は、車輪が取り付けられる回転輪を有する車輪ハブ軸受部と、減速部とを備えている。減速部は、車輪ハブ軸受部の回転輪と結合された出力軸と、出力軸と同軸に設けられたはすば歯車である出力歯車と、出力軸と平行に設けられた中間軸と、中間軸と同軸に設けられ、出力歯車と噛合するはすば歯車である中間歯車と、出力歯車よりも軸線方向一方側に配置され、出力軸を回転自在に支持する転がり軸受とを含む。車輪の駆動時に出力歯車の噛合い部に生じるアキシアル荷重の向きは、軸線方向一方側であり、上記転がり軸受の転動体の少なくとも一部は、出力歯車の噛合い部の軸線方向一方端から他方端に掛かるアキシアル荷重とラジアル荷重との合力が向かう方向の領域内に配置されている。
出力歯車は、ねじれ角βおよび圧力角αを有する。合力が向かう方向の領域は、出力歯車の噛合い部の軸線方向一方端からラジアル方向に対して角度θの傾斜角度で延びる第1直線と、出力歯車の噛合い部の軸線方向他方端からラジアル方向に対して角度θの傾斜角度で延びる第2直線とで挟まれた領域であり、角度θは、次の式で表される。
角度θ=atan{tanβ/(tanα/cosβ)}
好ましくは、インホイールモータ駆動装置は、減速部を収容するケーシングをさらに備え、転がり軸受は、出力軸の外径面とケーシングに形成された円筒面との間に配置されている。
出力歯車の軸線方向一方端面に環状凸部が設けられ、転がり軸受は、環状凸部とケーシングの円筒面との間に収容されていてもよい。
好ましくは、減速部は、出力歯車よりも軸線方向他方側に配置され、出力軸を回転自在に支持する転がり軸受をさらに含む。
好ましくは、軸線方向一方側が車幅方向外側であり、軸線方向他方側が車幅方向内側である。
本発明によれば、出力軸を回転支持する転がり軸受の転動体の少なくとも一部が、車輪の駆動時に出力歯車の噛合い部の軸線方向一方端から他方端に掛かるアキシアル荷重とラジアル荷重との合力が向かう方向の領域内に配置されているため、出力歯車自体の傾きを抑制することができる。
本発明の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置を所定の平面で切断し、展開して示す縦断面図である。 本発明の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置の減速部の内部構造を模式的に示す横断面図である。 本発明の実施の形態における出力歯車を斜め上から見た状態を示す斜視図である。 本発明の実施の形態において出力歯車と中間歯車との噛合状態を模式的に示す斜視図である。 本発明の実施の形態において、正転駆動時、逆転駆動時それぞれにおける出力歯車および中間歯車の回転方向を示す図である。 本発明の実施の形態において、車輪駆動時(正転駆動時)に出力歯車に生じるアキシアル荷重を概念的に示す図である。 本発明の実施の形態において、車輪駆動時(正転駆動時)に出力歯車に生じるラジアル荷重を概念的に示す図である。 本発明の実施の形態において、車輪駆動時(正転駆動時)に出力歯車の噛合い部に掛かるアキシアル荷重とラジアル荷重との合力の向きを概念的に示す図である。 本発明の実施の形態において、出力歯車を回転支持する転がり軸受の配置範囲を概念的に示す図である。 本発明の実施の形態において、逆転駆動時に出力歯車の噛合い部に生じる接線力およびアキシアル荷重の向きを概念的に示す図である。 本発明の実施の形態において、逆転駆動時に出力歯車の噛合い部に生じる接線力およびラジアル荷重の向きを概念的に示す図である。 出力歯車の圧力角αを一定とした場合におけるねじれ角αと合力角度θとの関係の一例を示すグラフである。 本発明の実施の形態の比較例を示す図である。 本発明の実施形態における減速部の詳細な構成例を示す図であり、インホイールモータ駆動装置を所定の平面で切断し、展開して示す縦断面図である。 図14に示す減速部の内部構造をアウトボード側からみた状態を模式的に表す図である。 図14に示す減速部の内部構造をアウトボード側かつ車両後方側からみた状態を模式的に表す斜視図である。 図14に示す減速部の内部構造をアウトボード側かつ車両前方側からみた状態を模式的に表す斜視図である。 図14に示す減速部の内部構造をインボード側からみた状態を模式的に表す図である。 図14に示す減速部の内部構造をインボード側かつ車両後方側からみた状態を模式的に表す斜視図である。 図14に示す減速部の内部構造をインボード側かつ車両後方側からみた状態を模式的に表す斜視図である。 図14に示す減速部の歯車アセンブリをアウトボード側から見た模式図である。 図14に示す減速部の歯車アセンブリをインボード側から見た模式図である。 図14に示す減速部の歯車アセンブリを車両後方側から見た模式的である。 図14に示す減速部の歯車アセンブリを車両前方側から見た模式的である。 図14に示す減速部の歯車アセンブリを車両上方から見た模式的である。 図14に示す減速部の歯車アセンブリを車両下方から見た模式的である。 図14に示す減速部の歯車アセンブリをアウトボード側かつ車両前方側から見た斜視図である。 図14に示す減速部の歯車アセンブリをインボード側かつ車両前方側から見た斜視図である。 図14に示す減速部の一部を拡大して示す展開断面図である。 図14に示す減速部の一部を拡大して示す展開断面図である。 (A),(B)は、車両静止時と加速時における油面の位置を模式的に示す図である。 図14に示すインホイールモータ駆動装置およびその周辺構造を車両後方からみた状態を模式的に表す図である。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
<基本構成例について>
はじめに、図1および図2を参照して、本発明の実施の形態に係るインホイールモータ駆動装置1の基本構成例について説明する。インホイールモータ駆動装置1は、電気自動車およびハイブリッド車両などの乗用自動車に搭載される。
図1は、本発明の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置1を所定の平面で切断し、展開して示す縦断面図である。図2は、インホイールモータ駆動装置1の減速部31の内部構造を示す横断面図であり、車幅方向外側からみた状態を模式的に表す。なお、図1で表される所定の平面は、図2に示す軸線Mおよび軸線Nを含む平面と、軸線Nおよび軸線Oを含む平面とを、この順序で接続した展開平面である。図1中、紙面左側は車幅方向外側(アウトボード側)を表し、紙面右側は車幅方向内側(インボード側)を表す。図2中、減速部31の内部の各歯車は歯先円で表され、個々の歯を図略する。
インホイールモータ駆動装置1は、車輪ホイールWの中心に設けられる車輪ハブ軸受部11と、車輪を駆動するモータ部21と、モータ部21の回転を減速して車輪ハブ軸受部11に伝達する減速部31とを備える。
モータ部21および減速部31は、車輪ハブ軸受部11の軸線Oからオフセットして配置される。軸線Oは車幅方向に延び、車軸に一致する。本実施の形態においては、軸線O方向一方側がアウトボード側であり、軸線O方向他方側がインボード側であるものとする。
軸線O方向位置に関し、車輪ハブ軸受部11はインホイールモータ駆動装置1の軸線方向一方に配置され、モータ部21はインホイールモータ駆動装置1の軸線方向他方に配置され、減速部31はモータ部21よりも軸線方向一方に配置され、減速部31の軸線方向位置が車輪ハブ軸受部11の軸線方向位置と重なる。
インホイールモータ駆動装置1は、電動車両の車輪を駆動する車両用モータ駆動装置である。インホイールモータ駆動装置1は、図示しない車体に連結される。インホイールモータ駆動装置1は、電動車両を時速0~180km/hで走行させることができる。
車輪ハブ軸受部11は、回転内輪・固定外輪とされ、車輪ホイールWと結合する回転輪(ハブ輪)としての内輪12と、内輪12の外径側に同軸に配置される固定輪としての外輪13と、内輪12と外輪13との間の環状空間に配置される複数の転動体14を有する。内輪12の回転中心は、車輪ハブ軸受部11の中心を通る軸線Oに一致する。
外輪13は、本体ケーシング39の正面部分39fを貫通するとともに、この正面部分39fに連結固定される。正面部分39fは、本体ケーシング39のうち減速部31の軸線O方向一方端を覆うケーシング壁部である。たとえば、外輪13の外周面には周方向で異なる位置に、外径方向に突出する複数の外輪突出部が立設され、各外輪突出部に設けられた貫通孔に対し、軸線O方向一方側からボルトが通される。各ボルトの軸部は、本体ケーシング39の正面部分39fに穿設される雌ねじ孔と螺合する。
外輪13には、キャリア部材61が連結固定される。外輪13の外周面には、周方向で異なる位置に、外径方向に突出する複数の外輪突出部13gが設けられている。キャリア部材61は、外輪突出部13gの軸線O方向他方側に位置し、軸線O方向一方側から、外輪突出部13gの貫通孔およびキャリア部材61の雌ねじ孔にボルト62が通される。キャリア部材61は、本体ケーシング39に対し、軸線O方向他方側から通されたボルト63によって固定されている。
内輪12は、外輪13よりも長い筒状体であり、外輪13の中心孔に通される。外輪13から外部(アウトボード側)へ突出する内輪12の軸線O方向一方端部には、結合部12fが形成される。結合部12fはフランジであり、ブレーキロータBDおよび車輪と同軸に結合するための結合部を構成する。内輪12は、結合部12fで車輪ホイールWと結合し、車輪と一体回転する。
内輪12および外輪13間の環状空間には、複数列の転動体14が配置される。内輪12の軸線O方向中央部の外周面は、第1列に配置される複数の転動体14の内側軌道面を構成する。内輪12の軸線O方向他方端部外周には内側軌道輪12rが嵌合する。内側軌道輪12rの外周面は、第2列に配置される複数の転動体14の内側軌道面を構成する。外輪13の軸線O方向一方端部の内周面は、第1列の転動体14の外側軌道面を構成する。外輪13の軸線O方向他方端部の内周面は、第2列の転動体14の外側軌道面を構成する。内輪12および外輪13間の環状空間には、シール材16がさらに介在する。シール材16は環状空間の両端を封止して、塵埃および異物の侵入を阻止する。内輪12の軸線O方向他方端の中心孔には減速部31の出力軸38が差し込まれてスプライン嵌合する。
モータ部21は、モータ回転軸22、ロータ23、およびステータ24を有し、この順序でモータ部21の軸線Mから外径側へ順次配置される。モータ部21は、インナロータ、アウタステータ形式のラジアルギャップモータであるが、他の形式であってもよい。例えば図示しなかったがモータ部21はアキシアルギャップモータであってもよい。
モータ部21はモータケーシング29に収容されている。モータケーシング29はステータ24の外周を包囲する。モータケーシング29の軸線M方向一方端は本体ケーシング39の背面部分39bと結合する。モータケーシング29の軸線M方向他方端は、板状のモータケーシングカバー29vで封止される。背面部分39bは、本体ケーシング39のうち減速部31の軸線M方向(軸線O方向)他方端を覆うケーシング壁部である。
本体ケーシング39、モータケーシング29、およびモータケーシングカバー(リヤカバー)29vは、インホイールモータ駆動装置1の外郭をなすケーシング10を構成する。
ステータ24は円筒形状のステータコア25と、該ステータコア25に巻回されたコイル26を含む。ステータコア25はリング状の鋼板を軸線M方向に積層してなる。
モータ回転軸22の両端部は、転がり軸受27,28を介して、本体ケーシング39の背面部分39bと、モータケーシングカバー29vに回転自在に支持される。モータ回転軸22およびロータ23の回転中心になる軸線Mは、車輪ハブ軸受部11の軸線Oと平行に延びる。つまりモータ部21は、車輪ハブ軸受部11の軸線Oから離れるようオフセットして配置される。例えば図2に示すようにモータ部21の軸線Mは、軸線Oから車両前後方向にオフセットして、具体的には軸線Oよりも車両前方に配置される。
減速部31は、モータ部21のモータ回転軸22と同軸に結合する入力軸32と、入力軸32の外周面に同軸に設けられる入力歯車33と、複数の中間歯車34,36と、これら中間歯車34,36の中心と結合する中間軸35と、車輪ハブ軸受部11の内輪12と同軸に結合する出力軸38と、出力軸38の外周面に同軸に設けられる出力歯車37とを有する。減速部31のこれら複数の歯車および回転軸は、本体ケーシング39に収容される。本体ケーシング39は減速部31の外郭をなすことから減速部ケーシングともいう。
入力歯車33は外歯のはすば歯車である。入力軸32は中空構造であり、入力軸32の中空部32hにモータ回転軸22の軸線方向一方端部が差し込まれる。これにより、モータ回転軸22は、入力軸32に相対回転不可能にスプライン嵌合(またはセレーション嵌合)する。入力軸32は入力歯車33の両端側で、転がり軸受32a,32bを介して、本体ケーシング39の正面部分39fおよび背面部分39bに回転自在に支持される。
減速部31の中間軸35の回転中心になる軸線Nは軸線Oと平行に延びる。中間軸35の両端は、軸受35a,35bを介して、本体ケーシング39の正面部分39fおよび背面部分39bに回転自在に支持される。中間軸35の中央部には、第1中間歯車34および第2中間歯車36が、中間軸35の軸線Nと同軸に設けられる。第1中間歯車34および第2中間歯車36は、外歯のはすば歯車であり、第1中間歯車34の径が第2中間歯車36の径よりも大きい。大径の第1中間歯車34は、第2中間歯車36よりも軸線N方向他方側に配置されて、小径の入力歯車33と噛合する。小径の第2中間歯車36は、第1中間歯車34よりも軸線N方向一方側に配置されて、大径の出力歯車37と噛合する。
中間軸35の軸線Nは、図1に示すように、軸線Oおよび軸線Mよりも上方に配置される。また中間軸35の軸線Nは、軸線Oよりも車両前方、軸線Mよりも車両後方に配置される。減速部31は、車両前後方向に間隔を空けて配置されて互いに平行に延びる軸線O,N,Mを有する3軸の平行軸歯車減速機である。
出力歯車37は外歯のはすば歯車であり、出力軸38の中央部に同軸に設けられる。出力軸38は軸線Oに沿って延びる。出力軸38の軸線O方向一方端部は、内輪12の中心孔に差し込まれて相対回転不可能に嵌合する。かかる嵌合は、スプライン嵌合あるいはセレーション嵌合である。出力軸38の軸線O方向中央部(一方端側)は、転がり軸受38aを介して、本体ケーシング39の正面部分39fに回転自在に支持される。出力軸38の軸線O方向他方端部(他方端側)は、転がり軸受38bを介して、本体ケーシング39の背面部分39bに回転自在に支持される。
転がり軸受38aは、出力歯車37よりもアウトボード側に位置し、転がり軸受38bは、出力歯車37よりもインボード側に位置している。各転がり軸受38a,38bは、出力軸38の外径面と本体ケーシング39に形成された円筒面との間に配置されている。具体的には、本体ケーシング39の正面部分39fに形成された円筒面に、転がり軸受38aの外輪が固定され、本体ケーシング39の背面部分39bに形成された円筒面に、転がり軸受38bの外輪が固定されている。
減速部31は、小径の駆動歯車と大径の従動歯車の噛合、即ち入力歯車33と第1中間歯車34の噛合、および、第2中間歯車36と出力歯車37の噛合により、入力軸32の回転を減速して出力軸38に伝達する。減速部31の入力軸32から出力軸38までの回転要素は、モータ部21の回転を内輪12に伝達する駆動伝達経路を構成する。入力軸32と、中間軸35と、出力軸38は、上述した転がり軸受によって両持ち支持される。これらの転がり軸受32a,35a,38a,32b,35b,38bはラジアル軸受である。
本体ケーシング39は、筒状部分と、当該筒状部分の両端を覆う板状の正面部分39fおよび背面部分39bを含む。筒状部分は、互いに平行に延びる軸線O、N、Mを取り囲むように減速部31の内部部品を覆う。板状の正面部分39fは、減速部31の内部部品を軸線方向一方側から覆う。板状の背面部分39bは、減速部31の内部部品を軸線方向他方側から覆う。図2に示されるように、本体ケーシング39の下部には、潤滑油が貯留されるオイルタンク40が設けられている。
本体ケーシング39の背面部分39bは、モータケーシング29と結合し、減速部31の内部空間およびモータ部21の内部空間を仕切る隔壁でもある。モータケーシング29は本体ケーシング39に支持されて、本体ケーシング39から軸線方向他方側へ突出する。
インホイールモータ駆動装置1の外部からモータ部21のステータ24に電力が供給されると、モータ部21のロータ23が回転し、モータ回転軸22から減速部31に回転を出力する。減速部31はモータ部21から入力軸32に入力された回転を減速し、出力軸38から車輪ハブ軸受部11へ出力する。車輪ハブ軸受部11の内輪12は、出力軸38と同じ回転数で回転し、内輪12に取付固定される図示しない車輪を駆動する。
<出力軸の回転支持構造について>
次に、本実施の形態に係るインホイールモータ駆動装置1の出力軸38の回転支持構造について説明する。
上述のように、出力軸38は、軸線方向位置が異なる2つの転がり軸受38a,38bによって両持ち支持されている。これにより、出力軸38が安定的に回転支持されるため、出力軸38と結合された車輪ハブ軸受部11の内輪12が、旋回荷重に伴う外力によって多少変位(変形)したとしても、出力軸38の変位(傾き)を極力抑制することができる。
ここで、本実施の形態では、図3および図4に示すように、出力軸38と同軸に設けられた出力歯車37として、はすば歯車が適用されている。図3には、出力歯車37を斜め上から見た状態が示され、図4には、出力歯車37と中間歯車36との噛合状態が模式的に示されている。
はすば歯車とは、歯スジがつるまき線状に形成された円筒歯車である。そのため、出力歯車37は、ねじれ角βおよび圧力角αを有している。なお、圧力角αは、歯面の一点(典型的にはピッチ点)において、その半径線と歯形への接線とのなす角度に相当する。このように、出力歯車37および中間歯車36がはすば歯車である場合、歯車噛合い部における歯当たりが良くなるため、(理想的には)高い静寂性を得ることができる。
その一方で、車両の走行時、すなわち車輪駆動時には、出力歯車37の噛合い部(中間歯車36との噛合い部)において、はすば歯車に特有のアキシアル荷重が生じる。そのため、出力歯車37の噛合い部に作用するアキシアル荷重の影響によって、出力歯車37が傾く可能性がある。
このことについて、図5~図8を参照して説明する。図5は、正転駆動時、逆転駆動時のそれぞれにおける、出力歯車37および中間歯車36の回転方向を示す図である。図6は、車輪駆動時に出力歯車37に生じるアキシアル荷重を概念的に示す図である。図7は、車輪駆動時に出力歯車37に生じるラジアル荷重を概念的に示す図である。図8は、アキシアル荷重とラジアル荷重との合力の向きを概念的に示す図である。なお、図5および図7には、歯車36,37をアウトボード側から見た状態が示されており、図6には、図5に示す歯車36,37を上から見た状態が示されている。図8には、図1の縦断面図の一部が拡大して示されている。
図6~図8を参照して、出力歯車37の噛合い部71には、ラジアル荷重Frとアキシアル荷重Faとが生じる。そのため、出力歯車37の噛合い部71に掛かる荷重は、アキシアル荷重Faとラジアル荷重Frとの合力Rとして表される。合力Rが向かう方向は、出力歯車37の噛合い部71の軸線方向一方端から他方端まで同じ向きである。図8に示されるように、軸線OおよびNを通り、かつ軸線OおよびNに平行な切断面において、合力Rのラジアル方向に対する傾斜角度θは、アキシアル荷重Faとラジアル荷重Frとの比により定まる。
アキシアル荷重Faは、図6に示されるように、接線力Ftと出力歯車37のねじれ角βとにより求められる。すなわち、アキシアル荷重Faは次の式(1)で表される。なお、図6には、円周方向荷重の向きが矢印fで示されている。
Fa=Ft×tanβ ・・・(1)
ラジアル荷重Frは、図7に示されるように、接線力Ftと出力歯車37の圧力角αとにより求められる。すなわち、ラジアル荷重Frは次の式(2)で表される。なお、図7には、出力歯車37の歯面と中間歯車36の歯面との共通法線が二点鎖線で示されている。
Fr=Ft×(tanα/cosβ) ・・・(2)
したがって、ラジアル方向に対する合力Rの傾斜角度(以下「合力角度」ともいう)θは、次の式(3)で表される。
θ=atan{tanβ/(tanα/cosβ)} ・・・(3)
本実施の形態において出力歯車37の圧力角αは、たとえば20度である。この場合、出力歯車37のねじれ角βがたとえば30度であるとすると、合力角度θは56.3度である。圧力角αを一例として20度とした場合におけるねじれ角αと合力角度θとの関係が、図12のグラフに示されている。
本実施の形態における出力歯車37の歯スジのねじれ方向はいわゆる右ねじれ方向であり、出力歯車37の歯先37aは、図3に示されるように、インボード側(軸線方向他方側)がアウトボード側(軸線方向一方側)よりも車両前方となるように傾斜している。そのため、本実施の形態において、正転駆動時に出力歯車37の噛合い部に生じるアキシアル荷重Faの向きは、図6に示されるようにアウトボード側である。この場合、正転駆動時に出力歯車37の噛合い部71には、ラジアル方向に対してアウトボード側に角度θ分傾斜した方向に、合力Rが作用する。正転駆動時における接線力Ftの向きは、車両前方側である。
なお、逆転駆動時には、図10および図11に示されるように、接線力Ftの向きが逆向き(車両後方側)となるため、逆転駆動時に出力歯車37の噛合い部71に生じるアキシアル荷重Faの向きはインボード側である。
このように、出力歯車37がはすば歯車の場合、中間歯車36との噛合い部71には、図8に示されるように、ラジアル方向に対して角度θだけ傾いた方向に合力Rが作用する。これにより、出力歯車37に曲げモーメントが加わるため、出力歯車37が傾くおそれがある。
そこで、本実施の形態では、出力軸38を回転自在に支持する2つの転がり軸受38a,38bの少なくとも一方の配置位置を調整することにより、出力歯車37に加わる曲げモーメントを低減している。
<転がり軸受の配置位置について>
上述のように、出力歯車37の噛合い部71には、正転駆動時にアウトボード側を向くアキシアル荷重Faが掛かる。そのため、本実施の形態では、出力歯車37よりもアウトボード側に位置する転がり軸受38aの配置位置を調整することとしている。
具体的には、本実施の形態では、転がり軸受38aが、出力歯車37の噛合い部71に掛かる合力Rを受ける範囲内に配置されている。これにより、アキシアル成分を含む荷重(合力R)を転がり軸受38aによって支持することが可能となる。
転がり軸受が合力Rを受ける(受け得る)範囲は、出力歯車37の噛合い部71の軸線方向一方端から他方端に掛かるアキシアル荷重Faとラジアル荷重Frとの合力Rが向かう方向の領域に相当する。図9には、合力Rが向かう方向の領域72が概念的に示されている。すなわち、転がり軸受38aは、出力歯車37の噛合い部71の軸線方向一方端から他方端に掛かるアキシアル荷重Faとラジアル荷重Frとの合力Rが向かう方向の領域72内に配置されている。
領域72は、出力歯車37の噛合い部71の軸線O方向一方端71aからラジアル方向に対して角度θの傾斜角度で延びる第1直線L1と、出力歯車37の噛合い部71の軸線O方向他方端71bからラジアル方向に対して角度θの傾斜角度で延びる第2直線L2とで挟まれている。図9では、理解を容易にするために、領域72にドットを付している。
本実施の形態では、この領域72内に、転がり軸受38aの転動体73が配置されている。この領域72の軸線O方向幅は、出力歯車37の歯幅に相当する。そのため、出力歯車37が中間歯車36から受ける荷重方向(合力Rの方向)に見て、出力歯車37の噛合い部71と転がり軸受38aの転動体73とが重なる。
本実施の形態ではたとえば、転がり軸受38aは、図8に示されるように、出力歯車37の軸線O方向一方端面に立設された環状凸部37bの外周面と、本体ケーシング39の正面部分39fに形成された円筒面との間に配置されている。正面部分39fの円筒面は、正面部分39fの内壁面に立設された環状凸部39iの内周面により構成される。このように、転がり軸受38aは、出力軸38を回転支持できるように配置されていればよく、出力軸38の外周面を直接支持する構成でなくてもよい。なお、この実施形態の場合、出力歯車37の環状凸部37bの内径側の空間に、車輪ハブ軸受部11の内輪12および外輪13の軸線O方向他方端部が収容されていてもよい。
比較例を図13に示す。比較例では、第1直線L1と第2直線L2とで挟まれた領域72に、アウトボード側の転がり軸受138aの転動体173が含まれておらず、領域72よりもインボード側にずれた(オフセットした)位置に転動体173が配置されている。つまり、転がり軸受138aの転動体173は、合力Rが向かう方向の領域72内に配置されていない。転がり軸受138aは、出力歯車37の軸線O方向一方端面に形成された環状凹部内に配置されている。
図13に示す距離Dは、互いに平行な第2直線L2と直線L3との最短距離であり、領域72からのオフセット量に相当する。直線L3は、転動体173のインボード側の接線であり、第2直線が直線L3の位置にある場合には、転動体173は合力Rが向かう方向の領域72内に配置されることになる。
これに対し、本実施の形態では、合力Rが向かう方向の領域、すなわち第1直線L1と第2直線L2とで挟まれた領域72内に、転がり軸受38aの転動体73が含まれるように、出力歯車37のねじれ角βおよび圧力角αと、荷重方向(合力Rの方向)に見た出力歯車37の噛合い面に対する転動体73の相対位置とが決定されている。この場合、歯車荷重(合力R)と軸受支持とのオフセット量(モーメントアーム長)が上記比較例よりも短くなるため、出力歯車37に発生する曲げモーメントを低減させることができる。したがって、本実施の形態によれば、出力歯車37の弾性変形を抑制することができる。
以上説明したように、アウトボード側の転がり軸受38aの転動体73を、正転駆動時に、出力歯車37の噛合い部71に掛かるアキシアル荷重Faとラジアル荷重Frとの合力Rが向かう方向の領域72内に配置することで、正転駆動時における出力歯車37の傾きを抑制することができる。
正転駆動は、逆転駆動よりも使用頻度が圧倒的に高いため、正転駆動時に出力歯車37の傾きを抑制することにより、車両の走行時における歯車噛合い部の振動を抑制できるため、振動に伴う騒音の発生を防止または抑制することが可能となる。
また、出力歯車37の傾きが抑制されるため、出力歯車37の歯面の摩耗を効果的に防止または抑制することができる。その結果、出力歯車37の歯面の耐久性を向上させることができる。また、出力歯車37のモーメント荷重を抑制できるため、出力歯車37を軽量化することも可能となる。
さらに、出力軸38の回転支持と出力歯車37の傾き抑制とを、共通の転がり軸受38aによって実現しているため、部品点数の増加および重量化を避けることができる。
なお、図9に示されるように、転がり軸受38aの対象となる転動体73の全体が、合力Rが向かう方向の領域72に含まれることが望ましいものの、図9において想像線で示す転動体74,75のように、転動体の一部のみが、合力Rが向かう方向の領域72に含まれていてもよい。つまり、転がり軸受38aの転動体の少なくとも一部が、合力Rが向かう方向の領域72内に配置されていればよい。
(変形例)
上記実施の形態では、出力歯車37の歯スジが右方向にねじれていることとしたが、出力歯車の歯スジは左方向にねじれていてもよい。つまり、出力歯車の歯先は、アウトボード側(軸線方向一方側)がインボード側(軸線方向他方側)よりも車両前方となるように傾斜していてもよい。この場合、正転駆動時に出力歯車の噛合い部に生じるアキシアル荷重の向きはインボード側となるため、上記実施の形態とは逆に、インボード側の転がり軸受38bの転動体の少なくとも一部が、合力Rが向かう方向の領域72内に配置されていることが望ましい。
このように、車輪の駆動時(典型的には正転駆動時)において、出力歯車の噛合い部に生じるアキシアル荷重の向きを「軸線方向一方側」とした場合、出力歯車よりも軸線方向一方側の位置する転がり軸受の転動体の少なくとも一部が、合力Rが向かう方向の領域72内に配置されていればよい。
<減速部の詳細な構成例について>
以上説明したような3軸の平行軸式歯車減速機により構成される減速部の詳細な構成例を、図14、図15A~図15C、および図16A~図16Cに示す。図14は、図1に対応する図であり、本発明の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置1Aを所定の平面で切断し、展開して示す縦断面図である。図15A~図15Cは、インホイールモータ駆動装置1Aの減速部31Aの内部構造を示す図であり、アウトボード側からみた状態を模式的に表す。図16A~図16Cは、インホイールモータ駆動装置1Aの減速部31Aの内部構造を示す図であり、インボード側からみた状態を模式的に表す。
なお、これらの図に示されるように、ケーシング10は、モータケーシング29の全体および本体ケーシング39の背面部分39bを含む第1ケース部10Aと、本体ケーシング39の正面部分39fを含む第2ケース部10Bとが軸方向に結合されて形成されており、本体ケーシング39の筒状部分は、軸方向において第1ケース部10Aと第2ケース部10Bとに分割されている。図15A~図15Cには、第1ケース部10Aをアウトボード側から見た状態が示され、図16A~図15Cには、第2ケース部10Bをインボード側から見た状態が示されている。図15Aおよび図16Aは正面図であり、図15Bおよび図16Bは車両後方側から見た斜視図であり、図15Cおよび図16Cは車両前方側から見た斜視図である。
図14に示すインホイールモータ駆動装置1Aの基本構成自体は、図1および図2に示したインホイールモータ駆動装置1と同様である。なお、車輪ホイールWの内空領域に配置されるインホイールモータ駆動装置1Aは、図28に示されるように、サスペンション装置100を介して車体(図示せず)に連結されている。サスペンション装置100は、たとえばストラット式サスペンション装置であり、車幅方向に延びるロアアーム101と、ロアアーム101よりも上方に配置されて上下方向に延びるダンパー102とを含む。
インホイールモータ駆動装置1Aの減速部31Aも、上記と同様に、入力軸32と、中間軸35と、出力軸38と、入力軸32に設けられた入力歯車33と、中間軸35に設けられた中間歯車34,36と、出力軸38に設けられた出力歯車37と、これらの軸32,35,38を支持する転がり軸受32a,35a,38a,32b,35b,38bとを含む。以下の説明において、軸線M,N,Oに沿う方向を「軸方向」という。
減速部31Aを構成する歯車および歯車軸に関する特徴、歯車周辺部品に関する特徴、歯車の配置に関する特徴、および、ケーシング10に関する特徴について、図17~図27を参照しながら具体的に説明する。
図17~図24は、減速部31Aの歯車33,34,36,37および歯車軸32,35,38により構成される歯車アセンブリを模式的に示す図である。図17は、図15Aに対応し、歯車アセンブリをアウトボード側から見た図である。図18は、図16Aに対応し、歯車アセンブリをインボード側から見た図である。図19は、歯車アセンブリを車両後方から見た図であり、図18のXIX方向から見た図に相当する。図20は、歯車アセンブリを車両前方から見た図であり、図18のXX方向から見た図に相当する。図21は、歯車アセンブリを車両上方から見た図であり、図18のXXI方向から見た図に相当する。図22は、歯車アセンブリを車両下方から見た図であり、図18のXXII方向から見た図に相当する。図23は、図15Cに対応し、歯車アセンブリをアウトボード側かつ車両前方から見た斜視図である。図24は、図16Cに対応し、歯車アセンブリをインボード側かつ車両前方から見た斜視図である。
図25および図26は、減速部31Aの一部を拡大して示す展開断面図であり、図14の一部分に相当する。なお、図25は、入力軸32および中間軸35を含む部分の拡大図であり、図26は、出力軸38を含む部分の拡大図である。図27は、車両静止時と加速時における油面の位置を模式的に示す図であり、(A)に静止時の状態、(B)に加速時の状態が表されている。
・歯車および歯車軸に関する特徴
以下の(1)~(10)において、歯車33,34,36,37および歯車軸32,35,38に関する特徴を、具体的に説明する。
(1)歯車のねじれ方向
インホイールモータ駆動装置1Aは、車両の左右両側の車輪(左輪および右輪)に搭載される。減速部31Aに含まれる各歯車のねじれ方向は、左輪と右輪とで左右対称であることが望ましい。これにより、左輪および右輪それぞれにおいて、各歯車の噛合い部に同じ側(アウトボード側またはインボード側)にアキシアル荷重が掛かるため、左右対称の荷重条件となる。したがって、インホイールモータ駆動装置1Aをコンパクトにできる。
たとえば、左輪の各歯車のねじれ方向が、入力歯車33が左、中間歯車34が右、中間歯車36が右、出力歯車37が左である場合、右輪の各歯車のねじれ方向は、入力歯車33が右、中間歯車34が左、中間歯車36が左、出力歯車37が右である。
(2)歯車のモジュール
図17を参照して、減速部31Aを構成する歯車33,34,36,37のモジュールは、1段目よりも2段目の方が大きい。すなわち、1段目を構成する入力歯車33および大径の中間歯車34のモジュールよりも、2段目を構成する小径の中間歯車36および大径の出力歯車37のモジュールの方が大きい。モジュールとは、歯車のピッチ円径を歯車の数で除算した数値であり、おおむね歯の大きさを表す。
2段目の方が1段目よりトルクが大きいため、2段目を構成する歯車36,37の強度を上げる必要がある。歯車の強度(歯面、曲げ強度)は基準ピッチ円径で決まる。強度を上げるために歯車を大径にすると、歯数が増えて振動周波数が高周波になる。そこで、2段目の歯車36,37のモジュールを1段目の歯車33,34よりも大きくして歯数を減らすことで、振動周波数を低周波にできる。これにより、耳障りな高周波の振動を抑制できる。
たとえば、2段目の歯車36,37のモジュールは、1段目の歯車33,34のモジュールの1.5倍以上2.0倍未満である。一例として、1段目の中間歯車34のモジュールが1.75に設定され、2段目の出力歯車37のモジュールが2.73に設定される。
(3)各軸における歯車の歯数
図15Aおよび図16Aを参照して、減速部31Aを構成する各歯車軸において、歯車軸と同軸に設けられた歯車の歯数よりも、歯車軸の両端を支持する転がり軸受の鋼球数の方が少ない。具体的には、1軸としての入力軸32に関しては、アウトボード側の転がり軸受32aの転動体の個数(たとえば9個)、および、インボード側の転がり軸受32bの転動体の個数(たとえば9個)は、入力歯車33の歯数(たとえば17枚)よりも少ない。2軸としての中間軸35に関しては、アウトボード側の転がり軸受35aの転動体の個数(たとえば8個)、および、インボード側の転がり軸受35bの転動体の個数(たとえば18個)は、小径の中間歯車36の歯数(たとえば19枚)および大径の中間歯車34の歯数(たとえば76枚)のいずれよりも少ない。
3軸としての出力軸38に関しては、アウトボード側の転がり軸受38aの転動体の個数(たとえば26個)、および、インボード側の転がり軸受38bの転動体の個数(たとえば7個)は、出力歯車37の歯数(たとえば47枚)よりも少ない。
このように、歯車軸ごとに、歯車の歯数よりも支持軸受の鋼球数を少なくして、強制振動成分の次数を離すことで、駆動時の振動を低減できる。
(4)1軸歯車の歯先径
入力軸32と同軸に設けられた入力歯車33の歯先径が、入力軸32の支持軸受32a,32bの外輪内径より小さい。本実施の形態において、転がり軸受32a,32bは、同一の構造および大きさである。
具体的には、図25を参照して、入力歯車33の歯先径(最大外径)D1は、転がり軸受32a,32bの外輪の(最小)内径寸法D2よりも小さい。すなわち、転がり軸受32a,32bの外輪全体が入力歯車33の歯先より径方向外側に位置する。そのため、図15Aに示されるように減速部31Aをアウトボード側から見た場合、入力歯車33は転がり軸受32aによって隠れた状態となっている。同様に、図16Aに示されるように減速部31Aをインボード側から見た場合においても、入力歯車33は転がり軸受32bによって隠れた状態となっている。
入力歯車33の歯先径をこのように小さくすることで、転がり軸受32a,32bの転動体に潤滑油が供給されやすくなるため、転がり軸受32a,32bの潤滑不良を防ぐことができる。
(5)1軸のスプライン嵌合部
図25を参照して、入力軸32とモータ回転軸22とがスプライン嵌合する部分であるスプライン嵌合部81の軸方向位置は、入力歯車33の歯の軸方向位置と重なっている。具体的には、スプライン嵌合部81の軸方向位置は、入力歯車33の歯の軸方向位置と略一致しており、入力軸32とモータ回転軸22の突出部22eとは、入力歯車33の歯幅D3の範囲内で嵌合している。
減速部31Aにおいては、入力歯車33の歯幅D3は、図1に示す形態よりも大きく、入力軸32の転がり軸受32a,32b間の距離(軸方向間隔)と略等しい(それよりも若干小さい)。この場合、モータ回転軸22の突出部22eの先端位置が、入力歯車33とアウトボード側の転がり軸受32aとの境界位置付近に位置する。
これにより、スプライン嵌合部81の荷重点が、軸方向において両軸受32a,32bの中央位置L14付近になるため、入力軸32が傾きにくい。入力軸32の傾きを小さくすることで、入力歯車33のミスアライメントを減らせるため、駆動時の振動を低減することができる。
(6)2軸の中空構造
図25を参照して、中間軸35が中空構造である。つまり、中間軸35は、軸方向に貫通する中空穴86を有している。これにより、中空穴86を潤滑油の通路にできる。具体的には、中空穴86を通ってインボード側からアウトボード側に潤滑油を流すことができる。したがって、ブレーキディスクに近く高温になりやすいアウトボード側の転がり軸受35aを冷却できる。
(7)2軸の肉抜き構造
図25を参照して、中間軸35のインボード側端面には凹部(肉抜き)87が設けられている。図18および図24に示されるように、インボード側から見て凹部87は、中空穴86の周りに軸線Nを中心として円環状に形成されている。凹部87は、中心(軸線N側)に近づくにつれてケーシング10の背面部分39bから離れるようにテーパ形状とされている。
これにより、凹部87を設けない形態に比べて、中間軸35を軽量化できる。その結果、インホイールモータ駆動装置1Aの軽量化を図ることができるため、ばね下重量を減らし、乗心地の悪化を防止することができる。
また、凹部87をテーパ形状とすることで、潤滑油を効果的に回収できる。回収した潤滑油は、中空穴86を通ってアウトボード側の転がり軸受35aへと導かれる。
(8)2軸と2つの中間歯車との連結構造
中間軸35には、大径の中間歯車34と小径の中間歯車36とが同軸に連結されている。図25に示されるように、大径の中間歯車34は、中間軸35と一体形成されているのに対し、小径の中間歯車36は中間軸35とは別体であり、中間軸35にスプライン嵌合(圧入)されている。
このように、中間歯車34,36のうちの一方を中間軸35にスプライン嵌合させることにより、中間歯車34,36を個別に加工できるため、中間歯車34,36の加工が容易になる。したがって、インホイールモータ駆動装置1Aの製造コストを低減できる。
(9)3軸(歯車)の肉抜き構造
図26を参照して、出力軸38と一体形成された出力歯車37のインボード側端面に、凹部(肉抜き)88が設けられている。図18および図24に示されるように、インボード側から見て凹部89は、出力軸38の周りに軸線Oを中心として円環状に形成されている。
これにより、凹部88の位置において出力歯車37と他部品(中間歯車34およびケーシング10)との空間が広くなる。そのため、潤滑油が凹部88に入り込みやすくなるので、減速部31Aの軸方向寸法短縮のために部品間のすきまを詰めても潤滑性能を確保できる。
また、凹部88を設けない形態に比べて、出力歯車37を軽量化できる。その結果、インホイールモータ駆動装置1Aの軽量化を図ることができるため、ばね下重量を減らし、乗心地の悪化を防止することができる。
(10)3軸とポンプ軸との一体構造
図26を参照して、出力軸38のインボード側端部にオイルポンプ42が取り付けられる。つまり、オイルポンプ42が取り付けられるポンプ軸43が、出力軸38と一体成型されている。ポンプ軸43は、インボード側の転がり軸受38bよりもさらにインボード側に位置する。このように、ポンプ軸43を出力軸38と一体とすることで、部品点数を削減できるため、インホイールモータ駆動装置1Aの製造コストを低減できる。
また、ポンプ軸43を出力軸38と一体成型することで、加工時に、両軸の同軸度が出やすくなるため、オイルポンプ42の回転損失を減らしてポンプ効率を上げることができる。これにより、オイルポンプ42の吐出量を確保できるため、オイルポンプ42をコンパクトにできる。
なお、オイルポンプ42は、たとえば、アウタロータおよびインナロータを有するトロコイドポンプである。図15A~図15Cを参照して、オイルポンプ42は、吸入油路41を介してオイルタンク40から潤滑油を吸入し、吸入した潤滑油を吐出油路(図示せず)に吐出する。吐出油路は、モータケーシングカバー29vの壁厚内に形成された昇り油路(図示せず)を含む。なお、モーケーシングカバー29vは、第1ケース部10Aのインボード側に位置し、第1ケース部10Aと軸方向に連結される第3ケース部を構成している。
昇り油路は、上下方向に延び、上端において給油管44の一端に接続されている。給油管44は、ケーシング10の上部において、背面部分39bを貫通して軸方向に延びている。つまり、給油管44は、モータ室20内に配置される部分と、減速室30内に配置される部分とを有しており、給油管44の他端は、減速室30内に配置される。なお、モータ室20は、モータケーシング29内の空間であり、背面部分39bよりもインボード側に位置する。減速室30は、本体ケーシング39内の空間であり、背面部分39bよりもアウトボード側に位置する。
給油管44には、モータ室20側および減速室30側の双方において、潤滑油を吐出するための貫通孔(以下「オイル孔」という)が設けられている。これにより、給油管44を流れる潤滑油は、各室において、オイル孔から径方向に吐出される。なお、給油管44は、1本の管状部材により構成されていてもよいし、複数本の管状部材により構成されていてもよい。
・歯車周辺部品に関する特徴
以下の(11)~(14)において、歯車33,34,36,37の周辺部品に関する特徴を、具体的に説明する。
(11)給油部材
図25を参照して、入力軸32のアウトボード側に、給油部材65が設けられている。給油部材65は、軸線Mを中心として円環状に形成された皿状部材によって構成されている。給油部材65は、入力軸32のアウトボード側端面に対面して径方向に延在する円環状の底面部65aと、底面部65aの内径端縁からモータ回転軸22側(インボード側)に向かって軸方向に延びる内側円筒部65bと、底面部65aの外径端縁から転がり軸受32a側(インボード側)に向かって軸方向に延びる外側円筒部65cとを含む。
内側円筒部65bは、入力軸32とモータ回転軸22との嵌合位置(スプライン嵌合部81)よりも内径側に配置されている。外側円筒部65cは、転がり軸受32aの内輪よりも外径側に配置されている。内側円筒部65bは外側円筒部65cよりも軸方向に長く、内側円筒部65bのインボード側端部は入力軸32の中空穴32h内に位置している。外側円筒部65cは、転がり軸受32aの外輪との間に隙間を有して配置される。
給油部材65は、本体ケーシング39(第2ケース部10B)の正面部分39fの内側端面に形成された凹部に嵌め入れられている。このように、入力軸32のアウトボード側に給油部材65を設けることで、ブレーキディスクの熱を受けて高温になりやすいアウトボード側の転がり軸受32aを効果的に冷却できる。また、スプライン嵌合部81に潤滑油を供給できるため、入力軸32およびモータ回転軸22のスプライン部の摩耗を減らすことができる。
(12)給油管
入力軸32の上方に、潤滑油を滴下する給油管44が配されている。図15A~図15Cを参照して、減速室30において給油管44は、大径の中間歯車34よりも車両前方、かつ、入力歯車33よりも上方に配置されている。これにより、給油管44を介して上方から(外径側から)入力歯車33に潤滑油が供給されるため、高速回転する入力歯車33の歯面の焼き付きを防止できる。したがって、減速部31Aの故障を防ぐことができる。
(13)Oリング
図26を参照して、出力軸38のスプライン部82の手前(インボード側)にOリング66が設けられている。スプライン部82は、出力軸38のアウトボード側端部の外周面に設けられており、車輪ハブ軸受部11の内輪12(回転輪)と嵌合するスプライン溝を有している。
出力軸38と内輪12とはルーズ嵌合であり、スプライン嵌合部83にグリースが封入されている。Oリング66が、出力軸38と内輪12とのスプライン嵌合部83よりもインボード側に配置されて、出力軸38と内輪12との環状隙間を封止することにより、スプライン嵌合部83にグリースを留めておくことができる。つまり、スプライン嵌合部83からグリースが減速室30に流出することを防止できる。したがって、出力軸38のスプライン部82および内輪12のスプライン部の摩耗を防止することができる。
(14)スペーサ
各歯車軸のインボード側にスペーサが設けられている。具体的には、図25および図26を参照して、入力軸32のインボード側にスペーサ67が設けられている。中間軸35のインボード側にスペーサ68が設けられている。出力軸38のインボード側にスペーサ69が設けられている。スペーサ67~69は、各軸線を中心として径方向に延在する環状の円板部材により形成されている。
スペーサ67は、入力軸32のインボード側端部を支持する転がり軸受32bの外輪と本体ケーシング39の背面部分39bとの間に配置される。スペーサ68は、中間軸35のインボード側端部を支持する転がり軸受35bの外輪と本体ケーシング39の背面部分39bとの間に配置される。スペーサ69は、出力軸38のインボード側端部を支持する転がり軸受38bの外輪と本体ケーシング39の背面部分39bとの間に配置される。
つまり、スペーサ67~69は、転がり軸受32b,35b,38bの外輪のインボード側端面にそれぞれ接触するように、転がり軸受32b,35b,38bの外輪と、背面部分39bに形成された軸受嵌合部32c,35c,38cのアウトボード側端面との間に設けられている。
これにより、歯車軸ごとに、部品間の軸方向隙間を埋める(ガタを詰める)ことができるため、駆動時の振動を低減できる。また、スペーサ67~69の厚みを調整することで、軸方向隙間の違いを吸収できる。この場合、減速部31Aの構成部品に求められる精度を低く設定することが可能となるため、減速部31Aの製造コストを低減することもできる。
また、インホイールモータ駆動装置1Aの組立時には、第1ケース部10Aの(第2ケース部10Bとの)合わせ面91(図15A~図15C)を上にした状態で、第1ケース部10A内に上方から減速部31Aの部品を組み付ける。そのため、第1ケース部10Aの背面部分39bに形成された軸受嵌合部32c,35c,38cに、上方からスペーサ67~69を寝かせた状態で挿入することができるため、スペーサ67~69がずれ難く、組立性が良い。
・歯車、歯車軸、および軸受の配置に関する特徴
以下の(15)~(18)において、歯車33,34,36,37、歯車軸32,35,38、および、歯車軸を支持する転がり軸受の配置に関する特徴を、具体的に説明する。
(15)1軸のアウトボード側軸受の位置
図25を参照して、入力軸32のアウトボード側の転がり軸受32aは、他の軸35,38のアウトボード側の転がり軸受35a,38aよりもインボード寄りである。具体的には、入力軸32の転がり軸受32aの軸方向位置L11が、中間軸35の転がり軸受35aの軸方向位置L12、および、出力軸38の転がり軸受38aの軸方向位置L13よりもインボード側である。図示される例では、入力軸32の転がり軸受32aの軸方向位置L11は、中間歯車36と出力歯車37との噛合い部の軸方向範囲に含まれている。
そのため、入力軸32の転がり軸受32a,32b間の軸方向間隔が、中間軸35の転がり軸受35a,35b間の軸方向間隔、および、出力軸38の転がり軸受38a,38b間の軸方向間隔よりも小さい。これにより、入力軸32において、インボード側の転がり軸受32bで受ける荷重をアウトボード側の転がり軸受32aに分担させることができる。そのため、インボード側の転がり軸受32bのサイズ(幅寸法)を比較的小さくできる。また、その結果、入力軸32と嵌合するモータ回転軸22の突出部22eの突出量を抑えることができる。
さらに、入力軸32の転がり軸受32aを、他のアウトボード側の転がり軸受35a,38aよりもブレーキディスクから遠ざけることができるため、高速回転する転がり軸受32aを、熱の影響を受け難くすることができる。これにより、転がり軸受32aの硬度低下による転走面の剥離を防止できるため、駆動時に異音や振動が発生することを防止できる。
(16)1軸の上下方向位置
図15Aを参照して、入力軸32が車軸よりも上方に位置している。つまり、入力軸32の軸線Mが、出力軸38の軸線Oよりも上方に位置している。図15Aでは、軸線Oの上下方向位置(高さ)が一点鎖線L21で示されている。
このように、入力軸32を軸線Oよりも高い位置に配置して、オイルタンク40に貯留される潤滑油の油面から入力軸32を遠ざけることで、高速回転する入力軸32の攪拌抵抗を減らすことができる。これにより、インホイールモータ駆動装置1Aの効率を向上できる。
(17)1軸の支持軸受と2軸大径歯車
図14、図15A、および図16Aを参照して、入力軸32のアウトボード側の転がり軸受32aおよびインボード側の転がり軸受32bが、軸方向に見て、大径の中間歯車34と重なる。これにより、減速部31Aの体格を径方向にコンパクトにできる。その結果、インホイールモータ駆動装置1Aをコンパクトにできる。
(18)3軸のインボード側軸受と2軸大径歯車
図14および図16Aを参照して、出力軸38のインボード側の転がり軸受38bが、軸方向に見て(インボード側から見て)、大径の中間歯車34と重なる。これにより、(17)と同様に、減速部31A、および、減速部31Aを備えるインホイールモータ駆動装置1Aをコンパクトにできる。
・ケーシングに関する特徴
以下の(19)~(21)において、減速部31Aを収容するケーシング10(第1ケース部10Aおよび第2ケース部10B)に関する特徴を、具体的に説明する。
(19)2軸インボード側の軸受嵌合部
図25を参照して、中間軸35のインボード側の転がり軸受35bの軸受嵌合部35cは、肉厚となっている。つまり、軸受嵌合部35cを構成する円筒部の径方向の厚みが比較的大きい。これにより、軸受嵌合部35cの強度および剛性を向上できるため、中間軸35の傾きを抑制することができる。したがって、中間軸35と同軸に設けられた中間歯車34,36のミスアライメントを減らし、中間歯車34,36それぞれの噛合い部の振動を抑えることができる。
(20)ケーシングの筒状部の形状
図15Aおよび図16Aを参照して、ケーシング10(本体ケーシング39)の筒状部(外郭部)のうちの車両後方側に位置する壁部は、大径の中間歯車34および出力歯車37の歯面(外周面)に近接し、かつ、これらの歯車34,38の共通接線に沿った形状となっている。
具体的には、図15Aに示されるように、第1ケース部10Aの筒状部における車両後方側の壁部84の形状が、大径の中間歯車34と出力歯車37との共通接線L22に沿った形状となっている。同様に、図16Aに示されるように、第2ケース部10Bの筒状部における車両後方側の壁部85の形状が、大径の中間歯車34と出力歯車37との共通接線L23に沿った形状となっている。なお、少なくとも、第1ケース部10Aの壁部84が共通接線L22に沿った形状となっていればよい。つまり、少なくとも第1ケース部10Aにおける壁部84は、大径の中間歯車34および出力歯車37の外周面に沿った湾曲形状となっていない。
これにより、第1ケース部10Aの壁部84が潤滑油の案内面となり、出力歯車37によって跳ね上げられる潤滑油を、壁部84を伝って中間歯車34に効率的に供給することができる。
(21)第1ケース部と第2ケース部との合わせ面
図14に示されるように、第1ケース部10Aの筒状部と第2ケース部10Bの筒状部とは、それぞれの合わせ面91,92において軸方向に突き合わされて、ボルト64によって互いに固定されている。第1ケース部10Aの合わせ面91は、筒状部のアウトボード側端面に相当し、第2ケース部10Bの合わせ面92は、筒状部のインボード側端面に相当する。
第1ケース部10Aと第2ケース部10Bとの合わせ面91,92の位置L10は、大径の中間歯車34と小径の中間歯車36との境界位置付近である。たとえば、大径の中間歯車34の全体が、合わせ面の位置L10よりもインボード側に位置している。小径の中間歯車36と噛合する大径の出力歯車37の全体が、合わせ面の位置L10よりもアウトボード側に位置している。
これにより、第1ケース部10Aの筒状部の径方向の大きさを、大径の中間歯車34の外径に合わせることができ、第2ケース部10Bの筒状部の径方向の大きさを、大径の出力歯車37の外径に合わせることができる。したがって、各ケース部10A,10Bの外郭形状をコンパクトにできる。また、その結果、減速部31Aの内部部品と各ケース部10A,10Bの壁部(内壁面)とが近くなるため、内部部品の潤滑性能が向上する。
(22)オイルタンク
図15Aおよび図16A等に示されるように、本体ケーシング39(第1ケース部10Aおよび第2ケース部10B)の下部に形成されたオイルタンク40は、車軸(軸線O)よりも車両前方に配置されている。オイルタンク40は、出力歯車37の下端位置よりも下方に突出させた突出部分により構成されており、入力軸32の下方に位置している。
オイルタンク40に貯められる潤滑油の油面の位置については図27を参照して説明する。図27(A)は、車両静止時の油面の位置を模式的に示す図であり、図27(B)は、車両加速時の油面の位置を模試的に示す図である。車両静止時の油面の位置が一点鎖線L31で表され、車両加速時の油面の位置が一点鎖線L32で表されている。図27(A),(B)は、図15Aに相当する図である。
図27(A)に示されるように、車両静止時の油面の位置は、出力歯車37の下端位置よりも下方である。これに対し、図27(B)に示されるように、車両加速時には、インホイールモータ駆動装置1Aが車両後方側に傾くため、油面が後方に傾く。より具体的には、静止時に軸線Oを通る鉛直線LOは、加速時に、軸線Oを通る鉛直線LO´よりも後方へ傾く。そのため、加速時の油面の位置は、出力歯車37の下端位置よりも上方となる。つまり、加速時以外は、出力歯車37は潤滑油に浸かり難い構造となっている。
したがって、必要な時(加速時)にだけ出力歯車37に潤滑油を供給することができるため、出力歯車37の回転抵抗を減少できる。その結果、減速部31Aの効率を向上させることができる。
(他の変形例)
上記実施の形態では、車輪ハブ軸受部11の回転輪が内輪であることとしたが、回転輪は外輪であってもよい。
また、上記実施の形態では、減速部31が3軸の平行軸式歯車減速機である例を示したが、減速部はたとえば4軸の平行軸式歯車減速機など、他種の歯車減速機であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,1A インホイールモータ駆動装置、10 ケーシング、11 車輪ハブ軸受部、12 内輪、13 外輪、14,73,74,173 転動体、21 モータ部、22 モータ回転軸、23 ロータ、24 ステータ、25 ステータコア、26 コイル、27,28,32a,32b,35a,35b,38a,38b,138a 転がり軸受、29 モータケーシング、29v モータケーシングカバー、31 減速部、32 入力軸、33 入力歯車、34,36 中間歯車、35 中間軸、37 出力歯車、38 出力軸、39 本体ケーシング、M,N,O 軸線、W 車輪ホイール。

Claims (5)

  1. 車輪が取り付けられる回転輪を有する車輪ハブ軸受部と、
    前記車輪ハブ軸受部の前記回転輪と結合された出力軸と、前記出力軸と同軸に設けられたはすば歯車である出力歯車と、前記出力軸と平行に設けられた中間軸と、前記中間軸と同軸に設けられ、前記出力歯車と噛合するはすば歯車である中間歯車と、前記出力歯車よりも軸線方向一方側に配置され、前記出力軸を回転自在に支持する転がり軸受とを含む減速部とを備え、
    前記車輪の駆動時に前記出力歯車の噛合い部に生じるアキシアル荷重の向きは、軸線方向一方側であり、
    前記転がり軸受の転動体の少なくとも一部は、前記出力歯車の噛合い部の軸線方向一方端から他方端に掛かるアキシアル荷重とラジアル荷重との合力が向かう方向の領域内に配置されており、
    前記出力歯車は、ねじれ角βおよび圧力角αを有し、
    前記合力が向かう方向の領域は、前記出力歯車の噛合い部の軸線方向一方端からラジアル方向に対して角度θの傾斜角度で延びる第1直線と、前記出力歯車の噛合い部の軸線方向他方端からラジアル方向に対して角度θの傾斜角度で延びる第2直線とで挟まれた領域であり、
    角度θ=atan{tanβ/(tanα/cosβ)}である、インホイールモータ駆動装置。
  2. 前記減速部を収容するケーシングをさらに備え、
    前記転がり軸受は、前記出力軸の外径面と前記ケーシングに形成された円筒面との間に配置されている、請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
  3. 前記出力歯車の軸線方向一方端面には環状凸部が設けられており、
    前記転がり軸受は、前記環状凸部と前記ケーシングの前記円筒面との間に収容されている、請求項に記載のインホイールモータ駆動装置。
  4. 前記減速部は、前記出力歯車よりも軸線方向他方側に配置され、前記出力軸を回転自在に支持する転がり軸受をさらに含む、請求項1~のいずれかに記載のインホイールモータ駆動装置。
  5. 前記軸線方向一方側が車幅方向外側である、請求項1~のいずれかに記載のインホイールモータ駆動装置。
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