以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(C)ロタキサン構造を有する化合物及び(D)無機充填材に加えて、(B-1)活性エステル系硬化剤を含む(B)硬化剤を含有する。このような樹脂組成物を用いることにより、伸縮性及び耐アルカリ性に優れる硬化物を得ることができる。
また、本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)ロタキサン構造を有する化合物、及び(D)無機充填材に加えて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(E)硬化促進剤、(F)その他の添加剤、(G)有機溶剤が挙げられる。
<(A)エポキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含有する。
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、樹脂組成物は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ともいう。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ともいう。)を組み合わせて含むことが好ましい。液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、脂肪族エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、ダイセル社製の「CEL2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、DIC社製の「EXA-850CRP」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「YED-216D」(脂肪族エポキシ樹脂)、ADEKA社製の「EP-3950S」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);住友化学社製の「ELM-100H」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、及びナフチレンエーテル型エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000L」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)成分として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.01~1:20の範囲が好ましく、1:0.01~1:15の範囲がより好ましく、1:0.01~1:10の範囲がさらに好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)適度な粘着性がもたらされる、ii)十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。
(A)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂シートの硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、より良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。(A)エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
<(B)硬化剤>
本発明の樹脂組成物は、(B)硬化剤を含有する。(B)硬化剤は、(A)エポキシ樹脂を硬化する機能を有する。
樹脂組成物中の(B)硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。(B)硬化剤の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
<(B-1)活性エステル系硬化剤>
本発明の樹脂組成物では、(B)硬化剤は、(B-1)活性エステル系硬化剤を含む。(B-1)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B-1)活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する硬化剤が挙げられる。中でも、(B-1)活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。(B-1)活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
(B-1)活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造を表す。
(B-1)活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000」、「HPC-8000H」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」、「EXB-8000L-65T」、「EXB-8150-65T」、「EXB-8200-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物中の(B-1)活性エステル系硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、より優れた耐アルカリ性を示す硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは4質量%以上である。(B-1)活性エステル系硬化剤の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
<(B-2)イソシアネート系硬化剤>
本発明の樹脂組成物において、(B)硬化剤は、より優れた伸縮性を有する硬化物を得る観点から、(B-1)活性エステル系硬化剤に加えて、さらに、(B-2)イソシアネート系硬化剤を含むことが好ましい。(B-2)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B-2)イソシアネート系硬化剤としては、例えば、イソシアナト基(-N=C=O)を2つ以上有するポリイソシアネート化合物が挙げられる。(B-2)イソシアネート系硬化剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアナート、トルエン-2,6-ジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート等のジイソシアネート;4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート等のトリイソシアネート等が挙げられる。
(B-2)イソシアネート系硬化剤の市販品としては、例えば、旭化成社製の「デュラネート24A-90PX」;住友バイエルウレタン社製の「スミジュールN-3200-90M」、三井武田ケミカル社製の「タケネートD165N-90X」;住友バイエルウレタン社製の「スミジュールN-3300」、「スミジュールN-3500」;旭化成社製の「デュラネートTHA-100」、「TLA-100」、「TSA-100」、「TPA-100」;DIC社製の「D-500」、「D-550」、「D-750」、「DN-950」、「DN-955」、「DN-980」、「DN-981」等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物中の(B-2)イソシアネート系硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、より優れた伸縮性を有する硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。(B-2)イソシアネート系硬化剤の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
<その他の任意の硬化剤>
本発明の樹脂組成物は、(B)硬化剤としてさらにその他の任意の硬化剤を含む場合がある。
任意の硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤が挙げられる。任意の硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、被着体に対する密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「TD-2090-60M」等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との量比は、[(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[(B)硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2~1:2の範囲が好ましく、1:0.3~1:1.5がより好ましく、1:0.4~1:1.2がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の不揮発成分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の不揮発成分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、得られる硬化物の耐熱性がより向上する。
<(C)ロタキサン構造を有する化合物>
本発明の樹脂組成物は、(C)ロタキサン構造を有する化合物を含む。
ロタキサン構造とは、環状分子、環状分子に貫通するように包接される直鎖状の軸分子、及び環状分子が抜けないように軸分子の末端を封鎖した封鎖基を有する構造である。
(C)成分としては、ロタキサン構造を有していれば特に限定されないが、環状分子及び軸分子の少なくともいずれかを複数有するポリロタキサンであることが好ましく、環状分子を複数有するポリロタキサンであることがより好ましい。ポリロタキサンにおける環状分子の個数(包接量)は、環状分子の個数が2個以上となる範囲内であれば特に限定されないが、例えば、1つの軸分子を複数の環状分子に貫通させた状態で包接する際、1つの軸分子に環状分子が最大限に包接する量(最大包接量)を100%とした場合、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。包接量は、軸分子の長さと環状分子の厚さとにより、決定することができる。例えば、軸分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がα-シクロデキストリン分子の場合、最大包接量は、実験的に求められている(Macromolecules 1993,26,5698-5703参照)。
ロタキサン構造における軸分子としては、分子量が10,000以上で末端を封鎖基で化学修飾できる直鎖状の分子を用いることができる。「直鎖状」とは、実質的に直鎖であることを表し、軸分子が貫通している環状分子の回転又は移動が可能であれば、軸分子は分岐鎖を有していてもよい。軸分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸セルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、デンプン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体等共重合体、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアミド、ポリイミド、ポリジエン、ポリシロキサン、ポリ尿素、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、ポリケトン、ポリフェニレン、ポリハロオレフィンとその誘導体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレングリコール鎖が好適に用いられる。これらは、ポリロタキサン中に2種以上混在していてもよい。
軸分子の長さは、環状分子の回転又は移動が可能であれば、特に限定されない。軸分子の長さは、重量平均分子量を用いて表すことができる。軸分子の重量平均分子量としては、好ましくは3,000以上、より好ましくは4,000以上、さらに好ましくは5,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは90,000以下、さらに好ましくは85,000以下である。軸分子の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
軸分子は、通常、両末端に官能基を有する分子の前記官能基に、封鎖基を含む分子が反応して結合した構造を有する。官能基としては、例えば、アミド基、水酸基、カルボキシル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、ビニル基等が好ましく挙げられる。
ロタキサン構造における環状分子としては、軸分子を貫通させた状態で包接可能な環状分子であって、(B)硬化剤と反応できるように、少なくとも一つの反応基(官能基)を有している分子を用いることができる。環状分子とは、実質的に環状である分子をいい、「実質的に環状」とは、完全に閉環ではないものを含む意であり、英字の「C」の一端と多端とが結合しておらず重なった螺旋構造を有するものも含む概念である。環状分子としては、例えば、シクロデキストリン類、クラウンエーテル類、クリプタンド類、大環状アミン類、カリックスアレーン類、シクロファン類等が挙げられる。これらの中でも、シクロデキストリン類が好ましい。これらは、ポリロタキサン中に2種以上混在していてもよい。
シクロデキストリン類としては、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン及びグルコシルシクロデキストリン、これらの誘導体又は変性体等が挙げられる。
環状分子は、反応基を含むことが好ましい。反応基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、ビニル基等が挙げられ、中でも水酸基が好ましい。環状分子が反応基を有することによって、(B)硬化剤を介して環状分子同士または(C)成分と(A)エポキシ樹脂とを架橋させることができる。また、一方の環状分子の反応基と、他方の環状分子の反応基とが架橋していてもよい。反応基は、1種単独で有していてもよく、2種以上有していてもよい。
反応基は、環状分子に直接結合していなくてもよい。例えば、環状分子がシクロデキストリンである場合、シクロデキストリンそのものに存在する水酸基は反応基であり、該水酸基にヒドロキシプロピル基を付加した場合には、ヒドロキシプロピル基の水酸基も反応基である。さらには、ヒドロキシプロピル基の水酸基を介してε-カプロラクトンの開環重合を行い、カプロラクトン鎖を有する場合、カプロラクトン鎖におけるポリエステル部位の反対側末端に位置する水酸基も反応基である。
環状分子の反応基は、環状分子1つあたり1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
環状分子の重量平均分子量としては、好ましくは5,000以上、より好ましくは6,000以上、さらに好ましくは7,000以上であり、好ましくは1,500,000以下、より好ましくは1,400,000以下、さらに好ましくは1,350,000以下である。環状分子の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
ロタキサン構造における封鎖基としては、環状分子が抜けない程度の嵩高さを有する構造であれば特に限定はされない。封鎖基としては、例えば、シクロデキストリン基、アダマンタン基、ジニトロフェニル基、トリチル基等が挙げられる。中でも、アダマンタン基が好ましい。これらはポリロタキサン中に1種単独で有していてもよく、2種以上有していてもよい。
(C)ロタキサン構造を有する化合物全体の重量平均分子量としては、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、好ましくは1,500,000以下、より好ましくは1,400,000以下、さらに好ましくは1,350,000以下である。(C)ロタキサン構造を有する化合物全体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(C)ロタキサン構造を有する化合物の水酸基価としては、好ましくは45mgKOH/g以上、より好ましくは50mgKOH/g以上、さらに好ましくは55mgKOH/g以上であり、好ましくは120mgKOH/g以下、より好ましくは115mgKOH/g以下、さらに好ましくは110mgKOH/g以下である。水酸基価を斯かる範囲内とすることにより、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び他方の環状分子が有する反応基との反応がより容易となる。水酸基価は、JIS K0070に従って測定することができる。
(C)ロタキサン構造を有する化合物は、液状であってもよいが、粒子状で樹脂組成物に含まれることが好ましい。粒子状の(C)成分は、分散しやすく、更には樹脂組成物の粘度を低下させることができる。
(C)ロタキサン構造を有する化合物の平均粒径は、好ましくは100nm以上、より好ましくは500nm以上、さらに好ましくは800nm以上であり、好ましくは50,000nm以下、より好ましくは40,000nm以下、さらに好ましくは30,000nm以下である。このような平均粒径を有する(C)ロタキサン構造を有する化合物は、樹脂組成物内に均一に分散しやすくなり、樹脂組成物の粘度が低下しやすくなる。平均粒径は、後述する(D)無機充填材における平均粒径の測定と同様の方法により測定することができる。
(C)ロタキサン構造を有する化合物は、例えば、国際公開第01/83566号、特開2005-154675号公報、特許4482633号等に記載の方法によって合成することができる。
(C)ロタキサン構造を有する化合物は、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製の「SH2400B-007」、「SH1310P」、「セルムスーパーポリマーA1000」等を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物中の(C)ロタキサン構造を有する化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、より優れた伸縮性を有する硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上である。(C)ロタキサン構造を有する化合物の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは38質量%以下である。
<(D)無機充填材>
本発明の樹脂組成物は、(D)無機充填材を含む。
(D)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。(D)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(D)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
通常、(D)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。(D)無機充填材の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.3μm以上、0.4μm以上、0.5μm以上、又は1.0μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは8.0μm以下、特に好ましくは7.0μm以下である。(D)無機充填材の平均粒径が前記範囲にあることにより、樹脂組成物中の(D)無機充填材の充填性が高まり、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。また、(D)無機充填材の平均粒径が前記範囲にあることにより、通常は、樹脂組成物の硬化物で絶縁層を形成した場合に、絶縁層の表面粗度を低くできる。
(D)無機充填材の粒子の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により、測定できる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、粒子の粒径分布を体積基準で作成し、その粒径分布からメディアン径として平均粒径を測定できる。測定サンプルは、粒子を超音波により水等の溶剤中に分散させたものを好ましく使用できる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」等を使用することができる。
(D)無機充填材の比表面積は、本発明の効果をより向上させる観点から、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは5m2/g以上、さらに好ましくは8m2/g以上、特に好ましくは10m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは50m2/g以下、より好ましくは20m2/g以下、特に好ましくは15m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
(D)無機充填材としては、例えば、新日鉄住金マテリアルズ社製「ST7030-20」;龍森社製「MSS-6」、「AC-5V」;新日鉄住金マテリアルズ社製「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製「UFP-30」、「SFP-130MC」、「FB-7SDC」、「FB-5SDC」、「FB-3SDC」;トクヤマ社製「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」、「FE9」等が挙げられる。
(D)無機充填材は、適切な表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理されることにより、(D)無機充填材の耐湿性及び分散性を高めることができる。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM22」(ジメチルジメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM5783」(N-フェニル-3-アミノオクチルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)等が挙げられる。なかでも、窒素原子含有シランカップリング剤が好ましく、フェニル基を含有するアミノシラン系カップリング剤がより好ましく、N-フェニル-3-アミノアルキルトリメトキシシランが更に好ましい。また、表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
表面処理剤による表面処理の程度は、(D)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価できる。(D)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、(D)無機充填材の分散性向上の観点から、好ましくは0.02mg/m2以上、より好ましくは0.1mg/m2以上、特に好ましくは0.2mg/m2以上である。一方、樹脂組成物の溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、前記のカーボン量は、好ましくは1mg/m2以下、より好ましくは0.8mg/m2以下、特に好ましくは0.5mg/m2以下である。
(D)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の(D)無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(以下「MEK」と略称することがある。))により洗浄処理した後に、測定できる。具体的には、十分な量のメチルエチルケトンと、表面処理剤で表面処理された(D)無機充填材とを混合して、25℃で5分間、超音波洗浄する。その後、上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて、(D)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定できる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」を使用できる。
樹脂組成物中の(D)無機充填材の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。(D)無機充填材の含有量が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
<(E)硬化促進剤>
樹脂組成物は、任意の成分として、(E)硬化促進剤を含む場合がある。硬化促進剤を用いることにより、樹脂組成物を硬化させる際に硬化を促進できる。
(E)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤及び金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン、4-ピロリジノピリジン等が挙げられる。中でも、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。中でも、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」;四国化成社製「2E4MZ」;等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。中でも、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
樹脂組成物中の(E)硬化促進剤の含有量は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%とした場合、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。(E)硬化促進剤の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、例えば、0質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上等とし得る。
<(F)その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、不揮発性成分として、さらに任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シロキサン等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤の消泡剤;ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、ポリスチレン粒子、ポリフェニレンエーテル粒子、シリコーン粒子、テトラフルオロエチレン粒子等の有機充填材;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;シランカップリング剤、トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(F)その他の添加剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。
<(G)有機溶剤>
本発明の樹脂組成物は、上述した不揮発性成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含有する場合がある。(G)有機溶剤としては、不揮発性成分の少なくとも一部を溶解可能なものである限り、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものない。(G)有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(G)有機溶剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。
<樹脂組成物の製造方法>
一実施形態において、本発明の樹脂組成物は、例えば、任意の反応容器に(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)ロタキサン構造を有する化合物、(D)無機充填材、必要に応じて(E)硬化促進剤、必要に応じて(F)その他の添加剤、及び必要に応じて(G)有機溶剤を、任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合することによって、製造することができる。また、各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を加えて混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。また、加えて混合する際に又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌し、均一に分散させてもよい。
<樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(C)ロタキサン構造を有する化合物、及び(D)無機充填材に加えて、(B-1)活性エステル系硬化剤を含有するため、伸縮性に優れるだけでなく、耐アルカリ性にも優れる硬化物を得ることができる。
本発明の樹脂組成物は(C)ロタキサン構造を有する化合物を含有するため、例えば、日本工業規格(JIS K7127)に準拠して測定したダンベル状1号形の本発明の樹脂組成物の硬化物の室温(23℃)における破断伸度(%)が、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは45%以上となり得る。
本発明の樹脂組成物は(C)ロタキサン構造を有する化合物を含有するため、例えば、ダンベル状1号形の本発明の樹脂組成物の硬化物について、室温(23℃)にて破断伸度の90%の伸びに達するまでの引っ張り試験を行い、試験前の硬化物の引っ張り方向の長さを「L1」、試験30分後の硬化物の引っ張り方向の長さを「L2」とした場合に下記式から算出される伸縮率(%)が、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上となり得る。
伸縮率(%)={1-(L2-L1)/(L1)}×100
本発明の樹脂組成物は(B-1)活性エステル系硬化剤を含有するため、例えば、縦横高さの比が50mm:50mm:50μmの直方体形状の本発明の樹脂組成物の硬化物を2N水酸化カリウム水溶液に室温(23℃)で1時間浸漬した後の硬化物の重量減少率(%)が、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.2%以下、特に好ましくは1%以下となり得る。
<樹脂シート>
本発明の樹脂シートは、支持体と、当該支持体上に設けられた本発明の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を含む。
樹脂組成物層の厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは70μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上等とし得る。
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
樹脂シートは、樹脂組成物をそのまま、或いは例えば有機溶剤に樹脂組成物を溶解して調製した樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
有機溶剤としては、例えば、上記(G)有機溶剤の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物又は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
<積層シート>
積層シートは、複数の樹脂組成物層を積層及び硬化して製造されるシートである。積層シートは、樹脂組成物層の硬化物としての絶縁層を複数含む。通常、積層シートを製造するために積層される樹脂組成物層の数は、積層シートに含まれる絶縁層の数に一致する。積層シート1枚当たりの具体的な絶縁層の数は、通常2以上、好ましくは3以上、特に好ましくは5以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、特に好ましくは10以下である。
一実施形態において、積層シートは、樹脂組成物を硬化して形成された絶縁層と、下記で説明する方法で絶縁層上に形成された導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層とを含むことが好ましく、さらに、導電性ポリマー層上に電解めっき処理などにより形成された金属からなる金属層を備えていてもよい。
積層シートは、その一方の面が向かい合うように折り曲げて使用されるシートである。積層シートの折り曲げの最低曲げ半径は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下、特に好ましくは3mm以下である。
積層シートに含まれる各絶縁層には、ホールが形成されていてもよい。このホールは、多層フレキシブル基板においてビアホール又はスルーホールとして機能できる。
積層シートは、絶縁層に加えて、更に任意の要素を含んでいてもよい。例えば、積層シートは、任意の要素として、導体層を備えていてもよい。導体層は、通常、絶縁層の表面、又は、絶縁層同士の間に、部分的に形成される。この導体層は、通常、多層フレキシブル基板において配線として機能する。
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体材料は、単金属であってもよく、合金であってもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種類以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、単金属としてのクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅;及び、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金等の合金;が好ましい。その中でも、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属;及び、ニッケル・クロム合金;がより好ましく、銅の単金属が更に好ましい。
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層を2層以上含む複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層は、配線として機能させるために、パターン形成されていてもよい。
導体層の厚みは、多層フレキシブル基板のデザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μm、特に好ましくは15μm~20μmである。
積層シートの厚みは、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上、特に好ましくは200μm以上であり、好ましくは2,000μm以下、より好ましくは1,000μm以下、特に好ましくは500μm以下である。
<積層シートの製造方法>
積層シートは、(a)樹脂シートを準備する工程、並びに、(b)樹脂シートを用いて樹脂組成物層を複数積層及び硬化する工程を含む製造方法によって、製造できる。樹脂組成物層の積層及び硬化の順番は、所望の積層シートが得られる限り、任意である。例えば、複数の樹脂組成物層を全て積層した後で、積層された複数の樹脂組成物層を一括して硬化させてもよい。また、例えば、ある樹脂組成物層に別の樹脂組成物層を積層する都度、その積層された樹脂組成物層の硬化を行ってもよい。
以下、工程(b)の好ましい一実施形態を説明する。以下に説明する実施形態では、区別のために、適宜、樹脂組成物層に「第一樹脂組成物層」及び「第二樹脂組成物層」のように番号を付して示し、さらに、それらの樹脂組成物層を硬化させて得られる絶縁層にも当該樹脂組成物層と同様に「第一絶縁層」及び「第二絶縁層」のように番号を付して示す。
好ましい一実施形態において、工程(b)は、例えば、
(I)シート支持基材に第一樹脂組成物層を積層する工程、
(II)第一樹脂組成物層を硬化して、第一絶縁層を形成する工程と、
(III)第一絶縁層に、穴あけする工程、
(IV)第一絶縁層に粗化処理を施す工程、
(V)第一絶縁層上に導体層を形成する工程
(VI)第一絶縁層に、第二樹脂組成物層を積層する工程と、
(VII)第二樹脂組成物層を硬化して、第二絶縁層を形成する工程と、
を含み得る。なお、工程(I)及び(III)は行わない場合がある。以下、各工程について説明する。
工程(I)は、工程(II)の前に、シート支持基材に第一樹脂組成物層を積層する工程である。シート支持基材は、剥離可能な部材であり、例えば、板状、シート状又はフィルム状の部材が用いられる。
シート支持基材と第一樹脂組成物層との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
樹脂シートを用いる場合、シート支持基材と第一樹脂組成物層との積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを押圧して、その樹脂シートの第一樹脂組成物層をシート支持基材に加熱圧着することにより、行うことができる。樹脂シートをシート支持基材に加熱圧着する部材(以下、適宜「加熱圧着部材」ともいうことがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、シート支持基材の表面凹凸に第一樹脂組成物層が十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材でプレスすることにより、第一樹脂組成物層の平滑化処理を行ってもよい。例えば、樹脂シートを用いた場合、支持体側から加熱圧着部材で樹脂シートをプレスすることにより、その樹脂シートの第一樹脂組成物層を平滑化できる。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。積層と平滑化処理とは、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
工程(II)は、第一樹脂組成物層を硬化して、第一絶縁層を形成する工程である。第一樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して採用される条件を任意に適用しうる。
通常、具体的な熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によって異なる。例えば、硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。また、硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~110分間、さらに好ましくは20分間~100分間である。
第一樹脂組成物層を熱硬化させる前に、第一樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、第一樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、第一樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
工程(III)は、第一絶縁層に穴あけする工程である。この工程(III)により、第一絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。穴あけは、樹脂組成物の組成に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法及び形状は、多層フレキシブル基板のデザインに応じて適宜設定してよい。
工程(IV)は、第一絶縁層に粗化処理を施す工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。よって、粗化処理は、デスミア処理と呼ばれることがある。粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
膨潤液としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液が挙げられる。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、例えば、30~90℃の膨潤液に硬化体を1分間~20分間浸漬させることにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液に、過マンガン酸塩を溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトP」、「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に硬化体を10分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。
また、中和液としては、酸性水溶液が用いられる。市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、硬化体を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、硬化体を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬することが好ましい。
粗化処理後の第一絶縁層の表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。下限については特に限定されないが、30nm以上、40nm以上、50nm以上であり得る。
工程(V)は、第一絶縁層上に導体層を形成する工程である。導体層の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。めっき法としては、例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法であってもよいが、好適な例としては、第一絶縁層上に導電性ポリマー層を形成し、さらに必要に応じて電解めっきでめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成する方法が挙げられる。
以下、導電性ポリマー層を形成する方法の例を示す。まず、第一絶縁層の表面の導体層を形成すべき部分に、導電性ポリマーを含む導電性コート液を接触させ、導電性ポリマーを付着させて導電性ポリマー層を形成し、次いで、必要に応じて、導電性ポリマー層上に、電解めっきにより金属層を形成して、所望の配線パターンを有する導体層を形成する。
導電性ポリマーとしては、公知の導電性ポリマーを広範に用いることができ、例えば、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類及びそれらを組み合わせた共重合体が挙げられ、ポリアニリン類及びポリピロール類が好ましい。また、導電性コート液には、導電性を阻害しない限りにおいて、公知の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が含まれていてもよい。また、導電性コート液には、導電性ポリマーを液中にコロイド粒子として分散させるための界面活性剤が含まれていてもよい。導電性ポリマーをコロイド粒子として分散させる場合、コロイド粒子の大きさは、例えば0.001~1μmである。導電性ポリマーの溶媒又は分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール;水とアルコールの混合液等が挙げられる。
熱硬化型の導電性コート液の市販品として、中京油脂社製「S-983」、「S-495」、「S-948」、「R-801」;信越ポリマー社製「セプルジーダOC-AE」、「セプルジーダAS-H03Q」;荒川化学社製「ビームセットE-2」等が挙げられる。光硬化型の導電性コート液の市販品として、中京油脂社製「R-986」、「UVS-542」;信越ポリマー社製「セプルジーダOC-X」、「セプルジーダOC-U」、「セプルジーダOC-X」;荒川化学社製「ビームセット1700CP」、「ビームセット1800CP」、「ビームセットE-1」等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、導電性コート液は、市販の硬化剤又はその他の添加剤をさらに混合して使用してもよい。
導電性ポリマー層の形成方法としては、導電性コート液を、例えば、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の湿式塗布法を用いて、第一絶縁層上に塗布し、必要応じて乾燥して、さらに必要応じて熱硬化処理又は光硬化処理に付し、導電性ポリマー層を形成する。導電性ポリマー層の厚みは、好ましくは0.01μm~10μm、より好ましくは0.05μm~5μm、さらに好ましくは0.1μm~2μm、特に好ましくは0.2μm~1μmである。導電性ポリマー層の形成後は、必要に応じて、水、硫酸水溶液等で洗浄する。その後、必要に応じて、電解硫酸銅めっき浴等の酸性めっき浴等を用いて公知の方法で電解めっきを行い、金属からなる金属層を形成する。以上のようなプロセスを経ることにより、第一絶縁層上に、導電性ポリマー層からなる導体層、又は導電性ポリマー層及び金属層からなる導体層を形成することができる。
工程(II)で第一絶縁層を得て、必要に応じて工程(III)、工程(IV)、工程(V)を行った後に、工程(VI)を行う。工程(VI)は、第一絶縁層に第二樹脂組成物層を積層する工程である。第一絶縁層と第二樹脂組成物層との積層は、工程(I)におけるシート支持基材と第一樹脂組成物層との積層と同じ方法で行うことができる。
ただし、樹脂シートを用いて第一樹脂組成物層を形成した場合には、工程(VI)よりも以前に、樹脂シートの支持体を除去する。支持体の除去は、工程(I)と工程(II)との間に行ってもよく、工程(II)と工程(III)との間に行ってもよく、工程(III)と工程(IV)の間に行ってもよく、工程(IV)と工程(V)との間に行ってもよい。
工程(VI)の後で、工程(VII)を行う。工程(VII)は、第二樹脂組成物層を硬化して、第二絶縁層を形成する工程である。第二樹脂シートの硬化は、工程(II)における第一樹脂組成物層の硬化と同じ方法で行うことができる。これにより、第一絶縁層及び第二絶縁層という複数の絶縁層を含む積層シートを得ることができる。
また、前記の実施形態に係る方法では、必要に応じて、(VIII)第二絶縁層に穴あけする工程、(IX)第二絶縁層に粗化処理を施す工程、及び(X)第二絶縁層上に導体層を形成する工程、を行ってもよい。工程(VIII)における第二絶縁層の穴あけは、工程(III)における第一絶縁層の穴あけと同じ方法で行うことができる。また、工程(IX)における第二絶縁層の粗化処理は、工程(IV)における第一絶縁層の粗化処理と同じ方法で行うことができる。さらに、工程(X)における第二絶縁層上への導体層の形成は、工程(V)における第一絶縁層上への導体層の形成と同じ方法で行うことができる。
前記の実施形態では、第一樹脂組成物層及び第二樹脂組成物層という2層の樹脂組成物層の積層及び硬化によって積層シートを製造する実施形態を説明したが、3層以上の樹脂組成物層の積層及び硬化によって積層シートを製造してもよい。例えば、前記の実施形態に係る方法において、工程(VI)~工程(VII)による樹脂シートの積層及び硬化、並びに、必要に応じて工程(VIII)~工程(X)による絶縁層の穴あけ、絶縁層の粗化処理、及び、絶縁層上への導体層の形成、を繰り返し実施して、積層シートを製造してもよい。これにより、3層以上の絶縁層を含む積層シートが得られる。
さらに、前記の実施形態に係る方法は、上述した工程以外の任意の工程を含んでいてもよい。例えば、工程(I)を行った場合には、シート支持基材を除去する工程を行ってもよい。
<多層フレキシブル基板>
多層フレキシブル基板は、積層シートを含む。多層フレキシブル基板は、積層シートのみを含んでいてもよく、積層シートに組み合わせて任意の部材を含んでいてもよい。任意の部材としては、例えば、電子部品、カバーレイフィルムなどが挙げられる。
多層フレキシブル基板は、上述した積層シートを製造する方法を含む製造方法によって、製造できる。よって、多層フレキシブル基板は、(a)樹脂シートを準備する工程、並びに、(b)樹脂シートを用いて樹脂組成物層を複数積層及び硬化する工程、を含む製造方法によって、製造できる。
多層フレキシブル基板の製造方法は、前記の工程に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、電子部品を備える多層フレキシブル基板の製造方法は、積層シートに電子部品を接合する工程を含んでいてもよい。積層シートと電子部品との接合条件は、電子部品の端子電極と積層シートに設けられた配線としての導体層とが導体接続できる任意の条件を採用できる。また、例えば、カバーレイフィルムを備える多層フレキシブル基板の製造方法は、積層シートとカバーレイフィルムとを積層する工程を含んでいてもよい。
前記の多層フレキシブル基板は、通常、その多層フレキシブル基板が含む積層シートの一方の面が向かい合うように折り曲げて使用され得る。例えば、多層フレキシブル基板は、折り曲げてサイズを小さくした状態で、半導体装置の筐体に収納される。また、例えば、多層フレキシブル基板は、折り曲げ可能な可動部を有する半導体装置において、その可動部に設けられる。
<半導体装置>
半導体装置は、前記の多層フレキシブル基板を備える。半導体装置は、例えば、多層フレキシブル基板と、この多層フレキシブル基板に実装された半導体チップとを備える。多くの半導体装置では、多層フレキシブル基板は、半導体装置の筐体に、その多層フレキシブル基板が含む積層シートの一方の面が向かい合うように折り曲げて収納され得る。
半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
前記の半導体装置は、例えば、多層フレキシブル基板を用意する工程と、この多層フレキシブル基板を積層シートの一方の面が向かい合うように折り曲げる工程と、折り曲げた多層フレキシブル基板を筐体に収納する工程と、を含む製造方法によって製造できる。
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
<実施例1>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵住金化学社製、「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量169g/eq.)10部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製、「HP6000」、エポキシ当量213g/eq.)10部、溶融球状シリカ(アドマテックス社製、「SC2500SQ」、平均粒径0.5μm、比表面積11.2m2/g、表面処理剤(信越化学工業社製、「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理したもの)20部、活性エステル系硬化剤(DIC社製、「EXB-8000L-65M」、活性基当量約220g/eq.、不揮発成分65質量%のMEK溶液)6部、ポリロタキサン(アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製、「SH1310P」のメチルエチルケトン50%溶液、軸分子はポリエチレングリコール鎖を含み、環状分子はシクロデキストリン類を含む。)50部、ポリイソシアネート樹脂(DIC社製、「DN950」)10部、アミン系硬化促進剤(「DMAP」、4-ジメチルアミノピリジン)0.2部を混合し、ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物を調製した。
<実施例2>
溶融球状シリカ(アドマテックス社製、「SC2500SQ」)の使用量を20部から25部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製した。
<実施例3>
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製、「HP6000」、エポキシ当量213g/eq.)10部を、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学社製、「YX7760」、エポキシ当量約238g/eq.)10部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製した。
<比較例1>
活性エステル系硬化剤(DIC社製、「EXB-8000L-65M」活性基当量約220g/eq.、不揮発成分65質量%のMEK溶液)6部を、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(DIC社製、「LA-7054」、水酸基当量125g/eq.、窒素含有量約12重量%、固形分60重量%のMEK溶液)10部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製した。
<比較例2>
ポリイソシアネート樹脂(DIC社製、「DN950」)10部を使用しなかったこと、ポリロタキサン(アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製、「SH1310P」のメチルエチルケトン40%溶液、軸分子はポリエチレングリコール鎖を含み、環状分子はシクロデキストリン類を含む。)50部を、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製、「YX7553BH30」、固形分30質量%)116.7部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製した。
<試験例1:破断伸度の測定>
各実施例及び比較例の樹脂組成物を離型PETフィルム(リンテック社製「501010」、厚さ38μm、240mm角)の離型処理面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが50μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂シートを得た。
得られた樹脂シートを、190℃、90分間の硬化条件で樹脂組成物を硬化させ、離型PETフィルムを剥離することにより硬化物サンプルを得た。
得られた硬化物サンプルを、ダンベル状1号形に切り出し、試験片を得た。該試験片を、日本工業規格(JIS K7127)に準拠し、テンシロン万能試験機(エー・アンド・デイ社製)を用いて、評価用硬化物の引っ張り試験を行い、23℃における破断伸度を測定した。この操作を3回行い、平均値を算出し、破断伸度(%)とした。
<試験例2:伸縮率の測定>
試験例1で得た硬化物サンプルを、ダンベル状1号形に切り出し、試験片を得た。試験片の長手方向の長さを「L1」とする。テンシロン万能試験機(エー・アンド・デイ社製)を用いて、23℃で試験片の引っ張り試験を行い、試験例1で測定及び算出した破断伸度に対して90%の伸びに達した時点で引っ張り試験を停止し、試験片を装置から回収した30分後の試験片長さを測定した。引っ張り試験後の試験片の長手方向の長さを「L2」とする。下記式により伸縮率(%)を算出した。
伸縮率(%)={1-(L2-L1)/(L1)}×100
伸縮率が80%以上のものを「〇」、80%未満のものを「×」と評価した。
<試験例3:粗化処理耐性の測定>
試験例1で得た硬化物サンプルから5cm×5cmの試料Aを切り出し、130℃で15分乾燥し、該乾燥直後の質量を測定した。これを試料とし、試料の質量を「X1」とする。試料を23℃で2規定の水酸化カリウム水溶液に1時間浸漬し、粗化試料を得た。粗化試料を水洗し、130℃で30分乾燥した直後の質量を測定した。該乾燥した直後の粗化試料の質量を「X2」とする。下記式により、樹脂組成物の硬化物の粗化処理による重量減少率(%)を求めた。
重量減少率(%)={(X1-X2)/(X1)}×100
重量減少率が1%以下のものを「〇」、1%を超えたものを「×」と評価した。
実施例及び比較例の樹脂組成物の不揮発成分の使用量、並びに試験例の測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
(A)エポキシ樹脂、(C)ロタキサン構造を有する化合物、及び(D)無機充填材に加えて、(B-1)活性エステル系硬化剤を含有する樹脂組成物を用いることにより、伸縮性に優れるだけでなく、耐アルカリ性にも優れる硬化物を得ることができることがわかった。
<実施例4:導体層の形成>
(1)導電性コート液の調整
導電性ポリマー(導電コート「R-801」、中京油脂社製)10部にメタノール10部を加え希釈した後に、硬化剤A(中京油脂社製、「P-795」の0.95%メタノール希釈品)0.5部、硬化剤B(中京油脂社製、「Q-113」の0.95%メタノール希釈品)2部を混合し、ミキサーで均一に分散し、導電性コート液を作成した。
(2)導電性ポリマー層の作成
試験例1で得た硬化物サンプル上に乾燥後の厚さが0.5μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、120℃(平均100℃)で10分間乾燥させて、導電性ポリマー層を形成した。
(3)電解めっき工程
次いで、アトテックジャパン(株)製の薬液を使用して、電解銅めっきを行って、導体層を形成した。