JP7301326B2 - 新生児期~小児期発症の脳小血管病又はその保因者の検出方法 - Google Patents

新生児期~小児期発症の脳小血管病又はその保因者の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、新生児期~小児期発症の脳小血管病又はその保因者の検出方法に関する。
脳小血管病(cerebral small vessel disease; cerebral SVD)は、ラクナ梗塞、脳微小出血、又はびまん性の白質脳症の原因となる。小血管病は頻度の高い疾患で、脳卒中のうちの最大で半数を占める(非特許文献1)。
SVDのおよそ5%は、早期(新生児期~小児期)に発症する、家系内に疾患が蓄積するという特徴を有し、単一遺伝性であると考えられている(非特許文献2)。それら遺伝性のSVDの責任遺伝子として、現在までにCOL4A1遺伝子、COL4A2遺伝子等の数種の遺伝子が報告されている。
COL4A1遺伝子、COL4A2遺伝子は、脳血管の基底膜の主要構成成分であるIV型コラーゲンのα1鎖、α2鎖をそれぞれコードしている。COL4A1/COL4A2遺伝子の変異は、孔脳症、脳実質/脳室内出血、白質脳症を引き起こしたり、多様な症候群に関連することもある。浸透度及び表現度には幅がある。過去のインビトロ研究により、COL4A1/COL4A2遺伝子変異がCOL4A1/COL4A2タンパク質の細胞外への分泌障害をもたらすことが示されており(非特許文献3、4)、この障害は血管基底膜の脆弱性に寄与していると考えられる。臨床的にCOL4A1/COL4A2遺伝子関連疾患と診断される脳SVDのうちでCOL4A1/COL4A2遺伝子に変異が見つかるのは20~30%であり、当該疾患に他の遺伝子変異が関連していることを示している。脳SVD症例のうちの多くが依然として遺伝的に未解明である。
Tan R, Traylor M, Rutten-Jacobs L, Markus H. New insights into mechanisms of small vessel disease stroke from genetics. Clin Sci (Lond). 2017;131:515-531. Sondergaard CB, Nielsen JE, Hansen CK, Christensen H. Hereditary cerebral small vessel disease and stroke. Clin Neurol Neurosurg. 2017;155:45-57. Weng YC, Sonni A, Labelle-Dumais C, et al. COL4A1 mutations in patients with sporadic late-onset intracerebral hemorrhage. Ann Neurol. 2012;71:470-477. Jeanne M, Labelle-Dumais C, Jorgensen J, et al. COL4A2 mutations impair COL4A1 and COL4A2 secretion and cause hemorrhagic stroke. Am J Hum Genet. 2012;90:91-101.
本発明の目的は、既知の責任遺伝子には変異を有しない遺伝的未解明の新生児期~小児期発症の脳小血管病症例についても確定診断を可能にする新たな指標を提供することを目的とする。
本願発明者らは、新生児期~小児期発症の脳小血管病の患者を生じた2家系で全エクソーム解析を用いた解析を鋭意に行ない、本疾患がIV型コラーゲン(α1鎖、α2鎖)の翻訳後修飾酵素であるコラーゲンβ(1-O)ガラクトシルトランスフェラーゼ1をコードするCOLGALT1遺伝子の両アレル性変異で起こることを明らかにした。さらに、患者で同定された3種のミスセンス変異がColGalT1の酵素活性に悪影響を及ぼし、その結果COL4A1の正常な産生と分泌が障害されること、患者では実際にColGalT1の酵素活性が低下することも確認しており、ColGalT1を補充することで血管脆弱性を改善すれば本疾患の治療が可能になることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、被検者由来の核酸を含む試料を用いて、当該被検者が、下記(1)~(4)のいずれかから選択されるCOLGALT1遺伝子変異を有するか否かを調べることを含む、COLGALT1遺伝子変異を原因とする脳小血管病又はその保因者の検出を補助する方法であって、前記COLGALT1遺伝子変異がホモ接合又は複合ヘテロ接合で検出された場合に、当該被検者が脳小血管病を発症している又は将来発症することが示され、ヘテロ接合で検出された場合に当該被検者が保因者であることが示される、方法を提供する。
(1) COLGALT1遺伝子コード領域の第452位のT(配列番号3中の第285位)がGになる変異
(2) COLGALT1遺伝子コード領域の第460位のG(配列番号3中の第293位)がCになる変異
(3) COLGALT1遺伝子コード領域の第1096位のG(配列番号7中の第437位)が欠失する変異
(4) COLGALT1遺伝子コード領域の第1129位のG(配列番号7中の第470位)がCになる変異

本発明により、臨床的にCOL4A1/COL4A2遺伝子関連疾患と診断される新生児期~小児期発症の脳小血管病の新たな責任遺伝子が同定された。COLGALT1遺伝子の変異を調べることにより、新生児期~小児期発症の脳小血管病の確定診断や出生前診断が可能になる。片アレル性の変異の検出により保因者診断も可能であるので、遺伝カウンセリングにおいても本発明を活用できる。
両アレル性のCOLGALT1遺伝子変異によりColGalT1タンパク質量および該タンパク質のColGalT活性がいずれも低下することから、本発明の方法により脳小血管病と診断された患者に対してColGalT1タンパク質又は該タンパク質を発現可能な組換えベクターを投与して当該患者にColGalT1タンパク質を補充することにより、脳小血管病の治療ないしは症状の緩和が可能となる。
患者の臨床的、遺伝的、及びインシリコ解析の結果を示した図である。(A) 患者の家系図及び病原性変異。シンボルは、四角が男性、丸が女性を示す。黒いシンボルが罹患者、白いシンボルが非罹患者。矢印は発端者を示す。解析の結果、患者の変異はいずれも複合ヘテロ変異であった。+は変異陽性、-は変異陰性。(B, C) 患者1の12歳時の体軸断脳MRI画像であり、BはT2強調画像、CはFLAIR画像。左半球に孔脳症があり、基底核が消失している。軽度の萎縮を伴う白質脳症が両側に見られる。右基底核、内包及び両側視床にはT2強調およびFLAIR画像で高信号を呈する病変も見られる。(D, E) 患者2の2歳2か月時の体軸断脳MRI画像であり、DがT2強調画像、EがFLAIR画像。内包及び外包を含む大脳白質に両側性の高信号病変を認める。(F, G) 患者2の8歳時の体軸断T2強調画像。両側性の大脳白質病変は2歳2か月時に比べやや拡大している。両側基底核に微小出血の所見が見られる。(H) 患者2の9歳時の体軸断T1強調画像。両側基底核における慢性期出血に起因する低信号病変が見られる。(I) 患者2が意識消失時の体軸断T1強調画像。やや左側への正中偏位を伴う、両側性の脳実質及び脳室内の急性出血が見られる。(J) ナノポアシークエンシングを用いた2種の変異(患者2でみられたもの)のフェージングと最終遺伝子型。chr19:17671245(J中の最上段)はCOLGALT1遺伝子のc.460G>C変異の物理的位置、chr19:17688272(最下段)は同遺伝子のc.1129G>C変異の物理位置である。この図は、当該2変異が異なるアレル上に存在したことを示している。「Log10 likelihood」は、予測されたフェーズと他のフェーズの尤度比を示し、「(reads)」は、両部位にアラインされたリード数を示す。(K) ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)を用いた2種の変異(患者2でみられたもの)のフェージング。X軸はHEXシグナルの強度、Y軸はFAMシグナルの強度である。ドロップレットからのHEXシグナルを緑のドットで、FAMシグナルを青のドットで、緑と青の併合シグナルをオレンジのドットで(同じドロップレットに両方のアレルが偶然入ってしまったもの)、シグナルが弱いドロップレットを黒のドットで色分けすると、青ドットは左上、緑ドットは右下、黒ドットは左下、偶然発生したオレンジドットは右上に分割された。(L) ColGalT1タンパク質の構造と同定された変異の位置を示す模式図。ColGalT1タンパク質(図中上部のバー)は推定グリコシルトランスフェラーゼドメインを2箇所に有する[12]。同定された変異をバーの下に示す。N'はN末端、C'はC末端。下のパネルは、ヒトからゼブラフィッシュまでの相同配列を示す。変異はいずれも、ColGalT1タンパク質のグリコシルトランスフェラーゼ触媒ドメイン中の進化的に保存されたアミノ酸で生じている。(M, N) ウリジン-5'-二リン酸(UDP)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)及びMn2+と複合体化したポリペプチドα-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(pp-GalNAc-T10)の結晶構造(PDBコード: 2d7i)[7]から構築した、ColGalT1タンパク質の48~291番アミノ酸領域のモデル構造。変異部位であるLeu151及びAla154を濃色のファンデルワールス球で、変異部位周辺の残基を半透明のファンデルワールス球で示した。UDP及びGalNAcは棒で、Mn2+は小さい球で示した。NはFoldXで推定した各置換変異の自由エネルギー変化。 患者1におけるColGalT1タンパク質の低下、及びColGalT1活性低下がIV型コラーゲン分泌に及ぼす作用についての機能面でのインビトロ研究の結果を示した図である。(A) リンパ芽球様細胞株(LCL)におけるColGalT1タンパク質の発現をウエスタンブロットで調べた結果である。年齢マッチングしたコントロール由来のLCLと比べて、患者1由来のLCLではColGalT1タンパク質が欠乏していた。データは全て3回の独立した実験の結果を示している。(B) HT1080細胞におけるCOL4A1分泌に影響を及ぼすCOLGALT1遺伝子のノックダウン。上段は代表的なウエスタンブロットである。サイレンシングが起きないコントロールsiRNAをトランスフェクトした細胞(NS)と比較して、COLGALT1遺伝子をノックダウンした細胞(ColGalT1)では、細胞内区画中のCOL4A1タンパク質が減少していた。ColGalT1のバンド強度は、コントロールと比べて平均7%まで減少していた。下段は細胞外区画中のCOL4A1の定量解析結果であり、代表的なウエスタンブロットと共に示した。COLGALT1遺伝子ノックダウンしたHT1080細胞の培養上清中の分泌COL4A1タンパク質量を、非サイレンシングコントロールsiRNAをトランスフェクトしたHT1080細胞の培養上清中の量と比較した。COL4A1タンパク質量は細胞内アクチンに対してノーマライズした。数値は平均値±標準誤差を示す。統計解析はスチューデントのt検定により行なった。実験は全て独立して3回実施した。*はp < 0.05。(C) COLGALT1遺伝子をノックダウンしたHT1080細胞の免疫蛍光解析。非サイレンシングコントロールsiRNAをトランスフェクトしたHT1080細胞(NS)では、COL4A1のシグナルは部分的にPDI(小胞体マーカー)と共存していた。COLGALT1遺伝子ノックダウンしたHT1080細胞(COLGALT1)では、NSと比べてCOL4A1のシグナルが減少していた。バーは20μm。 同定されたミスセンス変異の病原性に関する機能的研究の結果を示した図である。(A) 野生型又は変異型のCOLGALT1を発現するプラスミドをトランスフェクトしたHT1080細胞をシクロヘキシミド処理し、各時点で細胞を採取して調製した細胞溶解物についてウエスタンブロッティングを行なった。左のパネルは代表的なウエスタンブロットである。トランスフェクトしたプラスミドに由来するColGalT1タンパク質を抗myc抗体で検出した。変異型COLGALT1遺伝子(p.Leu154Arg変異、p.Arg154Pro変異)をトランスフェクトした細胞では全ての時点で、野生型COLGALT1遺伝子をトランスフェクトした細胞では24時間の時点で、標準のバンド(矢印1)の下に異常なmycのバンド(矢印2)が観察された。また2つの変異型COLGALT1遺伝子(p.Leu154Arg変異、p.Ala154Pro変異)をトランスフェクトした細胞では、野生型COLGALT1遺伝子をトランスフェクトした細胞に比べて、シクロヘキシミド処理後2,4,24時間で、標準のCOLGALT1タンパク質のバンド(矢印1)がより早く消退していた。右のパネルは、シクロヘキシミド処理したHT1080細胞中の、プラスミドに由来する標準のmycタグ付加ColGalT1タンパク質の量を、各時点で定量した結果を示す。タンパク質量は全てβ-アクチンに対してノーマライズし、得られた値を0時間での総ColGalT1タンパク質量で除算して算出した。数値は平均値±標準誤差を示す。統計解析は対応のあるt検定にて行なった。実験は全て独立して3回実施した。*はp < 0.05、**はp < 0.01。(B) HT1080細胞の免疫蛍光解析。COLGALT1遺伝子のノックダウンとレスキュー実験が成功していることを示している。COLGALT1遺伝子をノックダウンしたHT1080細胞(COLGALT1)では、非サイレンシングsiRNAをトランスフェクトした細胞(NS)と比べて、抗COLGALT1のシグナルがほぼ消失していた(左から2列目のパネル)。COLGALT1遺伝子をノックダウンした上でmycタグした野生型COLGALT1遺伝子を発現するプラスミドをトランスフェクトしたHT1080細胞(Rescue WT)では、抗myc抗体で染色された細胞内で抗COLGALT1のシグナルが回復した。バーは10μm。(C) 野生型又は変異型のCOLGALT1遺伝子発現プラスミドによるレスキュー実験を示す、HT1080細胞の免疫蛍光解析。野生型COLGALT1プラスミドをトランスフェクトした細胞では、細胞内の抗COL4A1シグナル(左から1列目のパネル)が顆粒状の外観を呈し、そのうちのかなりの部分が分泌小胞内に局在する可能性がある。変異型COLGALT1プラスミドをトランスフェクトした細胞では、分泌小胞の形成を欠いたCOL4A1シグナルの細胞内拡散分布が観察された。バーは10μm。
COLGALT1遺伝子(GenBank Accession No. NM_024656)は、IV型コラーゲン(α1鎖、α2鎖)の翻訳後修飾酵素であるコラーゲンβ(1-O)ガラクトシルトランスフェラーゼ1(ColGalT1)をコードする遺伝子である。ColGalT1タンパク質は推定グリコシルトランスフェラーゼドメインを2箇所に有する(Liefhebber JM, et al. BMC Cell Biol. 2010;11:33)。
配列表の配列番号11に示す塩基配列は、NCBIのGenBankにNM_024656.3で登録されているCOLGALT1遺伝子mRNAのCDS領域の塩基配列であり、これにコードされるCOLGALT1タンパク質のアミノ酸配列(NP_078932.2)を配列番号12に示す。NCBI Protein databaseにおけるNP_078932.2の登録情報によると、推定グリコシルトランスフェラーゼドメインは配列番号12中の56~185番残基及び340~525番残基の領域である。配列番号1~10には、COLGALT1遺伝子の各エクソン及びその近傍のイントロンの配列を表1の通りに示した。配列表に示したこれらのCOLGALT1遺伝子及びタンパク質の各配列は、正常なCOLGALT1配列(野生型配列)の典型例である。COLGALT1遺伝子変異の有無は、配列表に示されたCOLGALT1遺伝子の配列を基準とし、これらの基準配列との対比により判断され得る。
Figure 0007301326000001
本発明において、「脳小血管病の検出」という語には、脳小血管病を既に発症している患者の検出(確定診断の補助)の他、まだ発症していないが将来発症するであろう被検者の検出(発症前診断の補助)や、出生前診断の補助が包含される。
本発明では、被検者由来の核酸を含む試料を用いて、被検者がCOLGALT1遺伝子に有害な変異を有するか否かを調べる。脳小血管病を既に発症している、又は将来発症する患者は、COLGALT1遺伝子の有害な変異を両アレル性(ホモ接合、又は複合ヘテロ接合)で有する。すなわち、COLGALT1遺伝子の有害な変異がホモ接合又は複合ヘテロ接合で検出された場合、当該被検者は脳小血管病を発症している、又は将来発症すると判断することができる。COLGALT1遺伝子の有害な変異が片アレル性(ヘテロ接合)で検出された場合、当該被検者は新生児期~小児期発症の脳小血管病の保因者である。
被検者は、胎児又は出生後のヒトである。出生後のヒトには、新生児期~小児期発症の脳小血管病の疑いのある患者、及び該疾患を発症していないヒト被検者が包含される。前者の脳小血管病の疑いのある患者には、臨床的にCOL4A1/COL4A2遺伝子関連疾患の疑いのある患者が包含される。
本発明におけるCOLGALT1遺伝子の「有害な変異」ないしは「病原性の変異」とは、細胞内におけるColGalT1タンパク質の機能を低下又は喪失させる変異であり、例えば、細胞内でのColGalT1タンパク質の発現量、蓄積量、又は酵素活性(ColGalT活性)の低下をもたらす変異である。
COLGALT1遺伝子の有害な変異には、エクソン又はイントロン領域内での1個以上の塩基の置換、欠失、挿入、重複等により生じる、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、スプライシング異常を生じる変異、並びにCOLGALT1遺伝子領域の全体又は一部を欠失する変異が包含される。
ColGalT1タンパク質の機能に重要な領域(典型的には、2箇所の推定グリコシルトランスフェラーゼドメイン)において、1以上のアミノ酸残基が性質(疎水性・親水性の強さ、側鎖の大きさ等)の大きく異なるアミノ酸に置換する変異(ミスセンス変異)は、構造が非常に不安定ですぐに崩壊する等の異常を呈する変異タンパク質をもたらし、結果としてColGalT1の機能が喪失ないしは低下する。進化的に高度に保存されたアミノ酸残基における置換変異も、有害な変異の典型例である。
ナンセンス変異及びフレームシフト変異は、短縮型のColGalT1タンパク質をコードするmRNAを生じるが、そのようなmRNAは多くの場合ナンセンス変異依存mRNA分解(NMD)を受けるため、ホモ変異ではどちらのアレルからもタンパク質が生成されず、その結果ColGalT1タンパク質の機能が喪失する。スプライシング異常を生じる変異、及びCOLGALT1遺伝子領域の一部を欠失する変異でも多くの場合同様である。また、これらの変異は、部分領域が欠失した異常型のタンパク質ももたらし得る。2箇所のグリコシルトランスフェラーゼドメインの少なくともいずれかが破壊された、ないしは欠失した異常型のタンパク質は、通常、ColGalT1タンパク質の機能を喪失する。
COLGALT1遺伝子領域の全体を欠失する変異では、ColGalT1タンパク質が発現しないため、ColGalT1タンパク質の機能が喪失することになる。よって当該遺伝子領域全体の欠失も「有害な変異」に該当する。
任意のCOLGALT1遺伝子変異が有害な変異であるかどうかは、変異型の塩基配列にコードされるアミノ酸配列から推定できる。また、Human Genetic Variation Database (HGVD)(http://www.genome.med.kyoto-u.ac.jp/SnpDB/)、NHLBI Exome Sequencing Project (ESP6500)(http://evs.gs.washington.edu/EVS/)、Exome Aggregation Consortium (ExAC) Browser(http://exac.broadinstitute.org/)、Exome Variant Server (EVS)(http://evs.gs.washington.edu/EVS/)、dbSNP Short Genetic Variations (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/)、1000 Genomes Project等の、健常者集団のエクソームデータや塩基配列多様性に関する周知のデータベースに登録されているかどうかを調べて、有害な変異かどうかを推定することもできる。ColGalT1タンパク質の機能を低下ないし喪失させる有害な変異は健常者にはまれであり、通常、そのようなデータベースには登録されていないか、ヘテロ接合性として極端に低頻度でしか観察されない。従って、被検者のゲノムに検出されたCOLGALT1遺伝子の変異を、上記のようなデータベースと照合し、その変異がデータベースに登録されていないか又は極端に低頻度(例えば10-4以下、10-5以下、又は10-6以下)のヘテロ接合性として登録されている変異であった場合には、当該変異を有害な変異と判断してよい。
また、ある遺伝子中のアミノ酸置換変異が病原性変異であるか否かを調べることができる各種の予測ツールが知られている。例えば、SIFT (http://sift.jcvi.org/)、PolyPhen (http://genetics.bwh.harvard.edu/pph/)、PolyPhen-2 (http://genetics.bwh.harvard.edu/pph2/)、Mutation Taster (http://www.mutationtaster.org/)、Align GVGD (http://agvgd.iarc.fr/agvgd_input.php)などが知られている。実際に検出されたCOLGALT1遺伝子変異について、このような公知の予測ツールを用いて有害な変異であるかどうかを判断することも可能である。SIFTでは、スコア0.05未満の場合、置換はintolerant(タンパク質機能変化に影響あり)と予測される。PolyPhenでは、スコア2.0を超えた場合などに病原性と予測される。PolyPhen-2では、スコア0.000 (良性の可能性が最も大) ~0.999 (有害の可能性が最も大)でスコア付けされ、スコアをもとにした判定がpossiblyあるいはprobably damagingであるときに、病原性変異が強く示唆される。Mutation Tasterでは、病原性又は多型として分類される。Align GVGDでは、Class C0 (可能性小) ~Class C65 (可能性大)の範囲でクラススコア評価され、クラススコアC55以上の変異であれば病原性変異が示唆される。
下記表2に示したCOLGALT1遺伝子変異は、実施例において2症例の解析により新生児期~小児期発症の脳小血管病の病因変異として同定された、COLGALT1遺伝子の有害な変異の具体例である。本発明の方法は、これらの変異のいずれかが存在するか否かを調べることを含んでいてよい。被検者のゲノム上にこれらの変異が検出されなくとも、別の有害な変異がCOLGALT1遺伝子に検出された場合には、当該被検者は新生児期~小児期発症の脳小血管病又はその保因者と判断することができる。
Figure 0007301326000002
COLGALT1遺伝子の変異は、ゲノムDNAやRNA等の核酸試料を用いて塩基配列を解析することで検出可能である。とりわけ、ゲノムDNA試料を用いてゲノム配列の解析を行なうことが最も確実で望ましい。ゲノムDNA等の核酸試料は、末梢血や口腔粘膜スワブ等から常法により容易に調製することができる。また、種々の出生前遺伝子検査法が公知であり、胎児にCOLGALT1遺伝子の有害な変異が存在するかどうかを調べることも可能である。例えば、胎児から細胞を採取して検査する方法(羊水、絨毛、臍帯血を使用)、母体血中に混在している胎児細胞を用いて胎児の遺伝子変異を検査する非侵襲の検査方法、体外受精した受精卵の1細胞を用いる方法(着床前診断)など、種々の手法が公知である。上記非侵襲の検査方法では、胎児細胞を含む試料が「被検者由来の核酸を含む試料」であり、胎児が「被検者」である。
タンパク質のアミノ酸配列は、エクソン領域だけではなくイントロン領域における変異によっても影響され得るが、遺伝子検査では通常、エクソン及びその近傍数十~数百塩基程度、例えば30~50塩基程度のイントロン領域を含めて検査するのが一般的である。本発明でも、エクソン及びその近傍のイントロンを対象にダイレクトシークエンシング等により配列解析を行えばよい。ゲノム配列の解析により変異を検出する場合には、本願配列表の配列番号1~10や公知のデータベースから入手可能なCOLGALT1遺伝子のゲノム配列を参照して適宜プライマーを設計し、ゲノムDNA試料を用いて常法によりシークエンシングを行えばよい。被検者ゲノムDNA上のCOLGALT1遺伝子の塩基配列を決定し、これを野生型配列(例えば配列番号1~10の配列)と比較することにより、変異を詳細に同定できる。決定した塩基配列は、例えばSeqScape (登録商標) 等の公知のソフトウェアを用いて解析することにより、変異の検出やプロファイリングを容易に行うことができる。
変異がホモかヘテロかは、シークエンスの波形データから確認できる。ヘテロ変異の場合、同一部位に2種類のシグナルが重なることになる。ヘテロ変異が2箇所以上ある場合、クローニングして配列決定すれば、変異が複合ヘテロであるかどうか(すなわち、変異が異なる染色体上に存在するかどうか)を確認できる。被検者の両親のゲノムDNA試料が入手可能な場合には、両親が各変異を有しているかを調べることによって被検者の複合ヘテロを確認することもできる。あるいは、下記実施例に記載されるように、被検者由来の試料を用いて変異のフェージング解析を行ない、両アレル性であるかどうかを調べることも可能である。
ゲノムからCOLGALT1遺伝子全長が欠失している場合には、エクソン領域の増幅断片が得られない。一部領域が欠失している場合には、一部のエクソンからの増幅断片が得られない、又は、野生型と比較して小さいサイズの増幅断片が得られる、といった変化が生じる。従って、増幅の有無又は増幅断片のサイズに基づいて遺伝子領域の全部又は一部の欠失を判断することも可能である。
ヘテロ二本鎖の検出により遺伝子変異をスクリーニングする手法も知られている。ヘテロや複合ヘテロの変異が存在する場合、ゲノムDNA試料を熱変性後に再会合させることにより、正常型DNAと変異DNAとがハイブリダイズしたヘテロ二本鎖が生じる。ヘテロ二本鎖は、(1)非変性ポリアクリルアミドゲル中で異なる移動度を示す、(2)ミスマッチ部分の塩基は化学物質や酵素による切断を受けやすい、(3)変性の際に異なる変性温度を示す、といった特性を有する。これらの特性を利用してヘテロ二本鎖を検出する方法がこの分野において公知であり、変異の検査方法として実用化もされている。具体的には、例えば、変性高速液体クロマトグラフィー(dHPLC)を用いてヘテロ二本鎖を検出する方法や、High Resolution Melt法が知られている。
High Resolution Melt法とは、二本鎖DNAに高密度で結合する蛍光色素(SYTO(登録商標)9, LC Green(登録商標), EvaGreen(商標)等)を用いて、二本鎖DNAの融解(熱変性)の過程を蛍光強度の変化としてとらえ、ヘテロ二本鎖を検出する方法である。すなわち、二本鎖DNAに高密度で結合する蛍光色素を用いて二本鎖DNAを染色すると、該二本鎖DNAを融解(熱変性)させたとき、二本鎖が解離した部位から蛍光色素が脱落するため、二本鎖DNAからの蛍光シグナルの量が減少する。従って、そのような蛍光色素を用いることで、二本鎖DNAの熱変性の過程を蛍光強度の変化として視覚的にとらえることができる。温度-蛍光のデータを高密度で取得し解析することで、ヘテロ二本鎖の検出を迅速に高感度で行うことができる。市販の機器類及びキット等を用いて容易に実施可能である。変異がホモである場合、High resolution melt法の検出感度は低くなると想定されるが(検出できないわけではない)、常染色体劣性遺伝の本疾患では複合ヘテロ変異の症例が多いことが想定されるため、High Resolution Melt法等のヘテロ二本鎖検出は本発明でも有効な検査方法となり得る。
本発明はまた、新生児期~小児期発症の脳小血管病の治療剤又は症状緩和剤を提供する。本発明の剤は、ColGalT1タンパク質、又は該タンパク質を生体内で発現可能なベクターを有効成分として含有する。
有効成分として用いるColGalT1タンパク質は、配列番号12に示したアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。
また、生体内でのColGalT1タンパク質の機能(典型的には、タンパク質としての安定性およびColGalT活性)を損なわない限り、配列番号12と少数のアミノ酸が異なる配列のタンパク質であっても、本発明の剤の有効成分として用いることができる。そのようなアミノ酸のタンパク質も、本発明の剤の有効成分である「ColGalT1タンパク質」という語に包含される。ColGalT1タンパク質の機能を維持した、配列番号12とは一部異なるアミノ酸配列のタンパク質の例として、グリコシルトランスフェラーゼドメイン(配列番号12における56~185番残基及び340~525番残基の領域)以外の領域において、少数(例えば、1~数個、1~5個、1~4個、1~3個、1~2個、又は1個)のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入又は付加したアミノ酸配列のタンパク質を挙げることができる。この際の置換の好ましい一態様として、保存的置換を挙げることができる。化学的性質が類似するアミノ酸への置換を保存的置換といい、タンパク質の性質を損なわない置換である。側鎖が類似するアミノ酸は、化学的性質が類似する。側鎖の類似性でアミノ酸をグループ分けすると、例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン)、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群(セリン、トレオニン)、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群(アスパラギン、グルタミン)、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群(アルギニン、リジン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸の群(アスパラギン酸、グルタミン酸)、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群(システイン、メチオニン)、などに分類することができる。これらの各群内での置換を保存的置換の例として挙げることができる。
配列番号12とは一部相違するアミノ酸配列のColGalT1タンパク質は、例えば、配列番号12のアミノ酸配列との配列同一性が90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上であり得る。ここで、アミノ酸配列の「配列同一性」とは、比較すべき2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基ができるだけ多く一致するように両アミノ酸配列を整列させ、一致したアミノ酸残基数を、全アミノ酸残基数で除したものを百分率で表したものである。上記整列の際には、必要に応じ、比較する2つの配列の一方又は双方に適宜ギャップを挿入する。このような配列の整列化は、例えばBLAST、FASTA、CLUSTAL W等の周知のプログラムを用いて行なうことができる。ギャップが挿入される場合、上記全アミノ酸残基数は、1つのギャップを1つのアミノ酸残基として数えた残基数となる。このようにして数えた全アミノ酸残基数が、比較する2つの配列間で異なる場合には、相同性(%)は、長い方の配列の全アミノ酸残基数で、一致したアミノ酸残基数を除して算出される。
また、有効成分として用いるColGalT1タンパク質は、生体内での安定性の向上と血中半減期の延長などを目的とした各種の修飾を加えたものであってもよい。そのようなポリペプチドの修飾技術の具体例として、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を付加する(Clin Nephrol. 2006 Mar;65(3):180-90.やProc Natl Acad Sci USA. 2005 Sep 6;102(36):12962-7.など)、主としてN末端又はC末端に糖鎖を付加する(J Am Chem Soc. 2004 Nov 3;126(43):14013-22やAngew Chem Int Ed Engl. 2004 Mar 12;43(12):1516-20など)、アミノ酸残基の少なくとも一部をD体とする(J Pharmacol Exp Ther. 2004 Jun;309(3):1190-7やJ Pharmacol Exp Ther. 2004 Jun;309(3):1183-9.など)、等の技術が知られている。
有効成分として用いるColGalT1タンパク質は、公知の遺伝子工学的手法を用いて調製することができる。例えば、COLGALT1遺伝子を発現している組織や培養細胞から抽出したRNAより、COLGALT1遺伝子のcDNAをRT-PCRにより調製し、該cDNAを発現ベクターに組み込んで宿主細胞に導入し、該細胞内で目的とするタンパク質を発現させて回収、精製すればよい。RNAの抽出、RT-PCR、ベクターへのcDNAの組み込み、ベクターの宿主細胞への導入は周知の方法により行なうことができる。また、用いるベクターや宿主細胞も周知であり、種々のものが市販されている。
ColGalT1タンパク質を含有する本発明の剤の投与量は、ColGalT1タンパク質の活性が不十分な患者において、十分なColGalT活性を補充し、血管の脆弱性やその他の各種症状を治療ないし緩和できる量であればよい。投与量は、患者の症状、年齢、体重等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、患者に対し1日当たりの有効成分量(ColGalT1タンパク質量)として0.1μg~10 g程度、例えば0.01 mg~100 mg程度であってよい。1日の投与は1回でも良いし、数回に分けて投与してもよい。ColGalT1タンパク質の投与は毎日でも1日~数日おきでもよいが、一般には毎日の投与が好ましい。
投与経路は経口でも非経口でもよいが、一般には静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、髄腔内投与、等の非経口投与が好ましい。ColGalT1タンパク質は、各投与経路に適した、薬剤的に許容される担体、希釈剤、賦形剤等の添加剤と適宜混合して製剤することができる。製剤形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などの経口剤や、吸入剤、注射剤、座剤、液剤などの非経口剤などを挙げることができる。製剤方法及び使用可能な添加剤は、医薬製剤の分野において周知であり、いずれの方法及び添加剤をも用いることができる。
また、ColGalT1タンパク質を直接投与することに代えて、又は直接投与と共に、ColGalT1タンパク質をコードする核酸を含み、生体内で該タンパク質を発現可能な組換えベクターを用いた遺伝子治療を行なうことも可能である。患者は哺乳動物、典型的にはヒトであるため、哺乳動物細胞用のベクターを用いればよい。遺伝子治療に用いることができる哺乳動物細胞用ベクター自体は、この分野において周知であり、市販もされており、公知のベクターや市販品をそのまま用いることができる。例えば、これらに限定されないが、Invitrogen社から市販されているpcDNA3.1(+)(catalog No. V790-20)やpcDNA3.1(-)(catalog No. V795-20)等を好ましく用いることができる。周知のとおり、これらの哺乳動物細胞用ベクターは、哺乳動物細胞内での複製を可能にする複製開始点、外来遺伝子の発現を可能にするプロモーター領域、外来遺伝子を挿入するためのマルチクローニング部位等を有する。なお、ベクターは、レトロウイルスやアデノウイルスのような哺乳動物細胞用のベクターとして用いられているウイルス由来のベクターであってもよい。遺伝子治療に用いられる組換えベクターは、このような哺乳動物細胞用のベクターに、上記で説明した通りのColGalT1タンパク質をコードする核酸を組み込むことにより得ることができる。
患者への組換えベクターの投与自体は、周知の方法により行うことができる。遺伝子治療のための組換えベクターの使用方法として、組換えベクターを直接体内に導入するin vivo法と、患者からある種の細胞を採取し、体外で組換えベクターを該細胞に導入して再度患者体内に戻すex vivo方が知られている(日経サイエンス,1994年4月,p20-45;月刊薬事,1994年,第36巻,第1号,p.23-48;実験医学増刊,1994年,第12巻,第15号など)。本発明ではいずれでもよい。
in vivo方法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、筋肉内、髄腔内などに投与することができる。in vivo方法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には、有効成分であるColGalT1タンパク質をコードするDNAを含有する注射剤等とされ、必要に応じて、慣用の担体を加えてもよい。また、該DNAを含有するリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)-リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
組換えベクターの投与量は、患者の症状、年齢、体重等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、組換えベクター量として患者に対して1 ng~10 mg程度、又は100 ng~1 mg程度であってよい。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
対象および方法
患者
脳小血管病の患者2名を対象とした。患者の両親から書面によるインフォームド・コンセントを得た。実験プロトコールは横浜市立大学医学部の倫理委員会により承認された。患者1及びその両親の白血球よりDNAを抽出した。患者2は、骨格筋剖検サンプルよりDNAを抽出した。
全エクソームシークエンシング(WES)
WES及びデータ解析は既報[5]の通りに行なった。検出された変異はサンガーシークエンシングにより確認した。
ナノポアシークエンサーを用いた2変異のフェージング解析
Prime Star GXL (Takara, 日本国滋賀) 及びKOD-Fx neo (TOYOBO, 日本国大阪)を使用して患者2のゲノムDNAより2箇所のCOLGALT1変異をカバーする4つのアンプリコン(2370~9961 bp)を増幅した。MinION 1D ligation kit (SQK-LSK108) 及びR9.4 Flow Cellを製造者のプロトコール(Oxford Nanopore Technologies, 英国Oxford)に従って使用し、これらのアンプリコンの配列を決定した。ベースコールはMinKNOW1.10.11を用いて行なった。ヒトゲノムリファレンス(hg19)へのリードのアライメントにはLAST (https://github.com/mcfrith/last-rna/blob/master/last-long-reads.md)を用いた。ジェノタイピング及び2つの変異部位間の領域のフェージングはlast-genotype (https://github.com/mcfrith/last-genotype)を用いて行なった。両変異に対するリファレンスバイアスを回避するため、リードアライメントの前に両部位においてリファレンスをGからSに変更した。
デジタルドロップレットPCRを用いた2変異のフェージング解析
Droplet Digital PCR XQ200 system (BIO-RAD, 米国カリフォルニア州Hercules)を用いてドロップレットデジタルPCRを行なった。患者2のゲノムDNAを20 ngと、c.460G>C変異を標的とするFAM標識ロックド核酸(LNA)プローブ、c.1129G>C変異を標的とするHEX標識LNAプローブ、各標的領域を増幅する2組のプライマーセット、及びddPCR Supermix for Probes (no dUTP) (BIO-RAD)を含む反応液でデジタルPCR反応を行なった。2つの変異のフェージングは既報[6]の通りに行なった。
3D構造モデル解析
ヒトColGalT1のモデル構造は、UDP、GalNAc及びMn2+と複合体化したpp-GalNAc-T10の結晶構造 (PDB code 2d7i)[7]より、Protein Homology/analogY Recognition Engine V 2.0 [8]を用いて構築した。同定した変異を含む構造の自由エネルギー変化は、FoldXソフトウェア(バージョン4)[9]を用いて算出し、5回の計算結果の平均値±標準偏差として示した。
コラーゲンガラクトシルトランスフェラーゼ(ColGalT)アッセイ
ColGalT活性は既報[10]の通りに測定した。以下、手順を簡潔に記載する。熱変性させた牛アキレス腱由来I型コラーゲン(Sigma)をアクセプター基質として用いた。ヒトリンパ芽球由来のミクロソームタンパク質約15μgを、0.5 mg/mlコラーゲンアクセプター、60 μM UDP-Gal (Sigma), 50,000 cpm UDP-[14C]Gal (GE Healthcare), 10 mM MnCl2, 20 mM NaCl, 50 mM モルホリンプロパンスルホン酸 (pH 7.4), 及び1 mM DTTに添加し、総量を100μLとした。反応液を37℃で3時間インキュベートした後、500μLの氷冷5%トリクロロ酢酸-5%リンタングステン酸の添加により反応を停止させた。沈殿物をガラス繊維フィルター(Whatman, Sigma-Aldrich)にアプライし、10 mlの50%エタノールで洗浄、30分間乾燥後、シンチレーションβカウンタ(Packard)で計測した。
ベクター及びトランスフェクション
ヒトCOLGALT1クローン(MGC:117270 IMAGE:5138787)をpcDNA3.1/myc-His Cベクター (Invitrogen, 米国カリフォルニア州Carlsbad)に導入し、C末端myc-Hisタグ付加したColGalT1を発現させた。 KOD-Plus-Mutagenesis kit (TOYOBO)を用いた部位特異的変異導入により変異COLGALT1ベクター(p.Leu151Arg, p.Ala154Pro, 及びp.Gly377Arg)を作製した。Xfectトランスフェクション試薬 (Takara) を製造者のプロトコールに従って使用し、HT1080細胞をCOLGALT1発現プラスミドでトランスフェクトした。
RNA干渉
HT1080細胞へのsiRNAのトランスフェクションは、Lipofectamine RNAiMAX transfection reagent (Invitrogen)を製造者のプロトコールに従い用いて行なった。COLGALT1の3'UTR領域を標的とする合計4種のsiRNA(配列番号13~16)を用いた。1つはON-TARGET plus Human COLGALT1 siRNA (79709; Dharmacon)であり、他の3つはカスタムデザインした。非サイレンシングコントロールとしてAll Star Negative Control siRNA (Qiagen, 独国Hilden) を用いた。siRNAトランスフェクションの24時間後、6ウェルプレート又はカバーガラス上で培養した細胞を血清枯渇させ、50μg/mlアスコルビン酸で24時間処理した後に解析(ウエスタンブロッティング、又は免疫蛍光)を行なった。既報[4]の通りに細胞溶解物及び培養上清を別個に採取し、ウエスタンブロッティングに供した。
レスキュー実験
HT1080細胞でのRNA干渉の24時間後、野生型又は変異型のCOLGALT1プラスミド500 ngをトランスフェクトした。その24時間後に細胞を免疫蛍光解析に供した。
シクロヘキシミド処理
HT1080細胞へのCOLGALT1プラスミドのトランスフェクションの48時間後、細胞を10 μg/mlシクロヘキシミドで0, 2, 4, 又は24時間処理し、各時点で細胞溶解物を採取してウエスタンブロッティングに供した。ColGalT1タンパク質レベルは、β-アクチンレベルに対してノーマライズし、0時間におけるサンプルの総ColGalT1タンパク質量で除算して定量化した。
ウエスタンブロッティング
ウエスタンブロッティングはChemiDocTouch Imaging System (BIO-RAD)を用いて行なった。ColGalT1、β-アクチン、Mycの検出には、それぞれウサギポリクローナルGLT25D1抗体(16768-1-AP; Proteintech, 米国イリノイ州Rosemont)、マウス抗β-アクチン抗体(ab6276; Abcam, 英国Cambridge)、マウス抗Myc-tag mAb(MBL, 日本国名古屋)を用いた。COL4A1の検出にはラット抗IV型コラーゲンα1 NC1ドメインモノクローナル抗体(H11)[11]を用いた。バンド強度はImage Lab 5.2.1 (BIO-RAD)のボリュームツールを用いて測定した。
免疫蛍光解析
免疫蛍光は既報[4]の通りに行なった。免疫標識は、ラット抗IV型コラーゲンα1 NC1ドメインモノクローナル抗体 (H11, 抗ラットAlexa Fluor 488と共に使用)、ウサギ抗PDI (タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、この酵素は小胞体に存在しコラーゲン生合成に関与する[4]) ポリクローナル抗体 (SPA-890, 抗ウサギAlexa Fluor 546と共に使用, Enzo Life Sciences, 米国ニューヨーク州Farmingdale)、ウサギGLT25D1ポリクローナル抗体 (16768-1-AP, 抗ウサギAlexa Fluor 546と共に使用, Proteintech), 及び抗Mycタグモノクローナル抗体 (抗マウスAlexa Fluor 488又は546と共に使用, MBL)を用いて行なった。FLUOVIEW FV1000-D共焦点顕微鏡 (OLYMPUS, 日本国東京) 又はAll-in-One Fluorescence Microscope BZ-X800 (KEYENCE, 日本国大阪)で画像を取得した。
結果
両アレル性のCOLGATL1変異を有する患者2名の臨床的特徴
患者1、患者2の臨床的特徴の概要をTable 1に示す。
患者1は研究時年齢12歳、非近親婚の両親の第2子(図1A)。妊娠経過は問題なく、妊娠満期に誘発分娩により合併症なく出産。5か月齢で首がすわらず、筋緊張低下が見られたため、医療機関を受診。脳CTで石灰化と左側脳室拡大を認めた。7か月齢でてんかん発作が出現。単純ないし複雑部分発作と、時にてんかん重積状態が見られ、抗てんかん剤を多剤併用投与した。21か月齢時の脳MRIでは、左半球に孔脳症と、軽度の萎縮を伴う両側性の白質脳症を認めた。現在までに、粗大運動機能及びコミュニケーションを退行なくゆっくりと獲得している。現在、患者1は痙性四肢麻痺を有し、日常生活にフルサポートが必要である。重度の知的障害もあり、K式発達検査による発達指数(DQ)は認知機能11、言語分野14である。12歳時の脳MRIでは変化を認めなかった(図1B, C)。
患者2は、インフルエンザウイルス感染後に多発性の脳実質/脳室内出血により9歳で死亡した。死後に遺伝子解析を実施した。患者2の両親は非近親婚であり、妊娠37週で胎児仮死のため緊急の帝王切開により出産(図1A)。身長50.2 cm (+0.57 SD)、体重2954 g (-0.2 SD)、新生児仮死なし。両親とほとんど目を合わせなかったために4か月齢で医療機関を受診、その後定期的な神経学的検査を開始した。初診時の身長は70.3 cm (+2.3 SD)、体重は8.8 kg (+2.1 SD)。血液、脳脊髄液及び尿の生化学分析の結果は、顕微鏡的血尿があるほかは正常であった。T2強調脳MRIでは両側の大脳白質にわずかな高信号域を認めた。その後、首のすわり4.5か月、寝返り7か月、一人座り8か月、一人歩き18か月、有意語19か月、二語文35か月とその後の発達が正常であった。2歳9か月で身長105.5 cm (+4.3 SD)と背が高かったが、内分泌検査の結果から成長ホルモンによるものではなかった。2歳2か月時に実施した脳MRIでは、T2強調画像で大脳白質に両側性の高信号域を認めた(図1D, E)。IQは境界域であった: 3歳4か月時のIQは88、6歳6か月時のWISC-IIIによる全検査IQは92(言語性IQ100、動作性IQ85)であった。特別支援ではない通常の小学校に入学。8歳時の脳MRIでは、両側大脳基底核の微小出血が見られ、両側性白質脳症は若干拡大を認めた(図1F, G)。9歳時にインフルエンザに感染し、右手と顔面の筋力低下が生じて入院した。軽度の右不全片麻痺が見られたが、脳MRIでは新たな病変を認めなかった。翌朝に意識レベルが低下したため、再度脳MRIを行なったところ、若干の正中偏位を伴った多発性の脳実質/脳室内急性出血を認めた。その翌日に死亡。電子顕微鏡で剖検皮膚組織中にオスミウム好性の顆粒状物質を認めたが、身長の高さと顕微鏡的血尿からCOL4A1/COL4A2遺伝子関連疾患が臨床的に疑われた。
Figure 0007301326000003
両アレル性のCOLGALT1遺伝子変異の同定
患者1についてのトリオのWESでは、COL4A1遺伝子及びCOL4A2遺伝子中にレアな変異は検出されなかったが(平均リードカバレッジはそれぞれ72.9×及び80.8×、コーディング領域の98.3%及び100%を少なくとも10×でカバー)、COLGALT1遺伝子(NM_024656)中にc.452T>G (p.Leu151Arg)とc.1096delG (p.Glu366Argfs*15)の複合ヘテロ変異が同定された。患者2のWESでは、COL4A1遺伝子、COL4A2遺伝子、NOTCH3遺伝子のいずれにも変異が検出されず(平均カバレッジはそれぞれ82.9×、72.6×及び64.0×、コーディング領域の95.2%、97.2%及び92.7%を少なくとも10×でカバー)、COLGALT1遺伝子にc.460G>C (p.Ala154Pro)とc.1129G>C (p.Gly377Arg)の2変異が検出された。
患者2の両親のサンプルが利用不能であったため、患者2で検出された2変異のフェージングを行なった。フェージングは、ナノポアMinIONシークエンサー(図1J)又はデジタルドロップレットPCR(図1K)を用いて2通りの手法にて行なった。ナノポアMinIONシークエンサーによるフェージングの結果は、より厳しいパラメータ(-m100及び-m1000)を採用した場合でも、これらの2変異が異なるアレル上に存在することを裏付けていた。デジタルドロップレットPCR解析では、得られたシグナルがトランス配置に分割された。このことは、2つの変異が連鎖しておらず、ドロップレット中に互いに独立して分布していたことを意味する。総合すると、これらのデータは、患者2の2変異が異なるアレル上に存在することを示唆している。
同定された変異の病原性のインシリコ評価
同定された4つの変異のうち、p.Ala154ProのみがExome Aggregation Consortium(ExAC)(http://exac.broadinstitute.org/)に頻度8.241 × 10-6(121,344アレル中に1つ)で登録されていたが、そのホモ接合性は登録されていなかった。他の変異は、公的に利用可能なゲノム変異データベース(ExAC; NHLBI Exome Sequencing Project Exome Variant Server(http://evs.gs.washington.edu/EVS/); 及びHuman Genetic Variation(http://www.hgvd.genome.med.kyoto-u.ac.jp/))のいずれにも存在しなかった。インシリコ解析ツール(SIFT、PolyPhen-2、及びMutationTaster)は、3つのミスセンス変異の全てが病原性と予測した。ColGalT1タンパク質は推定グリコシルトランスフェラーゼドメインを2箇所に有するが[12]、同定された4種の変異はいずれもColGalT1タンパク質におけるグリコシルトランスフェラーゼの触媒ドメインにマップされた。置換を受けたアミノ酸はいずれも進化的に強く保存された残基であり、これらの変異が酵素活性を大いに変化させるであろうことを暗示している(図1L)[12, 13]。同定されたCOLGALT1遺伝子変異の構造的な影響を評価するため、ColGalT1タンパク質の48~291番残基の領域をカバーするモデルを構築し、L151R変異とA154P変異を予測構造にマップした(図1M)。151番Leu及び154番Alaの側鎖は当該タンパク質の疎水性コアに関与しているようであり、従ってL151R変異とA154P変異はタンパク質のフォールディングを不安定化して酵素活性を損なわせるものと考えられる。これらの置換変異の自由エネルギー変化をFoldXソフトウェア(バージョン4)[9]で推定するといずれも2.0 kcal/molを超えており(図1N)、上記の構造観察結果と合致した。377番Glyを含む信頼性の高い構造モデルは構築できなかったため、G377R変異がタンパク質の機能に及ぼす効果の構造レベルでの評価は行わなかった。
ColGalT活性の低下はIV型コラーゲンの分泌に影響する
COLGALT1遺伝子がコードするコラーゲンβ(1-O)ガラクトシルトランスフェラーゼ1は、ヘテロ三量体形成及び細胞外分泌の前のプロコラーゲンペプチドの翻訳後修飾として、ガラクトースをヒドロキシリジンに付加する。COLGALT1遺伝子はヒト組織中に恒常的に発現し、IV型コラーゲンに対して強いColGalT活性を示す[10]。従って、ColGalT活性の低下は、脳血管系の基底膜中に豊富なIV型コラーゲンの分泌に影響を及ぼす可能性がある。これを調べるため、患者1及び年齢をマッチングしたコントロール3名に由来するリンパ芽球様細胞株(LCL)を用いてColGalT1タンパク質発現及びColGalT活性の検証を行なった。ウエスタンブロッティングの結果、患者1由来のLCL中にはColGalT1タンパク質が乏しいことがわかった(図2A)。ColGalT活性を測定したところ、患者のLCLは検出可能なColGalT活性を有しなかった(Table 2)。
次に、ColGalT活性の低下がコラーゲン生合成に及ぼす影響を明らかにするため、IV型コラーゲンを内因的に産生するHT1080細胞でCOLGALT1遺伝子のノックダウンを行ない、COL4A1タンパク質の細胞内及び細胞外の存在量を調べた。COLGALT1遺伝子を平均93%抑制すると、COL4A1タンパク質が細胞内及び細胞外のどちらでも有意に減少した(図2B)。免疫蛍光解析の結果、COLGALT1遺伝子をノックダウンしたHT1080細胞では、コントロールと比べて細胞質内のCOL4A1タンパク質が減少することが確認された(図2C)。
Figure 0007301326000004
HT1080細胞内での変異ColGalT1タンパク質(p.Leu151Arg及びp.Ala154Pro)の不安定性
既に死亡した患者2からは組織や培養細胞を入手できないため、インビトロ研究を行なって患者2で同定された2つの変異の病原性を検証した。患者1では、ColGalT1タンパク質発現、ColGalT酵素活性のいずれも検出不能であった。患者2で同定された2種のミスセンス変異のメカニズムとして、(1) 変異ColGalT1タンパク質が不安定で分解されやすい、(2) 変異ColGalT1タンパク質は安定だが、酵素活性が損なわれている、という2通りの可能性が考えられる。まずはColGalT1タンパク質の不安定性を調べた。野生型又は変異型のCOLGALT1を発現するプラスミドをトランスフェクトしたHT1080細胞をシクロヘキシミドで処理し、細胞内タンパク質合成を阻害した。各時点で採取・調製した細胞溶解物のウエスタンブロッティングを行ない、トランスフェクトしたプラスミド由来のColGalT1タンパク質を抗myc抗体で検出した。p.Leu151Arg変異タンパク質及びp.Ala154Pro変異タンパク質では、野生型に観察される標準バンドに加えて、より小さいバンドが全ての時点で観察された(図3A)。24時間の野生型ColGalT1タンパク質サンプルにおいても、同じバンドが弱い強度で観察された。この低分子量の異常バンドは、異なるグリコフォームないしはタンパク質分解断片であると考えられる。これら2種の変異タンパク質では、野生型と比べて、標準ColGalT1タンパク質の量が各時点でより速やかに減少しており、24時間後には野生型との間で有意差が認められた(図3B)。この結果は、p.Leu151Arg変異型及びp.Ala154Pro変異型のColGalT1タンパク質が不安定であることを示唆している。
HT1080細胞において変異ColGalT1タンパク質により生じる、不十分なCOL4A1産生
ColGalT酵素活性を検証するため、内因性のCOLGALT1遺伝子をノックダウンしたHT1080細胞と、野生型又は変異型のCOLGALT1遺伝子cDNAプラスミドとを用いてレスキュー実験を行ない、正常なCOL4A1産生が回復するかどうかを調べた。レスキューが成功していることを確認した上で(図3B)、野生型又は変異型のCOLGALT1 cDNAでレスキューした条件下での細胞内COL4A1産生を免疫蛍光法により調べた。野生型COLGALT1遺伝子でレスキューした場合には、COL4A1の免疫染色シグナルが、天然のHT1080細胞において観察される顆粒状パターンに回復した。既に報告されるように、顆粒状パターンのCOL4A1の一部は、該タンパク質が小胞体から原形質膜に輸送される場であるところの分泌小胞内に局在する可能性がある[4]。野生型COLGALT1遺伝子でレスキューされた細胞では、顆粒状パターンのCOL4A1シグナルは、myc陽性トランスフェクト細胞のうちのおよそ45%に観察された。しかしながら、いずれかのCOLGALT1変異体でレスキューされた場合には、顆粒状パターンを伴うmyc陽性トランスフェクト細胞の数が有意に減少した(p.Leu151Arg変異及びp.Ala154Pro変異のCOLGALT1遺伝子でレスキューされた細胞では2%~3%、p.Gly377Arg変異のCOLGALT1遺伝子でレスキューされた細胞では13%; 少なくとも4回の独立実験の平均値)(Table 3)。その上、回復したCOL4A1シグナルは、大部分のmyc陽性細胞において、細胞質内(顆粒状パターンなし)に拡散して分布していた。変異型ColGalT1タンパク質を発現する細胞内でのCOL4A1の拡散分布は、機能的なColGalT1タンパク質を発現する細胞で観察されるように、小胞体出口部位の代わりに小胞体内腔にコラーゲン分子が蓄積していることを示唆している。この結果は、COLGALT1遺伝子における3種のアミノ酸置換変異が酵素活性に悪影響を及ぼし、細胞内COL4A1輸送の回復が不十分になることを示している(図3C及びTable 3)。
Figure 0007301326000005
考察
本研究では、COL4A1/COL4A2遺伝子関連疾患に関連する、新生児期~小児期発症の脳小血管病の新たな遺伝的原因として、ColGalT1活性に悪影響を及ぼす両アレル性のCOLGALT1遺伝子変異を発見した。本研究は、ColGalT1活性の低下によりCOL4A1の産生が減少し、それにより、COL4A1/COL4A2遺伝子関連疾患でみられるようにCOL4A1分泌が低下する[3,4]ことを示唆している。COL4A1タンパク質の低下又は非グリコシル化は、過去の報告[3]で示唆されるように、血管基底膜の脆弱性、又は他の細胞外分子とのタンパク質間相互作用の崩壊をもたらすであろう。
コラーゲンの翻訳後修飾には、プロリン・リジン残基のヒドロキシル化、ヒドロキシリジンのグリコシル化が包含される。α1/2鎖の保存されたGly-X-Yリピート中のY位はしばしばリジンが占めている[10]。グリコシル化されたヒドロキシリジンを失うと、リジルヒドロキシラーゼ3欠損によりIV型コラーゲンの分泌が障害されることが既に報告されているが[14]、本研究の結果はこの報告と合致する。ヒトにおいて、リジルヒドロキシラーゼ3欠損をもたらすPLOD3遺伝子の両アレル性変異が血管を脆弱化することも知られている。
本研究で同定された変異の病原性を考慮すると、患者1のp.Leu151Arg変異及びp.Glu366Argfs*15変異はいずれもColGalT1タンパク質の安定性とColGalT活性を損なわせ、タンパク質量・酵素活性をいずれも検出不能レベルまで低下させる。従ってこれらの変異はヌル変異である。患者2のミスセンス変異p.Ala154Pro及びp.Gly377Argに関しては、本研究の機能解析により、p.Ala154Proがヌル変異であり、p.Leu151Argと同様にタンパク質の不安定性とColGalT活性の障害をもたらすことが示唆された。p.Gly377Argは、レスキュー実験の結果に基づくとColGalT活性への作用がより穏和であり、機能的にハイポモルフな変異と考えられる。
患者2名はいずれも、新生児期~小児期発症の脳小血管病に適合する臨床的特徴を呈していた。患者1は孔脳症と診断された。患者2は、微小出血の再発がある緩徐進行型の白質脳症を有し、高身長で血尿もあった。患者2の急死はウイルス感染後の多発性の脳実質/脳室内出血が原因であり、患者2は血管が脆弱であった可能性がある。
2名の患者の臨床症状は異なっていた。しかしながら、ColGalT活性異常に依存する血管脆弱性に基づけば、彼らの臨床的特徴は1つの病型に分類できる。患者1はヌルのColGalT活性を有しており、患者2よりも血管損傷のリスクが高かったために極早期(周産期)に上衣下出血を発生するに至ったことが示唆される。大脳萎縮を伴う最重度発達遅延は、この単一の血管イベントによって生じた結果であると考えることができる。当該患者の疾患の経過(突然発症、病状の進行・退行がない)は脳卒中に適合していた。患者2のビトロのデータは、当該患者のColGalT活性が50%未満であったかもしれないが患者1よりは比較的維持されていたということを示唆している。従って、患者2の血管リスクは患者1よりも低く、ウイルス感染が血管性出血を誘発するまでほぼ正常に発達できた。これらの患者においては、COL4A1/COL4A2遺伝子関連疾患と同様に[15]、環境ストレス(胎児のストレス又は感染)が発症の引き金であったと考えることができる。従って、当該患者らの臨床的特徴は同じ病型に分類することができる。
患者2名の画像所見もCOL4A1/COL4A2遺伝子関連疾患のものと類似点があった。COL4A1/COL4A2遺伝子関連疾患において観察される典型的なMRI像として、血管性白質脳症、孔脳症の空洞、深部出血、微小出血、ラクナ、深部石灰化、血管周囲腔の拡張、又は頭蓋内動脈瘤が挙げられる[16]。患者1では、上衣下出血、孔脳症、微小出血、及び石灰化が見られた。白質脳症は主として脳室周囲と深部の白質でみられ、U-fiberは保持されていた。患者2では、脳実質/脳室内出血、微小出血、石灰化、ラクナ、血管周囲腔の拡張が見られた。白質脳症はびまん性で左右対称にみられ、U-fiberを保持していた。
患者2で見られたオスミウム好性の顆粒状物質(GOM)は、NOTCH3遺伝子変異を有しない患者で報告されているものの[18]、皮質下梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL; NOTCH3の単一遺伝子異常により片頭痛、脳梗塞(皮質下白質のくりかえすラクナ梗塞)、白質脳症、認知症(脳血管性認知症)、精神症状をきたす疾患であり、Notch3細胞外ドメインで構成されるGOMを病理学的な特徴とする[19,20])の感度可変・高特異性の診断マーカーである[17]。患者2の臨床所見及び遺伝的所見がCADASILに適合しなかったことを考慮すると、当該患者で観察されたGOMはNOTCH3切断物とは無関係な沈着物を示していると考えられる。COLGALT1遺伝子関連脳小血管病においてGOMが出現し得るか否かを議論するためには、さらなる症例でのGOMの検出が必要である。
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Claims (2)

  1. 被検者由来の核酸を含む試料を用いて、当該被検者が、下記(1)~(4)のいずれかから選択されるCOLGALT1遺伝子変異を有するか否かを調べることを含む、COLGALT1遺伝子変異を原因とする脳小血管病又はその保因者の検出を補助する方法であって、前記COLGALT1遺伝子変異がホモ接合又は複合ヘテロ接合で検出された場合に、当該被検者が脳小血管病を発症している又は将来発症することが示され、ヘテロ接合で検出された場合に当該被検者が保因者であることが示される、方法。
    (1) COLGALT1遺伝子コード領域の第452位のT(配列番号3中の第285位)がGになる変異
    (2) COLGALT1遺伝子コード領域の第460位のG(配列番号3中の第293位)がCになる変異
    (3) COLGALT1遺伝子コード領域の第1096位のG(配列番号7中の第437位)が欠失する変異
    (4) COLGALT1遺伝子コード領域の第1129位のG(配列番号7中の第470位)がCになる変異
  2. 前記核酸がゲノムDNAであり、ゲノム配列を調べることにより行なわれる、請求項1記載の方法。
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