JP7300818B2 - 風味、食感、日持ち向上効果が改善された白焼きパン - Google Patents

風味、食感、日持ち向上効果が改善された白焼きパン Download PDF

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Description

本発明は、白焼きパンの風味、食感及び日持ち向上効果を改善する方法と、前記品質を改善したパンに関するものである。
こんがりとした焼き色を呈した通常のパンとともに、焼き色が付いていない白焼きパンを商品棚で見かけることがある。白焼きパンは白い外観に加え、クラストまでしっとり柔らかい食感が特長のパンであるが、焼き色を付けないようにするために、アミノカルボニル反応を引き起こす糖類を減らし、焼成温度を下げて、焼成時間も短くするなどの工夫がされている。糖類の配合量を減らした結果、白焼きパンは呈味が弱くなるだけでなく、イーストが生成する発酵風味も弱くなり、さらに焼成条件を穏やかにした結果、生地中に水分が多く残され、食感は口内でぐちゃつきやすく、日持ちも通常のパンより悪くなるなどの短所があった。日持ち向上剤を用いて、日持ちを延ばした場合には、もともと呈味や発酵風味が弱いため、日持ち向上剤による酸味、酸臭が通常のパンより際立ち、食べにくいなどの短所もあった。
これらの短所を解決するために、特許公報1では、スクラロースを用いてアミノカルボニル反応を抑え、かつ、甘味を付与する方法が開示されている。特許文献2では、添加する油脂中の全トリグリセリドについて、脂肪酸残基の種類と構成比を一定比にすることで白焼きパンの食感を改善できることが開示されている。また、特許文献3ではグルコースとトレハロースを糖類として用い、焼き色を付けずに製パン時の伸展性、食感、風味を改善する方法が開示されている。特許文献4では、一定比率の油脂とタンパク質を含有し、pHも一定数値内に調整した水中油型エマルションに乳酸菌を発酵させた乳酸発酵物を添加することで、風味、食感、保存性に優れた保存剤を使用しない白焼きパンの製造方法が開示されている。さらに、特許文献5では、特許文献4などでは解決されないクラムやクラストのくすみを油溶性の黄色色素を使用することで改善できることが明らかにされている。
しかしながら、前記の先行技術文献では、改善される品質が1つである場合が多く、複数の短所を有する白焼きパンを簡便に改善することが出来なかった。特許文献4では風味、食感および保存性の向上について記載しており、複数の短所を改善することが示されているが、保存性の向上について添加効果は得られているものの、賞味期限を数日間延長するレベルまで至っておらず、改善の余地が残されていた。そのため、現状の白焼きパンは、日持ち向上剤が依然として使用されているケースが多い。
白焼きパンにおける日持ち向上剤の酸味をマスキングする方法は、これまでに報告されてこなかった。また、風味の改善と酸味のマスキングのために、市販の発酵種、発酵風味料をそのまま添加する方法もあるが、これらは糖やアミノ酸を多く含むため、風味の改善は出来ても、焼き色を呈することが問題となっていた。
特許第4727050号公報 特開2014-18163号公報 特開2007-97554号公報 特許第3603743号公報 特開2011-234661号公報
本発明が解決しようとする課題は、白焼きパンの製造で糖類の配合量を減らしたり、焼成条件を穏やかにすることで発生していた、呈味の低下、発酵風味の低下、口内でのぐちゃつき、日持ちの低下、日持ち向上剤の酸味・酸臭マスキングの低下であり、これらをまとめて解決する製造方法が求められていた。
本発明者らは、上記課題の解決につき鋭意研究を重ねた結果、特定のパン種を白焼きパンの原材料に用いることで、白焼きパンの呈味と発酵風味を高めつつ日持ち向上剤の酸味を低減し、食感では口内でぐちゃつきにくく、日持ち向上剤の添加量を減らしても日持ちが維持、改善できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
(1)乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物、穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物、および穀物粉を基質として、酵母で発酵させて得られるパン種。
(2)パン種が、白焼きパン用のパン種である、(1)記載のパン種。
(3)(1)または(2)のパン種を用いるパンの製造方法。
(4)パンが、白焼きパンである、(3)記載の方法。
(5)パンに含まれる、マルトース、ラクトース、グルコースおよびフルクトースの総量が750ppm以下であり、遊離アミノ酸総量が30mg/100g以下であり、色差計によるL値が90以上、a値が-2から2であり、b値が20-25であるパン。
本発明のパン種を白焼きパンの原材料に用いることで、白焼きパンの呈味と発酵風味を高めつつ日持ち向上剤の酸味を低減し、食感では口内でぐちゃつきにくく、日持ち向上剤の添加量を減らしても日持ちが維持、改善できる白焼きパンを提供することができる。
テクスチャーアナライザーで測定した付着性パターン 無添加区と実施区1におけるアミノ酸濃度 無添加区と実施区1における糖濃度 無添加区と実施区1における香気成分分析結果
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる穀物粉としては、穀物や穀物の胚乳または当該胚乳を胚芽や表皮を付けた状態で挽いて調製される粉を例示することができる。ここに記載する穀物とは、小麦、米(うるち米、もち米)、大麦、ライ麦、とうもろこし、あわ、ひえ、及び、はと麦等を挙げることができ、穀物粉としては、小麦粉(例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉など)、米粉(上新粉、上用粉、もち粉、白玉粉、玄米粉など)、大麦粉、ライ麦粉(ライ麦全粒粉または皮むきライ麦の細挽き、中挽き、粗挽き、石臼挽き)、とうもろこし粉、あわ粉、ひえ粉、はと麦粉等を用いることが出来る。
本発明に用いられる穀物粉が小麦粉である場合には、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉のいずれか1種類以上でよく、パン種と穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物においては、作業性、品質安定性などの理由から、中力粉または薄力粉が好ましく、さらに好ましくは薄力粉である。
本発明に用いられる乳または乳製品は、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、クリームチーズ、バター、チーズ、濃縮ホエイ、ホイップクリーム、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、乳飲料、脱脂粉乳、タンパク質濃縮ホエイパウダー、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエープロテインコンセントレイト、トータルミルクプロテイン等が挙げられる。
本発明における乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物は、乳固形分含量が5-75重量部となるように調整した上記の乳または乳製品の水懸濁液100重量部に対して、乳酸菌スターターまたは乳酸菌の前培養液を0.001-20重量部添加、混合し、発酵させて得ることができる。用いる乳または乳製品の種類により水に対する粘性が異なるため、適宜目的とする性状に合わせ、乳または乳製品と水の配合割合を調節する。また、乳酸菌は用いる乳または乳製品を資化することが可能な菌種を用いるが、乳酸菌の添加量、初発pH、発酵温度、発酵時間は乳酸菌の生育特性に合わせて、調節する。発酵温度の保持は一定の温度を制御できる設備があれば良く、製造スケールにより、インキュベーター、恒温水槽、温度調節機能を有した発酵タンク等を用いることが出来る。また、発酵は、用いる乳酸菌の特性に合わせて、静置培養または撹拌培養のいずれかを行うことができ、撹拌培養を行う場合は、攪拌機などを用いて発酵するか、撹拌羽を有したタンクを用いると良い。
本発明における乳または乳製品の乳酸菌発酵物における発酵終了の目安は、発酵物のpH値および酸度を測定して確認する。pH値の測定方法は、ガラス電極法に従う。本発明における乳酸菌発酵物の両測定値の範囲は、pH3.0‐5.5および酸度2-30(mL/10g・0.1N-NaOH)である。
本発明における、乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物の形状は、液状およびペースト状のいずれでもよい。
本発明において、発酵終了後の乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物は、そのまま本発明のパン種の原材料として用いても良いし、発酵後の品質を保つために成分調整して用いても良い。成分調整には、異性化糖、醸造酢、食塩、増粘多糖類等を用いることが出来る。
本発明における穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物は、上記の穀物粉100重量部に対し、水を50-500重量部、乳酸菌スターターまたは乳酸菌の前培養液を0.001-20重量部添加、混合し、発酵させて得ることができる。穀物粉と水の配合割合は、用いる穀物粉の種類により水に対する粘性が異なるため、適宜目的とする性状に合わせ、調節する。また、乳酸菌は用いる穀物粉を資化することが可能な菌種を用いるが、乳酸菌の添加量、初発pH、発酵温度、発酵時間は、乳酸菌の生育特性に合わせて調節する。発酵温度の保持は一定の温度を制御できる設備があれば良く、製造スケールにより、インキュベーター、恒温水槽および温度調節機能を有した発酵タンク等を用いることが出来る。また、発酵は、発酵物に用いる乳酸菌の特性に合わせて、静置培養または撹拌培養のいずれかを行うことができ、撹拌培養を行う場合は攪拌機などを用いて発酵するか、撹拌羽を有したタンクを用いると良い。
本発明における穀物粉を基質とした乳酸菌および/または酵母の発酵物における発酵終了の目安は、発酵物のpH値および酸度を測定して確認する。pH値の測定方法は、ガラス電極法に従う。本発明における乳酸菌発酵物の両測定値の範囲は、pH3.0-5.5および酸度2-30(mL/10g・0.1N-NaOH)である。
本発明において、発酵終了後の穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物は、そのまま本発明のパン種の原材料として用いてもよいし、発酵後の品質を保つために成分調整して用いても良い。成分調整には、異性化糖、醸造酢、食塩、増粘多糖類等を用いることが出来る。
本発明に用いられる乳酸菌は、乳または乳製品を基質して発酵させるか、または、穀物粉を基質として発酵させたときに、良好に生育し、発酵できる乳酸菌であれば、特に限定されない。例えば、エンテロコッカス デュランス(Enterococcus durans)、ラクトバチルス アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス ブルガリカス(Lactobacillus delburueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス ファーシミニス(Lactobacillus farciminis)、ラクトバチルス ファーメンタム(Latobacillus fermentum)、ラクトバチルス フラクチヴォランス(Lactobacillus fructivorans)、ラクトバチルス ガリナラム(Lactobacillus gallinarum)、ラクトバチルス ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス ナミュレンシス(Lactobacillus namurensis)、ラクトバチルス パラリメンタリウス(Lactobacillu paralimentarius)、ラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス ロシアエ(Lactobacillus rossiae)、ラクトバチルス サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス サンフランシスセンシス(Lactobacillus sanfranciscensis)、ロイコノストック シトレウム(Leuconostoc citreum)、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides)、ワイセラ シバリア(Weissella cibaria)、ワイセラ コンフゥーサ(Weissella confusa)、ワイセラ パラメセンテロイデス(Weissella paramesenteroides)、ペディオコッカス アルゲンティニカス(Pediococcus argentinicus)、ペディオコッカス イノピナタス(Pediococcus inopinatus)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、などが挙げられる。
本発明のパン種の調製に用いられる酵母は、上記穀物粉を基質として発酵させたときに、良好に生育し、発酵できる酵母であれば、特に限定されない。例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ロゼイ(Saccharomyces rosei)、サッカロマイセス・シュバリエリ(Saccharomyces chevalierii)、サッカロマイセス・フロレンティナス(Saccharomyces florentinus)、サッカロマイセス・エグジグアス(Saccharomyces exiguous)、サッカロマイセス・バイリイ(Saccharomycesbailii)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、トルラスポラ・デルブルッキー(Torulaspora delbrueckii)、キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)、キャンディダ・ケフィア(Candida kefir)等が挙げられる。
上記の乳または乳製品の乳酸菌発酵物、穀物粉を基質とした乳酸菌及び/または酵母の発酵物ならびに穀物粉を、必要に応じて混合して得られる組成物に、酵母、水および必要に応じてイーストフードを添加して本発明のパン種を調製することができる。それぞれの配合量としては、穀物粉100重量部に対し、乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物は3-30重量部、好ましくは5-25重量部、より好ましくは15-20重量部であり、穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物は、2-20重量部、好ましくは5-15重量部、より好ましくは8-12重量部である。水を用いる場合は、目標のパン種の性状に合わせて適宜調節して良いが、0‐500重量部、好ましくは50-300重量部、より好ましくは100‐150重量部である。また、イーストフードを用いる場合は、パン種に用いられる原材料の特性に合わせて適宜用いて良く、0.1‐0.5重量部添加する。また、酵母は上記の酵母をいずれも、適量用いることができる。発酵条件は酵母の生育特性に合わせて、初発pH、発酵温度、発酵時間を調節することができる。発酵温度の保持は一定の温度を制御できる設備があれば良く、液種の場合は、インキュベーターまたは恒温水槽または温度調節機能を有した発酵タンク等を用いることができ、生地種の場合はインキュベーター、冷蔵庫等を適宜用いる。当該パン種は、発酵条件で区別される各種製法で発酵させても良い。例えば、低温長時間種で発酵させる場合には、発酵温度を2-35℃、好ましくは4-25℃とし、発酵時間を十分に設ける。
本発明のパン種は、通常のパンの製造に用いることもできるが、糖類、及び/またはタンパク質の配合量を、通常のパンに比べて減じ、必要に応じて焼成温度の低下や、焼成時間の短縮により、焼成時のクラスト部分のアミノカルボニル反応による着色を抑制したパン、すなわち白焼きパンの製造に好ましく用いられる。
白焼きパンは、着色において通常のパンと区別される。例えば、色差計によるL値は90以上であり、a値は-2~2であり、b値は20~25程度である。
本発明において、パン種をパンに添加する方法は、特に限定されないが、添加するタイミングは原材料の混捏開始時に添加するとグルテン形成に影響を及ぼさず、均質に混合することが出来る。
本発明において、本発明のパン種を添加する量は、特に限定されず、パンの性状に合わせて当業者が適宜選択することができる。添加量は、例えば、ベーカーズパーセントで、好ましくは5-50質量部、より好ましくは10-40質量部、より好ましくは20-35質量部、さらに好ましくは25-30質量部である。ここで、ベーカーズパーセントとは、穀物粉の総質量を100%とした場合の、その他の各原材料の質量比を意味する。ベーカーズパーセントは対粉パーセントとも呼ばれる。
パンの製造方法としては、後述する日持ち向上剤の使用を含め、本発明のパン種を用いる以外は通常のパンの製造方法を用いることができ、ストレート法、中種法、湯種法等の公知の方法を用いることができるが、焼成温度を140~220℃、好ましくは160~210℃とした場合、白焼きパンを得ることができるため好ましい。
本発明において、パン種を原材料として用い、常法とおり製出したパンは、特に白焼きパンにおいて当該パン種を使用しない場合と比較して、白焼きパンの呈味と発酵風味を高めつつ日持ち向上剤の酸味を低減し、食感では口内でぐちゃつきにくく、日持ち向上剤の添加量を減らしても日持ちを維持、改善できる効果を示す。ここで、白焼きパンの呈味とは、甘味、塩味、うま味、酸味で構成される複雑な味と説明されるが、本発明においては日持ち向上剤の添加により強まる酸味は除かれる。発酵風味とは酵母が発酵したことにより生成される風味を指す。口内でのぐちゃつきとは、パンを口に含んで咀嚼している間に、食塊が歯や口内にへばりついて食べにくさを感じたり、不快に感じたりする食感を示す。また、本発明における日持ちとは、一般生菌による腐敗を指し、焼成後30℃で保存したときの一般生菌数の変動で評価することができる。
本発明において、使用する日持ち向上剤は、特に制限はなく、目的に応じて適宜、種類と添加量を選択することができる。例えば、有機酸塩、有機酸、アミノ酸、ショ糖脂肪酸エステル、賦形剤などから構成される剤を用いることができる。ただし、日持ち向上剤に含まれるアミノ酸、還元糖により焼き色を呈する場合があるため、これらをほとんど含まないか、添加量は対粉0.1-0.5%程度で目標の日持ち向上効果が得られるものが良い。
本発明におけるパンの風味の官能評価方法を記載する。実施例1および2では、訓練を受けた専門パネラー9名で焼成1日後の試料について官能評価を行った。風味では、「甘い香り(ミルク様の)」「甘い香り(フルーティーな)」「粉臭」「蒸れ臭」「酸臭」「甘味」「酸味」について無添加区を基準して比較評価した。評価は1から7までの点数で表し、無添加区を4点とした。いずれの官能評価項目においても、その特性が強く感じられた場合には、4点より大きい数値で評価し、弱く感じられた場合には、4点より小さい数値で評価した。「甘い香り(ミルク様の)」と「甘い香り(フルーティーな)」と「甘味」は、評価点が大きいほど評価が良く、小さいほど評価が悪いとした。「粉臭」については、原材料の穀物粉に由来する不快な粉臭が強いほど評価が悪く、弱いほど評価が良いとした。「蒸れ臭」は原材料の穀物粉が湿った時に感じる不快なにおいやイースト臭が強いときに評価が悪く、弱いほど評価が良いとした。「酸臭」「酸味」については、不快な酸味と酸臭が強いほど評価が悪く、弱いほど評価が良いとした。
本発明における食感の官能評価方法を記載する。実施例3では、訓練を受けた専門パネラー9名で焼成1日後の試料について、官能評価を行った。食感では、「しっとりさ」、「歯切れ」、「ぐちゃつき」について評価し、無添加区を基準として比較、評価した。評価は1から7までの点数で表し、無添加区を4点とした。「しっとりさ」では、しっとりしているほど7点に近く、ぱさついているほど1点に近い評価点とし、「歯切れ」では、もっちりしているほど7点に近く、さっくりしているほど1点に近く評価した。「ぐちゃつき」はぐちゃつきをひどく感じるほど7点に近く、ぐちゃつきをほとんど感じない場合には1点に近い値で評価した。
本発明におけるパンのアミノ酸の分析方法を記載する。
分析試料の前処理として、フードカッターで粉砕したパン50gをビーカーに秤量し、75%エタノール溶液150mLを加え、マグネチックスターラ―で撹拌、抽出した。抽出液を吸引濾過した後、濾液を回収し、ブフナー漏斗上のパンは再び75%エタノール溶液150mLと混合して、アミノ酸を抽出をした。上記の手順を3回繰り返し、得られた抽出液はナス型フラスコに少量ずつ移して、遠心エバポレーターで水がなくなるまで全量濃縮した。ナス型フラスコに乾固された抽出物を1%スルホサリチル酸溶液で洗い取り、メスフラスコで25mLに定容した。得られた試料液は冷蔵庫で一晩静置保存した。翌日水層を回収し、0.45μm孔径ディスクフィルターでろ過後、濾液について全自動アミノ酸分析機(JLC-500V、日本電子株式会社)に供した。
本発明において、パンに含まれる糖類の分析には、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所、High Performance Liquid Chromatography;HPLC)を用いた。分析試料の前処理として、50mL容遠沈管にフードカッターで粉砕した白焼きパン5gを秤量し、20mLの蒸留水を注加して、卓上ミキサーで均質化した。遠心分離(20400G、5分、4℃)後の遠心上清5mLにアセトニトリル5mLを注加し、卓上ミキサーで撹拌後、静置した。当該試料液を1.5mL容マイクロチューブに1mL分取し、遠心分離(20400G、5分、4℃)後、遠心上清を0.45μm孔径ディスクフィルターでろ過し、分析試料としてHPLCに供した。
本発明におけるHPLC法 分析条件を記す。
分析カラム:Shodex Asahipak NH2P-50G 4A
移動相:77%アセトニトリル
オーブン温度:40℃
流速:1.0 mL/min
本発明において、パンの香気成分はヘッドスペース法(Head-Space法;HS法)で検出される揮発性成分を固相マイクロ抽出ガスクロマトグラフ質量分析法(Solid Phase Micro Extraction Gas Chromatography-Mass spectrometry法;SPME-GC/MS法)で定性した。
分析試料の前処理として、焼成1日後の白焼きパンをフードカッターで粉砕し、20mL容のGC用スクリューキャップ付バイアル瓶に1g秤量した。内部標準物質は0.01%シクロヘキサノール水溶液とし、試料と一緒にGC用バイアル瓶に20μL封入し、PTFE被覆シリコンセプタムで密封した。
本発明におけるSPME-GC/MS法の分析条件を記す。
分析装置:GC本体-7980A(アジレントテクノロジー株式会社)
MS-700B(アジレントテクノロジー株式会社)
分析カラム:TC WAX (ジーエルサイエンス株式会社、60m×0.25mm i.d. 膜厚0.25μm)
移動相:He(ヘリウム)
シリンジ:DVB/Carboxen/PDMS(SPELCO)
吸着条件:50℃、30分
注入・脱離条件:250℃・3分、スプリットレス
加温条件:40℃・5分→2℃/分→100℃→8℃/分→240℃→240℃・5分
イオン源温度:230℃
イオン化電圧:70eV
同定:PBMアルゴリズムにてNISTデータベースで照合
本発明において、官能評価の「ぐちゃつき」については、テクスチャーアナライザー(測定機器:EZ-Test EZ-SX、株式会社島津製作所、解析ソフト:TRAPEZIUM MX、株式会社島津製作所)を用いて簡易モデルで数値化した。すなわち、パン30gに蒸留水22.5mLを加え、ドウミキサー(National MFG)で2分間混捏し、直径6cmの球状に成形した塊を食塊の簡易モデル(食塊モデル)とした。白焼きパンと蒸留水の混合比は、白焼きパンを口に含んだ後、口内でぐちゃつきを感じ始めてから感じ終わるまでに得られる食塊の水分量を基準とした。「ぐちゃつき」は食塊モデルとテクスチャーアナライザーのプランジャーとの付着力として捉え、食塊モデルをテクスチャーアナライザーの台座にセットし、楔形プランジャーで食塊モデルを圧縮した後、引き抜くときに発生するプランジャーへの負荷力を付着力とした。本発明における食感分析条件を下記に記した。
圧縮率:60%
速度:600 mm/min
本発明において、パンの日持ち効果は一般生菌数測定で評価した。試料10gをストマッカー用袋に秤量し、滅菌生理食塩水90mLを加え、ストマッカ―で粉砕、均質化させた (10-1希釈液)。ついで10-1希釈液1mLを滅菌蒸留水9mLに分散し、10-2希釈液とした。同様の段階希釈操作により、10-7希釈液まで調製した。各希釈液をコンパクトドライ「ニッスイ」TCに1mLずつ拡散し、恒温槽で培養した。培養条件はすべて35℃、48±3時間で培養し、コロニーカウントを行った。
本発明において例示した白焼きパンの製造の工程を以下に示す(表1)。
具体的には、強力粉、薄力粉、砂糖、食塩、イースト(ダイヤイースト、MCフードスペシャリティーズ株式会社製品)、イーストフード(パンダイヤC-500、MCフードスペシャリティーズ株式会社製品)、日持ち向上剤(MCフードスペシャリティーズ株式会社製品)、水、およびパン種をそれぞれ秤量し、縦型ミキサーで混捏した。日持ち向上剤とパン種は比較したい試験区により選んで添加した。ミキサーの撹拌速度を適宜調整し、生地内のグルテンが形成されたことを確認した後、ショートニングを添加し、再度混捏した。生地とショートニングが十分に混ざり合い、生地内にグルテンが再度形成させたことを確認してミキシングを終了し、この時の生地温度を捏上温度とした。また、混捏中に適宜冷却することによって、捏上温度を28±0.5℃以内に調節した。捏ね上げた生地は恒温槽で一次発酵させた。一次発酵終了後、生地を分割し、丸めて、ベンチタイムで生地を休ませた。ベンチタイム終了後、丸めた生地をモルダーでコッペに成型し、天板に等間隔に並べ、ホイロで二次発酵させた。発酵終了後、固定釜で焼成した。焼成後のパンは室温で90分冷却し、ビニール袋に詰めて、一部は25℃に設定した恒温槽で官能評価に用いるまで保管した。残りの一部は30℃に設定した恒温槽で生菌数測定を行うまで保存した。
Figure 0007300818000001
以下に実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。
本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>パン種による風味改善効果の比較(1)
( 評価方法 )
日持ち向上剤を添加していない白焼きパンは、呈味や発酵風味が弱く、粉臭や蒸れ臭が強いという課題があった。これらの課題を解決するために、白焼きパンに対するパン種の風味改善効果を比較した。
パン種の原材料と配合を表2に記した。実施区1、比較区1および比較区2はパン種を添加した試験区であり、各パン種は種類の異なるものを使用した。実施区1に使用したパン種は、穀物粉に乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物と、穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物を加え、酵母で発酵させて得られたパン種を用いた。比較区1に使用したパン種は、発酵していない穀物粉を基質とした以外は、実施区1と同様に酵母で発酵させて得られたパン種を用いた。比較区2では、乳または乳製品の一例として生クリームを選択し、発酵させてない生クリームを、発酵させていない穀物粉と混ぜ合わせ、発酵基質として用いた以外は、実施区1および比較区1と同様に製出した。以上のパン種を表3に記載する試験区で白焼きパンに添加し、風味改善効果を官能評価で比較した。無添加区は、白焼きパンの基本配合であり、機能性を有した油脂、品質改良剤、糖類、発酵種等を含まない原材料で作製した。
Figure 0007300818000002
Figure 0007300818000003
( 結果 )
実施例1における結果を表4に示した。表4には官能評価点の平均値と標準誤差値を示し、標準誤差を差し引きした値が表5のどの区分に入るかで効果の有無を判定し、記載した。実施区1では、ミルク様の甘い香りとフルーティーな甘い香りが強く、甘味と呈味も強かった。白焼きパンに不足する甘い香りや甘味、発酵風味の付与に対し、効果が高いことが示された。蒸れ臭と酸臭の低減については、大きな効果を得られなかったが、他の2試験区(比較区1及び2)がこれらの不快な香りを強めているのに対し、実施区1だけは弱めていることが示された。粉臭についても、実施区1は比較区1及び2とは異なり、添加効果を有することが示された。酸味では、実施区1は比較区1及び2よりも明確な添加効果を得られなかったが、当該パン種を添加することによって、酸味を弱める傾向にあることが示された。
以上のことから、乳または乳製品と穀物粉を基質としてパン種の原材料に使用する場合には、これらの原材料を各々発酵させた状態で用いることで、白焼きパンの風味を改善できることが示された。
Figure 0007300818000004
Figure 0007300818000005
<実施例2>パン種による風味改善効果の比較(2)
( 評価方法 )
日持ち向上剤を添加した白焼きパンは、アミノカルボニル反応による風味やイーストによる発酵風味が弱いことに加え、日持ち向上剤に含まれる酢酸ナトリウム等の酸味、酸臭を感じやすいという課題があった。これらの課題を解決するために、実施例1で添加効果の最も高かった実施区1のパン種を用いて、日持ち向上剤を添加した白焼きパンに対する風味改善効果を比較した。
日持ち向上剤とパン種を添加した白焼きパンの配合を表6に示した。日持ち向上剤とパン種の添加量は、当該製品の推奨添加量を基準とした。
Figure 0007300818000006
( 結果 )
実施例2における結果を表7に示した。表7には官能評価点の平均値と標準誤差値を示した。比較区3では、無添加区と比較して、ミルク様の甘い香りとフルーティーな甘い香りをわずかに感じ、酸臭と酸味もわずかに感じられた。比較区3と同量の日持ち向上剤を添加した実施区2では、ミルク様の甘い香りとフルーティーな甘い香りを強く感じ、酸臭と酸味は感じられないかわずかに弱まることが示された。比較区4は比較区3よりもミルク様の甘い香りが感じられなくなったが、実施区3ではミルク様の甘い香りもフルーティーな甘い香りもわずかに感じられ、酸臭と酸味を弱める傾向が示された。
以上の結果から、穀物粉に乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物と、穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物を加え、酵母で発酵させて得られたパン種は、日持ち向上剤を添加しても、甘い香りが付与され、酸臭と酸味をマスキング出来ることが示された。
Figure 0007300818000007
<実施例3>パン種による食感改善効果の比較
( 評価方法 )
白焼きパンは焼き色を付けないようにするために、焼成温度を下げて、焼成時間も短くするなどの工夫がされるため、生地中に水分が多く残され、食感は口内でぐちゃつきやすいという課題があった。これらの課題を解決するために、無添加区と実施区1、市販の白焼きパンA(比較区5)、市販の白焼きパンB(比較区6)の食感について官能評価を行い、パン種を添加したときの食感改良効果を調べた。
( 結果 )
実施例3における結果を表8に示した。表8には官能評価点の平均値と標準誤差値を示し、標準誤差を差し引きした値が表5のどの区分に入るかで効果の有無を判定し、記載した。効果ありと判定された場合には、どのような食感に改質が可能か特性を効果の有無とともに併記した。実施区1では、しっとりさを高め、口内でのぐちゃつきを抑えることが示された。比較区5および6ではもっちりした歯切れを付与出来たが、口内でのぐちゃつきを感じられた。
以上の結果から、穀物粉に乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物と、穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物を加え、酵母で発酵させて得られたパン種を白焼きパンに添加することによって、白焼きパンのぐちゃつきを改善出来ることが示された。
Figure 0007300818000008
<実施例4>パン種を添加した白焼きパンの食感分析評価
( 評価方法 )
実施例3において、穀物粉に乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物と、穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物を加え、酵母で発酵させて得られたパン種を白焼きパンに添加することによって、白焼きパンのぐちゃつきを改善出来ることが示された。そこで、無添加区と実施区1の白焼きパンについて、ぐちゃつきをテクスチャーアナライザーで数値化した。具体的な方法は本明細書の段落番号0037に記載した。
( 結果 )
テクスチャーアナライザーでの測定結果を表9および図1に示した。図1は、食塊モデルに楔形プランジャーを押し込み、一定時間後に抜いたとき描かれる応力を示した。付着力はチェスニャクが食品のテクスチャーについて用語を体系化した定義に基づき、食品を手で触れたり,食して歯・舌・口腔に付着して,引き離そうとする力(N)とした。本発明においては、楔形プランジャーを抜くときに負荷される応力であり、マイナスの値を示す。実施区1は無添加区より負の方向に動く応力が小さく、付着性が低いことが示された。これらの結果から、実施区1の白焼きパンは、付着力を小さくすることで、口内でのぐちゃつきを抑制することが示された。
Figure 0007300818000009
<実施例5>パン種を添加した白焼きパンの日持ち向上効果
( 評価方法 )
白焼きパンは焼き色を付けないようにするために、焼成温度を下げて、焼成時間も短くするなどの工夫がされているが、その結果、生地中に水分が多く残され、日持ちも通常のパンより悪いなどの短所があった。これらの課題を解決するため、実施例2と同様の日持ち向上剤を添加した白焼きパンを製出し、一般生菌に対する日持ち向上効果を比較、検証した。評価方法は本明細書の段落番号0038に準じて行った。
( 結果 )
実施例5における結果を表10に示した。対粉0.2%の日持ち向上剤を添加した比較区3は、焼成後30℃で保存し、3日が経過した時点で一般生菌数が10CFU/gレベルに達し、製品価値が著しく低下したのに対し、穀物粉に乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物と、穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物を加え、酵母で発酵させて得られたパン種を添加した実施区2は10CFU/gレベルを保ち、日持ち向上効果を高めた。対粉0.3%の日持ち向上剤を添加した比較区4は、上記と同じ保存時間で10CFU/gレベルだったが、穀物粉に乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物と、穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物を加え、酵母で発酵させて得られたパン種を添加した実施区3は10CFU/gレベルであり、さらに日持ち向上効果を高めた。4日が経過した時点では、比較区4が10CFU/gレベルに達したが、実施区3は10CFU/gレベルだった。以上の結果から、日持ち向上剤にパン種を組み合わせることによって、保存3日後では日持ち向上剤の添加量を0.3%から0.2%に減らしても、0.3%と同等の日持ち向上効果を得られることが示された。また、対粉0.3%の日持ち向上剤に、穀物粉に乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物と、穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物を加え、酵母で発酵させて得られたパン種を組み合わせることによって、日持ちを1日延ばすことが可能であることが示された。
Figure 0007300818000010
<実施例6>
無添加区と実施区1の白焼きパンについて、アミノ酸分析、糖分析、香気成分分析、およびL値、a値、b値をそれぞれ測定した。測定方法は本明細書の段落番号0034-0036に準じた。
( 結果 )
無添加区と実施区1のアミノ酸分析結果を、図2に示した。両試験区のアミノ酸組成を比較したところ、アラニンが微増し、プロリンが微減したが、アミノ酸総量に差はほとんどなかった。穀物粉に乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物と、穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物を加え、酵母で発酵させて得られたパン種を白焼きパンに添加すると、甘味を呈するアラニンが増えることから、風味改善に寄与することが示された。アミノ酸総量には変化がなかったことから、アミノカルボニル反応による焼き色の促進にはほとんど影響しないことが示された。
同試験区における糖の分析結果を、図3に示した。両試験区の糖組成を比較したところ、組成や検出濃度に差はほとんどなかった。本発明のパン種を白焼きパンに添加しても、焼き色の促進にはほとんど影響しないことが示唆された。
同試験区における香気成分分析の結果を、図4及び表11に示した。両試験区の香気成分を比較すると、実施区1ではカプロン酸エチル、オクタン酸エチル、酪酸およびカプロン酸が無添加区より高い濃度で検出された。これらの香気成分はいずれもミルク様の甘い香りやフルーティーな甘い香りを呈する物質であるため、風味改善に寄与したことが示唆された。
同試験区におけるL値、a値、b値の結果を、表12に示した。両試験区のいずれの値も大きな差はなかった。白焼きパンに穀物粉に乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物と、穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物を加え、酵母で発酵させて得られたパン種を添加しても、色調に変化がないことを示した。
以上の結果から、本発明のパン種は白焼きパンに添加してもアミノ酸総量と糖濃度を変えないため、アミノカルボニル反応を促進することはなく、色差計による分析値からも色調に影響していないことが示された。また、本発明のパン種を添加した試験区では、甘味や甘い香りを呈するアミノ酸や香気成分が増加し、白焼きパンの風味改善に寄与したことが示された。
Figure 0007300818000011
Figure 0007300818000012
以上説明してきたように、本発明によると、穀物粉に、乳製品等を乳酸菌で発酵させた発酵物と、穀物粉等を乳酸菌や酵母で発酵させた発酵種を混合し、これらを発酵基質として酵母で発酵させたパン種を白焼きパンの原材料に用いることで、白焼きパンの呈味と発酵風味を高めつつ日持ち向上剤の酸味を低減し、食感では口内でぐちゃつきにくく、日持ち向上剤の添加量を減らしても日持ちが維持、改善できる白焼きパンを提供することができる。

Claims (2)

  1. 乳または乳製品を基質とした乳酸菌発酵物 穀物粉を基質とした乳酸菌及び/又は酵母の発酵物を異性化糖、醸造酢、食塩、増粘多糖類のいずれか1つ以上を用いて成分調整し、穀物粉を基質として、酵母で発酵させて得られる白焼きパン用のパン種の製造方法
  2. 請求項1記載のパン種を用いる白焼きパンの製造方法。
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