以下、本発明の高圧燃料供給ポンプの一実施例について図面を用いて説明する。なお以下の説明では、上下方向を指定して説明する場合があるが、この上下方向は図1及び図2の上下方向に基づいており、高圧燃料供給ポンプの実装状態における上下方向を指定するものではない。
[実施例1]
(燃料供給システム)
まず、本発明の第1実施例に係る電磁弁機構を備えた高圧燃料供給ポンプ1の構成及び高圧燃料供給ポンプ1を含む内燃機関の燃料供給システムの構成を図1及び図2を用いて説明する。図1は本発明の第1実施例に係る電磁弁機構を備えた高圧燃料供給ポンプを含む内燃機関の燃料供給システムを示す構成図である。図2は本発明の第1実施例に係る電磁弁機構を備えた高圧燃料供給ポンプを示す断面図である。
図1において、内燃機関の燃料供給システムは、例えば、燃料を貯留する燃料タンク101と、燃料タンク101内の燃料を汲み上げて送出するフィードポンプ102と、フィードポンプ102から送出された燃料を加圧して吐出する高圧燃料供給ポンプ1と、高圧燃料供給ポンプ1から圧送された高圧の燃料を噴射する複数のインジェクタ103と、を備えている。本システムは、内燃機関としてエンジンのシリンダ筒内に直接燃料を噴射するシステム、いわゆる、直噴エンジンシステムである。
高圧燃料供給ポンプ1は、吸入配管104を介してフィードポンプ102に接続されていると共に、コモンレール105を介してインジェクタ103に接続されている。インジェクタ103は、エンジンの気筒数に応じた数だけコモンレール105に装着されており、エンジンコントロールユニット(以下、ECUという)107からの制御信号に応じて開弁または閉弁するように制御される。コモンレール105には、高圧燃料供給ポンプ1から吐出された燃料の圧力を検出する圧力センサ106が装着されている。圧力センサ106は、圧力の検出信号をECU107へ出力する。
高圧燃料供給ポンプ1は、燃料を加圧するための加圧室4を内部に有するポンプハウジング1aと、ポンプハウジング1aに組み付けられたプランジャ5と、電磁弁機構(電磁吸入弁ユニット)300と、吐出弁ユニット500と、を備えている。プランジャ5は、往復運動により加圧室4内の燃料を加圧するものである。電磁弁機構300は、加圧室4に吸入する燃料流量を調節する容量可変機構として機能するものであり、ECU107からの制御信号により制御される。吐出弁ユニット500は、プランジャ5により加圧された燃料をコモンレール105側へ吐出するものである。図示していないが、高圧燃料供給ポンプ1は、異常高圧になったコモンレール105側の燃料を加圧室4或いは低圧側の燃料通路にリリーフするリリーフ弁を備える。
図1及び図2に示すように、ポンプハウジング1aの先端部側(図1及び図2中、上端部側)には、有底筒状(カップ状)のダンパカバー10が固定されている。ダンパカバー10には吸入ジョイント11が取り付けられており、吸入ジョイント11が高圧燃料供給ポンプ1の低圧燃料吸入口2aを形成している。吸入ジョイント11内には、吸入フィルタ12が取り付けられている。吸入フィルタ12は、燃料タンク101から低圧燃料吸入口2aまでの間に存在する異物が燃料の流れによって高圧燃料供給ポンプ1内に吸収されることを防ぐ役目がある。
ポンプハウジング1aの先端部とダンパカバー10とによって、加圧室4の上流側に燃料流路の一部としての低圧燃料室2bが形成されている。低圧燃料室2bには、圧力脈動低減機構14が配置されている。圧力脈動低減機構14は、高圧燃料供給ポンプ1内で発生した圧力脈動が吸入配管104へ波及することを低減させるものであり、電磁弁機構300の上流側に形成されている。
プランジャ5の先端側(図1中、下端側)には、エンジンのカム108の回転運動を直線的な往復運動に変換するタペット6が設けられている。プランジャ5は、プランジャ5の先端部に固定されたリテーナ7を介してばね8の付勢力によってタペット6に圧着されている。これにより、カム108の回転運動に伴いプランジャ5を往復運動させることができる。
ポンプハウジング1aの加圧室4の入口側には、電磁弁機構300が設けられている。電磁弁機構300の構成の詳細は後述するが、ECU107の制御信号に基づき吸入弁31が開閉するように構成されている。
図2に示すように、ポンプハウジング1aの加圧室4の出口側には吐出通路2cが形成されていて、吐出通路2c内に吐出弁ユニット500が設けられている。吐出通路2cにおける吐出弁ユニット500の下流側には、吐出ジョイント16が設けられており、吐出ジョイント16が高圧燃料供給ポンプ1の燃料吐出口2eを形成している。
吐出弁ユニット500は、吐出弁シート51と、吐出弁シート51と接離する吐出弁52と、吐出弁52を吐出弁シート51に向かって付勢する吐出弁ばね53と、吐出弁シート51の一部、吐出弁52及び吐出弁ばね53を収容する吐出弁ホルダ54と、から構成されている。吐出弁シート51は、例えば、ポンプハウジング1aの吐出通路2c内に圧入保持されている。吐出弁ユニット500では、吐出弁シート51と吐出弁ホルダ54が溶接により接合されることで、吐出弁シート51、吐出弁52、吐出弁ばね53及び吐出弁ホルダ54が一体のユニットを構成している。
吐出弁ユニット500は、加圧室4と吐出ジョイント16の内部との間に燃料差圧が無い状態において、吐出弁ばね53の付勢力により吐出弁52が吐出弁シート51に押圧され閉弁状態となるように構成されている。一方、加圧室4の燃料圧力が吐出ジョイント16の内部の燃料圧力よりも大きくなると、吐出弁52が吐出弁ばね53の付勢力に逆らって開弁するように構成されている。また、吐出弁ホルダ54の内周面が吐出弁52をガイドし、吐出弁52が開弁および閉弁運動の際にリフト方向にのみ移動するように構成されている。以上の構成により、吐出弁ユニット500は、燃料の流通方向を一方向に制限して逆流を防止する逆止弁として機能する。
本燃料供給システムにおいては、図1及び図2に示すように、燃料タンク101内の燃料がフィードポンプ102によって汲み上げられて適切なフィード圧力に加圧され、吸入配管104を通して高圧燃料供給ポンプ1の低圧燃料吸入口2aに送られる。低圧燃料吸入口2aを通過した燃料は、吸入フィルタ12を通過し、低圧燃料室2b内の圧力脈動低減機構14を介して電磁弁機構300に至る。電磁弁機構300に流入した燃料は、ECU107の制御信号に基づき開閉する吸入弁31を通過する。吸入弁31を通過した燃料は、往復運動するプランジャ5の下降行程で加圧室4へ吸入され、プランジャ5の上昇行程で加圧室4内において加圧される。加圧室4で加圧された燃料は、吐出弁ユニット500を通過して燃料吐出口2dを経てコモンレール105へ圧送される。コモンレール105内の高圧の燃料は、インジェクタ103によってエンジンのシリンダ筒内へ噴射される。高圧燃料供給ポンプ1では、ECU107から電磁弁機構300への制御信号に応じて所望の流量燃料を吐出する。
次に、本発明の第1実施例に係る電磁弁機構300の構成及び構造の詳細を図3及び図4を用いて説明する。図3は、図2に示す電磁弁機構の拡大図である。図4は、図3に示す電磁弁機構における可動コアのガイド構造を示す概略図である。なお、図3は、電磁弁機構300に対して通電がない状態を示している。
図3において、電磁弁機構300は、吸入弁31を含む弁機構部と、コイル41や可動コア45を含むソレノイド機構部と、に大別される。弁機構部は、吸入弁31、吸入弁シート部材32、吸入弁ストッパ33及び第1付勢ばね34を備えて構成されている。
吸入弁シート部材32は、例えば、一方側(図3中、右側)に開口する有底筒状の部材であり、中心軸線A1を有している。すなわち吸入弁シート部材32は、中心軸線A1を中心とする筒状部分(筒状部)32Aと、筒状部分32Aの固定コア44側の端部を塞ぐ底部32Bと、を有する。
吸入弁シート部材32は、筒状部分32Aの軸方向(中心軸線A1に沿う方向)における中間位置に吸入弁31が着座可能な環状の弁シート部32aを有している。すなわち、吸入弁シート部材32の筒状部分32Aの内部には、吸入弁31が弁シート部32aに対して着座又は離座するように移動可能に配置されている。吸入弁シート部材32の筒状部分32Aには、低圧燃料室2b(図2参照)に連通する吸入ポート32bが周方向に間隔をあけて複数設けられている。
吸入弁シート部材32の底部32Bには、吸入弁シート32の中心軸線A1に沿って貫通するガイド孔32cが設けられている。ガイド孔32cを有する吸入弁シート部材32の底部32Bは、後述のロッド48を吸入弁シート部材32の中心軸線A1に沿って摺動可能に支持する(ガイドする)ロッドガイド部として機能する。吸入弁シート部材32の底部32Bにおけるガイド孔32cの外周側には、筒状部分の内部に貫通する貫通孔32dが設けられている。貫通孔32dは、後述の可動コア45の移動(変位)に伴う電磁弁機構300内の燃料の移動を可能とするための流路を構成する。
吸入弁シート部材32の開口部(底部32Bと反対側の端部)には、吸入弁ストッパ33が圧入固定されている。吸入弁ストッパ33は、弁シート部32aから離れる吸入弁31の変位を規制する機能を有している。吸入弁31と吸入弁ストッパ33との間には、第1付勢ばね34が配置されている。すなわち第1付勢ばね34は、一端側が吸入弁31に接触すると共に他端側が吸入弁ストッパ33に接触しており、吸入弁31を弁シート部32a側(閉弁する方向)へ付勢している。
ソレノイド機構部は、例えば、環状に設けられたコイル41と、コイル41の径方向内側に配置されたハウジング42と、コイル41を取り囲みハウジング42の外周部に固定された環状のヨーク43と、ハウジング42内に収容された固定コア44と、可動コア45と、ガイド部材46と、被ガイド部材47と、ロッド48と、第2付勢ばね49と、で構成されている。コイル41には、図示しない端子を介してECU107(図1参照)からの制御信号が入力される。ソレノイド機構部では、ヨーク43、ハウジング42、固定コア44及び可動コア45が磁気回路を構成すると共に、可動コア45、被ガイド部材47及びロッド48が吸入弁31を駆動する可動部を構成する。可動部では、可動コア45と被ガイド部材47とが一体的に設けられているが、ロッド48は可動コア45及び被ガイド部材47と接離可能な別体構造である。本実施形態においては、可動コア45の移動を案内するガイド構造に特徴を有している。
ハウジング42は、例えば、一方側(図3中、右側、すなわち吸入弁31側)に開口する有底筒状の部材であり、中心軸線A2を有している。すなわちハウジング42は、固定コア44が圧入される筒状部42bと、筒状部42bの可動コア45とは反対側の端部を塞ぐ底部42aと、を有する有底筒状を成す。ハウジング42と吸入弁シート部材32とは、互いが同軸となるように固定されている。すなわちハウジング42は、その中心軸線A2が吸入弁シート部材32の中心軸線A1と一致するように配置される。ハウジング42の底部42aの内面が第2中心軸線A2に対して直交する平面に形成されている。ここで、中心軸線A1と中心軸線A2との一致、及び底部42aの内面と第2中心軸線A2との直交は、公差に基づくずれを含む。
ハウジング42内の底部42a側には、固定コア44が配置されている。固定コア44は、例えば、ハウジング42の軸方向(中心軸線A2に沿う方向)に延在するように形成され、その外周面がハウジング42内に圧入されることで固定されている。すなわち、固定コア44は中心軸線A2を中心とする円筒形状を成す部材であり、ハウジング42内に圧入固定されている。
固定コア44の径方向内側の位置(径方向中心部)には、ガイド部材46の大部分を収容可能な収容部44aが設けられている。収容部44aは、例えば、軸方向に貫通する孔部として形成されている。固定コア44は、磁気回路の一部を構成するものであり、磁性材により形成されている。磁性材として、例えば、ビッカーズ硬さが200HV以下のものが用いられている。固定コア44におけるハウジング開口側(可動コア45側)の端面は、磁気吸引力が作用する磁気吸引面を構成している。
ハウジング42内の開口側には、可動コア45が固定コア44に対向するように配置されている。可動コア45は、ハウジング42の内周面との間に隙間が生じるように形成されており、ハウジング42内で移動可能である。可動コア45は、固定コア44と共に磁気回路の一部を構成するものであり、磁性材により形成されている。磁性材として、固定コア44と同様に例えば、ビッカーズ硬さが200HV以下のものが用いられている。
なお、磁気回路を構成するハウジング42及びヨーク43も、固定コア44及び可動コア45と同様に、磁性材により形成されている。
可動コア45における固定コア44との対向面は、磁気吸引力が作用する磁気吸引面を構成している。可動コア45の径方向内側の位置(径方向中心部)には、被ガイド部材47が嵌合する嵌合部45aが形成されている。嵌合部45aは、例えば、ハウジング42の軸方向に貫通する孔部として形成されている。
固定コア44の収容部44a内には、中心軸線A3を有するガイド部材46が配置されている。ガイド部材46は、可動コア45の径方向内側の位置(嵌合部45a内)で被ガイド部材47を介して可動コア45を支持し、ガイド部材46の中心軸線A3に沿って可動コア45を固定コア44に対して接離する方向に案内する。
ガイド部材46は、固定コア44の径方向内側の収容部44aに挿入される基部46aと、基部46aよりも外径が大きく、ハウジング42の底部42aと固定コア44の反可動コア45側の端部(端面)44bとで挟み込まれて当接固定されるつば部46cと、基部46aよりも外径が小さく、基部46aから延在し被ガイド部材47を介して可動コア45を案内するガイド本体46bと、を含んで構成されている。すなわちガイド部材46は、基部46aにより構成される大径部と、ガイド本体46bにより構成される小径部と、大径部の外周面から径方向外側に張り出したつば部46cと、を有する。言い換えれば、ガイド部材46は、一端部につば部46cが設けられた基部46aと、基部46aの他端部から可動コア45の側に設けられ基部46aよりも小径のガイド本体46bと、を有し、ガイド本体46cの基部46aとは反対側の端部側で可動コア45を案内する。
基部46a、ガイド本体46b及びつば部46cの軸方向(中心軸線A3に沿う方向)に垂直な断面は円形をなし、基部46a、ガイド本体46b及びつば部46cの各外周面は円筒面を成している。
ガイド部材46の基部46aを固定コア44の収容部44aに圧入して基部46aのみで固定コア44に固定する場合は、固定力を確保するために圧入長を確保する(長くする)必要があるが、ガイド部材46のつば部46cが、ハウジング42の底部42aと固定コア44の端部44bとで挟み込まれて当接固定されることで、ガイド部材46の軸方向長さを低減することが可能となる。すなわちつば部46cは、固定コア44の可動コア45とは反対側の端部とハウジング42の底部42aとの間に挟持される。
また、固定コア44の径方向内側の収容部(内周)44aとガイド部材46の基部46aの外径(外周面)46dとの間に隙間S1が形成され、ハウジング42の内周部(内周面)42b1とガイド部材46のつば部46cの外径(外周)46eとの間には隙間S2が形成されるように、固定コア44、ガイド部材46及びハウジング42が配置されている。
上記のような隙間構造とすることで、ハウジング42にガイド部材46が圧入されるような構造に対し、圧入工程を無くすことができるため、組立性が向上する。
また、圧入構造ではハウジング42とガイド部材46との間に密閉空間S2ができてしまい、圧縮空気によりガイド部材46が浮か上がってしまうおそれがあるが、上記のように、隙間S1を形成すると共に固定コア44に対してガイド部材46を非固定とすることで、隙間S2は隙間S1を通じてハウジング42の開口側に連通する空気通路を確保することができる。これにより、ハウジング42とガイド部材46との間に密閉空間が生じないため、すなわち隙間S2が密閉空間とならず、ガイド部材46の浮き上がりを防止することができる。
これをより確実にするためには、ガイド部材46のつば部46cの、固定コア44の端部44bと対向する面に、第2実施例で説明するような径方向に延設される溝部46fを設けてもよい。
ガイド本体46bの先端部(図3中、右端部)は、テーパ状に形成されている。ガイド部材46の軸方向一方側の基部46aの端面46a1は、中心軸線A3に対して直交する平面に形成されている。ガイド部材46は、基部46aの端面46a1がハウジング42の底部42aの内面に接触するように配置され、その中心軸線A3がハウジング42の中心軸線A2と一致するように固定される。ここで、中心軸線A2と中心軸線A3との一致、及び基部46aの端面46a1と第2中心軸線A3との直交は、公差に基づくずれを含む。
ガイド部材46は、可動部としての被ガイド部材47と接触する部分であるので、固定コア44や可動コア45よりも高硬度で耐摩耗性に優れた材料、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼によって形成されている。オーステナイト系ステンレス鋼を用いる場合には、浸炭などの処理を行うことで強度を高めることができる。マルテンサイト系ステンレス鋼を用いる場合には、焼き入れなどの熱処理によって強度を高めることができる。耐摩耗性に優れた材料として、例えば、ビッカーズ硬さが500~800HV程度のものが用いられている。
可動コア45の嵌合部45aには、被ガイド部材47が圧入により可動コア45と一体に構成されている。被ガイド部材47は、一方側(図3中、左側、すなわち固定コア44側)に開口する有底筒状の部材であり、内部にガイド部材46が配置されガイド部材46に対して摺動可能な筒状部47aと、筒状部47aの固定コア44とは反対側(反固定コア側)の開口部を閉塞する閉塞部(底部)47bと、で構成されている。すなわち、被ガイド部材47は有底筒状を成す。
可動コア45は被ガイド部材47を介してガイド部材46に支持され、可動コア45と被ガイド部材47とが一体となってガイド部材46の中心軸線A3に沿って移動可能な構成となっている。被ガイド部材47の閉塞部47bには、貫通孔47cが設けられている。貫通孔47cは、被ガイド部材47の移動時の流体抵抗を低減して被ガイド部材47の移動を容易にするものである。被ガイド部材47は、筒状部47aの閉塞部47bとは反対側の端面(端部)が可動コア45の嵌合部45aの内部に位置するように配置されている。
被ガイド部材47は、ガイド部材46と摺動する部材であるので、ガイド部材46の材料と略同等程度の硬度を有する材料で形成されていることが好ましい。すなわち、被ガイド部材47は、ガイド部材46と同様に、オーステナイト系ステンレス鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼のような耐摩耗性に優れた高強度材料よって形成されている。耐摩耗性に優れた材料として、ガイド部材46と同様に、ビッカーズ硬さが500~800HV程度のものが用いられている。
ロッド48は、軸方向一方側端部(図3中、左側端部、すなわち可動コア45側端部)が被ガイド部材47の閉塞部47bに接離可能であると共に、軸方向他方側端部(図3中、右側端部、すなわち吸入弁31側端部)が吸入弁31に接離可能であるように構成されている。ロッド48は、吸入弁シート部材32のガイド孔32cに挿通されて摺動可能に吸入弁シート部材32に支持されている。すなわち、ロッド48の移動は、ガイド孔32cの内周壁面によって案内される。
第2付勢ばね49は、固定コア44の収容部44a内および可動コア45の嵌合部45a内で、かつ、ガイド部材46のガイド本体46bの径方向外側に配置されるように構成されている。第2付勢ばね49は、その一方側端部がガイド部材46の基部46aに接触すると共に、その他方側端部が被ガイド部材47の筒状部47aの端面に接触している。第2付勢ばね49は、被ガイド部材47を介して可動コア45を固定コア44から離間する方向に付勢している。
第2付勢ばね49は、その付勢力が第1付勢ばね34の付勢力よりも大きくなるように構成されている。このため、コイル41への通電が無い状態では、第2付勢ばね49の付勢力と第1付勢ばね34の付勢力との差によって、一体的な可動コア45及び被ガイド部材47に接触しているロッド48が吸入弁31に接触して吸入弁31を吸入弁シート部材32の弁シート部32aから離れる方向へ付勢する。このとき吸入弁31は、加圧室4(図2参照)内の圧力に応じて開弁状態又は閉弁状態となる。
ソレノイド機構部では、ガイド部材46と被ガイド部材47との摺動可能な長さ(ガイド長)Sが、コイル41への通電による可動コア45の固定コア44側への移動可能な距離G1、すなわち、可動コア45のストローク長よりも大きくなるように構成されている。本実施例において、距離G1は、コイル41への通電が無い状態において可動コア45と固定コア44との間に生じる空隙の長さに等しくなる。この構成により、可動コア45及び被ガイド部材47は、可動コア45のストローク長G1の範囲において確実にガイド部材46に摺動可能に支持される。
また、ソレノイド機構部では、図4に示すように、被ガイド部材47の筒状部47aの内径D1とガイド部材46のガイド本体46bの外径d2との差が、ハウジング42の内径D3と可動コア45の外径d4との差よりも小さくなるように構成されている。この構成により、可動コア45は、ハウジング42の内周部42b1に摺動することなく、被ガイド部材47を介して確実にガイド部材46に支持される。
(高圧燃料供給ポンプの動作)
次に、高圧燃料供給ポンプ1の動作を図2及び図3を用いて説明する。先ず、高圧燃料供給ポンプ1の吸入工程の動作について説明する。
図2に示すプランジャ5が破線で示す上死点位置Tから下降する吸入行程では、電磁弁機構300のコイル41は非通電状態である。コイル41への通電が無い場合、図3に示す電磁弁機構300では、上述したように、第2付勢ばね49の付勢力と第1付勢ばね34の付勢力との差によって、可動コア45と一体に構成された被ガイド部材47を介してロッド48が吸入弁31側(図3中、右側)に付勢される。
これにより、ロッド48が接触した状態の吸入弁31が吸入弁シート部材32の弁シート部32aから離れ、図2に示す低圧燃料室2bと加圧室4とが連通する。このため、低圧燃料室2b内の燃料は、プランジャ5の下降により、吸入弁31と弁シート部32aとの隙間を経由して加圧室4内へ流入する。吸入弁31と弁シート部32aとの隙間を流れる燃料の圧力降下により、吸入弁31には開弁方向(図3中、右方向)に力が作用する。
次に、高圧燃料供給ポンプ1の吐出工程の動作について説明する。プランジャ5が下死点を超え上昇を開始している状態において、ECU107(図1参照)からコイル41に通電が開始される。コイル41の周囲に発生した磁束が流れる、ヨーク43、固定コア44、ハウジング42及び可動コア45を通る磁気回路が形成され、可動コア45と固定コア44との対向面間に磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力が第2付勢ばね49の付勢力と第1付勢弁ばねの付勢力との差を超えると、可動コア45が被ガイド部材47と共に、可動コア45と固定コア44との間の空隙の長さG1分を変位し、可動コア45が固定コア44と接触して可動コア45及び被ガイド部材47の動作が停止する。
このとき、可動コア45の径方向内側の嵌合部45aに一体に設けられた被ガイド部材47は、筒状部47aの内周面がガイド部材46の外周面に摺動し、ガイド部材46の延在方向に沿って固定コア44側へ移動する。すなわち、磁気吸引力による可動コア45の固定コア44側への移動は、被ガイド部材47を介してガイド部材46によって案内される。このように、本実施例においては、可動コア45に一体に設けた被ガイド部材47を介して、固定コア44に固定されたガイド部材46が可動コア45を支持して案内するように構成されている。
磁気吸引力によって可動コア45及び被ガイド部材47が固定コア44側に引き寄せられると、吸入弁31を弁シート部32aから離間させていた付勢力がなくなり、第1付勢ばね34の付勢力によって吸入弁31が弁シート部32a側への移動を開始する。吸入弁31は、第2付勢ばね49の付勢力と第1付勢ばね34の付勢力との差によって生じる吸入弁31と弁シート部32aとの間の空隙の長さG2分を変位し、閉弁状態となる。
このとき、吸入弁31の加圧室4側(図3中、右側)の隙間空間の圧力と低圧燃料室2bに連通する吸入ポート32b側の圧力との圧力差は、加圧室4内の圧力上昇に伴って、吸入弁31の加圧室4側の隙間空間の圧力が低圧燃料室2b側の圧力よりも高くなることで、吸入弁31の閉弁動作を助けている。その後、プランジャ5が引き続き上昇すると、加圧室4内の容積が減少して加圧室4内の圧力が上昇する。これにより、図2に示す吐出弁ユニット500の吐出弁52が吐出弁ばね53の付勢力に打ち勝って吐出弁シート51から離れ、燃料がコモンレール105(図1参照)を通してインジェクタ103(図1参照)に供給される。
吸入弁31が完全に閉弁して加圧室4内の圧力が上昇して高圧吐出が開始された後に、コイル41への通電を停止する。これにより、固定コア44と可動コア45の対向面間に発生していた磁気吸引力が消滅し、磁気吸引力が第2付勢ばね49の付勢力よりも小さくなる。このため、第2付勢ばね49の付勢力によって、可動コア45、被ガイド部、及びロッド48の可動部が吸入弁31側へ移動する。
このとき、可動コア45に設けられた被ガイド部材47は、筒状部47aの内周面がガイド部材46の外周面に摺動し、ガイド部材46の延在方向に沿って吸入弁31側へ移動する。すなわち、第2付勢ばね49の付勢力による可動コア45の吸入弁31側への移動は、被ガイド部材47を介してガイド部材46によって案内される。
可動コア45、被ガイド部、及びロッド48の可動部が移動し、ロッド48が吸入弁31に接触すると、可動部の動作(移動)が吸入弁31によって停止される。これは、加圧室4内の圧力による吸入弁31に作用する閉弁力が第2付勢ばね49の付勢力よりも大きいためである。したがって、ロッド48が吸入弁31を押しても、吸入弁31は開弁しない。この状態は、プランジャ5が上死点から下降方向へ転じた瞬間にロッド48が吸入弁31を開弁方向へ付勢する準備動作となる。
電磁弁機構300では、コイル41に通電するタイミングをECU107からの指令に基づき制御することで、高圧で吐出される燃料の流量を調節することができる。プランジャ5が下死点から上死点へと上昇動作に転じた直後に、吸入弁31が閉弁するよう通電タイミングを制御すれば、燃料の停留が少なく高圧吐出される燃料が多くすることができる。以上のように、高圧燃料供給ポンプ1は、コイル41への通電時間を制御することで、吸入弁31の閉弁時間を制御し所望の流量に吐出できるように構成されている。
本実施例の高圧燃料供給ポンプ1は、電磁弁機構300を有する高圧燃料供給ポンプ1であって、電磁弁機構300は、固定コア44と、固定コア44と対向する位置に配置される可動コア45と、可動コア45を固定コア44に対して接離する方向に案内するよう固定されたガイド部材46と、固定コア44、可動コア45及びガイド部材46を収容するハウジング42と、を備え、ガイド部材46は、径方向外側に張り出すつば部46cを有し、つば部46cがハウジング42と固定コア44とに挟持されて固定される。すなわち、ハウジング42の底部42aと固定コア44の端部44bとで挟み込まれて当接固定されるガイド部材46のつば部46c有する。これにより、ガイド部材46の軸方向長さを圧入構造に対して低減することが可能となり、電磁弁機構300を小型化することができ、高圧燃料供給ポンプ1のレイアウト性が向上する。
[実施例2]
本発明の第2実施例に係る電磁弁機構300について図5を用いて説明する。図5は、本発明の第2実施例に係る電磁弁機構の拡大図である。第1実施例と同様の構成には第1実施例と同じ符号を付し、説明を省略する。以下、第1実施例と異なる構成について説明する。
本実施例では、ガイド部材46の基部46aを固定コア44の径方向内側の収容部44aに圧入している。本実施例では、第1実施例と同様に、ガイド部材46のつば部46cが、ハウジング42の底部42aと固定コア44の端部44bとで挟み込まれて当接固定される。このため、ガイド部材46の基部46aの軸方向長さを長くする必要はなく、ガイド部材46の軸方向長さを低減することが可能となる。
本実施例では、隙間S2をハウジング42の開口側に連通する空気通路を確保するため、ガイド部材46の基部46aの外周面46dに軸方向に延設される溝部46gを設けている。また、ガイド部材46のつば部46cの、固定コア44の端部44bと対向する面に、径方向に延設される溝部46fを設けている。すなわちガイド部材46は、基部46aの外周面46dに軸方向に延設される溝部46gを有し、つば部46cの固定コア44の端面(端面)44bと対向する端面46c1に径方向に延設される溝部46fを有し、基部46aが固定コア44の内周面(収容部)44aに圧入され、隙間S2は、溝部46f及び溝部46gを通じてハウジング42の開口側に連通する。
上述した構成以外は、第1実施例と同様であり、第1実施例と同様な作用効果が得られる。特に本実施例では、ガイド部材46の基部46aを固定コア44の収容部(内周面)44aに圧入するため、ガイド部材46の軸心(中心軸線A3)と固定コア44の軸心(中心軸線A2)とハウジング42の軸心(中心軸線A1)との位置合わせが容易になり、可動コア45の外周面とハウジング42の内周部42b1との隙間を小さくすることができる。これにより、固定コア44と可動コア45との間に作用する磁気吸引力を大きくすることができ、電磁弁機構300の高速動作が可能になる、或いは電磁弁機構300の動作に要する投入電力を少なくすることができる。
なお、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
例えば、上述した実施例のガイド部材46は一体構造であるが、別体構造のガイド部材であってもよい。