JP7298957B2 - 溶接システム - Google Patents
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Description
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る溶接システム100を説明する。
図1に示されるように、溶接システム100は、鉛直方向に並べて配置された鋼管8の端部同士を溶接するために用いられる。
鋼管8は、角部に配置される4つの円弧状の曲線部8aと、曲線部8a同士をそれぞれ接続する(曲線部8a同士を切れることなく続ける)4つの直線部8bとを有する角形鋼管である。鋼管8の軸線は、鉛直方向に延びる。初期状態では、鋼管8は、建方治具9により仮止めされている。建方治具9は、鋼管8の直線部8bに取り付けられている。
まず、図1及び図2を参照して、溶接システム100の概要を説明する。溶接システム100は、溶接ロボット1と、ガイドレール2と、撮影装置3と、溶接電源4と、ワイヤ送給装置5と、システム制御装置6と、を備える。
モータ32は、システム制御装置6による制御を受けて、溶接ロボット1を駆動させるモータである。モータ32は、溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させるサーボモータ(速度変更部、ロボット位置変更部)を含む。
溶接ロボット1は、制御ケーブルを介して、システム制御装置6と接続される。制御ケーブルは、システム制御装置6が送信した信号であって溶接ロボット1を制御する制御信号を溶接ロボット1に伝送する。
次に、図3~5を参照して、溶接ロボット1の構成を説明する。
図3(a)は、溶接ロボット1の側面図である。図3(b)は、図3(a)のリンク図である。図4は、溶接ロボット1の背面図である。図5(a)は、溶接ロボット1の後述する第1回動部35を示す側面図である。図5(b)は、溶接ロボット1の後述する第2回動部36を示す平面図である。
なお、以下、鉛直方向に沿った方向を、溶接ロボット1の上下方向xと称する。溶接ロボット1がガイドレール2に沿って移動する方向を、溶接ロボット1の左右方向yと称する。溶接ロボット1の上下方向x及び左右方向yに直交する方向を、溶接ロボット1の前後方向zと称する。
本体部11は、溶接ロボット1の基台である。本体部11は、モータ32を備える。本体部11は、ガイドレール2に取り付けられる車輪部12を備える。溶接ロボット1は、車輪部12がガイドレール2の上を摺動することで、ガイドレール2に沿って移動する。
鉛直アーム22aの上端部は、ケース21の内側においてケース21に接続される。鉛直アーム22a(第1リンク部材22)は、ケース21に対して、溶接ロボット1の上下方向xに移動可能とされている。ケース21と第1リンク部材22とにより、上下移動部34(トーチ位置変更部)が構成される。図3(b)に示されるリンク図においては、上下移動部34は、直動関節として示されている。
図5(a)に示されるように、第2リンク部材23は、接続パネル22cに対して、第1リンクピン351の中心軸線(以下、第1軸線とも称する)回りに回動可能とされている。第1リンクピン351の中心軸線は、溶接ロボット1の左右方向yに平行である。接続パネル22cと第2リンク部材23とにより、第1回動部35(トーチ向き変更部)が構成される。図3(b)に示されるリンク図においては、第1回動部35は、回転関節として示されている。なお、第1回動部35は、後述する第2回動部36を溶接トーチ13とともに回動させる。
図5(b)に示されるように、第3リンク部材24は、第2リンク部材23に対して、第2リンクピン361の中心軸線(以下、第2軸線とも称する)回りに回動可能とされている。第2リンク部材23が接続パネル22cに対して回動していない状態において、第2リンクピン361の中心軸線は、溶接ロボット1の上下方向xに平行である。第2リンク部材23と第3リンク部材24とにより、第2回動部36(トーチ向き変更部)が構成される。図3(b)に示されるリンク図においては、第2回動部36は、回転関節として示されている。
上記のような構成を備える溶接システム100における制御方法について説明する。
本実施形態に係る制御方法は、鋼管8の溶接のうち、曲線部8a周辺の溶接(以下、単に、曲線部8aの溶接とも称する)に主となる特徴がある。鋼管8の曲線部8aと、ガイドレール2の曲線部2aとは、周方向の長さが異なる。また、多くの場合、鋼管8の曲線部8aの第1曲率中心C1と、ガイドレール2の曲線部2aの第2曲率中心C2とは異なる。そのため、曲線部8a、2aにおける、鋼管8とガイドレール2との間の距離が周方向に一定とはならない。本実施形態では、このような場合であっても、溶接条件に合わせて溶接ロボット1の移動量を調節することで、鋼管8の位置によらず高品質な溶接を実現する。
図7(a)は、鋼管8及びガイドレール2を示す平面図である。図7(b)は、図7(a)のリンク図である。
曲線部8aの溶接を複数のエリアに区画するにあたり、鋼管8を基準とした鋼管座標系を定義する。この鋼管座標系は、鋼管8の曲線部8aの1つ1つに定義される。
以下、鉛直方向を、鋼管座標系におけるX方向と称する。X方向に直交し、かつ1つの曲線部8aと接続される2つの直線部8bのうち一方の直線部8bに沿った方向を鋼管座標系におけるY方向と称する。X方向及びY方向に直交する方向をZ方向と称する。Z方向は、上記2つの直線部8bのうち他方の直線部8bに沿った方向である。例えば、鋼管座標系の原点位置は、後述する溶接条件を満たすような溶接トーチ13の先端の位置(目標位置)とX方向に一致し、かつ上面視(YZ平面)において、鋼管8の曲線部8aの第1曲率中心C1に一致する位置に設定される。
また、X方向のうち、鉛直方向の上方向を+X方向と称し、鉛直方向の下方向を-X方向と称する。Y方向のうち、鋼管座標系の原点位置(第1曲率中心C1)を基準として鋼管8の外側に向かう方向を+Y方向とし、鋼管8の内側に向かう方向を-Y方向とする。Z方向のうち、鋼管座標系の原点位置(第1曲率中心C1)を基準として鋼管8の外側に向かう方向を+Z方向とし、鋼管8の内側に向かう方向を-Z方向とする。
鋼管8の曲線部8a及びガイドレール2の曲線部2aについて説明する。
曲線部8aは、上面視(YZ平面)において、第1曲率中心C1を中心とし、半径がRcの1/4円の円弧状である。曲線部2aは、上面視において、第2曲率中心C2を中心とし、半径がRgの1/4円の円弧状である。
鋼管8の直線部8bとガイドレール2の直線部2bとの距離をlcgとすると、第1曲率中心C1と、第2曲率中心C2とのY方向(又はZ方向)の距離eは、以下の式で表される。
e=Rc+lcg-Rg
すなわち、第2曲率中心C2は、第1曲率中心C1から、Y方向及びZ方向に-eだけ移動した位置である。
なお、以下、曲線部2aの開始位置をPg1とし、終了位置をPg2とする。曲線部8aの開始位置をPc2とし、終了位置をPc3とする。第2曲率中心C2と位置Pg1とを結ぶ直線と、鋼管8の直線部8bとの交点を位置Pc1とする。第2曲率中心C2と位置Pg2とを結ぶ直線と、鋼管8の直線部8bとの交点を位置Pc4とする。
エリア2は、鋼管8の位置Pc2から位置Pc3までを溶接するエリアである。すなわち、エリア2は、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc3まで移動するエリアである。エリア2においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の曲線部2aを移動しつつ、鋼管8の曲線部8aを溶接する。すなわち、エリア2では、ガイドレール2の曲線部2a上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の曲線部8aである。
エリア3は、鋼管8の位置Pc3から位置Pc4までを溶接するエリアである。すなわち、エリア3は、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するエリアである。エリア3においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の曲線部2aを移動しつつ、鋼管8の直線部8bを溶接する。すなわち、エリア3では、ガイドレール2の曲線部2a上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の直線部8bである。
エリア4は、鋼管8のエリア1~3以外のエリアである。エリア4においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の直線部2bを移動しつつ、鋼管8の直線部8bを溶接する。すなわち、エリア4では、ガイドレール2の直線部2b上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の直線部8bである。
本実施形態において、曲線部8aの溶接とは、エリア1~3の溶接を意味する。
溶接の品質を良好なものとするためには、エリアによらず以下の<1>~<4>に示す溶接条件を満たすことが好ましい。
<1>溶接トーチ13の先端が鋼管8の溶接部位に沿って移動する速度(以下、溶接移動速度Vwとも称する)が一定となる。
<2>上面視における溶接トーチ13の向き(以下、溶接トーチ向きとも称する)が、鋼管8の曲線部8aの法線方向と一致する、又は鋼管8の直線部8bと直交する。
<3>溶接トーチ13の狙い角θnが一定となる。なお、溶接トーチ13の狙い角θnは、図6に示されるように、溶接ロボット1の左右方向yに沿って見て、溶接トーチ13の先端が鋼管8の開先に位置するときの溶接トーチ13の向きである。狙い角θnは、鋼管8の溶接部位の状態(例えば、開先情報)に応じて適切に調整される。
<4>溶接トーチ13の先端と鋼管8の溶接部位との距離(以下、溶接トーチ13の狙い位置とも称する)が一定である。
なお、上記溶接条件を満たすような溶接トーチ13の先端のX方向の位置は一定となり、鋼管座標系の原点位置とX方向に一致する。図6に示されるように、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の先端のX方向の位置と、ガイドレール2の下端2cとのX方向(溶接ロボット1の上下方向x)の距離をHとする。
また、溶接ロボット1が所定の移動量、移動した場合の溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す行列T(上記<B>に対応)を生成する。
行列Uと行列Tとが等しくなるような溶接ロボット1の移動量を求め、当該移動量に応じてモータ32の駆動を制御することにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。すなわち、これらの行列U、Tが等しくなることで、所定の時刻t(溶接位置)において目標となる溶接トーチ13の位置及び姿勢を実現するための移動量が求められる。この移動量を実現するように溶接ロボット1を制御することで、良好な品質の溶接を実現することができる。
行列Uの生成について、図8を参照して詳細に説明する。
行列Uは、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢を、鋼管座標系の原点位置(第1曲率中心C1)を基準として表すための行列である。行列Uは、特定の溶接位置において目標とする溶接トーチ13の位置及び姿勢である。行列Uは、鋼管8の溶接位置ごとに定まる。行列Uは、溶接ロボット1の位置によらず定まる。
本実施形態においては、エリア1及び3においては直線部8bの溶接が行われ、エリア2においては曲線部8aの溶接が行われる。したがって、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢は、エリア1~3で異なる。このため、行列Uは、エリア1~3のそれぞれについて生成される。なお、上述のように、上記溶接条件を満たすような溶接トーチ13の先端のX方向の位置は一定となり、鋼管座標系の原点位置とX方向に一致する位置である。
また、時刻tにおける溶接位置において、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の溶接トーチ向きは、直線部8bと直交する方向である。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の狙い角は、常に一定(θn)となる。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の先端と直線部8bとの距離は、常に一定となる。
エリア1における行列Uは、上記のような溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す同次変換行列として生成される。
θc=(Vw・t÷2πRc)×2π
また、時刻tにおける溶接位置において、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の溶接トーチ向きは、曲線部8aの法線方向と一致する方向である。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の狙い角は、常に一定(θn)となる。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の先端と曲線部8aとの距離は、常に一定となる。
エリア2における行列Uは、上記のような溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す同次変換行列として生成される。
また、時刻tにおける溶接位置において、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の溶接トーチ向きは、直線部8bと直交する方向である。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の狙い角は、常に一定(θn)となる。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の先端と直線部8bとの距離は、常に一定となる。
エリア3における行列Uは、上記のような溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す同次変換行列として生成される。
図3~6を参照して、溶接ロボット1の移動量について説明する。本実施形態において、溶接システム100は、溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の移動量Mx、溶接ロボット1の左右方向yの移動量My、溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の移動量Mz、溶接トーチ13の第1軸線回りの移動量MB、及び溶接トーチ13の第2軸線回りの移動量MTを制御対象とする。すなわち、溶接ロボット1の移動量は、移動量Mx、移動量My、移動量Mz、移動量MB、及び移動量MTを含む。
なお、移動量Mx、Mz、MB、及びMTは、溶接トーチ13の基準位置からの移動量を示す。溶接トーチ13の基準位置とは、溶接トーチ13が移動や回動等していない状態における、溶接トーチ13の位置及び姿勢である。
移動量Myは、ガイドレール2の所定の位置を基準とした溶接ロボット1の移動量を示す。前記所定の位置は、例えば、ガイドレール2の曲線部2aの開始位置Pg1に設定される。
行列Tは、溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の移動量がMx、溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の移動量がMz、溶接トーチ13の第1軸線回りの移動量がMB、溶接トーチ13の第2軸線回りの移動量がMTであり、かつ位置Pg1を基準とした溶接ロボット1の移動量がMyである場合の、溶接トーチ13の位置及び姿勢を、鋼管座標系の原点位置(第1曲率中心C1)を基準として表すための行列である。本実施形態においては、行列Tは、エリア1~3で共通の行列となる。
なお、エリア1~3において、溶接ロボット1は曲線部2a上を移動する。すなわち、エリア1~3における溶接ロボット1の移動は、YZ平面上の第2曲率中心C2回りの回転移動である。YZ平面において、溶接ロボット1の、位置Pg1からの第2曲率中心C2回りの回転量をθg(ラジアン)とすると、移動量Myは、以下の式のように、回転量θgとして表すことができる。なお、Rgは、曲線部2aの半径である。
θg=(My÷2πRg)×2π
図3(b)には、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、溶接ロボット1のリンク構造及び各リンク間の距離が示されている。図3(b)において、aは、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、第1リンクピン351と第2リンクピン361との溶接ロボット1の前後方向zの距離を示す(図5(a)も併せて参照)。bは、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、第1リンクピン351と第2リンクピン361との溶接ロボット1の上下方向xの距離を示す(図5(a)も併せて参照)。cは、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、ガイドレール2の下端2cと第1リンクピン351との溶接ロボット1の上下方向xの距離を示す。dは、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、ガイドレール2と第1リンクピン351との溶接ロボット1の前後方向zの距離を示す。Lは、第2リンクピン361から溶接トーチ13の先端までの距離を示す(図5(b)も併せて参照)。これらパラメータa~d及びLを用いることにより、溶接トーチ13の基準位置における位置及び姿勢が表される。
行列T3は、上述のようにパラメータa~d及びLを用いて表された溶接トーチ13の基準位置における位置及び姿勢を、移動量Mx、Mz、MB、MTだけ移動及び回転させることにより生成される同次変換行列である。
上記のように生成された行列U及び行列Tについて、行列U=行列Tとすることにより、上記溶接条件を満たす溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式が導出される。この計算式は、移動量Mx、My、Mz、MB、MTのそれぞれについて導出される。この計算式は、エリア1~3のそれぞれについて導出される。
次に、図9及び図10を参照して、溶接システム100の制御系について説明する。
制御系では、前述したように、行列Uと行列Tとが等しくなるような溶接ロボット1の移動量を求め、当該移動量に応じてモータ32の駆動を制御することにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。
図9は、実施形態におけるシステム制御装置6のハードウェア構成の一例を示す図である。システム制御装置6は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備え、プログラムを実行する。システム制御装置6は、プログラムの実行によって制御部61、通信部62、入力部63、記憶部64及び出力部65を備える装置として機能する。
通信部62は、例えば制御ケーブルを介して溶接ロボット1の位置に関する情報(以下、溶接ロボット位置情報と言う)を取得する。溶接ロボット位置情報は、例えば溶接ロボット1の移動に関するサーボモータ(モータ32)の制御の目標値(以下、単に目標値とも言う)である。
記憶部64は、予め、エリア1~3のそれぞれについて導出された、行列Uと行列Tとが等しくなるときの溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を記憶する。
記憶部64は、前記目標値(溶接ロボット位置情報)を記憶する。記憶部64は、溶接トーチ13の基準位置を記憶する。記憶部64は、移動量Myの基準となるガイドレール2の所定の位置を記憶する。
データ取得部610は、記憶部64から、使用される鋼管8の種類に対応する鋼管形状情報を取得する。データ取得部610は、記憶部64から、使用されるガイドレール2の種類に対応するガイドレール形状情報を取得する。なお、使用される鋼管8の種類及びガイドレール2の種類は、例えば、ユーザによって入力部63に入力される。
パラメータ設定部624は、判別された溶接部位の形状や状態に基づき、溶接条件としての溶接トーチ13の溶接移動速度Vw、溶接トーチ向き、狙い角θn、及び狙い位置の具体的な値を設定する。
エリア判定部626は、算出された溶接トーチ13の先端の目標位置が、エリア1~3のうちいずれのエリアに位置するかを判定する。
すなわち、移動量設定部628は、行列U及び行列Tに基づき、上記溶接条件における溶接トーチ13の溶接移動速度Vw、溶接トーチ向き、狙い角θn、及び狙い位置を満たす溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを設定する。
具体的には、曲線部溶接実行制御部629は、モータ32を駆動して上下移動部34を動作させ、移動量設定部628により設定された移動量Mxに応じて溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の位置を変更する。曲線部溶接実行制御部629は、モータ32を駆動して前後移動部33を動作させ、移動量設定部628により設定された移動量Mzに応じて溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の位置を変更する。曲線部溶接実行制御部629は、モータ32を駆動して第1回動部35を動作させ、移動量設定部628により設定された移動量MBに応じて第1軸線回りの溶接トーチ13の向きを変更する。曲線部溶接実行制御部629は、モータ32を駆動して第2回動部36を動作させ、移動量設定部628により設定された移動量MTに応じて第2軸線回りの溶接トーチ13の向きを変更する。曲線部溶接実行制御部629は、モータ32(サーボモータ)を駆動して、移動量設定部628により設定された移動量Myに応じて溶接ロボット1の位置を変更する。
図11を参照して、溶接システム100が実行する制御例について説明する。
図11は、本実施形態におけるシステム制御装置6が実行する曲線部8aの溶接処理の流れの一例を示すフローチャートである。
エリア判定部626は、経過時間tにおける溶接トーチ13の先端の目標位置を算出する(ステップS102)。エリア判定部626は、算出された溶接トーチ13の先端の目標位置が、エリア1~3のうちいずれのエリアに位置するかを判定する(ステップS103)。
溶接トーチ13の先端の位置が位置Pc4に到達したと判定される場合(ステップS106:YES)、曲線部溶接実行制御部629は、曲線部8aの溶接処理を終了する(ステップS206)。
一方、溶接トーチ13の先端の位置が位置Pc4に到達していない場合(ステップS106:NO)、ステップS102の処理に戻る。この場合、曲線部8aの溶接処理は継続される。
なお、以下の説明において、移動量Mxは、溶接トーチ13が下側に移動する場合に増加し、上側に移動する場合に減少するとする。移動量Mzは、溶接トーチ13が後側(すなわち、鋼管8から離れる側)に移動する場合に増加し、前側(すなわち、鋼管8に近づく側)に移動する場合に減少するとする。移動量MBは、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が増加する場合に増加するとされる。移動量MTは、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13が溶接ロボット1の進行方向に直交する場合を0とし、溶接トーチ13が溶接ロボット1の進行方向側に傾斜する場合に増加し、溶接ロボット1の進行方向と反対側に傾斜する場合に減少するとする。
エリア1においては、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも小さくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア1における移動速度まで瞬間的に減速する。瞬間的というのはエリア4からエリア1に到達したタイミングである。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、前後方向移動基準値から増加していく。すなわち、溶接トーチ13は、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、鋼管8から離れる方向に移動する。
移動量MBは、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、第1軸線回動基準値から増加していく。すなわち、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が大きくなる。
移動量MTは、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、0から増加していく。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向側へ傾斜していく。
エリア2においては、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア2における移動速度まで瞬間的に加速する。瞬間的というのはエリア1からエリア2に到達したタイミングである。また、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置までの範囲では、溶接ロボット1は、エリア2の開始位置Pc2から上記中間位置まで、所定の負の加速度で減速し続ける。なお、この場合であっても、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きい。その後、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3までの範囲では、溶接ロボット1は、上記中間位置からエリア2の終了位置Pc3まで、所定の正の加速度で加速し続ける。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するに従い増加していき、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するに従い減少していく。すなわち、溶接トーチ13は、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置までの範囲では、鋼管8から離れる方向に移動し、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3までの範囲では、鋼管8に近づく方向に移動する。
移動量MBは、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するに従い減少していき、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するに従い増加していく。なお、この場合であっても、移動量MBが第1軸線回動基準値よりも小さくなることはない。すなわち、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が小さくなり、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が大きくなる。
移動量MTは、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc3まで移動するに従い減少していく。また、移動量MTは、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置に位置するときに0となる。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13の先端がエリア1の終端位置である位置Pc2に位置するとき、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向側へ傾斜している。溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するに従い、溶接トーチ13の溶接ロボット1の進行方向側への傾斜が小さくなっていき、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置に到達すると、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向に直交する。その後、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するに従い、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向と反対側へ傾斜していく。
エリア3においては、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも小さくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア3における移動速度まで瞬間的に減速する。瞬間的というのはエリア2からエリア3に到達したタイミングである。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い減少していき、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達すると前後方向移動基準値と等しくなる。すなわち、溶接トーチ13は、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い、鋼管8に近づく方向に移動する。
移動量MBは、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い減少していき、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達すると第1軸線回動基準値と等しくなる。すなわち、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が小さくなる。
移動量MTは、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い増加していき、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達すると0となる。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13の先端がエリア2の終端位置である位置Pc3に位置するとき、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向と反対側へ傾斜している。溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い、溶接トーチ13の溶接ロボット1の進行方向と反対側への傾斜が小さくなっていき、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達すると、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向に直交する。
曲率中心判定部623が第1曲率中心C1と第2曲率中心C2とが一致しないと判定した場合に第1曲率中心C1を用いて溶接条件を設定するため、溶接システム100の制御が簡便化する。
溶接システム100は、溶接トーチ13の向きを変更する第1回動部35及び第2回動部36を備える。設定部は、第1曲率中心C1と、第2曲率中心C2とを用いて溶接トーチ向きを設定する。第1回動部35及び第2回動部36は、鋼管8の曲線部8aに対する溶接トーチ13の向きが、設定部で設定された溶接トーチ向きと一致するように、溶接トーチ13の向きを変更する。
溶接トーチ向きは、上面視において、溶接トーチ13の先端の向きと、鋼管8の曲線部8aの法線方向とが一致するときの溶接トーチ13の向きを含み、設定部は、溶接トーチ向きを溶接ロボット1の位置に応じて設定する。
これにより、溶接トーチ13を、常に鋼管8に対して直交する方向に向けることができるため、溶接品質が向上する。
これにより、溶接ロボット1が移動する方向に沿って見て、溶接トーチ13の先端が鋼管8の開先に位置するときの溶接トーチ13の向き(すなわち、溶接トーチ13の狙い角θn)を一定とすることができるため、溶接品質が向上する。例えば、第2回動部36の角度に応じて第1回動部35の角度を設定して、狙い角θnを一定にすることができる。より詳細には、前後方向zと溶接トーチ13とが成す2つの角度のうち小さい方の角度が第2回動部36の回動によって大きくなるに連れ、上下方向xと溶接トーチ13とが成す2つの角度のうち小さい方の角度を第1回動部35の回動によって小さくする。
溶接システム100は、溶接ロボット1の位置(移動速度)を変更するモータ32(サーボモータ)を備える。設定部は、第1曲率中心C1と、第2曲率中心C2とを用いて溶接移動速度Vwを設定する。モータ32(サーボモータ)は、溶接トーチ13の先端の移動速度が、設定部で設定された溶接移動速度Vwと一致するように、溶接ロボット1の位置(移動速度)を変更する。
これにより、溶接トーチ13の先端が鋼管8の溶接部位に沿って所定の速度(溶接移動速度Vw)で移動するよう、溶接ロボット1の位置(移動速度)を制御することができるため、溶接品質が向上する。
溶接システム100は、溶接トーチ13の位置を変更する前後移動部33及び上下移動部34を備える。設定部は、第1曲率中心C1と、第2曲率中心C2とを用いて狙い位置を設定する。前後移動部33及び上下移動部34は、溶接トーチ13の位置が、設定部で設定された狙い位置と一致するように、溶接トーチ13の位置を変更する。
これにより、溶接トーチ13の先端と鋼管8の溶接部位との距離が所定の長さとなるよう、溶接トーチ13の位置を制御することができるため、溶接品質が向上する。
以下、図12及び13を参照し、本発明の第2実施形態に係る溶接システム100を説明する。
本実施形態においては、第1曲率中心C1が第2曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置する場合の、溶接システム100における制御方法について説明する。本実施形態において用いられる溶接システム100の基本的な構成及び動作は、第1実施形態の溶接システム100と同様である。
図12を参照して、鋼管8の曲線部8a及びガイドレール2の曲線部2aについて説明する。
図12に示されるように、本実施形態において、第1曲率中心C1は、第2曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置する。第2曲率中心C2は、第1曲率中心C1から、Y方向及びZ方向にeだけ移動した位置となる。
なお、以下、曲線部8aの開始位置をPc5とし、終了位置をPc6とする。曲線部2aの開始位置をPg6とし、終了位置をPg7とする。第1曲率中心C1と位置Pc5とを結ぶ直線と、ガイドレール2の直線部2bとの交点を位置Pg5とする。第1曲率中心C1と位置Pc6とを結ぶ直線と、ガイドレール2の直線部2bとの交点を位置Pg8とする。
エリア6は、溶接ロボット1がガイドレール2の位置Pg6から位置Pg7まで移動するエリアである。エリア6においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の曲線部2aを移動しつつ、鋼管8の曲線部8aを溶接する。すなわち、エリア6では、ガイドレール2の曲線部2aに溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の曲線部8aである。
エリア7は、溶接ロボット1がガイドレール2の位置Pg7から位置Pg8まで移動するエリアである。エリア7においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の直線部2bを移動しつつ、鋼管8の曲線部8aを溶接する。すなわち、エリア7では、ガイドレール2の直線部2bに溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の曲線部8aである。
エリア8は、鋼管8のエリア5~7以外のエリアである。エリア8においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の直線部2bを移動しつつ、鋼管8の直線部8bを溶接する。すなわち、エリア8では、ガイドレール2の直線部2b上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の直線部8bである。
本実施形態において、曲線部8aの溶接とは、エリア5~7の溶接を意味する。
第1実施形態と同様に、溶接の品質を良好なものとするためには、エリアによらず以下の<1>~<4>に示す溶接条件を満たすことが好ましい。
<1>溶接トーチ13の先端が鋼管8の溶接部位に沿って移動する速度(以下、溶接移動速度Vwとも称する)が一定となる。
<2>上面視における溶接トーチ13の向き(以下、溶接トーチ向きとも称する)が、鋼管8の曲線部8aの法線方向と一致する、又は鋼管8の直線部8bと直交する。
<3>溶接トーチ13の狙い角θnが一定となる。
<4>溶接トーチ13の先端と鋼管8の溶接部位との距離(以下、溶接トーチ13の狙い位置とも称する)が一定である。
具体的には、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢を表す行列U(上記<A>に対応)を生成する。また、溶接ロボット1が所定の移動量、移動した場合の溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す行列T(上記<B>に対応)を生成する。行列Uと行列Tとが等しくなるような溶接ロボット1の移動量を求め、当該移動量に応じてモータ32の駆動を制御することにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。
行列Uは、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢を、鋼管座標系の原点位置(第1曲率中心C1)を基準として表すための行列である。
本実施形態においては、エリア5~7の全てにおいて、曲線部8aの溶接が行われる。したがって、エリア5~7に共通の行列Uが生成される。
θc=(Vw・t÷2πRc)×2π
また、時刻tにおける溶接位置において、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の溶接トーチ向きは、曲線部8aの法線方向と一致する方向である。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の狙い角は、常に一定(θn)となる。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の先端と曲線部8aとの距離は、常に一定となる。
行列Uは、上記のような溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す同次変換行列として生成される。
行列Tは、溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の移動量がMx、溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の移動量がMz、溶接トーチ13の第1軸線回りの移動量がMB、溶接トーチ13の第2軸線回りの移動量がMTであり、かつ位置Pg1を基準とした溶接ロボット1の移動量がMyである場合の、溶接トーチ13の位置及び姿勢を、鋼管座標系の原点位置(第1曲率中心C1)を基準として表すための行列である。
なお、本実施形態においては、エリア5及び7においては溶接ロボット1が直線部2bを移動し、エリア6においては溶接ロボット1が曲線部2aを移動する。したがって、行列Tは、エリア5~7のそれぞれについて生成される。
エリア5において、溶接ロボット1は直線部2b上をY方向(+Y方向)に移動する。したがって、行列T4は、位置Pg5をY方向に+Myだけ移動させることにより生成される。なお、位置Pg5は、第1曲率中心C1からZ方向に+Rgだけ移動した位置である。
なお、行列T3については、第1実施形態の行列T3と同様であるため、ここでは記載を省略する。
エリア6において、溶接ロボット1は曲線部2a上を移動する。すなわち、エリア6における溶接ロボット1の移動は、YZ平面上の第2曲率中心C2回りの回転移動である。YZ平面において、溶接ロボット1の、位置Pg6からの第2曲率中心C2回りの回転量をθg(ラジアン)とすると、移動量Myは、以下の式のように、回転量θgとして表すことができる。なお、Rgは、曲線部2aの半径である。
θg=(My÷2πRg)×2π
行列T2は、位置Pg6を、第2曲率中心C2回りに回転量θgだけ回転させることにより生成される。なお、位置Pg6は、第2曲率中心C2からZ方向に+Rgだけ移動した位置である。
なお、行列T1及びT3については、第1実施形態の行列T1及びT3と同様であるため、ここでは記載を省略する。
エリア7において、溶接ロボット1は直線部2b上をZ方向(-Z方向)に移動する。したがって、行列T6は、位置Pg7をZ方向に-Myだけ移動させることにより生成される。なお、位置Pg7は、第1曲率中心C1からY方向に+Rg、Z方向に+eだけ移動した位置である。
なお、行列T3については、第1実施形態の行列T3と同様であるため、ここでは記載を省略する。
上記のように生成された行列U及び行列Tについて、行列U=行列Tとすることにより、上記溶接条件を満たす溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式が導出される。この計算式は、移動量Mx、My、Mz、MB、MTのそれぞれについて導出される。この計算式は、エリア5~7のそれぞれについて導出される。
本実施形態における溶接システム100の制御系の基本的な構造及び動作は、第1実施形態の制御系と同様である。
一方で、本実施形態においては、行列Uは、エリア5~7に共通の行列として生成される。行列Tは、エリア5~7のそれぞれについて生成される。
記憶部64は、予め、エリア5~7のそれぞれについて導出された、行列Uと行列Tとが等しくなるときの溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を記憶する。目標トーチ位置計算部627は、記憶部64及びデータ取得部610を介して、上記計算式を取得する。移動量設定部628は、上記計算式に基づき、所定の時刻tにおける溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求め、これらを溶接ロボット1の移動量として設定する。
なお、上記以外の制御系の構成及び動作については、第1実施形態の制御系と同様であるため、記載を省略する。
図13を参照して、溶接システム100が実行する制御例について説明する。
図13は、本実施形態におけるシステム制御装置6が実行する曲線部8aの溶接処理の流れの一例を示すフローチャートである。
エリア判定部626は、経過時間tにおける溶接トーチ13の先端の目標位置を算出する(ステップS202)。なお、本実施形態においては、エリア5~7の全てにおいて、溶接トーチ13の先端の移動が第1曲率中心C1回りの回転移動となるため、目標トーチ位置計算部627は、ステップS202で算出された溶接トーチ13の先端の目標位置を、鋼管8の曲線部8aにおける溶接トーチ13の先端の回転量θcとして算出する(ステップS203)。
溶接トーチ13の先端の位置が位置Pc6に到達したと判定される場合(ステップS206:YES)、曲線部溶接実行制御部629は、曲線部8aの溶接処理を終了する。
一方、溶接トーチ13の先端の位置が位置Pc6に到達していない場合(ステップS206:NO)、ステップS202の処理に戻る。この場合、曲線部8aの溶接処理は継続される。
エリア5においては、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア5における移動速度まで瞬間的に加速する。瞬間的というのはエリア8からエリア5に到達したタイミングである。また、その後、溶接ロボット1は、エリア5の開始位置Pg5から終了位置Pg6まで、所定の負の加速度で減速し続ける。なお、この場合であっても、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きい。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、前後方向移動基準値から減少していく。すなわち、溶接トーチ13は、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、鋼管8に近づく方向に移動する。
移動量MBは、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、第1軸線回動基準値から増加していく。すなわち、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が大きくなる。
移動量MTは、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、0から減少していく。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向と反対側へ傾斜していく。
エリア6においては、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きいが、エリア5における移動速度よりも小さくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア6における移動速度まで瞬間的に減速する。瞬間的というのはエリア5からエリア6に到達したタイミングである。また、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置までの範囲では、溶接ロボット1は、エリア6の開始位置Pg6から上記中間位置まで、所定の正の加速度で加速し続ける。その後、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7までの範囲では、溶接ロボット1は、上記中間位置からエリア6の終了位置Pg7まで、所定の負の加速度で減速し続ける。なお、この場合であっても、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きく、エリア5における移動速度よりも小さい。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するに従い減少していき、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するに従い増加していく。すなわち、溶接トーチ13は、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置までの範囲では、鋼管8に近づく方向に移動し、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7までの範囲では、鋼管8から離れる方向に移動する。
移動量MBは、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するに従い減少していき、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するに従い増加していく。なお、この場合であっても、移動量MBが第1軸線回動基準値よりも小さくなることはない。すなわち、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が小さくなり、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が大きくなる。
移動量MTは、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg7まで移動するに従い増加していく。また、移動量MTは、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置に位置するときに0となる。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接ロボット1がエリア5の終端位置である位置Pg6に位置するとき、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向と反対側へ傾斜している。溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するに従い、溶接トーチ13の溶接ロボット1の進行方向と反対側への傾斜が小さくなっていき、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置に到達すると、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向に直交する。その後、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するに従い、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向側へ傾斜していく。
エリア7においては、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きく、かつエリア6における移動速度よりも大きくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア7における移動速度まで瞬間的に加速する。瞬間的というのはエリア6からエリア7に到達したタイミングである。また、その後、溶接ロボット1は、エリア7の開始位置Pg7から終了位置Pg8まで、所定の正の加速度で加速し続ける。なお、この場合であっても、溶接ロボット1の移動速度は基準速度及びエリア6における移動速度よりも大きい。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い減少していき、溶接ロボット1が位置Pg8に到達すると前後方向移動基準値と等しくなる。すなわち、溶接トーチ13は、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い、鋼管8から離れる方向に移動する。
移動量MBは、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い減少していき、溶接ロボット1が位置Pg8に到達すると第1軸線回動基準値と等しくなる。すなわち、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が小さくなる。
移動量MTは、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い減少していき、溶接ロボット1が位置Pg8に到達すると0となる。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接ロボット1がエリア6の終端位置である位置Pg7に位置するとき、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向側へ傾斜している。溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い、溶接トーチ13の溶接ロボット1の進行方向側への傾斜が小さくなっていき、溶接ロボット1が位置Pg8に到達すると、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向に直交する。
すなわち、本実施形態に係る溶接システム100は、曲線部8aの第1曲率中心C1を取得する形状情報取得部622と、形状情報取得部622で取得された第1曲率中心C1を用いて、溶接ロボット1の溶接条件を設定する設定部と、を備える。
したがって、鋼管8の曲線部8aとガイドレール2の曲線部2aとで周方向の長さや曲率中心が異なる場合であっても、溶接対象である鋼管8の曲線部8aの第1曲率中心C1を用いて溶接条件を設定するため、鋼管8とガイドレール2との間の距離のばらつきに関わらず曲線部8aの溶接を良好に行うことができる。したがって、良好な溶接品質を得ることができる。
以下、第1曲率中心C1と、第2曲率中心C2とが一致する場合の、溶接システム100における制御方法について説明する。
この場合、鋼管8(曲線部8a)とガイドレール2(曲線部2a)との間の周方向の距離が一定である。したがって、溶接トーチ13の溶接トーチ向き、狙い角、及び狙い位置を上記溶接条件<2>~<4>を満たすように設定した状態で、溶接トーチ13の先端が溶接移動速度Vwで移動するような溶接ロボット1の移動速度を設定することにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。なお、この場合の溶接ロボット1の移動速度は一定となる。
1 溶接ロボット
2 ガイドレール(レール)
2a 曲線部
6 システム制御装置
8 鋼管
8a 曲線部
13 溶接トーチ
33 前後移動部(トーチ位置変更部)
34 上下移動部(トーチ位置変更部)
35 第1回動部(トーチ向き変更部)
36 第2回動部(トーチ向き変更部)
620 溶接ロボット制御部
621 位置情報取得部
622 形状情報取得部(取得部)
623 曲率中心判定部(判定部)
624 パラメータ設定部(設定部)
625 溶接時間カウント部
626 エリア判定部
627 目標トーチ位置計算部(設定部)
628 移動量設定部(設定部)
Claims (3)
- 鋼管に沿って、レール直線部及びレール曲線部を有するレール上を所定方向に移動しつつ前記鋼管の鋼管直線部及び鋼管曲線部を溶接する溶接ロボット、を制御する溶接システムであって、
前記溶接ロボットが有する溶接トーチと、
前記溶接トーチの向きを変更するトーチ向き変更部と、
前記溶接ロボットの移動速度を変更する速度変更部と、
前記トーチ向き変更部及び前記速度変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記レール曲線部の曲率中心は、前記鋼管曲線部の曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置し、
前記鋼管曲線部は、開始位置である鋼管曲線開始位置と、終了位置である鋼管曲線終了位置と、前記鋼管曲線開始位置と前記鋼管曲線終了位置との中間位置である鋼管曲線中間位置と、を有し、
前記制御部は、
前記溶接ロボットが前記レール曲線部の開始位置であるレール曲線開始位置に到達後、前記溶接トーチの先端が前記鋼管直線部を前記鋼管曲線開始位置まで溶接するに連れて、前記所定方向側への前記溶接トーチの傾斜が大きくなるよう制御し、
前記溶接トーチの先端が前記鋼管曲線開始位置に略到達の際に、前記溶接ロボットが加速するよう制御し、
前記溶接トーチの先端が前記鋼管曲線開始位置から前記鋼管曲線中間位置まで溶接するに連れて、前記所定方向側への前記溶接トーチの傾斜が小さく、前記溶接ロボットが減速するよう制御し、
前記溶接トーチの先端が前記鋼管曲線中間位置から前記鋼管曲線終了位置まで溶接するに連れて、前記所定方向と反対側への前記溶接トーチの傾斜が大きく、前記溶接ロボットが加速するよう制御し、
前記溶接トーチの先端が前記鋼管曲線終了位置に略到達の際に、前記溶接ロボットが減速するよう制御する、
ことを特徴とする溶接システム。 - 前記制御部は、
前記溶接ロボットが前記レール曲線開始位置への到達の際に減速するよう制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。 - 鋼管に沿って、レール直線部及びレール曲線部を有するレール上を所定方向に移動しつつ前記鋼管の鋼管直線部及び鋼管曲線部を溶接する溶接ロボット、を制御する溶接システムであって、
前記溶接ロボットが有する溶接トーチと、
前記溶接トーチの向きを変更するトーチ向き変更部と、
前記溶接ロボットの移動速度を変更する速度変更部と、
前記トーチ向き変更部及び前記速度変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記鋼管曲線部の曲率中心は、前記レール曲線部の曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置し、
前記レール曲線部は、開始位置であるレール曲線開始位置と、終了位置であるレール曲線終了位置と、前記レール曲線開始位置と前記レール曲線終了位置との中間位置であるレール曲線中間位置と、を有し、
前記鋼管曲線部は、開始位置である鋼管曲線開始位置と、終了位置である鋼管曲線終了位置と、を有し、
前記制御部は、
前記溶接トーチの先端が前記鋼管曲線開始位置に到達の際に、前記溶接ロボットが加速するよう制御し、
前記溶接トーチの先端の前記鋼管曲線開始位置への到達から、前記溶接ロボットの前記レール曲線開始位置への到達まで、前記溶接ロボットが前記レール曲線開始位置まで移動するに連れて、前記所定方向と反対側への前記溶接トーチの傾斜が大きく、前記溶接ロボットが減速するよう制御し、
前記溶接ロボットの前記レール曲線開始位置への到達の際に、前記溶接ロボットが減速するよう制御し、
前記溶接ロボットが前記レール曲線開始位置から前記レール曲線中間位置まで移動するに連れて、前記所定方向と反対側への前記溶接トーチの傾斜が小さく、前記溶接ロボットが加速するよう制御し、
前記溶接ロボットが前記レール曲線中間位置から前記レール曲線終了位置まで移動するに連れて、前記所定方向側への前記溶接トーチの傾斜が大きく、前記溶接ロボットが減速するよう制御し、
前記溶接ロボットの前記レール曲線終了位置への到達の際に、前記溶接ロボットが加速するよう制御する、
ことを特徴とする溶接システム。
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