JP7385063B1 - 溶接ロボットシステムの制御方法及び溶接ロボットシステム - Google Patents
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Abstract
Description
多くの場合、鋼管の曲線部の曲率中心と、ガイドレールの曲線部の曲率中心とは異なる。この場合、曲線部における、鋼管とガイドレールとの間の距離が周方向に一定とはならない。このため、溶接ロボットによって溶接トーチの位置及び角度を適宜制御することで、鋼管の曲線部の溶接条件を鋼管の直線部と同じにすることが好ましい。
このように、溶接トーチが所定方向と反対方向へ移動するように、溶接トーチを傾斜させることで、例えば、溶接トーチの先端が鋼管の曲線部に略終了位置にある際に、溶接トーチの向きと鋼管の曲線部の法線方向とが一致するようにして、溶接の品質を鋼管の直線部と曲線部とで一定にすることができる。また、溶接トーチを所定方向と反対の方向に傾ける際に、狙い位置を鋼管に近づく方向に移動させることで、溶接トーチの先端が鋼管から離れることを抑えることができる。
また、例えば、略終了位置移動ステップの実行の前に、第2ケース制御量に基づいて向き変更部及び狙い位置変更部を制御すると、溶接トーチの先端を略終了位置まで移動させる際に溶接トーチの先端が鋼管に干渉するおそれがある。略終了位置移動ステップの実行の後に、制御ステップにて算出される第2ケース制御量に基づき、向き変更部及び狙い位置変更部を制御することで、溶接トーチの先端が鋼管に干渉することを抑えることができる。
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る溶接ロボットシステム100を説明する。
図1に示されるように、溶接ロボットシステム100は、鉛直方向に並べて配置された鋼管8の端部同士を溶接するために用いられる。
鋼管8は、角部に配置される4つの円弧状の曲線部8aと、曲線部8a同士をそれぞれ接続する(曲線部8a同士を切れることなく続ける)4つの直線部8bとを有する角形鋼管である。鋼管8の軸線は、鉛直方向に延びる。初期状態では、鋼管8は、建方治具9により仮止めされている。建方治具9は、鋼管8の直線部8bに取り付けられている。
まず、図1及び図2を参照して、溶接ロボットシステム100の概要を説明する。溶接ロボットシステム100は、溶接ロボット1を制御する。溶接ロボットシステム100は、溶接ロボット1と、ガイドレール2(レール)と、撮影装置3と、溶接電源4と、ワイヤ送給装置5と、システム制御装置6と、を備える。
モータ32は、システム制御装置6による制御を受けて、溶接ロボット1を駆動させるモータである。モータ32は、溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させるサーボモータ(速度変更部、ロボット位置変更部)を含む。
溶接ロボット1は、ガイドレール2に沿って移動可能である。
溶接ロボット1は、制御ケーブルを介して、システム制御装置6と接続される。制御ケーブルは、システム制御装置6が送信した信号であって溶接ロボット1を制御する制御信号を溶接ロボット1に伝送する。
次に、図3~5を参照して、溶接ロボット1の構成を説明する。
図3(a)は、溶接ロボット1の側面図である。図3(b)は、図3(a)のリンク図である。図4は、溶接ロボット1の背面図である。図5(a)は、溶接ロボット1の後述する第1回動部35を示す側面図である。図5(b)は、溶接ロボット1の後述する第2回動部36(向き変更部)を示す平面図である。
なお、以下、鉛直方向に沿った方向を、溶接ロボット1の上下方向xと称する。溶接ロボット1がガイドレール2に沿って移動する方向を、溶接ロボット1の左右方向yと称する。溶接ロボット1の上下方向x及び左右方向yに直交する方向を、溶接ロボット1の前後方向zと称する。
本体部11は、溶接ロボット1の基台である。本体部11は、モータ32を備える。本体部11は、ガイドレール2に取り付けられる車輪部12を備える。溶接ロボット1は、車輪部12がガイドレール2の上を摺動することで、ガイドレール2に沿って移動する。
鉛直アーム22aの上端部は、ケース21の内側においてケース21に接続される。鉛直アーム22a(第1リンク部材22)は、ケース21に対して、溶接ロボット1の上下方向xに移動可能とされている。ケース21と第1リンク部材22とにより、上下移動部34(狙い位置変更部)が構成される。図3(b)に示されるリンク図においては、上下移動部34は、直動関節として示されている。
図5(a)に示されるように、第2リンク部材23は、接続パネル22cに対して、第1リンクピン351の中心軸線(以下、第1軸線とも称する)回りに回動可能とされている。第1リンクピン351の中心軸線は、溶接ロボット1の左右方向yに平行である。接続パネル22cと第2リンク部材23とにより、第1回動部35(向き変更部)が構成される。図3(b)に示されるリンク図においては、第1回動部35は、回転関節として示されている。なお、第1回動部35は、後述する第2回動部36(向き変更部)を溶接トーチ13とともに回動させる。
図5(b)に示されるように、第3リンク部材24は、第2リンク部材23に対して、第2リンクピン361の中心軸線(以下、第2軸線とも称する)回りに回動可能とされている。第2リンク部材23が接続パネル22cに対して回動していない状態において、第2リンクピン361の中心軸線は、溶接ロボット1の上下方向xに平行である。第2リンク部材23と第3リンク部材24とにより、第2回動部36が構成される。図3(b)に示されるリンク図においては、第2回動部36は、回転関節として示されている。
上記のような構成を備える溶接ロボットシステム100における制御方法について説明する。
本実施形態に係る制御方法は、鋼管8の溶接のうち、曲線部8a周辺の溶接(以下、単に、曲線部8aの溶接とも称する)に主となる特徴がある。鋼管8の曲線部8aと、ガイドレール2の曲線部2aとは、周方向の長さが異なる。また、多くの場合、鋼管8の曲線部8aの曲率中心である鋼管曲率中心C1と、ガイドレール2の曲線部2aの曲率中心であるレール曲率中心C2とは異なる。そのため、曲線部8a、2aにおける、鋼管8とガイドレール2との間の距離が周方向に一定とはならない。本実施形態では、このような場合であっても、溶接条件に合わせて溶接ロボット1の移動量を調節することで、鋼管8の位置によらず高品質な溶接を実現する。
タッチセンシングステップは、溶接トーチ13の先端を鋼管8に接触させるステップである。具体的には、タッチセンシングステップは、溶接トーチ13の先端を鋼管8の開先に接触させて、前記開先の断面形状の計測と、ロボットと開先間の位置関係の計測と、を行うステップである。タッチセンシングステップにおいては、例えば、溶接ロボット1を後述する入力部63によって操作して移動させることで、溶接トーチ13の先端を鋼管8に接触させる。タッチセンシングステップにおいては、例えば、溶接ロボット1を自動制御により移動させることで、溶接トーチ13の先端を鋼管8に接触させてもよい。このことで、後述する記憶部64に鋼管8の狙い位置を把握させる。タッチセンシングステップは、制御ステップ及び移動ステップそれぞれの実行の前に行われる。
移動ステップにおいては、まず、溶接トーチ13の先端が進行方向に向くように適宜傾かせる。例えば、溶接トーチ13を作業者が手動で移動させる、又は、溶接トーチ13を後述する入力部63によって操作して移動させる。あるいは、制御部61の制御によって溶接トーチ13を移動させてもよい。
次に、溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させる。例えば、溶接ロボット1を作業者が手動で移動させる。又は、溶接ロボット1を後述する入力部63によって操作して移動させる。これらの作業により、作業者によって、略開始位置における溶接トーチ13の適切な角度を設定する。
略終了位置移動ステップにおいては、まず、溶接トーチ13の先端が進行方向と反対の方向に向くように適宜傾かせる。例えば、溶接トーチ13を作業者が手動で移動させる、又は、溶接トーチ13を後述する入力部63によって操作して移動させる。
次に、溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させる。例えば、溶接ロボット1を作業者が手動で移動させる。又は、溶接ロボット1を後述する入力部63によって操作して移動させる。これらの作業により、作業者によって、略終了位置における溶接トーチ13の適切な角度を設定する。
本実施形態において、タッチセンシングステップ、制御ステップ、移動ステップ、及びティーチングステップは、以下の第1例及び第2例のようにして行われる。以下においては、図8を用いて説明する。
まず、溶接ロボット1がガイドレール2の直線部2bを移動し、かつ、溶接トーチ13の先端が鋼管8の直線部8bに位置する状態から、溶接ロボット1をY方向に移動させる。溶接トーチ13の先端が位置Pc1に到達した時、溶接ロボット1の移動を止める。
この状態で、タッチセンシングステップによって、溶接トーチ13の先端を位置Pc1に接触させる。そして、ティーチングステップによって、位置Pc1の実際の座標、位置Pc1の実際の座標に応じて補正された狙い位置、及び位置Pc1における溶接トーチ13の傾きを記憶部に記憶させる。
この状態で、タッチセンシングステップによって、溶接トーチ13の先端を位置Pc2に接触させる。そして、ティーチングステップによって、位置Pc2の実際の座標、位置Pc2の実際の座標に応じて補正された狙い位置、及び位置Pc2における溶接トーチ13の傾きを記憶部に記憶させる。ここで、上述したように、狙い位置及び溶接トーチ13の傾きは、溶接トーチ13の先端が位置Pc1に到達した時に、予め溶接トーチ13の先端が位置Pc2に到達したときの状態とされている。このことで、位置Pc2におけるタッチセンシングに要する時間を短くすることに寄与する。
この状態で、タッチセンシングステップによって、溶接トーチ13の先端を位置Pc2と位置Pc3との中間位置に接触させる。そして、ティーチングステップによって、位置Pc2と位置Pc3との中間位置の実際の座標、位置Pc2と位置Pc3との中間位置の実際の座標に応じて補正された狙い位置、及び位置Pc2と位置Pc3との中間位置における溶接トーチ13の傾きを記憶部に記憶させる。
そして、移動ステップにより溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させてから、制御部61は、溶接トーチ13の先端が位置Pc3に到達した時の状態となるよう、溶接トーチ13の狙い位置及び溶接トーチ13の傾きを変化させる。
この状態で、タッチセンシングステップによって、溶接トーチ13の先端を位置Pc3に接触させる。そして、ティーチングステップによって、位置Pc3の実際の座標、位置Pc3の実際の座標に応じて補正された狙い位置、及び位置Pc3における溶接トーチ13の傾きを記憶部に記憶させる。
そして、移動ステップにより溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させてから、制御部61は、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達した時の状態となるよう、溶接トーチ13の狙い位置及び溶接トーチ13の傾きを変化させる。
この状態で、タッチセンシングステップによって、溶接トーチ13の先端を位置Pc4に接触させる。そして、ティーチングステップによって、位置Pc4の実際の座標、位置Pc4の実際の座標に応じて補正された狙い位置、及び位置Pc4における溶接トーチ13の傾きを記憶部に記憶させる。
上述の第1例においては、溶接トーチ13の先端を位置Pc1からPc4まで移動させる際、各位置においてタッチセンシングステップ及びティーチングステップをそれぞれ行う。これに対し、第2例は、以下のように、溶接トーチ13の先端が位置Pc1からPc4に向けて移動する際に各位置においてタッチセンシングステップのみ行い、溶接トーチ13の先端が位置Pc4からPc1に向けて移動する際に各位置においてティーチングステップのみ行う点で、第1例と相違する。
すなわち、まず、溶接トーチ13の先端が位置Pc1からPc4まで移動させる際の工程は、ティーチングステップを行わない点を除き、第1例と同様である。溶接ロボット1がガイドレール2の直線部2bを移動し、かつ、溶接トーチ13の先端が鋼管8の直線部8bに位置する状態から、溶接ロボット1をY方向の反対の方向に移動させる。溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達した時、溶接ロボット1の移動を止める。
この状態で、ティーチングステップによって、位置Pc4の実際の座標、位置Pc4の実際の座標に応じて補正された狙い位置、及び位置Pc4における溶接トーチ13の傾きを記憶部に記憶させる。
この状態で、ティーチングステップによって、位置Pc3の実際の座標、位置Pc3の実際の座標に応じて補正された狙い位置、及び位置Pc3における溶接トーチ13の傾きを記憶部に記憶させる。ここで、上述したように、狙い位置及び溶接トーチ13の傾きは、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達した時に、予め溶接トーチ13の先端が位置Pc3に到達したときの状態とされている。このことで、位置Pc3におけるタッチセンシングに要する時間を短くすることに寄与する。
この状態で、ティーチングステップによって、位置Pc3と位置Pc2との中間位置の実際の座標、位置Pc3と位置Pc2との中間位置の実際の座標に応じて補正された狙い位置、及び位置Pc3と位置Pc2との中間位置における溶接トーチ13の傾きを記憶部に記憶させる。
そして、移動ステップにより溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させてから、制御部61は、溶接トーチ13の先端が位置Pc2に到達した時の状態となるよう、溶接トーチ13の狙い位置及び溶接トーチ13の傾きを変化させる。
この状態で、ティーチングステップによって、位置Pc2の実際の座標、位置Pc2の実際の座標に応じて補正された狙い位置、及び位置Pc2における溶接トーチ13の傾きを記憶部に記憶させる。
そして、移動ステップにより溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させてから、制御部61は、溶接トーチ13の先端が位置Pc1に到達した時の状態となるよう、溶接トーチ13の狙い位置及び溶接トーチ13の傾きを変化させる。
この状態で、ティーチングステップによって、位置Pc1の実際の座標、位置Pc1の実際の座標に応じて補正された狙い位置、及び位置Pc1における溶接トーチ13の傾きを記憶部に記憶させる。
以上の過程により、溶接ロボット1及び溶接トーチ13が鋼管8の溶接時に辿るべき軌道を、記憶部に記憶させる。
ティーチングステップによって狙い位置情報を記憶した後は、後述する溶接ロボット1の移動量を求める計算を行わずに、溶接ロボットシステム100による溶接作業を行う。
以下、まず図7を参照して、制御ステップの基本的な考え方、つまり、鋼管8の溶接作業時における狙い位置及び溶接トーチ13の角度の変化のさせ方について説明する。
図7(a)は、鋼管8及びガイドレール2を示す平面図である。図7(b)は、図7(a)のリンク図である。
曲線部8aの溶接を複数のエリアに区画するにあたり、鋼管8を基準とした鋼管座標系を定義する。この鋼管座標系は、鋼管8の曲線部8aの1つ1つに定義される。
以下、鉛直方向を、鋼管座標系におけるX方向と称する。X方向に直交し、かつ1つの曲線部8aと接続される2つの直線部8bのうち一方の直線部8bに沿った方向を鋼管座標系におけるY方向と称する。X方向及びY方向に直交する方向をZ方向と称する。Z方向は、上記2つの直線部8bのうち他方の直線部8bに沿った方向である。例えば、鋼管座標系の原点位置は、後述する溶接条件を満たすような溶接トーチ13の先端の位置(目標位置)とX方向に一致し、かつ上面視(YZ平面)において、鋼管8の曲線部8aの鋼管曲率中心C1に一致する位置に設定される。
また、X方向のうち、鉛直方向の上方向を+X方向と称し、鉛直方向の下方向を-X方向と称する。Y方向のうち、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を基準として鋼管8の外側に向かう方向を+Y方向とし、鋼管8の内側に向かう方向を-Y方向とする。
Z方向のうち、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を基準として鋼管8の外側に向かう方向を+Z方向とし、鋼管8の内側に向かう方向を-Z方向とする。
鋼管8の曲線部8a及びガイドレール2の曲線部2aについて説明する。
曲線部8aは、上面視(YZ平面)において、鋼管曲率中心C1を中心とし、半径がRcの1/4円の円弧状である。曲線部2aは、上面視において、レール曲率中心C2を中心とし、半径がRgの1/4円の円弧状である。
レール曲率中心C2は、鋼管曲率中心C1よりも鋼管8の中心側に位置する。
鋼管8の直線部8bとガイドレール2の直線部2bとの距離をlcgとすると、鋼管曲率中心C1と、レール曲率中心C2とのY方向(又はZ方向)の距離eは、以下の式で表される。
e=Rc+lcg-Rg
すなわち、レール曲率中心C2は、鋼管曲率中心C1から、Y方向及びZ方向に-eだけ移動した位置である。
なお、以下、曲線部2aの開始位置をPg1とし、終了位置をPg2とする。曲線部8aの開始位置をPc2とし、終了位置をPc3とする。レール曲率中心C2と位置Pg1とを結ぶ直線と、鋼管8の直線部8bとの交点を位置Pc1とする。レール曲率中心C2と位置Pg2とを結ぶ直線と、鋼管8の直線部8bとの交点を位置Pc4とする。
エリア2は、鋼管8の位置Pc2から位置Pc3までを溶接するエリアである。すなわち、エリア2は、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc3まで移動するエリアである。エリア2においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の曲線部2aを移動しつつ、鋼管8の曲線部8aを溶接する。すなわち、エリア2では、ガイドレール2の曲線部2a上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の曲線部8aである。
エリア3は、鋼管8の位置Pc3から位置Pc4までを溶接するエリアである。すなわち、エリア3は、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するエリアである。エリア3においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の曲線部2aを移動しつつ、鋼管8の直線部8bを溶接する。すなわち、エリア3では、ガイドレール2の曲線部2a上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の直線部8bである。
エリア4は、鋼管8のエリア1~3以外のエリアである。エリア4においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の直線部2bを移動しつつ、鋼管8の直線部8bを溶接する。すなわち、エリア4では、ガイドレール2の直線部2b上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の直線部8bである。
本実施形態において、曲線部8aの溶接とは、エリア1~3の溶接を意味する。
溶接の品質を良好なものとするためには、エリアによらず以下の<1>~<4>に示す溶接条件を満たすことが好ましい。
<1>溶接トーチ13の先端が鋼管8の溶接部位に沿って移動する速度(以下、溶接移動速度Vwとも称する)が一定となる。
<2>上面視における溶接トーチ13の向き(以下、溶接トーチ向きとも称する)が、鋼管8の曲線部8aの法線方向と一致する、又は鋼管8の直線部8bと直交する。
<3>溶接トーチ13の狙い角θnが一定となる。なお、溶接トーチ13の狙い角θnは、図6に示されるように、溶接ロボット1の左右方向yに沿って見て、溶接トーチ13の先端が鋼管8の開先に位置するときの溶接トーチ13の向きである。狙い角θnは、鋼管8の溶接部位の状態(例えば、開先情報)に応じて適切に調整される。
<4>溶接トーチ13の先端と鋼管8の溶接部位との距離(以下、溶接トーチ13の狙い位置とも称する)が一定である。
なお、上記溶接条件を満たすような溶接トーチ13の先端のX方向の位置は一定となり、鋼管座標系の原点位置とX方向に一致する。図6に示されるように、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の先端のX方向の位置と、ガイドレール2の下端2cとのX方向(溶接ロボット1の上下方向x)の距離をHとする。
第1ケースにおける制御量とは、例えば、溶接トーチ13の先端が所定方向へ移動するように、溶接トーチ13が傾斜するよう、向き変更部を制御するとともに、鋼管8の曲率半径及び曲率中心と、ガイドレール2の曲率半径及び曲率中心と、に応じ、狙い位置を鋼管8から離れる方向に移動させるよう、狙い位置変更部を制御するための制御量である。
第1ケースにおける制御量とは、例えば、溶接トーチ13の先端が所定方向へ移動するように、溶接トーチ13が傾斜するよう、向き変更部を制御するとともに、鋼管8の曲率半径及び曲率中心と、ガイドレール2の曲率半径及び曲率中心と、溶接トーチ13の傾斜の大きさと、に応じ、狙い位置を鋼管8から離れる方向に移動させるよう、狙い位置変更部を制御するための制御量である。
第2ケース制御量とは、具体的には、溶接トーチ13が所定方向と反対方向へ移動するように、溶接トーチ13が傾斜するよう、向き変更部を制御するとともに、鋼管8の曲率半径及び曲率中心と、ガイドレール2の曲率半径及び曲率中心と、溶接トーチ13の傾斜の大きさと、に応じ、狙い位置を鋼管8に近づく方向に移動させるよう、狙い位置変更部を制御するための制御量である。本実施形態では、上述の略終了位置移動ステップの実行の後に、制御ステップにて算出される第2ケース制御量に基づき、向き変更部及び狙い位置変更部を制御する。
以下、第1ケースにおける制御量、及び第2ケースにおける制御量について説明する。
また、溶接ロボット1が所定の移動量、移動した場合の溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す行列T(上記<B>に対応)を生成する。
行列Uと行列Tとが等しくなるような溶接ロボット1の移動量を求め、当該移動量に応じてモータ32の駆動を制御することにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。すなわち、これらの行列U、Tが等しくなることで、所定の時刻t(溶接位置)において目標となる溶接トーチ13の位置及び姿勢を実現するための移動量が求められる。
この移動量を実現するように溶接ロボット1を制御することで、良好な品質の溶接を実現することができる。
行列Uの生成について、図8を参照して詳細に説明する。
行列Uは、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢を、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を基準として表すための行列である。行列Uは、特定の溶接位置において目標とする溶接トーチ13の位置及び姿勢である。行列Uは、鋼管8の溶接位置ごとに定まる。行列Uは、溶接ロボット1の位置によらず定まる。
本実施形態においては、エリア1及び3においては直線部8bの溶接が行われ、エリア2においては曲線部8aの溶接が行われる。したがって、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢は、エリア1~3で異なる。このため、行列Uは、エリア1~3のそれぞれについて生成される。なお、上述のように、上記溶接条件を満たすような溶接トーチ13の先端のX方向の位置は一定となり、鋼管座標系の原点位置とX方向に一致する位置である。
また、時刻tにおける溶接位置において、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の溶接トーチ向きは、直線部8bと直交する方向である。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の狙い角は、常に一定(θn)となる。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の先端と直線部8bとの距離は、常に一定となる。
エリア1における行列Uは、上記のような溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す同次変換行列として生成される。
θc=(Vw・t÷2πRc)×2π
また、時刻tにおける溶接位置において、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の溶接トーチ向きは、曲線部8aの法線方向と一致する方向である。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の狙い角は、常に一定(θn)となる。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の先端と曲線部8aとの距離は、常に一定となる。
エリア2における行列Uは、上記のような溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す同次変換行列として生成される。
また、時刻tにおける溶接位置において、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の溶接トーチ向きは、直線部8bと直交する方向である。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の狙い角は、常に一定(θn)となる。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の先端と直線部8bとの距離は、常に一定となる。
エリア3における行列Uは、上記のような溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す同次変換行列として生成される。
図3~6を参照して、溶接ロボット1の移動量について説明する。本実施形態において、溶接ロボットシステム100は、溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の移動量Mx、溶接ロボット1の左右方向yの移動量My、溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の移動量Mz、溶接トーチ13の第1軸線回りの移動量MB、及び溶接トーチ13の第2軸線回りの移動量MTを制御対象とする。すなわち、溶接ロボット1の移動量は、移動量Mx、移動量My、移動量Mz、移動量MB、及び移動量MTを含む。
なお、移動量Mx、Mz、MB、及びMTは、溶接トーチ13の基準位置からの移動量を示す。溶接トーチ13の基準位置とは、溶接トーチ13が移動や回動等していない状態における、溶接トーチ13の位置及び姿勢である。
移動量Myは、ガイドレール2の所定の位置を基準とした溶接ロボット1の移動量を示す。前記所定の位置は、例えば、ガイドレール2の曲線部2aの開始位置Pg1に設定される。
行列Tは、溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の移動量がMx、溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の移動量がMz、溶接トーチ13の第1軸線回りの移動量がMB、溶接トーチ13の第2軸線回りの移動量がMTであり、かつ位置Pg1を基準とした溶接ロボット1の移動量がMyである場合の、溶接トーチ13の位置及び姿勢を、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を基準として表すための行列である。本実施形態においては、行列Tは、エリア1~3で共通の行列となる。
なお、エリア1~3において、溶接ロボット1は曲線部2a上を移動する。すなわち、エリア1~3における溶接ロボット1の移動は、YZ平面上のレール曲率中心C2回りの回転移動である。YZ平面において、溶接ロボット1の、位置Pg1からのレール曲率中心C2回りの回転量をθg(ラジアン)とすると、移動量Myは、以下の式のように、回転量θgとして表すことができる。なお、Rgは、曲線部2aの半径である。
θg=(My÷2πRg)×2π
図3(b)には、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、溶接ロボット1のリンク構造及び各リンク間の距離が示されている。図3(b)において、aは、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、第1リンクピン351と第2リンクピン361との溶接ロボット1の前後方向zの距離を示す(図5(a)も併せて参照)。bは、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、第1リンクピン351と第2リンクピン361との溶接ロボット1の上下方向xの距離を示す(図5(a)も併せて参照)。cは、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、ガイドレール2の下端2cと第1リンクピン351との溶接ロボット1の上下方向xの距離を示す。dは、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、ガイドレール2と第1リンクピン351との溶接ロボット1の前後方向zの距離を示す。Lは、第2リンクピン361から溶接トーチ13の先端までの距離を示す(図5(b)も併せて参照)。これらパラメータa~d及びLを用いることにより、溶接トーチ13の基準位置における位置及び姿勢が表される。
行列T3は、上述のようにパラメータa~d及びLを用いて表された溶接トーチ13の基準位置における位置及び姿勢を、移動量Mx、Mz、MB、MTだけ移動及び回転させることにより生成される同次変換行列である。
上記のように生成された行列U及び行列Tについて、行列U=行列Tとすることにより、上記溶接条件を満たす溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式が導出される。この計算式は、移動量Mx、My、Mz、MB、MTのそれぞれについて導出される。この計算式は、エリア1~3のそれぞれについて導出される。
次に、図9及び図10を参照して、溶接ロボットシステム100の制御系について説明する。
制御系では、前述したように、行列Uと行列Tとが等しくなるような溶接ロボット1の移動量を求め、当該移動量に応じてモータ32の駆動を制御することにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。
図9は、実施形態におけるシステム制御装置6のハードウェア構成の一例を示す図である。システム制御装置6は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備え、プログラムを実行する。システム制御装置6は、プログラムの実行によって制御部61、通信部62、入力部63、記憶部64及び出力部65を備える装置として機能する。
通信部62は、例えば制御ケーブルを介して溶接ロボット1の位置に関する情報(以下、溶接ロボット位置情報と言う)を取得する。溶接ロボット位置情報は、例えば溶接ロボット1の移動に関するサーボモータ(モータ32)の制御の目標値(以下、単に目標値とも言う)である。
入力部63は、これらの入力装置をシステム制御装置6に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部63は、システム制御装置6に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部63には、例えば溶接の開始の指示が入力される。
記憶部64は、予め、エリア1~3のそれぞれについて導出された、行列Uと行列Tとが等しくなるときの溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を記憶する。
記憶部64は、前記目標値(溶接ロボット位置情報)を記憶する。記憶部64は、溶接トーチ13の基準位置を記憶する。記憶部64は、移動量Myの基準となるガイドレール2の所定の位置を記憶する。
データ取得部610は、記憶部64から、使用される鋼管8の種類に対応する鋼管形状情報を取得する。データ取得部610は、記憶部64から、使用されるガイドレール2の種類に対応するガイドレール形状情報を取得する。なお、使用される鋼管8の種類及びガイドレール2の種類は、例えば、ユーザによって入力部63に入力される。
パラメータ設定部624は、判別された溶接部位の形状や状態に基づき、溶接条件としての溶接トーチ13の溶接移動速度Vw、溶接トーチ向き、狙い角θn、及び狙い位置の具体的な値を設定する。
エリア判定部626は、算出された溶接トーチ13の先端の目標位置が、エリア1~3のうちいずれのエリアに位置するかを判定する。
すなわち、移動量設定部628は、行列U及び行列Tに基づき、上記溶接条件における溶接トーチ13の溶接移動速度Vw、溶接トーチ向き、狙い角θn、及び狙い位置を満たす溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを設定する。
具体的には、曲線部溶接実行制御部629は、モータ32を駆動して上下移動部34を動作させ、移動量設定部628により設定された移動量Mxに応じて溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の位置を変更する。曲線部溶接実行制御部629は、モータ32を駆動して前後移動部33を動作させ、移動量設定部628により設定された移動量Mzに応じて溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の位置を変更する。曲線部溶接実行制御部629は、モータ32を駆動して第1回動部35を動作させ、移動量設定部628により設定された移動量MBに応じて第1軸線回りの溶接トーチ13の向きを変更する。曲線部溶接実行制御部629は、モータ32を駆動して第2回動部36を動作させ、移動量設定部628により設定された移動量MTに応じて第2軸線回りの溶接トーチ13の向きを変更する。曲線部溶接実行制御部629は、モータ32(サーボモータ)を駆動して、移動量設定部628により設定された移動量Myに応じて溶接ロボット1の位置を変更する。
図11を参照して、溶接ロボットシステム100が実行する制御例について説明する。
図11は、本実施形態におけるシステム制御装置6が実行する曲線部8aの溶接処理の流れの一例を示すフローチャートである。図11は、制御ステップのフローチャートである。上述のように、本実施形態において、制御ステップは、溶接作業を行う前に、溶接作業時の溶接ロボット1及び溶接トーチ13の軌道を決定するために行われる。このため、図11に示すフローチャートは、例えば、制御ステップにおいて狙い位置や溶接トーチ13の傾きの変化代を計算するためのシミュレーションとして用いられる。
以下、本実施形態においては、曲率中心判定部623が、レール曲率中心C2が鋼管曲率中心C1よりも鋼管8の中心側に位置すると判定した場合の曲線部8aの溶接処理の流れを説明する。
エリア判定部626は、経過時間tにおける溶接トーチ13の先端の目標位置を算出する(ステップS102)。エリア判定部626は、算出された溶接トーチ13の先端の目標位置が、エリア1~3のうちいずれのエリアに位置するかを判定する(ステップS103)。
溶接トーチ13の先端の位置が位置Pc4に到達したと判定される場合(ステップS106:YES)、曲線部溶接実行制御部629は、曲線部8aの溶接処理を終了する(ステップS206)。
一方、溶接トーチ13の先端の位置が位置Pc4に到達していない場合(ステップS106:NO)、ステップS102の処理に戻る。この場合、曲線部8aの溶接処理は継続される。
なお、以下の説明において、移動量Mxは、溶接トーチ13が下側に移動する場合に増加し、上側に移動する場合に減少するとする。移動量Mzは、溶接トーチ13が後側(すなわち、鋼管8から離れる側)に移動する場合に増加し、前側(すなわち、鋼管8に近づく側)に移動する場合に減少するとする。移動量MBは、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が増加する場合に増加するとされる。移動量MTは、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13が溶接ロボット1の進行方向に直交する場合を0とし、溶接トーチ13が溶接ロボット1の進行方向側に傾斜する場合に増加し、溶接ロボット1の進行方向と反対側に傾斜する場合に減少するとする。
エリア1においては、図12に示すように、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも小さくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア1における移動速度まで瞬間的に減速する。瞬間的というのはエリア4からエリア1に到達したタイミングである。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
図13に示すように、エリア1において、前後方向zにおける溶接ロボット1の速度は増加する。つまり、移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、前後方向移動基準値から増加していく。すなわち、溶接トーチ13は、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、鋼管8から離れる方向に移動する。
移動量MBは、図14に示すように、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、第1軸線回動基準値から増加していく。すなわち、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が大きくなる。
移動量MTは、図14に示すように、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、0から増加していく。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向側へ傾斜していく。
エリア2においては、図12に示すように、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア2における移動速度まで瞬間的に加速する。瞬間的というのはエリア1からエリア2に到達したタイミングである。また、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置までの範囲では、溶接ロボット1は、エリア2の開始位置Pc2から上記中間位置まで、所定の負の加速度で減速し続ける。なお、この場合であっても、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きい。その後、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3までの範囲では、溶接ロボット1は、上記中間位置からエリア2の終了位置Pc3まで、所定の正の加速度で加速し続ける。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
図13に示すように、エリア2において溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するまでの、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は正である。つまり、移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するに従い増加していく。図13に示すように、エリア2において溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するまでの、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は負である。つまり、移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するに従い減少していく。
すなわち、溶接トーチ13は、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置までの範囲では、鋼管8から離れる方向に移動し、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3までの範囲では、鋼管8に近づく方向に移動する。
移動量MBは、図14に示すように、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するに従い減少していき、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するに従い増加していく。なお、この場合であっても、移動量MBが第1軸線回動基準値よりも小さくなることはない。すなわち、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が小さくなり、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が大きくなる。
移動量MTは、図14に示すように、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc3まで移動するに従い減少していく。また、移動量MTは、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置に位置するときに0となる。移動量MTの値は、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置と位置Pc3との間にあるときにマイナスとなる。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13の先端がエリア1の終端位置である位置Pc3に位置するとき、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向側へ傾斜している。溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するに従い、溶接トーチ13の溶接ロボット1の進行方向側への傾斜が小さくなっていき、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置に到達すると、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向に直交する。その後、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するに従い、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向と反対側へ傾斜していく。
エリア3においては、図12に示すように、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも小さくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア3における移動速度まで瞬間的に減速する。瞬間的というのはエリア2からエリア3に到達したタイミングである。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
図13に示すように、エリア3において溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するまでの、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は、マイナス値から0(ゼロ)に向かって増加する。つまり、移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い減少していく。図13に示すように、エリア3において溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達した時、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は0(ゼロ)になる。つまり、移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達すると前後方向移動基準値と等しくなる。すなわち、溶接トーチ13は、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い、鋼管8に近づく方向に移動する。
移動量MBは、図14に示すように、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い減少していき、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達すると第1軸線回動基準値と等しくなる。すなわち、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が小さくなる。
移動量MTは、図14に示すように、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い増加していき、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達すると0となる。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13の先端がエリア2の終端位置である位置Pc3に位置するとき、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向と反対側へ傾斜している。溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い、溶接トーチ13の溶接ロボット1の進行方向と反対側への傾斜が小さくなっていき、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達すると、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向に直交する。
このように、溶接トーチ13が所定方向と反対方向へ移動するように、溶接トーチ13を傾斜させることで、例えば、溶接トーチ13の先端が鋼管8の曲線部8aに略終了位置にある際に、溶接トーチ13の向きと鋼管8の曲線部8aの法線方向とが一致するようにして、溶接の品質を鋼管8の直線部8bと曲線部8aとで一定にすることができる。また、溶接トーチ13を所定方向と反対の方向に傾ける際に、狙い位置を鋼管8に近づく方向に移動させることで、溶接トーチ13の先端が鋼管8から離れることを抑えることができる。
また、例えば、略終了位置移動ステップの実行の前に、第2ケース制御量に基づいて向き変更部及び狙い位置変更部を制御すると、溶接トーチ13の先端を略終了位置まで移動させる際に溶接トーチ13の先端が鋼管8に干渉するおそれがある。略終了位置移動ステップの実行の後に、制御ステップにて算出される第2ケース制御量に基づき、向き変更部及び狙い位置変更部を制御することで、溶接トーチ13の先端が鋼管8に干渉することを抑えることができる。
以下、図15及び16を参照し、本発明の第2実施形態に係る溶接ロボットシステム100を説明する。
本実施形態においては、鋼管曲率中心C1がレール曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置する場合の、溶接ロボットシステム100における制御方法について説明する。本実施形態において用いられる溶接ロボットシステム100の基本的な構成及び動作は、第1実施形態の溶接ロボットシステム100と同様である。
第2実施形態において、タッチセンシングステップ、制御ステップ、移動ステップ、及びティーチングステップは、第1実施形態と同様の過程により行われるが、以下の点においてのみ第1実施形態と相違する。
また、第2実施形態において、図15に示すように、鋼管曲率中心C1がレール曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置することで、溶接トーチ13の先端が位置Pc5から位置Pc5と位置Pc6との中間位置まで移動する時は、溶接トーチ13の先端は鋼管8から離れるように動く。溶接作業中に溶接トーチ13の先端が鋼管8から離れて溶接不可となることを抑える為に、制御部61は、溶接トーチ13の先端が鋼管8に近づくように狙い位置及び溶接トーチ13の傾きを変化させる。
このため、溶接トーチの先端が位置Pc5と位置Pc6との中間位置に到達した後は、移動ステップにより溶接ロボット1を移動させる前に、予め溶接トーチ13の狙い位置及び溶接トーチ13の傾きを変化させる。
第2実施形態に係る溶接ロボット1及び溶接トーチ13の軌道の決定の過程は、上記の点で第1実施形態と相違する。
図15を参照して、鋼管8の曲線部8a及びガイドレール2の曲線部2aについて説明する。
図15に示されるように、本実施形態において、鋼管曲率中心C1は、レール曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置する。レール曲率中心C2は、鋼管曲率中心C1から、Y方向及びZ方向にeだけ移動した位置となる。
なお、以下、曲線部8aの開始位置をPc5とし、終了位置をPc6とする。曲線部2aの開始位置をPg6とし、終了位置をPg7とする。鋼管曲率中心C1と位置Pc5とを結ぶ直線と、ガイドレール2の直線部2bとの交点を位置Pg5とする。鋼管曲率中心C1と位置Pc6とを結ぶ直線と、ガイドレール2の直線部2bとの交点を位置Pg8とする。
エリア6は、溶接ロボット1がガイドレール2の位置Pg6から位置Pg7まで移動するエリアである。エリア6においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の曲線部2aを移動しつつ、鋼管8の曲線部8aを溶接する。すなわち、エリア6では、ガイドレール2の曲線部2aに溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の曲線部8aである。
エリア7は、溶接ロボット1がガイドレール2の位置Pg7から位置Pg8まで移動するエリアである。エリア7においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の直線部2bを移動しつつ、鋼管8の曲線部8aを溶接する。すなわち、エリア7では、ガイドレール2の直線部2bに溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の曲線部8aである。
エリア8は、鋼管8のエリア5~7以外のエリアである。エリア8においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の直線部2bを移動しつつ、鋼管8の直線部8bを溶接する。すなわち、エリア8では、ガイドレール2の直線部2b上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の直線部8bである。
本実施形態において、曲線部8aの溶接とは、エリア5~7の溶接を意味する。
第1実施形態と同様に、溶接の品質を良好なものとするためには、エリアによらず以下の<1>~<4>に示す溶接条件を満たすことが好ましい。
<1>溶接トーチ13の先端が鋼管8の溶接部位に沿って移動する速度(以下、溶接移動速度Vwとも称する)が一定となる。
<2>上面視における溶接トーチ13の向き(以下、溶接トーチ向きとも称する)が、鋼管8の曲線部8aの法線方向と一致する、又は鋼管8の直線部8bと直交する。
<3>溶接トーチ13の狙い角θnが一定となる。
<4>溶接トーチ13の先端と鋼管8の溶接部位との距離(以下、溶接トーチ13の狙い位置とも称する)が一定である。
第2ケースにおける制御量とは、例えば、溶接トーチ13の先端が所定方向と反対方向へ移動するように、溶接トーチ13が傾斜するよう、向き変更部を制御するとともに、鋼管8の曲率半径及び曲率中心と、ガイドレール2の曲率半径及び曲率中心と、に応じ、狙い位置を鋼管8に近づく方向に移動させるよう、狙い位置変更部を制御するための制御量である。
ガイドレール2の曲線部2aの略終了位置に溶接ロボット1が位置する場合における制御量とは、具体的には、鋼管8の曲率半径及び曲率中心と、ガイドレール2の曲率半径及び曲率中心と、に応じ、狙い位置を鋼管8から離れる方向に移動させるよう、狙い位置変更部を制御するための制御量である。
以下、第2ケースにおける制御量、及びガイドレール2の曲線部2aの略終了位置に溶接ロボット1が位置する場合における制御量について説明する。
具体的には、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢を表す行列U(上記<A>に対応)を生成する。また、溶接ロボット1が所定の移動量、移動した場合の溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す行列T(上記<B>に対応)を生成する。行列Uと行列Tとが等しくなるような溶接ロボット1の移動量を求め、当該移動量に応じてモータ32の駆動を制御することにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。
行列Uは、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢を、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を基準として表すための行列である。
本実施形態においては、エリア5~7の全てにおいて、曲線部8aの溶接が行われる。
したがって、エリア5~7に共通の行列Uが生成される。
θc=(Vw・t÷2πRc)×2π
また、時刻tにおける溶接位置において、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の溶接トーチ向きは、曲線部8aの法線方向と一致する方向である。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の狙い角は、常に一定(θn)となる。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の先端と曲線部8aとの距離は、常に一定となる。
行列Uは、上記のような溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す同次変換行列として生成される。
行列Tは、溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の移動量がMx、溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の移動量がMz、溶接トーチ13の第1軸線回りの移動量がMB、溶接トーチ13の第2軸線回りの移動量がMTであり、かつ位置Pg1を基準とした溶接ロボット1の移動量がMyである場合の、溶接トーチ13の位置及び姿勢を、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を基準として表すための行列である。
なお、本実施形態においては、エリア5及び7においては溶接ロボット1が直線部2bを移動し、エリア6においては溶接ロボット1が曲線部2aを移動する。したがって、行列Tは、エリア5~7のそれぞれについて生成される。
エリア5において、溶接ロボット1は直線部2b上をY方向(+Y方向)に移動する。
したがって、行列T4は、位置Pg5をY方向に+Myだけ移動させることにより生成される。なお、位置Pg5は、鋼管曲率中心C1からZ方向に+Rgだけ移動した位置である。
なお、行列T3については、第1実施形態の行列T3と同様であるため、ここでは記載を省略する。
エリア6において、溶接ロボット1は曲線部2a上を移動する。すなわち、エリア6における溶接ロボット1の移動は、YZ平面上のレール曲率中心C2回りの回転移動である。
YZ平面において、溶接ロボット1の、位置Pg6からのレール曲率中心C2回りの回転量をθg(ラジアン)とすると、移動量Myは、以下の式のように、回転量θgとして表すことができる。なお、Rgは、曲線部2aの半径である。
θg=(My÷2πRg)×2π
行列T2は、位置Pg6を、レール曲率中心C2回りに回転量θgだけ回転させることにより生成される。なお、位置Pg6は、レール曲率中心C2からZ方向に+Rgだけ移動した位置である。
なお、行列T1及びT3については、第1実施形態の行列T1及びT3と同様であるため、ここでは記載を省略する。
エリア7において、溶接ロボット1は直線部2b上をZ方向(-Z方向)に移動する。
したがって、行列T6は、位置Pg7をZ方向に-Myだけ移動させることにより生成される。なお、位置Pg7は、鋼管曲率中心C1からY方向に+Rg、Z方向に+eだけ移動した位置である。
なお、行列T3については、第1実施形態の行列T3と同様であるため、ここでは記載を省略する。
上記のように生成された行列U及び行列Tについて、行列U=行列Tとすることにより、上記溶接条件を満たす溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式が導出される。この計算式は、移動量Mx、My、Mz、MB、MTのそれぞれについて導出される。この計算式は、エリア5~7のそれぞれについて導出される。
本実施形態における溶接ロボットシステム100の制御系の基本的な構造及び動作は、第1実施形態の制御系と同様である。
一方で、本実施形態においては、行列Uは、エリア5~7に共通の行列として生成される。行列Tは、エリア5~7のそれぞれについて生成される。
記憶部64は、予め、エリア5~7のそれぞれについて導出された、行列Uと行列Tとが等しくなるときの溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を記憶する。目標トーチ位置計算部627は、記憶部64及びデータ取得部610を介して、上記計算式を取得する。移動量設定部628は、上記計算式に基づき、所定の時刻tにおける溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求め、これらを溶接ロボット1の移動量として設定する。
なお、上記以外の制御系の構成及び動作については、第1実施形態の制御系と同様であるため、記載を省略する。
図16を参照して、溶接ロボットシステム100が実行する制御例について説明する。
図16は、本実施形態におけるシステム制御装置6が実行する曲線部8aの溶接処理の流れの一例を示すフローチャートである。
以下、本実施形態においては、曲率中心判定部623が、鋼管曲率中心C1がレール曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置すると判定した場合の曲線部8aの溶接処理の流れを説明する。
エリア判定部626は、経過時間tにおける溶接トーチ13の先端の目標位置を算出する(ステップS202)。なお、本実施形態においては、エリア5~7の全てにおいて、溶接トーチ13の先端の移動が鋼管曲率中心C1回りの回転移動となるため、目標トーチ位置計算部627は、ステップS202で算出された溶接トーチ13の先端の目標位置を、鋼管8の曲線部8aにおける溶接トーチ13の先端の回転量θcとして算出する(ステップS203)。
溶接トーチ13の先端の位置が位置Pc6に到達したと判定される場合(ステップS206:YES)、曲線部溶接実行制御部629は、曲線部8aの溶接処理を終了する。
一方、溶接トーチ13の先端の位置が位置Pc6に到達していない場合(ステップS206:NO)、ステップS202の処理に戻る。この場合、曲線部8aの溶接処理は継続される。
エリア5においては、図17に示すように、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア5における移動速度まで瞬間的に加速する。瞬間的というのはエリア8からエリア5に到達したタイミングである。また、その後、溶接ロボット1は、エリア5の開始位置Pg5から終了位置Pg6まで、所定の負の加速度で減速し続ける。なお、この場合であっても、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きい。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
図18に示すように、エリア5において、前後方向zにおける溶接ロボット1の速度は減少する。つまり、移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、前後方向移動基準値から減少していく。すなわち、溶接トーチ13は、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、鋼管8に近づく方向に移動する。
移動量MBは、図19に示すように、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、第1軸線回動基準値から増加していく。すなわち、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が大きくなる。
移動量MTは、図19に示すように、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、0から減少していく。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向と反対側へ傾斜していく。
エリア6においては、図17に示すように、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きいが、エリア5における移動速度よりも小さくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア6における移動速度まで瞬間的に減速する。瞬間的というのはエリア5からエリア6に到達したタイミングである。また、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置までの範囲では、溶接ロボット1は、エリア6の開始位置Pg6から上記中間位置まで、所定の正の加速度で加速し続ける。その後、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7までの範囲では、溶接ロボット1は、上記中間位置からエリア6の終了位置Pg7まで、所定の負の加速度で減速し続ける。なお、この場合であっても、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きく、エリア5における移動速度よりも小さい。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
図18に示すように、エリア6において溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するまでの、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は負である。つまり、移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するに従い減少していく。図18に示すように、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するまでの、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は正である。つまり、移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するに従い増加していく。
すなわち、溶接トーチ13は、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置までの範囲では、鋼管8に近づく方向に移動し、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7までの範囲では、鋼管8から離れる方向に移動する。
移動量MBは、図19に示すように、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するに従い減少していき、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するに従い増加していく。なお、この場合であっても、移動量MBが第1軸線回動基準値よりも小さくなることはない。すなわち、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が小さくなり、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が大きくなる。
移動量MTは、図19に示すように、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg7まで移動するに従い増加していく。また、移動量MTは、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置に位置するときに0となる。移動量MTの値は、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置と位置Pg7との間にあるときにプラスとなる。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接ロボット1がエリア5の終端位置である位置Pg6に位置するとき、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向と反対側へ傾斜している。溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するに従い、溶接トーチ13の溶接ロボット1の進行方向と反対側への傾斜が小さくなっていき、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置に到達すると、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向に直交する。その後、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するに従い、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向側へ傾斜していく。
エリア7においては、図17に示すように、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きく、かつエリア6における移動速度よりも大きくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア7における移動速度まで瞬間的に加速する。瞬間的というのはエリア6からエリア7に到達したタイミングである。また、その後、溶接ロボット1は、エリア7の開始位置Pg7から終了位置Pg8まで、所定の正の加速度で加速し続ける。なお、この場合であっても、溶接ロボット1の移動速度は基準速度及びエリア6における移動速度よりも大きい。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
図18に示すように、エリア7において溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8までの、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は、プラス値から0(ゼロ)に向かって減少する。つまり、移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い減少していく。図18に示すように、エリア7において溶接ロボット1が位置Pg8に到達した時、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は0(ゼロ)になる。つまり、移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg8に到達すると前後方向移動基準値と等しくなる。すなわち、溶接トーチ13は、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い、鋼管8から離れる方向に移動する。
移動量MBは、図19に示すように、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い減少していき、溶接ロボット1が位置Pg8に到達すると第1軸線回動基準値と等しくなる。すなわち、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が小さくなる。
移動量MTは、図19に示すように、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い減少していき、溶接ロボット1が位置Pg8に到達すると0となる。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接ロボット1がエリア6の終端位置である位置Pg7に位置するとき、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向側へ傾斜している。溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い、溶接トーチ13の溶接ロボット1の進行方向側への傾斜が小さくなっていき、溶接ロボット1が位置Pg8に到達すると、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向に直交する。
以下、鋼管曲率中心C1と、レール曲率中心C2とが一致する場合の、溶接ロボットシステム100における制御方法について説明する。
この場合、鋼管8(曲線部8a)とガイドレール2(曲線部2a)との間の周方向の距離が一定である。したがって、溶接トーチ13の溶接トーチ向き、狙い角、及び狙い位置を上記溶接条件<2>~<4>を満たすように設定した状態で、溶接トーチ13の先端が溶接移動速度Vwで移動するような溶接ロボット1の移動速度を設定することにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。なお、この場合の溶接ロボット1の移動速度は一定となる。
1 溶接ロボット
2 ガイドレール(レール)
2a 曲線部
6 システム制御装置
8 鋼管
8a 曲線部
13 溶接トーチ
33 前後移動部(狙い位置変更部)
34 上下移動部(狙い位置変更部)
35 第1回動部(向き変更部)
36 第2回動部(向き変更部)
620 溶接ロボット制御部
621 位置情報取得部
622 形状情報取得部(取得部)
623 曲率中心判定部(判定部)
624 パラメータ設定部(設定部)
625 溶接時間カウント部
626 エリア判定部
627 目標トーチ位置計算部(設定部)
628 移動量設定部(設定部)
Claims (15)
- 鋼管に沿って配置されたレールであって直線部及び曲線部を有するレール上を所定方向に移動しつつ前記鋼管の直線部及び曲線部を溶接する溶接ロボットであって、溶接トーチと、前記溶接トーチの狙い位置を変更する狙い位置変更部と、を有する溶接ロボットであって、前記鋼管の曲線部における溶接形態が、前記所定方向における複数のエリアに応じて分けられる溶接ロボット、
を備える溶接ロボットシステムの制御方法であって、
前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心が、前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記鋼管の曲率半径及び曲率中心と、前記レールの曲率半径及び曲率中心と、に応じ、前記狙い位置変更部を制御する制御ステップ、
を備え、
前記制御ステップにて、
前記複数のエリアそれぞれの開始位置において、当該エリアの終了位置における前記狙い位置変更部の制御量を計算し、
前記溶接トーチの先端が前記所定方向において、前記エリアの開始位置、または、前記エリアの終了位置、に位置するときに、当該エリアの開始位置において計算された前記制御量に基づいて、前記狙い位置変更部を制御することを特徴とする溶接ロボットシステムの制御方法。 - 前記レール曲率中心が前記鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合であって、前記鋼管の曲線部の略開始位置に前記溶接トーチの先端が位置する場合、を第1ケースとし、
前記制御ステップにて、前記第1ケースにおける制御量であって、前記鋼管の曲率半径及び曲率中心と、前記レールの曲率半径及び曲率中心と、に応じ、前記狙い位置を前記鋼管から離れる方向に移動させるよう、前記狙い位置変更部を制御するための制御量、を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。 - 前記溶接ロボットは、
前記溶接トーチの向きを変更する向き変更部、
を更に備え、
前記レール曲率中心が前記鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合であって、前記鋼管の曲線部の略開始位置に前記溶接トーチの先端が位置する場合、を第1ケースとし、
前記制御ステップにて、前記第1ケースにおける制御量であって、前記溶接トーチの先端が前記所定方向へ移動するように、前記溶接トーチが傾斜するよう、前記向き変更部を制御するとともに、前記鋼管の曲率半径及び曲率中心と、前記レールの曲率半径及び曲率中心と、に応じ、前記狙い位置を前記鋼管から離れる方向に移動させるよう、前記狙い位置変更部を制御するための制御量、を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。 - 前記溶接ロボットは、
前記溶接トーチの向きを変更する向き変更部、
を更に備え、
前記レール曲率中心が前記鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合であって、前記鋼管の曲線部の略開始位置に前記溶接トーチの先端が位置する場合、を第1ケースとし、
前記制御ステップにて、前記第1ケースにおける制御量であって、前記溶接トーチの先端が前記所定方向へ移動するように、前記溶接トーチが傾斜するよう、前記向き変更部を制御するとともに、前記鋼管の曲率半径及び曲率中心と、前記レールの曲率半径及び曲率中心と、前記傾斜の大きさと、に応じ、前記狙い位置を前記鋼管から離れる方向に移動させるよう、前記狙い位置変更部を制御するための制御量、を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。 - 前記略開始位置に前記溶接トーチの先端が位置するよう、前記溶接ロボットを移動させる移動ステップ、
を更に備え、
前記制御ステップにて算出される前記制御量に基づき、前記移動ステップの実行の前に、前記向き変更部及び前記狙い位置変更部を制御する、
ことを特徴とする請求項3に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。 - 前記制御ステップ及び前記移動ステップそれぞれの実行の後、前記狙い位置を示す狙い位置情報を、ユーザの指示に応じ、記憶部に記憶させるティーチングステップ、
を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。 - 前記制御ステップ及び前記移動ステップそれぞれの実行の前に、前記溶接トーチの先端を前記鋼管に接触させるタッチセンシングステップ、
を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。 - 前記制御ステップにて、前記レール曲率中心が前記鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合であって、前記鋼管の曲線部の略終了位置に前記溶接トーチの先端が位置する場合における制御量であって、前記鋼管の曲率半径及び曲率中心と、前記レールの曲率半径及び曲率中心と、に応じ、前記狙い位置を前記鋼管に近づく方向に移動させるよう、前記狙い位置変更部を制御するための制御量、を算出する、
ことを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。 - 前記制御ステップにて、前記鋼管曲率中心が前記レール曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記鋼管の曲率半径及び曲率中心と、前記レールの曲率半径及び曲率中心と、に応じ、前記狙い位置変更部を制御する、
ことを特徴とする請求項8に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。 - 前記鋼管曲率中心が前記レール曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合であって、前記鋼管の曲線部の略開始位置に前記溶接トーチの先端が位置する場合、を第2ケースとし、
前記制御ステップにて、前記第2ケースにおける制御量であって、前記鋼管の曲率半径及び曲率中心と、前記レールの曲率半径及び曲率中心と、に応じ、前記狙い位置を前記鋼管に近づく方向に移動させるよう、前記狙い位置変更部を制御するための制御量、を算出する、
ことを特徴とする請求項9に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。 - 前記鋼管曲率中心が前記レール曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合であって、前記鋼管の曲線部の略開始位置に前記溶接トーチの先端が位置する場合、を第2ケースとし、
前記制御ステップにて、前記第2ケースにおける制御量であって、前記溶接トーチの先端が前記所定方向と反対方向へ移動するように、前記溶接トーチが傾斜するよう、前記向き変更部を制御するとともに、前記鋼管の曲率半径及び曲率中心と、前記レールの曲率半径及び曲率中心と、に応じ、前記狙い位置を前記鋼管に近づく方向に移動させるよう、前記狙い位置変更部を制御するための制御量、を算出する、
ことを特徴とする請求項10に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。 - 前記制御ステップにて、前記鋼管曲率中心が前記レール曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合であって、前記レールの曲線部の略終了位置に前記溶接ロボットが位置する場合における制御量であって、前記鋼管の曲率半径及び曲率中心と、前記レールの曲率半径及び曲率中心と、に応じ、前記狙い位置を前記鋼管から離れる方向に移動させるよう、前記狙い位置変更部を制御するための制御量、を算出する、
ことを特徴とする請求項11に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。 - 鋼管に沿って配置されたレールであって直線部及び曲線部を有するレール上を所定方向に移動しつつ前記鋼管の直線部及び曲線部を溶接する溶接ロボットであって、前記鋼管の曲線部における溶接形態が、前記所定方向における複数のエリアに応じて分けられる溶接ロボット、を制御する溶接ロボットシステムであって、
制御部、
を更に備え、
前記溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記溶接トーチの狙い位置を変更する狙い位置変更部と、
を有し、
前記制御部は、前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心が、前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記鋼管の曲率半径及び曲率中心と、前記レールの曲率半径及び曲率中心と、に応じ、前記狙い位置変更部を制御し、
前記制御部は、
前記複数のエリアそれぞれの開始位置において、当該エリアの終了位置における前記狙い位置変更部の制御量を計算し、
前記溶接トーチの先端が前記所定方向において、前記エリアの開始位置、または、前記エリアの終了位置、に位置するときに、当該エリアの開始位置において計算された前記制御量に基づいて、前記狙い位置変更部を制御する、
ことを特徴とする溶接ロボットシステム。 - 前記鋼管の曲線部の略終了位置に前記溶接トーチの先端が位置するよう、前記溶接ロボットを移動させる略終了位置移動ステップ、
を更に備え、
前記レール曲率中心が前記鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合であって、前記略終了位置に前記溶接トーチの先端が位置する場合、を第2ケースとし、
前記制御ステップにて、前記第2ケースにおける第2ケース制御量であって、前記溶接トーチが前記所定方向と反対方向へ移動するように、前記溶接トーチが傾斜するよう、前記向き変更部を制御するとともに、前記鋼管の曲率半径及び曲率中心と、前記レールの曲率半径及び曲率中心と、前記傾斜の大きさと、に応じ、前記狙い位置を前記鋼管に近づく方向に移動させるよう、前記狙い位置変更部を制御するための第2ケース制御量を算出し、
前記制御ステップにて算出される前記第2ケース制御量に基づき、前記略終了位置移動ステップの実行の後に、前記向き変更部及び前記狙い位置変更部を制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。 - 前記溶接ロボットは、
前記溶接トーチの向きを変更する向き変更部、
を更に備え、
前記制御ステップにて、
前記複数のエリアそれぞれの開始位置において、当該エリアの終了位置における前記狙い位置変更部および前記向き変更部それぞれの制御量を計算し、
前記溶接トーチの先端が前記所定方向において、前記エリアの開始位置、または、前記エリアの終了位置、に位置するときに、当該エリアの開始位置において計算された前記制御量に基づいて、前記狙い位置変更部および前記向き変更部を制御することを特徴とする請求項1に記載の溶接ロボットシステムの制御方法。
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JP2022001371A (ja) | 2020-06-19 | 2022-01-06 | 株式会社神戸製鋼所 | 可搬型溶接ロボットの制御方法、溶接制御装置、可搬型溶接ロボット及び溶接システム |
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