JP7298916B2 - グリース組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、基油としてフッ素油を用いたグリース組成物に関する。
従来より、フッ素系グリースとしては、増ちょう剤として、フッ素樹脂を用いたものが一般的に用いられている。
また、増ちょう剤として、セバシン酸ナトリウムを用いたフッ素系グリース(特許文献1)や、増ちょう剤として、シリカを用いたフッ素系グリース(特許文献2)も知られている。
フッ素系グリースは、転がり軸受、滑り軸受などの摺動部に使用される。添加する増ちょう剤などを改良することにより、高負荷環境下においての耐摩耗性や、耐漏洩性を向上させている。
特許第4505954号公報 特許第5748908号公報
しかしながら、従来より一般的に使用されるフッ素系グリースや、特許文献に記載のフッ素系グリースは、後述する実験に示すように、軸受寿命試験での寿命時間が短く、耐摩耗性や耐漏洩性を効果的に向上させることができない。
また、特許文献1に記載のグリース組成物において、増ちょう剤として用いるセバシン酸ナトリウムは、水に対して可溶であるため、水との接触が想定される使用用途には適さない問題がある。
そこで本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、軸受寿命が長く、且つ水に対し不溶性を有するグリース組成物を提供することが目的である。
本発明のグリース組成物は、基油と、増ちょう剤とを、含有し、前記基油として、フッ素油を含有し、前記増ちょう剤として、ポリイミドを含有することを特徴とする。
本発明では、前記ポリイミドの平均粒径が、50μm以下であることが好ましい。また、前記平均粒径が、20μm以下であることがより好ましい。
また、本発明では、前記増ちょう剤として、更に、ポリテトラフルオロエチレン、カーボンブラック、シリカ、及びメラミンシアヌレートから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、本発明では、前記増ちょう剤が、前記グリース組成物の全体量に対して、0.1質量%以上40.0質量%以下で含有することが好ましい。
また、本発明では、前記グリース組成物のちょう度が、180以上480以下であることが好ましい。
また、本発明では、前記フッ素油は、パーフルオロポリエーテルを含むことが好ましい。
また、本発明では、200℃、及び回転数10000rpmの条件による軸受寿命試験での前記グリース組成物寿命時間が、4000時間以上であることが好ましい。
また、本発明では、200℃、回転数10000rpm、及び22時間の条件による軸受試験での前記グリース組成物の漏洩率が、8%以下であることが好ましい。
本発明のグリース組成物によれば、軸受寿命が長く、且つ水に対し不溶性を有するフッ素系グリースを得ることができる。よって、本発明のグリース組成物を、転がり軸受、滑り軸受などの摺動部材の潤滑剤として好適に用いることができる。
図1は、実験で使用したポリイミド-1(平均粒径:3.9μm)の走査線電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)写真(×3000)である。 図2は、実験で使用したポリイミド-1(平均粒径:3.9μm)のSEM写真(×5000)である。 図3は、実験で使用したポリイミド-2(平均粒径:10~15μm)のSEM写真(×3000)である。 図4は、実験で使用したポリイミド-2(平均粒径:10~15μm)のSEM写真(×5000)である。
以下、本発明の一実施形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、「~」の表記は、下限値及び上限値の双方を範囲として含む。
本発明者らは、基油としてフッ素油を用いたグリース組成物の増ちょう剤について鋭意研究を重ねた結果、増ちょう剤としてポリイミド粉を用いることで、1)グリース化でき、2)軸受寿命試験での寿命時間を長くすることができ、3)水に対して不溶性を有するフッ素系グリースを開発するに至った。これにより、産業機械用のピローブロックなど、高温環境下での長寿命が要求されると共に、冷却水が軸受内部に侵入した際の耐水性も必要とされる場面で、本実施形態のフッ素系グリースを好適に用いることができる。
<本実施形態のグリース組成物>
本実施形態におけるグリース組成物は、基油と、増ちょう剤とを含有し、基油として、フッ素油を含有し、増ちょう剤として、ポリイミドを含有することを特徴とする。
後述する実験に示すように、基油としてのフッ素油と、増ちょう剤としてのポリイミドとの組み合わせにより、上記1)~3)を全て満たすグリース組成物を構成することができる。例えば、基油として、エーテル油、エステル油、及び合成炭化水素油を用いたグリース組成物では、増ちょう剤に、ポリイミドを用いても、少なくとも上記1)を満たすことができない。すなわち、グリースとしての適度なちょう度を得ることができず、液状化し、グリース化することができない。一方、フッ素系グリースにおいて、増ちょう剤に、ポリイミド以外の成分のみを加えると、上記2)或いは3)を満たすことができない。このように、フッ素油とポリイミドの組み合わせにより、グリース化できると共に、軸受寿命試験での寿命時間の延長、及び、水に対する不溶性を得ることができる。本実施形態において上記1)~3)を全て満たす理由は、粒径の細かいポリイミドは、粒子間にフッ素油が保持されるためグリースの増ちょう剤として適している。また、疎水性のポリマーであることから、水に対して溶出することもない。更に、ポリイミドは高い耐熱性を有するため、高温環境下でも熱分解が起こりにくい材料である。また、油膜を形成しにくい高温環境下では固体潤滑剤として作用し、軸受の摩耗を抑制する。また、ポリイミドを使用すると通常のPTFEを使用したフッ素グリースよりもグリースの比重が軽くなるため、軸受回転時に遠心力が加わっても飛散しにくいグリースとなり、漏れが抑制され軸受寿命が延命できると考えられる。
本実施の形態における、グリース組成物のちょう度としては、通常環境での使用の観点から、180~480程度とすることが好ましく、より好ましくは、190~430の範囲であり、更に好ましくは、200~340の範囲である。以上の範囲でちょう度を調製することで、付着性、塗布性、拡がり性、離油防止性等の観点から、良好なグリース組成物を調製することができる。なお、ちょう度の測定方法については、後述の実施例の欄に記載する。
ちょう度については、増ちょう剤としての粉状のポリイミドの平均粒径や組成比にて適宜調製することが可能である。すなわち、平均粒径の小さいポリイミドを使用することで、ちょう度を低くでき、上記した下限値側のちょう度を有するグリース組成物を製造できる。
本実施形態において、高負荷環境下でも長時間使用が可能な耐久性を有したグリース組成物を調製することができる。例えば、高負荷環境での使用の観点から、グリース組成物の軸受寿命試験を200℃、回転数10000rpmの条件で行った場合、軸受寿命時間を4000時間以上とすることが可能である。より好ましくは、寿命時間は5000時間以上であり、更に好ましくは、7000時間以上である。評価方法については、後述の実施例の欄に記載する。
本実施形態において、耐漏洩性と耐摩耗性を有したグリース組成物を調製することができる。例えば、グリース組成物の軸受試験として200℃、回転数10000rpm、22時間の条件で行った場合、グリース組成物の漏洩率を8%以下とすることができる。また、軸受試験後の軸受に残留したグリース組成物中に含まれる鉄分の含有率を8%以下とすることができ、軸受の摩耗による鉄分量の減少を抑制することができる。評価方法については、後述の実施例の欄に記載する。
以下、本実施形態のグリース組成物に含まれる基油及び、増ちょう剤について詳述する。
(基油)
本実施の形態において、基油としては、市販されているすべてのフッ素系合成油を用いることができる。フッ素油は、脂肪族炭化水素ポリエーテルの水素原子をフッ素原子で置換した化合物であることが好ましい。例えば、パーフルオロポリエーテル(PFPE)を用いるのが好ましい。パーフルオロポリエーテルは、直鎖構造であっても、側鎖構造であってもどちらでもよい。
また、本実施形態では、フッ素油を2種以上添加してもよく、パーフルオロポリエーテル以外のフッ素油を2種以上添加しても、或いは、パーフルオロポリエーテルと別のフッ素油とを添加して用いても良い。どのような種類のフッ素油を用いるかは、フッ素系グリースを使用する用途により適宜使い分けることができる。また、限定するものではないが、フッ素油の動粘度は、40℃にて、50mm/s~800mm/s程度であることが好ましい。
本実施の形態において、基油としてフッ素油を用い、増ちょう剤としてポリイミドを用いることで、良好な半固形状のグリース組成物を形成することができる。例えば、基油としてパーフルオロポリエーテル(PFPE)を用い、増ちょう剤としてポリイミドを用いた場合、上記したちょう度の範囲内のグリース組成物を製造することができる。一方、フッ素油以外の基油とポリイミドを用いた場合、組成物は液状化し、グリース化することができない(後述の実施例1~2、及び比較例1~6を参照)。
(増ちょう剤)
本実施形態において、増ちょう剤としては、市販されているすべてのポリイミドを用いることができる。ポリイミドは、粉体であることが好ましい。このように、本実施形態にて用いられるポリイミドは、粉体であり、フッ素系グリース以外にて用いられる添加剤としてのポリイミドとは区別される。
本実施形態において、ポリイミドの平均粒径は細かいほど、ちょう度を低くでき、付着性等を向上させることができる。本実施形態において、ポリイミドの平均粒径は、50μm以下であることが好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましく、5μm以下が更により好ましい。ポリイミドの平均粒径を5μm以下とすることで、グリースのちょう度を、200程度にすることができる。また、平均粒径が異なる複数種のポリイミドを用いることで、用途に合わせて、ちょう度を上記した範囲内でより適度に調製することができる。平均粒径は、例えば、ポリイミドの断面画像を走査線電子顕微鏡で取得し、市販の画像ソフトを用いて解析することができる。或いは、市販品であれば、各カタログに記載の粒径を本実施形態におけるポリイミドの平均粒径とすることができる。
本実施形態のグリース組成物において、ポリイミドの構造は、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(1)で示されるモノマー構造からなるポリマー構造を有し、或いは、下記一般式(2)で示されるモノマー構造からなるポリマー構造を有することが好ましい。なお、式中のnは、任意の整数である。
Figure 0007298916000001
Figure 0007298916000002
また、特に限定するものではないが、ポリイミドのガラス転移点(DSC)は、300℃~400℃程度である。
本実施形態において、グリース組成物に含まれる増ちょう剤は、ポリイミドと、ポリイミド以外の増ちょう剤を混合して使用することができる。ポリイミド以外の増ちょう剤については、基油に分散し、半固体のグリース状にできるものであれば、全て使用できる。例えば、金属石けん、ウレア化合物、ナトリウムテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、カーボンブラック、メラミンシアヌレート、シリカなどが挙げられる。
例えば、本実施形態では、増ちょう剤としてポリイミドとフッ素樹脂とを用いることができる。
本実施の形態において、グリース組成物の全体量に対して増ちょう剤の含有量は、通常は0.1~40.0質量%であることが好ましい。より好ましくは、1~35質量%であり、更に好ましくは、2.0~30.0質量%である。この範囲で増ちょう剤を含有することにより、良質なグリース組成物を調製することができる。複数の増ちょう剤を含める場合は、全体の増ちょう剤の含有量を、上記の範囲内に収めることが好ましい。ポリイミドは数%の添加でも、上記1)~3)の効果を得やすく、したがって、ポリイミドとその他の増ちょう剤を添加する場合、その他の増ちょう剤の添加量をポリイミドよりも多くすることが可能である。
また、本実施形態において、増ちょう剤として用いるポリイミドは、水に対して不溶である。したがって、水分による基油と増ちょう剤の分離が抑制されるため、グリース組成物の耐水性の向上を図ることができる。
また、必要に応じて、本実施の形態のグリース組成物に、酸化防止剤、防錆剤、金属腐食防止剤、油性剤、耐摩耗剤、極圧剤、固体潤滑剤等を添加することができる。これら添加物の含有量は、全体に対して、0.01重量部~20重量部程度の範囲内に収められる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン等から選択することができる。防錆剤としては、亜硝酸ナトリウム、ステアリン酸などのカルボン酸、ジカルボン酸、金属石鹸、カルボン酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、または多価アルコールのカルボン酸部分エステル等から選択することができる。金属腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾールまたはベンゾイミダゾール等から選択することができる。油性剤としては、ラウリルアミンなどのアミン類、ミリスチルアルコール等の高級アルコール類、パルミチン酸などの高級脂肪酸類、ステアリン酸メチル等の脂肪酸エステル類、またはオレイルアミドなどのアミド類等から選択することができる。耐摩耗剤としては、亜鉛系、硫黄系、リン系、アミン系、またはエステル系等から選択することができる。極圧剤としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、硫化オレフィン、硫化油脂、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、ヨウ素化ベンジル、フルオロアルキルポリシロキサン、または、ナフテン酸鉛等から選択することができる。また、固体潤滑剤としては、黒鉛、フッ化黒鉛、ポリテトラフルオロエチレン、メラミンシアヌレート、二硫化モリブデン、硫化アンチモン等から選択することができる。また、パーフルオロポリエーテルの末端修飾品、フッ素系界面活性剤は、フッ素油に可溶なため、防錆剤、油性剤、酸化防止剤、極圧剤として使用することが出来る。
本実施形態のグリース組成物は、適度なちょう度を有し、軸受寿命試験での寿命時間が長く、また、水に対して不溶である。したがって、本実施形態のグリース組成物を、転がり軸受、滑り軸受などの摺動部材の潤滑剤として好適に用いることができる。
以下、本発明の実施例及び比較例により本発明の効果を説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実験では、グリース組成物を調製するにあたり以下の原料を用いた。
(基油)
フッ素油:ソルベイ社製:FOMBLIN(登録商標)M15
フッ素油:ソルベイ社製:FOMBLIN(登録商標)YR
エーテル油:モレスコ社製:モレスコハイルーブ(登録商標)LB-100
エステル油:アデカ製:アデカプルーバー T―95
合成炭化水素油:イネオス社製:DURASYN(登録商標)168
(増ちょう剤)
ポリイミド-1:ダイセルエボニック社製:P84NT1
ポリイミドー2:宇部興産株式会社製:UIP-R
フッ素樹脂:三井マーズフロロプロダクツ社製:TLP 10F-1
フッ素樹脂:ダイキン工業株式会社製:ルブロン(登録商標)L-5
フッ素樹脂:セフラルルーブ(登録商標)I
リン酸第三カルシウム:米山化学工業株式会社製:第三リン酸カルシウム
セバシン酸ナトリウム:日東化成工業株式会社製:N-18
炭酸カルシウム:丸尾カルシウム株式会社製:カルテックス(登録商標)5
炭酸カルシウム:丸尾カルシウム株式会社製:スーパーSSS
窒化ホウ素:デンカ株式会社製:ボロンナイトライド(登録商標)SP-2
シリカ:アエロジル社製:アエロジル(登録商標)R200
(ちょう度評価)
各実施例及び比較例において、添加剤の種類、組成を変えてグリース組成物を調製した。実施例1-2及び比較例1-6では、調製したグリース組成物のちょう度を評価した。また、表1に示すちょう度は、JIS K2220に規定されたちょう度試験方法により測定した。
(ポリイミドのSEM写真)
図1、図2は、ポリイミド-1のSEM写真であり、図3、図4は、ポリイミド-2のSEM写真である。図1、図3は、3000倍のSEM写真であり、図2、図4は、5000倍のSEM写真である。
なお、ポリイミド-1の平均粒径(カタログ値)は、3.9μmであった。また、ポリイミド-2の平均粒径(カタログ値)は、約10~15μmであった。
Figure 0007298916000003
表1に示すように、調製したグリース組成物のちょう度を測定した結果、実施例1のちょう度は209、実施例2のちょう度は294であった。この結果から、増ちょう剤として、平均粒径の細かいポリイミドを用いることにより、ちょう度が低下することがわかった。
実施例1-2の結果から、ポリイミドの平均粒径は、50μm以下であることが好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましいとした。
一方、比較例1-6では、フッ素油以外の基油を原料として、グリース組成物の調製を行った。調製した比較例1-6の組成物は液状であり、グリース化できなかった。このことから、基油としてのフッ素油、増ちょう剤としてのポリイミドの組み合わせが好ましいことがわかった。
(軸受寿命試験)
次に、実施例3及び比較例7-12を調製し、各試料を用いて、軸受寿命時間を評価した。実験では、グリース組成物を封入した転がり軸受を内輪回転で回転させ、転がり軸受が寿命(軸受の破損)に至るまでの時間を評価した。
軸受 :6204ZZ
試験温度 :200℃
軸受回転数 :10000rpm
試験荷重 :アキシャル荷重67N ラジアル荷重67N
グリース封入量:1.8cc
その実験結果を以下の表2に示す。
Figure 0007298916000004
実施例3において、基油としてのフッ素油と、増ちょう剤としてのポリイミドを含んだグリース組成物を調製した。比較例7-12において、基油としてフッ素油を用い、増ちょう剤を、ポリイミド以外の増ちょう剤を用いてグリース組成物を調製した。
調製したグリース組成物の軸受寿命時間を評価した結果、比較例7-12では、軸受寿命時間は2000時間を下回った。これに対して実施例3において、フッ素油とポリイミドを含んだグリース組成物の軸受寿命時間は、7000時間以上であった。この結果から、フッ素油とポリイミドを含んだグリース組成物は、軸受寿命時間を大幅に延長できることがわかった。
また、比較例9に用いるセバシン酸ナトリウムなどの増ちょう剤は、水に対して可溶であり、湿潤環境での使用には適していないことがわかった。これに対し、実施例3で用いるポリイミドは、水に対して不溶であり、これを増ちょう剤として用いることで、耐水性を向上させることができるとわかった。
(軸受試験)
次に、実施例4及び比較例13-15を調製し、調製した各試料の軸受試験における漏洩率及び鉄分含有率を評価した。
実験では、グリース組成物を封入した転がり軸受を下記条件で内輪回転で回転させた。そして、試験終了後に、封入した全グリース量に対して、転がり軸受から漏洩したグリース組成物の量の比率を測定した。また、試験終了後の軸受に残留したグリース組成物中に含まれる鉄分の含有率を評価した。
軸受 :6204ZZ
試験温度 :200℃
軸受回転数 :10000rpm
試験荷重 :アキシャル荷重67N ラジアル荷重67N
グリース封入量:1.8cc
試験時間 :22h
その実験結果を以下の表3に示す。
Figure 0007298916000005
実施例4において、基油として2種類のフッ素油を用い、増ちょう剤としてポリイミドとフッ素樹脂を用いて、グリース組成物を調製した。比較例13は、基油として2種類のフッ素油を用い、増ちょう剤としてフッ素樹脂を用いて、グリース組成物を調製した。また、比較例14-15は、基油として2種類のフッ素油を用い、増ちょう剤としてポリイミド以外の増ちょう剤2種類を用いて、グリース組成物を調製した。
調製したグリース組成物の漏洩率を評価した結果、実施例4の漏洩率は、7%であった。これに対して、比較例13-15での漏洩率は、9-14%であり、本実施例よりも高くなった。この結果から、フッ素油とポリイミドを含んだグリース組成物は、適度なちょう度を有し、軸受に適用されるグリースの耐漏洩性を向上できることがわかった。
また、グリース組成物中に含まれる鉄分含有率を評価した結果、実施例4の鉄分含有率は、5ppmであった。これに対して、比較例13-15の鉄分含有率は、9-82ppmであった。この結果から、軸受の摩耗を適切に抑制できることがわかった。
また、実施例4の軸受試験における漏洩率と鉄分含有率の結果は、比較例13と比べて優れた結果であった。この結果から、本実施の形態において、グリース組成物に含まれる増ちょう剤は、ポリイミドと、ポリイミド以外の増ちょう剤を混合して使用することができることがわかった。
表3の実験結果により、本実施例のグリース組成物は、適度な硬さを有するとともに流動性にも優れており軸受等の摺動部材の潤滑剤として効果的に使用できることがわかった。
また、実施例1-4の結果から、グリース組成物の全体量に対して増ちょう剤の含有量は、0.1~40.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは、2.0~30.0質量%であることがわかった。
また、実施例3-4において、高温環境を想定し、試験温度は200℃の条件で行った。実施例3-4の結果から、本条件においても、優れたグリース性能を発揮しており、高温環境においても優れた耐久性を有していることがわかった。
本発明のグリース組成物によれば、従来に比べて、軸受寿命を延長し、耐摩耗性、耐漏洩性、耐水性を向上することができ、本発明のグリース組成物を、転がり軸受、滑り軸受などの摺動部材の潤滑剤として好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 基油と、増ちょう剤とを、含有し、
    前記基油として、フッ素油を含有し、
    前記増ちょう剤として、ポリイミドを含有することを特徴とするグリース組成物。
  2. 前記ポリイミドの平均粒径が、50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
  3. 前記平均粒径が、20μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のグリース組成物。
  4. 前記増ちょう剤として、更に、ポリテトラフルオロエチレン、カーボンブラック、シリカ、及びメラミンシアヌレートから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のグリース組成物。
  5. 前記増ちょう剤が、前記グリース組成物の全体量に対して、0.1質量%以上40.0質量%以下で含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のグリース組成物。
  6. 前記グリース組成物のちょう度が、180以上480以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のグリース組成物。
  7. 前記フッ素油は、パーフルオロポリエーテルを含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のグリース組成物。
  8. 200℃、及び回転数10000rpmの条件による軸受寿命試験での前記グリース組成物寿命時間が、4000時間以上であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のグリース組成物。
  9. 200℃、回転数10000rpm、及び22時間の条件による軸受試験での前記グリース組成物の漏洩率が、8%以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のグリース組成物。
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