JP2012236929A - ブレーキ鳴き防止用グリース組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来のグリース組成物に比べて、減衰効果を高めることにより、ブレーキの鳴きを抑制することができるブレーキ鳴き防止用グリース組成物を提供する。
【解決手段】増ちょう剤と、基油と、繊維状物質と、を少なくとも含むブレーキ鳴き防止用グリース組成物であって、前記増ちょう剤は、曲げ弾性率が3GPa以下の樹脂からなる粉末を少なくとも含み、前記繊維状物質の長さが2〜5mmである。
【選択図】なし
【解決手段】増ちょう剤と、基油と、繊維状物質と、を少なくとも含むブレーキ鳴き防止用グリース組成物であって、前記増ちょう剤は、曲げ弾性率が3GPa以下の樹脂からなる粉末を少なくとも含み、前記繊維状物質の長さが2〜5mmである。
【選択図】なし
Description
本発明は、ブレーキ鳴き防止用グリース組成物に係り、特に、これまでに比べて高い減衰性を有し、自動車のブレーキ用鳴き防止用としてブレーキパッドとシムとの間に塗布するに好適なブレーキ鳴き防止用グリース組成物に関する。
現在のブレーキシステムは、自動車の高速化に伴い放熱性に優れていることから、ディスクブレーキが主流となっている。このディスクブレーキにおいてもブレーキの鳴きが発生している。
ブレーキの鳴きは、制動時に発生する数kHzの音であり、ディスクロータとブレーキパッドとの間で発生する摩擦振動が起振源となり、これがブレーキシステムの構成部品や車体と共振し発生すると考えられている。ブレーキの鳴きが発生しても制動性には影響がないが、ドライバーや同乗者にとっては、不快な音として感じられる。また、周囲の歩行者などに対しても、不快な音として聞こえて、これが騒音となる。
ブレーキの鳴きの対策としては、起振力を抑制するために、ブレーキパッドの摩擦特性の調整や、パッドの当たり面の面圧分布の均一化などの方法が考えられる。また、ブレーキシステムの共振を抑えるために、より具体的には、ブレーキパッドとピストンの間の振動を減衰させる目的で、減衰性の高いシム(板)を装着し、ブレーキシステムへの振動の伝達を抑制する方法も提案されている。
しかしながら、これらの方法は車種やブレーキシステム毎に経験的に行われることが多く、特に、ディスクロータとブレーキパッドの摩擦状態は、経時に変化しており、構造的な振動も組み合わさって、複雑な現象となっていることから、一般的な解決方法であるとはいえない。
そこで、例えば、ブレーキパッドとシムとの間、シムとシムの間に、グリース組成物が塗布されることがある。例えば、特許文献1には、ボロナイトライド粉末を含有するシリコーングリース組成物が提案されている。また、特許文献2には、樹脂粒子として、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などを添加したグリース組成物が提案されている。さらに、特許文献3には、分子構造中に極性基を有する潤滑油と、無極性潤滑油とを混合してなる基油に、繊維長さが3μmである繊維状物を含む金属石鹸系増ちょう剤を配合したグリース組成物が提案されている。
しかしながら、上述した特許文献1〜3のグリース組成物のように、減衰性能を持たせることで、鳴きの要因である振動を抑制し、鳴きを防止することができるが、減衰性能に着目した対策はなされているものの、充分ではない。
また、ピストンがシムを押す際には、ピストンがシムに接する面積がシムの総面積よりも小さいことから、シムが若干撓むため、上述したグリース組成物では、グリース組成物は撓んだ窪みに集まってしまう。これにより、均一な油膜とならず、油膜が充分に形成しない箇所があり、充分な減衰効果が得られないことがある。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来のグリース組成物に比べて、減衰効果を高めることにより、ブレーキの鳴きを抑制することができるブレーキ鳴き防止用グリース組成物を提供することにある。
上記課題を解決すべく、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、グリースの減衰に対して以下のように考えた。具体的には、物体に対して外部から振動の力を与えたとき、物体は変形し、分子間距離が変化して分子間ポテンシャルが高くなる(弾性エネルギの蓄積)。粘弾性体の場合は、分子間の相互作用は固定的なものではないため、高分子中の分子接合部が滑るために一度蓄えられたエネルギは、分子が滑る際の摩擦により消費され熱エネルギに変換されてしまう(弾性エネルギの散逸)。振動吸収の指標としては、損失係数(tanδ)があり、以下示す式1の如く、損失弾性率(弾性エネルギの散逸分)と貯蔵弾性率(弾性エネルギの蓄積)の比で表される。
tanδ=G’’/G’ (式1)
tanδ:損失係数、G’’:損失弾性率、G’:貯蔵弾性率
tanδ=G’’/G’ (式1)
tanδ:損失係数、G’’:損失弾性率、G’:貯蔵弾性率
ここで、曲げ弾性率の低い樹脂は、外力により容易に弾性変形することが考えられることから、弾性変形する際の振動エネルギが消費されやすい。従って、損失弾性率G’’が高くなり、減衰係数(損失係数)tanδが大きくなって、振動減衰特性が高くなると考えられる。また、物体に対して、外部から振動の力を与えたときに、圧縮方向の振動と、せん断方向の振動が発生する。
ここで、発明者らは、圧縮方向の振動に対しては、振動により容易に弾性変形する所定の曲げ弾性率を有した樹脂からなる粉末を使用し、弾性損失係数を高めることにより、圧縮方向の振動を抑制することができると考えた。一方、せん断方向の振動に対しては、特定の長さの繊維状物質がせん断方向にも配列されることにより、せん断方向の振動を抑制できると考えた。
さらに、後述するような繊維状物質を構成している鎖状分子は、水素結合により網目構造で存在している。この鎖状分子が、網目構造内でずれる際に振動エネルギが消費され、振動減衰が高くなると考えた。
一方、上述したように、ピストンがシムを押すときにシムが若干撓むため、通常のグリース組成物では、撓んだ窪みに集まってしまい、均一な油膜ができず、油膜切れの部分が生じ、充分な減衰効果が得られないことがある。
このように、荷重に高低の分布があるときに、グリース組成物が荷重の低い場所に移動する動きを抑制する方法としては、グリース組成物のちょう度を硬くする方法が一般的に知られているが、グリース組成物のハンドリング性やシムに均一に塗布する際の障害となるおそれがある。このため、発明者らは、繊維状物質を添加しても、比表面積が大きくならないことなら、繊維状物質を添加することによりグリースの流動性を保持することができると考えた。
このような一連の考えに基づき、本発明に係るブレーキ鳴き防止用グリース組成物は、増ちょう剤と、基油と、繊維状物質と、を少なくとも含むブレーキ鳴き防止用グリース組成物であって、前記増ちょう剤は、曲げ弾性率が3GPa以下の樹脂からなる粉末を少なくとも含み、前記繊維状物質の長さが2〜5mmであることを特徴とする。
本発明によれば、曲げ弾性率が3GPa以下の樹脂からなる粉末を用いることにより、振動などの外力によって容易にグリース組成物が変形することができる。この弾性変形によって圧縮方向の振動エネルギが消費される。また、繊維状物質を構成している鎖状分子が、網目構造内でずれる際に、せん断方向の振動エネルギが消費される。さらに、2〜5mmの範囲の長さを有した繊維状物質により、樹脂粉末の偏在を防ぐことができるので、グリース組成物を均一に塗布することができる。
ここで、曲げ弾性率が、3GPaを超える場合には、この弾性変形による圧縮方向の振動エネルギが充分に消費されず、グリース組成物の減衰率が低くなる。また、繊維状物質の長さが2mm未満の場合には、グリース組成物の流動性が上り過ぎるおそれがあり、繊維状物質の長さが5mmを超えた場合には、繊維状物質が縮れることにより、グリース組成物の均一な塗布が妨げられるおそれがある。
また、好ましい態様としては、増ちょう剤に無機充填材をさらに含み、さらに好ましい態様としては、基油はシリコーン油である。このような材料を選定することにより、振動減衰効果を高めることができる。特に、シリコーン油は、他の基油に比べて低温から高温まで粘度変化が少なく、広い温度領域で基油の状態が変化し難いので、好ましい。
本発明によれば、従来のグリース組成物に比べて、減衰効果を高めることにより、ブレーキの鳴きを抑制することができるブレーキ鳴き防止用グリース組成物を提供する。
以下、本発明に係る本実施形態を説明する。
本実施形態に係るブレーキの鳴き防止を目的としたグリース組成物であり、増ちょう剤と、基油と、繊維状物質と、を少なくとも含むグリース組成物である。以下にその詳細を説明する。
本実施形態に係るブレーキの鳴き防止を目的としたグリース組成物であり、増ちょう剤と、基油と、繊維状物質と、を少なくとも含むグリース組成物である。以下にその詳細を説明する。
1.増ちょう剤
本実施形態で使用する増ちょう剤は、樹脂粉末充填剤(樹脂粉末)である。具体的には、粉末である樹脂の曲げ弾性率は3GPa以下(ASTM D 790 室温)である。曲げ弾性率はASTM D 790に準拠して測定したものであり、規定サイズに切断した樹脂試験片の両端を支持し、中央に荷重をかける。試験において求めた荷重・撓み曲線を用いて弾性率を計算することにより得ることができる。
本実施形態で使用する増ちょう剤は、樹脂粉末充填剤(樹脂粉末)である。具体的には、粉末である樹脂の曲げ弾性率は3GPa以下(ASTM D 790 室温)である。曲げ弾性率はASTM D 790に準拠して測定したものであり、規定サイズに切断した樹脂試験片の両端を支持し、中央に荷重をかける。試験において求めた荷重・撓み曲線を用いて弾性率を計算することにより得ることができる。
樹脂の曲げ弾性率が3GPa以下の樹脂としては、ポリイミド樹脂(曲げ弾性率2.4GPa)、ポリサルフォン樹脂(曲げ弾性率2.8GPa)、ポリフェニレンエーテル樹脂(曲げ弾性率2.4GPa)、ポリスルフォン樹脂(曲げ弾性率2.5GPa)、または、ポリカーボネート樹脂(曲げ弾性率2.3GPa)などを挙げることができる。これらの樹脂を粉末化した樹脂粉末の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましい。
上述した曲げ弾性率は室温での測定であればよく、具体的には、0℃〜50℃の範囲内であればよい。粉末となる樹脂の曲げ弾性率が3GPaを超えると、外力により弾性変形し難くなると考えられることから、振動エネルギが消費されず、振動減衰特性が低下すると考えられる。
ここで、より高い減衰係数を得るためには、グリース組成物中に含有される樹脂粉末は、20質量%〜70質量%であることが望ましく、より好ましくは50質量%以下である。樹脂粉末が20重量%未満である場合には、グリース組成物に対して、樹脂粉末が少なすぎるため減衰効果が得られず、樹脂粉末が70質量%を超えた場合には、グリース組成物に対する油分が少なくなる。このため、グリース組成物は増ちょうし難くなり、グリース状にならないため、グリース組成物を部品に塗布する作業に多大な時間を要してしまうことがある。
本実施形態では、増ちょう剤として、さらに無機充填剤が添加されていてもよい。この無機粉末は、無機化合物の微粉末であり、酸化物、炭酸塩、鉱物などを挙げることができ、具体的には、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、亜鉛華、三酸化モリブデン、ベントナイト、タルク粉、カオリン、またはマイカなどを挙げることができる。
ただし、無機充填剤のみを使用した場合には、モース硬度の低い無機充填剤を使用すると、外力により容易にへき開、もしくは崩壊しやすいと考えられる。へき開、もしくは崩壊する際に振動エネルギが消費され、損失弾性率が高くなると考えられる。このことから、モース硬度が5以下の無機充填剤を含むことが好ましい。
したがって、無機充填剤の例としては、モース硬度が5以下である炭酸塩、硫化塩、酸化物、鉱物などを挙げることができる。具体的には、CaCO3(モース硬度3〜4)、CaO(モース硬度4〜4.5)、ZnO(モース硬度4〜5)、Pb(モース硬度2)、MoO3(モース硬度2.5)、CaSO4/1/2H2O(モース硬度3)、タルク粉(モース硬度1)、カオリン(モース硬度1)、マイカ(モース硬度1)などを挙げることができる。
2.ちょう度
グリース組成物の不混和ちょう度(試料をできるだけ混ぜないようにして混和器に移して測定したちょう度)は、JIS K 2220準拠して測定されるものであり、NLGIちょう度グレード(不混和ちょう度)が、150〜300の範囲にあることがより好ましい。
グリース組成物の不混和ちょう度(試料をできるだけ混ぜないようにして混和器に移して測定したちょう度)は、JIS K 2220準拠して測定されるものであり、NLGIちょう度グレード(不混和ちょう度)が、150〜300の範囲にあることがより好ましい。
不混和ちょう度が150度未満であると、グリース組成物が硬いために、当該部品に塗布する際に、塗りムラによる隙間ができやすくなり、減衰効果が得られないことがある。一方、不混和ちょう度が300以上である場合には、ブレーキ作動時の発熱により離油を発生し、周辺部を汚染する可能性がある。
なお、より好ましい樹脂粉末充填剤および無機充填剤を合わせた増ちょう剤量は、20質量%〜50質量%であるが、粒子径が10μmを超えるような大きい粒子で増ちょうし難い無機離充填剤を使用した場合、グリース組成物の硬さを維持するために金属石鹸、ウレア化合物等の増ちょう剤を併用することが可能である。
3.基油
グリース組成物を構成する基油としては、25℃の動粘度が、10〜100000mm2/sであることが好ましく、さらに好ましくは、500〜50000mm2/sである。基油の動粘度が10mm2/s未満であると、グリース状にするためには、多量の増ちょう剤が必要である。100000mm2/sを超えると、部品に塗布する際に塗りムラが発生し易くなる。
グリース組成物を構成する基油としては、25℃の動粘度が、10〜100000mm2/sであることが好ましく、さらに好ましくは、500〜50000mm2/sである。基油の動粘度が10mm2/s未満であると、グリース状にするためには、多量の増ちょう剤が必要である。100000mm2/sを超えると、部品に塗布する際に塗りムラが発生し易くなる。
グリース組成物に用いられる基油は特に限定されるものではない。例えば、鉱油をはじめとする全ての基油を使用することができる。鉱油の他にも、エステル系合成油、合成炭化水素油、エーテル系合成油、シリコーン油、フッ素化油など各種合成油を挙げることができる。特にシリコーン油は、他の基油に比べて低温から高温まで粘度変化が少なく、広い温度領域で基油の状態が変化し難いので、好ましい。
4.繊維状物質
グリース組成物を構成する繊維状物質としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿、絹、麻、羊毛、パルプ等の天然繊維を挙げることができ、これらを混合してもよい。繊維状物質としては、基本的には水溶性でなければどのようなものであってもよいが、耐環境性の観点からも、アスベストのようなものを使用しないことが好ましい。
グリース組成物を構成する繊維状物質としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿、絹、麻、羊毛、パルプ等の天然繊維を挙げることができ、これらを混合してもよい。繊維状物質としては、基本的には水溶性でなければどのようなものであってもよいが、耐環境性の観点からも、アスベストのようなものを使用しないことが好ましい。
特に好ましい繊維状物質としては、耐熱性のあるポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサザール繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維などの合成繊維、またはアラミド綿繊維などの天然繊維と合成繊維との混紡した綿繊維である。さらに好ましくは、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、またはポリフェニレンサルファイド繊維である。
繊維状物質の長さは、2〜5mmであり、2mm未満である場合には、グリース組成物が流動し易く、5mmを超える場合には、糸鞠状となった繊維が発生し、均一な分布が困難となる。さらに、添加する繊維状物質の太さは特に限定されるものではないが、好ましくは、1μm〜200μmである。繊維状物質の太さが、1μm未満の場合には、製造コストが高くなり、200μmを超えた場合には、グリース組成物の均一な分布が困難となる。
5.添加物
上述したグリース組成物には、必要に応じて種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、錆止め剤、金属腐食防止剤、油性剤、耐摩耗剤、極圧剤、固体潤滑剤等を挙げることができる。
上述したグリース組成物には、必要に応じて種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、錆止め剤、金属腐食防止剤、油性剤、耐摩耗剤、極圧剤、固体潤滑剤等を挙げることができる。
以下に本発明に係る実施例を説明する。
(実施例1〜6)
表1に示すように、増ちょう剤、基油、及び繊維状物質を選定し、表1に示す割合で混合し、3本のロールミルで混練することにより、グリース組成物を得た。具体的には、実施例1〜6は、増ちょう剤に、曲げ弾性率が3GPa以下の樹脂(A〜Fに示す樹脂)からなる粉末と、繊維長さが2〜5mmの範囲にある繊維状物質(K〜Mに示す繊維状物質)と、を少なくとも含むようにした。また、実施例4〜6には、GまたはHに示す無機充填剤をさらに添加した。
表1に示すように、増ちょう剤、基油、及び繊維状物質を選定し、表1に示す割合で混合し、3本のロールミルで混練することにより、グリース組成物を得た。具体的には、実施例1〜6は、増ちょう剤に、曲げ弾性率が3GPa以下の樹脂(A〜Fに示す樹脂)からなる粉末と、繊維長さが2〜5mmの範囲にある繊維状物質(K〜Mに示す繊維状物質)と、を少なくとも含むようにした。また、実施例4〜6には、GまたはHに示す無機充填剤をさらに添加した。
具体的には、各樹脂の曲げ弾性率は、ASTM D 790に準拠して測定したものであり、室温(23℃)において、規定サイズに切断した樹脂試験片の両端を支持し、中央に荷重をかけ、試験において求めた荷重・撓み曲線を用いて弾性率を計算することにより得た。そして、曲げ弾性率が3GPa以下となる、以下に示す市販の樹脂(A〜Fに示す樹脂)を、約10μm以下となるように粉末状に加工して、増ちょう剤となる樹脂粉末を得た。また、繊維状物質は、市販の繊維片を購入し、以下に示す2〜5mmの繊維長さとなるようにはさみにより加工した。
(比較例1〜5)
表1に示すように、増ちょう剤、基油、及び繊維状物質を選定し、表1に示す割合で混合し、3本のロールミルで混練し、グリース組成物を得た。実施例1〜6と相違する点は、比較例1は、増ちょう剤を添加しなかった点であり、比較例2および3は、増ちょう剤に、曲げ弾性率が3GPaを超える樹脂からなる粉末(GまたはHに示す樹脂粉末)を含む点であり、比較例4は、繊維状物質を添加しなかった点であり、比較例5は、繊維長さが2mm未満の繊維状物質(Nに示す繊維状物質)を添加した点である。
表1に示すように、増ちょう剤、基油、及び繊維状物質を選定し、表1に示す割合で混合し、3本のロールミルで混練し、グリース組成物を得た。実施例1〜6と相違する点は、比較例1は、増ちょう剤を添加しなかった点であり、比較例2および3は、増ちょう剤に、曲げ弾性率が3GPaを超える樹脂からなる粉末(GまたはHに示す樹脂粉末)を含む点であり、比較例4は、繊維状物質を添加しなかった点であり、比較例5は、繊維長さが2mm未満の繊維状物質(Nに示す繊維状物質)を添加した点である。
なお、表1において、増ちょう剤を示すA〜Hを以下に示す。
A:ポリイミド樹脂(PI) 曲げ弾性率2.4GPa
B:ポリサルフォン樹脂(PSF) 曲げ弾性率2.8GPa
C:ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE) 曲げ弾性率2.4GPa
D:ポリスルフォン樹脂(PES) 曲げ弾性率2.5GPa
E:ポリアミドイミド樹脂(PAI) 曲げ弾性率5GPa
F:ポリエーテルケトン樹脂(PEEK) 曲げ弾性率4.1GPa
G:炭酸カルシウム 粒径10μm
H:シリカ 粒径12nm
表1において、基油を示すI、Jを以下に示す。
I:シリコーン油 25℃の動粘度500mm2/s
J:シリコーン油 25℃の動粘度5000mm2/s
表1において、繊維状物質を示すK〜Nを以下に示す。
K:ポリアリレート繊維 繊維直径30μm 繊維長さ2〜3mm
L:アラミド繊維 繊維直径13μm 繊維長さ2〜3mm
M:ポリフェニレンサルファイド繊維 繊維直径53μm 繊維長さ3〜4mm
N:アラミド繊維 繊維直径13μm 繊維長さ0.3〜0.7mm
A:ポリイミド樹脂(PI) 曲げ弾性率2.4GPa
B:ポリサルフォン樹脂(PSF) 曲げ弾性率2.8GPa
C:ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE) 曲げ弾性率2.4GPa
D:ポリスルフォン樹脂(PES) 曲げ弾性率2.5GPa
E:ポリアミドイミド樹脂(PAI) 曲げ弾性率5GPa
F:ポリエーテルケトン樹脂(PEEK) 曲げ弾性率4.1GPa
G:炭酸カルシウム 粒径10μm
H:シリカ 粒径12nm
表1において、基油を示すI、Jを以下に示す。
I:シリコーン油 25℃の動粘度500mm2/s
J:シリコーン油 25℃の動粘度5000mm2/s
表1において、繊維状物質を示すK〜Nを以下に示す。
K:ポリアリレート繊維 繊維直径30μm 繊維長さ2〜3mm
L:アラミド繊維 繊維直径13μm 繊維長さ2〜3mm
M:ポリフェニレンサルファイド繊維 繊維直径53μm 繊維長さ3〜4mm
N:アラミド繊維 繊維直径13μm 繊維長さ0.3〜0.7mm
<未混和ちょう度の測定>
実施例1〜6および比較例1〜4の混練前の未混和ちょう度をJIS K 2220に準拠して測定した。この結果を表1に示す。
実施例1〜6および比較例1〜4の混練前の未混和ちょう度をJIS K 2220に準拠して測定した。この結果を表1に示す。
<減衰率の測定(ボール落下試験)>
鋼板(100×100×1mm)を2枚準備し、1枚に、実施例1〜6、比較例1〜4に示す各グリース組成物を塗布(100×50×0.5mm)し、もう1枚をグリース組成物に気泡が混入しないように被せた。下の鉄板の四隅をワイヤーにビスで固定し、70mmの高さから鋼球(φ10mm)を落下させ、鋼板の振動をピックアップセンサで測定した。減衰率は、以下の式2により求めた。
減衰率(%)=100×(A−B)/B
ここで、Aは、グリース組成物を塗布時の音圧レベル
Bは、鋼板のみの音圧レベル
そして、減衰率が60%以上のグリース組成物を合格とした。
鋼板(100×100×1mm)を2枚準備し、1枚に、実施例1〜6、比較例1〜4に示す各グリース組成物を塗布(100×50×0.5mm)し、もう1枚をグリース組成物に気泡が混入しないように被せた。下の鉄板の四隅をワイヤーにビスで固定し、70mmの高さから鋼球(φ10mm)を落下させ、鋼板の振動をピックアップセンサで測定した。減衰率は、以下の式2により求めた。
減衰率(%)=100×(A−B)/B
ここで、Aは、グリース組成物を塗布時の音圧レベル
Bは、鋼板のみの音圧レベル
そして、減衰率が60%以上のグリース組成物を合格とした。
<結果および考察>
実施例1〜6のグリース組成物の未混和ちょう度は、いずれも150以上、300以下であり、これらの減衰率は、70%以上となり全て合格となった。比較例1の未混和ちょう度は測定できず、比較例2〜5のグリース組成物の減衰率は、60%未満となった。
実施例1〜6のグリース組成物の未混和ちょう度は、いずれも150以上、300以下であり、これらの減衰率は、70%以上となり全て合格となった。比較例1の未混和ちょう度は測定できず、比較例2〜5のグリース組成物の減衰率は、60%未満となった。
従って、増ちょう剤が、曲げ弾性率が3GPa以下の樹脂粉末を少なくとも含み、繊維長さが2〜5mmの範囲にある繊維状物質を含むグリース組成物は、減衰率が大きくなり、このようなグリース組成物をブレーキに用いることにより、ブレーキの鳴きを抑制することができると考えられる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
Claims (1)
- 増ちょう剤と、基油と、繊維状物質と、を少なくとも含むブレーキ鳴き防止用グリース組成物であって、
前記増ちょう剤は、曲げ弾性率が3GPa以下の樹脂からなる粉末を少なくとも含み、
前記繊維状物質の長さが2〜5mmであることを特徴とするブレーキ鳴き防止用グリース組成物。
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