JP2012224834A - グリース組成物 - Google Patents

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浩二 斉藤
Masaaki Ogawa
正顕 小川
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久幸 大澤
Michitaka Yoshihara
径孝 吉原
Hitoshi Miyata
斎 宮田
Kyosuke Ikuma
亨介 伊熊
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Abstract

【課題】ディスクブレーキに用いたときにブレーキ鳴きの発生を抑制することのできるグリース組成物を得る。
【解決手段】基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物において、増ちょう剤としてモース硬度が5以下の無機充填材を含むようにする。モース硬度が5以下の無機充填材がモース硬度が4以下の金属粒子を含んでいてもよい。また、増ちょう剤としてモース硬度が4以下の金属粒子のみを含んでいてもよい。さらに適量のワックスを含むことは、漏れ出る油による汚染を防止することができ、より好ましい態様となる。
【選択図】なし

Description

本発明は、グリース組成物に関し、より具体的には、高い振動減衰率を有していて、自動車等のディスクブレーキ作動時に発生するブレーキ鳴きを防止するのに好適に用いられるグリース組成物に関する。
自動車等において広く使用されているディスクブレーキは、一般に、車輪と一体に回転するディスクローターを、ピストン(押圧部材)の作動で移動するブレーキパッドにより両側から押圧する構造となっている。ディスクブレーキにおいて、制動時、すなわちブレーキパッドがディスクローターに押圧されたとき、一般に「鳴き」と称せられている異音が発生することがある。鳴きが発生しても制動性能に影響はないが、ドライバーや同乗者にとっては不快な音として聞こえることから、解決策が模索されている。
ブレーキの鳴きは、ディスクローターとブレーキパッド間の摩擦振動が起振源となり、その振動がブレーキの構成部材や車体と共振して発生するものと考えられており、ブレーキシステムの設計によりある程度は改善される。しかし、起振源であるディスクローターとブレーキパッドの摩擦状態は経時で変化しており、さらに、構造的な振動も組み合わさって、複雑な現象となっていることから、決定的な対策方法は見つかっていない。
ブレーキシステムの構造や制動特性にあまり影響を与えないで、鳴きを防止することのできる1つの有効な対策として、ブレーキパッドとピストン(押圧部材)の間に、振動減衰性能の高いシムを装着することが行われており、また、そのシムとブレーキパッドとの間にグリースを介在させることで、振動をさらに減衰させることも行われている。
ブレーキシステムの鳴き防止用グリースの一例として、特許文献1には、シリコーン粘着グリース100重量部とボロンナイトライド粉末0.1〜10重量部からなる自動車のディスクブレーキ鳴き音防止用グリースが記載されており、このグリースを、ディスクブレーキの、ディスクパッドとパッドサポートプレートとの接触部、パッドサポートプレートとマウンティングとの接触部、ディスクパッドのプレートとシムの間、シムとキャリパー又はピストンの当たり面などに使用することで、ディスクブレーキ鳴き音を防止できると記載されている。
また、特許文献2には、歯車型減速機のバックラッシュに起因する騒音を小さくするための潤滑剤組成物として、当該歯車の金属表面よりも軟質の金属粉末を含む潤滑剤組成物が記載されている。軟質金属の例として、青銅、銅、錫、亜鉛、銀、金、アルミニウムなどが記載されている。
特開2001−226687号公報 特開2004−143263号公報
本発明者らは、ディスクブレーキの鳴き防止対策およびそこで用いられるグリースの有効性について、継続して実験と研究を行ってきているが、例えば特許文献1に記載されるような、従来用いられているブレーキ鳴き防止用グリースは、いずれも十分な効果を上げているとはいえず、特に、自動車の高速化に伴い放熱性に優れるディスクブレーキが主流となっている現在においては、なお改善すべき余地があることを経験している。また、特許文献2には軟質の金属粉末を含む潤滑剤組成物が記載されているが、開示されている用途は歯車型減速機に限られており、また、金属粉末の軟質の程度も歯車型減速機における歯車の金属表面との関係で定まるものである。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、高温特性にも優れておりかつ高い振動減衰性能を備えることで、高い放熱性が要求されるディスクブレーキに用いる場合でも、ブレーキ鳴きの発生を効果的に抑制することのできるグリース組成物を開示することを課題とする。
本発明者らは上記の課題を解決すべく、ブレーキ鳴きの発生を効果的に抑制することのできるグリース組成物の組成について、さらに実験と研究を行うことにより、基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物において、増ちょう剤として、所定値以下のモース硬度である無機充填材と、展性の大きい所定値以下のモース硬度である金属粒子の双方またはいずれか一方を含ませることによって、上記の課題を解決できることを知見した。
本発明は上記の知見に基づくものであり、第1の発明は、基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物であって、前記増ちょう剤としてモース硬度が5以下の無機充填材を含むことを特徴とするグリース組成物である。前記第1の発明にかかるグリース組成物において、モース硬度が5以下の無機充填材はモース硬度が4以下の金属粒子を含んでいてもよい。また、第2の発明は、基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物であって、前記増ちょう剤としてモース硬度が4以下の金属粒子を含み、用途がディスクブレーキ用であるグリース組成物である。前記第1の発明にかかるグリース組成物はその用途に制限はないが、より好適には、用途がディスクブレーキ用であるグリース組成物である。
本発明において「モース硬度」とは、主に鉱物に対する硬さの尺度であり、1〜10までの数値を示す。最も柔らかいものはタルク(硬度1)、最も高いものはダイヤモンド(硬度10)として定義される硬度である。
上記第1の発明にかかるグリース組成物において、モース硬度が5以下の無機充填材には、好ましくは、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、タルク粉末、グラファイトおよび三酸化モリブデンからなる群から少なくとも1つが含まれる。また、含まれる場合でのモース硬度が4以下の金属粒子、および第2の発明にかかるグリース組成物でのモース硬度が4以下の金属粒子には、好ましくは、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、錫およびリン青銅からなる群から少なくとも1つが含まれる。
また、上記第1および第2の発明にかかるグリース組成物の好ましい態様では、JISK2220に準拠して測定する不混和ちょう度が150〜300の範囲であることを特徴とする。
また、上記第1および第2の発明にかかるグリース組成物の好ましい態様では、前記基油は、シリコーン油または合成炭化水素油であることを特徴とする。
上記した本発明に係るグリース組成物のさらに好ましい態様では、さらに0.1〜10質量%のワックスを含むことを特徴とする。より好ましくは、2.5〜5質量%である。前記ワックスの例には、パラフィンワックス、アマイドワックス、マイクロクリスタンワックス、サゾールワックス、シェラックワックス等をあげることができるが、ポリエチレンワックス、モンタン酸ワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種が含まれることは、より好適な態様である。
上記第1の発明にかかるグリース組成物は、高温特性に優れかつ高い振動減衰性能を有しており、振動を減衰することが求められる任意の場所および用途に用いることができる。用途の例としては、きしみ音が出るようなトレーラーの第5輪、大型ヒンジ、ボールジョイント、自動車のエンジンマウント、懸架装置のシャックル部やピボット部、鉄道台車のボルスタ心皿、側受、などが挙げられる。より好適な用途は、高い放熱性が要求されるディスクブレーキの鳴き防止用グリース組成物としての用途である。また、上記第2の発明にかかるディスクブレーキ用であるグリース組成物は、高温特性に優れかつ高い振動減衰性能を備えていることから、高い放熱性が要求されるディスクブレーキの鳴き防止用グリース組成物として特に効果的に機能する。また、使用場所の如何を問わず、長期的な使用を考慮した場合、グリース組成物から漏れ出す油分による汚損を回避することが望まれるが、無機充填材と基油に加えて、さらにワックスを含む態様のグリース組成物とすることにより、振動減衰性能に加えて、油分離抑制性能に優れたグリース組成物が得られる。
本発明によれば、限定されないが特にディスクブレーキと共に用いたときに、ブレーキの鳴き発生を大きく抑制することのできるグリース組成物が得られる。
以下、本発明のグリース組成物をより詳細に説明する。
本発明のグリース組成物で使用する基油は、特に制限されない。鉱油をはじめとするすべての基油を使用できる。鉱油の他、エステル系合成油、合成炭化水素油、エーテル系合成油、シリコーン油、フッ素化油などの各種合成油も使用できる。ディスクブレーキの鳴き防止用として本発明のグリース組成物を用いる場合には、ディスクブレーキの特性上、グリース組成物が200℃〜300℃の高温になることが予測されるので、基油としては、高温耐性に優れたシリコーン油、または、ポリアルファオレフィン、オレフィンコポリマー等の合成炭化水素油、ポリメタアクリレートとを用いることが望ましい。
増ちょう剤はグリース組成物に所望のちょう度を与えるものであり、前記のように、第1の発明のグリース組成物で使用する増ちょう剤は、モース硬度が5以下の無機充填材の微粉末であり、モース硬度が4以下の金属粒子が含まれる場合もある。第2の発明であるディスクブレーキ用であるグリース組成物で使用する増ちょう剤は、モース硬度が4以下の金属粒子であり、好ましくは、展性の大きいモース硬度が4以下の金属粒子である。
モース硬度が5以下の無機充填材およびモース硬度が4以下の金属粒子がグリース組成物に高い振動減衰性能を生じさせるのは次の理由であると考えられる。
すなわち、物体に対し外部から振動の力を与えたとき、物体は変形し、分子間距離が変化して分子間ポテンシャルが高くなる(弾性エネルギーの蓄積)。グリースのような粘弾性体の場合は、分子間の相互作用は固定的なものでないため、分子同士が滑るために、一度蓄えられた弾性エネルギーは、分子が滑る際の摩擦により消費され熱エネルギーに変換されてしまう(エネルギーの散逸)。
振動吸収の指標としては、損失係数(tanδ)があり、それは、損失弾性率(エネルギーの散逸)と貯蔵弾性率(エネルギーの蓄積)の比で表される(式1)。損失係数を大きくするためには、損失弾性率を大きくするか、貯蔵弾性率を小さくすることが考えられる。
(式1)損失係数:tanδ=G’’/G’
G’’: 損失弾性率、G’: 貯蔵弾性率
そこで、本発明によるグリース組成物の場合、モース硬度の低い(小さい)無機充填材は、外力により容易にへき開、もしくは、崩壊すると考えられることから、へき開、もしくは、崩壊する際に振動エネルギーが消費され、損失弾性率が高くなり、減衰係数が大きくなって、振動減衰特性が高くなると考えられる。また、モース硬度の(小さい)金属粒子は、外力により容易に弾性変形すると考えられ、弾性変形する際に振動エネルギーが消費され、損失弾性率が高くなり、減衰係数が大きくなって、振動減衰特性が高くなると考えられる。
本発明によるグリース組成物において、増ちょう剤としてとしての無機充填材がモース硬度5よりも大きい場合、および金属粒子がモース硬度4よりも大きい場合には、後の実施例に示すように、外力によるへき開、もしくは、崩壊がし難くなり振動エネルギーが消費されず、振動減衰特性が低下するので好ましくない。
モース硬度が5以下である無機充填材の例として、無機材料の炭酸塩、硫酸塩、酸化物あるいは鉱物などが挙げられる。具体例としては、前記したように、CaCO(3〜4)、CaO(4〜4.5)、ZnO(4〜5)、PbO(2)、MoO(2.5)、CaSO・1/2HO(3)、タルク粉(1)、カリオン(1)、マイカ(1)などが挙げられる。なお、括弧内の数値はモース硬度を示している。
また、モース硬度が4以下である金属粒子の例としては、金属の微粉末であり、具体例としては、アルミニウム(2.9)、銅(3)、真鍮(3)、亜鉛(2.5)、錫(1.8)、リン青銅(4)、鉛(1.5)などが挙げられる。ここでも、括弧内の数値はモース硬度を示している。
本発明のグリース組成物において、JISK2220に準拠して測定する不混和ちょう度が150〜300であることは、用途がディスクブレーキの鳴き防止用であるときに、特に好ましい。なお、不混和ちょう度とは、基油と増ちょう剤の所要量を混和した後、その試料をできるだけ混ぜないようにして混和器に移して測定する値である。不混和ちょう度が150未満であると、硬いために当該部品に塗布する際に塗りむらによる隙間ができやすくなり、所期の効果が得られにくくなる。また、不飽和ちょう度が300を超えるとブレーキ作動時の発熱により離油を発生し、周辺部を汚染する可能性があるので好ましくない。
上記した第1の発明でのグリース組成物において、増ちょう剤としての無機充填材(用いる場合での金属粒子も含む)の充填量は、10重量%以上80重量%以下であることが好ましい。無機充填材が10重量%未満では、少なすぎて十分な振動減衰が得られない。80重量%を超えると油分が少なくなり増ちょうしにくくなりグリース状にならないため、部品に塗布する際の作業性が悪化する。添加する場合での金属粒子の粒径は1〜100μm程度がよく、1μm以下では金属粉を細かくする際の加工費が急騰し、コスト的に適当でない。100μm以上であると、グリース中に均一に分散することが困難となり、所定の効果が得られない。
好ましい無機充填材の充填量は10重量%以上80重量%以下であり、その平均粒子径は10μm以下であることが好ましい。粒子径が10μmを超えるような大きい粒子であって増ちょうしにくい無機充填材を使用することもできる。その場合には、グリースの硬さを維持するために、金属石けん、ウレア化合物等の他の増ちょう剤と併用することが望ましい。
第1の発明でのグリース組成物において、使用する基油は、100℃の動粘度が1〜50000mm/sのものが好ましく、より好ましくは100〜10000mm/sのものである。基油の動粘度の値が小さいときには、増ちょう剤の量を多く混合し、基油の動粘度の値が大きいときには、増ちょう剤の量を少なく混合することで、グリース組成物が所望のちょう度範囲となるように、両者の混合比を適宜選定する。しかし、基油の動粘度が1mm/s未満であると、グリース状にするために多量の増ちょう剤が必要であり、50000mm/sを超えると、部品に塗布する際に塗りむらが発生しやすくなるので好ましくない。
第1の発明でのグリース組成物において、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば酸化防止剤、錆止め材、金属腐食防止剤、油性剤、固体潤滑剤等が挙げられる。また、通常の添加剤以外に、合成、再生、天然の各繊維物質や、ゴムダスト、カシューダスト等の粘着物質を加えることもできる。
上記した第2の発明でのグリース組成物において、添加する金属粒子の粒径は1〜100μm程度がよく、1μm以下では金属粉を細かくする際の加工費が急騰し、コスト的に適当でない。100μm以上であると、グリース中に均一に分散することが困難となり、所定の効果が得られない。
また、第1の発明において金属粒子を添加する場合のグリース組成物、および第2の発明に係るディスクブレーキ用のグリース組成物において、金属粒子(粉末)の添加量は10〜70重量%が適当である。金属粉末添加量が10重量%未満であると、少なすぎるため所定の効果が得られない可能性がある。また、70重量%を超えて添加してもそれ以上の効果は期待できず、コスト面で不利となる。
さらに、第1の発明において金属粒子を添加する場合のグリース組成物、および第2の発明に係るディスクブレーキ用グリース組成物において、使用する基油は、100℃の動粘度が1〜50000mm/sのものが好ましく、より好ましくは100〜10000mm/sのものである。基油の動粘度が100℃で1mm/s未満であると、グリース状にするために多量の増ちょう剤が必要であり、50000mm/sを超えると、部品に塗布する際に塗りむらが発生しやすくなるので好ましくない。
第1の発明において金属粒子を添加する場合のグリース組成物、および第2の発明に係るディスクブレーキ用グリース組成物においても、必要に応じて種々の添加剤を添加することができる。添加剤の例としては、例えば酸化防止剤、錆止め材、金属腐食防止剤、油性剤、固体潤滑剤等が挙げられる。また、通常の添加剤以外に、合成、再生、天然の各繊維物質や、ゴムダスト、カシューダスト等の粘着物質を加えることもできる。
グリース組成物において、長期に亘って使用されていると、グリース組成物から漏れ出す油分による汚損が生じる場合がある。それを回避するために、本発明によるグリース組成物の一態様では、無機充填材と基油に加えて、さらに0.1〜10質量%のポリエチレンワックスやモンタン酸ワックスのようなワックスが含まれる。適量のワックスを含ませることにより、振動減衰性能を維持しながら、油分離抑制性能に優れたグリース組成物が得られる。
ワックスを含む態様の本発明によるグリース組成物において、使用する基油としては、100℃の動粘度が1〜50000mm/sが好ましく、さらに好ましくは100〜10000mm/sである。基油の動粘度が1mm/s以下であると、グリース状にするために多量の増ちょう剤が必要であり、50000mm/sを超えると、部品に塗布する際に塗りむらが発生しやすくなるので好ましくない。
以下、本発明を実施例と比較例により説明する。
[実施例A]
(A)グリース組成物
[実施例]
基油と増ちょう剤(無機充填材)とを表1に示すように選択して実施例1〜5のグリース組成物を調整した。各調整後のグリース組成物を撹拌・混練することなく混和器に移して、未混和ちょう度をJISK2220に準拠して測定した。その値も表1に示した。
Figure 2012224834
[比較例]
基油と増ちょう剤(無機充填材)とを表2に示すように選択して比較例1〜3のグリース組成物を調整した。各調整後のグリース組成物を撹拌・混練することなく混和器に移して、未混和ちょう度をJISK2220に準拠して測定した。その値も表2に示した。
Figure 2012224834
なお、表1および表2において、*1〜*10は以下の通りである。
*1 炭酸カルシウム:(モース硬さ3〜4、粒径7μm)三共精粉株式会社製 一級炭酸カルシウム
*2 酸化亜鉛:(モース硬さ4〜5、粒径0.7μm)堺化学工業株式会社製 酸化亜鉛2種
*3 タルク粉末:(モース硬さ2〜3、粒径3μm)レプコ社製 SX−F
*4 グラファイト:(モース硬さ1〜2、粒径4μm)ロンザ社製 KS−6
*5 三酸化モリブデン:(モース硬さ2.5、粒径10μm)日本無機化学製 三酸化モリブデン
*6 シリカA:(モース硬さ7、粒径3μm)電気化学工業株式会社製 FS−3DC
*7 シリカB:(モース硬さ7、粒径12nm)日本アエロジル株式会社製 AEROSILR974
*8 アルミナ:(モース硬さ9、粒径1μm)日本軽金属社製 A32
*9 シリコーン油A:TSF451−500(100℃の動粘度:180mm/s)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製
*10 シリコーン油B:TSF451−5000(100℃の動粘度:1800mm/s)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製
(B)試験方法
上記した実施例1〜5、比較例1〜3のグリース組成物を鋼板に塗布して、ボール落下法によりその振動減衰率を測定した。具体的には、鋼板200×150×1.6mmに、各グリース組成物を50×50×0.5mmの大きさに塗布し、70mmの高さから試験体の上に鋼球(直径12.7mm)を落下させ、各鋼板の音圧レベル(A)をピックアップセンサーで測定した。また、鋼板のみの音圧レベル(B)を同様にして測定した。そして、減衰率を下記の式により求めた。
式:減衰率(%)=100(A−B)/B
[評価基準]
減衰率の評価基準を下記のように設定して、○以上を合格とした。その結果を表3に示した。
◎:減衰率80%以上、
○:減衰率60〜80%未満、
△:減衰率30〜60%未満、
×:減衰率30%未満。
Figure 2012224834
※評価:(良)◎>○>△>×(悪)
[評価]
上記実施例および比較例での試験方法において、使用した「鋼板200×150×1.6mm」は、従来の単に鋼板からなるディスクブレーキ用シムに相当するものとみなすことができる。したがって、該鋼板と比較して音圧レベルが高くなっている試験体、すなわちグリースを塗布することで前記減衰率が大きくなっている試験体は、それをディスクブレーキ用シムとして用いた場合に、グリースを塗布しない鋼板単体の場合と比較して、ブレーキ鳴きを抑制できるものと類推することができる。
その観点から、実施例1〜5のもの(増ちょう剤である無機充填材のモース硬度が5以下のもの)は、減衰率が60%以上と高い値であり、本発明によるグリース組成物がブレーキ鳴きの抑制に有効であることが示される。それに比較して、比較例1〜3のもの(増ちょう剤である無機充填材のモース硬度が7、7、9のもの)は、不混和ちょう度が実施例のものとほぼ同じであっても、減衰率が60%未満であり、減衰率が低いことからブレーキ鳴きの抑制に有効とはいえないことがわかる。
[実施例B]
(A)グリース組成物
[実施例]
基油と増ちょう剤(無機充填材および金属粉末)とを表4に示すように選択して実施例6〜12のグリース組成物を調整した。各調整後のグリース組成物を撹拌・混練することなく混和器に移して、未混和ちょう度をJISK2220に準拠して測定した。その値も表4に示した。
Figure 2012224834
[比較例]
基油と増ちょう剤(無機充填材および金属粉末)とを表5に示すように選択して比較例4〜6のグリース組成物を調整した。各調整後のグリース組成物を撹拌・混練することなく混和器に移して、未混和ちょう度をJISK2220に準拠して測定した。その値も表5に示した。
Figure 2012224834
なお、表4および表5において、*21〜*33は以下の通りである。
*21 銅粉:粒径40μm、モース硬さ3
*22 真鍮粉:粒径10μm、モース硬さ3
*23 亜鉛粉:粒径15μm、モース硬さ2.5
*24 アルミ粉:粒径100μm、モース硬さ2.9
*25 りん青銅:粒径50μm、モース硬さ4
*26 クロム:粒径10μm、モース硬さ9
*27 ステンレス鋼(SUS304):粒径10μm、モース硬さ6
*28 シリコーン油A:100℃の動粘度:100mm/s
*29 シリコーン油B:100℃の動粘度:1000mm/s
*30 オレフィンコポリマー:100℃の動粘度:2000mm/s
*31 ポリメタクリレート:100℃の動粘度:1000mm/s
*32 炭酸カルシウム:粒径10μm、モース硬さ3
*33 シリカ粉末:粒径12nm、モース硬さ7
(B)試験方法
上記した実施例6〜12、比較例4〜6のグリース組成物について、実施例Aと同様にして、ボール落下法によりその振動減衰率を測定した。また、鋼板のみの音圧レベル(B)を同様にして測定した。そして、減衰率を下記の式により求めた。
式:減衰率(%)=100(A−B)/B
[評価基準]
減衰率80%以上を◎、60%以上80%未満を○、60%未満を△とした。その結果を表6に示した。
Figure 2012224834
[評価]
上記実施例6〜12および比較例4〜6についても、実施例Aと同様に、鋼板と比較して音圧レベルが高くなっている試験体、すなわちグリースを塗布することで前記減衰率が大きくなっている試験体は、それをディスクブレーキ用シムとして用いた場合に、グリースを塗布しない鋼板単体の場合と比較して、ブレーキ鳴きを抑制できるものと類推することができる。
その観点から、実施例6〜12のもの(増ちょう剤である無機充填材のモース硬度が5以下、金属粉末のモース硬度が4以下のもの)は、減衰率が60%以上と高い値であり、本発明によるグリース組成物がブレーキ鳴きの抑制に有効であることが示される。実施例11と実施例12は、増ちょう材としてモース硬度が4以下の金属粒子のみを含むものであるが、この場合でも、60%以上の高い減衰率が得られている。
それに比較して、比較例4のものは、添加した増ちょう剤である無機充填材のモース硬度がシリカ粉末7、金属粉末のモース硬度がクロム9であり、比較例5のものは、添加した増ちょう剤である無機充填材のモース硬度がシリカ粉末7、金属粉末のモース硬度がステンレス鋼6であり、比較例6のものは、添加した増ちょう剤である無機充填材のモース硬度が炭酸カルシウム3であるが、金属粉末のモース硬度がクロム9であり、不混和ちょう度が実施例のものとほぼ同じであっても、減衰率が60%未満であって、減衰率が低いことからブレーキ鳴きの抑制に有効とはいえないことがわかる。
[実施例C]
(A)グリース組成物
[実施例]
基油と増ちょう剤(無機充填材)と添加剤(ワックス)を表7に示すように選択して実施例13〜20のグリース組成物を調整した。各調整後のグリース組成物を撹拌・混練することなく混和器に移して、未混和ちょう度をJISK2220に準拠して測定した。その値も表7に示した。
Figure 2012224834
[比較例]
基油と増ちょう剤(無機充填材)と添加剤(ワックス)を表8に示すように選択して比較例7〜11のグリース組成物を調整した。各調整後のグリース組成物を撹拌・混練することなく混和器に移して、未混和ちょう度をJISK2220に準拠して測定した。その値も表8に示した。
Figure 2012224834
なお、表7および表8において、*34〜*44は以下の通りである。
*34 炭酸カルシウム:(モース硬さ3〜4、粒径7μm)三共精粉株式会社製 一級炭酸カルシウム(*1に同じ)
*35 酸化亜鉛:(モース硬さ4〜5、粒径0.7μm)堺化学工業株式会社製 酸化亜鉛2種(*2に同じ)
*36 タルク粉末:(モース硬さ2〜3、粒径3μm)レプコ社製 SX−F(*3に同じ)
*37 グラファイト:(モース硬さ1〜2、粒径4μm)ロンザ社製 KS−6(*4に同じ)
*38 三酸化モリブデン:(モース硬さ2.5、粒径10μm)日本無機化学製 三酸化モリブデン(*5に同じ)
*39 シリカA:(モース硬さ7、粒径3μm)電気化学工業株式会社製 FS−3DC(*6に同じ)
*40 シリカB:(モース硬さ7、粒径12nm)日本アエロジル株式会社製 AEROSILR974(*7に同じ)
*41 アルミナ:(モース硬さ9、粒径1μm)日本軽金属社製 A32(*8に同じ)
*42 オレフィンコポリマー:総研製 Hidex3550−40(100℃の動粘度:2000mm/s)(*30に同じ)
*43 ポリメタクリレート:三洋化成株式会社製 アクループ702(100℃の動粘度:1000mm/s)(*31に同じ)
*44 ポリエチレンワックス:クラリアントジャパン株式会社製 Licowax PE190
*45 モンタン酸ワックス:クラリアントジャパン株式会社製 Licowax OP
(B)試験方法
(B−1)減衰率:上記した実施例13〜20、比較例7〜11のグリース組成物について、実施例Aと同様にして、ボール落下法によりその振動減衰率を測定した。
(B−2)油分離性:上記した実施例13〜20、比較例7〜11のグリース組成物を、鋼板の上に直径10mm、厚さ2mmに塗布し、80℃で168時間静置した。静置後の油分の直径を拡散直径として測定した。
[評価基準]
減衰率については、減衰率80%以上を◎、60%以上80%未満を○、30%以上60%未満を△、30%未満を×とし、◎および○の判定を合格、他は不合格とした。油分離性については、拡散直径15m未満を◎、15〜30mm未満を○、30〜50mm未満を△、50mm以上を×とし、◎および○の判定を合格、他は不合格とした。その結果を表9に示した。
Figure 2012224834
[評価]
表9に示すように、実施例13〜20のものおよび比較例7、8のものは減衰率の観点からは合格品である。比較例9〜11は、増ちょう剤である無機充填材のモース硬度が7(比較例9)、7(比較例10)、9(比較例11)と高く、減衰率が低いことから、不混和ちょう度は合格品とほぼ同じであっても、ブレーキ鳴きの抑制に有効とはいえない。一方、油分離性の観点では、実施例13〜20のものおよび比較例9〜11のものは合格品であるが、比較例7、8のものは、添加剤であるポリエチレンワックスの量が0および0.05mass%と少ないために、大きな拡散直径値となっており、長期的な使用を考慮した場合、グリース組成物から漏れ出す油分によって周囲環境に汚損を生じさせる恐れがある。
以上のことから、基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物であって、増ちょう剤としてモース硬度が5以下の無機充填材を含むことを特徴とする本発明によるグリース組成物において、さらに、適量のワックスを含むことはより好ましい態様であり、それによって、周囲に汚染が生じる恐れを効果的に回避することが可能となる。

Claims (11)

  1. 基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物であって、前記増ちょう剤としてモース硬度が5以下の無機充填材を含むことを特徴とするグリース組成物。
  2. 前記モース硬度が5以下の無機充填材は、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、タルク粉末、グラファイトおよび三酸化モリブデンからなる群から少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
  3. 前記モース硬度が5以下の無機充填材は、モース硬度が4以下の金属粒子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のグリース組成物。
  4. 前記モース硬度が4以下の金属粒子は、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、錫およびリン青銅からなる群から少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項3に記載のグリース組成物。
  5. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載のグリース組成物であって、用途がディスクブレーキ用であるグリース組成物。
  6. 基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物であって、前記増ちょう剤としてモース硬度が4以下の金属粒子を含み、用途がディスクブレーキ用であるグリース組成物。
  7. 前記モース硬度が4以下の金属粒子は、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、錫およびリン青銅からなる群から少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項6に記載のグリース組成物。
  8. JISK2220に準拠して測定する不混和ちょう度が150〜300の範囲であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載のグリース組成物。
  9. 前記基油は、シリコーン油または合成炭化水素油であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載のグリース組成物。
  10. 請求項1ないし9のいずれか一項に記載のグリース組成物であって、さらに0.1〜10質量%のワックスを含むことを特徴とするグリース組成物。
  11. 前記ワックスがポリエチレンワックス、モンタン酸ワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項10に記載のグリース組成物。
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