[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る蓋付容器について、図面を参照しながら説明する。本明細書において、「フィルム」、「シート」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「フィルム」はシートとも呼ばれるような部材も含む意味で用いられる。図1は、本実施形態に係る蓋付容器の斜視図であり、図2は、図1の蓋付容器の平面図であり、図3は、図2の蓋材のI-I線の断面図である。図4は、本実施形態に示される蓋付容器の各構成要素の寸法を説明するための蓋付容器の平面図であり、図5は、本実施形態に示される蓋付容器の各構成要素の寸法を説明するための図2のII-II線の断面図である。図6~図12は、蓋付容器の収容部の圧力を測定する方法を示す図である。図13は、蓋付容器のシール強度を測定するための試験片S1を蓋付容器から切り出すときの図であり、図14は、試験片S1を用いてシール強度を測定する様子を示す図であり、図15は、試験片S1のシール強度を測定するための把持具間距離に対する引張応力の変化を示す図である。図16は、蓋材の破断伸度や破断強度を測定するための試験片S2を蓋材から切り出すときの図であり、図17は、試験片S2を用いて破断伸度や破断強度を測定する様子を示す図である。図18は、蓋材の第2領域のラミネート強度を測定するための試験片S3を蓋材から切り出すときの図であり、図19は、端部を剥離した試験片S3を示す図であり、図20は、試験片S3を用いてラミネート強度を測定する様子を示す図であり、図21は、試験片S3のラミネート強度を測定するための把持具間距離に対する引張応力の変化を示す図である。図22は、蓋材の第1領域のラミネート強度を測定するための試験片S4を蓋材から切り出すときの図であり、図23は、端部を剥離した試験片S4を示す図であり、図24は、試験片S4を用いてラミネート強度を測定する様子を示す図であり、図25は、試験片S4のラミネート強度を測定するための把持具間距離に対する引張応力の変化を示す図である。図26は、実施形態に係る他の蓋付容器の斜視図であり、図27は、図26の蓋付容器の平面図である。
<<<蓋付容器>>>
図1に示される蓋付容器10-1は、内容物を収容するための収容部20Aが形成された容器本体20-1と、容器本体20-1を密封する蓋材30-1とを備えている。蓋付容器10-1は、容器本体20-1と蓋材30-1を接合することによって形成されたシール部11によって密封されている。
蓋付容器10-1に収容される内容物としては、特に限定されないが、固体、液体、またはこれらの混合物が挙げられる。内容物としては例えば、冷凍食品や冷蔵食品などを挙げることができる。また食品としては、チャーハン、唐揚げ、スープ等が挙げられる。
蓋付容器10-1は、収容部20Aの圧力が105kPa以下で蒸気抜けすることができるように構成されている。蓋付容器10-1に内容物を収容した状態で、電子レンジにより加熱すると、蓋付容器10-1内の圧力が高まるが、後述するラミネート強度調整層33とシーラント層32の間のラミネート強度が低下するので、ラミネート強度調整層33とシーラント層32の接合が部分的に破壊されることによって105kPa以下で蒸気抜けさせることができる。
蓋付容器10-1は、収容部20Aの圧力が104kPa以下、103kPa以下、または102kPa以下で蒸気抜けすることができるように構成されていることが好ましい。また、収容部20Aの圧力に対するラミネート調整層33とシーラント層32の剥離が早すぎると、内容物が十分に加熱および加圧されるよりも前に前記剥離が生じ収容部20Aの圧力および温度が低下してしまうおそれがある。この点を考慮すると、蓋付容器10-1は、収容部20Aの圧力が98kPa以上でラミネート強度調整層33とシーラント層32の剥離により蒸気抜けすることができるように構成されていることが好ましい。
電子レンジでの加熱時の蓋付容器10-1内の圧力の測定方法について説明する。まず、図6に示すような、密封されていない状態の蓋付容器10-1を入手可能な場合の、蓋付容器10-1の圧力の測定方法について、説明する。
まず、図6に示すような、開口部21が露出している容器本体20-1と、蓋材30-1とを準備する。続いて、図7に示されるように、容器本体20-1の内部に、圧力を測定可能なデータロガーのセンサ41を投入する。また、容器本体20-1の収容部20Aに所定量(例えば100ml)の水Wを充填する。その後、蓋材30-1を容器本体20-1の開口部21を塞ぐように配置し、容器本体20-1のフランジ部22と蓋材30-1とを熱融着して、シール部11を形成し、図8に示される密封した蓋付容器10-1を得る。データロガーとしては、例えば、TMI-ORION製のPicoVACQ PTを用いることができる。PicoVACQ PTは、圧力に加えて温度を測定することもできる。
次いで、センサ41を用いて収容部20Aの蒸気が抜ける直前の圧力(以下、蒸気抜け圧力)を所定の時間間隔で測定しながら、電子レンジを利用して蓋付容器10-1内の水Wを加熱する。電子レンジとしては、出力が500W~1500Wの範囲内の任意のものを用いることができる。時間間隔は、例えば0.1秒以上10秒以下であり、例えば0.5秒である。
水が蒸発して収容部20Aの圧力が増加し、シーラント層が破断し、ラミネート強度調整層33とシーラント層32の一部が剥離して、収容部20Aが蓋付容器10-1の外部と連通すると、センサ41によって測定されている収容部20Aの圧力が急激に低下する。圧力が急激に低下し始める直前に測定された収容部20Aの圧力を、蓋付容器10-1の蒸気抜け圧力として記録する。圧力が急激に低下し始める直前の収容部20Aの温度は、例えば50℃以上80℃以下である。
次に、図1に示されるような、内容物が収容され、かつ密封された状態の蓋付容器10-1を用いて、蓋付容器10-1の蒸気抜け圧力を測定する方法について、図9~図12を参照して説明する。
まず、図1に示されるような、密封された状態の蓋付容器10-1を準備する。続いて、蓋材30-1に、内容物取り出すための開口部を設ける。ただし、開口部は、ラミネート強度調整層が形成されている領域である第1領域を避けて設けるものとする。例えば図9に示すように、蓋材30-1を貫通する切れ込みを蓋材30-1に形成することにより、蓋材30-1に開口部30Dを設ける。その後、蓋付容器10-1に収容されている内容物を、開口部30Dを介して外部に取り出す。その後、蓋付容器10-1の内部を洗浄して蓋付容器10-1の内面に付着している内容物を更に除去してもよい。
次いで、開口部30Dが設けられた蓋材30-1の内面に熱融着可能なフィルム42(図10参照)を準備する。フィルム42は、開口部30Dを介して蓋付容器10-1の収容部20Aに導入可能であり、かつ開口部30Dを覆うことができる形状となっている。フィルム42としては、蓋材30-1の第2領域30Cと同一の包装材料を用いることができる。このようなフィルム42は、例えば蓋付容器10-1が内容物を収容した状態で市販されている場合、蓋付容器10-1を購入して蓋付容器10-1の蓋材30-1を切り出すことによって準備することができる。
続いて、図10に示すように、開口部30Dを介して収容部20Aにフィルム42を導入する。この際、フィルム42の内面が蓋材30-1の内面側を向くようにする。フィルム42は、第2領域30Cに位置し、かつ開口部30Dの全域を覆うように配置される。その後、フィルム42のうち一辺の部分の内面を、蓋材30-1の内面に熱融着する。図10においては、熱融着によって形成されたシール部43にハッチングを施している。
続いて、図11に示すように、蓋付容器10-1の内部に、圧力を測定可能なデータロガーのセンサ41を、開口部30Dを介して投入する。また、収容部20Aに所定量(例えば、100ml)の水Wを、開口部30Dを介して充填する。その後、蓋付容器10-1を外部から封止するように、フィルム42の内面を蓋材30-1の内面に熱融着する。例えば、フィルム42の内面のうち未だ蓋材30-1の内面に熱溶着されていない部分を加熱および押圧する。これによって、図12に示すように、蓋材30-1の開口部30Dを封止することができる。その後、上述のように、センサ41を用いて収容部20Aの圧力を所定の時間間隔で測定しながら、電子レンジで蓋付容器10-1内の水Wを加熱することにより、蓋付容器10-1の蒸気抜け時の圧力を測定することができる。
<<容器本体>>
容器本体20-1は、図5に示されるように、閉口した底面20Bと、上部に開口部21とを有している。容器本体20-1の深さD4(図5参照)は、特に限定されないが、例えば、50mm以上150mm以下とすることが可能である。上記深さD4が50mm以上であれば、多くの内容物を収容することができ、また150mm以下であれば、電子レンジによる加熱で、加熱むらなく蒸気を抜くことができる。
容器本体20-1は、開口部21の周囲にフランジ部22を備えている。このフランジ部22と蓋材30-1のシーラント層32が熱融着されることによって、シール部11が形成される。開口部21の直径R1(図5参照)は、例えば、50mm以上150mm以下であってもよい。シール部11の幅W3(図4参照)は、1mm以上であることが好ましい。幅W3が1mm以上であれば、確実に収容部20Aを封止できる。幅W3の上限は、蓋材30-1の開封性を得る観点から、10mm以下であることが好ましい。
フランジ部22は、蓋材30-1のシーラント層32との熱融着性を良好にするために略平坦に形成されていることが好ましい。フランジ部22の幅W4(図5参照)は、例えば、1mm以上10mm以下であってもよい。
容器本体20-1の材質は特に限定されないが、蓋材30-1との熱融着性を良好にするため、容器本体20-1における蓋体30-1と接する箇所は熱可塑性樹脂から形成されていることが好ましい。このため、容器本体20-1全体を熱可塑性樹脂から形成することが好ましい。また、容器本体20-1における蓋材30-1と接する箇所はフランジ部22であるため、フランジ部22上に熱可塑性樹脂層を形成し、それ以外の箇所を紙から形成した容器本体としてもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、またはこれらの混合物等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、内容物に含まれる油に対する耐油性および耐熱性の観点からポリプロピレンを主成分として含み、蓋材30-1との接合性の観点から、ポリエチレンをさらに含むことが好適である。
ポリプロピレンとしては、高結晶性のプロピレン単独重合体が挙げられ、さらには、プロピレンと、エチレン、ブテン-1、ペンテン-1、3-メチルブテン-1、4-メチルペンテン-1等のα-オレフィンとのランダム共重合体等が挙げられる。これらの中でも高結晶性のプロピレン単独重合体が好ましい。
容器本体20-1全体を熱可塑性樹脂から形成する場合には、例えば、真空成形、圧空成形、射出形成、ブロー成形、押し出し成形、カレンダー成形、キャスト成形等の成形方法で形成することができる。その際、容器本体20-1の隠蔽性を高めるため、成形材料中に、熱可塑性樹脂に加えて顔料を添加してもよい。
容器本体20-1が熱可塑性樹脂のシートから形成されている場合には、シートの厚さは、200μm以上600μm以下であることが好ましい。このシートの厚さが200μm以上であれば、容器本体20-1としての必要物性を担保でき、またシートの厚さが600μm以下であれば、容器本体20-1への成型を容易にできる。
<<<蓋材>>>
蓋材30-1は、少なくとも、図3に示されるように、延伸プラスチックフィルム31と、シーラント層32とを備えている。蓋材は、蓋材中に延伸プラスチックフィルムを1枚のみまたは2枚のみ有していることが好ましい。蓋材30-1は、蓋材中30-1に延伸プラスチックフィルムを1枚のみ有している。シーラント層32は、蓋材30-1の内面を構成する層である。
図1に示される蓋材30-1は、円形状となっているが、蓋材の形状は特に限定されず、例えば、楕円状あるいは三角形状や四角形状等の多角形状であってもよい。蓋材30-1の大きさは、特に限定されないが、図1に示されるように蓋材30-1が円形状になっている場合には、蓋材30-1の直径は、50mm以上200mm以下になっていてもよい。
また、蓋材30-1には、蓋付容器10-1から蓋材30-1を剥がすときに指で蓋材30-1をつまむためのつまみ部30Aが設けられているが、つまみ部30Aは設けられていなくともよい。つまみ部30Aは、蓋材30-1の一部が直径方向外側に突出している部分である。
蓋材30-1は、図3に示されるように、延伸プラスチックフィルム31とシーラント層32の間に部分的にラミネート強度調整層33を備えている。蓋材30-1がラミネート強度調整層33を備えることにより、電子レンジでの加熱でラミネート強度調整層33が軟化するので、このラミネート強度調整層33の強度低下を契機に、ラミネート強度調整層33とシーラント層32の一部が部分的に破壊され、これにより、蓋材30-1内の蒸気を抜くことができる。図2においては、ラミネート強度調整層33は、1箇所に設けられているが、2箇所以上に設けられていてもよい。
蓋材30-1は、図3に示されるように、延伸プラスチックフィルム31、シーラント層32、ラミネート強度調整層33の他、印刷層や接着剤層を備えていてもよい。例えば、蓋材30-1は、図3に示されるように、延伸プラスチックフィルム31、印刷層34、ラミネート強度調整層33、接着剤層35、およびシーラント層32をこの順で備えていてもよい。なお、蓋材30-1は、延伸プラスチックフィルム31とシーラント層32との間に、透明ガスバリア層等の所望の機能を発揮する機能層をさらに備えていてもよい。
上記したようにラミネート強度調整層33は部分的に設けられているので、蓋材30-1は、ラミネート強度調整層33が設けられている領域である第1領域30Bと、ラミネート強度調整層33が設けられていない領域である第2領域30Cを有している。第1領域30Bの大きさ(ラミネート強度調整層33の大きさ)は、蓋材30-1の大きさによって適宜調整されるが、例えば、第1領域30Bは、横幅W1(図4参照)が1mm以上20mm以下であり、第1領域30Bの縦幅W2(図4参照)が1mm以上15mm以下であることが好ましい。
80℃の環境に1分間保持した後、80℃の環境で測定したときの15mm幅における蓋材30-1の第1領域30Bと容器本体20-1との剥離強度(以下、この剥離強度を「熱間剥離強度」と称する。)は8N以下であることが好ましい。第1領域30Bの熱間剥離強度が、8N以下であれば、電子レンジでの加熱時に蓋材30-1が剥離しやすい。この場合の第1領域30Bの熱間剥離強度の下限は、内容物の保護の観点から、1N以上、または1.5N以上であることが好ましい。また、この場合の第1領域30Bの熱間剥離強度の上限は、7N以下、または6.5N以下であることがより好ましい。
25℃の環境に1分間保持した後、25℃の環境で測定したときの15mm幅における蓋材30-1の第1領域30Bと容器本体20-1との剥離強度(以下、この剥離強度を「常温剥離強度」と称する。)は10N以上であることが好ましい。第1領域30Bの熱間剥離強度が、10N以上であれば、常温時では蓋材30-1が剥離しにくいので、内容物を保護することができる。この場合の第1領域30Bの常温剥離強度の下限は、10.5N以上、または11.0N以上であることが好ましい。また、この場合の第1領域30Bの熱間剥離強度の上限は、蓋材30-1の開封性の観点から、25N以下、または20N以下であることがより好ましい。
蓋材30-1の第1領域30Bと容器本体20-1の熱間剥離強度はJIS Z1707:1997 7.5に準拠して以下のようにして行うものとする。まず、蓋付容器10-1において、第1領域30Bおよびシール部11を含むように、一辺L1(図13参照)が15mm、一辺L1と直交する方向に延びる他辺L2(図13参照)が30mmの長方形状の試験片S1(図13参照)を切り出す。試験片S1は、他辺L2が蓋材30-1の中心部に向かう方向と平行になるように切り出す。そして、東洋精機株式会社製のストログラフVG1Fを用いて、試験片S1の熱間剥離強度を測定する。具体的には、まず、図14に示されるように把持具51、52で試験片S1の長手方向の両端部を把持する。そして、熱間剥離強度を測定する場合には、温度80℃、相対湿度10±10%の環境下に試験片S1を1分間保持した後に、温度80℃、相対湿度10±10%の環境下で把持具間距離D1(図14参照)を30mmとした状態で、引張速度300mm/分で把持具51、52をそれぞれ、試験片S1のシール部11の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに引張る引張試験を行い、試験片S1の剥離強度の最大値を測定する。そして、この最大値を剥離強度とする(図15参照)。また、蓋材30-1の第1領域30Bと容器本体20-1の常温剥離強度の測定は、温度25℃、相対湿度50±10%の環境下に試験片S1を1分間保持した後に、温度25℃、相対湿度50±10%の環境下で行う以外は、熱間剥離強度と同様に測定する。
後述するように延伸プラスチックフィルム31は、二軸延伸ポリエステルフィルムまたは二軸延伸ポリアミドフィルムであってもよい。延伸プラスチックフィルム31が二軸延伸ポリエステルフィルムの場合において、80℃の環境に1分間保持した後、80℃の環境で測定したときの第2領域30Cの破断伸度(以下、この破断伸度を「熱間破断伸度」と称する。)は、125%以下となっていることが好ましい。第2領域30Cの熱間破断伸度が、125%以下であれば、電子レンジでの加熱時に蓋材30-1が伸びにくいので、蓋材30-1が破断しやすい。この場合の第2領域30Cの熱間破断伸度の下限は、電子レンジでの加熱時の破断しやすさの観点から、50%以上、60%以上、または70%以上であることが好ましい。また、この場合の第2領域30Cの熱間破断伸度の上限は、120%以下、115%以下、105%以下、100%以下、または95%以下であることがより好ましい。
延伸プラスチックフィルム31が二軸延伸ポリエステルフィルムの場合において、25℃の環境に1分間保持した後、25℃の環境で測定したときの第2領域30Cの破断伸度(以下、この破断伸度を「常温破断伸度」と称する。)は、70%以上となっていることが好ましい。第2領域30Cの常温破断伸度が、70%以上であれば、常温時では蓋材30-1が伸びるので、蓋材30-1が破断しにくい。このため、常温時において蓋付容器10-1から内容物が漏れにくくなる。この場合の第2領域30Cの常温破断伸度の下限は、80%以上、または90%以上であることがより好ましい。また、この場合の第2領域の常温破断伸度の上限は、内容物の保護の観点から、150%以下、140%以下、または130%以下であることがより好ましい。
また、延伸プラスチックフィルム31が二軸延伸ポリアミドフィルムの場合において、第2領域30Cの熱間破断伸度は、140%以下となっていることが好ましい。第2領域30Cの熱間破断伸度が、140%以下であれば、電子レンジでの加熱時に蓋材30-1が伸びにくいので、蓋材30-1が破断しやすい。この場合の第2領域30Cの熱間破断伸度の下限は、電子レンジでの加熱時の破断しやすさの観点から、80%以上、90%以上、または100%以上であることが好ましい。また、この場合の第2領域30Cの破断伸度の上限は、138%以下、または135%以下であることがより好ましい。
延伸プラスチックフィルム31が二軸延伸ポリアミドフィルムの場合において、第2領域30Cの常温破断伸度は、60%以上となっていることが好ましい。第2領域30Cの常温破断伸度が、60%以上であれば、常温時では蓋材30-1が伸びるので、蓋材30-1が破断しにくい。このため、蓋付容器10-1から内容物が漏れにくくなる。この場合の第2領域30Cの常温破断伸度の下限は、70%以上、または80%以上であることがより好ましい。また、この場合の第2領域30Cの常温破断伸度の上限は、内容物の保護の観点から、150%以下、140%以下、または130%以下であることがより好ましい。
また、延伸プラスチックフィルム31の種類に関わらず、第2領域30Cの熱間破断伸度は、第2領域30Cの常温破断伸度よりも低くなっていることが好ましい。第2領域30Cの常温破断伸度と第2領域30Cの熱間破断伸度の差(常温破断伸度-熱間破断伸度)は、5%以上であることが好ましい。この差が5%以上であれば、常温時では蓋材30-1が伸びるので、蓋材30-1が破断しにくい一方で、電子レンジでの加熱時では蓋材30-1が伸びにくいので、蓋材30-1が破断しやすく、蒸気が抜けやすい。この差の下限は、6%以上、7%以上、または10%以上であることがより好ましい。
第2領域30Cの熱間破断伸度の測定は、後述する試験片S2の長さ以外については、JIS K7127に準拠して行なうものとする。まず、蓋材30-1の第2領域30Cから、一辺L3の長さ(図16参照)が15mm、一辺L1と直交する方向に延びる他辺L4の長さ(図16参照)が100mmの長方形状の試験片S2(図16参照)を切り出す。なお、他辺L4の長さは、初期の把持具間距離D2(図17参照)が50mmの状態で測定することができる限りにおいて、適宜短くしてもよい。試験片S2の長手方向(他辺L4の延びる方向)が延伸プラスチックフィルム31の流れ方向(MD)と平行となるように切り出す。蓋材においてはMDに沿って筋が見えるので、目視で筋を確認することによってMDを確認することができる。なお、目視で筋が見えにくい場合には、表面を白色光で照らすことによりMDに沿った筋が確認しやすくなり、また顕微鏡で蓋材の表面を観察することによりさらにMDに沿った筋が確認しやすくなる。そして、東洋精機株式会社製のストログラフVG1Fを用いて、試験片S2の熱間破断伸度を測定する。具体的には、まず、図17に示されるように把持具53、54で試験片S2の長手方向の両端部を把持する。そして、熱間破断伸度を測定する場合には、温度80℃、相対湿度10±10%の環境下に試験片S1を1分間保持した後に、温度80℃、相対湿度10±10%の環境下で把持具間距離D2(図17参照)を50mmとした状態で、引張速度200mm/分で試験片S2を試験片S2の長手方向に引張る引張試験を行い、試験片S2の破断伸度を測定する。そして、5個の試験片S2について、破断伸度を測定し、その平均値を第2領域30Cの熱間破断伸度とする。また、第2領域30Cの常温破断伸度の測定は、温度25℃、相対湿度50±10%の環境下に試験片S2を1分間保持した後に、温度25℃、相対湿度50±10%の環境下で行う以外は、熱間破断伸度と同様に測定する。
延伸プラスチックフィルム31が二軸延伸ポリエステルフィルムの場合には、80℃の環境に1分間保持した後、80℃の環境で測定したときの第2領域30Cの破断強度(以下、この破断伸度を「熱間破断強度」と称する。)は、35.1MPa以下となっていることが好ましい。第2領域30Cの熱間破断強度が、35.1MPa以下であれば、電子レンジでの加熱時に蓋材30-1が破断しやすい。この場合の第2領域30Cの熱間破断強度の下限は、電子レンジでの加熱時の破断しやすさの観点から、5.8MPa以上、11.7MPa以上、または23.4MPa以上であることがより好ましい。また、この場合の第2領域30Cの熱間破断強度の上限は、34MPa以下、または33MPa以下であることが好ましい。
延伸プラスチックフィルム31が二軸延伸ポリエステルフィルムの場合において、25℃の環境に1分間保持した後、25℃の環境で測定したときの第2領域30Cの破断強度(以下、この破断伸度を「常温破断強度」と称する。)は、40.9MPa以上となっていることが好ましい。第2領域30Cの常温破断強度が、40.9MPa以上であれば、常温時では蓋材30-1が破断しにくい。この場合の第2領域30Cの常温破断強度の下限は、46.8MPa以上であることがより好ましい。また、この場合の第2領域30Cの常温破断強度の上限は、内容物の保護の観点から、70.2MPa以下、または58.5MPa以下であることがより好ましい。
また、延伸プラスチックフィルム31が二軸延伸ポリアミドの場合において、第2領域30Cの熱間破断強度は、77.8MPa以下となっていることが好ましい。第2領域30Cの熱間破断強度が、77.8MPa以下であれば、電子レンジでの加熱時に蓋材30-1が破断しやすい。この場合の第2領域30Cの熱間破断強度の下限は、電子レンジでの加熱時の破断しやすさの観点から、33.3MPa以上、または44.4MPa以上であることが好ましい。また、この場合の第2領域の破断強度の上限は、66.7MPa、または61.1MPa以下であることがより好ましい。
延伸プラスチックフィルム31が二軸延伸ポリアミドの場合において、第2領域30Cの常温破断強度は、55.6MPa以上となっていることが好ましい。第2領域30Cの常温破断強度が、55.6MPa以上であれば、常温時では蓋材30-1が伸びるので、蓋材30-1が破れにくい。この場合の第2領域30Cの常温破断強度の下限は、61.1MPa以上、または66.7MPa以上であることがより好ましい。また、この場合の第2領域30Cの常温破断強度の上限は、内容物の保護の観点から、88.9MPa以下、83.3MPa以下、または77.8MPa以下であることがより好ましい。
第2領域30Cの熱間破断強度の測定は、第2領域30Cの熱間破断伸度の測定に用いた試験片S2と同様の試験片S2を用い、第2領域30Cの熱間破断伸度の測定に用いた測定装置および測定条件と同様の測定方法装置および測定条件によって測定するものとする。また、第2領域30Cの常温破断強度の測定は、温度25℃、相対湿度50±10%の環境下に試験片S2を1分間保持した後に、温度25℃、相対湿度50±10%の環境下で行う以外は、熱間破断強度と同様に測定する。
80℃の環境に1分間保持した後、80℃の環境で測定したときの15mm幅における第2領域30Cのラミネート強度(以下、このラミネート強度を「熱間ラミネート強度」と称する。)は、第1領域30Bの熱間ラミネート強度の2倍以上であることが好ましい。第2領域30Cの熱間ラミネート強度が、第1領域30Bの熱間ラミネート強度の2倍以上であるので、電子レンジでの加熱時に第1領域30Bから蒸気が抜けやすい。第2領域30Cの熱間ラミネート強度は、第1領域30Bの熱間ラミネート強度の1.2倍以上、1.5倍以上、または2倍以上であることがより好ましい。また、内容物の保護の理由から、第2領域30Cの熱間ラミネート強度は、第1領域30Bの熱間ラミネート強度の5倍以下、4倍以下、3倍以下であることが好ましい。第1領域30Bの熱間ラミネート強度および第2領域30Cの熱間ラミネート強度は、後述するように幅15mmで測定した値である。
第1領域30Bの熱間ラミネート強度は、1.0N以下であることが好ましい。第1領域30Bの熱間ラミネート強度が、1.0N以下であれば、電子レンジでの加熱時により安定的に第1領域30Bから蒸気を抜くことができる。第1領域30Bの熱間ラミネート強度は、0.8N以下、または0.6N以下であることがより好ましい。
第2領域30Cの熱間ラミネート強度は、1.0N以上であることが好ましい。第2領域30Cの熱間ラミネート強度が、1.0N以上であれば、電子レンジでの加熱時に第2領域30Cから蒸気が抜けることを抑制することができる。第2領域30Cの熱間ラミネート強度は、1.1N以上、または1.2N以上であることがより好ましい。
第2領域30Cの熱間ラミネート強度の測定は、以下のようにして行うものとする。まず、蓋材30-1の第2領域30Cから、一辺L5(図18参照)の長さが15mm、一辺L5と直交する方向に延びる他辺L6(図18参照)の長さが50mmの長方形状の試験片S3(図18参照)を切り出す。そして、図19に示されるように試験片S3の長手方向において15mm剥離させる。その後、東洋精機株式会社製のストログラフVG1Fを用いて、試験片S3の熱間ラミネート強度を測定する。具体的には、まず、図20に示されるように把持具55、56で試験片S3の長手方向の既に剥離されている両端部を把持する。そして、温度80℃、相対湿度10±10%の環境下に試験片S3を1分間保持した後に、温度80℃、相対湿度10±10%の環境下で把持具間距離D3(図20参照)を30mmとした状態で、把持具55、56によって試験片S3の両端部をそれぞれ延伸プラスチックフィルムとシーラント層がまだ積層されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きになり(剥離角度180°)、かつ把持具間距離D3が60mmとなるまで、引張速度50mm/分で引張り、安定領域(図21参照)における引張応力の平均値を、試験片S3の熱間ラミネート強度とする。把持具間距離D3に対する引張応力の変化は、図21に示されるように領域Aを経て領域Aよりも変化率が小さい領域B(安定領域)に入る。そして、5個の試験片S3について、熱間ラミネート強度を測定し、その平均値を第2領域の熱間ラミネート強度とする。
また、第1領域30Bの熱間ラミネート強度も、第2領域30Cの熱間ラミネート強度と同様の方法によって測定する。ここで、第1領域の熱間ラミネート強度を測定する際の試験片S4(図22参照)は、第1領域30Bを含むように切り取られるが、第1領域10Bの他、第2領域30Cを含んでいてもよい。試験片S4は、試験片S3と同様の大きさのものである。また、試験片S4が第1領域10Bのみならず第2領域30Cを含む場合においても、図23に示されるように試験片S4の長手方向において15mm剥離させるが、剥離は、第1領域側の端部とは反対側の端部から行うものとする。また、この試験片S4を用いて試験片S3と同様に熱間ラミネート強度を測定すると(図24参照)、図25に示されるように、第2領域30Cの引張応力を示す領域Aおよび領域B(安定領域)を経て第1領域30Bの引張応力を示す領域Cおよび領域Cよりも変化率が小さい領域D(安定領域)に入る。この領域Dにおける引張応力の平均値を、試験片S4の熱間ラミネート強度とする。5個の試験片S4について、熱間ラミネート強度を測定し、その平均値を第1領域の熱間ラミネート強度とする。
<延伸プラスチックフィルム>
本明細書における「延伸プラスチックフィルム」とは、プラスチックフィルムの機械強度を向上させるために、意図的に延伸加工が施されたプラスチックフィルムである。延伸プラスチックフィルム31は、所定の一方向または二方向において延伸されているプラスチックフィルムである。延伸プラスチックフィルム31は、蓋材30-1に所定の強度を持たせるための基材フィルムとして機能する。延伸プラスチックフィルム31の延伸方向は特には限定されない。延伸プラスチックフィルム31の延伸倍率は、例えば1.05倍以上である。
延伸プラスチックフィルム31は、ポリエステルを主成分として含む二軸延伸ポリエステルフィルム、またはポリアミドを主成分として含む二軸延伸ポリアミドフィルムとすることが好ましい。
本明細書における「ポリエステルを主成分として含む」とは、二軸延伸ポリエステルフィルムが50質量%を超えるポリエステルを含むことを意味する。ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも記す)、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTとも記す)などを挙げることができる。なお、延伸プラスチックフィルム31における、50質量%を超えるポリエステルは、一種類のポリエステルによって構成されていてもよく、二種類以上のポリエステルによって構成されていてもよい。
また、本明細書における「ポリアミドを主成分として含む」とは、二軸延伸ポリアミドフィルムが50質量%を超えるポリアミドを含むことを意味する。ポリアミドの例としては、脂肪族ポリアミドまたは芳香族ポリアミドを挙げることができる。脂肪族ポリアミドとてしてはナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体などのナイロンが挙げられ、芳香族ポリアミドとしては、ポリメタキシレンアジパミド(MXD6)などが挙げられる。延伸プラスチックフィルム31がポリアミドを主成分として含む場合、蓋材30-1の突き刺し強度を高めることができる。
延伸プラスチックフィルム31の厚さは、好ましくは9μm以上であり、より好ましくは12μm以上である。延伸プラスチックフィルム31の厚さを9μm以上にすることにより、延伸プラスチックフィルム31が十分な強度を有するようになる。延伸プラスチックフィルム31の厚さの上限は、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。また、延伸プラスチックフィルム31の厚さを25μm以下にすることにより、延伸プラスチックフィルム31が優れた成形性を示すようになる。このため、蓋材30-1を加工して蓋材30-1を製造する工程を効率的に実施することができる。
<シーラント層>
シーラント層32は、ポリエチレンを主成分として含む。シーラント層32の主成分をポリエチレンとすることにより、ポリプロピレン(PP)に比べて良好な低温シール性が得られる。本明細書における「ポリエチレンを主成分として含む」とは、シーラント層が50質量%を超えるポリエチレンを含むことを意味する。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上のポリエチレン等が挙げられる。本発明において、低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンは異なるものである。具体的には、本発明において、低密度ポリエチレン(LDPE)とは、触媒を使わずに、エチレンを含むモノマーを用いて、100MPa以上400MPa以下の高圧下でラジカル重合することによって得られるエチレン単独重合体であり、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とは、チーグラーナッタ触媒に代表されるマルチサイト触媒またはメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を使用して常圧~1MPaの低圧下でエチレンとα-オレフィンの重合によって得られる共重合体であり、いずれも、密度が0.925g/cm3未満のものを指す。LLDPEのコモノマーとなるα-オレフィンとしては、炭素数3~20のα-オレフィン、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-オクテン、1-ノネン、4-メチルペンテン等およびこれらの混合物が挙げられる。シーラント層32は、容器本体20-1とのシール性の観点から、低密度ポリエチレン、およびα-オレフィンが1-ブテンである直鎖状低密度ポリエチレンの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
ポリエチレンは、バイオマス由来のポリエチレンであってもよい。バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーを重合して得られる。バイオマス由来のポリエチレンの原料であるモノマーは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの他、化石燃料由来のエチレンのモノマーをさらに含んでもよい。バイオマス由来のポリエチレンの原料となるバイオマス由来のエチレンは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。バイオマスエタノールの原料として、とうもろこし、さとうきび、ビート、マニオクなどを挙げることができる。
ポリエチレンがバイオマス由来のポリエチレンである場合には、シーラント層32のバイオマス度は、5.0%以上であることが好ましく、10.0%以上であることがより好ましい。また、シーラント層32のバイオマス度の上限は、30.0%以下であることが好ましい。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばとうもろこし中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本明細書における「バイオマス度」とは、バイオマス由来成分の重量比率を示すものである。ポリエチレンテレフタレート(PET)を例にとると、PETは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエステル中のバイオマス由来成分の重量比率は31.25%であるため、バイオマス度の理論値は31.25%となる。具体的には、PETの質量は192であり、そのうちバイオマス由来のエチレングリコールに由来する質量は60であるため、60÷192×100=31.25となる。また、化石燃料由来のPETのバイオマス由来成分の重量比率は0%であり、化石燃料由来のPETのバイオマス度は0%となる。
シーラント層32単体の熱間破断伸度は、160%以下となっていることが好ましい。シーラント層32単体の熱間破断伸度が160%以下であれば、電子レンジでの加熱時にシーラント層32が伸びにくいので、シーラント層32が破断しやすい。シーラント層32単体の熱間破断伸度の下限は、電子レンジでの加熱時の破断しやすさの観点から、70%以上、80%以上、または90%以上であることがより好ましい。また、シーラント層32単体の熱間破断伸度の上限は、155%以下、または150%以下であることがより好ましい。シーラント層32単体の熱間破断伸度は、蓋材30-1の熱間破断伸度の測定方法と同様の方法によって測定するものとする。
シーラント層32単体の常温破断伸度は、170%以上となっていることが好ましい。シーラント層32単体の常温破断伸度が170%以上であれば、常温時ではシーラント層32が伸びるので、シーラント層32が破断しにくい。このため、常温時において蓋付容器10-1から内容物が漏れにくくなる。シーラント層32単体の常温破断伸度の下限は、180%以上、または190%以上であることがより好ましい。また、シーラント層32単体の常温破断伸度の上限は、内容物の保護の観点から、350%以下、または300%以下であることがより好ましい。シーラント層32単体の常温破断伸度は、蓋材30-1の常温破断伸度の測定方法と同様の方法によって測定するものとする。
シーラント層32単体の熱間破断伸度は、シーラント層32単体の常温破断伸度よりも低くなっている。シーラント層32の破断伸度がこのような関係を有することにより、電子レンジでの加熱時にはシーラント層が伸びにくく、破断しやすい。一方で、常温時ではシーラント層32が伸びるので、シーラント層32が破断しにくく、常温時において蓋付容器10-1から内容物が漏れにくくなる。
シーラント層32単体の熱間破断強度は、16.7MPa以下となっていることが好ましい。シーラント層32単体の熱間破断強度が16.7MPa以下であれば、電子レンジでの加熱時にシーラント層32が破断しやすい。シーラント層32単体の熱間破断強度の下限は、電子レンジでの加熱時の破断しやすさの観点から、1.7MPa以上、または5.0MPa以上であることがより好ましい。また、シーラント層32単体の熱間破断強度の上限は、13.3MPa以下であることがより好ましい。シーラント層32単体の熱間破断強度は、蓋材30-1の熱間破断強度の測定方法と同様の方法によって測定するものとする。
シーラント層32単体の常温破断強度は、8.3MPa以上となっていることが好ましい。シーラント層32単体の常温破断強度が8.3MPa以上であれば、常温時ではシーラント層32が破断しにくい。このため、常温時において蓋付容器10-1から内容物が漏れにくくなる。シーラント層32単体の常温破断強度の下限は、11.7MPa以上であることがより好ましい。また、シーラント層32単体の常温破断強度の上限は、内容物の保護の観点から、33.3MPa以下、または25.0MPa以下であることがより好ましい。シーラント層32単体の常温破断強度は、蓋材30-1の常温破断強度の測定方法と同様の方法によって測定するものとする。
シーラント層32単体の熱間破断強度は、シーラント層32単体の常温破断強度よりも低くなっている。シーラント層32の破断強度がこのような関係を有することにより、電子レンジでの加熱時にはシーラント層が破断しやすい。一方で、常温時ではシーラント層32が破断しにくいので、常温時において蓋付容器10-1から内容物が漏れにくくなる。
シーラント層の密度、メルトフローレート(MFR)、および融点が同等であっても、熱間破断伸度が相違することがある。これは、シーラント層の製造条件の相違によって、シーラント層の融解熱量の割合が、電子レンジの加熱温度において相違しているためと考えられる。シーラント層の融解熱量の割合は、示差走査熱量測定(DSC)を行い、材料の融解熱量全体(50℃~120℃)に対する電子レンジの加熱温度(例えば80℃)における融解熱量の割合で表すことができる。電子レンジでの加熱時にシーラント層の融解熱量の割合が多いことは、電子レンジでの加熱時にシーラント層中で融解している量が相対的に多いことを意味する。ここで、本発明者らによって、熱間破断伸度が低いシーラント層は、シーラント層の融解熱量の割合が多いことが確認された。したがって、電子レンジでの加熱時において、シーラント層32中で融解している量が相対的に多いので、適切に破断することができる。
シーラント層32の厚さは、9μm以上であることが好ましい。シーラント層32の厚さが、9μm以上であれば、蓋材30-1として十分な強度を得ることができる。シーラント層32の厚さの下限は、15μm以上または20μm以上であることがより好ましい。また、シーラント層32の厚さの上限は、容器本体20-1とのシール性の観点から、100μm以下または80μm以下であることが好ましい。
シーラント層32は、単層であってもよく、多層であってもよい。また、シーラント層32は、好ましくは未延伸のフィルムからなる。なお「未延伸」とは、全く延伸されていないフィルムだけでなく、製膜の際に加えられる張力に起因してわずかに延伸されているフィルムも含む概念である。
シーラント層32は、例えば、以下の3つの方法、積層することができる。A)インフレーションなどの方法を用いて予め成膜されたシーラント層を、ドライラミネート法を用いて、ラミネート強度調整層上に接着剤層を介して貼り合わせる。B)ラミネート強度調整層上にアンカーコート剤層を形成した後、押出コーティング法を用いてシーラント層を積層する。C)ラミネート強度調整層上に、押出コーティング法を用いて、直接シーラント層を積層する。
<ラミネート強度調整層>
ラミネート強度調整層33は、樹脂を含み、かつ加熱により軟化して、ラミネート強度を調整する層である。ラミネート強度調整層33は、60~110℃の融点を有する樹脂材料、例えば、エチレン-酢酸ビニル系共重合体樹脂、ポリアミドおよびセルロース系樹脂を含有する樹脂、またはポリアミド、セルロース系樹脂、およびワックス類を含有する樹脂を用いて形成することができる。セルロース系樹脂としては、硝化綿等が挙げられ、またワックス類としては、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックスが挙げられる。ポリアミドと硝化綿とポリエチレンワックスを含有する樹脂としては、DICグラフィックス株式会社製のMWOPニス(軟化点:105℃)などを用いることができる。
ラミネート強度調整層33の厚さは、1μm以上5μm以下であることが好ましい。ラミネート強度調整層33の厚さが1μm以上であれば、電子レンジでの加熱時に第1領域10Bのラミネート強度を低下させることができる。またラミネート強度調整層33の厚さが5μm以下であれば、ラミネート強度調整層33の印刷後の原反の巻取り後における巻取りずれを防ぐことができる。
<印刷層>
印刷層34は、内容物や包装製品の情報を付与したり、または蓋材30-1に美観を付与したりするための層であり、例えば、色材およびバインダ樹脂を含む。印刷層34を形成することにより、蓋材30-1に絵柄を形成することができる。本明細書における「絵柄」とは、特に限定されず、例えば、図、文字、模様、パターン、記号、柄、マーク等を広く含む。グラビア印刷用のインキとしては、DICグラフィックス株式会社製のフィナートを用いることができる。
印刷層34は、その他、任意の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、充填剤、硬化剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、ワックス、シランカップリング剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防錆剤、可塑剤、難燃剤、顕色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、特に印刷適正、印刷効果等の改善を目的に使用され、その種類、使用量は、印刷方法、印刷基材、印刷条件により適宜選択できる。印刷層34は、延伸プラスチックフィルム31にグラビア印刷等の印刷法により形成することができる。
(色材)
色材は、特に限定されず、公知の顔料や染料を用いることができ、所望の色に合わせて適宜選択する。
(バインダ樹脂)
バインダ樹脂としては、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、(メタ)アクリレート化合物の重合体、または、これらの混合物が挙げられる。
<接着剤層>
接着剤層35は、延伸プラスチックフィルム31とシーラント層32とをドライラミネート法により接着するための接着剤を含む。接着剤層35を構成する接着剤は、主剤および溶剤を含む第1組成物と、硬化剤および溶剤を含む第2組成物とを混合して作製した接着剤組成物から生成される。具体的には、接着剤は、接着剤組成物中の主剤と溶剤とが反応して生成された硬化物を含む。
接着剤の例としては、ポリウレタンなどを挙げることができる。ポリウレタンは、主剤としてのポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成されるポリオールとイソシアネート化合物との硬化物である。ポリウレタンの例としては、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンなどを挙げることができる。ポリエーテルポリウレタンは、主剤としてのポリエーテルポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物である。ポリエステルポリウレタンは、主剤としてのポリエステルポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物である。
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族系イソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂肪族系イソシアネート化合物、あるいは、上記各種イソシアネート化合物の付加体または多量体を用いることができる。
接着剤層35の厚さは、好ましくは2μm以上であり、より好ましくは3μm以上である。また、接着剤層35の厚さは、好ましくは6μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。
蓋材30-1の具体例としては、例えば以下の構成が挙げられる。なお、「/」は、層を列記する場合に、層と層との境界を示す表記として用いている。層については、蓋材の外側から内側に向かって記載するものとする。すなわち最も右側に記載された層がシーラント層である。
二軸延伸PETフィルム/印刷層/ラミネート強度調整層/接着剤層/シーラント層
二軸延伸PBTフィルム/印刷層/ラミネート強度調整層/接着剤層/シーラント層
二軸延伸ナイロンフィルム/印刷層/ラミネート強度調整層/接着剤層/シーラント層
<<他の蓋付容器>>
蓋付容器10-1は、円形状の蓋材30-1を有しているので、容器本体20-1の開口部21および底面20Bも円形状となっているが、蓋材の形状は特に限定されず、適宜変更可能である。例えば、図26に示される蓋付容器10-2は、四角形状の蓋材30-2を有しているので、容器本体20-2の開口部21および底面20Bも四角形状になっている。
容器本体20-2のフランジ部22は、図27に示されるように、フランジ部22の長手方向LDに延びる第1部分22Aと、フランジ部22の短手方向SDに延びる第2部分22Bとを有している。
蓋付容器10-2においては、図27に示されるようにラミネート強度調整層33は、2箇所に設けられている。ここで、ラミネート強度調整層33は、フランジ部22の第1部分21A上に位置していることが好ましい。これにより、ラミネート強度調整層33がフランジ部22の収容部20Aの中央部20A1からの距離が短くなるので、容易に電子レンジでの加熱時に蒸気を抜くことができる。また、蓋付容器10-2の平面視において、ラミネート強度調整層33は、収容部20Aの中央部20A1を挟んで対向するフランジ部22の一対の第1部分22A上にそれぞれ位置していることが好ましい。これにより、製造時に位置ずれが起きても2か所のうちの1か所から必ず蒸気を抜くことができる。なお、1箇所に設けられていてもよく、また4箇所に設けられていてもよい。
蓋付容器10-1を電子レンジに入れて、加熱すると、収容部20Aの圧力が高くなるので、収容部20Aから受ける力によって蓋材30-1が外側に膨らむ。ここで、本実施の形態においては、収容部20Aの圧力が105kPa以下で蒸気抜けすることができるように構成されているので、収容部20Aの圧力が105kPaまたはその前にラミネート強度調整層33とシーラント層32の間が剥離する。したがって、電子レンジでの加熱により過度に収容部20Aの圧力が高まることがなく、蓋付容器10-1から蒸気を抜くことができる。蓋付容器10-2においても、蓋付容器10-1と同様の理由から蒸気を抜くことができる。
蓋材のシーラント層は1枚であるので、第1領域および第2領域のシーラント層は同じものである。シーラント層の熱間破断伸度が高いと、電子レンジでの加熱時において蓋付容器の内圧により蓋材のシーラント層を破断しようとしてもシーラント層が伸びてしまい、その結果、第1領域から破断されないおそれがある。本実施形態によれば、延伸プラスチックフィルム31がポリエステルを主成分とする二軸延伸ポリエステルフィルムである場合において、第2領域30Cの熱間破断伸度が、125%以下となっているので、電子レンジでの加熱時に蓋材30-1、30-2は伸びにくく、破断しやすい。これによりラミネート強度調整層33が存在する第1領域30Bから蒸気を抜くことができる。また、本実施形態によれば、延伸プラスチックフィルム31がポリアミドを主成分とする二軸延伸ポリアミドフィルムである場合において、第2領域30Cの熱間破断伸度が、140%以下となっているので、電子レンジでの加熱時に蓋材30-1、30-2は伸びにくく、破断しやすい。これによりラミネート強度調整層33が存在する第1領域30Bから蒸気を抜くことができる。
上記したように第1領域および第2領域のシーラント層は同じものであるが、シーラント層の常温破断伸度が低くても、熱間破断伸度が高い場合には、電子レンジでの加熱時において蓋付容器の内圧により蓋材のシーラント層を破断しようとしてもシーラント層が伸びてしまい、その結果、第1領域から破断されないおそれがある。本実施形態によれば、第2領域30Cの熱間破断伸度が、第2領域30Cの常温破断伸度よりも低いので、電子レンジでの加熱時に蓋材30-1、30-2は伸びにくく、破断しやすい。これによりラミネート強度調整層33が存在する第1領域30Bから蒸気を抜くことができる。
第1領域の熱間ラミネート強度と第2領域の熱間ラミネート強度の差が小さいと、電子レンジでの加熱時において第1領域から破断しようとしても、破断されないおそれがある。本実施形態によれば、第2領域30Cの熱間ラミネート強度が第1領域30Bの熱間ラミネート強度の2倍以上であるので、ラミネート強度調整層33が存在しない第2領域30Cにおいてはラミネート強度が高くなっている。このため、電子レンジでの加熱時に第2領域30Cからは蒸気が抜けず、ラミネート強度調整層33が存在する第1領域30Bから蒸気を抜くことができる。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る蓋付容器について、図面を参照しながら説明する。図28は、本実施形態に係る蓋付容器の斜視図であり、図29は、図28の蓋付容器の平面図であり、図30は、図29に示される蓋材のIII-III線の断面図である。
<<<蓋付容器>>>
図28および図29に示される蓋付容器10-3は、蓋材30-1の代わりに、蓋材30-3を用いたこと以外は、蓋付容器10-1と同様であるので、蓋材30-3以外は、説明を省略するものとする。
<<蓋材>>
蓋材30-3は、図30に示されるように、第1延伸プラスチックフィルム36、第2延伸プラスチックフィルム37、シーラント層32、ラミネート強度調整層33の他、印刷層や接着剤層を備えていてもよい。例えば、蓋材30-3は、図30に示されるように、第1延伸プラスチックフィルム36、接着剤層38、印刷層34、第2延伸プラスチックフィルム37、ラミネート強度調整層33、接着剤層35、およびシーラント層32をこの順で備えていてもよい。図30において、図3と同じ符号が付されている部材は、図3で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。なお、蓋材30-3は、第1延伸プラスチックフィルム36とシーラント層32との間に、透明ガスバリア層等の所望の機能を発揮する機能層をさらに備えていてもよい。
後述するように第1延伸プラスチックフィルム36および第2延伸プラスチックフィルム37は、いずれも二軸延伸ポリエステルフィルムであってもよく、また第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリエステルフィルムの場合には、第2延伸プラスチックフィルム37は二軸延伸ポリアミドフィルムであってもよく、また第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリアミドフィルムの場合には、第2延伸プラスチックフィルム37は二軸延伸ポリエステルフィルムであってもよい。
第1延伸プラスチックフィルム36および第2延伸プラスチックフィルム37がいずれも二軸延伸ポリエステルフィルムの場合において、第2領域30Cの熱間破断伸度は、180%以下となっていることが好ましい。第2領域30Cの熱間破断伸度が、180%以下であれば、電子レンジでの加熱時に蓋材30-3が伸びにくいので、蓋材30-3が破断しやすい。この場合の第2領域30Cの熱間破断伸度の下限は、電子レンジでの加熱時の破断しやすさの観点から、110%以上、120%以上、または130%以上であることが好ましい。また、この場合の第2領域30Cの熱間破断伸度の上限は、175%以下、170%以下、165%以下、または160%以下であることがより好ましい。
第1延伸プラスチックフィルム36および第2延伸プラスチックフィルム37がいずれも二軸延伸ポリエステルフィルムの場合において、第2領域30Cの常温破断伸度は、120%以上となっていることが好ましい。第2領域30Cの常温破断伸度が、120%以上であれば、常温時では蓋材30-3が伸びるので、蓋材30-3が破断しにくい。このため、常温時において蓋付容器10-3から内容物が漏れにくくなる。この場合の第2領域30Cの常温破断伸度の下限は、125%以上、130%以上、または135%以上であることがより好ましい。また、この場合の第2領域30Cの常温破断伸度の上限は、内容物の保護の観点から、200%以下、180%以下、または170%以下であることがより好ましい。
第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリエステルフィルムであり、かつ第2延伸プラスチックフィルム37が二軸延伸ポリアミドフィルムである場合、または第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリアミドフィルムであり、かつ第2延伸プラスチックフィルム37が二軸延伸ポリエステルフィルムである場合において、第2領域30Cの熱間破断伸度は、135%以下となっていることが好ましい。第2領域30Cの熱間破断伸度が、135%以下であれば、電子レンジでの加熱時に蓋材30-3が伸びにくいので、蓋材30-3が破断しやすい。この場合の第2領域30Cの熱間破断伸度の下限は、電子レンジでの加熱時の破断しやすさの観点から、70%以上、80%以上、または90%以上であることが好ましい。また、この場合の第2領域30Cの熱間破断伸度の上限は、130%以下、125%以下、または120%以下であることがより好ましい。
第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリエステルフィルムであり、かつ第2延伸プラスチックフィルム37が二軸延伸ポリアミドフィルムである場合、または第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリアミドフィルムであり、かつ第2延伸プラスチックフィルム37が二軸延伸ポリエステルフィルムである場合において、第2領域30Cの常温破断伸度は、80%以上となっていることが好ましい。第2領域30Cの常温破断伸度が、80%以上であれば、常温時では蓋材30-3が伸びるので、蓋材30-3が破断しにくい。このため、常温時において蓋付容器10-3から内容物が漏れにくくなる。この場合の第2領域30Cの常温破断伸度の下限は、90%以上、または100%以上であることがより好ましい。また、この場合の第2領域30Cの常温破断伸度の上限は、内容物の保護の観点から、150%以下、140%以下、または130%以下であることがより好ましい。
また、第1延伸プラスチックフィルム36および第2延伸プラスチックフィルム37の種類に関わらず、第2領域30Cの熱間破断伸度は、第2領域30Cの常温破断伸度よりも低くなっていることが好ましい。第2領域30Cの常温破断伸度と第2領域10Cの熱間破断伸度の差(常温破断伸度-熱間破断伸度)は、5%以上であることが好ましい。この差が5%以上であれば、常温時では蓋材30-3が伸びるので、蓋材30-3が破断しにくい一方で、電子レンジでの加熱時では蓋材30-3が伸びにくいので、蓋材30-3が破断しやすく、蒸気が抜けやすい。この差の下限は、6%以上、7%以上、または8%以上であることがより好ましい。
第1延伸プラスチックフィルム36および第2延伸プラスチックフィルム37がいずれも二軸延伸ポリエステルフィルムの場合には、第2領域30Cの熱間破断強度は、75MPa以下となっていることが好ましい。第2領域30Cの熱間破断強度が、75MPa以下であれば、電子レンジでの加熱時に蓋材10-1が破断しやすい。この場合の第2領域30Cの熱間破断強度の下限は、電子レンジでの加熱時の破断しやすさの観点から、20MPa以上、30MPa以上、または35MPa以上であることがより好ましい。また、この場合の第2領域30Cの熱間破断強度の上限は、70MPa以下、65MPa以下、または55MPa以下であることが好ましい。
第1延伸プラスチックフィルム36および第2延伸プラスチックフィルム37がいずれも二軸延伸ポリエステルフィルムの場合において、第2領域30Cの常温破断強度は、40MPa以上となっていることが好ましい。第2領域30Cの常温破断強度が、40MPa以上であれば、常温時では蓋材30-3が破断しにくい。この場合の第2領域30Cの常温破断強度の下限は、45MPa以上、50MPa以上、または60MPa以上であることがより好ましい。また、この場合の第2領域30Cの常温破断強度の上限は、内容物の保護の観点から、120MPa以下、110MPa以下、または100MPa以下であることがより好ましい。
また、第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリエステルフィルムであり、かつ第2延伸プラスチックフィルム37が二軸延伸ポリアミドフィルムである場合、または第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリアミドフィルムであり、かつ第2延伸プラスチックフィルム37が二軸延伸ポリエステルフィルムである場合において、第2領域30Cの熱間破断強度は、70MPa以下となっていることが好ましい。第2領域30Cの熱間破断強度が、70MPa以下であれば、電子レンジでの加熱時に蓋材30-3が破断しやすい。この場合の第2領域30Cの熱間破断強度の下限は、電子レンジでの加熱時の破断しやすさの観点から、20MPa以上、30MPa以上、または35MPa以上であることが好ましい。また、この場合の第2領域30Cの熱間破断強度の上限は、65MPa、60MPa以下、または55MPa以下であることがより好ましい。
第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリエステルフィルムであり、かつ第2延伸プラスチックフィルム37が二軸延伸ポリアミドフィルムである場合、または第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリアミドフィルムであり、かつ第2延伸プラスチックフィルム37が二軸延伸ポリエステルフィルムである場合において、第2領域30Cの常温破断強度は、40MPa以上となっていることが好ましい。第2領域30Cの常温破断強度が、40MPa以上であれば、常温時では蓋材30-3が伸びるので、蓋材30-3が破れにくい。この場合の第2領域30Cの常温破断強度の下限は、45MPa以上、50MPa以上、または55MPa以上であることがより好ましい。また、この場合の第2領域30Cの常温破断強度の上限は、内容物の保護の観点から、150MPa以下、140MPa以下、または130MPa以下であることがより好ましい。
蓋材30-3の第2領域30Cの熱間破断伸度は、蓋材30-1の第2領域30Cの熱間破断伸度と同様にして、蓋材30-3の第2領域30Cの常温破断伸度は、蓋材30-1の第2領域30Cの常温破断伸度と同様にして、蓋材30-3の第2領域30Cの熱間破断強度は、蓋材30-1の第2領域30Cの熱間破断強度と同様にして、蓋材30-3の第2領域30Cの常温破断強度は、蓋材30-1の第2領域30Cの常温破断強度と同様にして測定するものとする。
第2領域30Cの熱間ラミネート強度は、第1領域30Bの熱間ラミネート強度の2倍以上であることが好ましい。第2領域30Cの熱間ラミネート強度が、第1領域30Bの熱間ラミネート強度の2倍以上であるので、電子レンジでの加熱時に第1領域30Bから蒸気が抜けやすい。第2領域30Cの熱間ラミネート強度は、第1領域30Bの熱間ラミネート強度の2.1倍以上、2.2倍以上、または2.3倍以上であることがより好ましい。また、内容物の保護の理由から、第2領域30Cの熱間ラミネート強度は、第1領域30Bの熱間ラミネート強度の5倍以下または4倍以下であることが好ましい。第1領域30Bの熱間ラミネート強度および第2領域30Cの熱間ラミネート強度は、後述するように幅15mmで測定した値である。
第1領域30Bの熱間ラミネート強度は、1.0N未満であることが好ましい。第1領域30Bの熱間ラミネート強度が、1.0N未満であれば、電子レンジでの加熱時により安定的に第1領域30Bから蒸気を抜くことができる。第1領域30Bの熱間ラミネート強度は、0.8N以下、または0.6N以下であることがより好ましい。
第2領域30Cの熱間ラミネート強度は、1.0N以上であることが好ましい。第2領域30Cの熱間ラミネート強度が、1.0N以上であれば、電子レンジでの加熱時に第2領域30Cから蒸気が抜けることを抑制することができる。第2領域30Cの熱間ラミネート強度は、1.1N以上であることがより好ましい。
蓋材30-3の第1領域30Bの熱間ラミネート強度は、蓋材30-1の第1領域30Bの熱間ラミネート強度と同様にして、蓋材30-3の第2領域30Cの熱間ラミネート強度は、蓋材30-1の第2領域30Cの熱間ラミネート強度と同様にして測定するものとする。
<第1延伸プラスチックフィルムおよび第2延伸プラスチックフィルム>
第1延伸プラスチックフィルム36および第2延伸プラスチックフィルム37は、蓋材30-3に所定の強度を持たせるための基材フィルムとして機能する。延伸プラスチックフィルム36の延伸方向は特には限定されない。第1延伸プラスチックフィルム36および第2延伸プラスチックフィルム37の延伸倍率は、それぞれ例えば1.05倍以上である。
第1延伸プラスチックフィルム36および第2延伸プラスチックフィルム37は、いずれもポリエステルを主成分として含む二軸延伸ポリエステルフィルムであってもよい。また、第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリエステルフィルムであり、かつ第2延伸プラスチックフィルム37が二軸延伸ポリアミドフィルムであってもよく、または第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリアミドフィルムであり、かつ第2延伸プラスチックフィルム37が二軸延伸ポリエステルフィルムであってもよい。
第1延伸プラスチックフィルム36の厚さは、好ましくは9μm以上であり、より好ましくは12μm以上である。第1延伸プラスチックフィルム36の厚さを9μm以上にすることにより、第1延伸プラスチックフィルム36が十分な強度を有するようになる。第1延伸プラスチックフィルム36の厚さの上限は、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。また、第1延伸プラスチックフィルム36の厚さを25μm以下にすることにより、第1延伸プラスチックフィルム36が優れた成形性を示すようになる。このため、蓋材30-3を加工して蓋材30-3を製造する工程を効率的に実施することができる。第2延伸プラスチックフィルム37の厚さは、第1延伸プラスチックフィルム36の厚さと同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
蓋材30-3の具体例としては、例えば以下の構成が挙げられる。なお、「/」は、層を列記する場合に、層と層との境界を示す表記として用いている。層については、蓋材の外側から内側に向かって記載するものとする。すなわち最も右側に記載された層がシーラント層である。
二軸延伸PETフィルム/接着剤層/印刷層/二軸延伸PETフィルム/ラミネート強度調整層/接着剤層/シーラント層
二軸延伸PBTフィルム/接着剤層/印刷層/二軸延伸PETフィルム/ラミネート強度調整層/接着剤層/シーラント層
二軸延伸ナイロンフィルム/接着剤層/印刷層/二軸延伸PETフィルム/ラミネート強度調整層/接着剤層/シーラント層
二軸延伸ナイロンフィルム/接着剤層/印刷層/二軸延伸PBTフィルム/ラミネート強度調整層/接着剤層/シーラント層
二軸延伸PETフィルム/接着剤層/印刷層/二軸延伸ナイロンフィルム/ラミネート強度調整層/接着剤層/シーラント層
二軸延伸PBTフィルム/接着剤層/印刷層/二軸延伸ナイロンフィルム/ラミネート強度調整層/接着剤層/シーラント層
本実施の形態においては、収容部20Aの圧力が105kPa以下で蒸気抜けすることができるように構成されているので、収容部20Aの圧力が105kPaまたはその前にラミネート強度調整層33とシーラント層32の間が剥離する。したがって、電子レンジでの加熱により過度に収容部20Aの圧力が高まることがなく、蓋付容器30-3から蒸気を抜くことができる。
本実施形態によれば、第1延伸プラスチックフィルム36および第2延伸プラスチックフィルム37がいずれもポリエステルを主成分とする二軸延伸ポリエステルフィルムである場合において、第2領域30Cの熱間破断伸度が、180%以下となっているので、電子レンジでの加熱時に蓋材30-3は伸びにくく、破断しやすい。これによりラミネート強度調整層33が存在する第1領域30Bから蒸気を抜くことができる。また、本実施形態によれば、第1延伸プラスチックフィルム36が二軸延伸ポリエステルフィルムであり、かつ第2延伸プラスチックフィルム37がポリアミドを主成分とする二軸延伸ポリアミドフィルムである場合、または第1延伸プラスチックフィルム36がポリアミドを主成分とする二軸延伸ポリアミドフィルムであり、かつ第2延伸プラスチックフィルム37が二軸延伸ポリエステルフィルムである場合において、第2領域30Cの熱間破断伸度が、135%以下となっているので、電子レンジでの加熱時に蓋材30-3は伸びにくく、破断しやすい。これによりラミネート強度調整層33が存在する第1領域30Bから蒸気を抜くことができる。
本実施形態によれば、第2領域30Cの熱間破断伸度が、第2領域30Cの常温破断伸度よりも低いので、電子レンジでの加熱時に蓋材30-3は伸びにくく、破断しやすい。これによりラミネート強度調整層33が存在する第1領域30Bから蒸気を抜くことができる。
本実施形態によれば、第2領域30Cの熱間ラミネート強度が第1領域30Bの熱間ラミネート強度の2倍以上であるので、ラミネート強度調整層33が存在しない第2領域30Cにおいてはラミネート強度が高くなっている。このため、電子レンジでの加熱時に第2領域30Cからは蒸気が抜けず、ラミネート強度調整層33が存在する第1領域30Bから蒸気を抜くことができる。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
<実施例1>
(蓋材の作製)
まず、延伸プラスチックフィルムとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「E5100」、東洋紡株式会社製)を準備した。続いて、このフィルムに印刷層を形成した。印刷層の厚さは1.0μmであった。また、印刷層上の一部に、60℃~90℃の融点を有し、DICグラフィックス株式会社製のMWOPニス(軟化点:105℃)を含む厚さ1μmのラミネート強度調整層を形成した。
また、低密度ポリエチレン(密度0.924g/cm3、MFR4.0g/10分)のペレットを押し出し機に投入し、温度150℃でインフレーション成形を行い、シーラント層として、厚さ40μmのポリエチレン層を得た。
このポリエチレン層単体の常温破断伸度を測定したところ182.5%であり、熱間破断伸度を測定したところ90.1%であった。ポリエチレン層の常温破断伸度は後述する蓋材の常温破断伸度と同様の測定方法によって、また熱間破断伸度は後述する蓋材の熱間破断伸度と同様の測定方法によって測定された。
また、ポリエチレン層単体の常温破断強度を測定したところ20.2MPaであり、熱間破断強度を測定したところ11.2MPaであった。ポリエチレン層の常温破断伸度は後述する蓋材の常温破断強度と同様の測定方法によって、また熱間破断伸度は後述する蓋材の熱間破断強度と同様の測定方法によって測定された。
そして、印刷層およびラミネート強度調整層上に、ロックペイント株式会社製の2液型ポリウレタン系接着剤(主剤:RU-40、硬化剤:H-4)接着剤層を塗布し、ポリエチレン層と貼り合わせて、積層体を得た。なお、主剤のRU-40は、ポリエステルポリオールである。接着剤層の厚さは、3μmであった。二液硬化型ポリウレタン接着剤からなる積層体を得た後、積層体から図1に示される形状に切り出して蓋材を作製した。
作製された蓋材においては、つまみ部の反対側にラミネート強度調整層が位置していた。また、実施例1に係る蓋材の直径は100mmであり、ラミネート強度調整層の大きさは、横幅W1が20mmであり、縦幅W2が10mmであった。W1およびW2の寸法は、図4の示す通りである。
(蓋付容器の作製)
まず、ポリプロピレンを主成分とし、さらにポリエチレンを含む樹脂からなる厚さ200μmのシートを用いて、図1に示される形状の容器本体を形成した。容器本体は、底面が閉口し、上面に開口部を有し、さらにフランジを有するものであった。容器本体の深さD4は95mmであり、底面の直径は80mmであり、開口部の直径R1は95mmであり、フランジの幅W4は4mmであった。D3、R1およびW4の寸法は、図5の示す通りである。
そして、チャーハン170gを容器本体に投入した後、蓋材のシーラント層がフランジの上面に接触するように蓋材で容器本体の開口部を覆った。その後、ヒートシーラー(型番「TP-701-A」、テスター産業株式会社製)を用いて、シール温度180℃、圧力0.2MPa、時間1秒の条件で、シーラント層とフランジをヒートシールし、幅4mmのシール部を形成して、密封された実施例1に係る蓋付容器を得た。
<実施例2>
実施例2においては、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「E5200」、東洋紡株式会社製)の代わりに、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(製品名「エンブレム ONU」、ユニチカ株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。そして、この積層体から実施例1と同様に切り出して、蓋材を得た。その後、この蓋材を用いて、実施例1と同様にして、実施例2に係る蓋付容器を得た。
<比較例1>
比較例1においては、実施例1で用いたポリエチレン層の代わりに、厚さ40μmのポリエチレン層(製品名「TUX HC」、三井化学東セロ株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。そして、この積層体から実施例1と同様に切り出して、蓋材を得た。その後、この蓋材を用いて、実施例1と同様にして、比較例1に係る蓋付容器を得た。
<比較例2>
比較例2においては、実施例1で用いたポリエチレン層の代わりに、厚さ40μmのポリエチレン層(製品名「リックス L6102」、東洋紡株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。そして、この積層体から実施例1と同様に切り出して、蓋材を得た。その後、この蓋材を用いて、実施例1と同様にして、比較例2に係る蓋付容器を得た。
<比較例3>
比較例3においては、実施例1で用いたポリエチレン層の代わりに、厚さ40μmのポリエチレン層(製品名「TUX HC」、三井化学東セロ株式会社)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。そして、この積層体から実施例1と同様に切り出して、蓋材を得た。また、比較例3に係る蓋材を用いて、実施例1と同様にして、比較例3に係る蓋付容器を得た。
<実施例3>
実施例3においては、実施例1で用いた蓋材に代えて、以下のようにして形成された蓋材を用いたことに以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る蓋付容器を得た。まず、第1延伸プラスチックフィルムとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「E5100」、東洋紡株式会社製)を準備した。また、第2延伸プラスチックフィルムとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「E5100」、東洋紡株式会社製)を準備した。続いて、第2延伸プラスチックフィルムとする二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に印刷層を形成した。印刷層の厚さは1.0μmであった。また、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける印刷層側の面とは反対側の面の一部に、60℃~90℃の融点を有し、DICグラフィックス株式会社製のMWOPニス(軟化点:105℃)を含む厚さ1μmのラミネート強度調整層を形成した。
また、低密度ポリエチレン(密度0.924g/cm3、MFR4.0g/10分)のペレットを押し出し機に投入し、温度150℃でインフレーション成形を行い、シーラント層として、厚さ40μmのポリエチレン層を得た。
このポリエチレン層単体の常温破断伸度を測定したところ182.5%であり、熱間破断伸度を測定したところ90.1%であった。ポリエチレン層の常温破断伸度は後述する蓋材の常温破断伸度と同様の測定方法によって、また熱間破断伸度は後述する蓋材の熱間破断伸度と同様の測定方法によって測定された。
また、ポリエチレン層単体の常温破断強度を測定したところ20.2MPaであり、熱間破断強度を測定したところ11.2MPaであった。ポリエチレン層の常温破断伸度は後述する蓋材の常温破断強度と同様の測定方法によって、また熱間破断伸度は後述する蓋材の熱間破断強度と同様の測定方法によって測定された。
そして、ドライラミネート法により、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、接着剤層、印刷層、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ラミネート強度調整層、およびポリエチレン層を順に積層し、積層体を得た。接着剤層を構成する接着剤としては、ロックペイント株式会社製の2液型ポリウレタン系接着剤(主剤:RU-40、硬化剤:H-4)を用いた。主剤のRU-40は、ポリエステルポリオールである。接着剤層の厚さは、3μmであった。積層体を得た後、積層体から図1に示される形状に切り出して蓋材を作製した。
作製された実施例3に係る蓋材においては、つまみ部の反対側にラミネート強度調整層が位置していた。また、実施例1に係る蓋材の直径は100mmであり、ラミネート強度調整層の大きさは、横幅W1が20mmであり、縦幅W2が10mmであった。W1およびW2の寸法は、図4の示す通りである。
<実施例4>
実施例4においては、第1延伸プラスチックフィルムとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「E5200」、東洋紡株式会社製)の代わりに、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(製品名「エンブレム ONU」、ユニチカ株式会社)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、積層体を得た。そして、この積層体から実施例3と同様に切り出して、蓋材を得た。そして、この蓋材を用いて、実施例1と同様にして、実施例4に係る蓋付容器を得た。
<比較例4>
比較例4においては、実施例3で用いたポリエチレン層の代わりに、厚さ40μmのポリエチレン層(製品名「TUX HC」、三井化学東セロ株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。そして、この積層体から実施例3と同様に切り出して、蓋体を得た。そして、この蓋体を用いて、実施例1と同様にして、比較例4に係る蓋付容器を得た。
<比較例5>
比較例5においては、実施例4で用いたポリエチレン層の代わりに、厚さ40μmのポリエチレン層(製品名「リックス L6102」、東洋紡株式会社)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして積層体を得た。そして、この積層体から実施例4と同様に切り出して、蓋材を得た。そして、この蓋材を用いて、実施例4と同様にして、比較例5に係る蓋付容器を得た。
<蒸気抜け圧力測定および蒸気抜け評価>
実施例1~4および比較例1~5に係る蓋付容器において、蒸気が抜けたときの直前の圧力を測定するとともに、蒸気抜き評価を行った。まず、蓋付容器を5個ずつ用意した。この蓋付容器には、水100mlを注ぎ入れる際に容器本体の内部にデータロガーのセンサ(製品名「PicoVACQ PT」、TMI-ORION社製)を投入した。そして、電子レンジ(型番「NE-M253」、Panasonic株式会社製)に蓋付容器の底面が下側となった状態で入れて、600Wで3分間加熱した。そして、収容部から蒸気が抜けるときの直前の圧力である蒸気抜け圧力を測定した。また、蒸気が第1領域から正常に抜けたか否かをそれぞれ評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:5回中4回以上、第1領域から正常に蒸気が抜けた。
×:5回中1~3回第1領域から正常に蒸気が抜けた、または1回も第1領域から蒸気が抜けなかった。
<常温剥離強度および熱間剥離強度測定>
実施例1~4および比較例1~5に係る蓋付容器において、蓋材の第1領域(ラミネート強度調整層が設けられている領域)と容器本体の常温剥離強度および熱間剥離強度をそれぞれ測定した。蓋材の第1領域と容器本体の熱間剥離強度はJIS Z1707:1997 7.5に準拠して以下のようにして行った。具体的には、まず、蓋付容器において、第1領域およびシール部を含むように、一辺L1(図13参照)が15mm、一辺L1と直交する方向に延びる他辺L2(図13参照)が30mmの長方形状の試験片S1(図13参照)を切りした。試験片S1は、他辺L2が蓋材の中心部に向かう方向と平行になるように切り出した。そして、東洋精機株式会社製のストログラフVG1Fを用いて、試験片S1の熱間剥離強度を測定した。具体的には、まず、図14に示されるように把持具で試験片S1の長手方向の両端部を把持した。そして、熱間剥離強度を測定する場合には、温度80℃、相対湿度10%の環境下に試験片S1を1分間保持した後に、温度80℃、相対湿度10%の環境下で把持具間距離D1(図14参照)を30mmとした状態で、引張速度300mm/分で把持具をそれぞれ、試験片S1のシール部の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに引張る引張試験を行い、試験片S1の剥離強度の最大値を測定した。そして、この最大値を剥離強度とする(図15参照)。また、蓋材の第1領域と容器本体の常温剥離強度の測定は、温度25℃、相対湿度50%の環境下に試験片S1を1分間保持した後に、温度25℃、相対湿度50%の環境下で行う以外は、熱間剥離強度と同様にして行われた。
<常温破断伸度および熱間破断伸度測定>
実施例1~4および比較例1~5に係る蓋付容器の蓋材の第2領域(ラミネート強度調整層が設けられていない領域)における常温破断伸度および熱間破断伸度を測定した。第2領域の常温破断伸度および熱間破断伸度の測定は、試験片S2の長さ以外については、JIS K7127に準拠して行なった。まず、蓋材の第2領域から、一辺L3の長さ(図16参照)が15mm、一辺L1と直交する方向に延びる他辺L4(図16参照)の長さが100mmの長方形状の試験片S2(図16参照)を切り出した。試験片S2は、他辺L4の延びる方向が延伸プラスチックフィルムの流れ方向(MD)と平行となるように切り出した。MDは、目視によって確認することができた。そして、東洋精機株式会社製のストログラフVG1Fを用いて、温度80℃、相対湿度10%の環境下に試験片S2を1分間保持した後に、温度80℃、相対湿度10%の環境下で把持具間距離D2(図16参照)を50mmとした状態で、引張速度200mm/分で試験片S2を試験片S2の長手方向に引張る引張試験を行い、試験片S2の熱間破断伸度を測定した。そして、5個の試験片S2について、熱間破断伸度を測定し、その平均値を第2領域の熱間破断伸度とした。また、第2領域の常温破断伸度の測定は、温度25℃、相対湿度50%の環境下に試験片S2を1分間保持した後に、温度25℃、相対湿度50%の環境下で行う以外は、熱間破断伸度と同様にして行われた。なお、参考として、蓋材から他辺L2の延びる方向が延伸プラスチックフィルムのMDと直交する方向(TD)と平行になるように切り出した試験片についても、試験片S1と同様にして、熱間破断伸度および常温破断伸度を測定した。
<常温破断強度および熱間破断強度測定>
実施例1~4および比較例1~5に係る蓋付容器の蓋材の第2領域における常温破断伸度および熱間破断強度を測定した。第2領域の熱間破断強度の測定は、第2領域の熱間破断伸度の測定に用いた試験片S1と同様の試験片S1を用い、第2領域の熱間破断伸度の測定に用いた測定装置および測定条件と同様の測定方法装置および測定条件によって行われた。また、第2領域の常温破断強度の測定は、温度25℃、相対湿度50%の環境下に試験片S1を1分間保持した後に、温度25℃、相対湿度50%の環境下で行う以外は、熱間破断強度と同様に行われた。なお、参考として、蓋材から他辺L3の延びる方向が延伸プラスチックフィルムのMDと直交する方向(TD)と平行になるように切り出した試験片についても、試験片S1と同様にして、熱間破断強度および常温破断強度を測定した。
<熱間ラミネート強度測定>
実施例1~4および比較例1~5に係る蓋付容器の蓋材の第1領域の熱間ラミネート強度を測定し、また第2領域のラミネート強度を測定した。まず、蓋材の第2領域から、一辺L5(図18参照)の長さが15mm、一辺L3と直交する方向に延びる他辺L4(図18参照)が50mmの長方形状の試験片S3(図18参照)を切り出した。そして、図19に示されるように試験片S3の長手方向において15mm剥離させた。その後、東洋精機株式会社製のストログラフVG1Fを用いて、試験片S3の熱間ラミネート強度を測定した。具体的には、まず、図20に示されるように把持具で試験片S3の長手方向の既に剥離されている両端部を把持した。そして、温度80℃、相対湿度10%の環境下に試験片S2を1分間保持した後に、温度80℃、相対湿度10%の環境下で把持具間距離D3(図20参照)を30mmとした状態で、把持具をそれぞれ延伸プラスチックフィルムとポリエチレン層がまだ積層されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きになり、かつ把持具間距離D3が60mmとなるまで、引張速度50mm/分で引張り、領域B(図21参照)における引張応力の平均値を、試験片S2の熱間ラミネート強度した。そして、5個の試験片S3について、熱間ラミネート強度を測定し、その平均値を第2領域の熱間ラミネート強度とした。
また、第1領域の熱間ラミネート強度も、第2領域の熱間ラミネート強度と同様の方法によって測定した。ただし、第1領域の熱間ラミネート強度を測定する際の試験片S4(図22参照)は、第1領域を含むように切り取られるが、第1領域の他、第2領域を含んでいた。試験片S4は、試験片S3と同様の大きさのものであった。試験片S4が第1領域のみならず第2領域を含む場合においても、試験片S4の長手方向において15mm剥離させるが、剥離は、第1領域側の端部とは反対側の端部から行った。そして、領域D(図25参照)における引張応力の平均値を、試験片S4の熱間ラミネート強度とした。5個の試験片S4について、熱間ラミネート強度を測定し、その平均値を第1領域の熱間ラミネート強度した。
<蒸気抜け評価>
実施例1~4および比較例1~5に係る蓋付容器において、蒸気抜き評価を行った。まず、蓋付容器を5個ずつ用意した。そして、電子レンジ(型番「NE-M253」、Panasonic株式会社製)に蓋付容器の底面が下側となった状態で入れて、600Wで3分間加熱した。そして、加熱中の蓋付容器において、第1領域から自動的に蒸気が抜けたか否かをそれぞれ評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:5回中4回以上、第1領域から正常に蒸気が抜けた。
×:5回中1~3回第1領域から正常に蒸気が抜けた、または1回も第1領域から蒸気が抜けなかった。
以下、表1および表2に蓋材の構成を示し、表3に結果を示す。
以下、結果について述べる。表3に示されるように、比較例1~5に係る蓋付容器においては、蒸気が抜けたときの圧力が105kPaを超えており、実施例1~3に係る蓋付容器においては、蒸気が抜けたときの圧力が105kPa以下であった。
表4に示されるように、比較例1、2に係る蓋材においては、蓋材の第2領域の熱間破断伸度が125%を超えていたので、第1領域から蒸気が抜けないことがあった。これに対し、実施例1に係る蓋付容器においては、蓋材の第2領域の熱間破断伸度が125%以下であったので、第1領域から正常に蒸気を抜くことができた。
また、表4に示されるように、比較例3に係る蓋付容器においては、蓋材の第2領域の熱間破断伸度が140%を超えていたので、第1領域から蒸気が抜けないことがあった。これに対し、実施例2に係る蓋付容器においては、蓋材の第2領域の熱間破断伸度が140%以下であったので、第1領域から正常に蒸気を抜くことができた。
また、表4に示されるように、比較例3~5に係る蓋付容器においては、蓋材の第2領域の熱間破断伸度が第2領域の常温破断伸度よりも高かったので、第1領域から蒸気が抜けないことがあった。これに対し、実施例4、5に係る蓋付容器においては、蓋材の第2領域の熱間破断伸度が第2領域の常温破断伸度よりも低かったので、第1領域から正常に蒸気を抜くことができた。