本発明の一態様の細胞懸濁液処理装置は、細胞を濃縮処理および洗浄処理する細胞懸濁液処理装置であって、細胞懸濁液を貯留する貯留容器、細胞懸濁液をろ過して濃縮する中空糸膜フィルタ、前記貯留容器の出口ポートと前記中空糸膜フィルタの入口ポートとを接続する第1の接続チューブ、および、前記中空糸膜フィルタの出口ポートと前記貯留容器の入口ポートとを接続する第2の接続チューブを含む循環回路と、前記第1の接続チューブから分枝して細胞懸濁液供給源に接続する第1の分枝チューブと、前記第2の接続チューブから分枝して置換液供給源に接続する第2の分枝チューブと、前記第1または第2の接続チューブに設けられるローラポンプと、前記第1の分枝チューブをピンチする第1のピンチデバイスと、前記第2の分枝チューブをピンチする第2のピンチデバイスと、を有し、前記細胞懸濁液供給源から前記循環回路に細胞懸濁液を供給するときは、前記第2のピンチデバイスが前記第2の分枝チューブをピンチして閉塞し、前記置換液供給源から前記循環回路に置換液を供給するときは、前記第1のピンチデバイスが前記第1の分枝チューブをピンチして閉塞する。
この態様によれば、貯留容器、ポンプ、および中空糸膜フィルタを少なくとも含む循環回路を用いる細胞の濃縮処理および洗浄処理において、循環回路を流れる細胞懸濁液の脈動を抑制することができる。
前記第1および第2の分枝チューブの少なくとも一方が、その分枝点を通過する細胞懸濁液の流れ方向に対して直交方向に前記分枝点から延在してもよい。
前記第1および第2の分枝チューブの少なくとも一方が、その分枝点を通過する細胞懸濁液の流れ方向に対して斜め後方に前記分枝点から延在してもよい。
前記第1および第2の分枝チューブの少なくとも一方が、その分枝点を通過する細胞懸濁液の流れ方向に対して上方向に前記分枝点から延在してもよい。
前記第1および第2のピンチデバイスそれぞれが、ピンチバルブまたは鉗子であってもよい。
前記第1および第2の分枝チューブが、複数のピンチ位置を示す複数のインジケータを備えてもよい。
本発明の別態様の細胞濃縮洗浄回路は、細胞を濃縮処理および洗浄処理するための細胞濃縮洗浄回路であって、細胞懸濁液を貯留する貯留容器、細胞懸濁液をろ過して濃縮する中空糸膜フィルタ、前記貯留容器の出口ポートと前記中空糸膜フィルタの入口ポートとを接続する第1の接続チューブ、および、前記中空糸膜フィルタの出口ポートと前記貯留容器の入口ポートとを接続する第2の接続チューブを含む循環回路と、前記第1の接続チューブから分枝して細胞懸濁液供給源に接続する第1の分枝チューブと、前記第2の接続チューブから分枝して置換液供給源に接続する第2の分枝チューブと、を有する。
この態様によれば、貯留容器、ポンプ、および中空糸膜フィルタを少なくとも含む循環回路を用いる細胞の濃縮処理および洗浄処理において、循環回路を流れる細胞懸濁液の脈動を抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者(ら)は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
図1~図9は、本発明の一実施の形態に係る細胞懸濁液処理装置の外観を示している。
具体的には、図1は、細胞懸濁液処理装置の前方斜視図である。図2は、異なる視点から見た、細胞懸濁液処理装置の前方斜視図である。図3は、細胞懸濁液処理装置の後方斜視図である。図4は、異なる視点から見た、細胞懸濁液処理装置の後方斜視図である。図5は、細胞懸濁液処理装置の正面図である。図6は、細胞懸濁液処理装置の背面図である。図7は、細胞懸濁液処理装置の右側面図である。図8は、細胞懸濁液処理装置の左側面図である。そして、図9は、細胞懸濁液処理装置の平面図である。
なお、図面においてX-Y-Z直交座標系が示されているが、これは発明の実施の形態の理解を容易にするためのものであって発明を限定するものではない。また、X軸方向は細胞懸濁液処理装置の前後方向であって、Y軸方向は左右方向であって、Z軸方向は高さ方向である。「左右」に関しては、細胞懸濁液処理装置の正面視を基準とする。
図1~図9に示す本実施の形態に係る細胞懸濁液処理装置10は、細胞懸濁液処理として細胞を濃縮処理および洗浄処理するための装置である。なお、図1~図9は、細胞懸濁液処理に使用するバッグやチューブなどを取り付ける前の状態の細胞懸濁液処理装置10、すなわち細胞懸濁液処理装置10の本体を示している。「細胞懸濁液」は、例えば血小板や巨核球などの細胞が、液状の培地に懸濁したものを言う。なお、本発明の実施の形態は、細胞や培地を限定しない。
また、「濃縮」処理は、細胞懸濁液内の細胞の濃度が上昇するように細胞懸濁液をろ過して培地成分を取り除く処理を言う。さらに、「洗浄」処理は、濃縮された細胞懸濁液の培地成分を、例えば生理食塩水または緩衝効果のある生理食塩水または重炭酸リンゲル液(ビカネイト輸液;大塚製薬工場社製)などのリンゲル液または重炭酸リンゲル液に血液保存液(ACD-A液;テルモ社製)若しくはACD-A液およびヒト血清アルブミン製剤(HAS;CSLベーリング社製)などのアルブミン若しくはACD-A液、ヒト血清アルブミン製剤および抗酸化剤を加えた溶液などの置換液に置換する処理を言う。
図1~図9に示すように、本実施の形態に係る細胞懸濁液処理装置10は、ベース部12と、ベース部12上に設けられた柱体部14と、柱体部14に設けられた第1および第2のアーム部16A、16Bとから構成されている。
細胞懸濁液処理装置10のベース部12は、机状の構造体であって、複数のキャスター18を備える。複数のキャスター18により、細胞懸濁液処理装置10全体は移動可能である。また、複数のキャスター18を介して移動する細胞懸濁液処理装置10をユーザが操作するためのハンドル20が、ベース部12の左側部分に設けられている。これにより、細胞懸濁液処理装置10のレイアウト変更を容易に行うことができる。
細胞懸濁液処理装置10の柱体部14は、ベース部12上に設けられ、ベース部12から上方向(Z軸方向)に延在する柱体状の構造体である。詳細は、後述するが、この柱体部14の正面に、細胞を処理するための細胞処理回路、具体的には細胞を濃縮処理および洗浄処理するための細胞濃縮洗浄回路が設けられる。
細胞懸濁液処理装置10の第1および第2のアーム部16A、16Bは、柱体部14の上部から横方向、本実施の形態の場合には水平方向(Y軸方向)に延在している。第1のアーム部16Aは右方向に延在し、第2のアーム部16Bは左方向に延在している。詳細は後述するが、第1および第2のアーム部16A、16Bは、細胞の濃縮処理および洗浄処理に使用される複数のバッグが吊り下げ可能に構成されている。
ここからは、細胞を濃縮処理および洗浄処理するための細胞濃縮洗浄回路について説明する。
図10は、一例の細胞濃縮洗浄回路がセッティングされた状態の細胞懸濁液処理装置の正面図である。図11は、一例の細胞濃縮洗浄回路の概略的構成図である。
図11に示すように、細胞濃縮洗浄回路30は、濃縮処理中および洗浄処理中に細胞懸濁液が循環する循環回路32を含んでいる。
循環回路32は、細胞懸濁液をろ過する中空糸膜フィルタ34と、濃縮された細胞懸濁液(濃縮液)が貯留する貯留バッグ36と、貯留バッグ36の出口ポート36bと中空糸膜フィルタ34の入口ポート34aとを接続する第1の接続チューブ38と、中空糸膜フィルタ34の出口ポート34bと貯留バッグ36の入口ポート36aとを接続する第2の接続チューブ40とを有する。
中空糸膜フィルタ34は、循環回路32を循環する細胞懸濁液をろ過して濃縮するデバイスであって、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に交換可能に取り付けられている。また、中空糸膜フィルタ34は、細胞懸濁液が流入するための入口ポート34aと、ろ過されることによって濃縮された細胞懸濁液が流出するための出口ポート34bと、ろ過によって生じたろ過液を排出するためのろ過液排出ポート34cとを備える。その中空糸膜フィルタ34のろ過液排出ポート34cは、接続チューブ42を介してろ過液タンク44に接続されている。
ろ過液タンク44は、図1に示すように、細胞懸濁液処理装置10のベース部12内に配置された台車46に搭載されている。台車46を移動させることにより、ろ過液を収容したろ過液タンク44を適切な場所に移動させることができる。
さらに、本実施の形態の場合、中空糸膜フィルタ34は、プライミングのための充填液を内部に導入するための導入ポート34dを備える。導入ポート34dは、接続チューブ48を介して、プライミングのための充填液を供給するための充填液バッグ50に接続されている。
その充填液バッグ50は、例えば生理食塩水または緩衝効果のある生理食塩水または重炭酸リンゲル液(ビカネイト輸液;大塚製薬工場社製)などのリンゲル液または重炭酸リンゲル液に血液保存液(ACD-A液;テルモ社製)若しくはACD-A液およびヒト血清アルブミン製剤(HAS;CSLベーリング社製)などのアルブミン若しくはACD-A液、ヒト血清アルブミン製剤および抗酸化剤を加えた溶液などの充填液を収容する容器であって、例えば樹脂材料から作製されて可撓性を備える。また、詳細は後述するが、充填液バッグ50は、第1のアーム部16Aに対して吊り下げられる。
貯留バッグ36は、細胞の濃縮処理および洗浄処理中に細胞懸濁液を貯留する容器(貯留容器)であって、例えば樹脂材料から作製されて可撓性を備える。また、詳細は後述するが、貯留バッグ36は、第2のアーム部16Bに対して吊り下げられる。さらに、貯留バッグ36は、中空糸膜フィルタ34からの細胞懸濁液が流入するための入口ポート36aと、中空糸膜フィルタ34に向かって細胞懸濁液が流出するための出口ポート36bとを備える。
第1の接続チューブ38は、透明な樹脂材料から作製された可撓性のチューブであって、貯留バッグ36の出口ポート36bと中空糸膜フィルタ34の入口ポート34aとを接続する。
また、第1の接続チューブ38は、2カ所で分枝している、すなわち2本の分枝チューブ38a、38bが接続されている。一方の分枝チューブ38aは、詳細は後述するが、培養が完了した培養液を収容する容器、すなわち貯留バッグ36に貯留される細胞懸濁液を循環回路32に供給する培養液タンク(細胞懸濁液供給源)52に接続されている。なお、培養液タンク52は、細胞懸濁液処理装置10の外部に配置されている。他方の分枝チューブ38bは、詳細は後述するが、プライミングのための充填液を循環回路32に供給するための充填液バッグ54に接続されている。
この充填液バッグ54は、例えば生理食塩水または緩衝効果のある生理食塩水または重炭酸リンゲル液(ビカネイト輸液;大塚製薬工場社製)などのリンゲル液または重炭酸リンゲル液に血液保存液(ACD-A液;テルモ社製)若しくはACD-A液およびヒト血清アルブミン製剤(HAS;CSLベーリング社製)などのアルブミン若しくはACD-A液、ヒト血清アルブミン製剤および抗酸化剤を加えた溶液などの充填液を収容する容器であって、例えば樹脂材料から作製されて可撓性を備える。また、詳細は後述するが、充填液バッグ54は、第2のアーム部16Bに対して吊り下げられる。
第2の接続チューブ40は、第1の接続チューブ38と同様に、透明な樹脂材料から作製された可撓性のチューブであって、中空糸膜フィルタ34の出口ポート34bと貯留バッグ36の入口ポート36aとを接続する。
また、第2の接続チューブ40は、2カ所で分枝している、すなわち2本の分枝チューブ40a、40bが接続されている。一方の分枝チューブ40aは、濃縮が完了した細胞懸濁液内の細胞を洗浄する置換液、すなわち細胞懸濁液の培地成分と置換される置換液を循環回路32に供給する置換液バッグ(置換液供給源)56に接続されている。他方の分枝チューブ40bは、詳細は後述するが、プライミング後の充填液を回収する廃液バッグ58に接続されている。
置換液バッグ56は、例えば生理食塩水または緩衝効果のある生理食塩水または重炭酸リンゲル液(ビカネイト輸液;大塚製薬工場社製)などのリンゲル液または重炭酸リンゲル液に血液保存液(ACD-A液;テルモ社製)若しくはACD-A液およびヒト血清アルブミン製剤(HAS;CSLベーリング社製)などのアルブミン若しくはACD-A液、ヒト血清アルブミン製剤および抗酸化剤を加えた溶液などの置換液を収容する容器であって、例えば樹脂材料から作製されて可撓性を備える。また、詳細は後述するが、置換液バッグ56は、第1のアーム部16Aに対して吊り下げられている。
廃液バッグ58は、プライミング後の充填液を回収する容器であって、例えば樹脂材料から作製されて可撓性を備える。また、詳細は後述するが、廃液バッグ58は、第2のアーム部16Bに対して吊り下げられている。
循環回路32を含む細胞濃縮洗浄回路30は、細胞の濃縮処理および洗浄処理を実行するために、複数のポンプ60~64、複数のバルブ66~78、複数の圧力センサ80~84、および複数の流量センサ86~88を備える。
細胞濃縮洗浄回路30の循環回路32には、ポンプ60と3つのバルブ66~70とが設けられている。
循環回路32内のポンプ60は、主に循環回路32内で細胞懸濁液を循環させるためのポンプであって、例えばローラポンプである。ポンプ60は、貯留バッグ36に対して細胞懸濁液の循環方向CDの下流側且つ中空糸膜フィルタ34に対して循環方向CDの上流側に配置されている、すなわち第1の接続チューブ38に設けられている。また、ポンプ60は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に取り付けられている。
循環回路32内の3つのバルブ66~70は、例えば、第1および第2の接続チューブ38、40をピンチして閉塞ピンチバルブである。3つのバルブにおいて、2つのバルブ66、68は、第1の接続チューブ38に設けられている。具体的には、バルブ66は2つの分枝チューブ38a、38bそれぞれの分枝点の間に配置され、バルブ68は貯留バッグ36と分枝チューブ38aの分枝点との間に配置されている。残りのバルブ70は、第2の接続チューブ40に設けられ、具体的には分枝チューブ40bの分枝点と貯留バッグ36との間に配置されている。また、これら3つのバルブ66~70は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に取り付けられている。
循環回路32の外部に設けられたポンプ62は、中空糸膜フィルタ34のろ過液をろ過液タンク44に送出するためのポンプであって、例えばローラポンプである。ポンプ62は、中空糸膜フィルタ34のろ過液排出ポート34cとろ過液タンク44とを接続する接続チューブ42に設けられている。また、ポンプ62は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に取り付けられている。
循環回路32の外部に設けられたポンプ64は、置換液バッグ56内の置換液を循環回路32に向かって送出するためのポンプであって、例えばローラポンプである。ポンプ64は、第2の接続チューブ40に接続する分枝チューブ40aに設けられている。また、ポンプ64は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の右側面に取り付けられている。
循環回路32の外部に設けられたバルブ72は、循環回路32と培養液タンク52との間の接続を遮断するバルブであって、例えばピンチバルブである。バルブ72は、第1の接続チューブ38に接続する分枝チューブ38aに設けられている。また、バルブ72は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に取り付けられている。
循環回路32の外部に設けられたバルブ74は、循環回路32と充填液バッグ54との間の接続を遮断するバルブであって、例えばピンチバルブである。バルブ74は、第1の接続チューブ38に接続する分枝チューブ38bに設けられている。また、バルブ74は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に取り付けられている。
循環回路32の外部に設けられたバルブ76は、循環回路32と廃液バッグ58との間の接続を遮断するバルブであって、例えばピンチバルブである。バルブ76は、第2の接続チューブ40に接続する分枝チューブ40bに設けられている。また、バルブ76は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の左側面に取り付けられている。
循環回路32の外部に設けられたバルブ78は、中空糸膜フィルタ34と充填液バッグ50との間の接続を遮断するバルブであって、例えばピンチバルブである。バルブ78は、中空糸膜フィルタ34の導入ポート34dと充填液バッグ50とを接続する接続チューブ48に設けられている。また、バルブ78は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に取り付けられている。
圧力センサ80は、中空糸膜フィルタ34に流入する細胞懸濁液の圧力を検出するためのセンサであって、第1の接続チューブ38に設けられている。具体的には、ポンプ60と中空糸膜フィルタ34との間に配置されている。また、圧力センサ80は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に配置されている。
圧力センサ82は、中空糸膜フィルタ34から流出した細胞懸濁液の圧力を検出するためのセンサであって、第2の接続チューブ40に設けられている。具体的には、中空糸膜フィルタ34と分枝チューブ40aの分枝点との間に、圧力センサ82は配置されている。また、圧力センサ82は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に配置されている。
圧力センサ84は、中空糸膜フィルタ34から排出されたろ過液の圧力を検出するためのセンサであって、中空糸膜フィルタ34とろ過液タンク44とを接続する接続チューブ42に設けられている。具体的には、中空糸膜フィルタ34とポンプ62との間に、圧力センサ84は配置されている。また、圧力センサ84は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に配置されている。
流量センサ86は、中空糸膜フィルタ34から流出した、すなわち濃縮された細胞懸濁液の流量を検出するためのセンサ、例えばクランプオン型のセンサであって、第2の接続チューブ40に設けられている。具体的には、分枝チューブ40aの分枝点と分枝チューブ40bの分枝点との間に、流量センサ86は配置されている。また、流量センサ86は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に取り付けられている。
流量センサ88は、中空糸膜フィルタから排出されたろ過液の流量を検出するためのセンサ、例えばクランプオン型のセンサであって、中空糸膜フィルタ34とろ過液タンク44とを接続する接続チューブ42に設けられている。具体的には、ポンプ62とろ過液タンク44との間に、流量センサ88は配置されている。また、流量センサ88は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に取り付けられている。
図10に示すように、上述で説明した細胞濃縮洗浄回路30の複数の構成要素は、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面(一部は側面)に配置されている。また、置換液バッグ56、充填液バッグ50、廃液バッグ58、充填液バッグ54、および貯留バッグ36は、左右方向(Y軸方向)に並んで設けられている。これにより、ユーザは、細胞懸濁液処理装置10の正面に対向するように位置すると、細胞濃縮洗浄回路30を一目で確認することができる。また、別の観点から言えば、図6に示す柱体部14の背面には、細胞濃縮洗浄回路30の構成要素やバッグが存在しないために、柱体部14の背面を壁に接近した状態で細胞懸濁液処理装置10を設置することができる。
具体的には、図10に示すように、置換液バッグ56、充填液バッグ50、廃液バッグ58、充填液バッグ54、および貯留バッグ36は、第1および第2のアーム部16A、16Bに吊り下げられている。そのために、第1および第2のアーム部16A、16Bは、これらのバッグが吊り下げられる複数のフック90、92を備えている。第1のアーム部16Aにはその延在方向(Y軸方向)に並んで2つのフック90が設けられ、第2のアーム部16Bにはその延在方向(Y軸方向)に並んで2つのフック90と1つのフック92とが設けられている。
本実施の形態の場合、図10に示すように、第1および第2のアーム部16A、16B内には、左右方向(Y軸方向)に延在するビーム94が設けられている。そのビーム94に、左右方向に延在し、複数のフック90を左右方向に移動可能に支持するレール96が設けられている。これにより、複数のフック90それぞれに吊り下げられたバッグ間の距離を容易に調節することができる。
フック92は、他のフック90と異なり、移動可能にビーム94に設けられてはいない。図12に示すように、フック92は、ビーム94の左側端に、重量センサ98を介して取り付けられている。これは、フック92に吊り下げられる貯留バッグ36の重量を重量センサ98によって計測するためと、またその貯留バッグ36が他のバッグに比べて重く大きいため(例えば50リットル)である。なお、フック92と同様に複数のフック90それぞれの位置を固定するために、レール96の所定の位置で固定するためのロックレバー100がフック90それぞれに設けられている。
図10に示すように、最も大きい貯留バッグ36は、第2のアーム部16Bの先端に、フック92を介して吊り下げられている。すなわち、貯留バッグ36は最外に位置する。そのため、移動中のユーザがその貯留バッグ36に接触する可能性がある。その接触を回避するために、例えば図1および図2示すように、ハンドル20が、ベース部12から第2のアーム部16Bの先端の横まで延在している。これにより、貯留バッグ36の外側にハンドル20が展開し、ハンドル20が貯留バッグ36とユーザとの接触を回避するガードとして機能している。
このように細胞の濃縮処理および洗浄処理に使用される複数のバッグが吊り下げ支持されるため、細胞懸濁液処理装置10の設置スペース(フットプリント)をコンパクト化することができる(バッグを寝かせた状態で配置する場合や細胞懸濁液などを収容する複数の容器がバッグでない場合に比べて)。
また、図1および図2に示すように、フック90、92の下方には、すなわちこれらのフック90、92に吊り下げられる貯留バッグ36などの複数のバッグと細胞濃縮洗浄回路30の下方には、ドレインパン102が配置されている。具体的には、ドレインパン102は、平面視(Z軸方向視)で柱体部14をその背面を除いて囲む形状(すなわちブラケット形状)を備え、ベース部12に着脱可能に載置されている。これにより、ドレインパン102は、貯留バッグ36、置換液バッグ56、または細胞濃縮洗浄回路30から漏れ出た細胞懸濁液を受け止めることができる。その結果、漏れ出た細胞懸濁液が、細胞懸濁液処理装置10が設置された室内の床に落ちることが抑制される。なお、ドレインパン102は、細胞懸濁液処理装置10のベース部12から着脱可能であるため、細胞懸濁液処理装置10の設置場所と異なる場所で洗浄可能である。また、複数のドレインパン102を用意すれば、細胞懸濁液処理装置10を高い稼働率で使用することができる。
細胞濃縮洗浄回路30を用いた細胞の濃縮処理および洗浄処理は、自動的に実行される。
図13は、細胞懸濁液処理装置の制御系を示すブロック図である。
図13に示すように、細胞懸濁液処理装置10は、複数のポンプ60~64と複数のバルブ66~78とを制御するコントローラ120を有する。コントローラ120は、例えばCPUが搭載された制御基板である。コントローラ120には、記憶デバイス122と、ユーザインターフェースであるタッチスクリーンディスプレイ124とが接続されている。タッチスクリーンディスプレイ124は、図10に示すように、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14の正面に取り付けられている。
コントローラ120は、メモリ、ハードディスクなどの記憶デバイス122に記憶されたプログラムにしたがって、細胞の濃縮処理および洗浄処理に必要な制御を複数のポンプ60~64と複数のバルブ66~78に対して実行する。また、複数の圧力センサ80~84、複数の流量センサ86~88、および重量センサ98の検出結果に基づいて、コントローラ120は、複数のポンプ60~64と複数のバルブ66~78とを制御する。そして、コントローラ120は、複数のセンサの検出結果、現在実行中の制御(処理工程)などの情報を、タッチスクリーンディスプレイ124を介してユーザに提示する。
ここからは、コントローラ120が実行する細胞の濃縮処理および洗浄処理について、図14A~図14Kを参照しながら説明する。
まず、コントローラ120による細胞の濃縮処理および洗浄処理が開始される前に、前準備として、細胞濃縮洗浄回路30のセッティングがユーザによって行われる。
前準備として、図10に示すように、ユーザにより、複数の接続チューブ38、40、42、48と、複数の圧力センサ80~84が、細胞懸濁液処理装置10の柱体部14上の複数のポンプ60~64、複数のバルブ66~78、および複数の流量センサ86、88に取り付けられる。これらの複数の接続チューブおよび圧力センサは、シングルユースであるため、細胞の処理を実行する度に交換される。
次に、図10に示すように、ユーザにより、充填液バッグ50と置換液バッグ56が、第1のアーム部16Aにフック90を介して吊り下げられる。また、廃液バッグ58、充填液バッグ54、および貯留バッグ36が、第2のアーム部16Bにフック90、92を介して吊り下げられる。なお、このとき、貯留バッグ36と廃液バッグ58は空である。
続いて、図10および図11に示すように、ユーザにより、複数のバッグ36、50、54、56、および58が、循環回路32に接続される。また、第1の接続チューブ38に接続する分枝チューブ38aが細胞懸濁液処理装置10の外部に位置する培養液タンク52に接続される。さらに、中空糸膜フィルタ34のろ過液排出ポート34cに接続された接続チューブ42がろ過液タンク44に接続される。
そして、ユーザにより、タッチスクリーンディスプレイ124を介して、細胞の濃縮処理および洗浄処理に関する条件、例えばポンプ60~64の回転速度、濃縮時間、洗浄時間などが設定される。
前準備が完了してタッチスクリーンディスプレイ124に対してユーザから開始の指示が入力されると、コントローラ120は、第1の処理工程として、中空糸膜フィルタ34における中空糸膜内を洗浄する処理工程を実行する。そのために、図14Aに示すように、コントローラ120は、バルブ74、76のみを開弁状態にし、ポンプ60のみを作動状態にする。なお、図中において破線で示すポンプは停止状態であって、破線で示すバルブは閉弁状態である。
第1の処理工程の実行中、充填液バッグ54内の充填液が入口ポート34aを介して中空糸膜フィルタ34内に流入し、中空糸膜フィルタ34の出口ポート34bから流出した充填液が廃液バッグ58内に入る。これにより、中空糸膜内が洗浄される。
次に、第2の処理工程として、コントローラ120は、中空糸膜フィルタ34における中空糸膜の外側の空間、すなわち中空糸膜とそれを収容するカートリッジとの間の空間(中空糸膜を通過したろ過液が流れる空間)を洗浄する処理工程を実行する。そのために、図14Bに示すように、コントローラ120は、バルブ78のみを開弁状態にし、ポンプ62のみを作動状態にする。それにより、充填液バッグ50内の充填液が導入ポート34dを介して中空糸膜フィルタ34のカートリッジ内に流入し、そのカートリッジ内の空間を通過した充填液がろ過液排出ポート34cから流出してろ過液タンク44内に入る。これにより、中空糸膜フィルタのカートリッジ内部(中空糸膜の外部)が洗浄される。
次に、第3の処理工程として、コントローラ120は、中空糸膜フィルタ34から貯留バッグ36までの回路(すなわち第2の接続チューブ40)のエア抜き処理工程を実行する。そのために、図14Cに示すように、コントローラ120は、バルブ70、74のみを開弁状態にし、ポンプ60のみを作動状態にする。それにより、充填液バッグ54内の充填液が中空糸膜フィルタ34内に流入し、中空糸膜フィルタ34から流出した充填液が貯留バッグ36内に入る。これにより、中空糸膜フィルタ34から貯留バッグ36までの回路から空気が取り除かれる(その回路に充填液が充満する)。
第3の処理工程に続く第4の処理工程として、コントローラ120は、貯留バッグ36から培養液タンク52までの回路のエア抜き処理工程を実行する。そのために、図14Dに示すように、コントローラ120は、バルブ68、70、72,74のみを開弁状態にし、ポンプ60のみを作動状態にする。それにより、充填液バッグ54内の充填液が中空糸膜フィルタ34を通過して貯留バッグ36内に入り、貯留バッグ36内の充填液が培養液タンク52に入る。これにより、貯留バッグ36から培養液タンク52までの回路から空気が取り除かれる(その回路に充填液が充満する)。
次に、第5の処理工程として、コントローラ120は、細胞濃縮洗浄回路30によって処理される細胞懸濁液(培養液)を貯留バッグ36に供給する処理工程を実行する。そのために、図14Eに示すように、コントローラ120は、バルブ66、70、72のみを開弁状態にし、ポンプ60のみを作動状態にする。それにより、培養液タンク52内の細胞懸濁液が中空糸膜フィルタ34をろ過されることなく通過し、貯留バッグ36に貯留される。
第5の処理工程に続く第6の処理工程として、コントローラ120は、引き続き、細胞懸濁液(培養液)を貯留バッグ36に供給する処理工程を実行する。このとき、細胞懸濁液は、中空糸膜フィルタ34でろ過されつつ貯留バッグ36に供給される。そのために、図14Fに示すように、コントローラ120は、バルブ66、70、72のみを開弁状態にし、ポンプ60、62のみを作動状態にする。それにより、培養液タンク52内の細胞懸濁液が中空糸膜フィルタ34によってろ過され、ろ過された細胞懸濁液が貯留バッグ36に貯留される。
この第6の処理工程において、第2の接続チューブ40に接続する分枝チューブ40aは、培養液タンク52から貯留バッグ36に向かう細胞液懸濁液の脈動(圧力変動)を抑制するアキュムレータとして機能する。
具体的に説明すると、2つのポンプ60、62が作動することにより、細胞懸濁液に脈動が生じる。その対策として、アキュムレータ化するために、第2の接続チューブ40に接続する分枝チューブ40aは、図15に示すように、鉗子130などのピンチデバイスによってピンチされて閉塞される。それにより、分枝チューブ40aにおいて分枝点から閉塞位置までの部分132がアキュムレータ化される。すなわち、このアキュムレータ132内の空気が、細胞懸濁液の圧力変動を吸収し、それにより圧力変動を抑制する。
第2の接続チューブ40の分枝チューブ40aがアキュムレータ132として機能することによる効果を説明する。
図16は、アキュムレータが存在する場合(実施例)と存在しない場合(比較例)とにおける、循環回路に供給中の細胞懸濁液の圧力変動を示す図である。
図16に示す圧力は、中空糸膜フィルタ34の入口ポート34aでの圧力、すなわち圧力センサ80の検出圧力である。図16に示すように、アキュムレータが存在する場合(実施例)とアキュムレータが存在しない場合(比較例)の両方で圧力は変動するものの、比較例の方が変動幅が大きい。また、3σ値(3シグマ値)を計算した場合、実施例が約1.84kPaで比較例が約2.65kPaである。すなわち、実施例の方が細胞懸濁液の圧力変動の程度が小さい。
このようなアキュムレータ132により、培養液タンク52から貯留バッグ36に向かって流れる細胞懸濁液の脈動(圧力変動)が抑制され、それによりその細胞懸濁液内の細胞が脈動によって損傷することが抑制される。
なお、アキュムレータ132(すなわち分枝チューブ40a)内への細胞懸濁液の流入を抑制するために、図10の領域Aに示すように、分枝チューブ40aは、その分枝点を通過する細胞懸濁液の流れ方向に対して斜め後方に分枝点から延在している。
また、分枝チューブ40aをアキュムレータ132として機能させるためにその分枝チューブ40aをピンチして閉塞するピンチデバイスは、図15に示す鉗子130に限らない。ピンチデバイスは、例えばピンチバルブであってもよい。
ピンチデバイスが鉗子130である場合、鉗子130がピンチして閉塞する分枝チューブ40aの部分を変更可能である。したがって、細胞懸濁液の脈動のモードが異なっていても、鉗子130が適切な分枝チューブ40aの部分をピンチして閉塞すれば、その脈動を適切に抑制することができる。好ましくは、鉗子130がピンチする分枝チューブ40aの部分を記録するために、例えば、目盛が分枝チューブ40aに付されてもよい。これにより、分枝チューブ40aは、鉗子130によってピンチされる複数のピンチ位置を示す複数のインジケータを備える。鉗子130によってピンチされる分枝チューブ40aの部分を記録することにより、実質的に同一の細胞懸濁液処理を高い再現性で実行することができる。
第6の処理工程によって貯留バッグ36に所定量の細胞懸濁液が貯留すると、すなわち重量センサ98が所定量に対応する所定の重量を検出すると、コントローラ120は、第6の処理工程を終了し、第7の処理工程を開始する。図14Gに示すように、第7の処理工程では、細胞懸濁液は、循環回路32を循環しつつ中空糸膜フィルタ34のろ過によって濃縮される。そのために、コントローラ120は、バルブ66、68、70のみを開弁状態にし、ポンプ60、62のみを作動状態にする。それにより、貯留バッグ36内の細胞懸濁液が、中空糸膜フィルタ34によってろ過され、ろ過によって濃縮された細胞懸濁液が貯留バッグ36に戻される。この第7の処理工程中、細胞懸濁液の濃縮によって貯留バッグ36の重量は減少していく。また、ろ過液がろ過液タンク44に送られる。
第7の処理工程によって細胞懸濁液が所定の濃度に達すると、すなわち重量センサ98が所定の濃度に対応する所定の重量を検出すると、コントローラ120は、第7の処理工程を終了し、第8の処理工程を開始する。図14Hに示すように、第8の処理工程では、細胞懸濁液は、中空糸膜フィルタ34によってろ過されることなく、循環回路32を循環する。この第8の処理工程は、数分間、例えば1分間実行される。そのために、コントローラ120は、バルブ66、68、70のみを開弁状態にし、ポンプ60のみを作動状態にする。
第8の処理工程が終了すると、コントローラ120は、ポンプ60を停止させて循環回路32での細胞懸濁液の循環を終了させる。このとき、循環回路32、すなわち第1および第2の接続チューブ38、40内には、濃縮された細胞懸濁液、すなわち細胞が残っている。
この第1および第2の接続チューブ38、40内に残った細胞を貯留バッグ36に回収するために、第9の処理工程が行われる。この第9の処理工程では、図14Iに示すように、コントローラ120は、バルブ70、74のみを開弁状態にし、ポンプ60のみを作動状態にする。これにより、充填液バッグ54の充填液が循環回路32内に供給され、その供給された充填液が中空糸膜フィルタ34を通過して貯留バッグ36に向かう。このように流れる充填液が、ポンプ60から貯留バッグ36の入口ポート36aまでの循環回路32の部分に残る細胞懸濁液を貯留バッグ36に向かって押し流す。その結果、第8の処理工程後、すなわち濃縮処理後に循環回路32に残る細胞が貯留バッグ36に回収される。
なお、循環回路32に残る細胞を回収するために循環回路32に供給される充填液が貯留バッグ36内に入ると、貯留バッグ36内の所定の濃度に濃縮された細胞懸濁液の濃度が低下する。そのために、充填液が貯留バッグ36内に入る直前に、循環回路32への充填液の供給が停止される(ポンプ60が停止してバルブ74が閉じる)。
例えば、ポンプ60の吐出能力と、充填液バッグ54から貯留バッグ36までの流路長さ、チューブの内径などに基づいて、充填液バッグ54内の充填液が貯留バッグ36に到達するまでに要する充填液到達時間が予め算出される。充填液バッグ54の充填液の循環回路32への供給タイミングから充填液到達時間が経過すると、充填液の供給が停止される。
また例えば、細胞懸濁液と充填液とが区別可能である場合、貯留バッグ36の入口ポート36a近傍に、循環回路32(すなわち第2の接続チューブ40)内の細胞懸濁液の色および/または濁度を検出するための光学センサが設けられる。
細胞懸濁液がフェノールレッドによって赤色に着色され、充填液が透明である場合、光学センサの検出領域である貯留バッグ36の入口ポート36a近傍に充填液が到達するとい、その光学センサは細胞懸濁液の色の変化(赤色から異なる色への変化)を検出する。
また、濃縮されて所定の濃度の細胞懸濁液の濁度が高い場合、光学センサの検出領域である貯留バッグ36の入口ポート36a近傍に充填液が到達すると、その光学センサは濁度の変化を検出する。
光学センサが細胞懸濁液の色および/または濁度の変化を検出すると、コントローラ120は、ポンプ60を停止して充填液バッグ54から循環回路32への充填液の供給を停止する。
ポンプ60から貯留バッグ36の入口ポート36aまでの循環回路32の部分に残る細胞の貯留バッグ36への回収が終了すると、コントローラ120は、第10の処理工程を実行する。第10の処理工程では、貯留バッグ36の出口ポート36bからポンプ60までの循環回路32の部分に残る細胞の回収が行われる。そのために、図14Jに示すように、コントローラ120は、バルブ66、68、78のみを開弁状態にし、ポンプ60のみを作動状態にする。ただし、コントローラ120は、細胞濃縮工程(図14Gに示す第7の処理工程)時の流れ方向(循環方向CD)とは反対方向に細胞懸濁液を押し流すために、ポンプ60を逆転駆動させる(ローラポンプのローターが逆転する)。これにより、充填液バッグ50の充填液が中空糸膜フィルタ34に供給され、その供給された充填液が中空糸膜フィルタ34の入口ポート34aから流出し、その流出した充填液が貯留バッグ36の出口ポート36bに向かって流れる。このように流れる充填液が、貯留バッグ36の出口ポート36bからポンプ60までの循環回路32の部分に残る細胞懸濁液を貯留バッグ36に向かって押し流す。これにより、第8の処理工程後、すなわち濃縮処理後に循環回路32に残る細胞が貯留バッグ36に回収される。
なお、先の第9の処理工程と同様の方法(例えば光学センサを用いる方法)により、充填液バッグ50の充填液の循環回路32への供給が、その充填液が貯留バッグ36内に出口ポート36bを介して入る前に停止される。
循環回路32に残る細胞の回収が終了すると(第9および第10の処理工程が終了すると)、第11の処理工程として、コントローラ120は、細胞の洗浄処理を実行する。そのために、図14Kに示すように、コントローラ120は、バルブ66、68、70のみを開弁状態にし、全てのポンプ60、62、64を作動状態にする。これにより、濃縮された細胞懸濁液が循環する循環回路32に置換液バッグ56の置換液が供給され、細胞懸濁液と置換液の混合液が中空糸膜フィルタ34によってろ過される。最終的には、細胞懸濁液の培地成分が置換液に置き換わり、細胞が洗浄される。そして、この第11の処理工程が終了すると、コントローラ120による細胞の濃縮処理および洗浄処理の全工程が完了する。
この第11の処理工程において、第1の接続チューブ38の分枝チューブ38aは、循環回路32内を置換液とともに循環する細胞液懸濁液の脈動(圧力変動)を抑制するアキュムレータとして機能する。
具体的に説明すると、図14Kに示すように、3つのポンプ60、62、64が作動することにより、循環回路32を循環する細胞懸濁液に脈動が生じる。その対策として、アキュムレータとして機能するために、第1の接続チューブ38に接続する分枝チューブ38aは、ピンチデバイスであるバルブ72にピンチされて閉塞される。それにより、分枝チューブ38aにおいて分枝点から閉塞位置までの部分134がアキュムレータ化される。
図17は、アキュムレータが存在する場合(実施例)と存在しない場合(比較例)とにおける、細胞洗浄中の細胞懸濁液の圧力変動を示す図である。
図17に示す圧力は、中空糸膜フィルタ34の入口ポート34aでの圧力、すなわち圧力センサ80の検出圧力である。図17に示すように、アキュムレータが存在する場合(実施例)とアキュムレータが存在しない場合(比較例)の両方で圧力は変動するものの、比較例の方が変動幅が大きい。また、3σ値(3シグマ値)を計算した場合、実施例が約1.91kPaで比較例が約2.54kPaである。すなわち、実施例の方が細胞懸濁液の圧力変動の程度が小さい。
このようなアキュムレータ134により、細胞洗浄中の細胞懸濁液の脈動(圧力変動)が抑制され、それによりその細胞懸濁液内の細胞が脈動によって損傷することが抑制される。
なお、アキュムレータ134(すなわち分枝チューブ38a)内への細胞懸濁液の流入を抑制するために、図10の領域Bに示すように、分枝チューブ38aは、その分枝点を通過する細胞懸濁液の流れ方向に対して直交方向に分枝点から延在している。
また、分枝チューブ38aをアキュムレータ134として機能させるためにその分枝チューブ38aをピンチして閉塞するピンチデバイスは、鉗子であってもよい。
分枝チューブ38aをピンチするピンチデバイスが鉗子である場合、鉗子がピンチして閉塞する分枝チューブ38aの部分を変更可能である。また、好ましくは、鉗子がピンチする分枝チューブ38aの部分を記録するために、例えば、目盛が分枝チューブ38aに付されてもよい。これにより、分枝チューブ38aは、鉗子によってピンチされる複数のピンチ位置を示す複数のインジケータを備える。
このような本実施の形態によれば、貯留容器、ポンプ、および中空糸膜フィルタを少なくとも含む循環回路を用いる細胞の濃縮処理および洗浄処理において、循環回路を流れる細胞懸濁液の脈動を抑制することができる。その結果、細胞懸濁液内の細胞の損傷を抑制することができる。
具体的には、図14Fに示すように、細胞懸濁液供給源である培養タンク52から循環回路32に細胞液懸濁液を供給するときには、ピンチデバイスである鉗子130によって閉塞された分枝チューブ40aがアキュムレータ化する(アキュムレータ132が形成される)。このアキュムレータ132により、循環回路32に供給されている細胞懸濁液の脈動が抑制される。
また、図14Kに示すように、置換液供給源である置換液バッグ56から循環回路32に置換液を供給するときには、ピンチデバイスであるバルブ72によって閉塞された分枝チューブ38aがアキュムレータ化する(アキュムレータ134が形成される)。このアキュムレータ134により、循環回路32内を置換液とともに循環している細胞懸濁液の脈動が抑制される。
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らない。
例えば、上述の実施の形態の場合、図11に示すように、循環回路32において細胞懸濁液を循環させるローラポンプであるポンプ60は、第1の接続チューブ38に設けられている。これに代わって、ポンプ60は第2の接続チューブ40に設けることも可能である。
また例えば、上述の実施の形態の場合、図10の領域Aに示すように、分枝チューブ40aは、接続チューブ40との分枝点を通過する細胞懸濁液の流れ方向に対して斜め後方にその分枝点から延在している。また、図10の領域Bに示すように、分枝チューブ38aは、接続チューブ38との分枝点を通過する細胞懸濁液の流れ方向に対して直交方向にその分枝点から延在している。これらにより、アキュムレータとして機能する分枝チューブ38a、40aへの細胞懸濁液の流入を抑制している。しかしながら、本発明の実施の形態は、これに限らない。すなわち、分枝チューブ38a、38bは、その分枝点を流れる細胞懸濁液の流れ方向に対して斜め後方、直交方向、あるは上方向にその分枝点から延在すれば、細胞懸濁液の流入を抑制することができる。
すなわち、本発明の実施の形態に係る細胞懸濁液処理装置は、広義には、細胞を濃縮処理および洗浄処理する細胞懸濁液処理装置であって、細胞懸濁液を貯留する貯留容器、細胞懸濁液をろ過して濃縮する中空糸膜フィルタ、前記貯留容器の出口ポートと前記中空糸膜フィルタの入口ポートとを接続する第1の接続チューブ、および、前記中空糸膜フィルタの出口ポートと前記貯留容器の入口ポートとを接続する第2の接続チューブを含む循環回路と、前記第1の接続チューブから分枝して細胞懸濁液供給源に接続する第1の分枝チューブと、前記第2の接続チューブから分枝して置換液供給源に接続する第2の分枝チューブと、前記第1または第2の接続チューブに設けられるローラポンプと、前記第1の分枝チューブをピンチする第1のピンチデバイスと、前記第2の分枝チューブをピンチする第2のピンチデバイスと、を有し、前記細胞懸濁液供給源から前記循環回路に細胞懸濁液を供給するときは、前記第2のピンチデバイスが前記第2の分枝チューブをピンチして閉塞し、前記置換液供給源から前記循環回路に置換液を供給するときは、前記第1のピンチデバイスが前記第1の分枝チューブをピンチして閉塞する。
また、本発明の実施の形態に係る細胞濃縮洗浄回路は、広義には、細胞を濃縮処理および洗浄処理するための細胞濃縮洗浄回路であって、細胞懸濁液を貯留する貯留容器、細胞懸濁液をろ過して濃縮する中空糸膜フィルタ、前記貯留容器の出口ポートと前記中空糸膜フィルタの入口ポートとを接続する第1の接続チューブ、および、前記中空糸膜フィルタの出口ポートと前記貯留容器の入口ポートとを接続する第2の接続チューブを含む循環回路と、前記第1の接続チューブから分枝して細胞懸濁液供給源に接続する第1の分枝チューブと、前記第2の接続チューブから分枝して置換液供給源に接続する第2の分枝チューブと、を有する。
図示した実施形態を、再度、大略的に説明すると以下の通りである。
「細胞懸濁液処理装置の本体」が、濾過フィルタ34を正面ほぼ中央部に備えている。例えば参考図(図10)に示したように、当該装置本体に対して各種バッグを吊り下げるとともに、チューブ材を用いて各種バッグと濾過フィルタを配管することで、細胞懸濁液処理装置が構成される。細胞懸濁液処理装置は、血小板や巨核球などの細胞が液状の培地に懸濁した細胞懸濁液を、濃縮処理および洗浄処理するための装置であって、例えば次のように使用する。まず、バッグ50、54に収容したプライマ剤を循環させることで、フィルタおよび配管内部を清浄化する(なお、使用後のプライマ剤は、廃液としてバッグ58に回収される)。次に、培養済みの細胞懸濁液(培養液)を、チューブ38aを介して外部からバッグ36に供給する。そして、循環回路32内で細胞懸濁液を循環させつつ、フィルタ34でろ過(濃縮)する(なお、ろ過液は、ろ過液タンク44に送られる)。最後に、濃縮された細胞懸濁液を循環回路32内で循環させながら、バッグ56内の置換液を供給し、細胞懸濁液の培地成分を置換液に置き換える。このようにして、細胞の濃縮処理および洗浄処理の全工程が完了する。
以上のように、本発明における技術の例示として、複数の実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。