JP7296925B2 - 鉄道車両のスロープ装置 - Google Patents

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Description

本発明は鉄道車両において、車いすでの乗降を可能にするために、車両内とプラットフォームの間に渡り板となるスロープを設置するスロープ装置であって、車両内側に載置されるスロープ装置に関するものである。
現在鉄道車両に車いすで乗降する場合は、乗車駅と降車駅とで、連絡を取り合い、それぞれの駅で、乗車および降車の際に、プラットフォームと車両内をつなぐスロープを駅員が設置する場合がある。このスロープは、車いすでの乗降がある都度、駅員が設置を行うので、手間としては大きいといえる。
特許文献1には、車両内とプラットフォームとの間の隙間を埋める補助ステップに関する発明が開示されている。ここでは補助ステップは、乗降扉の外側か、乗降口の床下に配置し、乗降扉が開く前に展開されることが記載されている。
特許文献2は、スロープを車両内に取り付けたもので、車両内床面に、車両長手方向に沿って設けられたスレイドレールと、このスライドレールに沿って、乗降口の一側端部から乗降口側にスライド可能なスライダと、このスライダに対しヒンジ状に回転可能に取り付けられ、乗降口の前記側端部への収納状態で略垂直に立てられると共に、乗降口へスライドされた状態で、車両外プラットフォーム側に倒されるスライド板で構成される。
特開平3-016872号公報 特開2002-347607号公報
特許文献1では乗降客が車両内とプラットフォームとの隙間に落下しないことを意図し、車いすに対する検討はされていない。つまり、車両内と補助ステップとの段差については考慮されていない。
特許文献2では、車両内からプラットフォームへの隙間の充填および段差の補間については、考慮されているものの、スロープから車両内への段差については、小さな傾斜部が設けられているだけである。このような傾斜部は車いすが、車両外から車両内への進入時にはさほど問題とならないが、車両内から車両外へ出る際に、乗り越えなければならない段差となる。
本発明は上記課題に鑑みて想到されたものであり、車いすでの乗降の際に、車両内から車両外、車両外から車両内とどちらの方向であっても、段差を乗り越えることなく乗降できるスロープを提供するものである。
より具体的に本発明に係る鉄道車両のスロープ装置は、
鉄道車両の乗降口の車両内側に設置された筐体内に起立状態で収納され、
前記筐体から起立状態のまま突出し、前記乗降口に、前記鉄道車両の車両内側から車両外側にスロープを渡す鉄道車両のスロープ装置1であって、
互いに隣接する車両外側シャフト12および車両内側シャフト22と、
前記車両外側シャフト12を枢軸として、前記乗降口の車両内側から車両外側に倒れる方向に回転する車両外側スロープ10と、
前記車両内側シャフト22を枢軸として、前記車両内側に倒れる方向に回転する車両内側スロープ20と、
前記車両外側スロープ10と前記車両内側スロープ20を同期して回転させる回転機構15を有することを特徴とする。
本発明に係る鉄道車両のスロープ装置は、車両内から車両外に対する車両外側スロープと、車両内の側出入口から車体中心に対する車両内側スロープの2つのスロープを展開することとしたので、車両外から車両内に車いすを乗り入れる際だけでなく、車両内から車両外に車いすで下車する際にも、段差を感じることなく移動することができる。
また、車両外側スロープと車両内側スロープの継ぎ目にサン板を設けるようにすることで、車両外側スロープと車両内側スロープの間の隙間も車いすでスムーズに移動できる。また、プラットフォームと客室床面間の段差が駅毎に変わっていても、車両内外をスロープで繋ぐことができる。
本発明に係る鉄道車両のスロープ装置が展開した状態を示す図である。 スロープおよびシャフトの一部断面図を示す図である。 ベルトヒンジの原理を説明する図である。 スロープ装置が筐体から進出した状態を示す図である。 スロープが展開する途中の状態を示す図である。 スロープが展開し終わった状態を示す図である。 スロープが閉じる際のサン板の状態を示す図である。
以下に本発明に係る鉄道車両のスロープ装置について図面を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
図1に本発明に係る鉄道車両のスロープ装置1が展開している状態を示す。車両2の乗降扉や、側構体は省略しているが、スロープ装置1を収納する筐体4(図1(a)では点線で示した。)が車両2内に設けられている。
スロープ装置1は車両2からプラットフォーム3への段差や隙間を緩やかなスロープで連結し、車いすや歩行に支障がある人が通行しやすい通行路を確保することができる。本発明に係るスロープ装置1は、車両外側スロープ10と、車両外側シャフト12と、車両内側スロープ20と、車両内側シャフト22と、サン板30と、回転機構15を有する。
<シャフト>
図1(a)には、スロープ装置1が展開している斜視図を示す。また図1(b)には、A-A断面図を示す。なお、図2(b)に図1(b)の一部拡大図を示す。車両外側シャフト12と車両内側シャフト22は、平行に隣接して設置される。これら2本のシャフトは、展開する際には、鉄道車両の乗降扉と平行な位置で車両2内に設置される。
<スロープ>
車両外側スロープ10は長方形状の板材で、軽量で変形の少ない材料で形成される。例えばリブ等でリインフォース構造を形成されたアルミ板は、好適に利用することができる。また強化プラスチックなどを用いてもよい。車両外側スロープ10は、車両2内からプラットフォーム3まで届く距離だけの長さ10Lを有する。具体的には、およそ500mm~1200mm程度が好適である。
車両内側スロープ20も車両外側スロープ10と同様の構造で形成することができる。ただし、車両内側スロープ20は、車両外側スロープ10が展開した際に最も高くなる地点から車両2の床2aまでの高さを滑らかな傾斜にすればよいので、長さ20Lは車両外側スロープ10の長さ10Lの半分程度でよい。
車両外側スロープ10の幅10Wも車両内側スロープ20の幅20Wも、車いすが余裕をもって通過できる幅が必要である。具体的には、700mm~1000mm程度がよい。なお、車両外側スロープ10も車両内側スロープ20も幅方向の両端に脱輪防止用のリブ10rおよびリブ20rが形成されていてもよい。
なお、車両外側スロープ10のプラットフォーム3に倒れる側の辺を車両外側スロープ10の先端辺10aとし、車両2内に残る側を軸辺10bと呼ぶ。また、車両内側スロープ20の車両2内に倒れる側の辺を車両内側スロープ20の先端辺20aとし、乗降口に近い側を軸辺20bと呼ぶ。
<シャフトとスロープの結合>
図2(a)は車両内側スロープ20の断面図である。車両内側スロープ20の軸辺20bはその幅方向に車両内側シャフト22が貫通するフランジ20fを有している。このフランジ20fは車両内側スロープ20の裏面20dより裏面20d側に突き出して形成されている。車両内側シャフト22は車両内側スロープ20の軸辺20b側の枢軸となる。
同様に、車両外側スロープ10の軸辺10bにもフランジ10f(図示せず)が形成されており、そのフランジ10fを車両外側シャフト12が貫通している。したがって、車両内側スロープ20と同様に、車両外側シャフト12は車両外側スロープ10の軸辺10b側の枢軸となる。
結果、車両外側スロープ10は車両外側シャフト12を枢軸として回転可能に固定され、車両内側スロープ20は車両内側シャフト22を枢軸として回転可能に固定される。なお、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20は、車両外側シャフト12と車両内側シャフト22の周囲を自由に回転することができる。
<サン板>
サン板30は、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20の間を塞ぐ長さ30Lを有する。幅30W(図示せず)は、車両外側スロープ10の幅10Wおよび車両内側スロープ20の幅20W(図1参照)とほぼ同じでよい。
またサン板30は車両外側スロープ10の軸辺10b若しくは車両内側スロープ20の軸辺20bとベルトヒンジ32で連結される。ここでは、車両内側スロープ20と連結されている例を示す。ベルトヒンジ32は、所謂紐蝶番と呼ばれる蝶番方式である。図3にその原理を示す。
図3(d)は車両内側スロープ20とサン板30をベルトヒンジ32の半分で結合した状態を示す。ベルトヒンジ32は短冊状のベルト32aを車両内側スロープ20の裏面20dからサン板30の表面30uに通し、それぞれ車両内側スロープ20の裏面20dとサン板30の表面20uに接着した状態を示している。
実際のベルトヒンジ32は、さらに、車両内側スロープ20の表面20uからサン板30の裏面30dに他の短冊状ベルト32bを通し、それぞれ車両内側スロープ20の表面20uとサン板30の裏面30dに接着する。このようにして形成されたベルトヒンジ32は、車両内側スロープ20とサン板30が共に起立方向に回転した場合(図3(a))、フラットになった場合(図3(b))、車両内側スロープ20の方が下がった場合(図3(c))でも、動きに制限されることがない。また、嵩高くなく、車両内側スロープ20の軸辺20b(図2(b)参照)とサン板30との間の隙間も覆い隠すことが容易になる。なお、ベルトヒンジ32は、屏風蝶番で置き換えてもよい。
再び図2(b)を参照して、サン板30がベルトヒンジ32で連結されていない側の辺は表から裏に向かいテーパー30tが形成されている。このテーパー30tによって、車両外側スロープ10が持ち上がるにつれ、その表面10uにそってずり上がり、起立した車両外側スロープ10と車両内側スロープ20の間で、起立維持される。
<回転機構>
スロープ装置1には、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20を回転させる回転機構15(図4参照)が備えられる。回転機構15は、車両外側スロープ10を軸辺10bを回転中心側として少なくとも起立状態から水平状態まで回転させ、車両内側スロープ20を軸辺20bを回転中心側として少なくとも起立状態から水平状態まで回転させる。
車両外側シャフト12には、車両外側アーム14が固定されている。また、車両内側シャフト22には、車両内側アーム24が固定されている。車両外側アーム14は、車両外側スロープ10の裏面10d側に配置され、車両内側アーム24は、車両内側スロープ20の裏面20d側に配置されている。
また、車両外側シャフト12と車両内側シャフト22は同期ギア16で連結されている。なお、ここで同期ギア16とは、同径、同歯数の2つの平歯車を咬み合わせたギアを言う。また、車両外側シャフト12を回転させるモーター(図示せず)が備えられる。
回転機構15は、同期ギア16で連結された車両外側シャフト12と車両内側シャフト22と、車両外側シャフト12に固定されていた車両外側アーム14と、車両内側シャフト22に固定された車両内側アーム24と、車両外側シャフト12若しくは車両内側シャフト22を回転させるモータで構成される。
<車輪部>
車両外側シャフト12と車両内側シャフト22の一端は、まとめられ、車輪部40(図1参照)が形成される。この車輪部40によって、スロープ装置1は、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20を畳んだ状態で筐体4内から進出したり、筐体4内に収納するために移動することができる。
<動作>
図4は、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20が起立状態に畳まれた状態を示す。使用されない場合は、このように畳まれた状態で乗降口の横に置かれた筐体4内に収納されている。
使用する際には、図示しない車両2内側若しくは車両2外側のスイッチによって、スロープ装置1を起動させる。なお、スロープ装置1の起動は、運転室から乗務員による無線での遠隔操作で行ってもよい。起動されると、スロープ装置1は、車輪部40を先頭にして筐体4から乗降口と平行に伸びだす。
次に回転機構15が駆動する。図示しないモータによって、車両外側シャフト12が回転されると、同期ギア16(図2(b)参照)によって、車両内側シャフト22も回転する。車両外側シャフト12が回転すると、車両外側アーム14がプラットフォーム3に向かって倒れるように回転する。車両外側アーム14が回転すると車両外側スロープ10も車両2外に向かって回転する。一方、車両内側アーム24が車両2内に向かって回転すると、車両内側スロープ20も回転する。図5は、車両外側アーム14と、車両内側アーム24が垂直方向から45°ほど回転した状態を示している。
図6は、車両外側スロープ10の先端辺10aがプラットフォーム3に当接し、車両内側スロープ20の先端辺20aが車両2の床2aに当接した状態を示している。サン板30は車両外側スロープ10が傾斜すると、テーパー30t(図2(b)参照)が車両外側スロープ10の表面10uに沿って傾斜し(図5参照。)、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20の展開が終了したら、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20の隙間を塞ぐ位置に配置される。
なお、車両外側アーム14と車両内側アーム24は、水平よりもさらに回転する。したがって、車両外側スロープ10は、図1のように、車両2の床2aよりプラットフォーム3が低くても、車両外側アーム14の先端辺10aをプラットフォーム3に当接させるまで回転させることができる。
このように、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20がそれぞれプラットフォーム3と床2aに当接したら、スロープの展開は終了する。スロープの展開が終了したら利用者は、車両外側スロープ10および車両内側スロープ20を通り、プラットフォーム3と車両2内を行き来する。
プラットフォーム3から車両2内へ入る際も、車両2内からプラットフォーム3に降りる際も、車いすの通路には段差が生じないので、車いすはスムーズに移動することができる。また、車両外側スロープ10の軸辺10bと車両内側スロープ20の軸辺20bとの間の隙間はサン板30が塞いでいるので、車両外側スロープ10から車両内側スロープ20への移動も段差を感じることなくスムーズに移動することができる。
使用が終了したら、車両2内若しくは車両2外に配置されたスイッチ(図示しない)によって、スロープを畳む。図7を参照する。まず車両外側シャフト12がモータによって回転され、同期ギア16によって、車両内側シャフト22も回転する。この回転によって、車両外側アーム14および車両内側アーム24が垂直方向に起立する方向に回転する。
車両外側アーム14および車両内側アーム24は、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20に当接し、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20を起立する方向に押し上げる。
この際、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20の枢軸となる車両外側シャフト12と車両内側シャフト22は、それぞれのスロープの底面からズレた位置に配置されている。そのため、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20は、起立方向に向かうにつれ、軸辺10bと軸辺20bの距離LMは近づくような軌跡を描く。
その結果、車両外側スロープ10と車両内側スロープ20の間に配置されたサン板30は、ベルトヒンジ32(図3参照)で連結されていないテーパー30tが形成された辺が、車両外側スロープ10の表面10uにそってずり上がり(図7(b)参照)、起立した車両外側スロープ10と車両内側スロープ20の間で、略起立状態に維持される(図7(c)参照)。
以上のようにして本発明に係る鉄道車両のスロープ装置1は、車両2内とプラットフォーム3の間に段差のないスムーズな傾斜をもった通路を確保することができ、車両2内から車両2外へ、また車両2外から車両2内へ、どちらの方向にも車いすや歩行に支障がある人の乗降を容易にすることができる。
本発明は鉄道車両に好適に利用することができる。また、船舶や大型車両の乗降時に利用することもできる。
1 スロープ装置
2 車両
2a 床
3 プラットフォーム
4 筐体
10 車両外側スロープ
10L 長さ
10W 幅
10r リブ
10a 先端辺
10b 軸辺
10f フランジ
10u 表面
10d 裏面
12 車両外側シャフト
14 車両外側アーム
15 回転機構
16 同期ギア
20車両内側スロープ
20L 長さ
20W 幅
20r リブ
20a 先端辺
20b 軸辺
20f フランジ
20d 裏面
20u 表面
22 車両内側シャフト
24 車両内側アーム
30 サン板
30L 長さ
30W 幅
30u 表面
30d 裏面
30t テーパー
32 ベルトヒンジ
32a ベルト
40 車輪部

Claims (3)

  1. 鉄道車両の乗降口の車両内側に設置された筐体内に起立状態で収納され、
    前記筐体から起立状態のまま突出し、前記乗降口に、前記鉄道車両の車両内側から車両外側にスロープを渡す鉄道車両のスロープ装置であって、
    互いに隣接する車両外側シャフトおよび車両内側シャフトと、
    前記車両外側シャフトを枢軸として、前記乗降口の車両内側から車両外側に倒れる方向に回転する車両外側スロープと、
    前記車両内側シャフトを枢軸として、前記車両内側に倒れる方向に回転する車両内側スロープと、
    前記車両外側スロープと前記車両内側スロープを同期して回転させる回転機構を有することを特徴とする鉄道車両のスロープ装置。
  2. 前記車両内側スロープと前記車両外側スロープの隙間を塞ぐサン板を有することを特徴とする請求項1に記載された鉄道車両のスロープ装置。
  3. 前記サン板は、前記車両内側スロープと前記車両外側スロープの何れかとベルトヒンジで連結され、前記ベルトヒンジで連結されていない側にはテーパーが設けられていることを特徴とする請求項2に記載された鉄道車両のスロープ装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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