JP7296311B2 - 地下構造物の構築方法 - Google Patents

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本発明は、地下構造物の一部を逆打ち工法で構築するとともに、地下構造物の残りを順打ち工法で構築する、地下構造物の構築方法に関する。
従来より、地下構造物の一部を逆打ち工法で構築し、残りを順打ち工法で構築する方法が提案されている(特許文献1、2参照)。
特許文献1には、平面視で、新設の地下構造物を環状の外周エリアと中央エリアとに区画し、外周エリアの地下構造物を逆打ち工法で構築するとともに、中央エリアの地下構造物を順打ち工法で構築する方法が提案されている。この方法では、外周エリアと中央エリアとの間に仮設壁を構築しておき、中央エリアでは、仮設壁同士の間に切梁を架設しながら掘削し、外周エリアでは、先行床を構築して、この先行床から下方に向かって、躯体を構築しながら掘削する。
特許文献2には、高層棟と、高層棟の周囲に構築された低層部と、を備える建物の構築方法が示されている。低層部の施工範囲の外周に山留壁を構築し、低層部を逆打ち工法により構築し、構築中の低層部の躯体により山留壁をその内側から支持した状態で、高層棟を順打ち工法により構築する。
ところで、建物が密集する商業地域において、計画している地下構造物と敷地境界との間のスペースが狭く、地下構造物のうち敷地境界に近い部分を順打ち工法で構築し、残りを逆打ち工法で構築する場合がある。また、一部の躯体が深く、残りの躯体が浅い地下構造物について、深い部分を逆打ち工法で構築し、浅い部分を順打ち工法で構築する場合がある。
このような場合、特許文献1、2の方法を採用しようとしても、順打ち工法の順打ち工区を逆打ち工法の逆打ち工区が囲む構造でなければ採用できない。
そこで、逆打ち工区で先行床を構築するとともに、順打ち工区に井桁状の切梁を架設して、逆打ち工区の先行床で切梁に導入した軸力を受けることが考えられる。しかしながら、この方法では、切梁に導入した軸力を受けるため、所定階の床全体を先行床として構築する必要がある。そのため、切梁に早期にプレロードを導入できず、工期が長期化する、という問題があった。
特開2017-166139号公報 特開2015-25292号公報
本発明は、地下構造物の一部を逆打ち工法で構築し、残りを順打ち工法で構築する場合に、短工期で構築できる地下構造物の構築方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、地下構造物の一部を逆打ち工法で構築し、残りを順打ち工法で構築する場合に、地下外壁を構築し、次に、逆打ち工区にて先行床として所定階の一部の床躯体を構築し、その後、順打ち工区にて先行床と地下外壁との間に一方向に延びる切梁を架設することで、先行床を早期に構築して、順打ち工法の切梁に早期に軸力を導入できる点に着眼して、本発明に至った。
第1の発明の地下構造物の構築方法は、地下構造物の一部(例えば、後述の高層部地下躯体20)を逆打ち工区(例えば、後述の逆打ち工区Q)にて逆打ち工法で構築するとともに、前記地下構造物の残り(例えば、後述の低層部地下躯体10)を順打ち工区(例えば、後述の順打ち工区P)にて順打ち工法で構築する、地下構造物の構築方法であって、前記逆打ち工区にて、所定階の床躯体(例えば、後述の1階床躯体)を先行床(例えば、後述の先行床40)として構築する工程(例えば、後述のステップS2)と、前記順打ち工区にて、前記先行床と地下外壁(例えば、後述の外周山留壁50)との間に、所定方向に延びる切梁(例えば、後述の切梁30)を複数並べて架設する工程(例えば、後述のステップS3)と、を備え、前記先行床を構築する工程では、平面視で、前記所定階の床躯体のうち前記切梁の延長線(例えば、後述の延長線Y)上に位置する部分のみを先行床として構築することを特徴とする。
この発明によれば、順打ち工区の切梁に早期に軸力を導入するためには、逆打ち工区にて、所定階の床躯体を全て先行床として構築する必要はなく、切梁に導入した軸力を受ける部分のみを先行床として構築すれば良い。
そこで、この発明によれば、順打ち工区にて、一方向に延びる切梁を複数並べて架設し、切梁が先行床に与える軸力の方向を限定する。さらに、先行床として、平面視で、所定階の床躯体のうち順打ち工区の一方向の切梁の延長線上に位置する部分のみを構築する。これにより、先行床の面積を削減して、先行床を早期に構築できるから、切梁に軸力を早期に導入でき、その結果、地下構造物を短工期で構築できる。
第2の発明の地下構造物の構築方法は、前記順打ち工区に切梁を架設する工程では、前記地下外壁の入隅部に、複数の切梁に跨がって火打ち梁を架設することを特徴とする。
この発明によれば、地下外壁の入隅部に大型の火打ち梁を設けたので、切梁の本数を削減しつつ、地下外壁の変形を抑えることができる。
第3の発明の地下構造物の構築方法は、前記先行床は、平面視で、略L字形状および/または凹凸状であることを特徴とする。
この発明によれば、先行床を平面視で略L字形状および/または凹凸状とした。よって、先行床の面積を削減して、先行床を早期に構築できるから、切梁に軸力を早期に導入でき、地下構造物を短工期で構築できる。
本発明によれば、地下構造物の一部を逆打ち工法で構築し、残りを順打ち工法で構築する場合に、短工期で構築できる地下構造物の構築方法を提供できる。
本発明の一実施形態に係る建物の地下躯体の平面図である。 地下躯体の構築手順のフローチャートである。 地下躯体の構築手順の説明図(その1:山留壁および杭の構築状況を示す平面図)である。 地下躯体の構築手順の説明図(その2:図3のA-A断面図)である。 地下躯体の構築手順の説明図(その3:先行床の構築状況および切梁の架設状況を示す平面図)である。 地下躯体の構築手順の説明図(その4:図5のB-B断面図)である。
本発明は、逆打ち工法と順打ち工法とを併用する地下構造物の構築方法である。本発明の特徴は、逆打ち工区にて先行床として所定階の一部の床躯体を構築し、その後、順打ち工区にて先行床と地下外壁との間に一方向に延びる切梁を架設することで、順打ち工法の切梁に早期に軸力を導入して、地下構造物を短工期で構築できる点である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る地下構造物の構築方法により構築した建物1の地下構造物としての地下躯体2の平面図である。
建物1は、地下躯体2と、地下躯体2の上に構築された図示しない地上躯体と、を備える。地上躯体は、低層部と、この低層部に隣接して配置され低層部よりも高い高層部と、を備える。地下躯体2は、低層部の直下に位置する地下1階までの低層部地下躯体10と、高層部の直下に位置する地下2階までの高層部地下躯体20と、を備える。高層部地下躯体20の深さは、低層部地下躯体10よりも深くなっている。
以下、建物1の地下躯体2を構築する手順について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
本発明では、低層部地下躯体10を、順打ち工区Pで順打ち工法で構築し、高層部地下躯体20を、逆打ち工区Qで逆打ち工法で構築する。その際、順打ち工区Pに切梁30を架設し、逆打ち工区Qに先行床40を構築して、先行床40で切梁30の軸力を受けるものとする(図5参照)。
ステップS1では、図3および図4に示すように、地表面から、建物1の外周に沿って地下外壁としての外周山留壁50を構築するとともに、低層部地下躯体10と高層部地下躯体20との境界に、内側山留壁51を構築する。また、地下躯体2を支持する杭52を構築する。このとき、杭52のうち先行床40を支持するものについては、構真柱53を埋設しておく。なお、図3中の破線は、先行床40を示す。
ステップS2では、図5および図6に示すように、逆打ち工区Qにて、所定深さだけ掘削し、1階床躯体(梁および床)を先行床40として構築する。このとき、平面視で、1階床躯体のうち切梁30の延長線Y上に位置する部分のみを先行床40として構築する。具体的には、1階床躯体のうち二点鎖線Cで囲んだ部分を構築せず、先行床40は、平面視で略L字形状となる。また、この先行床40は、切梁30を受けるため、逆打ち工区Qから順打ち工区P側に一部が突出しており、この突出した部分は凹凸状となっている。
ステップS3では、図5および図6に示すように、順打ち工区Pにて、先行床40と外周山留壁50との間に、所定方向に延びる切梁30を複数並べて架設するとともに、外周山留壁50の入隅部に、複数の切梁30に跨がって火打ち梁31を架設し、これら切梁30および火打ち梁31にプレロードをかけて、切梁30に導入した軸力を先行床40で受ける。
ステップS4では、順打ち工区Pにて、順打ち工法で低層部地下躯体10を構築する。すなわち、床付面まで掘削し、基礎、地下1階床躯体の順に上方に向かって構築する。
また、逆打ち工区Qにて、逆打ち工法で残りの高層部地下躯体20を構築する。すなわち、先行床40から下方に向かって掘削しながら、地下1階床躯体、地下2階床躯体、基礎、の順に構築する。
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)順打ち工区Pにて、一方向に延びる切梁30を複数並べて架設し、切梁30が先行床40に与える軸力の方向を限定する。さらに、先行床40として、平面視で、1階床躯体のうち切梁30の延長線Y上に位置する部分のみを構築する。これにより、先行床40の面積を削減して、先行床40を早期に構築できるから、切梁30に軸力を早期に導入でき、その結果、地下躯体2を短工期で構築できる。
(2)外周山留壁50の入隅部に大型の火打ち梁31を設けたので、切梁30の本数を削減しつつ、外周山留壁50の変形を抑えることができる。
(3)先行床40を平面視で略L字形状とした。よって、先行床40の面積を削減して、先行床40を早期に構築できるから、切梁30に軸力を早期に導入でき、地下躯体2を短工期で構築できるとともに、建物1の施工期間中の耐震安全性を高めることができる。また、先行床40の逆打ち工区Q側の辺縁を凹凸状にしたので、切梁30の長さを短くして、切梁30の断面サイズを小さくできるから、仮設工事費用を低減できる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本発明では、浅い低層部地下躯体10を順打ち工法で構築し、深い高層部地下躯体20を逆打ち工法で構築したが、これに限らない。例えば、地下構造物と敷地境界との間のスペースが狭い場合に、地下構造物のうち敷地境界に近い部分を順打ち工法で構築し、残りを逆打ち工法で構築してもよい。
P…順打ち工区 Q…逆打ち工区 Y…切梁の延長線
1…建物 2…地下躯体(地下構造物)
10…低層部地下躯体 20…高層部地下躯体
30…切梁 31…火打ち梁 40…先行床
50…外周山留壁(地下外壁) 51…内側山留壁 52…杭 53…構真柱

Claims (2)

  1. 高層部の直下の地下構造物を逆打ち工区にて逆打ち工法で構築するとともに、低層部の直下の地下構造物を順打ち工区にて順打ち工法で構築する、地下構造物の構築方法であって、
    前記逆打ち工区にて、所定階の床躯体のうち前記順打ち工区に設けられる切梁の延長線上に位置する部分のみを先行床として構築する工程と、
    前記順打ち工区にて、前記先行床と地下外壁との間に、所定方向に延びる切梁を複数並べて架設する工程と、を備え、
    前記順打ち工区の前記逆打ち工区との境界は、平面視で、前記順打ち工区の前記切梁を受ける地下外壁に対して略平行ではなく、
    前記先行床のうち前記切梁を受ける部分は、平面視で、前記逆打ち工区から前記順打ち工区側に突出しており、かつ、前記切梁を受ける地下外壁に略平行であることを特徴とする地下構造物の構築方法。
  2. 前記順打ち工区に切梁を架設する工程では、前記地下外壁の入隅部に、複数の切梁に跨がって火打ち梁を架設することを特徴とする請求項1に記載の地下構造物の構築方法。
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