JP7182485B2 - 建物の構築方法 - Google Patents
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Description
この逆打ち工法では、基礎躯体の構築よりも地上階の鉄骨建方が先行する。そのため、基礎躯体が完成するまでの期間、構真柱にかかる鉛直荷重が大きくなり、構真柱を支持する杭の杭長や杭径を大きくする必要があり、施工コストが増大するという問題があった。また、建物高さが高い場合、杭の支持力が不足して、地上階の鉄骨建方を中断しなければならない場合があった。さらに、超高層の高層部の周囲に低層部を備える建物の場合、地下躯体全体が一体となるため、地下柱の数だけ構真柱の本数が多くなり、さらにコストが増大するおそれがあった。
一方、大規模な地下構造物であっても、杭を必要としない直接基礎を採用できる場合には、逆打ち工法より順打ち工法がコスト面で有利となるが、工期が長期化するという課題があった。
例えば、大規模な地下構造物を構築する方法として、特許文献3の方法があるが、外周部の躯体構築が完了しないと、中央部の掘削が開始できず、中央部が超高層の場合には、工期が長期化するという課題があった。
また、特許文献4の方法では、外周部を逆打工法とし、中央部を順打工法とする方法であるが、中央エリアには切梁が必要であり、地下構造物の構築を円滑に進めることが困難であった。
特許文献2には、既存地下躯体の一部を残したまま、新設建物の基礎躯体を構築していく、地下構造物の構築方法が記載されている。具体的には、上部躯体を解体後、既存の地下躯体を存置し、その地下躯体を支柱や敷桁で補強した上に置き構台を設置する。次に、ロックオーガーや全周回転掘削機により地下躯体の上から杭工事を行うことで、短工期で地下躯体を構築する。
また、特許文献3には、建物の中央部を順打ち工法とし、外周部を逆打ち工法で構築する地下構造物の構築方法が記載されている。この地下構造物の構築方法では、まず、既存地下構造物の周囲に山留め壁を構築する。次に、既存地下構造物を順次解体しながら、新設地下構造物の外周部に外周リングを構築し、上層から下層に向かって新設地下構造物の外周部を構築する。その後、外周リングの内側に、新設地下構造物の中央部を構築する。しかしながら、特許文献3では、既存地下構造物と敷地境界との間に山留め壁を構築できるスペースが必要であった。
特許文献4には、既存地下構造物を解体した場所に新設地下構造物を構築する地下構造物の構築方法が示されている。この方法では、新設地下構造物を外周エリアと中央エリアとに区画しておき、外周エリアでは、逆打ち工法により地下構造物を構築し、中央エリアでは、棚杭および切梁を用いて支保工を架設して、順打ち工法により地下構造物を構築する。しかしながら、特許文献4の地下構造物の構築方法では、中央エリアに棚杭や切梁などの仮設構造物を設けるため、中央エリアにおける掘削や地下構造物の構築を円滑に進めることが困難であった。
第1の発明の建物の構築方法は、地下構造体(例えば、後述の地下躯体10)を有する建物(例えば、後述の建物1)の構築方法であって、前記地下構造体を、平面視で、内側エリア(例えば、後述の中央エリア20A)に構築された内側構造体(例えば、後述の中央部10A)と、前記内側エリアの外側の外側エリア(例えば、後述の外周エリア20B)に構築された外側構造体(例えば、後述の外周部10B)と、を含んで構成し、前記内側エリアと前記外側エリアとの境界に仮設壁(例えば、後述の仮設壁22)を構築するとともに、前記外側エリアの地盤(例えば、後述の地盤2)内に構真柱(例えば、後述の構真柱23)を構築する第1工程(例えば、後述のステップS1)と、前記仮設壁の前記内側エリア側の壁面から前記外側エリアの地盤内に向かって地盤アンカー(例えば、後述の地盤アンカー25)を打ち込みながら、前記内側エリアの地盤を前記内側構造体の底面深さまで掘削する第2工程(例えば、後述のステップS2)と、前記外側エリアにて、前記外側構造体の所定階(例えば、1階)の床スラブ(例えば、後述の1階の床スラブ16)を先行床(例えば、後述の先行床17B)として構築し、当該先行床を前記構真柱で支持するとともに、前記内側エリアにて、床付面(例えば、後述の床付面24)から上方に向かって前記内側構造体の一部(例えば、後述の中央部10Aの鉄骨柱26、鉄骨梁27)を構築し、当該内側構造体の一部に支持させて所定階(例えば、1階)の床スラブを先行床(例えば、後述の先行床17A)として構築する第3工程(例えば、後述のステップS3)と、前記先行床から上方に向かって地上構造体(例えば、後述の地上躯体11)を構築しつつ、前記内側エリアにて、前記内側構造体の残りを構築し、前記外側エリアにて、前記先行床から下方に向かって、前記地盤アンカーを撤去しながら地盤を掘削して前記外側構造体を構築することを繰り返す第4工程(例えば、後述のステップS4)と、を備えることを特徴とする。
上述の仮設壁は、建物の構築過程において、内側エリアと外側エリアとの境界に一時的に設置される壁であり、例えば、後述する仕切り杭とこの仕切り杭同士の間に設置する横矢板で構成される。
また、外側エリアの地盤内に地盤アンカーの定着体を設置したので、地盤アンカーの定着体として多様な形態を採用できるうえに、地盤アンカーの撤去も比較的容易である。
また、地盤アンカーは、外側エリアの地盤の掘削作業の進捗に合わせて、容易に撤去できる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る建物の構築方法により構築される建物1の模式的な縦断面図である。図2は、建物1の地下躯体10の模式的な横断面図である。
建物1は、鉄骨鉄筋コンクリート造の地下構造体としての地下躯体10と、この地下躯体10の上に構築される鉄骨造の地上構造体としての地上躯体11と、を備える。
地上躯体11は、高層部と、この高層部の周囲に構築された低層部と、で構成されている。地下躯体10の中央部10Aは、高層部の直下に位置しており、地下躯体10の外周部10Bは、低層部の直下に位置している。
まず、平面視で、地下躯体10の中央部10Aが構築されるエリアを内側エリアとしての中央エリア20Aとし、外周部10Bが構築されるエリアを外側エリアとしての外周エリア20Bとする(図2参照)。この外周エリア20Bは、中央エリア20Aを囲む環状となっている。
ステップS2では、図5に示すように、仮設壁22の中央エリア20A側の壁面から外周エリア20Bの地盤2内に向かって、地盤アンカー25を打ち込みながら、中央エリア20Aの地盤2を中央部10Aのマットスラブ12の底面の深さ(床付面24)まで掘削する。
具体的には、中央エリア20Aの地盤2を所定深さまで掘削して、掘削により露出した仕切り杭同士の間に横矢板を嵌め込んで、仮設壁22を構築する。そして、この露出した仮設壁22の壁面に地盤アンカー25を打ち込む。このとき、地盤アンカー25を外周エリア20Bの地盤2の構真柱23同士の間や杭13同士の間を通して打ち込んで、地盤アンカー25の先端の定着体を外周エリア20Bの地盤2内に配置する。この作業を繰り返すことで、地盤アンカー25を上下に複数段設けつつ、床付面24まで掘削する。
仮設壁22は、建物1の構築過程において、中央エリア20Aと外周エリア20Bとの境界に一時的に設置される壁である。地盤アンカー25を設置することにより、仮設壁22が外周エリア20Bの地盤2側に引っ張られるので、中央エリア20Aの地盤2の掘削を進めても、仮設壁22が保持される。
さらに、中央エリア20Aにて、外周エリアの先行床17Bと一体化する1階の梁15および床スラブ16を先行床17Aとして構築する。これにより、1階先行床17が全面に亘って完成し、以後、この1階先行床17の上下で同時に工事を進めることが可能となる。
また、中央エリア20Aにて、中央部10Aの残りの躯体を構築する。ここで、中央部10Aの各階の床躯体(梁15および床スラブ16)の構築については、必ずしも下層から上層に向かって行う必要はない。
また、外周エリア20Bにて、先行床17Bから下方に向かって、地盤アンカー25を撤去しながら地盤2を掘削して外周部10Bの地下階の梁15および床スラブ16を構築する。以降、このような掘削および地下躯体の構築を繰り返す。なお、この掘削では、掘削深さが浅いため、SMW壁21に作用する土圧が小さく、外周エリア20Bの既に構築した梁15および床スラブ16がSMW壁21の支保工として機能する。よって、中央部10Aの梁15や床スラブ16の構築を待たずに掘削を進めることができる。したがって、中央部10Aにて構築する床躯体のレベルと、外周部10Bにて構築する床躯体のレベルとは、必ずしも一致しなくてもよい。
(1)外周エリア20Bでは逆打ち工法により地下躯体10の外周部10Bを構築し、中央エリア20Aでは順打ち工法により地下躯体10の中央部10Aを構築する。このとき、外周エリア20Bと中央エリア20Aとの境界に仮設壁22を設け、この仮設壁22の地盤アンカー25を外周エリア20Bの地盤2内に定着させた。よって、中央エリア20Aに棚杭や切梁などの仮設構造物が不要となるため、中央エリア20Aにおける掘削や地下躯体10の構築を円滑に進めることができる。また、仮設壁22および地盤アンカー25が外周エリア20Bの地盤2を保持する山留めとしての機能を発揮するので、建設敷地に隣接する周辺地盤の安定性を高めることができる。
また、外周エリア20Bの地盤2内に地盤アンカー25の定着体を設置したので、地盤アンカー25の定着体として多様な形態を採用できるうえに、地盤アンカー25の撤去も比較的容易である。
また、地盤アンカー25は、外周エリア20Bの地盤2の掘削作業の進捗に合わせて、容易に撤去できる。
(4)地下躯体10を有する建物1を対象として、建物1の高層部直下の中央部10Aを順打ち工法で構築し、建物1の低層部直下の外周部10Bを逆打ち工法で構築することで、コストおよび工期の両方で有利な地下構造体の構築方法を実現できる。特に、建物1では、中央部10Aを杭ではなくべた基礎による直接基礎で支持するので、地下躯体10を構築する費用を低減でき、短工期化が可能である。
例えば、上記実施形態では、地盤アンカーが複数段に亘って打ち込んだが、これに限らず、地盤アンカーを一段のみ打ち込んでもよい。
また、上記実施形態では、中央エリア20Aの先行床17Aおよび外周エリア20Bの先行床17Bを、1階床レベルに設けたが、これに限らず、先行床17Aおよび先行床17Bを異なる床レベルに設けてもよい。
また、上記実施形態では、中央エリア20Aの基礎をべた基礎(マットスラブ12)による直接基礎としたが、これに限らず、杭基礎としてもよい。
10…地下躯体(地下構造体) 10A…中央部(内側構造体)
10B…外周部(外側構造体) 11…地上躯体(地上構造体)
12…マットスラブ 12A…マットスラブの下部 13…杭 14…柱
15…梁 16…床スラブ
17…1階先行床 17A…中央部の先行床 17B…外周部の先行床
20A…中央エリア(内側エリア) 20B…外周エリア(外側エリア)
21…SMW壁 22…仮設壁 23…構真柱 24…床付面 25…地盤アンカー
26…鉄骨柱 27…鉄骨梁 28…束部材
Claims (3)
- 地下構造体を有する建物の構築方法であって、
前記地下構造体を、平面視で、内側エリアに構築されたマットスラブを有し杭基礎を有していない内側構造体と、前記内側エリアの外側の外側エリアに構築されたマットスラブおよび杭基礎を有する外側構造体と、を含んで構成し、
前記内側エリアと前記外側エリアとの境界に仮設壁を構築するとともに、前記外側エリアの地盤内に構真柱を構築する第1工程と、
前記仮設壁の前記内側エリア側の壁面から前記外側エリアの地盤内に向かって地盤アンカーを打ち込みながら、前記内側エリアの地盤を前記内側構造体の底面深さまで掘削する第2工程と、
前記外側エリアにて、前記外側構造体の所定階の床スラブを外側の先行床として構築し、当該外側の先行床を前記構真柱で支持するとともに、前記内側エリアにて、床付面から上方に向かって前記内側構造体の一部を構築し、当該内側構造体の一部に支持させて所定階の床スラブを内側の先行床として構築する第3工程と、
前記内側および外側の先行床から上方に向かって地上構造体を構築しつつ、前記内側エリアにて、前記内側構造体の残りを構築し、前記外側エリアにて、前記外側の先行床から下方に向かって、前記地盤アンカーを撤去しながら地盤を掘削して前記外側構造体を構築することを繰り返す第4工程と、を備え、
前記第3工程では、前記内側構造体の一部として、前記床付面上に、前記マットスラブに埋設されるプレキャストコンクリート造の束部材を配置し、当該束部材の上に鉄骨柱を建て込んで、当該鉄骨柱で前記内側の先行床を支持することを特徴とする建物の構築方法。 - 前記第2工程では、前記地盤アンカーを前記外側エリアの地盤に前記構真柱同士の間を通して打ち込んで、前記地盤アンカーの定着体を前記外側エリアの地盤内に配置することを特徴とする請求項1に記載の建物の構築方法。
- 前記第2工程では、前記内側エリアの地盤を所定深さまで掘削して、掘削により露出した前記仮設壁の壁面に地盤アンカーを打ち込む作業を繰り返すことで、前記地盤アンカーを上下に複数段設けることを特徴とする請求項1または2に記載の建物の構築方法。
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