JP7295743B2 - 酸素同位体濃度測定装置及び酸素同位体濃度測定方法 - Google Patents
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Description
近年、酸素安定同位体は、18O高濃縮水を利用したPET(陽電子放射断層撮影法)診断薬及びアルツハイマー診断薬等の医薬分野での需要が増加しており、試料の形態も液体試料やガス試料等、多様化している。
従来の酸素同位体濃度の測定方法として、例えば、特許文献1には、水試料を電気分解し、水素と酸素を別々の試料容器に回収し、質量分析計を用いて酸素同位体濃度を測定する方法が開示されている。
また、特許文献2には、試料から酸素以外の大気成分と水蒸気を除去し、質量分析計を用いて酸素同位体濃度を測定する方法が開示されている。
二重収束磁場電場型質量分析計を有し、
前記二重収束磁場電場型質量分析計が、トータルイオンを抽出して分析するトータルイオン分析部と、酸素由来のイオン成分をすべて抽出するイオン成分抽出部と、質量分離して酸素由来のイオン成分から酸素同位体の濃度を測定する酸素同位体濃度測定部と、を有し、
前記酸素同位体濃度測定部において、前記酸素由来のイオン成分のピーク面積を測定して、酸素同位体濃度を算出する、酸素同位体濃度測定装置。
[2] 前記トータルイオン分析部が、イオン化エネルギー及びイオン化電流を調節する調節部を有する、[1]に記載の酸素同位体濃度測定装置。
[3] さらに、試料導入装置を有し、
前記試料が液体試料又はガス試料である、[1]又は[2]に記載の酸素同位体濃度測定装置。
[4] 前記試料が液体試料であり、
前記試料導入装置が、陽極と陰極が同じセル内に設置されている電気分解セルを有し、
前記電気分解セルが、少量の試料を用いて電気分解し、酸素と水素とを同時に発生させて同一の容器内に収集させる、[3]に記載の酸素同位体濃度測定装置。
[5] 前記電気分解セルが、陽極と陰極との間にイオン交換膜が設置されず、電気分解前に電解質が添加され、イオン交換膜由来の酸素同位体交換と水蒸気の発生とを抑えた状態で試料を電気分解する、[4]に記載の酸素同位体濃度測定装置。
[6] 前記試料がガス試料であり、
前記試料導入装置が、真空ポンプを用いて経路を真空にするガスサンプラー真空引き用ラインと、ガス試料を充填させたガスサンプラー容器に不活性ガスを導入する不活性ガス導入ラインと、を有する、[3]に記載の酸素同位体濃度測定装置。
[7] 前記酸素同位体濃度測定部において、大気成分由来の酸素同位体のピーク面積値を差し引き、さらに、酸素の同位体とアルゴンの同位体とを質量分離する、[6]に記載の酸素同位体濃度測定装置。
[8] 試料中に含まれる3種の酸素同位体を測定する酸素同位体濃度測定方法であって、
二重収束磁場電場型質量分析計を用い、トータルイオンを抽出して分析し、酸素由来のイオン成分をすべて抽出し、酸素由来のイオン成分をすべて質量分離することにより酸素同位体濃度を測定し、酸素同位体濃度を測定する際に、ピーク面積を定量し、酸素同位体濃度を定量する、酸素同位体濃度測定方法。
なお、以下の説明で用いる図は、特徴をわかり易くするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
図1に示す酸素同位体濃度測定装置1(以下「測定装置1」という場合がある。)は、二重収束磁場電場型質量分析計29を有する。
二重収束磁場電場型質量分析計29は、トータルイオン分析部(図示せず)と、イオン成分抽出部(図示せず)と、酸素同位体濃度測定部(図示せず)とを有する。
前記トータルイオン分析部は、トータルイオンを抽出して分析する部分である。
前記イオン成分抽出部は、酸素由来のイオン成分をすべて抽出する部分である。
前記酸素同位体濃度測定部は、酸素由来のイオン成分を質量分離して酸素同位体の濃度を測定する部分である。前記酸素同位体濃度測定部において、酸素由来のイオン成分のピーク面積を測定し、酸素同位体濃度を算出する。
この場合において、測定装置1は、質量分析計導入バルブ27及びマスフローコントローラー28を有することが好ましい。
電気分解セル9に電解質9aを添加するには、例えば、電解質溶液(NaCl 30mg/100mLメタノール)を、液体試料導入口8から電気分解セル9にシリンジを使用して100μL導入し、次いで、ヘリウム導入バルブ5、ガスサンプラー入口バルブ18及びガスサンプラー真空引き用バルブ21を閉じ、電気分解装置真空引き用バルブ22及び真空ポンプバルブ23を開き、真空ポンプ24にて、真空引きを行い、前記電解質溶液中のメタノールを蒸発させる。これにより、電気分解セル9の底に電解質9aのみ添加される。
二重収束磁場電場型質量分析計29に導入された試料をイオン化して、トータルイオンを分析する。トータルイオンには酸素由来のイオン以外のイオンも含まれる。
二重収束磁場電場型質量分析計29は、通常、速度収束をもたらす電場セクターと方向収束をもたらす磁場セクターの2つの分析場を持つ。イオンは、電場セクターにおいて電位差(加速電場)により加速された後、垂直方向に一様な磁場(偏向磁場)が印加されている磁場セクター導入される。一様電場下では、イオンはローレンツ力を向心力として、等速円運動する。加速電場及び偏向磁場の一方を一定に保ったまま他方を変化させることにより、異なる質量電荷比のイオンを検出できる。
トータルイオン分析によって検出したイオンから、酸素由来のイオンを抽出する。
酸素由来のイオンを定量し、酸素同位体濃度を算出する。
酸素由来のイオンの定量は、マスクロマトグラムのピーク面積を用いて行う。
マスクロマトグラムのピーク面積とイオンの数との関係は、予め標準試料を用いて検量線を作成しておく。
酸素由来のイオンの定量値から酸素同位体濃度を算出する具体的な方法は、後述する実施例に記載する。
液体試料を分析する場合の具体的方法については、後述する実施例に記載する。
ガス試料を分析する場合の具体的方法については、後述する実施例に記載する。
標準試料:純水と純酸素ガス及び大気(標準値;16O:99.75atom%、17O:0.04atom%、18O:0.21atom%)
酸素同位体試料:液体試料及びガス試料(標準値;16O:41.32atom%、17O:10.88atom%、18O:47.80atom%)
<純酸素ガス測定>
図1に示す酸素同位体濃度測定装置1を用いた。
純酸素ガスを試料導入装置2のガス試料導入口26に接続した。ガスサンプラー入口バルブ18、電気分解装置真空引き用バルブ22、ガス試料導入バルブ25及び質量分析計導入バルブ27を閉じた。ガスサンプラー出口バルブ20、ガスサンプラー真空引き用バルブ21及び真空ポンプバルブ23を開けた。ガスサンプラー容器19及び経路内の大気成分を真空引きした後、ガスサンプラー真空引き用バルブ及び真空ポンプバルブ23を閉じ、ガス試料導入バルブ25を開けて、ガスサンプラー容器19に純酸素を充填した。充填圧力はガス試料用圧力制御器25bを使用して、大気圧(ゲージ圧0.0MPaG)まで充填した。
次に、ガス試料導入バルブ25を閉じ、ヘリウム導入バルブ5、ガスサンプラー真空引き用バルブ21及び電気分解装置真空引き用バルブ22を開け、圧力制御器4でヘリウムをゲージ圧1.9MPaGまで充填した。本操作により、ガスサンプラー容器19の酸素濃度は5体積%となった。二重収束磁場電場型質量分析計29は、直接酸素試料を導入すると電子イオン化フィラメントが断線するおそれがあることから、試料の酸素濃度を適正範囲に希釈する必要がある。
ガスサンプラー真空引き用バルブ21を閉じ、質量分析計導入バルブ27を開け、マスフローコントローラー28で1mL/minで二重収束磁場電場型質量分析計29に導入し、測定を開始した。二重収束磁場電場型質量分析計29では、質量数2から50を分解能10000、イオン化エネルギー70eV、イオン化電流300μAで測定した。このとき、二重収束磁場電場型質量分析計29のトータルイオン分析部でトータルイオンを抽出し、イオン成分抽出部で、トータルイオンから酸素由来のイオン成分を抽出した。抽出したイオン成分を酸素同位体濃度測定部において、酸素同位体の濃度を測定した。
マスクロマトグラムのピーク面積で各酸素分子イオンを定量分析した。
分析結果を表1に示す。
なお、酸素同位体濃度は、以下の計算式(1)、(2)及び(3)を用いて算出した。
16O濃度(atom%)=(16O16O+ピーク面積+1/2×16O17O+ピーク面積+1/2×16O18O+ピーク面積)÷(16O16O+ピーク面積+16O17O+ピーク面積+16O18O+ピーク面積)・・・(1)
17O濃度(atom%)=(1/2×16O17O+ピーク面積)÷(16O16O+ピーク面積+16O17O+ピーク面積+16O18O+ピーク面積)・・・(2)
18O濃度(atom%)=(1/2×16O18O+ピーク面積)÷(16O16O+ピーク面積+16O17O+ピーク面積+16O18O+ピーク面積)・・・(3)
<純酸素ガス測定>
マスクロマトグラムのピーク高さで各酸素分子イオンを定量分析した点を除いて、実施例1と同様にして各酸素分子イオンを定量分析した。分析結果を表2に示す。
なお、酸素同位体濃度は以下の計算式(1’)、(2’)及び(3’)を用いて算出した。
16O濃度(atom%)=(16O16O+ピーク高さ+1/2×16O17O+ピーク高さ+1/2×16O18O+ピーク高さ)÷(16O16O+ピーク高さ+16O17O+ピーク高さ+16O18O+ピーク高さ)・・・(1’)
17O濃度(atom%)=(1/2×16O17O+ピーク高さ)÷(16O16O+ピーク高さ+16O17O+ピーク高さ+16O18O+ピーク高さ)・・・(2’)
18O濃度(atom%)=(1/2×16O18O+ピーク高さ)÷(16O16O+ピーク高さ+16O17O+ピーク高さ+16O18O+ピーク高さ)・・・(3’)
実施例1及び比較例1の結果より、ピーク面積により定量した実施例1は、ピーク高さにより定量した比較例1よりも、分析値のばらつきが抑えられ、標準値に近い値を示し、正確な分析ができることが分かった。
<純酸素ガス測定>
四重極質量分析計を用いて、特許文献1に記載された分析方法であるトータルイオンを抽出することなく、かつ17O濃度の算出時に質量数33のピーク強度すべてを16O17O+の分子イオンとして計算し、また、18O濃度の算出時には質量数34のピーク強度すべてを16O18O+の分子イオンとして計算することによって酸素同位体濃度を測定した点を除いて、実施例1と同様にした。
なお、四重極質量分析計は、イオン化した物質を測定できる装置である。
16O濃度は99.755atom%(相対標準偏差は0.022%)、17O濃度は0.043atom%(相対標準偏差は15.137%)、18O濃度は0.202atom%(相対標準偏差は8.317%)であった。
この結果は、比較例1の結果と同等である。
<純水測定>
図1に示す酸素同位体濃度測定装置1を用いた。
純水を液体試料導入口8にシリンジを使用して1mL導入し、ヘリウム導入バルブ5、ガスサンプラー出口バルブ20、ガスサンプラー真空引き用バルブ及び電気分解装置真空引き用バルブ22を閉じた。真空ポンプバルブ23を開け、圧力モニター16を見ながら、電気分解装置真空引き用バルブ22を開け、ゲージ圧-0.05MPaGまで電気分解セル9及びガスサンプラー容器19内の真空引きを行い、電気分解装置真空引き用バルブ22を閉じた。
ヘリウム導入バルブ5を開け、圧力モニター16を見ながら、ゲージ圧0.1MPaGまで電気分解セル9及びガスサンプラー容器19内にヘリウムを充填し、ヘリウム導入バルブ5を閉じた。電気分解セル9及びガスサンプラー容器19内の真空引き及びヘリウム充填を10回以上繰り返して行い、電気分解したガス試料が回収される経路内をパージした。
次に、電気分解セル9及びガスサンプラー容器19内をゲージ圧-0.05MPaGまで真空引きした後、ヘリウムをゲージ圧0.00MPaGまで充填した。電気分解セル入口バルブ7を閉じ、直流電源装置14で電気分解を開始した。電気分解は設定電圧20Vから40V、設定電流値0.05Aから0.25Aで行った。圧力モニター16でゲージ圧0.3PaG(酸素分圧0.1MPaG、水素分圧0.2MPaG)になったところで、電気分解を停止した。
ガスサンプラー入口バルブ18及びガス試料導入バルブ25を閉じ、ヘリウム導入バルブ5、ガスサンプラー出口バルブ20、ガスサンプラー真空引き用バルブ21及び電気分解装置真空引き用バルブ22を開け、圧力制御器4でヘリウムをゲージ圧1.9MPaGまで充填した。本操作により、ガスサンプラー容器19の酸素濃度は5体積%となった。ガスサンプラー真空引き用バルブを閉じ、質量分析計導入バルブ27を開け、マスフローコントローラー28で1mL/minで二重収束磁場電場型質量分析計29に導入し、測定を開始した。二重収束磁場電場型質量分析計29では、質量数2から50を分解能10000、イオン化エネルギー70eV、イオン化電流300μAで測定した。このとき、二重収束磁場電場型質量分析計29のトータルイオン分析部でトータルイオンを抽出し、イオン成分抽出部で、トータルイオンから酸素由来のイオン成分を抽出した。抽出したイオン成分を酸素同位体濃度測定部において、酸素同位体の濃度を測定した。
マスクロマトグラムのピーク面積で各分子イオンを定量分析した。
分析結果を表3に示す。
なお、酸素同位体濃度は、以下の計算式(4)、(5)及び(6)を用いて計算した。
16O濃度(atom%)=(16O16O+ピーク面積+16O16OH+ピーク面積+1/2×16O17O+ピーク面積+1/2×16O18O+ピーク面積)÷(16O16O+ピーク面積+16O16OH+ピーク面積+16O17O+ピーク面積+16O18O+ピーク面積)・・・(4)
17O濃度(atom%)=(1/2×16O17O+ピーク面積)÷(16O16O+ピーク面積+16O16OH+ピーク面積+16O17O+ピーク面積+16O18O+ピーク面積)・・・(5)
18O濃度(atom%)=(1/2×16O18O+ピーク面積)÷(16O16O+ピーク面積+16O16OH+ピーク面積+16O17O+ピーク面積+16O18O+ピーク面積)・・・(6)
<純水測定>
マスクロマトグラムのピーク高さで各分子イオンを定量分析した点を除いて、実施例2と同様にして各分子イオンを定量分析した。分析結果を表4に示す。
なお、酸素同位体濃度は以下の計算式(4’)、(5’)及び(6’)を用いて算出した。
16O濃度(atom%)=(16O16O+ピーク高さ+16O16OH+ピーク高さ+1/2×16O17O+ピーク高さ+1/2×16O18O+ピーク高さ)÷(16O16O+ピーク高さ+16O16OH+ピーク高さ+16O17O+ピーク高さ+16O18O+ピーク高さ)・・・(4’)
17O濃度(atom%)=(1/2×16O17O+ピーク高さ)÷(16O16O+ピーク高さ+16O16OH+ピーク高さ+16O17O+ピーク高さ+16O18O+ピーク高さ)・・・(5’)
18O濃度(atom%)=(1/2×16O18O+ピーク高さ)÷(16O16O+ピーク高さ+16O16OH+ピーク高さ+16O17O+ピーク高さ+16O18O+ピーク高さ)・・・(6’)
実施例2及び比較例3の結果より、ピーク面積により定量した実施例2は、ピーク高さにより定量した比較例3よりも、分析値のばらつきが抑えられ、標準値に近い値を示し、正確な分析ができることが分かった。
この結果より、トータルイオン分析を行い、質量軸ずれを抑えた状態で、酸素由来のイオンをすべて抽出し、面積値による定量は高さによる定量と比較し、分析値のばらつきが抑えられ、標準値に近い値を示し、より正確な分析ができることが分かった。
また、イオン化の過程で発生した水分(質量数18.01056から20.01481)が確認された。
<純水測定>
四重極質量分析計を用いて、特許文献1に記載された分析方法によって酸素同位体濃度を測定した点を除いて、実施例2と同様にした。
16O濃度は99.711%(相対標準偏差は0.031%)、17O濃度は0.093%(相対標準偏差は13.268%)、18O濃度は0.196%(相対標準偏差は7.938%)であった。
質量数33のピーク強度は理論値の2倍以上検出された。質量数33のピークには、16O17O+だけでなく、16O16OH+が混ざっており、17Oとして計算されるため、17O濃度が高くなった。
<純水測定>
実施例2において、さらに、イオン化エネルギー及びイオン化電流を最適化し、試料に共存している水素と酸素との反応による水蒸気の発生を抑える検討を行った。
分析計の暖機運転を12時間行い、分析計内に水蒸気の滞留がなくなったことを確認し、イオン化エネルギーを従来の70eVから30eV、イオン化電流を従来の300μAから150μAに変更し、測定を行った。
分析結果を表5に示す。
イオン化エネルギー及びイオン化電流を最適化した実施例3は、実施例2よりも、試料に共存している水素と酸素との反応による水蒸気の発生を抑え、標準値に近い値を示し、より正確な分析ができた。
<大気測定>
大気の酸素同位体測定を行った。手順は純酸素ガスに代えて大気を用い、大気をヘリウムで酸素濃度5体積%まで希釈した点を除いて、実施例1と同様にして各分子イオンのピーク面積を測定し、酸素同位体濃度を算出した。
分析結果を表6に示す。
四重極質量分析計を用いて、特許文献1に記載された分析方法によって酸素同位体濃度を測定した点を除いて、実施例4と同様にした。
16O濃度は99.743%(相対標準偏差は0.051%)、17O濃度は0.045%(相対標準偏差は17.471%)、18O濃度は0.212%(相対標準偏差は9.356%)であった。
実施例4と比較例5とは、試料が大気であるため、分析結果に差があまりなかった。
しかし、酸素同位体試料に大気が混入すると、大気中の酸素により、試料中の酸素同位体濃度が希釈されるため、分析値は理論値から大きくずれることがあった。
大気が混入した酸素同位体試料については、この大気の分析結果を標準データとし、試料の14N14N+(測定質量28.00614)のピーク強度と標準データの14N14N+(測定質量28.00614)のピーク強度の比を計算し、大気の16O16O+、16O17O+及び16O18O+のピーク強度を試料中のピーク強度に換算して、測定データから差し引くことで、試料の酸素同位体を正確に測定することができる。
実施例2では、16O17O+と16O16OH+を分離して分析可能なため、比較例4よりも正確な分析が可能である。
<酸素同位体ガス試料>
実施例1と同様にして、酸素同位体試料のガス試料について測定を行った。
分析結果を表7に示す。
なお、酸素同位体濃度は以下の計算式(7)、(8)及び(9)を用いて算出した。
16O濃度(atom%)=(16O16O+ピーク面積+1/2×16O17O+ピーク面積+1/2×16O18O+ピーク面積)÷(16O16O+ピーク面積+16O17O+ピーク面積+16O18O+ピーク面積+17O17O+ピーク面積+17O18O+ピーク面積+18O18O+ピーク面積)・・・(7)
17O濃度(atom%)=(1/2×16O17O+ピーク面積+17O17O+ピーク面積+1/2×17O18O+ピーク面積)÷(16O16O+ピーク面積+16O17O+ピーク面積+16O18O+ピーク面積+17O17O+ピーク面積+17O18O+ピーク面積+18O18O+ピーク面積)・・・(8)
18O+濃度(atom%)=(1/2×16O18O+ピーク面積+1/2×17O18O+ピーク面積+18O18O+ピーク面積)÷(16O16O+ピーク面積+16O17O+ピーク面積+16O18O+ピーク面積+17O17O+ピーク面積+17O18O+ピーク面積+18O18O+ピーク面積)・・・(9)
四重極分析計を用いて、特許文献1に記載された分析方法によって酸素同位体濃度を測定した点を除いて、実施例5と同様にした。
16O濃度は41.52%(相対標準偏差は3.349%)、17O濃度は9.79%(相対標準偏差は5.169%)、18O濃度は48.39%(相対標準偏差は3.178%)であった。
質量数34のピーク強度が理論値より10%以上高く検出された。質量数34のピークには、16O18O+だけでなく、17O17O+が混ざっているが、18Oとして計算されるため、18O濃度が高くなり、17Oが低くなった。
実施例5では、16O18O+と17O17O+を分離して分析可能なため、比較例6よりも正確な分析が可能である。
<酸素同位体液試料>
実施例2と同様にして、酸素同位体液試料を分析した。
ただし、試料に共存している水素と酸素との反応による水蒸気の発生を抑えるため、イオン化エネルギー及びイオン化電流を最適化し、イオン化エネルギーを30eV、イオン化電流を150μAに設定して測定を行った。
分析結果を表8に示す。
なお、酸素同位体濃度は以下の計算式(10)、(11)及び(12)を用いて算出した。
16O濃度(atom%)=(16O16O+ピーク面積+1/2×16O17O+ピーク面積+1/2×16O18O+ピーク面積)÷(16O16O+ピーク面積+16O17O+ピーク面積+16O18O+ピーク面積+17O17O+ピーク面積+17O18O+ピーク面積+18O18O+ピーク面積)・・・(10)
17O濃度(atom%)=(1/2×16O17O+ピーク面積+17O17O+ピーク面積+1/2×17O18O+ピーク面積)÷(16O16O+ピーク面積+16O17O+ピーク面積+16O18O+ピーク面積+17O17O+ピーク面積+17O18O+ピーク面積+18O18O+ピーク面積)・・・(11)
18O+濃度(atom%)=(1/2×16O18O+ピーク面積+1/2×17O18O+ピーク面積+18O18O+ピーク面積)÷(16O16O+ピーク面積+16O17O+ピーク面積+16O18O+ピーク面積+17O17O+ピーク面積+17O18O+ピーク面積+18O18O+ピーク面積)・・・(12)
四重極分析計を用いて、特許文献1に記載された分析方法によって酸素同位体濃度を測定した点を除いて、実施例6と同様にした。
16O濃度は43.246%(相対標準偏差は0.352%)、17O濃度は10.453%(相対標準偏差は0.256%)、18O濃度は46.301%(相対標準偏差は0.328%)となり、17O濃度の分析値で標準値からのずれが大きくなった。
比較例7では、質量数34のピークを16O18O+と17O17O+とに分離して検出できず、すべてを16O18O+として測定するのに対し、実施例6では、16O18O+と17O17O+とを分離して検出でき、16O18O+と17O17O+とを個別に測定できるので、実施例6は比較例7よりも正確な分析が可能である。
<水蒸気の影響の確認>
実施例2にて、純水を電気分解した試料をイオン化エネルギー70eV、イオン化電流300μAで分析直後、検出器内に水蒸気が滞留した状態で、実施例2の酸素同位体試料を最適化したイオン化条件で分析した(実施例8)。さらに、12時間暖機運転し、検出器内に水蒸気が滞留していない状態で同じ試料を分析し、検出器内の水蒸気の影響を確認した(実施例7)。結果を表9に示す。
<電気分解セル>
実施例2の酸素同位体試料の液試料について、電気分解セルに電解質添加した場合(実施例9)と電極間にイオン交換膜(ナフィオン膜)を設置した場合(実施例10)との比較を行った。結果を表10に示す。
2 試料導入装置
3 ヘリウムボンベ
4 圧力制御器
4a 2次側圧力計
5 ヘリウム導入バルブ
5a ヘリウム導入ライン
6 電気分解装置
7 電気分解セル入口バルブ
8 液体試料導入口
9 電気分解セル
9a 電解質
10 陽極
11 陰極
12 陽極コード
13 陰極コード
14 直流電源装置
15 圧力センサー
16 圧力モニター
17 ガスサンプラー
18 ガスサンプラー入口バルブ
19 ガスサンプラー容器
20 ガスサンプラー出口バルブ
20a ガスサンプラー出口ライン
21 ガスサンプラー真空引き用バルブ
21a ガスサンプラー真空引き用ライン
22 電気分解装置真空引き用バルブ
22a 電気分解装置真空引きライン
23 真空ポンプバルブ
24 真空ポンプ
25 ガス試料導入バルブ
25a ガス試料導入ライン
25b ガス試料用圧力制御器
26 ガス試料導入口
27 質量分析計導入バルブ
28 マスフローコントローラー
29 二重収束磁場電場型質量分析計
Claims (8)
- 試料中に含まれる3種の酸素同位体を測定する酸素同位体濃度測定装置であって、
二重収束磁場電場型質量分析計を有し、
前記二重収束磁場電場型質量分析計が、トータルイオンを抽出して分析するトータルイオン分析部と、酸素由来のイオン成分をすべて抽出するイオン成分抽出部と、質量分離して酸素由来のイオン成分から酸素同位体の濃度を測定する酸素同位体濃度測定部と、を有し、
前記酸素同位体濃度測定部において、前記酸素由来のイオン成分のピーク面積を測定して、酸素同位体濃度を算出する、酸素同位体濃度測定装置。 - 前記トータルイオン分析部が、イオン化エネルギー及びイオン化電流を調節する調節部を有する、請求項1に記載の酸素同位体濃度測定装置。
- さらに、試料導入装置を有し、
前記試料が液体試料又はガス試料である、請求項1又は2に記載の酸素同位体濃度測定装置。 - 前記試料が液体試料であり、
前記試料導入装置が、陽極と陰極が同じセル内に設置されている電気分解セルを有し、
前記電気分解セルが、少量の試料を用いて電気分解し、酸素と水素とを同時に発生させて同一の容器内に収集させる、請求項3に記載の酸素同位体濃度測定装置。 - 前記電気分解セルが、陽極と陰極との間にイオン交換膜が設置されず、電気分解前に電解質が添加され、イオン交換膜由来の酸素同位体交換と水蒸気の発生とを抑えた状態で試料を電気分解する、請求項4に記載の酸素同位体濃度測定装置。
- 前記試料がガス試料であり、
前記試料導入装置が、真空ポンプを用いて経路を真空にするガスサンプラー真空引き用ラインと、ガス試料を充填させたガスサンプラー容器に不活性ガスを導入する不活性ガス導入ラインと、を有する、請求項3に記載の酸素同位体濃度測定装置。 - 前記酸素同位体濃度測定部において、大気成分由来の酸素同位体のピーク面積値を差し引き、さらに、酸素の同位体とアルゴンの同位体とを質量分離する、請求項6に記載の酸素同位体濃度測定装置。
- 試料中に含まれる3種の酸素同位体を測定する酸素同位体濃度測定方法であって、
二重収束磁場電場型質量分析計を用い、トータルイオンを抽出して分析し、酸素由来のイオン成分をすべて抽出し、酸素由来のイオン成分をすべて質量分離することにより酸素同位体濃度を測定し、酸素同位体濃度を測定する際に、ピーク面積を定量し、酸素同位体濃度を定量する、酸素同位体濃度測定方法。
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