以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図21を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
(実施形態1)
図1(a)は実施形態1に係る衣類100を示す正面図であり、図1(b)は衣類100の背面図である。衣類100は、前面サポート部1、体側サポート部2、腰サポート部3、および大腿サポート部4を備え、上半身から下半身に亘って身体に密着し、身体を覆う。衣類100は、例えばスイミング用のスイムウェア、ヨガや体操等で着用するスポーツウェアである。尚、図1(a)および図1(b)において、破線は生地の縫合線を、点線は裏地の周縁を表しており、衣類100の各部分は、該縫合線および裏地の周縁で区切られている。
前面サポート部1は、胸サポート部11、中央サポート部12を有し、身生地に裏地を貼り合わせて伸縮性を低く抑えた構成となっている。胸サポート部11はバストに対応する位置に設けられている。胸サポート部11の下縁辺11aは、体側から胸部前面の中央にかけて、中央へ向かうにつれてやや下降するように延びているが、水平に延びていてもよい。胸サポート部11の上縁辺11bは、体側から胸部前面の中央にかけて、中央へ向かうにつれて下降するように延び、胸部中央部において傾斜が大きく、凹部11cが形成されている。上縁辺11bに連続して上側に胸上サポート部15が設けられている。胸上サポート部15は、身生地の一重となっており、前面サポート部1よりも伸縮性が高い。
中央サポート部12は、胸サポート部11の下部から股上にかけて延び、前面正中線に沿って配されている。中央サポート部12は、胸サポート部11との接続部分が幅の狭い幅狭部12aとなっており、幅狭部12aの下方に幅広部12bが延びている。幅広部12bの左右の側辺部12cは、体側に対して凹状に湾曲している。
図2はバージスラインと胸サポート部11との関係を説明するための模式図である。図2は、衣類100の正面図に相当している。バージスラインは、バストトップの位置Qを中心とする円弧状に形成されており、バストの下部および側部の周縁に相当する。胸サポート部11の下縁辺11aは、バージスラインの下端よりも上側に位置するように設けられている。胸サポート部11の外側辺11dは、バージスラインの内側または外側であってもよく、ほぼバージスライン上に位置していてもよい。
体側サポート部2は、体側から前面へ延び、胸サポート部11の下縁辺11aの下方および中央サポート部12の側方を切れ間なく覆っている。体側サポート部2は、身生地の一重であり、裏地を付けた前面サポート部1よりも伸縮性が高くなっている。また、体側サポート部2は体側から背面へ延び、背面孔部50の周縁の一部をなす。体側サポート部2は、前面側では、バージスラインを含みバストの下部から腹部までの領域、背面側で、肋骨部分の領域を占めている。体側サポート部2および胸上サポート部15は、身生地の一重で伸縮性が、前面サポート部1よりも高い、本発明における伸縮性付与部となっている。
腰サポート部3は、前面から背面に亘って形成されており、身体の腰部および臀部を覆うように設けられている。腰サポート部3は、前面側では、中央サポート部12の外側辺12dに連続している。腰サポート部3の上部は、前面側および背面側において、体側サポート部に連結されている。
大腿サポート部4は、身体の左右の大腿部をそれぞれ覆う筒状に形成された大腿サポート本体部41と、大腿の後面においてポイント的に設けられた大腿後面サポート部42とを有する。腰サポート部3と、大腿後面サポート部42とは分割されており、腰サポート部3と大腿後面サポート部42の間の離間部41aが形成されている。大腿後面サポート部42は、下方から上方へ向かうにつれて幅広に形成されており、大腿後面サポート部42の周方向の寸法は、大腿部の後面における周方向の寸法の半分以下としている。尚、大腿部の後面の周方向の寸法は、衣類100の大腿部での周方向における全周寸法の半分の寸法であると定義する。また、大腿後面サポート部42の上縁側における外縁辺は、大腿部の後面における外縁から3分の1内側に入ったラインよりも内側に位置している。
衣類100は、身生地および裏地ともに、例えばポリウレタンやナイロン等の素材で構成されたストレッチ織物で形成されている。身生地と裏地を貼り合わせた前面サポート部1、腰サポート部3および大腿後面サポート部42では、裏地を固定するために裏地の縁部をホットメルトで身生地に溶着加工している。また、身生地および裏地には、ニット、メッシュ、不織布およびクロロプレンゴム等の伸縮性を有する生地を用いることができる。
また、衣類100は、各部における伸縮性の違いを設けるために、伸縮性の異なる生地を用いた各パーツを縫合する構成、高伸縮性の部分にオパール加工を施して溶かした構成、低伸縮性の部分にシリコンやアクリル樹脂加工を施した構成としてもよい。また、衣類100は、ホールガーメントニットで縫製や加工なしに糸や組織を変化させて伸縮性に差をつける構成や、身生地および裏地にスリットやパンチング加工による穴等を施し、その密度によって伸縮性に差をつける構成としてもよい。
図3(a)は、衣類100の各部の伸縮性を示す正面図、図3(b)は衣類100の各部の伸縮性を示す背面図である。体側サポート部2および胸上サポート部15における丈方向の伸縮性をS1、周方向の伸縮性をS2とする。大腿サポート部4の丈方向の伸縮性をS3、周方向の伸縮性をS4とする。前面サポート部1の丈方向の伸縮性をS5、周方向の伸縮性をS6とする。腰サポート部3の丈方向の伸縮性をS7、周方向の伸縮性をS8とする。
上半身に配置されている体側サポート部2および胸上サポート部15の身生地の伸縮性S1およびS2は、下半身に配置されている大腿サポート部4の身生地の伸縮性S3およびS4よりも高くなっている。上半身の身生地について、丈方向の伸縮性S1は、周方向の伸縮性S2よりも高い。また、下半身の身生地について、丈方向の伸縮性S3は、周方向の伸縮性S4よりも高い。
前面サポート部1の丈方向の伸縮性S5は、大腿サポート部4の丈方向の伸縮性S3とほぼ同じ程度としている。また、前面サポート部1の周方向の伸縮性S6は、大腿サポート部4の周方向の伸縮性S4と同じかS4よりも低くする。腰サポート部3の丈方向の伸縮性S7は、周方向の伸縮性S8よりも高くする。腰サポート部3の丈方向の伸縮性S7は、前面サポート部1の周方向の伸縮性S6とほぼ同じ程度としている。尚、大腿後面サポート部42の伸縮性は、腰サポート部3と同じである。
総合すると、各部の伸縮性は、概ね次の関係式で表される。
S1>S2≧S3≒S5>S4≧S6≒S7>S8
尚、伸縮性S2とS3はどちらが高い値をとってもよい。また、伸縮性S4とS6は、S6がS4よりも高い値をとってもよい。
次に衣類100の作用について説明する。前面サポート部1は、胸サポート部11の伸縮性が体側サポート部2よりも小さいことで、バストを圧縮して蹴伸び時に水の抵抗を減らす効果を高めることができる。図4(a)および図4(b)は着用者が腕を挙げて蹴伸びした姿勢を説明するための模式図である。図4(a)および図4(b)は着用者の側方から見た外観を表している。図4(a)に示すように、着用者が腕を挙げた姿勢をとったときに、胸椎および腰椎の曲がりが小さく、身体が真っ直ぐに伸びた姿勢となることで、例えば水泳では蹴伸び状態での水の抵抗が小さくなる。
例えば着用者の肩の動きが硬く腕が十分に伸びていないと、図4(b)に示すように腕を挙げたときに、胸郭の下部が前側へ張り出し、図4(a)に示す場合に比べて、蹴伸び状態での水の抵抗が大きくなる。また、図4(b)に示すように臀部が後方へ張り出した状態であると、図4(a)に示す場合に比べて、蹴伸び状態での水の抵抗が大きくなる。
前面サポート部1は、バストの領域を占める胸サポート部11および胸サポート部11から股上まで延びる中央サポート部12の丈方向の伸縮性を低くすることで、着用者が腕を挙げたときに胸郭の後方への倒れおよび腰部の前方への倒れを抑制し、蹴伸び姿勢が真っ直ぐとなるよう維持する。
胸サポート部11の下縁辺11aの下方には、伸縮性の高い体側サポート部2があり、肋骨下部での着圧を低減している。肋骨下部は、着用者が呼吸している状態で拡大縮小を繰り返すとともに、腕挙げ動作時にも周径が拡大する。この部分において、中央サポート部12が体側サポート部2と丈方向において併存することにより、着用初期状態における体側サポート部2の着丈方向への過剰な伸長および張力の偏りを抑えることができる。これにより、更に胸部から体側にかけての皮膚の伸びに対する生地の追従性がより高まる。
胸サポート部11の上方に配される胸上サポート部15は、胸サポート部11よりも丈方向の伸縮性が高くなることで、肩部における着圧を低く設定でき、肩の締め付け感や肩の動きの妨げとなることが抑制されている。
また、胸サポート部11の上縁辺11bは、上方に対して凹状となっており、凹状部分(凹部11c)の下端の高さは、バストの下縁よりも高く、バストトップよりも低い位置であることが望ましい。胸サポート部11の上縁辺11bの中央に凹状部分が設けられていることで、例えば水泳のバタフライのように腕を外に開く動作の際に、左右のバスト間が突っ張らず、動作性が良くなる。
体側およびバージスライン下方の領域は、腕挙げ動作によって皮膚が大きく伸びる。胸サポート部11の下縁辺11aがバージスラインの下端よりも上側にあり、丈方向の伸縮性の高い体側サポート部2によって、体側およびバスト下部(バージスラインを含む)を覆うことで、該領域での皮膚の伸びに追従し、腕挙げ動作に伴って伸びることで、着用者の運動性を妨げないよう機能する。さらに、胸サポート部11の下縁辺11aと中央サポート部12の接続部分において、幅狭部12aが設けられることにより、胸サポート部11の上下方向への動きがスムーズになる。尚、身体の中央は丈方向の皮膚のひずみが小さいため、丈方向の伸縮性が低い中央サポート部12が設けられていても、腕挙げ動作の妨げとはならない。
衣類100がスイムウェアである場合、専ら運動性を高めるべく、脇下等の領域に相当する部分に生地が設けられない傾向にある。一方、衣類100がヨガや体操等で着用するスポーツウェアである場合には、脇下を身生地で覆う構成をとる場合もある。この場合、伸縮性の高い体側サポート部2が脇下等の領域を覆うように設けられることで、腕挙げ動作時の体側および脇下の領域での皮膚の伸びの妨げが抑制され、運動性が良くなる。
肋骨より下の腹部から腰部にかけては、周方向に伸縮性が低い腰サポート部3によって広い面積で覆う。蹴伸び姿勢においては、通常腹部が縮径するため、十分な着圧をかけられない恐れがあるが、腰サポート部3を設けることによって腹部の着圧を高めることが可能となり、着用者に筋活動を意識させることができる。
着用者の背面において、腰サポート部3と大腿後面サポート部42とは分割されており、着用の初期状態、および股関節が軽度に屈曲した状態において、腰サポート部3と大腿後面サポート部42の間の離間部41aにおける丈方向の張力が高くなり過ぎず、軽度の股関節屈曲動作を妨げない。例えば、水泳におけるキック動作時に、疲労前の通常範囲のキック(軽度の股関節屈曲動作に相当)が打ち易くなる。
また、離間部41aの側方周辺には高剛性な領域や縫合線は設けられておらず、離間部41aにおいて丈方向に着用時の初期ひずみが適度に与えられて初期張力を与えることができる。
大腿後面サポート部42は下方から上方へ向かうにつれて幅広になっている。着用時には、着用者の大腿部後面における皮膚を、離間部41aに溜めることで、股関節の屈曲可動域が広げられる。また、大腿後面サポート部42の上部が幅広であることによって、しっかりと皮膚を寄せることができる。また、大腿後面サポート部42の下部が幅狭としてあることで、着圧が不要に高まってしまうことを抑制している。
大腿後面サポート部42は、大腿サポート部4の裾には繋がっておらず、例えば裾から2cm程度上まで形成されている。大腿後面サポート部42は、股関節の屈曲時における生地張力の増減が大腿後面サポート部42よりも上で完結することで、裾のずれ上がりが抑えられる。
大腿後面サポート部42の周方向の幅は、例えば3cm~6cm程度とし、左右それぞれの大腿後面の全幅よりも狭くすることで、大腿部における過度の締め付けを抑制している。着用者がキック動作をする際に、大腿部において過度に締め付けられているとキックが打ちづらくなるため、大腿後面サポート部42は、周方向の着圧および張力の増大を極力抑えるように、周方向の幅を設定する。
離間部41aの丈方向の幅(即ち、腰サポート部3の臀部における下縁と大腿後面サポート部42との間の距離)は、例えば3cm~6cm程度とする。但し、離間部41aの丈方向の幅が狭すぎると、着用状態の時点で離間部41aの伸長率が局所的に高まり、丈方向に発生する張力が高くなりすぎて軽度の股関節屈曲を伴う通常のキックがしづらくなる。また、離間部41aの丈方向の幅が広すぎると、疲労して股関節屈曲が大きなキック動作となった際に離間部41aの丈方向の張力が足りず、過度な股関節屈曲動作を制御できなくなる。
大腿後面サポート部42は、最も外側の周縁が後面の3分の2の幅よりも内側に位置するように設けられる。これにより、大腿後面サポート部42は、股関節が内転する際の可動性を確保すべく、大転子部分から大腿外側が硬くならないように配置されている。また、離間部41aの丈方向の幅は、内側より外側の方が距離を大きくしてあり、フロントキックが内転気味に打てるようキック動作を誘導することができる。
(実施形態2)
図5(a)は実施形態2に係る衣類100を示す正面図であり、図5(b)は衣類100の背面図である。衣類100は、腰サポート部3および大腿サポート部4を備え、着用者の下半身に密着し、身体を覆う。衣類100は、例えばスイミング用、或いはヨガや体操等で着用するスポーツ用のパンツである。尚、図5(a)および図5(b)において、破線は生地の縫合線を、点線は裏地の周縁を表しており、衣類100の各部分は、該縫合線および裏地の周縁で区切られている(以下の各図において同様である)。
腰サポート部3は、身生地に裏地を貼り合わせた二重で構成されている。腰サポート部3の前面における上縁辺3aは、背面における上縁辺3bよりも上方に位置する。腰サポート部3背面における上縁辺3bには身生地が配置されている。腰サポート部3の前面は、腰部の外側から股上の領域を覆い、身体の中央に向かうにつれて下降するように下縁辺3cが延びている。下縁辺3cは、下方に対して凹状となるように湾曲している。
腰サポート部3の後面は、腰部の外側から臀部を覆い、身体の中央に向かうにつれて下降するように下縁辺3dが延びている。下縁辺3dは、身体の外側では部分的に下方に対して凹状に湾曲しており、臀部を覆い易くするために、身体の中央の大半で下方に対して凸状に湾曲している。
大腿サポート部4は、身体の左右の大腿部をそれぞれ覆う筒状に形成された大腿サポート本体部41と、大腿の後面においてポイント的に設けられた大腿後面サポート部42とを有する。腰サポート部3と、大腿後面サポート部42とは分割されており、腰サポート部3と大腿後面サポート部42の間の離間部41aが形成されている。大腿後面サポート部42は、下方から上方へ向かうにつれて幅広に形成されており、大腿後面サポート部42の周方向の寸法は、大腿部の後面における周方向の寸法の半分以下としている。また、大腿後面サポート部42の上縁側における外縁辺は、大腿部の後面における外縁から3分の1内側に入ったラインよりも内側に位置している。尚、大腿サポート部4における大腿後面サポート部42と離間部41aについては、実施形態1と同等の構成となっており、実施形態1におけるそれらの部分と同等に作用する。
腰サポート部3の前面における上縁辺3aが、背面における上縁辺3bよりも上方に位置することで、着用者の前面側での着圧が、後面側よりも上方寄りの位置において作用する。また、腰サポート部3は、図5(a)および図5(b)に示すように、前面側では着用者の腰部に寄った領域を覆っており、後面側では着用者の臀部の下部に寄った領域を覆っており、後面側よりも前面側のほうが着圧がかかる位置が高くなる。前面側で高い位置で着圧がかかることによって、骨盤位置を補正する効果があり、蹴伸び状態において身体が真っ直ぐ伸びた姿勢が維持され、水の抵抗を低減することができる。
(変形例)
図6(a)~図6(d)は変形例に係る衣類100を示す正面図である。図6(a)に示す変形例では、衣類100の中央サポート部12の側辺部12cが直線状となっている。中央サポート部12の側辺部12cが直線状であっても、丈方向および周方向において実施形態1の中央サポート部12と同等の作用効果を有する。図6(b)に示す変形例では、衣類100の幅狭部12aの幅が極端に狭くなっており、バージスライン付近の皮膚をより広く体側サポート部2で覆うことができる。バージスライン付近の皮膚をより広く体側サポート部2で覆うことで、皮膚の伸縮への生地の追従性が高くなり、腕挙げ動作がし易くなる。
図6(c)に示す変形例では、中央サポート部12の側辺部12cが下方に向かうにつれて裾広がりとなるように設けられており、腰サポート部3との連続性が増して腹部における着圧を高めることができる。図6(d)に示す変形例では、中央サポート部12の中央に身生地一重の部分が形成されており、肋骨下部における着圧を抑制することができる。
図7(a)~図7(e)は別の変形例に係る衣類100を示す正面図である。図7(a)に示す変形例では胸サポート部11の外側辺11dが内寄りに形成されている。図7(b)に示す変形例では胸サポート部11の下縁辺11aが上方寄りに形成されている。図7(c)に示す変形例では胸サポート部11の下縁辺11aが外側において上方向かうように湾曲して形成されている。図7(a)~図7(c)に示す変形例では、バージスライン付近を広く体側サポート部2で覆うため、腕挙げ動作のし易さ、生地の追従性を更に高めることができる。
図7(d)および図7(e)に示す変形例では胸サポート部11の左右と、中央サポート部12とが分割されて設けられている。図7(e)に示す変形例では、さらに中央サポート部12の上部が分割され、中央に身生地一重の部分も設けられている。図7(d)および図7(e)に示す変形例では、胸サポート部11および中央サポート部12が分割されることで、衣類100内に入り込んだ水や空気が隙間の身生地一重の部分から排出される効果がある他、生産時に生地の材料取りがよくなる。尚、腰部の前方への倒れを抑制する効果を確保するために、中央サポート部12の最上点を胸サポート部11の最下点と同程度かそれより上方とすることが望ましい。
図8(a)~図8(d)は別の変形例に係る衣類100を示す正面図である。図8(a)および図8(b)に示す変形例では中央サポート部12の周方向の幅を広くしている。これらの変形例では、肋骨の前方への突出を幅広い中央サポート部12で抑え、腰部の前方への倒れを抑制する効果を高める。
図8(c)に示す変形例では中央サポート部12の幅狭部12aがバージスラインにかかって形成されており、図8(d)に示す変形例では幅狭部12aの高さが極端に短く形成されている。これらの変形例では、バージスライン付近の身生地が二重の領域を増やすことによるバストを隠す効果や、中央サポート部12の領域が増えることにより、バストを圧縮して蹴伸び時に水の抵抗を減らす効果を高めることができる。
図9(a)~図9(c)は別の変形例に係る衣類100を示す正面図である。図9(a)に示す変形例では胸サポート部11が袖ぐりに達しており、図9(b)に示す変形例では胸サポート部11の上縁辺11bが波打つような形状となっている。これらの変形例では、バストへの着圧が高められ、バストを圧縮して水の抵抗を減らす効果を高めることができる。図9(c)に示す変形例では中央サポート部12の外側辺12dが外側に対して凸状に形成されており、腰椎の高さにおける前側の中央サポート部12が占める領域を広くすることで腰の反りを抑える効果を高める。
図10(a)~図10(f)は、別の変形例に係る衣類100を示す背面図である。衣類100は実施形態2に示したパンツ形式のものである。図10(a)および図10(b)に示す変形例では、大腿後面サポート部42の上縁を、外側へ向かうにつれて下降するような形状としたものであり、それぞれ上方に対して凸状または凹状に形成されている。図10(c)に示す変形例では、大腿後面サポート部42の外側辺を外側に対して凹状に形成している。図10(a)~図10(c)に示す変形例は、実施形態2における衣類100と同等の作用効果を有する。
図10(d)に示す変形例では、大腿後面サポート部42をより内側に配置しており、着用者に対して、脚の内転をより意識させ易い。図10(e)に示す変形例では、大腿後面サポート部42を丈方向に長くしており、大腿後面サポート部42のずれ上がりを防ぎ、キック動作をより確実にサポートすることができる。図10(f)に示す変形例では、大腿後面サポート部42を丈方向に波打つような形状としている。この場合も、実施形態2における衣類100と同等の作用効果を有する。
図11(a)~図11(c)は、別の変形例に係る衣類100を示す背面図である。図11(a)に示す変形例では大腿後面サポート部42を周方向に3分割して設けており、図11(b)に示す変形例では大腿後面サポート部42を丈方向に2分割して設けている。図11(c)に示す変形例では大腿後面サポート部42に切り込みを入れている。図11(a)および図11(c)に示す変形例では、大腿後面サポート部42を周方向に途切れさせることで、着用者の大腿部への着圧を抑えることができる。図11(b)に示す変形例では、大腿後面サポート部42を丈方向に途切れさせることで、丈方向への張力増大を抑えるとともに、着用時に裾がずれ上がることを防ぐことができる。尚、大腿後面サポート部42の分割数や切れ込みの数は、これらの変形例に限定されない。
図12(a)~図12(e)は、別の変形例に係る衣類100を示す背面図である。図12(a)に示す変形例では腰サポート部3と大腿後面サポート部42との間の離間部41aの丈方向の距離を大きくしている。図12(b)に示す変形例では大腿後面サポート部42の周方向の幅を細くし、図12(c)に示す変形例では大腿後面サポート部42の丈方向の寸法を短くしている。図12(a)~図12(c)に示す変形例では、股関節の屈曲に影響を与えるサポート力を弱く調整できるため、大腿サポート本体部41の伸縮性を高めに設定することができる。また、図12(b)および図12(c)に示す変形例では、大腿後面サポート部42の面積が小さいため材料を削減でき、着用者の大腿部下部における着圧の増大を抑制することができる。
図12(d)に示す変形例では腰サポート部3と大腿後面サポート部42との間の離間部41aの丈方向の距離を小さくし、股関節屈曲の制御力が高めることができる。図12(e)に示す変形例では大腿後面サポート部42が大腿サポート部4の裾に達しており、大腿後面サポート部42のずれ上がりを防ぎ、キック動作をより確実にサポートすることができる。
図13(a)および図13(b)は、別の変形例に係る衣類100を示す背面図である。図13(a)に示す変形例では大腿後面サポート部42の下部が分岐し、周方向に延びて前側に回り込んでいることで、大腿後面サポート部42のずれ上がりを防ぎ、キック動作をより確実にサポートすることができる。図13(b)に示す変形例では大腿後面サポート部42の下部における周方向の幅が広がっていることで、この部分での着圧が増え、図13(a)に示す変形例と同様に大腿後面サポート部42のずれ上がりを防ぎ、キック動作をより確実にサポートすることができる。
図14(a)は別の変形例に係る衣類100を示す正面図であり、図14(b)は別の変形例に係る衣類100を示す背面図である。この変形例では腰サポート部3のベースパターンの後側におけるウエスト高が前側のそれよりも低くしてあり、骨盤を後傾方向に回転させる作用をより高めることができる。
図15(a)は別の変形例に係る衣類100を示す正面図であり、図15(b)は別の変形例に係る衣類100を示す背面図である。この変形例では鼠経部がより広く伸縮性の高い大腿サポート本体部41で覆われており、着圧をかける高さを変えることで骨盤を後傾方向に回転させる作用をより高めることができる。
図16(a)は別の変形例に係る衣類100を示す正面図であり、図16(b)は別の変形例に係る衣類100を示す背面図である。この変形例では腰サポート部3の前面側の中央部が、股下まで延びている。図17(a)は別の変形例に係る衣類100を示す正面図であり、図17(b)は別の変形例に係る衣類100を示す背面図である。この変形例では腰サポート部3の上縁辺が上方に対して凸状に形成されている。図18(a)は別の変形例に係る衣類100を示す正面図であり、図18(b)は別の変形例に係る衣類100を示す背面図である。この変形例では腰サポート部3が前面側と背面側で分割され、体側において丈方向にオーバーラップしている。図16(a)~図18(b)に示す変形例では、実施形態2における衣類100と同等の作用効果を有する。
図19(a)は別の変形例に係る衣類100を示す正面図であり、図19(b)は別の変形例に係る衣類100を示す背面図である。この変形例では腰サポート部3の上方に例えば身生地一重の帯状の部分が設けられており、腰サポート部3がウエストの縫製と重ならないため、ウエストの過度な締め付けを抑えることができる。
図20(a)は別の変形例に係る衣類100を示す正面図であり、図20(b)は別の変形例に係る衣類100を示す背面図である。この変形例では腰サポート部3が前面側と背面側で分割され、体側において周方向に離間して設けられている。図21(a)は別の変形例に係る衣類100を示す正面図であり、図21(b)は別の変形例に係る衣類100を示す背面図である。この変形例では腰サポート部3の上縁辺が波打つように形成されている。図20(a)~図21(b)に示す変形例では、腰回りに過度な着圧が作用することを防ぐことができる。また、上述の実施形態および各変形例において、体側サポート部2と大腿サポート本体部41との伸縮性、および、前面サポート部1と大腿後面サポート部42の伸縮性を同程度に設定してもよい(上半身および下半身において、それぞれ低伸縮性部分どうし、高伸縮性部分どうしが同じ程度の伸縮性を有する構成であってもよい)。また、前面サポート部1や伸縮性付与部内の全域が同じ伸縮性である必要はなく、部分的に伸縮性が異なっていてもよい。
次に、実施形態1および実施形態2並びに各変形例に係る衣類100の特徴を説明する。
衣類100は、着用者の胸部を覆う胸サポート部11、および胸部から股上にかけて形成される中央サポート部12を有する前面サポート部1と、前面サポート部1よりも伸縮性が高い伸縮性付与部としての体側サポート部2とを備え、着用者の身体に密着するように形成されている。胸サポート部11は、下縁辺11aがバージスラインよりも上方に位置し、体側サポート部2は、下縁辺11aの下方および体側部を覆うように形成されている。これにより、衣類100は、蹴伸びなどの腕を挙げる動作において、胸部から体側にかけての皮膚の伸びに生地が追従し、身体の可動性が良く、中央サポート部12により蹴伸び姿勢が良好となる。
また、胸サポート部11と中央サポート部12との接続部分に周方向の幅が狭い幅狭部12aが形成され、中央サポート部12は、幅狭部12aに続いて幅広部12bが下方に延びるように設けられている。これにより、体側サポート部2が覆う領域がバージスラインの下方において広がり、皮膚の伸びに対する生地の追従性がより高まる。
衣類100は、着用者の胸部を覆う胸サポート部11、および胸部から股上にかけて形成される中央サポート部12を有する前面サポート部1と、前面サポート部1よりも伸縮性が高い伸縮性付与部としての体側サポート部2とを備え、着用者の身体に密着するように形成されている。胸サポート部11と中央サポート部12との接続部分に周方向の幅が狭い幅狭部12aが形成され、中央サポート部12は、幅狭部12aに続いて幅広部12bが下方に延びるように設けられている。体側サポート部2は、胸サポート部11の下方および体側部を覆うように形成されている。これにより、衣類100は、幅狭部12aを設けることで伸縮付与部としての体側サポート部2がバージスラインの下縁を覆う領域が、幅狭部12aを設けない場合よりも拡大し、胸部から体側部にかけての皮膚の伸びに対する生地の追従性がより高まる。また、幅狭部12aを設けることで、左右の胸サポート部11は正中線付近を軸に上方に回動し易くなる。つまり、腕挙げに伴って上方へ変位する左右の胸部と、変位しない谷間部との相対的な位置変化に追従し易くなる。
また、伸縮性付与部は、さらに胸サポート部11の上方に形成されており、胸上サポート部15がこれに相当する。これにより、衣類100は、着用初期状態での丈方向への伸長率と張力を高めた状態とし、腕挙げに伴って伸長率と張力が減じる方向の動きとなるため、腕挙げがしやすくなる。また、肩部における着圧を低く設定でき、肩の締め付け感や肩の動きの妨げとなることを抑制することができる。
また、胸サポート部11の上縁辺11bは、中央部が上方に対して凹状となっている。これにより、衣類100は、腕を外に開くような動作時に、左右の胸の間が突っ張らない。
また、着用者の腰部に配設されており、中央サポート部12の周方向における両端から背中を覆い、前面サポート部1よりも周方向の伸縮性が低い腰サポート部3を備える。これにより、衣類100は、着用者の腰部における着圧を高めることができる。
また、腰サポート部3と離間して着用者の大腿部の後面に配設されており、着用者の大腿部を覆う大腿サポート本体部41よりも伸縮性が低い大腿後面サポート部42を備える。これにより、衣類100は、着用者の過度な股関節屈曲を制御し、股関節伸展へと促すことで、脚のキック動作を補助することができる。
また、腰サポート部3と大腿後面サポート部42との間は、外側よりも内側が狭い。これにより、衣類100は、脚の外への開きを抑制することができる。
また、大腿後面サポート部42の周方向の寸法は、大腿部の後面における周方向の寸法の半分以下である。これにより、衣類100は、大腿部の着圧が過度に高くならない。
また、大腿後面サポート部42の上縁側における外縁辺は、大腿部の後面における外縁から3分の1内側に入ったラインよりも内側に位置している。これにより、衣類100は、脚の外への開きを抑制することができる。
衣類100は着用者の身体に密着するように形成されている。衣類100は、着用者の大腿部を覆う大腿サポート部4と、腰部における前面および背面を覆い、大腿サポート部4よりも伸縮性が低い腰サポート部3とを備える。腰サポート部3の上縁辺は、背面側よりも前面側が高い位置にある。これにより、衣類100は、着用者の腰部において、前面側では上部寄り、背面側では下部寄りに着圧をかけることで、過度に前傾した骨盤が起きるように姿勢を補正することができる。
衣類100は、着用者の骨盤の高さに相当する位置に上縁辺が形成され、下半身を覆うように形成されている。これにより、衣類100は、男性用の水着(パンツ)等について、過度に前傾した骨盤が起きるように姿勢を補正することができる。
また、腰サポート部3の上縁辺は、背面側において上方に対して凹状に形成されている。これにより、衣類100は、腰サポート部3の上縁辺を背面側において低い位置に形成することができ、過度に前傾した骨盤が起きるように姿勢を補正することができる。
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。