JP7293731B2 - 光学部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学部材の製造方法に関するものである。
従来、映像源から投射された映像光を反射して表示する光学部材として、様々なものが開発されている。なかでも、透明性を有する光学部材は、窓ガラス等のように透光性の高い部材と一体化した合わせ板として作製されると、投射された映像光を反射して良好に映像が視認でき、かつ、映像光を投射しない不使用時等には光学部材の向こう側の景色が透けて見えるため、意匠性の高さ等から需要が高まっている。
映像光を反射する透明性を備えた層(以下、光学機能層と呼ぶ)は、従来、樹脂フィルム等の基材の上に形成される積層構造となっていた。これらを2枚の板(例えば、ガラス板)で挟み込む合わせ板として作製する場合には、光学機能層と板との間に接着層を挿入し熱接着する必要がある。しかし、接着層と基材の熱収縮率や熱膨張率の差によりシワが発生し、投影像や透過像が歪むおそれがあった。
特許文献1には、シワの発生を抑制するために、基材の上に光学機能層(映像投影層)を形成した後に基材を剥離する手法が開示されている。しかし、特許文献1に開示されている手法では、基材を剥離する工程が必要であることから、製造工程が煩雑であり、また、製造工程が増えることから歩留まりが低下するおそれもあった。
特開2018-31941号公報
本発明の課題は、製造工程を増やすことなくシワを抑制できる光学部材の製造方法を提供することである。
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
第1の発明は、映像源(LS)から投射された映像光を観察者側へ反射し、かつ、透明性を有する光学機能層(10)と、前記光学機能層(10)よりも前記映像源(LS)側に設けられた透明性を有する第1支持体(20)と、前記光学機能層(10)と前記第1支持体(20)との間に配置され、前記光学機能層(10)に直接接着している第1接着層(40)と、前記映像源(LS)側とは反対の背面側に設けられた透明性を有する第2支持体(30)と、前記光学機能層(10)と前記第2支持体(30)との間に配置され、前記光学機能層(10)に直接接着している第2接着層(50)と、を備える光学部材(100)を製造する光学部材(100)の製造方法であって、前記光学機能層(10)を作製する光学機能層作製工程と、前記第1支持体(20)と、前記第1接着層(40)と、前記光学機能層(10)と、前記第2接着層(50)と、前記第2支持体(30)と、を接着する接着工程と、を備え、前記光学機能層作製工程は、前記第1接着層(40)及び前記第2接着層(50)と同一の素材を基材として用いて前記光学機能層(10)の作製を行う光学部材(100)の製造方法である。
第2の発明は、第1の発明に記載の光学部材(100)の製造方法において、前記光学機能層(10)は、光透過性を有する層であって、当該光学部材(100)の厚み方向の背面側の面に、映像光が入射する第1の面(121a)とこれに対向する第2の面(121b)とを有する単位光学形状(121)が複数配列されて形成された第1光学形状層(12)と、前記単位光学形状(121)の少なくとも前記第1の面(121a)の一部に形成され、入射した光の少なくとも一部を反射し、その他の光を透過する機能を有する反射層(13)と、前記反射層(13)よりも背面側に設けられた光透過性を有する層であって、前記単位光学形状(121)の間の谷部を充填するように積層された第2光学形状層(14)と、を備え、接着工程は、前記第1接着層(40)を前記第1光学形状層(12)に直接接着し、前記第2接着層(50)を前記第2光学形状層(14)に直接接着すること、を特徴とする光学部材(100)の製造方法である。
第3の発明は、第2の発明に記載の光学部材(100)の製造方法において、接着工程は、前記第1接着層(40)を第1支持体(20)に直接接着し、前記第2接着層(50)を第2支持体(30)に直接接着すること、を特徴とする光学部材(100)の製造方法である。
第4の発明は、第1の発明から第3の発明までのいずれかに記載の光学部材(100)の製造方法において、前記第2支持体(30)は、光吸収性を有する構成として作製されること、を特徴とする光学部材(100)の製造方法である。
本発明によれば、製造工程を増やすことなくシワを抑制できる光学部材の製造方法を提供することができる。
実施形態の映像表示装置1を示す斜視図である。 映像表示装置1を側面から見た図である。 実施形態のスクリーン100の層構成の一例を示す図である。 実施形態の第1光学形状層12を説明する図である。 スクリーン100の製造方法を説明する図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
本明細書中において、記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
本明細書中において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
本明細書中において、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
本明細書中において、シート面とは、各シートにおいて、そのシート全体として見たときにおける、シートの平面方向となる面を示すものであるとする。なお、板面、フィルム面についても同様である。
(実施形態)
図1は、実施形態の映像表示装置1を示す斜視図である。
図2は、映像表示装置1を側面から見た図である。
映像表示装置1は、スクリーン100、映像源LS等を有している。本実施形態のスクリーン(光学部材)100は、映像源LSから投影された映像光Lを反射して、画面上に映像を表示する反射スクリーンである。このスクリーン100の詳細に関しては、後述する。
本実施形態では、一例として、映像表示装置1は、建物の窓ガラスやショーウィンドウ等に代えてスクリーン100が配置され、このスクリーン100へ映像源LSから映像光Lを投影するものとして説明する。
ここで、理解を容易にするために、図1を含め以下に示す各図において、適宜、XYZ直交座標系を設けて示している。この座標系では、スクリーン100の画面の水平方向(左右方向)をX方向、鉛直方向(上下方向)をY方向とし、スクリーン100の厚み方向をZ方向とする。スクリーン100の画面は、XY面に平行であり、スクリーン100の厚み方向(Z方向)は、スクリーン100の画面に直交する。
また、スクリーン100の映像源側の正面方向に位置する観察者O1から見て水平方向の右側に向かう方向を+X方向、鉛直方向の上側に向かう方向を+Y方向、厚み方向において背面側(裏面側)から映像源側に向かう方向を+Z方向とする。
さらに、以下の説明中において、画面上下方向、画面左右方向、厚み方向とは、特に断りが無い場合、このスクリーン100の使用状態における画面上下方向(鉛直方向)、画面左右方向(水平方向)、厚み方向(奥行き方向)であり、それぞれ、Y方向、X方向、Z方向に平行であるとする。
映像源LSは、映像光Lをスクリーン100へ投影する映像投射装置であり、例えば、短焦点型のプロジェクタである。
この映像源LSは、映像表示装置1の使用状態において、スクリーン100の画面(表示領域)を正面方向(スクリーン面の法線方向)から見た場合に、スクリーン100の画面左右方向の中央であって、スクリーン100の画面よりも鉛直方向下方側に位置している。
映像源LSは、奥行き方向(Z方向)において、スクリーン100の表面からの距離が、従来のスクリーンの画面正面方向に位置する汎用プロジェクタに比べて大幅に近い位置から斜めに映像光Lを投影できる。したがって、従来の汎用プロジェクタに比べて、映像源LSは、スクリーン100までの投射距離が短く、投射された映像光Lがスクリーン100に入射する入射角度が大きく、入射角度の変化量(入射角度の最小値から最大値までの変化量)も大きい。
スクリーン100は、映像源LSが投射した映像光Lを映像源側(+Z側)の正面方向に位置する観察者O1側へ向けて反射して、観察者O1に映像を表示でき、かつ、スクリーン100の向こう側の景色を観察できる透明性を有する半透過型の反射スクリーンである。
スクリーン100の画面(表示領域)は、使用状態において、観察者O1側から見て長辺方向が画面左右方向となる略矩形状である。また、スクリーン100は、その画面サイズは、任意に設定可能であるが、例えば、対角40~100インチ程度であり、画面の横縦比が16:9とすることができる。
なお、これに限らず、スクリーン100は、例えば、観察者O1側から見た形状を他の形状としてもよいし、その画面サイズを40インチ以下の大きさとしてもよく、使用目的や使用環境等に応じて、その大きさや形状は適宜選択できるものとする。
スクリーン100は、ガラス板により構成された第1支持体20と第2支持体30がその表裏面に一体となって設けられており、全体の形状(不図示)は、設置場所の窓の大きさ及び形状に合わせた形状となっている。したがって、スクリーン100の画面(表示領域)は、全体の形状の一部領域として構成してもよい。
図3は、実施形態のスクリーン100の層構成の一例を示す図である。図3では、スクリーン100の画面中央(画面の幾何学的中心)となる点A(図1参照)を通り、画面上下方向(Y方向)に平行であって、スクリーン面に直交(Z方向に平行)する断面として示している。
図4は、実施形態の第1光学形状層12を説明する図である。図4は、第1光学形状層12を背面側(-Z側)から見た図であり、理解を容易にするために、反射層13等を省略して示している。
スクリーン100は、図2に示すように、厚み方向(Z方向)において、その映像源側(+Z側)から順に、第1支持体20、第1接着層40、光学機能層10、第2接着層50、第2支持体30等を備えている。
第1支持体20は、映像源側の表面に配置されている。
第2支持体30は、背面側の表面に配置されている。
第1支持体20及び第2支持体30は、いずれも光透過性を有するガラス板により形成されている。後述の光学機能層10は、樹脂製の薄い層の積層体等であり、それ単独では形状を維持するだけの十分な剛性を有していない。そのため、本実施形態のスクリーン100は、第1支持体20と第2支持体30との間に光学機能層10を配置してこれらを張り合わせた、合わせ板(合わせガラス)の構成として、画面の形状を維持している。なお、本実施形態では、図1等に示すように、スクリーン100は、平面であることから、第1支持体20及び第2支持体30は、平板形状のガラス板を用いているが、曲面ガラスを用いて、曲面のスクリーンを構成してもよい。
また、第1支持体20は、可視光に対して透明であるが、第2支持体30は、そのさらに背面側に、光吸収膜を積層したり、第2支持体30を構成するガラス自体を着色したりして、光吸収性を有する光吸収層としての機能も備えて構成してもよい。第2支持体30に光吸収層としての機能を与えることにより、スクリーン100に入射する照明光等の不要な外光や迷光を吸収し、映像のコントラストを向上させることができる。
第1接着層40は、第1支持体20と光学機能層10との間に挟まれて配置されており、両者を接着する層である。
第2接着層50は、第2支持体30と光学機能層10との間に挟まれて配置されており、両者を接着する層である。
第1接着層40及び第2接着層50は、例えば、ガラス転移点Tgが低いPVB(ポリビニルブチラール)やCOP(シクロオレフィンポリマー)、EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)等、一般的に合わせガラス中間膜として使用される材料を用いることができる。
光学機能層10は、映像源LSから投射された映像光を観察者側へ反射する機能を備え、かつ、透明性を備えている。
第1光学形状層12は、光学機能層10の映像源側(+Z側)に構成された光透過性を有する層である。第1光学形状層12の背面側(-Z側)の面には、単位光学形状121が複数配列されて設けられている。
単位光学形状121は、図4に示すように、真円の一部形状(円弧状)であり、スクリーン100の画面(表示領域)外に位置する点Cを中心として、同心円状に複数配列されている。即ち、第1光学形状層12は、点Cを中心(フレネルセンター)とする、いわゆるオフセット構造のサーキュラーフレネルレンズ形状を、その背面側に有している。
本実施形態では、図4に示すように、第1光学形状層12をスクリーン面の法線方向背面側から見たときに、点Cは、画面左右方向の中央であって画面外下方に位置しており、点Cと点Aとは、Y方向に平行な同一直線上に位置している。
単位光学形状121は、図3に示すように、スクリーン面に直交する方向(Z方向)に平行であって、単位光学形状121の配列方向に平行な断面における断面形状が、略三角形形状である。
単位光学形状121は、背面側(-Z側)に凸であり、映像光が入射する第1斜面(第1の面)121aと、これに対向する第2斜面(第2の面)121bとを有している。1つの単位光学形状121において、第1斜面121aは、頂点aを挟んで第2斜面121bの上側(+Y側)に位置している。
第1斜面121aがスクリーン面に平行な面となす角度は、θ1である。第2斜面121bがスクリーン面に平行な面となす角度は、θ2である。角度θ1,θ2は、θ2>θ1という関係を満たしている。
この単位光学形状121の第1斜面121a及び第2斜面121bは、微細かつ不規則な凹凸形状を有している。この微細な凹凸形状は、凸形状と凹形状とが2次元方向に不規則に配列されて形成されており、凸形状及び凹形状は、その大きさや形状、高さ等が不規則である。
単位光学形状121の配列ピッチは、Pであり、単位光学形状121の高さ(厚み方向における頂点aから単位光学形状121間の谷底となる点bまでの寸法)は、hである。
理解を容易にするために、図3では、単位光学形状121の配列ピッチP、角度θ1,θ2は、単位光学形状121の配列方向において一定である例を示している。しかし、本実施形態の単位光学形状121は、実際には、配列ピッチPは一定であるが、角度θ1が単位光学形状121の配列方向においてフレネルセンターとなる点Cから離れるにつれて次第に大きくなっている。
また、角度θ1,θ2、配列ピッチP等は、映像源LSからの映像光の投射角度(スクリーン100への映像光の入射角度)や、映像源LSの画素(ピクセル)の大きさ、スクリーン100の画面サイズ、各層の屈折率等に応じて、適宜設定してよい。例えば、単位光学形状121の配列方向に沿って、配列ピッチPや角度θ1等が変化する形態としてもよい。
なお、本実施形態では、第1光学形状層12の背面側の面には、サーキュラーフレネルレンズ形状が形成される例を示したが、これに限らず、第1光学形状層12の背面側の面には、単位光学形状121が画面左右方向(X方向)を長手方向とし、画面上下方向(Y方向)に配列されたリニアフレネルレンズ形状が形成される形態としてもよい。また、柱状の単位プリズムが、画面左右方向(X方向)を長手方向とし、画面上下方向(Y方向)に複数された形態としてもよい。
第1光学形状層12は、光透過性の高いウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリチオール系、ブタジエンアクリレート系等の紫外線硬化型樹脂により形成されている。
なお、本実施形態では、第1光学形状層12を構成する樹脂として、紫外線硬化型樹脂を例に挙げて説明するが、これに限らず、例えば、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
反射層13は、単位光学形状121上(第1斜面121a及び第2斜面121b上)に形成されている。この反射層13は、入射した光の一部を反射し、その他を透過する半透過型の反射層、いわゆるハーフミラーである。
前述のように、第1斜面121a及び第2斜面121b(単位光学形状121の表面)には、微細な凹凸形状が形成されており、反射層13は、この微細な凹凸形状に追従して形成され、かつ、単位光学形状121側とは反対側の面にも、この微細かつ不規則な凹凸形状が維持された状態で成膜されている。したがって、反射層13の映像源側の面(第1光学形状層12側の面)と、背面側の面(第2光学形状層14側の面)とは、微細かつ不規則な凹凸形状を有するマット面(粗面)となっている。
この反射層13は、入射した光の一部を反射面の微細な凹凸形状により拡散して反射し、反射しない他の光を拡散しないで透過するという機能を有する。
本実施形態の反射層13は、金属を用いる構成と、誘電体多層膜を用いる構成と、単層の誘電体膜を用いる構成とを例示することができ、本実施形態では、金属を用いた構成と、誘電体多層膜を用いた構成と、単層の誘電体膜を用いた構成との3種類を作製した。
反射層13は、金属を用いる場合、光反射性の高い金属、例えば、Cr、アルミニウム、銀、ニッケル等により形成され、その厚さは、数10Å程度である。反射層13は、これに限らず、例えば、上述のような光反射性の高い金属をスパッタリングして形成してもよい。
また、金属を用いた反射層13の反射率及び透過率は、所望する光学性能に合わせて適宜に設定できるが、映像光を良好に反射させるとともに、映像光以外の光(例えば、太陽光等の外界からの光)を良好に透過させる観点から、例えば、透過率が30~80%程度、反射率が5~60%程度の範囲とすることができる。なお、上記透過率を含めて、以下に示す各層の透過率に関する数値は、空気界面における反射については考慮していない値を示している。また、スクリーン100の表面(空気界面)における反射は、その表面処理によって大きく左右されるが、例えば、10%程度を考慮するとよい。
本実施形態で金属を用いて構成した反射層13は、アルミニウムを蒸着することにより形成されており、反射層13のみでの透過率が約70%、反射率が約5%、吸収率が約25%のハーフミラー状である。
また、反射層13は、誘電体多層膜を用いる場合、金属蒸着膜等に比べて高い透明性及び反射率を実現可能である。誘電体多層膜は、屈折率の高い誘電体膜(以下、高屈折率誘電体膜という)と屈折率が低い誘電体膜(以下、低屈折率誘電体膜という)とが交互に複数積層されて形成されている。
高屈折率誘電体膜は、例えば、TiO(二酸化チタン)、Nb(五酸化ニオブ)、Ta(五酸化タンタル)、ZnS(硫化亜鉛)等により形成される。高屈折率誘電体膜の屈折率は、2.0~2.6程度である。
低屈折率誘電体膜は、例えば、SiO(二酸化ケイ素)、MgF(フッ化マグネシウム)等により形成される。低屈折率誘電体膜の屈折率は、1.3~1.5程度である。
高屈折率誘電体膜及び低屈折率誘電体膜の膜厚は、約5~100nmであり、これらが交互に2~10層程積層されて形成されており、誘電体多層膜の総厚は、10~1000nm程度である。
この誘電体多層膜を用いて構成された反射層13は、波長域400~800nmの光に対して、その透過率が90%程度、反射率が10%程度である。
誘電体多層膜により形成された反射層13は、アルミニウム等の金属蒸着膜等により形成された反射層に比べて、高い透明性を有しており、また、光の吸収損失が小さく、高い反射率を実現できる。
この反射層13は、単位光学形状121上(第1斜面121a及び第2斜面121b上)に、上述のような誘電体多層膜を蒸着加工する、スパッタ加工する等により、所定の厚さで形成される。
本実施形態で誘電体多層膜を用いて構成した本実施形態の反射層13は、TiO(二酸化チタン)により形成された高屈折率誘電体膜と、SiOにより形成された低屈折率誘電体膜を交互に計5層積層(高屈折率誘電体膜が3層、低屈折率誘電体膜が2層)して形成されており、透過率が約90%、反射率が約10のハーフミラー状である。
なお、反射層13の厚さは、その材質や所望する光学性能等によって適宜設定してよい。
また、反射層13は、単層の誘電体膜を用いる場合、アルミニウム等の金属蒸着膜等により形成された反射層に比べて、高い透明性を有しており、また、光の吸収損失が小さく、高い反射率を実現できる。
反射層13は、単層の誘電体膜を用いる場合、上述の第1光学形状層12及び後述の第2光学形状層14よりも高い屈折率となる材料により形成されており、例えば、TiO2(二酸化チタン)、Nb2O5(五酸化ニオブ)、Ta2O5(五酸化タンタル)、ZnS(硫化亜鉛)等により形成され、、屈折率は、2.0~2.6程度である。この誘電体膜(反射層13)と、第1光学形状層12(第2光学形状層14)との屈折率差は、0.5以上であることが望ましい。
ここで、単層の誘電体膜から形成される反射層13は、第1光学形状層12よりも屈折率が高くなるため、第1光学形状層12と界面において入射した映像光を効率よく反射させることができる。また、この誘電体膜による反射層13は、背面側に第2光学形状層14が形成されており、第2光学形状層14が第1光学形状層12と同等の屈折率を有することから、第2光学形状層14との界面においても入射した映像光を反射させることができる。
この反射層13は、単位光学形状121上(第1斜面121a及び第2斜面121b上)に、上述のような誘電体膜を蒸着加工する、スパッタ加工する等により、所定の厚さで形成される。
本実施形態の反射層13は、ZnS(屈折率2.36)により形成された誘電体膜である。
第2光学形状層14は、第1光学形状層12の背面側(-Z側)に設けられた光透過性を有する層である。
第2光学形状層14は、単位光学形状121間の谷部を埋めるように充填され、第1光学形状層12の背面側(-Z側)の面は、平坦化である。この第2光学形状層14の映像源側(+Z側)の面は、第1光学形状層12の単位光学形状121の略逆型の形状が複数配列されて形成されている。
このような第2光学形状層14を設けることにより、反射層13を保護することができる。また、このような第2光学形状層14を設けることにより、スクリーン100の背面側に第2支持体30等を積層しやすくできる。
第2光学形状層14の屈折率は、第1光学形状層12と略同等(同等とみなせる程度に小さい屈折率差を有している状態)であることが好ましく、同等であることが望ましい。また、第2光学形状層14は、前述の第1光学形状層12と同じ樹脂を用いて形成してもよいし、異なる樹脂を用いて形成してもよい。
本実施形態の第2光学形状層14は、第1光学形状層12と同じ紫外線硬化型樹脂により形成されている。
以上の構成のスクリーン100は、その下方に位置する映像源LSから投射され、スクリーン100に入射した映像光のうち、一部の映像光は、その単位光学形状121の第1斜面121aに入射し、反射層13によって拡散反射され、観察者O1側へ出射し、映像が観察者O1により観察される。
また、スクリーン100に対する入射角が直角に近い角度で光源側からスクリーン100へ入射する光は、反射層13を透過して背面側へ出射する。これと同様にスクリーン100に対する入射角が直角に近い角度で背面側からスクリーン100へ入射する光は、反射層13を透過して光源側へ出射する。スクリーン100は、拡散粒子を含有する拡散材等を含有していないので、このスクリーン100を透過する光は、拡散されない。したがって、スクリーン100を通して、スクリーン100の向こう側の景色を観察した場合に、スクリーン100の向こう側の景色がぼやけたり、白くにじんだりすることなく、高い透明性を有して観察することができる。
図5は、スクリーン100の製造方法を説明する図である。
先ず、基材41を用意する(図5(a))。基材41は、スクリーン100の完成後は、第1接着層40の一部を構成するので、基材41は、先に示した第1接着層40の材料を用いて構成される。
次に、基材41の一方の面に、単位光学形状121を賦形する成形型500に紫外線硬化型樹脂を充填した状態で積層し、紫外線を照射して樹脂を硬化させるUV成形法により第1光学形状層12を形成する(図5(b)、(c))。このとき、単位光学形状121を賦形する成形型の第1斜面121a及び第2斜面121bを賦形する面には、微細な凹凸形状が形成されている。この微細な凹凸形状は、成形型500の第1斜面121a及び第2斜面121bを賦形する面に、条件の異なるめっきを2回以上繰り返したり、エッチング処理を行ったりすること等によって形成できる。
第1光学形状層12を基材41の一方の面に形成した後、第1斜面121a及び第2斜面121bに、反射層13を蒸着等により形成する(図5(d))。
その後、反射層13の上から、単位光学形状121間の谷部を充填して平面状となるように、紫外線硬化型樹脂を塗布し、基材51を積層(図5(e))して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、第2光学形状層14及び基材51を一体に形成する(図5(f))。ここで、基材51は、スクリーン100の完成後は、第2接着層50の一部を構成するので、基材51は、先に示した第2接着層50の材料を用いて構成される。
この工程までが、光学機能層10を作製する光学機能層作製工程に相当する。その後、必要であれば所定の大きさに裁断する等して、次の工程に移る。
次に、基材41と第1支持体20との間に接着層シート42を配置し、さらに、基材51と第2支持体30との間に接着層シート52を配置して積層する(図5(g))。ここで、接着層シート42は、基材41と同じ材料とし、接着層シート52は、基材51と同じ材料とする。通常は、接着層シート42と、基材41と、接着層シート52と、基材51とは、いずれも同一材料を用いる。
上記積層体を接着層シート42、基材41、接着層シート52、基材51が溶融して接着する温度まで加熱及び加圧して、これらが接着されて(接着工程)、合わせ板形態のスクリーン100が完成する(図5(g))。接着層シート42と基材41とは、溶融して一体化して第1接着層40を形成する。同様に、接着層シート52と基材51とは、溶融して一体化して第2接着層50を形成する。
以上説明したように、本実施形態では、光学機能層を作製する工程において、第1接着層40及び第2接着層50と同一の素材を基材41、51として用いた。よって、本実施形態のスクリーン100の製造方法では、この基材41、51をそのまま第1接着層40及び第2接着層50の一部として利用可能である。したがって、本実施形態のスクリーン100の製造方法によれば、シワを防止するために従来行われていた基材41、51を剥がす工程を行う必要がなく、製造工程を増やすことなくシワを抑制できる。
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)実施形態において、映像表示装置1は、建物の窓ガラスやショーウィンドウ等に代えてスクリーン100を配置して利用する例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、窓ガラスに限らず、展示会等における映像表示用途として利用したり、パーティションの一部や、パーティションの代わりとしてスクリーン100を配置したりする構成としてもよい。また、映像表示装置1は、車両、船舶、航空機等の乗り物の窓ガラスに代えてスクリーン100を配置する構成であってもよい。さらに、反射層13を拡散反射ではなく鏡面反射するように構成して、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の用途に用いる光学部材としてもよい。
(2)実施形態において、スクリーン100の使用環境や使用目的等に応じて、スクリーン100に、例えば、反射防止機能、紫外線吸収機能、防汚機能、帯電防止機能等、適宜必要な機能を有する層を1つ又は複数選択して設けてもよい。さらに、第1支持体20の映像源側にタッチパネル層等を設けてもよい。
特に、スクリーン100の映像源側の表面に反射防止層を設けた場合には、反射層13で反射した映像光が、映像源側の空気との界面で反射して、背面側から出射して背面側に映像が漏れたように表示されることを防止できる。
(3)実施形態において、反射層13の表面(単位光学形状121の表面)の微細な凹凸形状は、その大きさや形状、配列等が不規則である例を示したが、大きさや形状、配列のいずれかが規則性を有していてもよい。
(4)実施形態において、映像源LSは、スクリーン100の画面左右方向の中央であって画面外の下方に位置する例を挙げて説明したが、これに限らず、例えば、スクリーン100の斜め下側等に配置され、スクリーン100に対して画面左右方向において斜め方向光から映像光を投射する形態としてもよい。
この場合、単位光学形状121の配列方向は、映像源LSの位置に合わせて傾けた形態とする。このような形態とすることにより、映像源LSの位置等を自由に設定することができる。
(5)実施形態において、単位光学形状121は、第1斜面121a及び第2斜面121bが平面により形成される例を示したが、これに限らず、例えば、曲面と平面とが組み合わされた形態としてもよいし、折れ面状としてもよい。
また、単位光学形状121は、3つ以上の複数の面によって形成される多角形形状としてもよい。
また、第1斜面121a及び第2斜面121bは、微細かつ不規則な凹凸形状が形成されている例を示したが、これに限らず、第1斜面121aにのみ微細かつ不規則な凹凸形状が形成されている形態としてもよい。
また、反射層13は、単位光学形状121の第1斜面121a及び第2斜面121bに形成される例を示したが、これに限らず、例えば、第1斜面121aの少なくとも一部に形成される形態としてもよい。
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
1 映像表示装置
10 光学機能層
12 第1光学形状層
13 反射層
14 第2光学形状層
20 第1支持体
30 第2支持体
40 第1接着層
41 基材
42 接着層シート
50 第2接着層
51 基材
52 接着層シート
100 スクリーン(光学部材)
121 単位光学形状
121a 第1斜面
121b 第2斜面
500 成形型

Claims (4)

  1. 映像源から投射された映像光を観察者側へ反射し、かつ、透明性を有する光学機能層と、
    前記光学機能層よりも前記映像源側に設けられた透明性を有する第1支持体と、
    前記光学機能層と前記第1支持体との間に配置され、前記光学機能層に直接接着している第1接着層と、
    前記映像源側とは反対の背面側に設けられた透明性を有する第2支持体と、
    前記光学機能層と前記第2支持体との間に配置され、前記光学機能層に直接接着している第2接着層と、
    を備える光学部材を製造する光学部材の製造方法であって、
    前記光学機能層を作製する光学機能層作製工程と、
    前記第1支持体と、前記第1接着層と、前記光学機能層と、前記第2接着層と、前記第2支持体と、を接着する接着工程と、
    を備え、
    前記光学機能層作製工程は、前記第1接着層及び前記第2接着層と同一の素材を用いて構成された2枚の基材の間に前記光学機能層の作製を行う光学部材の製造方法。
  2. 請求項1に記載の光学部材の製造方法において、
    前記光学機能層は、
    光透過性を有する層であって、当該光学部材の厚み方向の背面側の面に、映像光が入射する第1の面とこれに対向する第2の面とを有する単位光学形状が複数配列されて形成された第1光学形状層と、
    前記単位光学形状の少なくとも前記第1の面の一部に形成され、入射した光の少なくとも一部を反射し、その他の光を透過する機能を有する反射層と、
    前記反射層よりも背面側に設けられた光透過性を有する層であって、前記単位光学形状の間の谷部を充填するように積層された第2光学形状層と、
    を備え、
    接着工程は、前記第1接着層を前記第1光学形状層に直接接着し、前記第2接着層を前記第2光学形状層に直接接着すること、
    を特徴とする光学部材の製造方法。
  3. 請求項2に記載の光学部材の製造方法において、
    接着工程は、前記第1接着層を第1支持体に直接接着し、前記第2接着層を第2支持体に直接接着すること、
    を特徴とする光学部材の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の光学部材の製造方法において、
    前記第2支持体は、光吸収性を有する構成として作製されること、
    を特徴とする光学部材の製造方法。
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