以下、添付図面に従って本発明に係る窓及び窓の組立方法の好ましい実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態の窓10の下部構造を示す縦断面図である。
図1に示す窓10は、不図示の建物の躯体の開口部に固定された窓枠12と、複層ガラス14と、樹脂製の押縁16と、を有する。そして、窓10は、窓枠12に備えられた面材用溝部18に複層ガラス14の周縁部が装着され、かつ窓枠12に備えられた押縁用溝部20に押縁16が装着されて構成される。
なお、本発明の窓として、第1実施形態ではFIX窓(Fixed window)である窓10を例示したが、開閉自在な引き違い窓、又は開き窓等の他の形態の障子でも適用できる。また、本発明の構成要素である面材として複層ガラス14を例示したが、単枚のガラス板でも適用でき、また、ガラス板に限定されずポリカーボネート等の樹脂製、又はアルミ等の金属製の面材等でも適用できる。
窓枠12は、下枠22と不図示の上枠と左右の縦枠とを四方枠組みして構成されており、窓枠12の各枠材は例えば、ネジによって躯体に固定される。各枠材は、例えば硬質合成樹脂材料又はアルミニウム合金の押出形材である。また、窓枠12は、上記のように面材用溝部18と押縁用溝部20とを備え、押縁用溝部20は、面材用溝部18に隣接されるとともに、面材用溝部18に対して室外側に備えられている。
また、窓10は、上記の押縁16と気密材24とを備えている。押縁16は、長尺状に構成されて押縁用溝部20にその嵌合部26が着脱自在に装着され、そのリップ部28が、複層ガラス14の室外側のガラス板30に密着される。これにより、複層ガラス14の室外側の下縁部が押縁16によって覆われる。なお、窓10としては、窓枠12を構成する4本の枠材の押縁用溝部20に押縁16がそれぞれ装着される態様であってもよく、4本の枠材のうち少なくとも1つの枠材の押縁用溝部20に押縁16が装着される態様であってもよい。
一方、気密材24は、窓枠12の室内側壁32に備えられた気密材用溝部34に、その嵌合部36が装着され、そのリップ部38が複層ガラス14の室内側のガラス板40に密着される。これにより、複層ガラス14の室内側の周縁部が気密材24によって覆われる。
複層ガラス14は矩形状の2枚のガラス板30、40と、枠状のスペーサ42と、一次シール材44と、二次シール材46と、を備えている。
ガラス板30、40は、表面積が等しく、かつスペーサ42を介して隔置される。ガラス板30とガラス板40とに対向するスペーサ42の各側面が、一次シール材44によってガラス板30とガラス板40とに接着される。これにより、ガラス板30とガラス板40との間に中空層48が形成される。そして、スペーサ42の外周部に、二次シール材46が充填される。これによって、複層ガラス14が構成される。
一次シール材44としてはブチルゴムを例示でき、二次シール材46としてはポリサルファイド系又はシリコーン系のシーリング材を例示できる。なお、一次シール材44及び二次シール材46は、同一の材料としてもよい。また、二次シール材46の外周に二次シール材46を保護する別のシール材を有してもよく、框部材を配置してもよい。
スペーサ42は中空のパイプによって構成され、その内部には乾燥剤50が充填されている。また、スペーサ42の中空層48側の内面には、スペーサ42の長手方向に沿って複数の貫通孔52が所定の間隔で配置されている。これらの貫通孔52を介して乾燥剤50が中空層48に露出され、中空層48の気体が乾燥される。
図2は、押縁用溝部20に対する押縁16の固定構造を示した要部拡大斜視図である。図2によれば、窓10は、押縁16を押縁用溝部20に固定するブラケット60を備えている。
押縁16は、長手方向の少なくとも両端側に係合部62を有する。なお、図2では、一方の端部側に配置された係合部62のみ図示しているが、この係合部62は他方の端部側にも配置されている(図4参照)。
図2に示す係合部62は、押縁16の下縁部を構成する嵌合部26から押縁16の長手方向に直交する方向に向けて切り欠かれた凹状の切欠部として構成されている。具体的に係合部62は、外側辺部62A、内側辺部62B、及び外側辺部62Aと内側辺部62Bとを接続する底辺部62Cを有している。外側辺部62Aは、内側辺部62Bよりも押縁16の一方の端部に近い側に配置され、また、内側辺部62Bは、押縁16の長手方向において外側辺部62Aに対向して配置されている。
ブラケット60は、一例として平板状に構成されており、係合部62に着脱自在に係合される被係合部64と、図1の如く、複層ガラス14と面材用溝部18との間に位置し面材用溝部18に固定される固定部66と、を有する。被係合部64は、固定部66の縁部から突出された凸状部として構成されている。具体的に被係合部64は、外側辺部64A、内側辺部64B、及び外側辺部64Aと内側辺部64Bとを接続する辺部64Cを有している。
押縁16の係合部62とブラケット60の被係合部64とは、係合部62に被係合部64を挿入し、係合部62の外側辺部62Aに被係合部64の外側辺部64Aを当接させることにより接続される。押縁16及びブラケット60は、上記の接続状態で窓枠12に配置される。
ブラケット60の固定部66には、複数本の皿ネジ68が挿入される複数の貫通孔70が所定の位置に備えられている。この固定部66は、複数の貫通孔70にそれぞれ挿入された複数本の皿ネジ68が面材用溝部18にネジ込まれることにより、面材用溝部18に固定される(図1参照)。
ここで、面材用溝部18に対する固定部66の固定位置は、予め決められた位置ではなく、上記のように押縁16にブラケット60を接続した状態で押縁16を押縁用溝部20に装着した位置が固定位置となる。これにより、係合部62の形成位置、及びブラケット60の固定位置の寸法精度に制約を受けることなく押縁16を押縁用溝部20に装着できる。なお、皿ネジ68は、本発明の構成要素である固定治具の一例である。
上記の如く構成された第1実施形態の窓10によれば、経年変化又は熱によって樹脂製の押縁16が収縮しようとした場合、係合部62の外側辺部62Aが被係合部64の外側辺部64Aに当接しているので押縁16の収縮を防止できる。すなわち、第1実施形態の窓10は、経年変化又は熱による収縮を防止する機能を備えた押縁16を有している。
次に、第1実施形態の窓10の組立方法の一例について説明する。図3は、窓10の組立方法の一例を示したフローチャートである。
図3に示すように、第1実施形態の窓10の組立方法は、押縁16を押縁用溝部20に装着してブラケット60を面材用溝部18に固定する第1工程(S10)と、押縁16を押縁用溝部20とブラケット60から一旦取り外す第2工程(S20)と、複層ガラス14を面材用溝部18に装着する第3工程(S30)と、押縁16をブラケット60に係合させて押縁用溝部20に再装着する第4工程(S40)と、を有している。
まず、第1工程では、押縁16の係合部62の外側辺部62Aに、ブラケット60の被係合部64の外側辺部64Aを当接させた状態で、押縁16を押縁用溝部20に装着する。具体的には、押縁16の長手方向の両端部を押縁用溝部20の長手方向の両端部に合わせた状態で、押縁16を押縁用溝部20に装着する。このとき、ブラケット60の固定部66は面材用溝部18に載置され、この状態で固定部66を複数本の皿ネジ68によって面材用溝部18に固定する(図1参照)。
第1工程では、ブラケット60を押縁用溝部20に固定するのではなく、面材用溝部18に固定する。これにより、押縁16をブラケット60に係合させた状態でブラケット60を窓枠12側に固定できる。
なお、特許文献1の窓は、ブロック材を凹状溝部に予め固定した後、押縁を凹状溝部に嵌め込んで切欠部をブロック材に係合させる構成なので、切欠部をブロック材に係合させた状態でブロック材を窓枠側に固定できない。このため、特許文献1の窓は、ブロック材の固定位置と押縁の切欠部の形成位置とに高い寸法精度が要求されていた。
次に、第2工程では、複層ガラス14を面材用溝部18に室外側から装着するために、押縁16をブラケット60と押縁用溝部20から一旦取り外す。
次に、第3工程では、複層ガラス14を面材用溝部18に室外側から装着する。このとき、固定部66は、複層ガラス14と面材用溝部18との間に位置する(図1参照)。
次に、第4工程では、押縁16を押縁用溝部20に室外側から再装着する。つまり、第1工程での装着方法と同様に、押縁16の長手方向の両端部を押縁用溝部20の長手方向の両端部に合わせた状態で押縁16を再装着する。そうすると、被係合部64は第1工程で係合部62と係合する位置に既に配置されているので、上記の再装着動作だけで係合部62が被係合部64に係合する。
図4は、第4工程での押縁16の装着状態を示した説明図である。
図4によれば、押縁16の長手方向の両端側に配置された係合部62、62の外側辺部62A、62Aに、被係合部64、64の外側辺部64A、64Aが当接されている。これにより、経年変化又は熱による押縁16の収縮がブラケット60、60(図2参照)によって防止されている。
以上の如く、第1実施形態の窓10によれば、押縁16を押縁用溝部20に固定するブラケット60を備え、押縁16は長手方向の少なくとも両端側に係合部62を有し、ブラケット60は、係合部62に着脱自在に係合される被係合部64と、複層ガラス14と面材用溝部18との間に位置し面材用溝部18に固定される固定部66と、を有しているので、経年変化又は熱による収縮を防止する機能を備えた押縁16を、寸法精度に制約を受けることなく押縁用溝部20に簡単に装着できる。
また、第1実施形態の窓10では、係合部62の外側辺部62Aを被係合部64の外側辺部64Aに当接させているので、押縁16の収縮を防止できる。
また、第1実施形態の窓10では、少なくとも2本の皿ネジ68によって固定部66を面材用溝部18に固定したので、押縁16の収縮による力が固定部66に作用しても、面材用溝部18に対して固定部66が回転したり移動したりすることを防止できる。これにより、押縁16の収縮を確実に防止できる。
なお、第1実施形態では、図4に示すように、2つの係合部62、62を備えた押縁16の態様を例示したが、この態様に限定されるものではなく、その2つの係合部62、62とは異なる係合部62を備えた態様の押縁16であってもよい。この場合、当然であるが、係合部62の数に対応した数のブラケット60が窓枠12側に固定される。
また、図5に示すブラケット60の要部斜視図の如く、被係合部64の外側辺部64Aに、外側辺部62A(図2参照)に沿った板状のストッパ片72を設け、このストッパ片72を外側辺部62Aに当接させることが好ましい。これにより、外側辺部64Aのみを外側辺部62Aに当接させる態様と比較して当接面積が大きくなるので、押縁16の収縮を効果的に防止できる。
また、面材用溝部18に対する固定部66の固定方法として、皿ネジ68によるネジ止めを例示したが、これに限定されるものではなく、ビス止め、挿入、嵌合又は接着等の固定方法を適用してもよい。挿入又は嵌合の固定方法の場合は、固定部66を挿入する挿入部材、又は固定部66を嵌合する嵌合部材を面材用溝部18に予め備えておくことが好ましい。また、これらの固定方法に限定されるものではなく、固定部66を面材用溝部18に固定可能な方法であれば適用できる。
また、固定部66は、面材用溝部18と複層ガラス14との間に位置されることから板状に構成されることが好ましく、固定部66の厚さは複層ガラス14の装着に邪魔にならないように十分に薄いことが好ましい。
図6は、第2実施形態に係る窓100の下部構造の縦断面図である。なお、窓100を説明するに当たり、図1に示した窓10と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明する。
第2実施形態の窓100は、アタッチメント枠102の嵌合部104が、窓枠12の押縁用溝部20に装着され、面材である多重ガラス106の周縁部が、窓枠12の面材用溝部18とアタッチメント枠102の面材用溝部108とに装着されている。そして、押縁16の嵌合部26がアタッチメント枠102の押縁用溝部110に装着されている。この窓100も窓10と同様にFIX窓である。
第2実施形態の窓100は、図1の複層ガラス14の厚さT2よりも厚さT1の厚い多重ガラス106を用いることにより、窓100の奥行き寸法を、図1の窓10の奥行き寸法と比較して長くし、高断熱化を実現している。
アタッチメント枠102も窓枠12と同様に、硬質合成樹脂材料又はアルミニウム合金の押出形材であり、下枠112と不図示の上枠と左右の縦枠とを四方枠組みして構成されている。
多重ガラス106は、後述する4本のスペーサが一体化された枠体を用い、断熱性能を最大限に発揮できると想定される5枚のガラス板を隔置して構成されたものである。また、後述する4層の分割中空層には、空気よりも熱伝導率が小さいアルゴンガスが封入されており、断熱性能がより一層向上されている。なお、多重ガラス106は、複層ガラスの範疇に含まれるものである。
図7は、多重ガラス106の全体斜視図である。なお、多重ガラス106の詳細な構成は既知(例えば、WO2016/068307号参照)であるので、ここでは概略構成について説明する。
図6及び図7の如く、多重ガラス106は、室内側に配置されるガラス板114と、室内側に配置されるガラス板116と、ガラス板114とガラス板116との間に配置された3枚の中間ガラス板118A、118B、118Cと、ガラス板114とガラス板116と隔置し、かつ中間ガラス板118A、118B、118Cを隔置して保持するスペーサ120と、スペーサ120を外側から支持する支持板122と、を備えている。角部において突き合わされた4本の支持板122は、図7に示すコーナーキー124によってそれぞれ接続される。
ガラス板114とガラス板116とは、その周囲においてスペーサ120により隔置される。これにより、ガラス板114とガラス板116との間に中空層が形成される。ガラス板114とガラス板116とスペーサ120とにより形成される中空層は、周囲においてスペーサ120により封着されるとともに、3枚の中間ガラス板118A、118B、118Cが隔置して配置されることにより、中空層が4層の分割中空層126に分割される。
スペーサ120は、ガラス板114とガラス板116との間隔を保持する内面部128及び外面側部130と、内面部128及び外面側部130に連設されてガラス板114、116の内面に当接する側辺部132、132と、乾燥剤50(図1参照)が充填される複数の空間部134(図10参照)と、から構成される。
スペーサ120には、3枚の中間ガラス板118A、118B、118Cの周辺部の一部を保持するために、スペーサ120の内面部128に3列の溝部136が設けられる。3列の溝部136は、3枚の中間ガラス板118A、118B、118Cを平行に配置するように、スペーサ120の長手方向に沿って平行に形成される。
また、それぞれの溝部136には、中間ガラス板118A、118B、118Cの端部を支持するグレージングチャンネル138が嵌合されている。グレージングチャンネル138によって中間ガラス板118A、118B、118Cを溝部136に容易に密着固定できる。
図8は、押縁用溝部110に対する押縁16の固定構造を示した要部拡大斜視図である。図8によれば、窓100は、押縁16を押縁用溝部110に固定するブラケット140を備えている。
ブラケット140は、一例として平板状に構成されており、押縁16の係合部62に着脱自在に係合される被係合部142と、図6の如く多重ガラス106と面材用溝部18、108との間に位置し面材用溝部18、108に固定される固定部144と、を有する。被係合部142は、固定部144の縁部から突出された凸状部として構成されている。具体的に被係合部142は、外側辺部142A、内側辺部142B、及び外側辺部142Aと内側辺部142Bとを接続する辺部142Cを有している。
押縁16の係合部62とブラケット140の被係合部142とは、係合部62に被係合部142を挿入し、係合部62の外側辺部62Aに被係合部142の外側辺部142Aを当接させることにより接続される。押縁16及びブラケット140は、上記の接続状態で窓枠12とアタッチメント枠102に配置される。
ブラケット140の固定部144には、複数の皿ネジ68が挿入される複数の貫通孔70が所定の位置に備えられている。この固定部144は、複数の貫通孔70にそれぞれ挿入された複数本の皿ネジ68が面材用溝部18、108にネジ込まれることにより、面材用溝部18、108に固定される(図6参照)。
ここで、面材用溝部18、108に対する固定部144の固定位置は、予め決められた位置ではなく、上記のように押縁16にブラケット140を接続した状態で押縁16を押縁用溝部110に装着した位置が固定位置となる。これにより、係合部62の形成位置、及びブラケット140の固定位置の寸法精度に制約を受けることなく押縁16が窓枠12とアタッチメント枠102に装着される。
上記の如く構成された第2実施形態の窓100によれば、経年変化又は熱によって樹脂製の押縁16が収縮しようとした場合、係合部62の外側辺部62Aが被係合部142の外側辺部142Aに当接しているので押縁16の収縮を防止できる。すなわち、第2実施形態の窓100は、経年変化又は熱による収縮を防止する機能を備えた押縁16を有している。
次に、第2実施形態の窓100の組立方法の一例について説明する。
第2実施形態の窓100の組立方法は、押縁16を押縁用溝部110に装着してブラケット140を面材用溝部18、108に固定する第1工程と、押縁16を押縁用溝部110とブラケット140から一旦取り外す第2工程と、多重ガラス106を面材用溝部18、108に装着する第3工程と、押縁16をブラケット140に係合させて押縁用溝部110に再装着する第4工程と、を有している。
まず、第1工程では、押縁16の係合部62の外側辺部62Aに、ブラケット140の被係合部142の外側辺部142Aを当接させた状態で、押縁16を押縁用溝部110に装着する。具体的には、押縁16の長手方向の両端部を押縁用溝部110の長手方向の両端部に合わせた状態で、押縁16を押縁用溝部110に装着する。そして、この装着状態でブラケット140の固定部144を複数本の皿ネジ68によって面材用溝部18、108に固定する。なお、第1工程での「押縁16を押縁用溝部110に装着する」態様とは、押縁16を押縁用溝部110に完全に嵌め込んだ態様を指す。また、あてがった状態とは、押縁16を押縁用溝部110に完全に嵌め込むのではなく半装着の状態を指し、例えば、押縁16の長手方向の所定位置が決まり、切欠かれた凹状の切欠部の位置が決まることで、ブラケット140の位置が出せる状態を指す。
第1工程では、ブラケット140を押縁用溝部110に固定するのではなく、面材用溝部18、108に固定する。これにより、押縁16をブラケット140に係合させた状態でブラケット140の固定が可能となる。なお、図6の如く、面材用溝部18と面材用溝部108とに段差が生じている場合には、その段差を解消すべく面材用溝部18と固定部144との間の隙間にスペーサ板146を介在させて、スペーサ板146を皿ネジ68によって面材用溝部18に固定することが好ましい。
次に、第2工程では、多重ガラス106を面材用溝部18、108に室外側から装着するために、押縁16をブラケット140と押縁用溝部110から一旦取り外す。
次に、第3工程では、多重ガラス106を面材用溝部18、108に室外側から装着する。このとき、固定部144は、多重ガラス106と面材用溝部18、108との間に位置する。
次に、第4工程では、押縁16を押縁用溝部110に室外側から再装着する。つまり、第1工程での装着方法と同様に、押縁16の長手方向の両端部を押縁用溝部110の長手方向の両端部に合わせた状態で押縁16を再装着する。そうすると、被係合部142は第1工程で係合部62と係合する位置に既に固定されているので、上記の再装着動作だけで係合部62が被係合部142に係合する。
したがって、第2実施形態の窓100によれば、押縁16を押縁用溝部110に固定するブラケット140を備え、押縁16は長手方向の少なくとも両端側に係合部62を有し、ブラケット140は、係合部62に着脱自在に係合される被係合部142と、多重ガラス106と面材用溝部18、108との間に位置し面材用溝部18、108に固定される固定部144と、を有しているので、経年変化又は熱による収縮を防止する機能を備えた押縁16を、寸法精度に制約を受けることなく押縁用溝部110に簡単に装着できる。
ここで、図1及び図5に示したストッパ片72の詳細な構成について図9、図10及び図11を参照して説明する。
図9は、図1に示した窓10の下部構造において、ブラケット60のストッパ片72を拡大して示した縦断面図である。図10は、押縁用溝部20とストッパ片72との大小関係を拡大して示した縦断面図である。図11は、押縁16の係合部62とブラケット60の被係合部64との大小関係を拡大して示した斜視図である。
なお、図9~図11に示したストッパ片72の構成を説明するに当たっては、X軸、Y軸及びZ軸の三次元直交座標系を用いて説明する。すなわち、図9の紙面に直交する方向から押縁16を見て、押縁16の高さ方向を上方向とした場合に、上方向をZ(+)方向とし、その反対方向である下方向をZ(-)方向とする。また、図11の紙面における右斜め上方向をX(+)方向とし、その反対方向である左斜め下方向をX(-)方向とする。また、図9及び図10の紙面における左方向をY(+)方向とし、その反対方向である右方向をY(-)方向とする。
図9に示すように、押縁16の係合部62とブラケット60の被係合部64とが互いに係合している場合において、すなわち、係合部62の底辺部62Cと被係合部64の上面64DとがZ方向において互いに当接され、且つ係合部62の外側辺部62Aと被係合部64側とがX方向において互いに当接されている場合において、被係合部64は、外側辺部62Aの全面に接するストッパ片72を備えている。
つまり、上記の場合において、ストッパ片72は、その下端72Aが押縁16の嵌合部26の下端26AよりもZ(-)側に位置可能なZ方向の長さAを有している。このようにストッパ片72を構成することにより、押縁16の収縮力を受けるストッパ片72の面積が大きくなるので、外側辺部62Aにかかる面圧を抑制できる。これにより、外側辺部62Aの変形又は損傷を防止できるので、押縁16の経年変化又は熱による収縮を効果的に防止できる。
なお、押縁16の底辺部62CのZ(+)方向の高さの上限は、リップ部28の根元28Aの位置に設定可能である。但し、押縁16の水密性能を保持する観点からみれば、その高さの上限は、面材用溝部18の上面18Aからブラケット60の板厚寸法Bを加えた高さ位置と等しくすることが好ましい。
また、図9に示すように、押縁16の嵌合部26は、二股に分岐した室外側嵌合片26Bと室内側嵌合片26Cとを有している。室外側嵌合片26Bと室内側嵌合片26CとはY方向に互いに対向して配置され、室外側嵌合片26Bと室内側嵌合片26Cとがそれぞれ切り欠かれることにより係合部62(図11参照)が構成されている。
このように構成された押縁16において、室外側嵌合片26BのY(+)側にはシール部16Aが押縁16と一体に、且つZ(-)方向に向けて突出形成されている。このシール部16Aは、図9に示すように、嵌合部26を押縁用溝部20に嵌合した場合に、下枠22の上端面22AとZ方向において互いに当接する。これにより、Y(+)側から押縁16を見た場合、押縁16の係合部62の切り欠きをシール部16Aによって隠すことができるので窓10の見栄えがよくなり、また、水密性能も保持できる。
一方、図10に示すように、窓10の奥行方向(Y方向)におけるストッパ片72の幅寸法Cは、押縁用溝部20の入口開口部の幅寸法Dよりも小さい。これにより、図9の如く、押縁16の嵌合部26を押縁用溝部20に嵌合させた場合に、ストッパ片72は押縁用溝部20に円滑に収容される。この構成により、ブラケット60にストッパ片72を備えた場合でも、嵌合部26を押縁用溝部20に問題なく嵌合できる。
上記の如く構成されたストッパ片72は、ブラケット60の上面60AよりもZ(+)方向に突出しないことがことが好ましい。これにより、複層ガラス14をストッパ片72に干渉させることなく面材用溝部18に配置できる。なお、窓枠12の縦枠に装着される押縁16のストッパ片72においても同様である。
ここで、下枠22の面材用溝部18に配置される複層ガラス14は、面材用溝部18の上面18Aに載置される不図示のセッティングブロックによってその上面18AからZ(+)方向に離間して配置される(図1参照)。よって、下枠22に配置される押縁16のストッパ片72は、ブラケット60の上面60AよりもZ(+)方向に若干量(セッティングブロックの厚み未満)突出していても複層ガラス14がストッパ片72に干渉することはない。しかしながら、縦枠にはセッティングブロックが配置されないため、縦枠に配置される押縁16については、ブラケット60の側面(上面60Aに相当)よりもY方向に突出しないことが要求される。
また、押縁16の外側辺部62Aの面と、その面に接するストッパ片72の面とは、互いに平行で平滑であることが好ましい。これにより、押縁16の外側辺部62Aの面の部分変形を防止できる。
また、図11に示すように、係合部62のX方向の長さEは、被係合部64のX方向の長さFよりも長いことが前提である。但し、EがFよりも長すぎる場合、押縁16が収縮して外側辺部62Aがストッパ片72に押圧された際に、押縁16が変形して係合部62と被係合部64との嵌合力が低下する場合がある。これにより、Eは可能な限りFと同寸法であることが好ましい。
また、前提として、被係合部64の長さFは、押縁16の収縮力に対して変形し難いだけの長さを有している。
また、ストッパ片72は、押縁16の材料より、硬度が大きい材料(金属類又はセラミックス類等)とすることが好ましい。これにより、ストッパ片72の部分変形を防止でき、係合部62と被係合部64との係合力を保持できる。
なお、本発明の窓は、押縁の熱による膨張収縮の変化量が、窓枠の熱による膨張収縮の変化量よりも大きい窓であることを前提としている。この場合、材料そのものの熱膨張率の違いによるものと、同材料であっても躯体に固定されたり鉄の心材に固定されたりすることで膨張収縮の量が異なる場合の両方を含む。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。