JP7291500B2 - 土木構造物の構築用の間詰体及び間詰方法 - Google Patents
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プレロードシェル工法においては、袋体を用意し、該袋体を前記間隙にセットする。続いて、袋体の内部に無収縮モルタル又はコンクリートからなる充填剤を充填することによって袋体を膨張させ、間詰体を形成する。これによって、支保工と地山が一体化され、支保能力を発揮することができる。
本発明は、かかる事情に鑑み、トンネルその他の各種土木構造物を構築するにあたって形成される間隙に間詰体を設ける際、その充填剤が短時間で所要の圧縮強度を発現するようにして、土木構造物の施工の工期を短縮することを目的とする。
袋体と、前記袋体に充填される充填剤とを備え、
前記充填剤が、充填時には流動性を有し、充填後に硬化反応を起こす熱硬化性樹脂を含み、かつ硬化後の圧縮強度が10N/mm2以上であることを特徴とする。
前記熱硬化性樹脂の発泡倍率が0倍~3倍であることが好ましい。
前記硬化後の圧縮強度が、10N/mm2~50N/mm2であることが好ましい。ここで、「硬化後の圧縮強度」とは、充填剤が所要の硬さになったときの圧縮強度であればよく、最終強度に限らない。
前記圧縮強度の最終強度発現時間が、1時間以内であることが好ましい。
前記間詰体は、圧縮力を受けるものであることが好ましい。
土木構造物における間隙に前記間詰体の袋体を設け、
流動状態の前記充填剤を前記袋体に充填して、袋体の内部において前記硬化反応を起こさせることを特徴とする。
前記土木構造物が、地山の掘削面に沿うアーチ状の支保工、及び前記地山に打ち込まれる先受け鋼管を含むトンネルであり、前記支保工と地山又は先受け鋼管との間に前記間詰体を設けることが好ましい。
前記土木構造物が、シールドトンネルにおけるエントランス装置を含む発進部、到達部又は引抜き部であり、前記エントランス装置が、環状の枠部と、環状の止水シールとを含み、前記止水シールの外周部が前記枠部に固定されており、前記止水シールの内周部が前記エントランス装置内を通過時のシールドマシンの外周面に密着され、
前記間詰体が、前記枠部の内周面と、前記止水シールの内周部ないしは前記シールドマシンの外周面とによって画成された間隙に配置されてもよい。
<第1実施形態>
図1及び図2は、AGF(All Ground Fasten)工法を補助工法として含むNATM工法によって施工中のトンネル1(土木構造物)を示したものである。地山2に掘削孔2cが形成されてトンネル1が構築されている。トンネル1の軸方向の一定間隔(例えば1m)置きに支保工10が設けられている。支保工10は、H型断面の鋼材からなり、掘削孔2cの上半部の掘削面2aの周方向に沿うアーチ状に形成されている。
図1に示すように、隣接する支保工10間の掘削面2aには、吹付コンクリート3が吹付けられている。
さらに図2において二点鎖線にて示すように、支保工10及び吹付コンクリート3の内周側には、二次覆工4が構築される。
なお、図においては、作図の都合上、支保工10の幅、先受け鋼管11の傾斜角度などは誇張されている。また、トンネル軸方向に沿う先受け鋼管11の配置間隔は、支保工10の配置間隔に対して実際より短縮されている。
先受け鋼管11のまわりの地山2には、注入材13が注入されている。注入材13の材質としては、シリカレジン、モルタル、セメントミルクが挙げられ、好ましくはシリカレジンである。
なお、図1及び図2において、間隙1g及び間詰体20の厚みは誇張されている。
硬化した充填剤22の圧縮強度は、10N/mm2以上であり、好ましくは10N/mm2~50N/mm2であり、より好ましくは18N/mm2~40N/mm2である。
充填剤22の圧縮強度の最終強度発現時間は、1時間以内であり、好ましくは30分以内である。
ここでは、充填剤22として、ウレタン系樹脂が用いられている。ウレタン系樹脂は、A液とB液を出発物質とし、これらA液とB液が混合されることによって硬化反応を起こして硬化される。好ましくは、充填剤22を構成するウレタン系樹脂の出発物質は、珪酸ソーダ溶液を主成分とするA液と、イソシアネート化合物を主成分とするB液を含む。
珪酸ソーダ溶液の20℃雰囲気中での比重は、1.25~1.75程度である。
珪酸ソーダ溶液の25℃雰囲気中の粘度は、各々500mPa・s以下、好ましくは10~500mPa・s、より好ましくは40~250mPa・sである。
A液には、珪酸ソーダ溶液の他、触媒、水、ポリオール、界面活性剤、難燃剤などの添加成分が含まれていてもよい。
イソシアネート化合物の20℃雰囲気中の比重は、1.1~1.4程度である。
イソシアネート化合物の25℃雰囲気中の粘度は、各々500mPa・s以下、好ましくは10~500mPa・s、より好ましくは40~250mPa・sである。
B液には、イソシアネート化合物の他、触媒、水、ポリオール、界面活性剤、難燃剤などの添加成分が含まれていてもよい。
ウレタン系樹脂は、ほぼ無発泡であることが好ましい。ウレタン系樹脂の発泡倍率は、好ましくは0~3倍程度である。発泡倍率は、発泡剤の配合比によって調整可能である。発泡剤の配合比を小さくするか発泡剤を添加しないことによって、ウレタン系樹脂をほぼ無発泡にすることができる。
なお、図1及び図2において、間隙1h及び間詰体30の厚みは誇張されている。
充填剤32は、充填剤22と同様に熱硬化性樹脂によって構成されており、充填時には流動性を有し、充填後の硬化反応によって短時間で所要の圧縮強度を発現する。好ましくは充填剤32の材質はウレタン系樹脂である。
図示しない掘削機によって地山2を掘削することで掘削孔2cを掘進する。
該掘削孔2cに新たな支保工10を搬入する。支保工10の外周には、建て込み前に袋体21を設置しておく。また、底部掘削面2bにおける支保工10のベースプレート10bが配置されるべき位置には、支保工10の建て込み前に袋体31を設置しておく。
また、支保工10のベースプレート10bと底部掘削面2bとの間に袋体31が挟まれる。あらかじめ袋体31を底部掘削面2bに敷設しておくことで、支保工10の建て込み後に袋体31を支保工10と底部掘削面2bとの間に差し込む必要がない。
圧縮強度は、具体的には、前記注入開始(硬化反応の開始)から20分~30分程度、長くても1時間以内に10N/mm2以上、好ましくは10N/mm2~50N/mm2程度となり、より好ましくは18N/mm2~40N/mm2程度となる。この硬化反応の時間は、モルタルやコンクリートの水和反応による硬化時間(数日~1週間以上)と比べると十分に短い。
充填剤22をほぼ無発泡(発泡倍率0倍~3倍)とすることによって、圧縮強度を十分に高めることができる。
硬化反応時に発生したガス成分は、袋体21の通気孔から放出される。
袋体21に耐熱性を持たせることによって、硬化反応時の発熱による袋体21の熱損傷を防止できる。
さらに、一部の間詰体20は、先行して打設された先受け鋼管11にも押し当てられる。
なお、充填剤32の注入工程は、袋体31が跨る複数の支保工10を建て込むごとに行うことにしてもよい。
さらに、二次覆工4を構築する。また、掘削孔2cの掘進を再開する。
前述したように、充填剤22,32が短時間で所要の圧縮強度を発現するまで硬化するために、後続の工程を速やかに開始することができる。この結果、トンネル1の構築に要する工期を短縮することができる。
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態を示したものである。
第2実施形態に係るトンネル1B(土木構造物)においては、支保工40が、外周側のアーチ状の支保工41と、内周側のアーチ状の支保工42とのダブル構造になっている。外周側の支保工41は、地山2の掘削面2aに沿っている。該支保工41の内周に沿って、内周側の支保工42が設置されている。支保工40をダブルにすることによって、支保強度が高まる。
なお、図3において、間隙40g及び間詰体43の厚みは誇張されている。
図4は、本発明の第3実施形態を示したものである。
第3実施形態に係るトンネル1C(土木構造物)は、ダブルリング覆工50を備えたシールドトンネルである。ダブルリング覆工50は、外周側リング51と、内周側リング52を含む。外周側リング51は、環状の掘削面2aの内周に沿って複数の断面円弧状のセグメント51aを環状に組むことによって構成されている。内周側リング52は、外周側リング51の内周に沿って複数の断面円弧状のセグメント52aを環状に組むことによって構成されている。外周側リング51及び内周側リング52どうしの間には環状の間隙50gが形成されている。間隙50gに間詰体53が設けられている。
なお、図4において、間隙50g及び間詰体53の厚みは誇張されている。
図5は、本発明の第4実施形態を示したものである。
第4実施形態においては、第1実施形態(図1)と同様のNATM工法によって施工中のトンネル1の補助工法としてAGF-Φ工法が採用されている。AGF-Φ工法では、先受け鋼管11の基端部11bが、対応する1の支保工10と交差している。該支保工10のウエブには、先受け鋼管11の基端部11bを通すガイド10dが設けられている。
図6及び図7は、本発明の第5実施形態を示したものである。第5実施形態では、間詰体70が、図6の二点鎖線にて示すシールドトンネル60の発進部60a(土木構造物)の止水用チューブとして用いられている。
詳しくは、図6に示すように、シールドトンネル60の発進立坑61の下端の周壁に発進口61aが形成されている。発進口61aを通して地山2の発進時切羽面2eが露出されている。
図6に示すように、袋体71にガス抜き路73が接続されている。ガス抜き路73にはバルブ74が設けられている。
ゴム製又は樹脂製の気密性の袋体71に微細な通気孔が形成されていてもよい。
袋体71が織布や不織布などの通気性材質によって構成されていてもよい。
充填剤72の発泡時に発生するガス成分はガス抜き路73から外部へ放出される。
言い換えると、枠部63の内周面と、止水シール66の内周部66bないしはシールドマシンMの外周面との間に環状の間隙68が画成され、該間隙68に間詰体70が配置されて圧縮される。このため、止水シール66が、シールドマシンMの外周面と間詰体70との間に強く挟み付けられ、シールドマシンMの外周面に強く密着される。これによって、地下水が地山2から間隙68に流れ込んできたとしても、止水シール66によって確実に止水することができ、地下水が発進立坑61内に侵入するのを防止できる。
例えば、施工手順は適宜改変できる。支保工10を建て込んで間隙1gを形成した後で、該間隙1gに袋体21を差し込んでもよい。
本発明の間詰体は、トンネルに限らず、立坑、函渠などに形成される間隙の間詰体にも適用できる。第5実施形態では間詰体70をシールドトンネル60の発進部60aの止水用チューブとして用いているが、間詰体70をシールドトンネルの到達部や引抜き部における止水用チューブとして用いてもよい。
土木構造物の新設時に限らず、補修時に形成される間隙の間詰にも適用できる。第2実施形態のトンネルは、新設時に限らず補修時にダブル支保構造またはトリプル支保構造としてもよい。
1B,1C トンネル(土木構造物)
1g 間隙
1h 間隙
2 地山
10 支保工
11 先受け鋼管
20 間詰体
21 袋体
22 充填剤
30 間詰体
31 袋体
32 充填剤
40 支保工
40g 間隙
43 間詰体
43a 袋体
43b 充填剤
50g 間隙
53 間詰体
53a 袋体
53b 充填剤
60 シールドトンネル
60a 発進部
61 発進立坑
61a 発進口
62 エントランス装置
63 枠部
64 止水部材
65 プレート
66 止水シール
66a 外周部
66b 内周部
67 ヒンジ
68 間隙
70 間詰体
71 袋体
72 充填剤
73 ガス抜き路
74 バルブ
M シールドマシン
Claims (6)
- 土木構造物を構築するにあたって形成される間隙に設けられる間詰体であって、
袋体と、前記袋体に充填される充填剤とを備え、
前記充填剤が、充填時には流動性を有し、充填後に硬化反応を起こす熱硬化性樹脂を含み、かつ硬化後の圧縮強度が10N/mm2以上であり、前記熱硬化性樹脂が、発泡剤無添加で発泡倍率0倍の無発泡ウレタン系樹脂であり、前記硬化反応前の前記無発泡ウレタン系樹脂が、珪酸ソーダ及びイソシアネート化合物を含み、前記珪酸ソーダが、Na 2 OとSiO 2 を含み、かつNa 2 Oに対するSiO 2 のモル比が2.0~3.0であることを特徴とする間詰体。 - 前記充填剤が所要の硬さになったときの圧縮強度が、10N/mm2~50N/mm2であることを特徴とする請求項1に記載の間詰体。
- 前記充填剤が硬化反応開始から前記所要の硬さになるまでの時間が、1時間以内であることを特徴とする請求項2に記載の間詰体。
- 請求項1~3の何れか1項に記載の間詰体を用いた間詰方法であって、
土木構造物を構築するにあたって形成される間隙に前記間詰体の袋体を設け、
流動状態の前記充填剤を前記袋体に充填して、袋体の内部において前記硬化反応を起こさせることを特徴とする間詰方法。 - 前記土木構造物が、地山の掘削面に沿うアーチ状の支保工、及び前記地山に打ち込まれる先受け鋼管を含むトンネルであり、前記支保工と地山又は先受け鋼管との間に前記間詰体を設けることを特徴とする請求項4に記載の間詰方法。
- 前記土木構造物が、シールドトンネルであり、前記シールドトンネルの発進部、到達部又は引抜き部に設けられたエントランス装置が、環状の枠部と、環状の止水シールとを含み、前記止水シールの外周部が前記枠部に固定されており、前記止水シールの内周部が前記エントランス装置内を通過時のシールドマシンの外周面に密着され、
前記間詰体が、前記枠部の内周面と、前記止水シールの内周部ないしは前記シールドマシンの外周面とによって画成された間隙に配置されることを特徴とする請求項4に記載の間詰方法。
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