以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は、実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。また、本明細書において範囲を示す「A~B」(A,Bは任意の数値)の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含する。
〔第1実施形態〕
図1は、ここに開示されるガソリンエンジンの排ガス浄化用触媒体の一例を用いた第1実施形態に係る排ガス浄化システム100の模式図である。なお、本明細書において、「ガソリンエンジン」とは、燃料としてガソリンを使用し、理論空燃比(空気:ガソリン=14.7:1)を含むリッチ域からリーン域の空燃比の混合気が燃焼されるエンジンであり、リーンバーンエンジンを含まない。
排ガス浄化システム100は、ガソリンエンジン1の排気経路に配置されるように構成されており、排ガス浄化システム100は、ガソリンエンジン1に接続されている。図1に示す矢印Fは、排気経路に配置された際の排ガスの流れ方向を示している。排ガス浄化システム100は、上流触媒コンバータ10と、下流触媒コンバータ50と、を含む。なお、触媒コンバータの「上流」および「下流」との用語は、排ガスの流れ方向における位置関係を示すものである。よって、下流触媒コンバータ50は、上流触媒コンバータ10よりも、ガソリンエンジン1の排気経路の排ガスの流れ方向Fにおける下流側に配置されている。
上流触媒コンバータ10は、第1触媒体と、これを収容する第1筐体とを備える。下流触媒コンバータ50は、第2触媒体と、これを収容する第2筐体とを備える。第1触媒体は、排ガスの流れ方向Fにおいて、第2触媒体よりも上流側に存在する。第1触媒体は、典型的にはスタートアップ触媒(S/C)であるが、これに限られない。第2触媒体は、排ガスの流れ方向Fにおいて、第1触媒体よりも下流側に存在する。第1触媒体は、典型的にはアンダーフロア触媒(UF/C)であるが、これに限られない。第1筐体および第2筐体の構成は、従来のスタートアップ触媒およびアンダーフロア触媒に用いられる筐体と同じまたは類似の構成であってよい。
以下、第1触媒体および第2触媒体について詳細に説明する。第1触媒体は、従来公知の触媒体と同じまたは類似の構成であってよい。一方、第2触媒体には、ここに開示されるガソリンエンジンの排ガス浄化用触媒体が用いられる。よって、まず、第2触媒体について説明する。
<第2触媒体>
第2触媒体の構成例を図2~図4に示す。特に図3および図4の2つの例に示すように、第2触媒体60は、第2基材70上に、NH3吸着層80と第2触媒層90とが積層された構造を有する。よって、第2触媒体60は、第2基材70と、NH3吸着層80と、第2触媒層90とを備える。
第2基材70は、第2触媒体60の骨組みを構成するものである。第2基材70としては特に限定されず、従来のこの種の用途に用いられる種々の素材および形態のものが使用可能である。第2基材70は、例えば、コージェライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミックスで構成されるセラミックス担体であってもよいし、ステンレス鋼(SUS)、Fe-Cr-Al系合金、Ni-Cr-Al系合金等で構成されるメタル担体であってもよい。図2に示すように、第2基材70は、ここではハニカム構造を有している。図示例の第2基材70は、ストレートフロー型基材であるが、ウォールフロー型基材であってもよい。
図面において、方向Xは第2基材70の筒軸方向を示し、X1は、排ガスの流れ方向Fにおける上流側を示し、X2は排ガスの流れ方向における下流側を示す。第2基材70は、筒軸方向Xに規則的に配列された複数のセル(空洞)72と、複数のセル72を仕切る隔壁(リブ)74と、を備えている。特に限定されるものではないが、第2基材70の体積(セル72の容積を含んだ見掛けの体積)は、概ね0.1~10L、例えば0.5~5Lであってもよい。また、第2基材70の筒軸方向Xに沿う平均長さ(全長)Lは、概ね10~500mm、例えば50~300mmであってもよい。
セル72は、排ガスの流路となる。セル72は、筒軸方向Xに延びている。セル72は、第2基材70を筒軸方向Xに貫通する貫通孔である。セル72の形状、大きさ、数等は、例えば、第2触媒体60を流動する排ガスの流量や成分等を考慮して設計すればよい。セル72の筒軸方向Xに直交する断面の形状は特に限定されない。セル72の断面形状は、例えば、正方形、平行四辺形、長方形、台形等の四角形や、その他の多角形(例えば、三角形、六角形、八角形)、波形、円形等種々の幾何学形状であってよい。隔壁74は、セル72に面し、隣り合うセル72の間を区切っている。特に限定されるものではないが、隔壁74の平均厚み(表面に直交する方向の寸法。以下同じ。)は、機械的強度を向上する観点や圧損を低減する観点等から、概ね0.1~10mil(1milは、約25.4μm)、例えば0.2~5milであってもよい。隔壁74は、排ガスが通過可能なように多孔質であってもよい。
この第2基材70上に、NH3吸着層80および第2触媒層90が積層される。このとき、図3に示すように第2触媒体60において、NH3吸着層80は、第2触媒層90よりも第2基材70側(すなわち、下層側)に配置される。第2触媒層90がNH3吸着層80よりも上層側にあることにより、効率良くNH3を除去することができる。
NH3吸着層80は、ゼオライトを含有し、当該ゼオライトはNH3吸着材として機能する。NH3吸着層80は、排ガスの流れ方向Fの上流側(図のX1側)に位置するフロント部82と、フロント部82よりも排ガスの流れ方向Fの下流側(図のX2側)に位置するリア部84と、を有する。
フロント部82は、ゼオライトとして、金属担持ゼオライトを含有する。金属担持ゼオライトの主たる吸着サイトは、金属カチオンサイトであるルイス酸点であり、約350℃未満の温度において、このルイス酸点で、NH3を吸着および保持することができる。よって、350℃未満の温度領域では、金属担持ゼオライトを含有するフロント部82において、NH3を吸着および保持し、フューエルカット時に、NO、O2を用いた選択的触媒還元(SCR)反応、および第2触媒層90の貴金属触媒反応によりNH3を除去して、排ガスを浄化することができる。
ここで、ガソリンエンジンにおいては、排ガス浄化用触媒体の使用環境温度域は、350℃以上の範囲(典型的には約350℃~約600℃)を含む。そのため、金属担持ゼオライトでは、350℃以上の温度域では、NH3を十分に吸着および保持することができない。そこで、リア部84は、ゼオライトとして、プロトン型ゼオライトを含有する。プロトン型ゼオライトの主たる吸着サイトは、ブレンステッド酸点である。よって、350℃以上の温度域では、ブレンステッド酸点においてNH3の吸着・保持ができるため、NH3の吸着・保持能に優れている。よって、350℃以上の温度領域では、プロトン型ゼオライトを含有するリア部84において、NH3を吸着および保持し、フューエルカット時に、O2および第2触媒層90の触媒貴金属を用いて、NH3を除去して排ガスを浄化することができる。
したがって、NH3吸着層80が、金属担持ゼオライトを含有するフロント部82と、プロトン型ゼオライトを含有するリア部84とを有し、第2触媒層90が、フロント部82およびリア部84を覆うことによって、第2触媒体60は、耐久後における優れたNH3浄化性能を発揮することができる。
フロント部82に使用される金属担持ゼオライトは、典型的には、イオン交換ゼオライトである。金属担持ゼオライトの例としては、遷移金属を担持したゼオライトが挙げられる。
このゼオライトに担持される遷移金属は、例えば、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、La、Ce、およびAgからなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属であり、好ましくはFe、Cu、およびAgからなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属であり、より好ましくは、Cuおよび/またはFeであり、最も好ましくはCuである。なお、本明細書において「Aおよび/またはB」との表現は、AおよびBのいずれか、またはAとBの両方を指す。
基本骨格をなすゼオライトは、典型的には、アルミノケイ酸塩であるが、シリコアルミノリン酸塩(SAPO)であってもよい。ゼオライトは、NH3を吸着するのに好適なサイズの細孔を有するものが好ましい。ゼオライトの構造を国際ゼオライト学会(IZA:International Zeolite Association)が定めるコードで例示すると、AEI、AFX、AFT、AST、BEA、BEC、CHA、EAB、ETR、GME、ITE、KFI、LEV、PAU、SAS、SAT、SAV、THO、UFI、ATT、DDR、ERI、IFY、JST、LOV、LTA、OWE、RHO、RSN、SFW、TSC、UEI、VSVなどが挙げられる。なかでも、AEI、AFX、AFT、AST、BEA、BEC、CHA、EAB、ETR、GME、ITE、KFI、LEV、PAU、SAS、SAT、SAV、THO、UFIが挙げられ、CHA(チャバサイト)が好ましい。
NH3吸着能の観点から、金属担持ゼオライトとして特に好ましくは、Cuを担持するCHA型ゼオライト(Cu担持CHAゼオライト)である。
リア部84は上述の理由から、プロトン型ゼオライトを含有する。加えて、プロトン型ゼオライトの電荷補償カチオン種がプロトンであるため、NH3吸着層80全体を金属担持ゼオライトを用いて構成する場合に比べて、電荷補償カチオンに由来する金属の溶出によるNH3吸着能の低下を抑制することができる。
本明細書において、「プロトン型ゼオライト」とは、イオン交換可能なカチオンサイトの少なくとも一部(好ましくは50%超、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは全部(100%))がプロトン(H+)で占有されているゼオライトを指す。典型的に例えば、プロトン型ゼオライトは、イオン交換工程を経ることなく得られるゼオライトである。NH3吸着層80の製造時において、プロトン型ゼオライトに変換されたものを使用することもできる。例えば、プロトン型ゼオライトは、アンモニウムイオン(NH4
+)を電荷補償カチオン種とするゼオライトが、NH3吸着層80の製造時の焼成によって、プロトン型ゼオライトに変換されたものであってもよい。
プロトン型ゼオライトの種類は、特に限定されず、大細孔ゼオライト(すなわち、12員環以上を最大細孔として有するゼオライト)、中細孔ゼオライト(すなわち、10員環を最大細孔として有するゼオライト)、または小細孔(すなわち、8員環を最大細孔として有するゼオライト)ゼオライトなどであってよい。
ゼオライトは、分子オーダーの細孔径を有し、その吸着性能は、その細孔径に左右され、NH3は、2.6Å(オングストローム:0.26nm)の分子サイズを有する。ここで、プロトン型ゼオライトの細孔径が大きいと、プロトン型ゼオライトは、NH3のみならず炭化水素も吸着するようになる。したがって、プロトン型ゼオライトの細孔径を適切に選択することにより、NH3をより効率よく吸着することができる。そのような観点から、大細孔ゼオライトとしては、BEA型ゼオライトが好ましい。
NH3をより効率よく吸着する観点から、プロトン型ゼオライトは、好ましくは、小細孔ゼオライト(すなわち、8員環を最大細孔として有するゼオライト)であり、より好ましくは、基本骨格が、実質的に4員環、6員環、および8員環のみから構成されているゼオライトである。
なお、ゼオライトには、構造欠陥が存在し得る。その点を考慮して、本明細書においては「ゼオライトの基本骨格が実質的に4員環、6員環、および8員環のみから構成される」とは、ゼオライトの基本骨格が4員環、6員環、および8員環のみからなる場合のみならず、ゼオライトの基本骨格が、4員環、6員環、および8員環に加えて、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、製造時の技術的限界等による構造欠陥によって、これら以外の環が含まれる場合を包含する。
基本骨格が、実質的に4員環、6員環、および8員環のみから構成されているゼオライトの一例として、本実施形態では、チャバサイト型ゼオライト(CHA型ゼオライト)が用いられている。本明細書において、「CHA型ゼオライト」とは、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)が定めているIUPAC構造コードにおいてCHA構造となる結晶構造を有するゼオライトのことを指す。CHA型ゼオライトは0.38nm×0.38nmの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有する。
チャバサイト型ゼオライトの例としては、SSZ-13、SSZ-62、LZ-218、Linde D、Linde R、ZK-14等が挙げられ、なかでもSSZ-13が好ましい。
基本骨格が、実質的に4員環、6員環、および8員環のみから構成されているゼオライトの他の例としては、ACO,AEI,AEN,AFN,AFT,AFX,ANA,APC,APD,ATT,CDO,CHA,DDR,DFT,EAB,EDI,EPI,ERI,GIS,GOO,IHW,ITE,ITW,LEV,LTA,KFI,MER,MON,NSI,OWE,PAU,PHI,RHO,RTH,SAT,SAV,SIV,THO,TSC,UEI,UFI,VNI,YUG,ZON型ゼオライトが挙げられる。
なお、ゼオライトの結晶構造は、粉末X線回折測定を行うことにより確認することができる。具体的には、NH3吸着層80に含まれるゼオライトの粉末X線回折パターンを測定し、基本骨格が既知のゼオライトの粉末X線回折パターンと比較することで、確認することができる。
プロトン型ゼオライトにおけるSiO2/Al2O3比は、特に限定されず、例えば、5~500であり、好ましくは10~100である。
プロトン型ゼオライトとして、特に好ましくは、CHA型ゼオライトおよびBEA型ゼオライトであり、最も好ましくはCHA型ゼオライトである。よって、NH3吸着層80において、フロント部82にCu担持CHAゼオライトを用い、リア部84にCHA型ゼオライトおよび/またはBEA型ゼオライト(特にCHA型ゼオライト)を用いる組み合わせが特に好ましい。
フロント部82中の金属担持ゼオライトの量は、特に限定されない。フロント部82中の金属担持ゼオライトの量は、耐久後におけるより高いNH3浄化性能の観点から、10質量%以上が好ましい。また、排ガスの雰囲気変動が小さい場合には、フロント部82中の金属担持ゼオライトの量を大きくすることが、耐久後におけるより高いNH3浄化性能に関して有利である。よって、フロント部82中の金属担持ゼオライトの量は、50質量%以上、または80質量%以上であり得る。
なお、フロント部82は、本発明の効果を顕著に阻害しない範囲内(例えば、フロント部82中の全ゼオライトに対し、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、さらに好ましくは3質量%未満)で、金属担持ゼオライト以外のゼオライトを含有していてもよい。特に好ましくは、フロント部82は、ゼオライトとして金属担持ゼオライトのみを含む。
同様に、リア部84中のプロトン型ゼオライトの量は、特に限定されない。NH3吸着層80中のプロトン型ゼオライトの量は、耐久後におけるより高いNH3浄化性能の観点から、10質量%以上が好ましい。また、排ガスの雰囲気変動が大きい場合には、フロント部82の劣化が起こりやすいため、NH3吸着層80中のプロトン型ゼオライトの量を大きくすることが、耐久後におけるより高いNH3浄化性能に関して有利である。よって、NH3吸着層80中のプロトン型ゼオライトの量は、50質量%以上、または80質量%以上であり得る。
なお、リア部84は、本発明の効果を顕著に阻害しない範囲内(例えば、リア部84中の全ゼオライトに対し、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、さらに好ましくは3質量%未満)で、プロトン型ゼオライト以外のゼオライトを含有していてもよい。特に好ましくは、リア部84は、ゼオライトとしてプロトン型ゼオライトのみを含む。
NH3吸着層80は、任意成分として、ゼオライト以外の成分を含み得る。任意成分の例としては、酸素吸放出能を有する酸素吸放出材(いわゆる、OSC材)が挙げられる。OSC材としては、酸素吸蔵能を有することが知られている公知の化合物を用いてよく、その具体例としては、セリア(CeO2)を含んだ金属酸化物(Ce含有酸化物)が挙げられる。Ce含有酸化物は、セリアであってもよく、セリアと、セリア以外の金属酸化物との複合酸化物であってもよい。Ce含有酸化物は、耐熱性や耐久性を向上する観点等から、ZrおよびAlのうちの少なくとも一方を含む複合酸化物、例えば、セリア(CeO2)-ジルコニア(ZrO2)複合酸化物(CZ複合酸化物)であってよい。CZ複合酸化物は、耐熱性を向上する観点等から、例えば、Nd2O3、La2O3、Y2O3、Pr6O10等の希土類金属酸化物をさらに含んでいてもよい。
OSC材が酸化セリウムを含む複合酸化物である場合、その酸素吸蔵能を十分に発揮させる観点から、酸化セリウムの含有率は、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。一方、酸化セリウムの含有率が高過ぎると、OSC材の塩基性が高くなり過ぎるおそれがある。そのため、酸化セリウムの含有率は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である。
NH3吸着層80中の上記OSC材の量は、特に限定されない。NH3吸着層80中の上記OSC材の量は、例えば10質量%以上であり、好ましくは20質量%以上である。一方、上記OSC材の量は、例えば60質量%以下であり、好ましくは40質量%以下である。
触媒貴金属は、上記のOSC材に担持されていてもよく、非OSC材(例、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)など)に担持されていてもよい。
NH3吸着層80の任意成分のさらに別の例としては、アルミナゾル、シリカゾル等のバインダ、各種添加剤などが挙げられる。
NH3吸着層80のコート量(すなわち、成形量)は、特に限定されない。フロント部82のコート量は、筒軸方向Xに沿ってフロント部82が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、例えば10~200g/Lであり、100~200g/Lであってもよい。上記範囲を満たすことにより、有害成分の浄化性能の向上と圧損の低減とを高いレベルで両立することができる。また、耐久性や耐剥離性を向上することができる。リア部84のコート量は、筒軸方向Xに沿ってリア部84が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、例えば3~200g/Lであり、10~100g/Lであってもよい。上記範囲を満たすことにより、有害成分の浄化性能の向上と圧損の低減とを高いレベルで両立することができる。また、耐久性や耐剥離性を向上することができる。
NH3吸着層80の厚みは特に限定されず、耐久性や耐剥離性等を考慮して適宜設計すればよい。NH3吸着層80の厚みは、例えば1~100μmであり、5~100μmであってよい。
NH3吸着層80のコート幅(筒軸方向Xの平均寸法)は、特に限定されず、第2基材70の大きさや第2触媒体60に流通する排ガスの流量等を考慮して適宜設計すればよい。当該コート幅は、例えば、基材の筒軸方向Xの全長の10%~100%であり、好ましくは20%~100%であり、より好ましくは30%~100%である。
NH3吸着層80におけるフロント部のコート幅と、リア部のコート幅との比は特に限定されないが、これらの比(フロント部のコート幅:リア部のコート幅)は、好ましくは4:6~8:2であり、より好ましくは4:6~7:3であり、さらに好ましくは4:6~6:4である。
第2触媒層90は、触媒貴金属を含有する。当該触媒貴金属は、通常、担体に担持され、よって、第2触媒層90は、通常、三元触媒を含有する。第2触媒層90は、三元触媒を含有する公知の触媒層と同様にして構成することができる。
触媒貴金属は、排ガス中の有害成分を浄化する触媒金属成分である。触媒貴金属の例としては、NH3吸着層80に用いられる触媒貴金属として例示されたものが挙げられる。触媒貴金属は、1種単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。触媒貴金属としては、触媒性能の観点から、Pt、Rh、Pd、IrおよびRuからなる群から選ばれる少なくとも2種が好ましく、還元活性が高いRhと、酸化活性が高いPdおよびPtの少なくともいずれかとの組み合わせより好ましい。
触媒貴金属は、粒子径が十分に小さな微粒子として用いることが好ましい。触媒貴金属粒子の平均粒子径(具体的には、透過電子顕微鏡による触媒層の断面画像に基づいて求められる20個以上の貴金属粒子の粒子径の平均値)は、通常1~15nm程度であり、好ましくは10nm以下、より好ましくは7nm以下、さらに好ましくは5nm以下である。これにより、触媒貴金属の排ガスとの接触面積を高めて浄化性能をより向上させることができる。
第2触媒体60における触媒貴金属の量(NH3吸着層80中および第2触媒層90中の触媒貴金属の合計量)は、特に限定されず、触媒貴金属の種類等に応じて適宜決定することができる。第2基材70の体積1L当たりの触媒貴金属の量として、特に高い排ガス浄化性能の観点からは、当該量は、例えば、0.01g/L以上、0.03g/L以上、0.05g/L以上、0.08g/L以上、または0.10g/L以上であってよい。排ガス浄化性能とコストとのバランスの観点からは、当該量は、例えば、5.00g/L以下、3.00g/L以下、2.00g/L以下、1.50g/L以下、1.00g/L以下、0.80g/L以下、または0.50g/L以下であってよい。
なお、本明細書において「基材の体積1L当たり」とは、基材の純体積にセル通路の容積も含めた全体の嵩容積1L当たりをいう。以下の説明において(g/L)と記載しているものについては、基材の体積1Lに含まれる量を示すものである。
第2触媒層90は、OSC材を含有することが好ましい。第2触媒層90に含有されるOSC材の例としては、NH3吸着層80に使用可能なOSC材として例示されたものが挙げられる。
当該OSC材は、触媒貴金属を担持していてもよいし、担持していなくてもよい。一部のOSC材が触媒貴金属を担持し、その他のOSC材が触媒貴金属を担持していない態様も可能である。
第2触媒層90は、非OSC材(すなわち、酸素吸放出能を有しない材料)をさらに含んでいてよく、触媒貴金属が当該非OSC材に担持されていてもよい。非OSC材の例としては、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)などが挙げられる。
よって、第2触媒層90においては、通常、担体として、OSC材および非OSC材のいずれかまたは両方が用いられる。担体は、比表面積が大きいことが好ましく、よって好適には多孔質状の担体粒子が用いられる。担体粒子は、BET法により求まるその比表面積が5~200m2/g(特に、10~100m2/g)であることが耐熱性、および構造安定性の観点から好ましい。
第2触媒層90中のOSC材の量は、例えば10質量%以上であり、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上である。また、第2触媒層90中のOSC材の量は、例えば90質量%未満であり、好ましくは60質量%未満であり、より好ましくは50質量%以下である。
第2触媒層90中の非OSC材の量は、例えば10質量%以上であり、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上である。また、第2触媒層90中の非OSC材の量は、例えば90質量%未満であり、好ましくは70質量%未満であり、より好ましくは60質量%未満である。
第2触媒層90は、上記以外の成分をさらに含有していてもよい。例えば、第2触媒層90は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、希土類元素等の金属種を含んでもよい。これらの元素(特に、アルカリ土類元素)は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物等の形態で含有されていてもよい。第2触媒層90において、アルカリ土類金属元素(特にBa)とPtおよび/またはPdとを共存させることが好ましい。
第2触媒層90のその他の任意成分としては、アルミナゾル、シリカゾル等のバインダ;NOx吸蔵能を有するNOx吸着材;安定化等などの各種添加剤などが挙げられる。
第2触媒層90は、NH3吸着層80のフロント部82とリア部84の両方を覆っている。図示例では、第2触媒層90は、NH3吸着層80のフロント部82の全体と、リア部84の全体とを覆っている。しかしながら、フロント部82およびリア部84はそれぞれ、その一部が第2触媒層90に覆われていなくてもよい。第2触媒層は、好ましくはNH3吸着層80のフロント部82の表面を、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは100%を覆う。第2触媒層は、好ましくはNH3吸着層80のリア部84の表面を、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは100%を覆う。
第2触媒層90は、単層構造であってもよいし、複層構造であってもよい。図3に示す例では、第2触媒層90は、単層である。第2触媒層90が単層構造の場合、第2触媒層90は、組成、性状等の異なる複数の領域から構成されていてもよい。例えば、第2触媒層90は、筒軸方向Xにおいて、上流側X1に位置するフロント部と、当該フロント部よりも下流側X2に位置するリア部とを有し、フロント部とリア部とで、組成および/または性状が異なっていてもよい。具体的に例えば、フロント部とリア部とで、異なる触媒貴金属を含有していてもよい。
第2触媒層90が複層構造である場合、層の数は特に限定されない。第2触媒層90は、基材側の層(下層)と表面側の層(上層)とを有する二層構造であってもよいし、基材側の層(下層)と表面側の層(上層)と、その間に位置する1層以上の中間層とを有する三層以上の構造であってもよい。この複層構造において、各層が異なる触媒貴金属を含有していてもよい。
第2触媒層90が複層構造である場合の例を図4に示す。図4においては、第2基材70上にNH3吸着層80が設けられ、第2触媒層90がNH3吸着層80上に設けられている。
第2触媒層90は、基材側の層である下層部92と、下層部92の上に設けられた上層部94とを有している。図示例では、上層部94は、第2触媒層90の露出表面側(表層部側)の層でもある。第2触媒層90の下層部92と上層部94はそれぞれ、触媒貴金属を含有している。下層部92は、触媒貴金属としてPd、Pt等の酸化触媒を含有する。一方、上層部94は、触媒貴金属としてRh等の還元触媒を含有する。この場合、酸化触媒と還元触媒とを積層方向に分離して担持することにより、触媒貴金属の劣化(例えば粒成長に伴うシンタリング)を抑制して、第2触媒体60の耐久性をより向上することができる。
ここで、下層部92が触媒貴金属としてPdを含み、上層部94が触媒貴金属としてRhとして含む場合には、第2触媒体60の耐久後におけるNH3浄化性能が特に高くなり、好ましい。
第2触媒層90のコート量(すなわち、成形量)は、特に限定されない。当該コート量は、筒軸方向Xに沿って第2触媒層90が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、例えば10~500g/Lであり、100~200g/Lであってもよい。上記範囲を満たすことにより、有害成分の浄化性能の向上と圧損の低減とを高いレベルで両立することができる。また、耐久性や耐剥離性を向上することができる。
第2触媒層90の厚みは特に限定されず、耐久性や耐剥離性等を考慮して適宜設計すればよい。第2触媒層90の厚みは、例えば1~100μmであり、5~100μmであってよい。
第2触媒層90のコート幅(筒軸方向Xの平均寸法)は、特に限定されず、第2基材70の大きさや第2触媒体60に流通する排ガスの流量等を考慮して適宜設計すればよい。当該コート幅は、例えば、基材の筒軸方向Xの全長の10%~100%であり、好ましくは20%~100%であり、より好ましくは30%~100%である。
第2触媒体60は、NH3吸着層80および第2触媒層90以外の層を有していてもよい。
第2触媒体60は、公知方法に従い、作製することができる。例えば、金属担持ゼオライトと、溶媒と、任意成分(例、OSC材、触媒貴金属源、バインダなど)とを含有するNH3吸着層フロント部形成用スラリーを用意する。また、プロトン型ゼオライトと、溶媒と、任意成分(例、OSC材、触媒貴金属源、バインダなど)とを含有するNH3吸着層リア部形成用スラリーを用意する。また、触媒貴金属源と、OSC材と、必要に応じ非OSC材と、溶媒と、その他の任意成分とを含有する触媒層形成用スラリーを用意する。また、図2に示すような第2基材70を用意する。
まず、第2基材70の排ガスの流れ方Fの上流側(X1側)の端部から所定の内部位置まで、NH3吸着層フロント部形成用スラリーをウォッシュコート法等によって塗布し、乾燥する。次に、第2基材70の排ガスの流れ方Fの下流側(X2側)の端部から所定の内部位置まで、NH3吸着層リア部形成用スラリーをウォッシュコート法等によって塗布し、乾燥する。その後、焼成を行って、フロント部82およびリア部84を有するNH3吸着層80を形成する。
次に、形成したNH3吸着層80の上に触媒層形成用スラリーを、NH3吸着層80のフロント部82およびリア部84を覆うように塗布し、必要に応じ乾燥した後、焼成して第2触媒層90を形成する。これにより、第2触媒体60を得ることができる。
<第1触媒体>
第1触媒体20は、スタートアップ触媒(S/C)とアンダーフロア触媒(UF/C)とを備える公知のガソリンエンジン用排ガス浄化システムの、スタートアップ触媒と同じまたは類似の構成であってよい。
第1触媒体20の一例を図5に示す。例えば、第1触媒体20は、第1基材30と、第1触媒層40とを含有する。第1触媒体20は、典型的には、ガソリンエンジン1の排気経路において、エキゾーストマニホールド及びエンジンルームの近くの位置(クローズドカップル(CC)位置)に配置される。
第1実施形態においては、第1基材30には、ストレートフロー型基材が用いられる。しかしながら、第1基材30はこれに限られず、ウォールフロー型基材であってもよい。例えば、後述の実施形態のように、第1基材30としてウォールフロー型基材を用いて、第1触媒体20を、触媒コート型のガソリンパティキュレートフィルター(GPF)として構成することも可能である。
第1基材30は、コージェライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミックスで構成されるセラミックス担体であってもよいし、ステンレス鋼(SUS)、Fe-Cr-Al系合金、Ni-Cr-Al系合金等で構成されるメタル担体であってもよい。
第1実施形態においては、第1触媒体20は、一つの第1基材30を有すが、これに限られない。例えば、後述の実施形態のように、第1触媒体20は、複数の第1基材30を備え、それぞれの第1基材30に第1触媒層40が設けられたタンデム型の触媒体であってよい。タンデム型の触媒体において、複数の第1基材30の種類は同じであっても異なっていてもよい。また、複数の第1触媒層40の組成は、同じであっても異なっていてもよい。
第1触媒層40は、触媒貴金属を含有する。第1触媒層40に含有される触媒貴金属は、第2触媒体60の第2触媒層90に含有される触媒貴金属と同様であってよい。第1触媒層40は、通常、触媒貴金属を担持する担体を含有する。第1触媒層40に含有される担体は、第2触媒体60の第2触媒層90に含有される担体と同様であってよい。第1触媒層40に含有されるその他の成分についても、第2触媒体60の第2触媒層90と同様であってよい。
第1触媒層40は、単層構造であってもよいし、複層構造であってもよい。第1触媒層40が単層構造の場合、第1触媒層40は、組成、性状等の異なる複数の領域から構成されていてもよい。例えば、第1触媒層40は、筒軸方向Yにおいて、上流側Y1に位置するフロント部と、下流側Y2に位置するリア部とを有し、フロント部とリア部とで、組成および/または性状が異なっていてもよい。具体的に例えば、フロント部とリア部とで、異なる貴金属を含有していてもよい。
第1触媒層40が複層構造である場合、層の数は特に限定されない。第1触媒層40は、基材側の層(下層)と表面側の層(上層)とを有する二層構造であってもよいし、基材側の層(下層)と表面側の層(上層)と、その間に位置する1層以上の中間層とを有する三層以上の構造であってもよい。この複層構造において、各層が異なる貴金属を含有していてもよい。
図5に示す例では、第1触媒層40は、複層構造であり、基材側の下層部42と露出表面側の上層部44とを有している。第1触媒層40の下層部42と上層部44はそれぞれ、触媒貴金属を含有している。下層部42は、触媒貴金属としてPdを含有する。一方、上層部44は、触媒貴金属としてRhを含有する。この場合、酸化触媒と還元触媒とを積層方向に分離して担持することにより、触媒貴金属の劣化(例えば粒成長に伴うシンタリング)を抑制して、第1触媒体20の耐久性をより向上することができる。
第1触媒体20は、公知方法に従い、作製することができる。例えば、触媒貴金属源と、OSC材と、非OSC材と、溶媒と、任意成分とを含有するスラリーを用意する。このスラリーを、第1基材30に公知方法に従い塗工し、必要に応じ乾燥した後、焼成して、第1触媒層40を形成する。これにより、第1触媒体20を得ることができる。
≪排ガス浄化システム100≫
ガソリンエンジン1においては、理論空燃比を含むリッチ領域からリーン域の空燃比の混合気が燃焼される。図1に示すように、ガソリンエンジン1において生成した排ガスは、まず、上流触媒コンバータ10の第1触媒体20において浄化される。第1触媒体20は、三元触媒の触媒貴金属を含有しており、NOxを浄化する際にNH3が生成し、NH3を含む排ガスが上流触媒コンバータ10から流出する。
上流触媒コンバータ10から流出した排ガスは、下流触媒コンバータ50に流入する。ここで、下流触媒コンバータ50内の温度が低く、触媒活性温度に到達していない場合には、NH3を浄化することができない。そのため、排ガス浄化システム100では、第2触媒体60がNH3吸着層80を備える。これにより、排ガスに含まれるNH3は、下流触媒コンバータ50の第2触媒体60が備えるNH3吸着層80に吸着され、排ガス浄化システム100外に排出されることが抑制される。NH3吸着層80に吸着されたNH3は、第2触媒層90において、例えばフューエルカット(F/C)のタイミングで浄化される。
ここで、ディーゼルエンジンおよびリーンバーンエンジンとは異なり、ガソリンエンジンにおいては、排ガス浄化システムの温度は、約350℃以上(例えば、約350℃~約600℃)に達し、また、リッチ雰囲気-リーン雰囲気間で雰囲気が変動する。上述のように、350℃未満の温度域では、第2触媒体60のNH3吸着層80のフロント部において、金属担持ゼオライトによってNH3の吸着・保持を行うことができ、約350℃以上の温度域では、第2触媒体60のNH3吸着層80のフロント部において、プロトン型ゼオライトによって、NH3の吸着・保持を行うことができる。
よって、350℃未満の温度領域では、フロント部82において、NH3を吸着および保持し、フューエルカット時に、NO、O2を用いた選択的接触還元(SCR)反応、および貴金属触媒反応により、NH3を除去して排ガスを浄化することができる。350℃以上の温度領域では、リア部84において、NH3を吸着および保持し、フューエルカット時に、O2および第2触媒層90の触媒貴金属を用いて、NH3を除去して排ガスを浄化することができる。したがって、第2触媒体60は、ガソリンエンジンの排ガスに対して、耐久後における優れたNH3浄化性能を発揮することができる。
≪その他の実施形態≫
図6~12にその他の実施形態を示す。なお、以下の実施形態について、第1実施形態と同じ部分については説明を省略している。
図6に例示される第2実施形態に係るガソリンエンジン用排ガス浄化システム200は、ガソリンエンジン1の排気経路に配置されるように構成されており、排ガス浄化システム200は、ガソリンエンジン1に接続されている。排ガス浄化システム200は、上流触媒コンバータ10と、下流触媒コンバータ50と、ガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)110とを含む。GPF110は、排ガスの流れ方向Fにおいて、上流触媒コンバータ10の下流側であって、かつ下流触媒コンバータ50の上流側に配置されている。すなわち、第2実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システム200は、第1実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システム100に、上流触媒コンバータ10と下流触媒コンバータ50との間にGPF110が追加されたものである。GPF110としては、公知のガソリンエンジン用排ガス浄化システムに用いられる公知のGPFを用いることができる。
このような構成によれば、排ガス中のパーティキュレートマター(PM)をGPFにより捕集することができる。よって、このような構成によれば、耐久後におけるNH3浄化性能が高く、PM排出量が低減されたガソリンエンジン用排ガス浄化システムを提供することができる。
図7に例示される第3実施形態に係るガソリンエンジン用排ガス浄化システム300は、第2実施形態と同様にガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)110を含む。しかしながら、GPF110は、下流触媒コンバータ50よりも排ガスの流れ方向Fにおける下流側に配置されている。すなわち、第3実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システム300は、第1実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システム100に、下流触媒コンバータ50の下流側にGPF110が追加されたものである。
このような構成によれば、排ガス中のPMをGPFにより捕集することができる。よって、このような構成によれば、耐久後におけるNH3浄化性能が高く、PM排出量が低減されたガソリンエンジン用排ガス浄化システムを提供することができる。
図8に例示される第4実施形態に係るガソリンエンジン用排ガス浄化システム400においては、上流触媒コンバータ10の第1触媒体20が、上流側触媒体22と下流側触媒体24とを含むタンデム型の触媒体であり、この点において第1実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システム100と異なっている。このような構成によれば、第1触媒体20の浄化性能をさらに高めることができる。
図9に例示される第5実施形態に係るガソリンエンジン用排ガス浄化システム500においては、上流触媒コンバータ10の第1触媒体20が、上流側触媒体22と下流側触媒体24とを含むタンデム型の触媒体であり、GPF110が、排ガスの流れ方向Fにおいて、上流触媒コンバータ10の下流側であって、かつ下流触媒コンバータ50の上流側に配置されている。すなわち、第5実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システム500は、第4実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システム400に、上流触媒コンバータ10と下流触媒コンバータ50との間にGPF110が追加されたものである。このような構成によれば、第1触媒体20の浄化性能をさらに高めつつ、排ガス中のPMを効率よく捕集することができる。
図10に示された第6実施形態に係るガソリンエンジン用排ガス浄化システム600においては、上流触媒コンバータ10の第1触媒体20が、上流側触媒体22と下流側触媒体24とを含むタンデム型の触媒体であり、GPF110が、排ガスの流れ方向Fにおいて、下流触媒コンバータ50の下流側に配置されている。すなわち、第6実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システム600は、第4実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システム400に、下流触媒コンバータ50の下流側にGPF110が追加されたものである。このような構成によれば、第1触媒体20の浄化性能をさらに高めつつ、排ガス中のPMを効率よく捕集することができる。
図11に示された第7実施形態に係るガソリンエンジン用排ガス浄化システム700においては、上流触媒コンバータ10の第1触媒体26の基材に、ウォールフロー型の基材が用いられており、第1触媒体26の基材は、GPFの機能を備えている。このような構成によれば、排ガス中のPMをGPFにより捕集することができる。よって、このような構成によれば、耐久後におけるNH3浄化性能が高く、PM排出量が低減されたガソリンエンジン用排ガス浄化システムを提供することができる。
図12に示された第8実施形態に係るガソリンエンジン用排ガス浄化システム800においては、上流触媒コンバータ10の第1触媒体20が、上流側触媒体22と下流側触媒体26とを含むタンデム型の触媒体である。下流側触媒体26の基材には、ウォールフロー型の基材が用いられており、下流側触媒体26の基材は、GPFの機能を備えている。このような構成によれば、第1触媒体20の浄化性能をさらに高めつつ、排ガス中のPMを効率よく捕集することができる。
以上、ここに開示されるガソリンエンジンの排ガス浄化用触媒体が、排ガス浄化システムに用いられる実施形態について説明した。しかしながら、ここに開示されるガソリンエンジンの排ガス浄化用触媒体は、単独で用いてもよい。あるいは、ここに開示されるガソリンエンジンの排ガス浄化用触媒体は、基材と触媒貴金属を含有する触媒層とを備える上流側触媒体と、下流側触媒体とを備えるタンデム触媒であって、下流側触媒体が、ここに開示されるガソリンエンジンの排ガス浄化用触媒体であるタンデム触媒として構成することもできる。このタンデム触媒は、1つの触媒コンバータの筐体に収容され得る。
≪ガソリンエンジン用排ガス浄化システム100の用途≫
ガソリンエンジン用排ガス浄化システム100は、自動車、トラック、オートバイ等の車両のみならず、船舶等のガソリンエンジンから排出される排ガスの浄化に好適に用いることができる。なかでも、ガソリンエンジンを備える自動車、トラック等の車両に対して好適に用いることができる。また、ガソリンエンジン用排ガス浄化システム100は、還元ガスが存在し得る環境において効率的にNH3を吸着除去できるため、ガソリンエンジン用排ガス浄化システム100は、H2エンジン、NH3エンジン、e-Fuelエンジンの排ガス浄化にも応用可能である。
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
実施例1
第1基材として、ハニカム基材(コージェライト製、直径:117mm、全長:100mm、1平方インチ当たりのセル数:600cpsi)を用意した。硝酸パラジウムと、CeO2-ZrO2系複合酸化物粉末(OSC材)と、Al2O3粉末と、硫酸バリウムと、バインダと、イオン交換水とを混合して、Pd含有スラリーを調製した。このPd含有スラリーを、下層形成用スラリーとして第1基材に流し込み、ブロアーで不要部分を吹き払うことで、第1基材表面を下層形成用の材料でコーティングした。これを電気炉内で焼成することにより、第1基材上にPd触媒を含有する下層を形成した。
硝酸ロジウムと、CeO2-ZrO2系複合酸化物粉末(OSC材)と、Al2O3粉末と、バインダと、イオン交換水とを混合して、Rh含有スラリーを調製した。このRh含有スラリーを、上層形成用スラリーとして下層を形成した第1基材に流し込み、ブロアーで不要部分を吹き払うことで、基材に形成された下層の表面を上層形成用の材料でコーティングした。これを、電気炉内で焼成することにより、下層上にRh触媒を含有する上層を形成した。このようにして、第1触媒体を作製した。
次に、第2基材として第1基材と同じハニカム基材を用意した。金属担持ゼオライトとしてCu担持CHA型ゼオライト(Cu-CHA)と、アルミナバインダと、イオン交換水とを混合して、Cu担持ゼオライト含有スラリーを調製した。プロトン型ゼオライトとして、プロトン型のCHA型ゼオライト(H-CHA)と、アルミナバインダと、イオン交換水とを混合して、プロトン型ゼオライト含有スラリーを調製した。
まず、Cu担持ゼオライト含有スラリーを、第2基材の全長のうち上流側の50%に相当する部分に、塗布し、乾燥した。次に、プロトン型ゼオライト含有スラリーを、第2基材の全長のうち下流側の50%に相当する部分に、塗布し、乾燥した。これを焼成することによって、第2基材上に、Cu担持ゼオライトを含有するフロント部と、プロトン型ゼオライトを含有するリア部とを有する下層を形成した。
上記で調製したPd含有スラリーを、中間層形成用スラリーとして下層を形成した第2基材に流し込み、ブロアーで不要部分を吹き払うことで、第2基材に形成された下層の表面を中間層形成用の材料でコーティングした。これを、電気炉内で焼成することにより、下層上にPd触媒を含有する中間層を形成した。
上記で作製したRh含有スラリーを、上層形成用スラリーとして中間層を形成した第2基材に流し込み、ブロアーで不要部分を吹き払うことで、第2基材に形成された中間層の表面を上層形成用の材料でコーティングした。これを、電気炉内で焼成することにより、中間層上にRh触媒を含有する上層を形成した。このようにして、第2触媒体を作製した。作製した第1触媒体および第2触媒体を組み合わせて、実施例1の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図13Aに示す。
実施例2
実施例1と同様にして第1触媒体を作製した。次に、硝酸白金と、CeO2-ZrO2系複合酸化物粉末(OSC材)と、Al2O3粉末と、硫酸バリウムと、バインダと、イオン交換水とを混合して、Pt含有スラリーを調製した。このPt含有スラリーを、中間層形成用スラリーとして用いた以外は、実施例1と同様にして、第2触媒体を作製した。なお、実施例2の第2触媒体におけるPt量は、実施例1の第2触媒体におけるPd量と同じとした。作製した第1触媒体および第2触媒体を組み合わせて、実施例2の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図13Bに示す。
比較例1
実施例1と同様にして第1触媒体を作製した。実施例1と同様にして、第2触媒体上に下層を形成した。Pd含有スラリーを、第2基材の全長のうち下流側の50%に相当する部分に、塗布し、乾燥し、焼成することにより、下層のリア部上に中間層を形成した。なお、この中間層の各成分のコート量は、実施例1の中間層の各成分のコート量と同じなるようにした。Rh含有スラリーを、第2基材の全長のうち下流側の50%に相当する部分に、塗布し、乾燥し、焼成することにより、中間層上に上層を形成した。なお、この上層の各成分のコート量は、実施例1の上層の各成分のコート量と同じなるようにした。このようにして、第2触媒体を得た。作製した第1触媒体および第2触媒体を組み合わせて、比較例1の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図13Cに示す。
比較例2
実施例1と同様にして第1触媒体を作製した。第2基材として第1基材と同じハニカム基材を用意した。まず、プロトン型ゼオライト含有スラリーを、第2基材の全長のうち上流側の50%に相当する部分に、塗布し、乾燥した。次に、Cu担持ゼオライト含有スラリーを、第2基材の全長のうち下流側の50%に相当する部分に、塗布し、乾燥した。これを焼成することによって、第2基材上に、プロトン型ゼオライトを含有するフロント部と、Cu担持ゼオライトを含有するリア部とを有する下層を形成した。
Pd含有スラリーを、第2基材の全長のうち上流側の50%に相当する部分に、塗布し、乾燥し、焼成することにより、下層のフロント部上に中間層を形成した。なお、この中間層の各成分のコート量は、実施例1の中間層の各成分のコート量と同じなるようにした。さらに、Rh含有スラリーを、第2基材の全長のうち上流側の50%に相当する部分に、塗布し、乾燥し、焼成することにより、中間層上に上層を形成した。なお、この上層の各成分のコート量は、実施例1の上層の各成分のコート量と同じなるようにした。このようにして、第2触媒体を作製した。作製した第1触媒体および第2触媒体を組み合わせて、比較例2の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図13Dに示す。
比較例3
実施例1と同様にして第1触媒体を作製した。Pd含有スラリーを用いて下層のリア部上に中間層を形成し、Rh含有スラリーを用いてその中間層の上に上層を形成した以外は、比較例2と同様にして、第2触媒体を作製した。作製した第1触媒体および第2触媒体を組み合わせて、比較例3の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図13Eに示す。
比較例4
実施例1と同様にして第1触媒体を作製した。プロトン型ゼオライト含有スラリーを、第2基材の全長のうち上流側の50%に相当する部分に、塗布し、Cu担持ゼオライト含有スラリーを、第2基材の全長のうち下流側の50%に相当する部分に、塗布した以外は、実施例1と同様にして第2触媒体を作製した。作製した第1触媒体および第2触媒体を組み合わせて、比較例4の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図13Fに示す。
比較例5
実施例1と同様にして第1触媒体を作製した。Cu担持ゼオライト含有スラリーを、第2基材の全長にわたって塗布した以外は、実施例1と同様にして第2触媒体を作製した。作製した第1触媒体および第2触媒体を組み合わせて、比較例5の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図13Gに示す。
比較例6
実施例1と同様にして第1触媒体を作製した。プロトン型ゼオライト含有スラリーを、第2基材の全長にわたって塗布した以外は、実施例1と同様にして第2触媒体を作製した。作製した第1触媒体および第2触媒体を組み合わせて、比較例6の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図13Hに示す。
[耐久処理]
V型8気筒ガソリンエンジンの排気系に、実施例1,2および比較例1~6の排ガス浄化システムを取り付けた。このとき、排気系において第1触媒体が、排ガスの流れ方向の上流側に位置するように配置した。流入ガス温度を950℃として、50時間にわたり、リッチ、ストイキ、およびリーンの各雰囲気の排ガスを所定の時間ずつ繰り返して排ガス浄化システムに流した。これにより、第1触媒体を1000℃の耐久処理、第2触媒体を700℃の耐久処理にさらした。
[NH3排出量の測定]
上記耐久処理を施した実施例1,2および比較例1~6の排ガス浄化システムを、ガソリンエンジンを備える車両に搭載させた。このとき第1触媒体を筐体に収容してスタートアップ触媒位置に取り付け、第2触媒体を筐体に収容してアンダーフロア位置に取り付けた。第2触媒体の下流側にFT-IR分析計を取り付けた。シャシダイナモメータ上でこの車両をWLTCモードに従って運転し、排ガス中に含まれるアンモニア濃度を測定し、NH3排出量を求めた。結果を図14に示す。
図14の結果が示すように、NH3吸着層が、金属担持ゼオライトを含有するフロント部と、プロトン型ゼオライトを含有するリア部とを有し、第2触媒層が、フロント部およびリア部を覆う場合に、耐久後のNH3排出量を顕著に低減できることがわかる。
具体的には、比較例1は、フロント部が第2触媒層で覆われていない比較例である。実施例1と比較例1との比較より、第2触媒層が、フロント部およびリア部の両方を覆うことにより、耐久後のNH3排出量を顕著に低減できることがわかる。
比較例2~4は、NH3吸着層のフロント部とリア部の配置を逆にした比較例、すなわち、フロント部がプロトン型ゼオライトを含み、リア部が金属担持ゼオライトを含む比較例である。さらに比較例2は、リア部が第2触媒層で覆われておらず、比較例3は、フロント部が第2触媒層で覆われていない。比較例5および6は、NH3吸着層において1種類のゼオライトのみを使用した比較例である。実施例1と比較例2~6との比較より、フロント部が金属担持ゼオライトを含有し、リア部がプロトン型ゼオライトを含有することにより、耐久後のNH3排出量を顕著に低減できることがわかる。
実施例2は、第2触媒体の触媒層の触媒貴金属をPtに変更した例である。実施例1および実施例2の比較より、触媒層の触媒貴金属は、下層部にPdと上層部にRhの組み合わせの方が、耐久後におけるより高いNH3浄化性能向上効果が得られることがわかる。
実施例3:NH3吸着層のフロント部とリア部の比率変更
実施例1と同様にして第1触媒体を作製した。Cu担持ゼオライト含有スラリーを、第2基材の全長のうち上流側の80%に相当する部分に塗布したこと、およびプロトン型ゼオライト含有スラリーを、第2基材の全長のうち下流側の20%に相当する部分に塗布したこと以外は、実施例1と同様にして第2触媒体を作製した。作製した第1触媒体および第2触媒体を組み合わせて、実施例3の排ガス浄化システムを構築した。
実施例3の排ガス浄化システムに対して、上記の耐久処理およびNH3排出量の測定を行った。その結果を、実施例1および比較例5,6の結果と共に図15に示す。図15の結果が示すように、NH3吸着層のフロント部とリア部の比率を変更しても、耐久後のNH3排出量を顕著に低減できることがわかる。
実施例4:プロトン型ゼオライト種の変更
Cu担持CHA型ゼオライト(Cu-CHA)に代えてCu担持BEA型ゼオライト(Cu-BEA)を用い、かつプロトン型のCHA型ゼオライト(H-CHA)に代えてプロトン型のBEA型ゼオライト(H-BEA)を用いて第2触媒体を作製した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図16Aに示す。
比較例7
実施例1と同様にして第1触媒体を作製した。次に、金属担持ゼオライトとしててCu担持BEA型ゼオライト(Cu-BEA)と、プロトン型のBEA型ゼオライト(H-BEA)と、アルミナバインダと、イオン交換水とを混合して、混合ゼオライト含有スラリーを調製した。混合ゼオライト含有スラリーを、第2基材の全長にわたって塗布した以外は、実施例1と同様にして第2触媒体を作製した。作製した第1触媒体および第2触媒体を組み合わせて、比較例7の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図16Bに示す。
比較例8
Cu担持CHA型ゼオライト(Cu-CHA)に代えてCu担持BEA型ゼオライト(Cu-BEA)を用い、かつプロトン型のCHA型ゼオライト(H-CHA)に代えてプロトン型のBEA型ゼオライトを用いて第2触媒体を作製した以外は、比較例4と同様にして、比較例8の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図16Cに示す。
比較例9
プロトン型のCHA型ゼオライト(H-CHA)に代えてプロトン型のBEA型ゼオライトを用いて第2触媒体を作製した以外は、比較例6と同様にして、比較例9の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図16Dに示す。
比較例10
Cu担持CHA型ゼオライト(Cu-CHA)に代えてCu担持BEA型ゼオライト(Cu-BEA)を用いて第2触媒体を作製した以外は、比較例5と同様にして、比較例10の排ガス浄化システムを構築した。その第2触媒体の層構成を模式的に図16Eに示す。
実施例4および比較例7~10の排ガス浄化システムに対して、上記の耐久処理およびNH3排出量の測定を行った。その結果を、図17に示す。図14および図17の結果より、ゼオライトの基本骨格の種類を変更しても、耐久後のNH3排出量の低減効果が得られることがわかる。
以上のことから、ここに開示されるガソリンエンジンの排ガス浄化用触媒体およびガソリンエンジン用排ガス浄化システムによれば、耐久後におけるNH3浄化性能が高いことがわかる。
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。