以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施形態に係る建設機械としてのショベルの構成例を示す図である。図1において、ショベル100は、クローラ式の下部走行体1の上に、旋回機構2を介して、上部旋回体3をX軸周りに旋回自在に搭載している。
上部旋回体3は、前方中央部に掘削アタッチメントを備える。掘削アタッチメントは、ブーム4、アーム5、及びバケット6を含み、且つ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によって駆動される。ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。
ブーム角度センサS1は、ブーム4の回動角度を検出する。本実施形態では、ブーム角度センサS1は加速度センサであり、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度を検出する。
アーム角度センサS2は、アーム5の回動角度を検出する。本実施形態では、アーム角度センサS2は加速度センサであり、ブーム4に対するアーム5の回動角度を検出する。
バケット角度センサS3は、バケット6の回動角度を検出する。本実施形態では、バケット角度センサS3は加速度センサであり、アーム5に対するバケット6の回動角度を検出する。
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3は、それぞれ可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ、ジャイロセンサ、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせ等であってもよい。
また、上部旋回体3には、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5が取り付けられている。
機体傾斜センサS4は、水平面に対する上部旋回体3の傾斜を検出する。本実施形態では、機体傾斜センサS4は上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角及び左右軸回りの傾斜角を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば互いに直交してショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点を通る。
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度及び旋回角度を検出する。本実施形態では、旋回角速度センサS5は、ジャイロセンサである。ただし、旋回角速度センサS5は、例えばレゾルバ、ロータリエンコーダであってもよい。
図2は、図1のショベル100に搭載される油圧システムの回路図である。油圧システムは、エンジン、電動モータ等の駆動源によって駆動される油圧ポンプ14L、14Rを有する。油圧ポンプ14L、14Rは、1回転当たりの吐出量である押し退け容積を可変とする可変容量型ポンプである。油圧ポンプ14Lは、流量制御弁171、173、175L、176Lを連通するセンターバイパス管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。油圧ポンプ14Rは、流量制御弁172、174、175R、176Rを連通するセンターバイパス管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
流量制御弁171は、油圧ポンプ14Lが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしての左走行用油圧モータ1Aに供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
流量制御弁172は、油圧ポンプ14Rが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしての右走行用油圧モータ1Bに供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
流量制御弁173は、油圧ポンプ14Lが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしての旋回用油圧モータ2Aに供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
流量制御弁174は、油圧ポンプ14Rが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしてのバケットシリンダ9へ供給し、また、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するためのスプール弁である。
流量制御弁175L、175Rはそれぞれ、油圧ポンプ14L、14Rが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7へ供給し、また、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。流量制御弁175Rは、操作装置としてのブーム操作レバーが操作された場合、油圧ポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7に供給するスプール弁である。流量制御弁175Lは、ブーム操作レバーが所定のレバー操作量以上で操作された場合、油圧ポンプ14Lが吐出する作動油を追加的にブームシリンダ7に供給するスプール弁である。
流量制御弁176L、176Rは、それぞれ油圧ポンプ14L、14Rが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしてのアームシリンダ8へ供給し、また、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。流量制御弁176Lは、操作装置としてのアーム操作レバーが操作された場合、油圧ポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8に供給するスプール弁である。流量制御弁176Rは、アーム操作レバーが所定のレバー操作量以上で操作された場合、油圧ポンプ14Rが吐出する作動油を追加的にアームシリンダ8に供給するスプール弁である。
センターバイパス管路42L、42Rは、それぞれ最も下流にある流量制御弁176L、176Rと作動油タンクとの間に、ネガティブコントロール絞り18L、18Rを備える。以下では、ネガティブコントロールを「ネガコン」と略称する。ネガコン絞り18L、18Rは、油圧ポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れを制限することにより、ネガコン絞り18L、18Rの上流でネガコン圧を発生させる。
圧力センサ19L、19Rは、ネガコン絞り18L、18Rの上流で発生したネガコン圧を検出し、検出した値を電気的なネガコン圧信号としてコントローラ30に対して出力する。
圧力センサ28L、28Rは、油圧ポンプ14L、14Rの吐出圧を検出し、検出した値を電気的な吐出圧信号としてコントローラ30に対して出力する。
コントローラ30は、油圧システムを制御する制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non Volatile RAM)等を備えたコンピュータである。
本実施形態では、コントローラ30は、アーム操作レバー、ブーム操作レバー等の各種の操作装置を操作した場合に発生するパイロット圧を測定する操作内容検出部としてのパイロット圧センサの出力に基づいて各種の操作装置の操作内容を電気的に検出する。操作内容は、例えばレバー操作の有無、レバー操作方向、レバー操作量等である。ただし、操作内容検出部は、各種の操作レバーの傾きを検出する傾きセンサ等、パイロット圧センサ以外のセンサを用いて構成されてもよい。
また、コントローラ30は、各種の操作装置の操作内容に応じて後述する旋回リリーフ弁51L、51R等を動作させる各種の機能要素に対応するプログラムをCPUに実行させる。
ポンプレギュレータ13L、13Rは、油圧ポンプ14L、14Rの吐出量を制御する駆動機構である。
なお、図2では、ショベル100における全ての油圧アクチュエータが利用されていない状態を示す。以下、この状態を「待機モード」と称する。待機モードでは、油圧ポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、センターバイパス管路42L、42Rを通ってネガコン絞り18L、18Rに至り、ネガコン絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、ポンプレギュレータ13L、13Rは、ネガコン圧信号に基づいてコントローラ30が生成する指令に応じて、油圧ポンプ14L、14Rの吐出量を低減させる。その結果、油圧ポンプ14L、14Rが吐出する作動油がセンターバイパス管路42L、42Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)が抑制される。
一方、ショベル100におけるいずれかの油圧アクチュエータに対応する操作装置が操作された場合、油圧ポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、該油圧アクチュエータに対応する流量制御弁を介して該油圧アクチュエータに流れ込む。そのため、ネガコン絞り18L、18Rに至る量は減少又は消滅し、ネガコン絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧は低下する。その結果、ポンプレギュレータ13L、13Rは、油圧ポンプ14L、14Rの吐出量を増大させ、各油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、各アクチュエータの駆動を確かなものとする。
次に、図3を参照し、図1のショベル100に搭載される油圧システムの一部を構成する旋回油圧回路の別の例について説明する。図3は、旋回油圧回路の構成例を示す概略図である。
図3に示されるように、旋回油圧回路200は、主に、旋回用油圧モータ2A、旋回リリーフ弁51L、51R、チェック弁53L、53Rを含む。
旋回用油圧モータ2Aは、メカニカルブレーキ及び減速機を含む旋回機構2を介して上部旋回体3を旋回させる。本実施形態では、旋回用油圧モータ2Aの出力トルクは、2段階のプラネタリギア機構で構成される減速機によって増幅される。旋回用油圧モータ2Aの出力軸の回転は、複数枚のブレーキディスクと各ブレーキディスクを挟む複数枚のブレーキプレートとで構成されるメカニカルブレーキによって制動される。
旋回用油圧モータ2Aの左ポート2P1は、管路50Lを介して、流量制御弁173のポート173P1に接続されている。旋回用油圧モータ2Aの右ポート2P2は、管路50Rを介して、流量制御弁173のポート173P2に接続されている。
旋回リリーフ弁51L、51Rは、それぞれ管路50L、50R内の作動油の圧力(以下「旋回油圧回路内圧」という。)を所定の旋回リリーフ圧以下に制限する。本実施形態では、旋回リリーフ弁51L、51Rは、電気的に旋回リリーフ圧を調整可能な電磁比例式のリリーフ弁であり、コントローラ30からの電流指令に応じて旋回リリーフ圧を変更する。具体的には、旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧は、コントローラ30からの制御電流が大きくなるほどが高くなり、コントローラ30からの制御電流が小さくなるほど低くなる。
旋回リリーフ弁51Lは、管路50Lの旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧に達した場合に開状態となり、旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧を過度に上回らないように管路50L内の作動油を、管路55を介して作動油タンクへ流出させる。
旋回リリーフ弁51Rは、管路50Rの旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧に達した場合に開状態となり、旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧を過度に上回らないように管路50R内の作動油を、管路55を介して作動油タンクへ流出させる。
チェック弁53L、53Rは、それぞれ管路50L、50R内の作動油の圧力が作動油タンクの作動油の圧力(以下、「タンク圧」という。)を下回らないようにする弁である。
チェック弁53Lは、管路50Lの作動油が作動油タンクへ流出するのを防止しながら、管路50Lの旋回油圧回路内圧がタンク圧未満となった場合に開状態となり、作動油タンクの作動油を、管路54を介して管路50L内に流入させる。
チェック弁53Rは、管路50Rの作動油が作動油タンクへ流出するのを防止しながら、管路50Rの旋回油圧回路内圧がタンク圧未満となった場合に開状態となり、作動油タンクの作動油を、管路54を介して管路50R内に流入させる。
次に、図3に示される旋回油圧回路200におけるコントローラ30の動作について説明する。
コントローラ30は、上部旋回体3の慣性モーメント(以下、単に「慣性モーメント」ともいう。)と旋回指令とに応じて旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧を制御する。具体的には、コントローラ30は、慣性モーメントが予め定めた閾値よりも大きい場合、旋回操作レバーが旋回動作とは逆方向に操作されると、旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧を高圧側へ制御する。
本実施形態では、慣性モーメントは、バケット6の旋回質量と旋回半径とにより算出される。バケット6の旋回質量は、バケット6の質量とバケット6に積み込まれている土砂の質量との和により算出される。バケット6に積み込まれている土砂の質量は、例えばブームシリンダ7のシリンダ圧を検出するセンサにより測定される。具体的には、バケット6の質量が一定である場合、バケット6に積み込まれている土砂の質量が大きいほど旋回質量は大きくなるため、上部旋回体3の回転時の慣性モーメントが大きくなる。バケット6の旋回半径は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、及び旋回角速度センサS5の少なくとも1つを含む姿勢検出装置の測定結果により定まるショベル100の姿勢に基づいて算出される。具体的には、アーム5が伸びている状態ではバケット6の旋回半径が大きくなるため、上部旋回体3の回転時の慣性モーメントが大きくなる。
なお、コントローラ30は、慣性モーメントに代えて、バケット6の旋回質量や旋回半径と旋回指令とに応じて旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧を制御してもよい。この場合、コントローラ30は、バケット6の旋回質量及び旋回半径の少なくともいずれかが予め定めた閾値よりも大きい場合、旋回操作レバーが旋回動作とは逆方向に操作されると、旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧を高圧側へ制御する。
図4は、旋回操作レバーの位置と旋回リリーフ弁の制御電流との関係を示す図である。図4において、上段のグラフは慣性モーメントの時間変化を示し、中段のグラフは旋回操作レバーの位置の時間変化を示し、下段のグラフは旋回リリーフ弁51Rの制御電流の時間変化を示す。
コントローラ30は、慣性モーメントが閾値よりも大きい場合、旋回操作レバーが右旋回方向に操作された後に左旋回方向に操作されると、つまり、旋回操作レバーが中立位置を横切り逆方向へ操作されると、旋回リリーフ弁51Rの制御電流を増加させることにより、旋回リリーフ圧を高圧側へ制御する。具体的には、コントローラ30は、旋回操作レバーの左旋回方向への操作量が大きいほど、旋回リリーフ弁51Rの制御電流を増加させる。これにより、旋回リリーフ弁51Rの旋回リリーフ圧が高くなるので、旋回用油圧モータ2Aの吐出側の管路50Rの作動油が、管路55を介して、作動油タンクに流出することが抑制される。そのため、旋回リリーフ弁51Rの旋回リリーフ圧を固定している場合と比較して、旋回用油圧モータ2Aの吐出側圧力である管路50R内の圧力を高めることができる。その結果、制動力を高めることができ、操作者の意図した位置で旋回動作を停止させることができる。
また、コントローラ30は、慣性モーメントが閾値よりも大きい場合、旋回操作レバーが左旋回方向に操作された後に右旋回方向に操作されると、つまり、旋回操作レバーが中立位置を横切り逆方向へ操作されると、旋回リリーフ弁51Lの制御電流を増加させることにより、旋回リリーフ圧を高圧側へ制御する。具体的には、コントローラ30は、旋回操作レバーの右旋回方向への操作量が大きいほど、旋回リリーフ弁51Lの制御電流を増加させる。これにより、旋回リリーフ弁51Lの旋回リリーフ圧が高くなるので、旋回用油圧モータ2Aの吐出側の管路50Lの作動油が、管路55を介して、作動油タンクに流出することが抑制される。そのため、旋回リリーフ弁51Lの旋回リリーフ圧を固定している場合と比較して、旋回用油圧モータ2Aの吐出側圧力である管路50L内の圧力を高めることができる。その結果、制動力を高めることができ、操作者の意図した位置で旋回動作を停止させることができる。
なお、コントローラ30は、慣性モーメントが閾値以下である場合、旋回操作レバーの操作内容によらず、旋回リリーフ弁51L、51Rの制御電流を変更しなくてよい。慣性モーメントが閾値以下である場合、旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧を変更しなくても、操作者の意図しない位置で旋回動作が停止することが生じにくいためである。ただし、コントローラ30は、慣性モーメントが閾値以下である場合、旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧を高圧側へ制御してもよい。また、コントローラ30は、旋回操作レバーが中立の位置に近づくほど、旋回リリーフ弁51L、51Rの制御電流を減少させてもよい。また、旋回操作レバーが逆方向へ操作されたことの判断は、上部旋回体3の旋回方向と旋回操作レバーの操作方向とを比較してもよい。この場合、上部旋回体3の旋回方向と旋回操作レバーの操作方向とが逆方向の場合には、旋回操作レバーが逆方向へ操作されたと判断する。
〔第2の実施形態〕
図5A及び図5Bは、第2の実施形態に係る建設機械としてのショベルの構成例を示す図である。図5Aはショベルの側面図であり、図5Bはショベルの上面図である。
図5A及び図5Bにおいて、ショベル100Aの下部走行体1はクローラ1Cを含む。クローラ1Cは、下部走行体1に搭載されている左走行用油圧モータ1A及び右走行用油圧モータ1Bによって駆動される。具体的には、クローラ1Cは、左クローラ1CL、右クローラ1CRを含む。左クローラ1CLは、左走行用油圧モータ1Aによって駆動される。右クローラ1CRは、右走行用油圧モータ1Bによって駆動される。
下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。旋回機構2は、上部旋回体3に搭載されている旋回用油圧モータ2Aによって駆動される。ただし、旋回用油圧モータ2Aは、電動アクチュエータとしての旋回用電動発電機であってもよい。
上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられている。アーム5の先端には、エンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントATを構成する。ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。
ブーム4は、上部旋回体3に対して上下に回動可能に支持されている。ブーム4には、ブーム角度センサS1が取り付けられている。ブーム角度センサS1は、ブーム4の回動角度であるブーム角度θ1を検出する。ブーム角度θ1は、例えばブーム4を最も下降させた状態からの上昇角度である。そのため、ブーム角度θ1は、ブーム4を最も上昇させたときに最大となる。
アーム5は、ブーム4に対して回動可能に支持されている。アーム5には、アーム角度センサS2が取り付けられている。アーム角度センサS2は、アーム5の回動角度であるアーム角度θ2を検出する。アーム角度θ2は、例えばアーム5を最も閉じた状態からの開き角度である。そのため、アーム角度θ2は、アーム5を最も開いたときに最大となる。
バケット6は、アーム5に対して回動可能に支持されている。バケット6には、バケット角度センサS3が取り付けられている。バケット角度センサS3は、バケット6の回動角度であるバケット角度θ3を検出する。バケット角度θ3は、バケット6を最も閉じた状態からの開き角度である。そのため、バケット角度θ3は、バケット6を最も開いたときに最大となる。
本実施形態では、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3は、それぞれ加速度センサとジャイロセンサの組み合わせで構成されている。ただし、加速度センサのみで構成されていてもよい。また、ブーム角度センサS1は、ブームシリンダ7に取り付けられたストロークセンサであってもよく、ロータリエンコーダ、ポテンショメータ、慣性計測装置等であってもよい。アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3についても同様である。
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つ、エンジン等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には、物体検知装置70、撮像装置80、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5等が取り付けられている。キャビン10の内部には、操作装置26、コントローラ30、表示装置D1、音声出力装置D2等が設けられている。なお、本実施形態では、便宜上、上部旋回体3における、掘削アタッチメントATが取り付けられている側を前方とし、カウンタウェイトが取り付けられている側を後方とする。
物体検知装置70は、ショベル100Aの周囲に存在する物体を検知する。物体は、例えば人、動物、車両、建設機械、建造物、壁、柵、穴等を含む。物体検知装置70は、例えば超音波センサ、ミリ波レーダ、ステレオカメラ、LIDAR、距離画像センサ、赤外線センサ等を含む。本実施形態では、物体検知装置70は、前方センサ70F、後方センサ70B、左方センサ70L、及び右方センサ70Rを含む。前方センサ70F、後方センサ70B、左方センサ70L、及び右方センサ70Rは、それぞれキャビン10の上面前端、上部旋回体3の上面後端、上部旋回体3の上面左端、及び上部旋回体3の上面右端に取り付けられている。
物体検知装置70は、ショベル100Aの周囲に設定された所定領域内の所定物体を検知するように構成されていてもよい。例えば人と人以外の物体とを区別できるように構成されていてもよい。
撮像装置80は、ショベル100Aの周囲を撮像する。本実施形態では、撮像装置80は、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方カメラ80B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方カメラ80L、及び上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方カメラ80Rを含む。また、撮像装置80は、前方カメラを含んでいてもよい。
後方カメラ80Bは後方センサ70Bに隣接して配置され、左方カメラ80Lは左方センサ70Lに隣接して配置され、右方カメラ80Rは右方センサ70Rに隣接して配置されている。前方カメラは、前方センサ70Fに隣接して配置されていてもよい。
撮像装置80が撮像した画像は表示装置D1に表示される。撮像装置80は、俯瞰画像等の視点変換画像を表示装置D1に表示できるように構成されていてもよい。俯瞰画像は、例えば後方カメラ80B、左方カメラ80L、及び右方カメラ80Rのそれぞれが出力する画像を合成して生成される。
機体傾斜センサS4は、所定の平面に対する上部旋回体3の傾斜を検出する。本実施形態では、機体傾斜センサS4は、水平面に関する上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角及び左右軸回りの傾斜角を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば互いに直交してショベル100Aの旋回軸上の一点であるショベル中心点を通る。
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。本実施形態では、旋回角速度センサS5は、ジャイロセンサである。ただし、旋回角速度センサS5は、レゾルバ、ロータリエンコーダ等であってもよい。旋回角速度センサS5は、旋回速度を検出してもよい。旋回速度は、旋回角速度から算出されてもよい。
以下では、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、及び旋回角速度センサS5は、それぞれ姿勢検出装置とも称される。
表示装置D1は、情報を表示する装置である。音声出力装置D2は、音声を出力する装置である。操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。
コントローラ30は、ショベル100Aを制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、RAM、NVRAM、ROM等を備えたコンピュータで構成されている。コントローラ30は、各機能に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、対応する処理をCPUに実行させる。各機能は、例えば操作者によるショベル100Aの手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能、及び、操作者によるショベル100Aの手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能を含む。
なお、本実施形態のショベル100Aに搭載される油圧システムの回路図については、第1の実施形態で説明した油圧システムの回路図(図2を参照)と同様の構成であってよい。ただし、本実施形態では、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、コントローラ30がその特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができるように構成されている。また、図5A及び図5Bのショベル100Aに搭載される油圧システムの一部を構成する旋回油圧回路については、第1の実施形態で説明した旋回油圧回路(図3を参照)と同様の構成であってよい。
次に、図6を参照し、本実施形態のショベル100Aに搭載されるコントローラ30の機能について説明する。図6は、コントローラ30の機能ブロック図である。
図6の例では、コントローラ30は、姿勢検出装置、操作装置26、物体検知装置70、撮像装置80、スイッチNS等が出力する信号を受け、様々な演算を実行し、表示装置D1、音声出力装置D2等に制御指令を出力できるように構成されている。姿勢検出装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5を含む。スイッチNSは、記録スイッチNS1及び自動スイッチNS2を含む。
コントローラ30は、姿勢記録部30A、軌道算出部30B、自律制御部30C、及び旋回リリーフ圧制御部30Dを機能要素として有する。各機能要素は、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアで構成されていてもよい。
姿勢記録部30Aは、ショベル100Aの姿勢に関する情報を記録する。本実施形態では、姿勢記録部30Aは、記録スイッチNS1が押されたときのショベル100Aの姿勢に関する情報をRAMに記録する。具体的には、姿勢記録部30Aは、記録スイッチNS1が押される度に姿勢検出装置の出力を記録する。姿勢記録部30Aは、第1時点で記録スイッチNS1が押されたときに記録を開始し、第2時点で記録スイッチNS1が押されたときにその記録を終了するように構成されていてもよい。この場合、姿勢記録部30Aは、第1時点から第2時点まで、ショベル100Aの姿勢に関する情報を所定の制御周期で繰り返し記録してもよい。
軌道算出部30Bは、ショベル100Aを自律的に動作させるときにショベル100Aの所定部位が描く軌道である目標軌道を算出する。所定部位は、例えばバケット6の背面にある所定点である。本実施形態では、軌道算出部30Bは、自律制御部30Cがショベル100Aを自律的に動作させるときに利用する目標軌道を算出する。具体的には、軌道算出部30Bは、姿勢記録部30Aが記録したショベル100Aの姿勢に関する情報に基づいて目標軌道を算出する。また、軌道算出部30Bは、目標軌道を算出する際に旋回動作の減速を開始させる位置(以下「減速開始位置」という。)を決定する。減速開始位置は、例えば目標軌道における旋回動作を停止させる位置(以下「目標位置」という。)よりも所定角度だけ小さい角度の位置であってよい。なお、目標軌道及び減速開始位置は、操作者により操作画面が操作されることにより決定されてもよく、過去の旋回動作に基づいて決定されてもよい。目標位置は、作業の進捗に応じて更新される。したがって、目標軌道も作業の進捗に応じて更新される。
自律制御部30Cは、ショベル100Aを自律的に動作させる。本実施形態では、所定の開始条件が満たされた場合、軌道算出部30Bが算出した目標軌道に沿ってショベル100Aの所定部位を移動させる。具体的には、自動スイッチNS2が押されている状態で操作装置26が操作されたときに、ショベル100Aの所定部位が目標軌道に沿って移動するように、ショベル100Aを自律的に動作させる。
旋回リリーフ圧制御部30Dは、旋回指令に応じて旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧を制御する。具体的には、旋回リリーフ圧制御部30Dは、目標軌道における所定のタイミングで算出された慣性モーメントに対応して旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧を高圧側へ制御する。目標軌道における所定のタイミングは、例えば軌道算出部30Bが目標軌道を算出する際に決定する減速開始位置に到達した時点であってよい。
次に、図3に示される旋回油圧回路200におけるコントローラ30の動作について説明する。
本実施形態では、慣性モーメントは、第1の実施形態と同様に、バケット6の旋回質量と旋回半径とにより算出される。
図7は、旋回角速度と旋回リリーフ弁の制御電流との関係を示す図である。図7において、上段のグラフは慣性モーメントの時間変化を示し、中段のグラフは旋回リリーフ弁51Rの制御電流の時間変化を示し、下段のグラフは旋回角速度の時間変化を示す。なお、図7中、時刻tは減速開始位置に到達した時刻を示す。また、図7の下段のグラフにおいて、実線は旋回リリーフ弁51Rの制御電流をi1としたときの旋回角速度を示し、破線は旋回リリーフ弁51Rの制御電流を基準値(例えば0)としたときの旋回角速度を示す。
旋回リリーフ圧制御部30Dは、減速開始位置に到達した時点(時刻t)における慣性モーメントに対応して旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧を制御する。具体的には、旋回リリーフ圧制御部30Dは、減速開始位置に到達した時点における慣性モーメントが閾値よりも大きい場合、旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧を高圧側へ制御する。
旋回リリーフ圧制御部30Dは、右旋回時において、減速開始位置に到達した時点(時刻t)における慣性モーメントが閾値よりも大きい場合、旋回リリーフ弁51Rの制御電流を増加させることにより、旋回リリーフ圧を高圧側へ制御する。具体的には、旋回リリーフ圧制御部30Dは、減速開始位置に到達した時点における慣性モーメントが大きいほど、旋回リリーフ弁51Rの制御電流を増加させる。例えば、旋回リリーフ圧制御部30Dは、減速開始位置に到達した時点における慣性モーメントが閾値よりも大きいM1である場合、旋回リリーフ弁51Rの制御電流をi1に制御する。また、例えば、旋回リリーフ圧制御部30Dは、減速開始位置に到達した時点における慣性モーメントが閾値よりも大きく、且つM1よりも小さいM2である場合、旋回リリーフ弁51Rの制御電流をi1よりも小さいi2に制御する。このように、旋回リリーフ圧制御部30Dは、減速開始位置に到達した時点における慣性モーメントに対応して旋回リリーフ弁51Rの旋回リリーフ圧を高圧側へ制御する。これにより、旋回用油圧モータ2Aの吐出側の管路50Rの作動油が、管路55を介して、作動油タンクに流出することが抑制される。そのため、旋回リリーフ弁51Rの旋回リリーフ圧を固定している場合と比較して、旋回用油圧モータ2Aの吐出側圧力である管路50R内の圧力を高めることができる。その結果、図7の下段のグラフに示されるように、減速開始位置を通過した後の旋回角速度が小さくなる。言い換えると、制動力を高めることができる。そのため、操作者の意図した位置で旋回動作を停止させることができる。
また、旋回リリーフ圧制御部30Dは、左旋回時において、減速開始位置に到達した時点における慣性モーメントが閾値よりも大きい場合、旋回リリーフ弁51Lの制御電流を増加させることにより、旋回リリーフ圧を高圧側へ制御する。具体的には、旋回リリーフ圧制御部30Dは、減速開始位置に到達した時点における慣性モーメントが大きいほど、旋回リリーフ弁51Lの制御電流を増加させる。このように、旋回リリーフ圧制御部30Dは、減速開始位置に到達した時点における慣性モーメントに対応して旋回リリーフ弁51Lの旋回リリーフ圧を高圧側へ制御する。これにより、旋回用油圧モータ2Aの吐出側の管路50Lの作動油が、管路55を介して、作動油タンクに流出することが抑制される。そのため、旋回リリーフ弁51Lの旋回リリーフ圧を固定している場合と比較して、旋回用油圧モータ2Aの吐出側圧力である管路50L内の圧力を高めることができる。その結果、制動力を高めることができ、操作者の意図した位置で旋回動作を停止させることができる。
なお、旋回リリーフ圧制御部30Dは、減速開始位置に到達した時点における慣性モーメントが閾値以下である場合、旋回リリーフ弁51L、51Rの制御電流を変更しなくてよい。減速開始位置に到達した時点における慣性モーメントが閾値以下である場合、旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧を変更しなくても、操作者の意図しない位置で旋回動作が停止することが生じにくいためである。ただし、旋回リリーフ圧制御部30Dは、減速開始位置に到達した時点における慣性モーメントが閾値以下である場合、旋回リリーフ弁51L、51Rの旋回リリーフ圧を高圧側へ制御してもよい。また、旋回リリーフ圧制御部30Dは、目標位置に近づくほど、旋回リリーフ弁51L、51Rの制御電流を減少させてもよい。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。