JP7287584B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
電磁鋼板は変圧器やモータ等の鉄心として広く用いられている材料である。電磁鋼板は方向性電磁鋼板と無方向性電磁鋼板に大別され、方向性電磁鋼板については鉄の磁化容易軸である<001>方位が、鋼板の圧延方向に高度に揃った集合組織を有していることが特徴的である。かかる集合組織は、仕上焼鈍において二次再結晶を起こさせることで形成される。ここで、上記二次再結晶とは、粒界エネルギーを利用して、いわゆるGoss方位と称される{110}<001>方位の結晶粒を優先的に巨大粒成長させる現象をいう。上記の二次再結晶を生じさせる代表的な技術として、インヒビタと呼ばれる析出物を利用する技術がある。例えば、特許文献1に記載のAlN、MnSを使用する方法、特許文献2に記載のMnS、MnSeを使用する方法等が知られており、工業的に実用化されている。これらのインヒビタを用いる方法は安定して二次再結晶粒を発達させるのに有用である。これらの方法においては、インヒビタを鋼中に微細分散させるために、1300℃以上の高温でのスラブ加熱を行い、インヒビタ成分を一度固溶させることが必要である。
一方、インヒビタ成分を含有しない素材において、Goss方位結晶粒を二次再結晶により発達させる技術が特許文献3等で開示されている。これは、インヒビタ成分のような不純物を極力排除する事で、一次再結晶時の結晶粒界が持つ粒界エネルギーの粒界方位差角依存性を顕在化させ、インヒビタを用いずともGoss方位を有する粒を二次再結晶させる技術であり、その効果をテクスチャーインヒビション効果と呼んでいる。この方法では、インヒビタの鋼中微細分散が必要ではないため、必須であった高温スラブ加熱も必要としないことなど、製造面でインヒビタを利用する方法に対するメリットを有する。
電磁鋼板の用途の一つとして、図1のように円筒状に丸め加工を行い、丸める径を徐々に変化させて径方向に積層して鉄心とすることが挙げられる。このように製造された鉄心において、励磁される方向は図1の上下の一方向となるため、方向性電磁鋼板を使用すると無方向性電磁鋼板を用いた場合と比較して優れた特性を得ることが期待できる。
特公昭40-15644号公報 特公昭51-13469号公報 特開2000-129356号公報
しかしながら、本発明者らの独自の検討により、方向性電磁鋼板に曲げ加工を施すと、加工精度に問題が生じる場合があることが新たに判明した。例えば、図2のように、突き合わされる鋼板端部の二辺A、B同士が平行にならないこと、及び鋼板の角a、bの位置がずれることが頻繁に生じた。このように方向性電磁鋼板の加工精度が悪い場合は、鋼板を積層することが困難となり、鉄心を構成することができない。
本開示は、かかる事情に鑑みてなされたもので、鉄損特性を維持したまま、丸め加工における加工精度が良好な方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討によって、1回目及び2回目の冷間圧延の圧下率を適正に制御すること、並びに仕上焼鈍の昇温速度を適正に制御することで、二次再結晶粒を効果的に小さくし、丸め加工後の加工精度を向上させることであることを知見した。
本開示は、上記知見に基づいてなされた。すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1] 質量%で、
C:0.01%以上0.10%以下、
Si:2.0%以上4.0%以下、
Mn:0.01%以上0.20%以下、
Ti:0.010%以下、
Al:0.010%以下及び
N:0.0050%以下を含有し、さらに
S及びSeのうちいずれか1種または2種を合計で0.005%以上0.10%以下
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1300℃以上にスラブ加熱し、熱間圧延を施して熱延板とし、次いで、熱延板焼鈍を施した後もしくは施すことなく、
次いで、前記熱延板に中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して冷延板とし、
次いで、前記冷延板に、脱炭焼鈍を施して脱炭焼鈍板とし、
次いで、前記脱炭焼鈍板の表面に焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を得る、方向性電磁鋼板の製造方法において、
1回目の前記冷間圧延の総圧下率R1(%)と2回目の前記冷間圧延の総圧下率R2(%)とが下記式(1)を満たし、
さらに、前記仕上焼鈍において、50℃から900℃までの平均昇温速度H1(℃/hr)、及び900℃から(最高到達温度-50℃)までの平均昇温速度H2(℃/hr)が、下記式(2)、(3)を満足する、方向性電磁鋼板の製造方法。
R1≧R2≧50 …(1)
H1≧1.1×H2 …(2)
5≦H1≦40 …(3)
[2] 前記熱間圧延では、前記スラブ加熱後、前記鋼スラブに1100℃以上1300℃以下で1パス以上の粗圧延を施し、続いて800℃以上1100℃以下で2パス以上の仕上圧延を施し、巻取り温度を400℃以上750℃以下とし、
前記熱延板焼鈍では、熱延板を、800℃以上1250℃以下で5秒以上保持した後、800℃から350℃までの平均冷却速度を5℃/s以上100℃/s以下として冷却し、
前記中間焼鈍では、1回目の前記冷間圧延後の冷延板を、800℃以上1250℃以下で5秒以上保持した後、800℃から350℃までの平均冷却速度を5℃/s以上100℃/s以下として冷却し、
前記脱炭焼鈍では、HとNとを含む雰囲気にて、かつ脱炭焼鈍の少なくとも一部での露点を20℃以上80℃以下の湿潤雰囲気として、前記冷延板を750℃以上950℃以下で10秒以上保持し、
前記仕上焼鈍前に、MgOを含む前記焼鈍分離剤を前記脱炭焼鈍板の表面に片面当たり2.5g/m以上塗布し、
前記仕上焼鈍では、1050℃以上の温度範囲内の少なくとも一部における雰囲気がHを含む条件にて、前記脱炭焼鈍板を1050℃以上1300℃以下で3時間以上保持する、前記[1]に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
[3] 前記成分組成は、さらに質量%又は質量ppmで、
Ni:0%以上1.50%以下、
Cr:0%以上0.50%以下
Cu:0%以上0.50%以下、
P :0%以上0.50%以下、
Sb:0%以上0.50%以下、
Sn:0%以上0.50%以下、
Bi:0%以上0.50%以下、
Mo:0%以上0.50%以下、
B :0ppm以上25ppm以下、
Nb:0%以上0.020%以下、
V :0%以上0.010%以下及び
Zr:0%以上0.10%以下
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、前記[1]又は[2]に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
[4] 前記成分組成は、さらに質量%で、
Co:0%以上0.050%以下及び
Pb:0%以上0.0100%以下からなる群から選ばれる1種または2種を含有する、前記[1]から[3]のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
[5] 記成分組成は、さらに質量%で、
As:0%以上0.0200%以下、
Zn:0%以上0.020%以下、
W:0%以上0.0100%以下
Ge:0%以上0.0050%以下及び
Ga:0%以上0.0050%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、前記[1]から[4]のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、鉄損特性を維持したまま、丸め加工における加工精度が良好な方向性電磁鋼板を提供することができる。
丸め加工後の理想的な形状を示す図である。 丸め加工後、加工精度が悪い場合の形状を示す図である。 丸め加工による加工精度を示すパラメータを表した図である。 冷間圧延の総圧下率と加工精度の関係を表した図である。 仕上焼鈍の昇温速度と加工精度の関係を表した図である.
本発明は、前記課題を解決するために二次再結晶の条件について鋭意検討を重ねた結果、二次再結晶粒を細かくすることで丸め加工の加工精度を良好とさせることに成功した。
以下、本発明を成功に至らしめた実験について説明する。
<実験1>
質量%で、C:0.032%、Si:3.25%、Mn:0.15%、S:0.014%、Ti:0.002%、Al:0.002%、N:0.0012%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1400℃の温度に再加熱し、熱間圧延により0.6から3.5mmの種々の板厚の熱延板を作製した。次いで、熱延板表面のスケールを酸洗で除去した後、1回目の冷間圧延にて0.35から1.4mmの種々の板厚の冷延板を作製した。次いで、該冷延板に対して1000℃で150秒の中間焼鈍を施し、その後2回目の冷間圧延を行い、板厚0.23mmの冷延板を得た。該冷延板に、さらに、850℃×120秒、60%H+40%N、露点60℃にて脱炭焼鈍を施して脱炭焼鈍板とした。該脱炭焼鈍板の表面に固形分換算で90質量%以上のMgOを含む焼鈍分離剤を塗布した後、1200℃で5時間、H雰囲気下で保持する仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を得た。仕上焼鈍の昇温過程では、室温から900℃までは昇温速度を25℃/hr、900℃から1150℃までは昇温速度を18℃/hr、1150℃から1200℃までは昇温速度を10℃/hrとした。得られた方向性電磁鋼板から60mm角のサンプルを切り出した。次いで、直径20mmの鉄ロールと直径300mmのウレタンロールとで構成されたツインロール加工機を用いてサンプルに丸め加工を行った。丸める方向はサンプルの圧延直交方向(鋼板幅方向)とした。すなわち、サンプルの圧延直交方向が円弧を描くように丸め加工を施した。得られた丸め加工後のサンプルの加工精度を、図3に示す2つのパラメータH、θで評価した。図3に示すように、Hは突き合わさるサンプルの角a、b間の距離であり、θは突き合わせた二辺A、Bのなす角である。本条件では、理想的な形状が得られた場合、各々のパラメータは、H:2.0mm、θ:0°となる。この値から乖離するほど、加工精度が悪いことを示す。各パラメータがそれぞれ、H:1.8~3.0mm、θ:0~2.5°の範囲内であれば合格とする。丸め加工における加工精度の評価として、両パラメータが合格の場合を〇、片方のみが合格の場合を△、両パラメータが不合格の場合を×とした。図4に、1回目及び2回目の冷間圧延の総圧下率と、加工精度との関係を示した。図4に示すように、1回目及び2回目の冷延圧延の総圧下率がいずれも50%以上であり、かつ1回目の冷間圧延の総圧下率が2回目よりも大きい場合に、丸め加工における加工精度が良好であることが明らかとなった。
<実験2>
質量%で、C:0.073%、Si:2.89%、Mn:0.09%、Se:0.022%、Ti:0.002%、Al:0.002%、N:0.0009%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1410℃に再加熱し、板厚2.3mmに熱間圧延して熱延板とした。次いで、熱延板のスケールを酸洗で除去した後、1回目の冷間圧延を施して板厚0.68mmとした。次いで、該冷延板に対し、1025℃で80秒の中間焼鈍を施し、その後2回目の冷間圧延を行い、板厚0.23mmの冷延板に仕上げた。該冷延板に、さらに840℃×80秒、50%H+50%N、露点60℃の脱炭焼鈍を施し、鋼板表面に固形分換算で90質量%以上のMgOを含む焼鈍分離剤を塗布した後、1200℃で10時間、H雰囲気下で保持する仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を得た。仕上焼鈍の昇温過程では、室温から900℃までの昇温速度、及び900℃から1150℃までの昇温速度を種々変更した。1150℃から1200℃までの昇温速度は5℃/hrとした。得られた方向性電磁鋼板から50mm角のサンプルを切り出し、直径20mmの鉄ロールと直径300mmのウレタンロールとで構成されたツインロール加工機を用いてサンプルに丸め加工を行った。丸める方向はサンプルの圧延直交方向(鋼板幅方向)とした。得られた丸め加工後のサンプルの加工精度は実験1と同様の方法で丸め加工における加工精度について評価した。加工精度の評価結果と冷間圧延の圧下率との関係を図5に示す。図5に示すように、室温から900℃までの昇温速度H1が900℃から1150℃までの昇温速度H2の1.1倍よりも大きく、かつH1が5℃/hr以上40℃/s以下の場合に丸め加工の形状が良好であることが明らかとなった。
上記の条件の際に丸め加工における加工精度が良好な理由については明らかではないが、本発明者らは次のように考えている。
実験1、2の両方の条件で、丸め加工における加工精度が良好であった条件と(図4、5で〇が得られた条件)、劣位であった条件(図4、5で×が得られた条件)との方向性電磁鋼板を、90℃で5%濃度の熱塩酸に120秒浸漬し、下地被膜を除去して二次再結晶粒を露出させた。その後、各方向性電磁鋼板の二次再結晶粒の大きさを比較した。その結果、丸め加工における加工精度が良好であった条件の方向性電磁鋼板では、二次再結晶粒の平均粒径が5.3mm程度であった。これに対し、丸め加工における加工精度が劣位であった条件では、二次再結晶粒の平均粒径が11.2mm程度であった。よって、丸め加工における加工精度が良好であった条件の方向性電磁鋼板では、加工精度が劣位であった条件の方向性電磁鋼板と比較して、二次再結晶粒の大きさが明確に小さいことが明らかとなった。すなわち、丸め加工における加工精度が良好であった条件では、二次再結晶粒の粒界が多いことを意味している。丸め加工は塑性加工の一種であり、結晶方位依存性があると考えられる。すなわち、一方向に丸め加工を施した場合、各結晶粒で若干の方位のずれがあることから、各々の結晶粒の加工度が若干異なる可能性がある。この結晶粒の加工度の差を吸収するのが、多少の歪の蓄積を許容する粒界であると考えられる。つまり、粒界が少ないと、各結晶粒の加工度の差を粒界が吸収できず、鋼板が歪んでしまい、加工精度が劣る。しかしながら、粒界が多い場合は、その差を吸収できるために、加工精度が良好になると考えられる。二次結晶粒を小さくして粒界を増やすためには、大きく二つの手法があると本発明者らは知見している。第一に、仕上焼鈍前に二次再結晶の源となる結晶粒、すなわちGoss方位を有する結晶粒を増加させることが挙げられる。第二に、仕上焼鈍において。二次再結晶が同時かつあらゆる箇所から発現するように条件をコントロールすることである。本実験に置き換えると、2回の冷間圧延の総圧下率を一定の範囲に制御することが前者に当たり、仕上焼鈍の昇温速度を規定することが後者に当たると考えられる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。まず、鋼板の成分組成の適正範囲及びその限定理由について説明する。なお、以下の説明において、鋼板の成分元素の含有量を表す「%」は、特に明記しない限り「質量%」を意味する。「ppm」は、特に明記しない限り、「質量ppm」を意味する。また本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
C:0.01%以上0.10%以下、
C量が0.10%を超えると、脱炭焼鈍後に磁気時効が生じるおそれがある。一方、C量が0.01%に満たないと二次再結晶粒が粗大になり鉄損の増大や曲げ加工性の劣化を引き起こす。従って、Cは0.01%以上0.10%以下に限定する。C量は、好ましくは0.03%以上とする。また、C量は、好ましくは0.06%以下である。
Si:2.0%以上4.0%以下
Siは鋼の比抵抗を高め、鉄損を改善させるために必要な元素であるが、2.0%未満であると効果がなく、4.0%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化することから、Si量は2.0%以上4.0%以下に限定する。Si量は、好ましくは3.0%以上とする。Si量は、好ましくは3.6%以下である。
Mn:0.01%以上0.20%以下
MnはMnSやMnSeをインヒビタとして利用するために必要な元素であるが、0.005%未満であるとインヒビタ量が少なくなり磁気特性が劣化し、0.20%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化する。よって、Mn量は0.01%以上0.20%以下とする。Mn量は、好ましくは0.03%以上とする。Mn量は、好ましくは0.15%以下である。
Ti:0.010%以下
Al:0.010%以下
N:0.0050%以下
また、TiやAlは窒化物を形成し、MnS及びMnSeのインヒビタとしての効果を損ね、磁気特性を劣化させることから、Ti:0.010%以下、Al:0.010%以下、N:0.0050%以下とする。好ましくは、Ti、Al、Nは、各々0.0020%以下である。ただし、これらの元素を低減することはコスト増大の可能性があるため、上記範囲内で残存しても問題ない。これらの元素は少ないほど好ましく、0%であってもよいが、コスト低減の観点から、好ましくはTi及びAlはそれぞれ0.001%以上、Nは0.0005%以上とする。
S及びSeのうちいずれか1種または2種を合計で0.005%以上0.10%以下
S及びSeは、Mnと結合してインヒビタとなるMnS及びMnSeを形成する。しかしながら、単独もしくは合計で0.005%に満たないと、その効果が十分に得られない。一方、0.10%を超えると、スラブ加熱で十分に固溶させることができなくなり、鋼中への微細分散が達成されず、磁気特性を大きく劣化させる。よって、S及びSeの含有量は、合計で0.005%以上0.10%以下の範囲とする。好ましくは0.010%以上であり、また0.040%以下である。
以上、本開示の基本成分について説明してきたが、本開示では上記基本成分の他にも以下に述べる元素を適宜成分組成に含有させることができる。
磁気特性を向上させる目的で、Ni:0%以上1.50%以下、Cr:0%以上0.50%以下、Cu:0%以上0.50%以下、P:0%以上0.50%以下、Sb:0%以上0.50%以下、Sn:0%以上0.50%以下、Bi:0%以上0.50%以下、Mo:0%以上0.50%以下、B:0ppm以上25ppm以下、Nb:0%以上0.020%以下、V:0%以上0.010%以下、Zr:0%以上0.10%以下からなる群から選ばれる少なくとも1種を単独または複合して添加することができる。これら元素の添加量を上記上限量以下とすることで、二次再結晶粒の発達が抑制されることを防ぎ、特に良好な磁気特性を得ることができる。なお、磁気特性をより向上する観点からは、Ni:0.01%以上、Sb:0.005%以上、Sn:0.005%以上、Cu:0.01%以上、Cr:0.01%以上、P:0.005%以上、Mo:0.005%以上、Nb:0.001%以上、V:0.001%以上、B:0.0002%以上、Bi:0.005%以上及びZr:0.001%以上にて添加するのが好ましい。
丸め加工性において突き合わせた二辺A、Bのなす角をより低減する目的で、Co:0%以上0.050%以下及びPb:0%以上0.0100%以下からなる群から選ばれる1種または2種を添加することができる。これら元素の含有量が上記上限以下であれば、磁気特性がより好適である。丸め加工性において突き合わせた二辺A、Bのなす角をより低減する観点からは、Co:0.002%以上、Pb:0.0001%以上にて添加するのが好ましい。
磁気特性を向上するため、また丸め加工において突き合わせた鋼板の角a、b間の距離をより適正化させる目的で、As:0%以上0.0200%以下、Zn:0%以上0.020%以下、W:0%以上0.0100%以下、Ge:0%以上0.0050%以下及びGa:0%以上0.0050%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を添加することができる。各々、上記上限以下であれば、磁気特性がより好適である。丸め加工において突き合わせた鋼板の角a、b間の距離をより好適とする観点からは、As:0.0010%以上、Zn:0.001%以上、W:0.0010%以上、Ge:0.0001%以上及びGa:0.0001%以上にて添加するのが好ましい。
次に、本開示の方向性電磁鋼板の製造条件について説明する。
まず、上述した成分組成を有する溶鋼を用いて鋼スラブを製造する。鋼スラブの製造方法は特に限定されず、通常の造塊法及び連続鋳造法で鋼スラブを製造してもよいし、100mm以下の厚さの鋼スラブを直接鋳造法で製造してもよい。これら鋼スラブを、通常の方法でスラブ加熱した後熱間圧延を施す。鋳造後加熱せずに直ちに熱間圧延を施してもよい。
熱間圧延前に、鋼スラブを1300℃以上にスラブ加熱する。鋼スラブを1300℃以上にスラブ加熱することで、インヒビタ成分を十分に固溶させることができる。なお、スラブ加熱温度は、鋼スラブの表面温度を基準とする。
次いで、加熱後の鋼スラブに熱間圧延を施して熱延板とする。熱間圧延の条件は特に限定されない。熱延板の組織制御の観点から、好ましくは、1100℃以上、また好ましくは1300℃以下で1パス以上の粗圧延を施す。続いて、800℃以上、また1100℃以下で2パス以上の仕上圧延を施すことが、熱延板の組織制御の観点で好ましい。また、巻取り温度を400℃以上とし、また750℃以下とすることが炭化物の組織制御と割れ等の欠陥防止との両方の観点で好ましい。巻取り温度は、より好ましくは500℃以上であり、また700℃以下である。なお、熱間圧延における温度、及び巻取り温度は、巻取り直前の鋼板表面温度を基準とする。
次いで、熱延板に対して、任意で熱延板焼鈍を施す。熱延板焼鈍の条件は特に限定されず、常法によることができる。熱延板焼鈍を施す場合は組織の均一化がはかれ、磁気特性のばらつきを小さくすることが可能となる。組織均一化の観点で、熱延板焼鈍の焼鈍条件は、800℃以上1250℃以下で5秒以上の保持とすることが好ましい。より好ましくは900℃以上1150℃以下で10秒以上、また180秒以下保持する条件とする。保持後の冷却は、800℃から350℃までの温度域で5℃/s以上、また100℃/s以下の冷却速度とすることで、第二相や析出物の形態制御が適切になされ、磁気特性が向上するため好ましい。保持後の冷却速度は、より好ましくは、15℃/s以上であり、また45℃/s以下である。なお、熱延板焼鈍における焼鈍温度は、熱延板表面を基準とする。
次いで、冷間圧延に先立って、任意で熱間圧延時に生成した表面のスケールを除去する。スケールを除去する手法は特に限定されず、加熱された酸を使用する方法(酸洗)や、機械的にスケールを除去する方法など、公知の方法でよい。
任意でスケールを除去した後、熱延板に中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して、最終板厚を有する冷延板を得る。2回の冷間圧延では、1回目の冷間圧延の総圧下率R1を2回目の冷間圧延の総圧下率R2よりも高くし、かつ1回目の冷間圧延の総圧下率R1、R2を50%以上とすることが上記の通り必須である。すなわち、1回目の冷間圧延の総圧下率R1(%)と2回目の冷間圧延の総圧下率R2(%)とが下記式(1)を満たす。なお、R1、R2いずれも総圧下率を指し、1回目の冷間圧延及び2回目の冷間圧延のパス数及び各パスにおける圧下率は特に限定されない。
R1≧R2≧50…(1)
1回目の冷間圧延の総圧下率R1を2回目の冷間圧延の総圧下率R2よりも高くし、かつ1回目及び2回目の冷間圧延の総圧下率R1、R2をいずれも50%以上とすることで、磁気特性を維持しつつ、丸め加工における加工精度に優れた方向性電磁鋼板を得ることができる。1回目の冷間圧延の総圧下率は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上とする。2回目の冷間圧延の総圧下率は、好ましくは58%以上、より好ましくは60%以上とする。また、1回目及び2回目の冷間圧延の総圧下率をいずれも92%以下とすることが、組織制御の観点で好ましい。1回目及び2回目の冷間圧延の総圧下率は、いずれも85%以下とすることがより好ましい。なお、冷間圧延では、圧延荷重を低減し、圧延形状をより良好にするため、圧延油等の潤滑剤を使用することが好ましい。
1回目の冷間圧延後、2回目の冷間圧延の前に、中間焼鈍を施す。中間焼鈍の条件は特に限定されないが、800℃以上1250℃以下の温度域で5秒以上保持することが好ましい。中間焼鈍の温度を800℃以上とすることで再結晶粒が過度に細かくなることを防ぎ、一次再結晶組織においてGoss方位結晶粒の核を良好に成長させ、磁気特性をより向上することができる。中間焼鈍の温度を1250℃以下とすることで、インヒビタの急激な成長や分解を防ぎ、磁気特性をより向上することができる。
上記温度域における保持後の冷却では、800℃から350℃までの平均冷却速度を5℃/s以上とし、また100℃/s以下とすることが、第二相及び析出物の形態制御の観点から好ましい。より好ましくは、900℃から350℃までの平均冷却速度は15℃/s以上であり、また45℃/s以下である。なお、中間焼鈍における温度は、鋼板表面を基準とする。
1回目の冷間圧延後、中間焼鈍前には、1回目の冷間圧延時に用いた潤滑剤を除去するために、1回目の冷間圧延後の冷延板表面を脱脂することが好ましい。また、中間焼鈍後は、冷延板表面のスケールを除去することが好ましい。スケールを除去する手法は特に限定されず、加熱された酸を使用する方法(酸洗)や、機械的にスケールを除去するなど、公知の方法でよい。
次いで、冷延板に脱炭焼鈍を施して脱炭焼鈍板とする。脱炭焼鈍の前に、脱脂や酸洗を行い、冷延板表面を清浄化することが好ましい。脱炭焼鈍の条件は特に限定されず、常法によることができる。脱炭焼鈍は、750℃以上、また950℃以下の温度域で行うことが好ましい。また、上記温度域における保持時間は、10秒以上とすることが好ましい。脱炭焼鈍の上記温度域における雰囲気は、HとNとを含むことが好ましい。さらに、脱炭焼鈍の少なくとも一部にて、露点が20℃以上、また80℃以下の湿潤雰囲気とすることが好ましい。さらに好ましくは、脱炭焼鈍において、800℃以上900℃以下の温度域にて、露点を40℃以上とし、また70℃以下とする。なお、脱炭焼鈍における温度は、鋼板表面を基準とする。
次いで、脱炭焼鈍板の表裏両面に焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を得る。焼鈍分離剤としては公知の焼鈍分離剤を用いることができる。特にMgOを主体とする焼鈍分離剤を、脱炭焼鈍板の表面に片面当たり2.5g/m以上塗布することが好ましい。ここで、MgOを主体とするとは、焼鈍分離剤中におけるMgOの含有量が、固形分換算で60%以上であることを意味する。焼鈍分離剤中におけるMgOの含有量は、好ましくは固形分換算で80%以上である。焼鈍分離剤を脱炭焼鈍板の表面に塗布する方法は、特に限定されず、公知の方法によればよい。例えば、焼鈍分離剤はスラリー状で脱炭焼鈍板の表面に塗布されるほか、静電塗装により乾式塗布され得る。スラリー状の焼鈍分離剤を塗布する際は、粘度上昇を抑制するために、スラリー状の焼鈍分離剤は5℃以上30℃以下の一定温度で保持されることが好ましい。また、スラリー濃度を均一化するために、スラリー状の焼鈍分離剤について、調合用のタンクと、塗布に供するタンクとを分けることが好ましい。
次いで、焼鈍分離剤を塗布した後に脱炭焼鈍板に仕上焼鈍を施す。これにより、二次再結晶粒を発達させると共にフォルステライト被膜を形成させて、磁気特性に優れる方向性電磁鋼板を得ることが可能である。仕上焼鈍は常法によることができる。一例においては、脱炭焼鈍板をコイル状に巻き取って鋼板コイルとした状態で仕上焼鈍を施す。一般的に仕上焼鈍には長時間費やすために、鋼板コイルはアップエンド(鋼板コイルの中心軸が、地面に対して垂直)の状態で焼鈍されることが好ましい。仕上焼鈍前に鋼板コイルの周囲にバンド等を巻き付けることが好ましい。アップエンドの鋼板コイルの外巻が仕上焼鈍中に巻きほぐれることを防止することができるためである。
仕上焼鈍においては、室温から最高到達温度まで加熱した後、特定の温度域で一定時間保持し、冷却する。仕上焼鈍において、50℃から900℃までの平均昇温速度H1(℃/hr)、及び900℃から(最高到達温度-50℃)までの平均昇温速度H2(℃/hr)が、下記式(2)、(3)を満足するように制御することが必須である。仕上焼鈍においてH1、H2が下記式(2)、(3)をいずれも満足するように制御することで、磁気特性を維持しつつ、丸め加工における加工精度を向上することができる。なお、仕上焼鈍における温度及び平均昇温速度は、アップエンドの鋼板コイルが焼鈍炉の床と接地する面のうち、鋼板コイルの内巻と外巻との中間の位置(鋼板コイルの径方向厚みの1/2位置)を基準とする。また、ここで「室温」とは、25℃前後を意味する。
H1≧1.1×H2 …(2)
5≦H1≦40 …(3)
また、インヒビタ成分等を鋼中から純化させて良好な鉄損特性を得るために、仕上焼鈍においては、1100℃以上1300℃以下で3時間以上保持することが好ましい。また、仕上焼鈍においては、1100℃以上の温度範囲内の少なくとも一部の雰囲気がHを含むことが好ましい。
仕上焼鈍後には、付着した焼鈍分離剤を除去するため、水洗やブラッシング、酸洗を行なってもよい。酸洗後の方向性電磁鋼板に、さらに平坦化焼鈍を行い形状を矯正することが、鉄損低減のために有効である。方向性電磁鋼板は鋼板を積層して使用することが多いため、絶縁性を確保するために方向性電磁鋼板の表面に絶縁コーティングを施してもよい。該絶縁コーティングは、鉄損低減のために方向性電磁鋼板に張力を付与できるコーティングが好ましい。平坦化焼鈍前に該絶縁コーティングの液を塗布し、平坦化焼鈍で焼き付けを行ってもよい。他にも、バインダーを介した張力コーティング塗布方法、物理蒸着法、化学蒸着法により無機物を鋼板表層に蒸着させてコーティングする方法を採用してもよい。これらの方法によりコーティングを行えば、コーティング密着性に優れ、かつ著しい鉄損低減効果があるため好ましい。
なお、上記した条件以外の製造条件は、常法によることができる。
(実施例1)
質量%で、C:0.055%、Si:3.02%、Mn:0.06%、Se:0.014%、Ti:0.002%、Al:0.003%、N:0.0015%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1400℃にスラブ加熱し、1240℃から粗圧延を3パスで行い、1000℃から仕上圧延を5~7パスで行う熱間圧延により0.92から3.65mmの種々の板厚の熱延板を作製した。次いで、熱延板表面のスケールを酸洗で除去した後、1回目の冷間圧延を施し、0.40から1.53mmの種々の板厚とした。次いで975℃で150秒の中間焼鈍を施した。中間焼鈍の800℃から350℃までの平均冷却速度は25℃/sとした。その後、2回目の冷間圧延を行い板厚0.23mmの冷延板に仕上げた。この際の1回目及び2回目の冷間圧延R1,R2の総圧下率を表1に記載した。さらに、冷延板に、850℃×120秒、60%H+40%N、露点60℃の条件にて脱炭焼鈍を施して脱炭焼鈍板を得た。次いで、脱炭焼鈍板表面に固形分換算で90質量%以上のMgOを含む焼鈍分離剤を片面当たり5.0g/mの目付量で塗布した後、1200℃で10時間、H雰囲気下で保持する仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を得た。仕上焼鈍の昇温過程では、室温から900℃までの平均昇温速度H1と、900℃から1150℃までの平均昇温速度H2とを表1記載のごとく変化させた。また1150℃から1200℃の平均昇温速度は10℃/hrとした。
得られた方向性電磁鋼板の鉄損特性をJIS 2550に準拠して評価し、表1に併記した。鉄損が0.980W/kg以下であれば、鉄損特性に優れると判断した。
また、得られた方向性電磁鋼板から60mm角のサンプルを切り出し、直径20mmの鉄ロールと直径300mmのウレタンロールで構成されたツインロール加工機を用いて丸め加工を行った。丸める方向はサンプルの圧延直交方向(鋼板幅方向)とした。すなわち、サンプルの圧延直交方向が円弧を描くように丸め加工を施した。得られた丸め加工後のサンプルの加工精度は、図3を用いて説明した2つのパラメータH、θで評価した。パラメータH、θの詳細については上述した通りである。本条件では、理想的な形状が得られた場合、各々のパラメータは、H:2.0mm、θ:0°となる。この値から乖離するほど、加工精度が悪いことを示す。各パラメータがそれぞれ、H:1.8~3.0mm、θ:0~2.5°の範囲内であれば合格とする。丸め加工における加工精度の評価として、両パラメータが合格の場合を〇、片方のみが合格の場合を△、両パラメータが不合格の場合を×とした。評価結果を表1に併記した。
Figure 0007287584000001
表1から明らかなように、本発明範囲内の条件では、鉄損特性及び丸め加工の加工精度が良好であることがわかる。
(実施例2)
表2に記載の成分組成を有する鋼スラブを、1425℃の温度にスラブ加熱し、1270℃から粗圧延を4パスで行い、1050℃から仕上圧延を5パスで行う熱間圧延により2.4mmの板厚の熱延板に仕上げた。次いで、熱延板表面のスケールを酸洗で除去した後、1回目の冷間圧延により0.68mmの板厚とし、次いで1100℃で30秒の中間焼鈍を施した。中間焼鈍の800℃から350℃までの温度域での平均冷却速度は35℃/sとした。その後2回目の冷間圧延を行い板厚0.27mmの冷延板に仕上げた。さらに、冷延板に、830℃×120秒、50%H+50%N、露点60℃の脱炭焼鈍を施して脱炭焼鈍板を得た。次いで、脱炭焼鈍板表面に固形分換算で90質量%以上のMgOを含む焼鈍分離剤を片面当たり7.5g/mの目付量で塗布した後、1220℃で5時間保持する仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を得た。なお、仕上焼鈍の昇温過程では、室温から900℃までの平均昇温速度を23℃/s、該温度域での雰囲気をN雰囲気とした。さらに、900℃から1170℃までの昇温速度を15℃/s、該温度域での雰囲気を25%N+75%H雰囲気とした。さらに、1170℃から1220℃までの昇温速度を10℃/hr、該温度域での雰囲気をH雰囲気とした。1220℃での保持後の冷却時は、Ar雰囲気中にて冷却した。
得られた方向性電磁鋼板の鉄損特性及び丸め加工後の加工精度を、実験1と同様に評価した。評価結果を表2に併記した。
表2から明らかなように、本発明範囲内の成分条件では、鉄損特性及び丸め加工の加工精度が良好であることがわかる。
Figure 0007287584000002

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.022%以上0.10%以下、
    Si:2.0%以上4.0%以下、
    Mn:0.03%以上0.20%以下、
    Ti:0.010%以下、
    Al:0.010%以下及び
    N:0.0025%以下を含有し、さらに
    S及びSeのうちいずれか1種または2種を合計で0.008%以上0.080%以下
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1300℃以上にスラブ加熱し、熱間圧延を施して熱延板とし、
    次いで、前記熱延板に熱延板焼鈍を施した後もしくは施すことなく、前記熱延板に中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して冷延板とし、
    次いで、前記冷延板に、脱炭焼鈍を施して脱炭焼鈍板とし、
    次いで、前記脱炭焼鈍板の表面に焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を得る、方向性電磁鋼板の製造方法において、
    1回目の前記冷間圧延の総圧下率R1(%)と2回目の前記冷間圧延の総圧下率R2(%)とが下記式(1)を満たし、
    さらに、前記仕上焼鈍において、50℃から900℃までの平均昇温速度H1(℃/hr)、及び900℃から(最高到達温度-50℃)までの平均昇温速度H2(℃/hr)が、下記式(2)、(3)を満足する、方向性電磁鋼板の製造方法。
    R1≧R2≧50 …(1)
    H1≧1.1×H2 …(2)
    5≦H1≦40 …(3)
  2. 前記熱間圧延では、前記スラブ加熱後、前記鋼スラブに1100℃以上1300℃以下で1パス以上の粗圧延を施し、続いて800℃以上1100℃以下で2パス以上の仕上圧延を施し、巻取り温度を400℃以上750℃以下とし、
    前記熱延板焼鈍では、熱延板を、800℃以上1250℃以下で5秒以上保持した後、800℃から350℃までの平均冷却速度を5℃/s以上100℃/s以下として冷却し、
    前記中間焼鈍では、1回目の前記冷間圧延後の冷延板を、800℃以上1250℃以下で5秒以上保持した後、800℃から350℃までの平均冷却速度を5℃/s以上100℃/s以下として冷却し、
    前記脱炭焼鈍では、HとNとを含む雰囲気にて、かつ脱炭焼鈍の少なくとも一部での露点を20℃以上80℃以下の湿潤雰囲気として、前記冷延板を750℃以上950℃以下で10秒以上保持し、
    前記仕上焼鈍前に、MgOを含む前記焼鈍分離剤を前記脱炭焼鈍板の表面に片面当たり2.5g/m以上塗布し、
    前記仕上焼鈍では、1050℃以上の温度範囲内の少なくとも一部における雰囲気がHを含む条件にて、前記脱炭焼鈍板を1050℃以上1300℃以下で3時間以上保持する、請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記成分組成は、さらに質量%又は質量ppmで、
    Ni:0%以上1.50%以下、
    Cr:0%以上0.50%以下
    Cu:0%以上0.50%以下、
    P :0%以上0.50%以下、
    Sb:0%以上0.50%以下、
    Sn:0%以上0.50%以下、
    Bi:0%以上0.50%以下、
    Mo:0%以上0.50%以下、
    B :0ppm以上25ppm以下、
    Nb:0%以上0.020%以下、
    V :0%以上0.010%以下及び
    Zr:0%以上0.10%以下
    からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1又は2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記成分組成は、さらに、下記A又はB群のうちの少なくとも1群の成分を含有する、請求項1又は2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
    A群:質量%で、
    Co:0%以上0.050%以下及び
    Pb:0%以上0.0100%以下からなる群から選ばれる1種または2種。
    B群:質量%で、
    As:0%以上0.0200%以下、
    Zn:0%以上0.020%以下、
    W:0%以上0.0100%以下
    Ge:0%以上0.0050%以下及び
    Ga:0%以上0.0050%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上。
  5. 前記成分組成は、さらに、下記A又はB群のうちの少なくとも1群の成分を含有する、請求項3に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
    A群:質量%で、
    Co:0%以上0.050%以下及び
    Pb:0%以上0.0100%以下からなる群から選ばれる1種または2種。
    B群:質量%で、
    As:0%以上0.0200%以下、
    Zn:0%以上0.020%以下、
    W:0%以上0.0100%以下
    Ge:0%以上0.0050%以下及び
    Ga:0%以上0.0050%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上。
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