以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
<実施の形態>
以下、図を参照して実施の形態の構成について説明する。図1は、撮影データ記録システムを搭載した車両の上面図である。図に示す撮影データ記録システム10は、移動体である車両900に設置して用いられる。
撮影データ記録システム10は、車両に設置されたカメラが撮影した撮影データを記録および再生する所謂ドライブレコーダとしての機能を有している。撮影データ記録システム10は、予め設定されたトリガを受け付けた場合に、予め設定された期間分の撮影データを「イベント記録データ」として再生可能に記録する機能を有している。予め設定されたトリガを受け付けた場合とは、例えば予め設定された大きさの突発的な衝撃を検出した場合である。車両の運転者等は、このイベント記録データを再生し、再生したイベント記録データの映像を見ることによりイベントの状況を把握できる。
車両900には実施の形態にかかる撮影データ記録システム10が搭載されている。撮影データ記録システム10は、測位情報受信部143、前方カメラ150a、後方カメラ150b、制御部100、表示部141などを有している。
測位情報受信部143は、車両900のダッシュボード中央部に設置されている。測位情報受信部143は、GPS(Global Positioning System)などの衛星測位システムであるGNSS(Global Navigation Satellite System)から自車両の位置を測位するための測位情報を受信するためのアンテナを含む。なお、測位情報受信部143は、所望の情報が取得できるように設置されていれば、車両900の任意の位置に設置されていてもよい。
前方カメラ150aは、車両900の前方を視野角180度で撮影する。前方カメラ150aは、車両900のキャビンにおいて、ウィンドシールド中央上部に設置されており、車両900の前方を通行する他の車両を撮影できる。後方カメラ150bは、車両900の後方を視野角180度で撮影する。後方カメラ150bは、車両900のキャビンにおいて、後部窓の中央上部に設置されており、車両900の後方を通行する他の車両を撮影できる。前方カメラ150aおよび後方カメラ150bは、撮影範囲を撮影するための対物レンズ、イメージセンサ、画像処理回路等をそれぞれ含む。なお、前方カメラ150aおよび後方カメラ150bは、上述した構成に限られない。撮影データ記録システムは、前方カメラ150aおよび後方カメラ150bに代えて車両900の周囲を撮影する全方位カメラを有していてもよい。なお、以降の説明において、前方カメラ150aおよび後方カメラ150bを総称してカメラ150とも称する。
制御部100は、車両900の任意の位置に格納された制御回路であり、撮影データ記録システム10の各構成を適宜制御する。制御部100の詳細については後述する。表示部141は、ダッシュボードにおいて運転者に情報を提示できるように設置された表示装置であって、例えば液晶パネルまたは有機EL(Electro Luminescence)パネル等を含む。
図2は、実施の形態にかかる撮影データ記録システムの構成を示すブロック図である。図に示すように、撮影データ記録システム10は、各構成要素の制御を司る制御部100および制御部100に接続された複数の構成要素を有している。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、メモリ、および複数のインタフェース等が実装された回路基板を有する制御装置であって、格納されているプログラムを実行して種々の処理を実行する。
以下に制御部100の詳細について説明する。制御部100は主な構成として、撮影データ取得部120、バッファメモリ121、撮影データ処理部122、記録制御部123、再生制御部124、操作制御部125、表示制御部126、イベント検出部127、位置情報取得部128、注目車両検出部129および解析部130を有しており、これらの処理および制御を実行する構成は、制御部100が実行するプログラムによって実現される。便宜的に、これらの構成はそれぞれバスライン110に接続しているように表現する。
撮影データ取得部120は、カメラ150から供給された撮影データを取得する。カメラ150は、例えば毎秒60フレーム(60fps)の撮影データを生成し、生成した撮影データを60分の1秒ごとに撮影データ取得部120に供給する。撮影データ取得部120は、バスライン110を介して撮影データをバッファメモリ121に供給する。
バッファメモリ121は、揮発性または不揮発性のメモリ装置である。バッファメモリ121は、撮影データ取得部120を介してカメラ150が定期的に生成する撮影データを順次受け取り、受け取った撮影データを一時的に記憶する。バッファメモリ121が一時的に記憶する撮影データは予め設定された期間分である。バッファメモリ121は、予め設定された期間を経過した撮影データを順次消去するか、あるいは、新たに受け取った撮影データを順次上書きする。すなわちバッファメモリ121はリングバッファとして機能する。
撮影データ処理部122は、バッファメモリ121が記憶している撮影データから、予め設定された方式に準拠した撮影ファイルを生成する。予め設定された方式とは、例えばH.264やMPEG-4(Moving Picture Experts Group)などの方式である。撮影データ処理部122が生成する撮影ファイルには、ヘッダとペイロードが含まれる。撮影ファイルのヘッダにはファイルが生成された日時等が含まれ、ペイロードには撮影データが含まれる。
撮影データ処理部122は、データ圧縮処理を施すことにより、予め設定された圧縮比に処理された撮影データを生成することができる。ここで述べる「圧縮比」は、元データのデータ量と、データ圧縮処理されたデータのデータ量との相対的な比を指すものである。例えば、第1圧縮比と第2圧縮比とを比較した場合に、第1圧縮比よりも第2圧縮比が高い場合は、第2圧縮比により処理されたデータのほうが、第1圧縮比により処理されたデータよりも相対的にデータ量が少ない。すなわち、処理されるデータの圧縮比が高いほど処理された後のデータ量は相対的に少なくなる。
データ圧縮処理の一例は、フレームレートの変更である。この場合、撮影データ処理部122は、撮影データのフレームレートを上述の60fpsから30fpsあるいは15fpsにする。このような処理により、撮影データ処理部122は、撮影データを圧縮処理し、相対的に小さいデータ量の撮影データを含む撮影ファイルを生成できる。撮影データ処理部122は、記録制御部123からの指示を受け、記録制御部123が設定した圧縮比により撮影データを圧縮処理する。なお、この場合、記録制御部123から圧縮しないという指示を受けた場合、撮影データ処理部122は、圧縮処理を行わずに撮影ファイルを生成する。
なお、データ圧縮処理は上述の例に限られず、例えば、画角を小さくする処理であってもよい。あるいは、データ圧縮処理は、各画素の輝度値のダイナミックレンジを縮小させる処理であってもよい。また、データ圧縮処理は、人間の肉眼の感度の特性に応じて所定の色の輝度値を圧縮する処理であってもよい。また撮影データ処理部122は、これらの処理を組み合わせて処理してもよい。
撮影データ処理部122は、さらに、注目車両検出部129と連携し、注目車両を検出するための処理を施してもよい。例えば、撮影データ処理部122は、注目車両検出部129が撮影データに含まれる物体の特徴量を算出するための前処理として、撮影データに対して所定の処理を施してもよい。所定の処理とは、例えば、HOG特徴量(Histograms of Oriented Gradients)の算出やSVM(Support Vector Machine)などの手法に従った画像認識処理等である。
撮影データ処理部122はまた、解析部130と連携し、撮影データに対して注目車両の特徴を抽出するための処理を行うことができる。例えば、撮影データ処理部122は、周辺車両の形状や色などの特徴に関する情報を解析部130に提供できる。
記録制御部123は、記録装置160の状態を管理する。例えば、記録制御部123は、記録装置160の記録可能容量を管理する。また記録制御部123は、記録装置160の記録可能容量から、撮影データの記録形式を設定する。記録形式は、撮影データの圧縮比に関連する。この場合、記録制御部123は、撮影データ処理部122に対して、設定した圧縮比により撮影データを処理するように、指示を出す。より具体的には、例えば、記録制御部123は、記録形式として、所定のフレームレートを設定する。
また記録制御部123は、撮影データ処理部122が生成した撮影ファイルを記録装置160に記録させるための制御を行う。例えば、イベント検出部127がイベントを検出した場合、記録制御部123は、イベントの検出に応じて予め設定された期間分の撮影ファイルを上書き禁止されたイベント記録データとして記録装置160に記録させる。
記録制御部123はイベント記録データを、記録装置160における所定の記録領域に保存させる。所定の記録領域とは例えば、上書きまたは消去禁止とすることを定められた保護領域である。あるいは、記録制御部123により記録装置160に供給されたイベント記録データは、上書きまたは消去禁止であることを示すフラグをファイル内に含めて保存されてもよい。なお、記録制御部123が記録装置160にイベント記録データを記録させる処理を、「イベント記録」と称する。
また、例えば、注目車両検出部129が注目車両を検出した場合、記録制御部123は、注目車両の検出に応じて撮影データ処理部122に撮影ファイルの生成を指示し、撮影データ処理部122が生成した撮影ファイルを記録装置160に記録させる。このとき、記録制御部123は、記録装置160の記録可能容量を参照して参照した記録可能容量に応じて撮影データの圧縮比を設定してもよい。
ここで、注目車両の検出に応じて記録制御部123が撮影ファイルを記録させる処理を、「補助記録」と称する。補助記録は、注目車両が検出された場合に、注目車両の挙動を記録することを目的としている。補助記録を行うことにより、撮影データ記録システム10は、イベントが発生する前から注目車両に起因する車両900の周辺の状況を記録できる。そのため、撮影データ記録システム10のユーザは、イベントが発生する前の予備的な状況が、その後のイベントの発生に関連していたかどうかをイベントの発生後に確認できる。
なお、補助記録はイベント記録と比較して、高い圧縮比の撮影データにより記録されていたとしても、上述の目的を達成することが可能である。例えば、イベント記録において採用される圧縮比を「第1圧縮比」と称し、イベント記録の撮影データより高い圧縮比を「第2圧縮比」と称する。撮影データ記録システム10は、比較的に低い第1圧縮比により補助記録を行うと、記録可能容量が不足してしまう場合には、第1圧縮比より高い第2圧縮比により補助記録を行う。
補助記録において、記録制御部123は、注目車両の捕捉が終了するまでの撮影データを記録する。すなわち、記録制御部123は、注目車両検出部129が注目車両を検出し続けている間は、補助記録を継続する。そして、注目車両検出部129が注目車両の検出をしなくなった場合、すなわち注目車両の捕捉が終了した場合に、記録制御部123は、補助記録を終了させる。
記録制御部123は、注目車両と離れた後において、注目車両の可能性がある周辺車両を撮影することを判断する。記録制御部123はまた、注目車両の可能性がある当該周辺車両を撮影した場合に、この撮影データを保護するか否かを判断する。これらの判断をするに際して、記録制御部123は、解析部130から、当該周辺車両が、第1識別情報に一致すること、あるいは、第2識別情報に一致することに関する信号を受け取る。なお、第1識別情報および第2識別情報については解析部130についての説明と合わせて説明する。
記録制御部123は、補助記録にかかる所定の撮影ファイルを記録装置160に記録する場合に、当該所定の撮影ファイルが上書き禁止または消去禁止であること(撮影ファイルを保護すること)を、記録装置160に記録させた後に指定できる。このような処理を行うために、記録制御部123は、例えば記録装置160が撮影ファイルを記録する記録領域を管理する。記録領域は、アドレス、ディレクトリ、セクタまたはフォルダ等と称されてもよい。記録制御部123は、撮影ファイルを記録装置160に記録させる際に、当該撮影ファイルに関する情報(例えばヘッダに含まれる情報の少なくとも一部)と、当該撮影ファイルが記録される記録装置160の記憶領域とを関連付けて管理する。これにより記録制御部123は、必要に応じて、記録した撮影ファイルを上書き禁止に指定したり、上書き禁止を解除したりできる。
再生制御部124は、記録装置160が記録している撮影ファイルを管理し、保存されている撮影データを再生するための処理を行う。再生制御部124は、例えばユーザからの指示に応じて、選択された撮影ファイルを読み取り、読み取った撮影ファイルを再生するために表示制御部に供給する。
操作制御部125は、操作部140が受け付けた操作情報を取得し、操作情報に基づいた操作指示を、各構成要素に出力する。例えば操作制御部125は、操作部140から再生対象となる撮影ファイルの選択指示を取得した場合、再生制御部124に対して、記録装置160に記録されている撮影ファイルを選択させる。操作制御部125は、操作部140から各種データの再生に関する指示を取得した場合、再生制御部124に再生に関する処理を行わせる。各種データの再生に関する指示とは、例えば、再生開始、一時停止、再生停止、拡大表示などである。
表示制御部126は、表示部141に対し、様々な情報を表示させる制御を行う。例えば、表示制御部126は、カメラ150が撮影中の撮影データを表示部141に表示させる。また、表示制御部126は、再生制御部124から供給された撮影データを受け取り、受け取った撮影データを表示部141に表示させる。表示制御部126は、表示部141に、操作部140の機能としてタッチセンサが重畳されている場合、タッチセンサに対応したアイコンなどを表示部141に適宜表示させる。
イベント検出部127は、加速度センサ142が検出する加速度に関する情報を受け取り、受け取った加速度に関する情報に基づき、加速度を示す信号の大きさや信号パターンから所定のイベントが発生したことを検出する。外部から受ける加速度とは、撮影データ記録システム10が車両900から受ける加速度であって、例えば車両900が他の物体と衝突したときに発生する衝撃などにより生じる加速度である。
イベント検出部127は、加速度センサ142から受け取った信号が所定のイベントの発生に該当することを検出した場合には、イベントの発生を検出したことを示す信号を撮影データ処理部122に供給する。イベントの発生とは、例えば、急ブレーキによる衝撃や、車両に対して物体が衝突した場合の衝撃などである。
位置情報取得部128は、測位情報受信部143が受信した測位衛星からの信号を受け取り、受け取った信号から現在位置に関する情報である位置情報を取得し、取得した位置情報を記録制御部123に供給する。位置情報には例えば、測位衛星から信号を受け取った時刻における車両の緯度および経度が含まれる。
注目車両検出部129は、撮影データを解析し、解析結果から注目車両を検出する。より具体的には、注目車両検出部129は、撮影データ処理部122と連携し、撮影データから物体の特徴量を抽出し、抽出した特徴量から物体を認識するとともに、フレームごとの物体の変化を検出することにより、周辺車両の動きを検出する。さらに注目車両検出部129は、検出した周辺車両から注目車両を検出する。
注目車両は、例えば、車両900の前方または後方を通行する車両のうち、車両900と接触する可能性が高いなど、車両900の運転に支障を及ぼす可能性が実質的に高いものとすることができる。この場合、注目車両は、危険車両と称されてもよい。危険車両は、車両900の前方で左右にふらつきながら通行する車両や、車両900の後方で車両900に異常に接近しながら通行する煽り運転をする車両などが含まれる。注目車両検出部129は、注目車両を検出すると、注目車両を検出したことを示す信号を記録制御部123に供給する。また注目車両検出部129は、注目車両を検出している間、すなわち注目車両を捕捉している間、継続して注目車両を検出していることを示す信号を記録制御部123に供給する。そして注目車両が撮影データに含まれず、注目車両の捕捉が終了した場合、注目車両検出部129は、注目車両を検出していることを示す信号の供給を終了させる。
解析部130は、撮影データに基づいて、注目車両の第1識別情報および第2識別情報を抽出する。第1識別情報は、車両が有する属性または特徴を示すものである。第2識別情報は車両が有する固有の識別情報である。第1識別情報の具体例は、車両の外観に関する情報であり、車両の型式および年式および車両の色の情報が含まれる。なお、本実施の形態において、第1識別情報は、型式および名称および車両の色のいずれもが一致した場合に、第1識別情報が一致したと定義する。第2識別情報の具体例は、車両に表示されるナンバープレートの文字情報である。
解析部130は、注目車両検出部129が撮影データから注目車両を検出すると注目車両に関する情報を受け取る。そして受け取った注目車両に関する情報に含まれる第1識別情報および第2識別情報を抽出する。解析部130は、注目車両の第1識別情報および第2識別情報を抽出すると、抽出したこれらの情報をデータベース記憶部144に記憶させる。
解析部130は、撮影データから車両900の近くを通行する周辺車両を識別し、識別した周辺車両に第1識別情報または第2識別情報が含まれるか否かを解析する。より具体的には、解析部130は、周辺車両を撮影した撮影データから識別した周辺車両の情報と、データベース記憶部144に記憶している注目車両の第1識別情報および第2識別情報とを照合する。そして解析部130は、照合した結果、周辺車両の情報に第2識別情報が含まれる場合には、当該周辺車両が注目車両の可能性ありと判断する。また解析部130は、照合した結果、周辺車両の情報に第1識別情報が含まれる場合には、当該周辺車両が注目車両であると判断する。なお、本実施の形態において、解析部130は、撮影データ処理部122が予め設定された処理をしたデータを受け取り、撮影データ処理部122から受け取ったデータから物体の認識、第1識別情報および前記第2識別情報の照合を行う。解析部130は、上述の解析の結果に関する信号を、記録制御部123に供給する。
次に、制御部100に接続している各構成について説明する。撮影データ記録システム10は、操作部140、表示部141、加速度センサ142、測位情報受信部143、データベース記憶部144、カメラ150および記録装置160を有している。
操作部140は、撮影データ記録システム10に対して運転者が行う操作を受け付けるユーザインタフェースである。ユーザインタフェースは、例えば操作ボタンであってもよいし、表示部141に重畳して設置されたタッチセンサであってもよい。またユーザインタフェースは、赤外線や無線通信の受信部であって、リモコン等から送信される信号を受け付けるものであってもよい。操作部140は、受け付けた操作に関する情報である操作情報を、所定のインタフェースを介して制御部100に供給する。操作情報は例えば、イベント記録開始の指示やイベント記録データの再生を行う指示等である。
表示部141は、表示制御部126の制御により各種情報を表示する表示装置である。表示部141は、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)などの表示パネルを少なくとも有している。表示部141は、表示制御部126に接続し、表示制御部126から供給される信号を表示する。表示部141は、例えば撮影データに含まれる映像を表示するように構成されている。
加速度センサ142は、例えば3軸加速度センサである。加速度センサ142は、加速度センサ142に印加された加速度を検出し、検出した加速度に応じて、検出した加速度に関する情報を出力する。加速度センサ142は、イベント検出部127に接続しており、検出した加速度に関する情報をイベント検出部127に出力する。なお、加速度センサ142は、3軸加速度センサに代えて、1軸または2軸加速度センサであってもよい。
測位情報受信部143は、GPSあるいはGNSSと称される衛星測位システムにより車両の現在位置に関する情報を受信する。測位情報受信部143は、測位信号を受信するためのアンテナであってもよいし、車両が取得する位置情報を受け取るための通信インタフェースであってもよい。測位情報受信部143は、受信した現在位置に関する信号を、位置情報取得部128に供給する。
データベース記憶部144は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリまたはSSD(Solid State Drive)などの揮発性もしくは不揮発性またはこれら組み合わせにより構成されるメモリを含む記憶装置である。データベース記憶部144は、第1識別情報および第2識別情報を記憶する。またデータベース記憶部144は、解析部130が第2識別情報を認識するための車体特徴データベースを記憶する。
図3は、データベース記憶部144が記憶する識別情報の一例を示す表である。図3に示す表は、撮影データ記録システム10が撮影した撮影データに含まれる周辺車両の識別情報が示されている。図3に示す表の左側には、それぞれの識別情報の固有の整理番号(1、2、3、・・・)が示されている。図3には、整理番号1に紐づいた情報として、整理番号1の右側に、「ABC-01-23」、「2019年式BCD」および「シルバー」が示されている。同様に、図3には、整理番号2に紐づいた情報として、整理番号2の右側に、「XYZ-32-10」、「2010年式WXY」および「黒」が示されている。
整理番号の左側は、第2識別情報として車両登録番号(ABC-01-23、XYZ-32-10、・・・)が示されている。ここで示される「ABC-01-23」、「XYZ-32-10」は車両登録番号の例として示されている。車両登録番号は、車両のナンバープレートに表示されている車両固有の番号である。車両登録番号は、解析部130が周辺車両のナンバープレートを認識し、認識したナンバープレートから文字情報を読み取ることにより生成される。解析部130は、認識した車両登録番号を、後述する第1識別情報と関連付けてデータベース記憶部144に記憶させる。
車両登録番号の左側には、第1識別情報として車両の型式および名称に関する情報(2019年式XYZ、2010年式ABC、・・・)と、車両の色に関する情報(シルバー、黒、・・・)が示されている。ここで示される「BCD」および「WXY」は車両の名称の例として示されている。車両の型式および名称に関する情報は、撮影データに含まれる周辺車両の画像と、データベース記憶部144が予め有している車体特徴データベースとを照合した結果、周辺車両の画像と一致または最も類似する車両の情報が示されている。車体特徴データベースは、例えば市販されている車両の画像情報である。解析部130は、認識対象の周辺車両の画像が車体特徴データベースのうちどの車体の情報と一致または類似するかの照合をおこなう。そして照合の結果、解析部130は、認識対象の周辺車両と最も一致または類似する情報を紐づけ、紐づけた情報を第1識別情報としてデータベース記憶部144に記憶させる。
車両の色に関する情報について、解析部130は、撮影データに含まれる周辺車両の画像から周辺車両の色を認識する。本実施の形態では、図3に示す通り、「シルバー」または「黒」といった色の名称により認識しているが、車両の色については、撮影データに含まれる画像の画素値から、RGBの輝度値の統計情報(平均値または中央値など)が利用されてもよい。
図2に戻り説明を続ける。カメラ150は、対物レンズ、撮像素子およびA-D(Analog to Digital)変換素子等を有する撮像装置である。カメラ150は、移動体である車両の周囲の景色を含む映像を撮像し、撮像した映像のデータである撮影データを生成する。カメラ150は、生成した撮影データを撮影データ取得部120に供給する。
記録装置160は、カメラ150から供給された撮影データを格納する記録装置である。記録装置160は、例えばフラッシュメモリを含むメモリカードや、SSDまたはHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性の記録装置である。記録装置160は、記録制御部123に接続し、記録制御部123から所定のデータを受け取り、受け取ったデータを記録する。また、記録装置160は、再生制御部124の指示に応じて再生制御部124に対して記録しておいたイベント記録データを含むイベントファイルを供給する。記録装置160は撮影データ記録システム10から脱着可能に構成されていてもよいし、取り外しできない構成であってもよい。
次に、図4を参照して撮影データ記録システム10の処理について説明する。図4は、撮影データ記録システム10が行う処理を示す第1のフローチャートであって、撮影データ記録システム10が危険車両等の注目車両を検出した場合の処理を示している。図4に示すフローチャートは、撮影データ記録システム10が起動し、カメラ150から撮影データを取得している状態から開始する。
まず、制御部100の注目車両検出部129は、注目車両を検出したか否かを判断する(ステップS10)。注目車両を検出しない場合(ステップS10:No)、制御部100はステップS10を繰り返す。注目車両を検出したと判断した場合(ステップS10:Yes)、注目車両検出部129は、注目車両を検出したことを記録制御部123に通知するとともに、検出した注目車両の検出を継続する。すなわち注目車両検出部129は、検出した注目車両を捕捉する。
制御部100は、注目車両検出部129から注目車両の検出に関する信号を受け取ると、補助記録を開始する(ステップS11)。すなわち、記録制御部123は、撮影データ処理部122に対して、所定の圧縮比で撮影ファイルを生成することを支持し、生成された撮影ファイルを記録装置160に記録させる。
次に、記録制御部123は、注目車両検出部129が注目車両の検出を継続している状態、すなわち、注目車両の捕捉が継続しているか否かを判断する(ステップS12)。注目車両の捕捉が継続していることを判断した場合(ステップS12:Yes)、記録制御部123は、補助記録を継続するためステップS12を繰り返す。
一方、ステップ12において、注目車両の捕捉が継続していることを判断しない場合(ステップS12:No)、記録制御部123は、補助記録を終了させる(ステップS13)。
補助記録が終了すると、解析部130は、補助記録において取得した注目車両の特徴から第1識別情報および第2識別情報を抽出し、抽出したこれらの情報をデータベース記憶部144に記憶させる(ステップS14)。
次に、制御部100は、一連の処理を終了させるか否かを判断する(ステップS15)。一連の処理を終了させる場合とは、例えばシステムが停止される場合や、運転者の操作により処理を終了させる場合などである。一連の処理を終了させると判断しない場合(ステップS15:No)、制御部100はステップS10に戻り処理を続ける。一連の処理を終了させると判断した場合(ステップS15:Yes)、制御部100は処理を終了させる。
上述の処理により、撮影データ記録システム10は、煽り運転などの危険運転を行う注目車両を撮影し、撮影データを記録する。また上述の処理により、撮影データ記録システム10は、補助記録を行った注目車両の特徴を記憶する。
次に、図5を参照して撮影データ記録システム10の処理について説明する。図5は、撮影データ記録システム10が行う処理を示す第2のフローチャートである。図5に示すフローチャートは、図4に示すフローチャートにより、注目車両に関するデータベースが生成された後において、撮影データ記録システム10がデータベース記憶部144に記憶した周辺車両の特徴と一致した周辺車両を検出した場合の処理を示している。図5に示すフローチャートは、データベース記憶部144に注目車両に関する情報が記憶されたうえで、カメラ150から撮影データを取得している状態から開始する。
まず、解析部130は、撮影データに含まれる周辺車両の特徴が第1識別情報と一致しているか否かを判断する(ステップS20)。撮影データに含まれる周辺車両の特徴が第1識別情報と一致していると判断しない場合(ステップS20:No)、解析部130は、ステップS20を繰り返す。撮影データに含まれる周辺車両の特徴が第1識別情報と一致していると判断した場合(ステップS20:Yes)、解析部130は、第1識別情報と一致した車両を検出したことを記録制御部123に通知するとともに、検出した車両の検出を継続する。すなわち解析部130は、検出した車両を捕捉する。
記録制御部123は、解析部130から第1識別情報と一致する車両の検出に関する信号を受け取ると、補助記録を開始する(ステップS21)。すなわち、記録制御部123は、撮影データ処理部122に対して、所定の圧縮比で撮影ファイルを生成することを支持し、生成された撮影ファイルを記録装置160に記録させる。
次に、記録制御部123は、解析部130が第1識別情報と一致する車両の検出を継続している状態、すなわち、当該車両の捕捉が継続しているか否かを判断する(ステップS22)。当該車両の捕捉が継続していることを判断した場合(ステップS22:Yes)、記録制御部123は、ステップS23に進む。
一方、ステップ22において、第1識別情報と一致する車両の捕捉が継続していることを判断しない場合(ステップS22:No)、記録制御部123は、補助記録を終了させる(ステップS24)。またこのとき、記録制御部123は、記録した撮影ファイルの上書を許可する。この場合例えば、記録制御部123は、上書き禁止の処理を行わないことにより撮影ファイルの上書を許可することができる。また、記録制御部123は、撮影ファイルの管理において、上書きを許可するフラグを立てる処理を行う必要がある場合委は、その旨の処理を行う。これらの処理を行った後、制御部100は、ステップS20に戻る。
ステップS23において、解析部130は、第1識別情報と一致する車両と車両900の車間距離がさらに近くなったら、第2識別情報とも一致するか否かを判断する(ステップS23)。第1識別情報と一致する車両が、さらに第2識別情報とも一致すると判断しない場合(ステップS23:No)、制御部100はステップS24に進み、記録制御部123が補助記録を終了させるとともに、撮影ファイルの上書を許可する。一方、第1識別情報と一致する車両が、さらに第2識別情報とも一致すると判断した場合(ステップS23:Yes)、解析部130は、第1識別情報と一致する車両が、第2識別情報と一致することを示す信号を記録制御部123に供給する。ここで、撮影データに含まれる周辺車両の特徴が第2識別情報と一致するということは、当該周辺車両のナンバープレートに表示されている内容が、データベース記憶部144に記憶されていたことを示している。すなわち、撮影データ記録システム10は、ナンバープレートの表示内容が認識できる前から、過去に遭遇した注目車両を撮影できる。
次に、ステップS25において、記録制御部123は、第2識別情報と一致する車両が継続して捕捉されているか、すなわち、解析部130が継続して当該車両を検出しているか否かを判断する(ステップS25)。解析部130が継続して当該車両を検出していると、記録制御部123が判断した場合(ステップS25:Yes)、記録制御部123はステップS25を繰り返し、補助記録を継続する。解析部130が継続して当該車両を検出していると、記録制御部123が判断しない場合(ステップS25:No)、記録制御部123はステップS26に進む。
ステップS26に進むと記録制御部123は、補助記録を終了させる(ステップS26)。次に、記録制御部123は、補助記録により生成した撮影ファイルを上書き禁止(保護の対象)に設定する(ステップS27)。
次に、制御部100は、一連の処理を終了させるか否かを判断する(ステップS28)。一連の処理を終了させる場合とは、例えばシステムが停止される場合や、運転者の操作により処理を終了させる場合などである。一連の処理を終了させると判断しない場合(ステップS28:No)、制御部100はステップS20に戻り処理を続ける。一連の処理を終了させると判断した場合(ステップS28:Yes)、制御部100は処理を終了させる。
上述の処理により、撮影データ記録システム10は、注目車両に遭遇し、遭遇した注目車両と一旦離れた後に、注目車両と再び遭遇する場合には、注目車両が自車両に接近する前から撮影データを記録できる。
以上、実施の形態について説明したが、実施の形態にかかる撮影データ記録システム10は、上述の構成に限られない。例えば、カメラ150は、前方カメラ150aまたは後方カメラ150bのいずれか一方のみであってもよい。また第2識別情報の例として車両登録番号を示して説明したが、第2識別情報は、撮影データから取得するものに加えて、または撮影データから取得するものに変えて、車車間通信などの無線通信により取得できる情報であってもよい。また、撮影データ記録システム10は、図1に示したような車両900に組み込まれたものに限られず、例えば各構成が1個の筐体に格納された製品であって、車両900に後付け可能なタイプであってもよい。
上述の構成において、撮影データ記録システム10は、第1識別情報と一致する車両が検出された場合に、運転者に対してその旨を通知してもよい。また撮影データ記録システム10は、第1識別情報を検出する前に第2識別情報を検出してもよい。さらに、上述の構成において、撮影データ記録システム10は、第1識別情報と一致する車両が第2識別情報と一致することが検出された場合に、運転者に対して、過去に遭遇した注目車両であることを通知してもよい。このように、撮影データ記録システム10は、過去に遭遇した注目車両が接近する前に、注目車両である可能性がある車両の接近を検出できる。また、撮影データ記録システム10は、過去に遭遇した注目車両と再び接近する前に、運転者に注意を促すことができる。このような注意を促すことにより、運転者は適宜、注目車両の可能性がある車両との距離を確保したり、注目車両の可能性がある車両から回避したりすることができる。よって、実施の形態によれば、危険運転などを行う注目車両が近づく可能性を抑制する撮影データ記録システム等を提供することができる。
なお、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、および電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線および光ファイバ等の有線通信路、または無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。