以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において「テープ」とは、「フィルム」や「シート」をも含めた意味として記載するものである。
<基材[I]>
本発明は、粘着シートの基材[I]として、ポリオレフィン系樹脂フォーム基材を用いることを特徴とする。
上記ポリオレフィン系樹脂フォーム基材とは、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させ発泡体としたものである。
上記ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の見かけ密度は、粘着剤層との密着性に優れるという観点から、10~300kg/m3であることが好ましく、特に好ましくは50~250kg/m3、さらに好ましくは70~200kg/m3である。見かけ密度が小さすぎても、大きすぎても粘着剤層との密着性が低下する傾向がある。
なお、上記見かけ密度は、JIS K 7222に準拠して測定することができる。
上記ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の有する気泡は、独立気泡であってもよく、連続気泡であってもよい。また、独立気泡と連続気泡が混在してもよい。
上記気泡の形状は、通常、球状であるが、これに限定されるものではない。また、気泡の平均直径(平均気泡径)は、通常1~1,000μmであり、好ましくは10~500μmである。平均気泡径が上記範囲内であると、ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の引張強度、柔軟性、加工性、表面平滑性および追従性に優れる傾向がある。
上記ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の厚みは、粘着剤層との密着性に優れるという観点から、0.1~2mmであることが好ましく、特に好ましくは0.2~1.5mmであり、さらに好ましくは0.3~1mmである。基材の厚みが薄すぎると、柔軟性、耐衝撃性が低下する傾向があり、基材の厚みが厚すぎると、加工性、表面平滑性が低下する傾向がある。
上記ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の引張強度は、通常0.1~2MPaであり、好ましくは0.2~1MPaである。引張強度が小さすぎると、強度不足により裂けが発生する傾向があり、引張強度が大きすぎると、耐衝撃性が低下する傾向がある。
また、上記ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の伸び率は、通常50~500%であり、好ましくは70~300%である。伸び率が小さすぎると、耐衝撃性が低下する傾向があり、伸び率が大きすぎると強度不足により裂けが発生する傾向がある。
上記ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の引張強度および伸び率は、基材を23℃、50%RHの環境下で10mm×50mmに裁断し、チャック間距離が25mmとなるようにオートグラフ(島津製作所社製「オートグラフAG-X PLUS 500N」)にセットし、引張速度50mm/minで測定することにより得られる。
上記ポリオレフィン系樹脂フォーム基材を構成するポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含むものである。また、上記ポリオレフィン系樹脂は、通常、モノマー単位として、炭素数2~20のα-オレフィンを含む樹脂であり、なかでも、ポリエステル系粘着剤との密着性の観点からポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
[ポリエチレン系樹脂]
ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体または、エチレンとα-オレフィンとの共重合体のいずれでもよく、さらには、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体であってもよい。ただし、上記ポリエチレン系樹脂には、後述するオレフィン系エラストマー、オレフィン系プラストマーは含まれない。また、これらのポリオレフィン系樹脂は、単独でもしくは2種類以上を併せて用いてもよい。
上記エチレンと共重合させるα-オレフィンとしては、通常、炭素数2~10、好ましくは炭素数4~10のα-オレフィンが好ましく、具体的には、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられる。
上記ポリエチレン系樹脂のなかでも、接着剤層との密着性に優れるという観点から、エチレンの単独重合体が好ましい。
[ポリプロピレン系樹脂]
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体または、プロピレンとα-オレフィンとの共重合のいずれでもよい。
上記プロピレンと共重合させるα-オレフィンとしては、通常、炭素数2~12、好ましくは、炭素数4~12のα-オレフィンが好ましく、具体的には、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等が挙げられる。
上記ポリプロピレン系樹脂のなかでも、接着剤層との密着性に優れるという観点から、プロピレンの単独重合体が好ましい。
また、上記ポリオレフィン系樹脂組成物には、発明の効果を阻害しない範囲で、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂、例えば、エラストマー、オレフィン系プラストマー、ゴム等が含まれていてもよい。
上記エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントを組み合わせた構造を有するものであり、常温(23℃)でゴム弾性を示し、高温では熱可塑性樹脂と同様に可塑化するという性質を有する。
上記エラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、塩素化ポリエチレン等のオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等が挙げられる。
上記オレフィン系プラストマーとは、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒を用いて、エチレンと炭素数4~8のα-オレフィンとを共重合させた超低密度ポリエチレン系樹脂であり、プラスチックスとエラストマーの中間の性質を有する。
上記ポリオレフィン系樹脂組成物には、発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤、例えば、界面活性剤、分散剤、耐候性安定剤、光安定剤、顔料、染料、難燃剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤等を含有してもよい。
ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の製造方法は、特に制限はなく、一般的な製造方法で製造することができる。また、ポリオレフィン系樹脂フォーム基材は、架橋されたものであってもよいし、無架橋であってもよい。
まず、架橋ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の製造方法について説明し、つぎに、無架橋ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の製造方法について説明する。
[架橋ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の製造方法]
架橋されたポリオレフィン系樹脂フォーム基材は、通常、ポリオレフィン系樹脂組成物を架橋した後、発泡させることにより製造することができる。
具体的には、例えば、ポリオレフィン系樹脂、熱分解型発泡剤、必要に応じてポリオレフィン系樹脂以外の樹脂、後述する添加剤等のその他の原料を溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによってシート状のポリオレフィン系樹脂組成物を得る工程、シート状のポリオレフィン系樹脂組成物を架橋する工程、架橋されたシート状のポリオレフィン系樹脂組成物を加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させる工程を経ることによりポリオレフィン系樹脂フォーム基材を得ることができる。
上記熱分解型発泡剤としては、例えば、有機発泡剤、無機発泡剤が挙げられる。
上記有機発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(例えば、アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドロゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
上記無機発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの熱分解型発泡剤のなかでも、微細な気泡を得る観点、および経済性、安全面からアゾ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミドが特に好ましい。これらの熱分解型発泡剤は、単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
熱分解型発泡剤の配合量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、通常1~10重量部、好ましくは1~5重量部、より好ましくは1.5~3.5重量部である。
上記シート状のポリオレフィン系樹脂組成物を架橋する工程により架橋されたポリオレフィン系樹脂組成物の架橋度(ゲル分率)は、20~70重量%であることが好ましい。
かかるシート状のポリオレフィン系樹脂を架橋させる方法としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂組成物に有機過酸化物を配合しておき、加熱して有機過酸化物を分解させることにより、ポリオレフィン系樹脂組成物を架橋する方法、ポリオレフィン系樹脂に、電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。これらは、単独でもしくは2種以上を併用してもよい。
また、上記有機過酸化物の配合量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、通常0.01~5重量部であり、好ましくは0.1~3重量部である。
上記電離性放射線を用いる場合の照射量は、架橋度が上記の範囲になるように、通常0.5~20Mrad、好ましくは3~15Mradで照射を行う。
上記の架橋方法は、単独でもしくは併用してもよいが、架橋を均一に行う観点から、電離性放射線を照射する方法が好ましい。
上記架橋されたシート状のポリオレフィン系樹脂組成物を加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させる工程における加熱方法としては、例えば、熱風により加熱する方法、赤外線により加熱する方法、塩浴により加熱する方法、オイルバスにより加熱する方法等が挙げられる。これらは、単独でもしくは2種以上を併用してもよい。
また、上記架橋ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の製造方法においては、ポリオレフィン系樹脂組成物に、気泡核調整剤、分解温度調整剤、架橋助剤、酸化防止剤等を配合してもよい。かくして、架橋ポリオレフィン系樹脂フォーム基材が得られる。
[無架橋ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の製造方法]
無架橋ポリオレフィン系樹脂フォーム基材は、例えば、ポリオレフィン系樹脂組成物を押出発泡成形することにより製造することができる。ポリオレフィン系樹脂組成物は、押出機内で混練され、押出機の先端に設けられた金型(ダイ)から押出発泡することで、発泡体となる。
上記無架橋ポリオレフィン系樹脂フォーム基材に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物には、発泡剤が含まれる。
上記発泡剤としては、公知一般の発泡剤を用いることができ、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n-ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素、二酸化炭素、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独でもしくは2種以上を併用してもよい。なかでも、無機ガスが好ましく、二酸化炭素がより好ましい。また、二酸化炭素は、超臨界状態、亜臨界状態、または液化されたものが好ましい。
また、無架橋ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の製造方法においては、ポリオレフィン系樹脂組成物に、気泡核剤等を配合してもよい。
上記押出発泡成形における、工程温度、工程圧力、工程時間等の製造条件は、得られるポリオレフィン系樹脂フォーム基材が前記の物性となるように適宜設定される。
かくして、無架橋ポリオレフィン系樹脂フォーム基材が得られる。
このようにして架橋ポリオレフィン系樹脂フォーム基材または無架橋ポリオレフィン系樹脂フォーム基材が得られるが、これらのポリオレフィン系樹脂フォーム基材は、延伸してもよい。なお、延伸は、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させた後に行ってもよいし、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させつつ行ってもよい。
<ポリエステル系粘着剤組成物[II]>
本発明で用いるポリエステル系粘着剤組成物[II]は、多価カルボン酸類由来の構造単位およびポリオール由来の構造単位を有しており、多価カルボン酸類における芳香族構造含有化合物の含有量、および重量平均分子量が特定の範囲であるポリエステル系樹脂(A)を含有することを特徴とする。
そして、本発明で用いるポリエステル系粘着剤組成物[II]は、上記ポリエステル系樹脂(A)を必須成分とし、加水分解抑制剤(B)、ウレタン化触媒(C)、および架橋剤(D)からなる群から選ばれた少なくとも1つを含有していることが好ましく、さらに(B)~(D)成分のいずれも含有することがより好ましい。
このようなポリエステル系粘着剤組成物[II]を構成する各成分について、以下、順次説明する。
[ポリエステル系樹脂(A)]
ポリエステル系樹脂(A)は、通常、構成原料として、多価カルボン酸類(a1)およびポリオール(a2)を含む共重合成分を共重合することにより得られ、そのポリエステル系樹脂(A)は、その樹脂組成として、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位およびポリオール(a2)由来の構造単位を有するようになる。
なお、本発明において、「カルボン酸類」との用語は、カルボン酸に加え、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル等のカルボン酸誘導体も含むものである。
また、本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、ポリオレフィン系樹脂フォーム基材との密着性や、ポリオレフィン被着体に対する接着性の点から水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)を含む共重合成分を共重合することが好ましく、上記水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)を共重合することにより、ポリエステル系樹脂(A)は、水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)由来の構造単位を有するようになる。この水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)は、ポリエステル系樹脂(A)の構成原料である、多価カルボン酸類(a1)およびポリオール(a2)の少なくとも一方として含まれることが好ましい。
〔多価カルボン酸類(a1)〕
ポリエステル系樹脂(A)の構成原料として用いられる上記多価カルボン酸類(a1)としては、例えば、二価カルボン酸類、三価以上の多価カルボン酸類が挙げられ、ポリエステル系樹脂(A)を安定的に得られる点から二価カルボン酸類が好ましく用いられる。
上記二価カルボン酸類としては、例えば、
マロン酸類、ジメチルマロン酸類、コハク酸類、グルタル酸類、アジピン酸類、トリメチルアジピン酸類、ピメリン酸類、2,2-ジメチルグルタル酸類、アゼライン酸類、セバシン酸類、フマル酸類、マレイン酸類、イタコン酸類、チオジプロピオン酸類、ジグリコール酸類、1,9-ノナンジカルボン酸類、等の脂肪族ジカルボン酸類;
フタル酸類、テレフタル酸類、イソフタル酸類、ベンジルマロン酸類、ジフェン酸類、4,4’-オキシジ安息香酸類、さらに1,8-ナフタレンジカルボン酸類、2,3-ナフタレンジカルボン酸類、2,7-ナフタレンジカルボン酸類等のナフタレンジカルボン酸類、等の芳香族ジカルボン酸類;
1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸類、1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸類、2,5-ノルボルナンジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸類、等の脂環族ジカルボン酸類;
等が挙げられる。
また、上記三価以上のカルボン酸類としては、例えば、トリメリット酸類、ピロメリット酸類、アダマンタントリカルボン酸類、トリメシン酸類、等が挙げられる。
これらの多価カルボン酸類(a1)は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
また、上記多価カルボン酸類(a1)のなかでも、ポリエステル系樹脂(A)の結晶性を下げる点から、芳香族多価カルボン酸類、特には非対称の芳香族多価カルボン酸類(a1-1)を含ませることが好ましく、非対称の芳香族多価カルボン酸類(a1-1)としては、例えば、フタル酸類、イソフタル酸類、1,8-ナフタレンジカルボン酸類、2,3-ナフタレンジカルボン酸類、2,7-ナフタレンジカルボン酸類等が挙げられ、なかでも反応性の点でイソフタル酸類が特に好ましく用いられる。
かかる芳香族多価カルボン酸類、特には非対称の芳香族多価カルボン酸類(a1-1)の含有量としては、多価カルボン酸類(a1)全体に対して、80モル%以下、特には1~80モル%であることが好ましく、特に好ましくは2~70モル%、さらに好ましくは3~60モル%、殊に好ましくは5~40モル%である。かかる含有量が少なすぎると、樹脂が結晶化し、充分な粘着性能が得られなくなる傾向があり、多すぎると相溶性、および初期密着性(タック)が低下する傾向がある。
さらに、上記多価カルボン酸類(a1)のなかでも、ポリエステル系樹脂(A)の結晶性を別観点より下げる点から、炭素数が奇数の脂肪族多価カルボン酸類(a1-2)を含ませることが好ましく、炭素数が奇数の脂肪族多価カルボン酸類(a1-2)としては、例えば、マロン酸類、グルタル酸類、ピメリン酸類、アゼライン酸類、1,9-ノナンジカルボン酸類等が挙げられ、なかでもアゼライン酸類が特に好ましく用いられる。
かかる炭素数が奇数の脂肪族多価カルボン酸類(a1-2)の含有量としては、多価カルボン酸類(a1)全体に対して、5~100モル%であることが好ましい。とりわけ、溶液透明性を重視する場合は、多価カルボン酸類(a1)全体に対して、5~95モル%であることが好ましく、特に好ましくは10~90モル%、さらに好ましくは20~85モル%、殊に好ましくは30~80モル%である。かかる含有量が少なすぎると樹脂が結晶化し充分な粘着性能が得られなくなる傾向がある。
本発明においては、粘着物性の点から、多価カルボン酸類(a1)として、非対称の芳香族多価カルボン酸類(a1-1)および脂肪族多価カルボン酸類を併用することも好ましい。非対称の芳香族多価カルボン酸類(a1-1)および脂肪族多価カルボン酸類の含有比率(モル比)としては、非対称の芳香族多価カルボン酸類(a1-1)/脂肪族多価カルボン酸類=1/99~70/30であることが好ましく、特に好ましくは5/95~50/50、さらに好ましくは10/90~30/70である。
なお、ポリエステル系樹脂(A)中に分岐点を増やす目的で、三価以上の多価カルボン酸類を用いることもでき、なかでも、比較的ゲル化が発生しにくい点でトリメリット酸類を用いることが好ましい。
かかる三価以上の多価カルボン酸類の含有量としては、粘着剤の凝集力を高めることができる点で、多価カルボン酸類(a1)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%であり、かかる含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造時にゲル化が生じやすい傾向がある。
〔ポリオール(a2)〕
ポリエステル系樹脂(A)の構成原料として用いられるポリオール(a2)としては、二価アルコール、三価以上のポリオールがある。
上記二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;
1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール;
4,4’-チオジフェノール、4,4’-メチレンジフェノール、ビスフェノール、ビスフェノールフルオレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-及びp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール等の芳香族ジオール;
及びこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体が挙げられる。
さらに、ヒマシ油から誘導される脂肪酸エステルや、オレイン酸、エルカ酸等から誘導されるダイマージオール、グリセロールモノステアレート等が挙げられる。
また、上記三価以上のポリオールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,3,6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等が挙げられる。
上記のこれらポリオール(a2)は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記ポリオール(a2)のなかでも、分岐構造含有ポリオール(a2-1)を含有することが分岐点を増やし、結晶性を崩す点から好ましい。分岐構造含有ポリオール(a2-1)としては、例えば、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,3,5-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。なかでも、ネオペンチルグリコールが特に好ましい。
なお、分岐構造含有ポリオール(a2-1)としては、後述の水添ポリブタジエンポリオール(a3-2)を除くものである。
上記分岐構造含有ポリオール(a2-1)の含有量は、ポリオール(a2)全体に対して5~99モル%であることが好ましく、特には10~95モル%、さらには30~90モル%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると、樹脂が結晶化し充分な粘着性能が得られにくい傾向があり、多すぎると、ポリエステル系樹脂(A)の製造において反応時間が長くなる傾向がある。
また一方、上記ポリオール(a2)のなかでも、直鎖ポリオール(a2-2)を含有することが反応性の点から好ましく、さらには炭素数2~40の直鎖ポリオールがより好ましい。かかる直鎖ポリオール(a2-2)としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、等の脂肪族グリコールが挙げられる。なかでも、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。
直鎖ポリオール(a2-2)の含有量は、ポリオール(a2)全体に対して、1~100モル%であることが好ましく、さらには3~95モル%、特には5~90モル%、さらには10~80モル%、殊には15~60モル%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると、安定した樹脂形成が得られ難くなる傾向がある。
また、ポリエステル系樹脂(A)中に分岐点を増やす目的で三価以上のポリオールを用いることもでき、三価以上のポリオールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,3,6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等が挙げられる。
かかる三価以上のポリオールの含有量としては、ポリオール(a2)全体に対して、20モル%以下であることが好ましく、さらには0.1~10モル%であることが好ましく、特には0.5~5モル%が好ましい。かかる三価以上のポリオールの含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造が困難となる傾向がある。
多価カルボン酸類(a1)とポリオール(a2)の配合割合としては、多価カルボン酸類(a1)1当量あたり、ポリオール(a2)が1~3当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~2当量である。ポリオール(a2)の配合割合が少なすぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、多すぎると収率が低下する傾向がある。
〔水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)〕
本発明に用いられるポリエステル系樹脂(A)は、前述のように、水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)由来の構造単位を有することが好ましい。このようなポリエステル系樹脂(A)の構成原料としては、水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)を適宜配合することができるが、本発明の目的を達成する点から、多価カルボン酸類(a1)およびポリオール(a2)の少なくとも一方として、水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)を含有することが好ましい。
以下、多価カルボン酸類(a1)に含まれる水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)を水添ポリブタジエン構造含有多価カルボン酸類(a3-1)とし、ポリオール(a2)に含まれる水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)を水添ポリブタジエンポリオール(a3-2)と称する。
上記水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)の全共重合成分に対して、0.001~15モル%であることが好ましく、さらには0.005~10モル%、特には0.01~5モル%、殊には0.02~1モル%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると、ポリオレフィン被着体への接着性が低下する傾向があり、多すぎると、相溶性が低下する傾向がある。
上記多価カルボン酸類(a1)に含まれる水添ポリブタジエン構造含有多価カルボン酸類(a3-1)としては、例えば、1,2-ポリブタジエンジカルボン酸類、1,4-ポリブタジエンジカルボン酸類、1,4-ポリイソプレンジカルボン酸類等のポリブタジエン系多価カルボン酸類あるいはこれらのポリブタジエン系多価カルボン酸類の二重結合を水素またはハロゲン等で飽和化した飽和炭化水素系多価カルボン酸類等が挙げられる。さらには、ポリブタジエン系多価カルボン酸類にスチレン、エチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等のオレフィン化合物を共重合させた多価カルボン酸類やその水素化した多価カルボン酸類等も使用できる。なかでも特に好ましくは、飽和度の高い炭化水素系ポリブタジエン多価カルボン酸類であり、数平均分子量が300~30,000、特には500~10,000、さらには800~5,000のものが好ましく、またカルボキシ基の平均官能数が1.5~3であるものが好ましい。
上記水添ポリブタジエン構造含有多価カルボン酸類(a3-1)としては、水添ポリブタジエン構造中における1,2結合部位、および1,4結合部位において、1,2結合部位の割合が多い方がポリオレフィン基材への接着性に優れる点で好ましい。また、水添ポリブタジエン構造中に占める1,2結合部位が25~100%であることが好ましく、特には50~100%であることが好ましく、殊には75~100%であることが好ましい。
上記水添ポリブタジエン構造含有多価カルボン酸類(a3-1)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)の全共重合成分に対して、0.001~15モル%であることが好ましく、さらには0.005~10モル%、特には0.01~5モル%、殊には0.02~1モル%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると、ポリオレフィン被着体への接着性が低下する傾向があり、多すぎると、相溶性が低下する傾向がある。
また、ポリエステル系樹脂(A)の構成原料としてさらに好ましくは、ポリオール(a2)として、水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)を含有することであり、なかでも特に好ましくは、水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)が、ポリオール(a2)中の水添ポリブタジエンポリオール(a3-2)であることである。
上記水添ポリブタジエンポリオール(a3-2)としては、例えば、1,2-ポリブタジエンポリオール、1,4-ポリブタジエンポリオール、1,4-ポリイソプレンポリオール等のポリブタジエン系ポリオールあるいはこれらのポリブタジエン系ポリオールの二重結合を水素またはハロゲン等で飽和化した飽和炭化水素系ポリオール等が挙げられる。さらには、ポリブタジエン系ポリオールにスチレン、エチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等のオレフィン化合物を共重合させたポリオールやその水素化したポリオール等も使用できる。なかでも特に好ましくは、飽和度の高い炭化水素系ポリブタジエンポリオールであり、数平均分子量が300~30,000が好ましく、より好ましくは500~10,000、さらに好ましくは800~5,000であり、水酸基の平均官能数が1.5~3のものであることが好ましい。
水添ポリブタジエンポリオール(a3-2)としては、水添ポリブタジエン構造中における1,2結合部位、および1,4結合部位において、1,2結合部位の割合が多い方がポリオレフィン基材への接着性に優れる点で好ましい。また、水添ポリブタジエン構造中に占める1,2結合部位が25~100%であることが好ましく、特には50~100%であることが好ましく、殊には75~100%であることが好ましい。
上記水添ポリブタジエンポリオール(a3-2)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)の全共重合成分に対して、0.001~15モル%であることが好ましく、さらには0.005~10モル%、特には0.01~5モル%、殊には0.02~1モル%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると、ポリオレフィン被着体への接着性が低下する傾向があり、多すぎると、相溶性が低下する傾向がある。
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、上記多価カルボン酸類(a1)とポリオール(a2)とを適宜選び、これらを触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造される。
重縮合反応に際しては、まずエステル化反応が行われた後、重縮合反応が行われる。
かかるエステル化反応においては、触媒が用いられ、具体的には、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系触媒等の触媒や、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド等の触媒を挙げることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらのなかでも、触媒活性の高さと色相のバランスから、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネート、二酸化ゲルマニウム、酢酸亜鉛が好ましい。
該触媒の配合量は、全共重合成分に対して1~10,000ppmであることが好ましく、特に好ましくは10~5,000ppm、さらに好ましくは20~3,000ppmである。かかる配合量が少なすぎると、重合反応が充分に進行しにくい傾向があり、多すぎても反応時間短縮等の利点はなく副反応が起こりやすい傾向がある。
エステル化反応時の反応温度については、200~300℃が好ましく、特に好ましくは210~280℃、さらに好ましくは220~260℃である。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進みにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。また、反応時の圧力は通常、常圧下である。
上記エステル化反応が行われた後、重縮合反応が行われる。
重縮合反応の反応条件としては、上記のエステル化反応で用いるものと同様の触媒をさらに同程度の量配合し、反応温度を好ましくは220~280℃、特に好ましくは230~270℃として、反応系を徐々に減圧して最終的には5hPa以下で反応させることが好ましい。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進行しにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。
かくして本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)が得られる。上記ポリエステル系樹脂(A)は、多価カルボン酸類由来の構造単位およびポリオール由来の構造単位を有しており、多価カルボン酸類における芳香族構造含有化合物の含有量、および重量平均分子量が特定の範囲のものである。
上記ポリエステル系樹脂(A)は、基材[I]との密着性や、ポリオレフィン被着体に対する接着性の点から、多価カルボン酸類における芳香族構造含有化合物の含有量が80モル%以下である。好ましくは2~70モル%、特に好ましくは3~60モル%、さらに好ましくは5~40モル%である。多価カルボン酸類における芳香族構造含有化合物の含有量が上記範囲外であると、基材[I]との密着性が低下する。
上記ポリエステル系樹脂(A)は、さらに水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)由来の構造単位を含有することが好ましい。また、ポリエステル系樹脂(A)中の水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)由来の構造単位の含有量は、0.01~50重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~30重量%、特に好ましくは0.2~20重量%、さらに好ましくは0.3~10重量%である。水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)由来の構造単位の含有量が上記範囲内であると、より基材[I]との密着性に優れる傾向がある。
そして、ポリエステル系樹脂(A)中の、上記水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)由来の構造単位は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位およびポリオール(a2)由来の構造単位の少なくとも一方として含まれることがポリオレフィン被着体への接着性の点から好ましく、さらに好ましくはポリオール(a2)由来の構造単位として含まれることである。
さらに、前記水添ポリブタジエンポリオール(a3-2)由来の構造単位が、ポリオール(a2)由来の構造単位として含まれる場合は、水添ポリブタジエンポリオール(a3-2)由来の構造単位が、ポリオール(a2)由来の構造単位中に0.001~30モル%含有することが相溶性の点から好ましく、さらに好ましくは0.01~20モル%、特に好ましくは0.03~10モル%、殊に好ましくは0.04~5モル%、0.05~0.2モル%、0.1~1モル%である。
また、ポリエステル系樹脂(A)は、通常、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位およびポリオール(a2)由来の構造単位を有するが、前記芳香族多価カルボン酸類、特に非対称の芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造単位が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位として含まれる場合は、非対称の芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造単位が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位中に80モル%以下であることが好ましく、特に好ましくは2~70モル%、さらに好ましくは3~60モル%、殊に好ましくは5~40モル%である。
前記炭素数が奇数の脂肪族多価カルボン酸類(a1-2)由来の構造単位が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位として含まれる場合は、炭素数が奇数の脂肪族多価カルボン酸類(a1-2)由来の構造単位が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位中に5~100モル%含有することが好ましく、特に好ましくは10~100モル%、さらに好ましくは20~100モル%、殊に好ましくは30~100モル%である。
一方、前記分岐構造含有ポリオール(a2-1)由来の構造単位が、ポリオール(a2)由来の構造単位として含まれる場合は、分岐構造含有ポリオール(a2-1)由来の構造単位が、ポリオール(a2)由来の構造単位中に5~99モル%含有することが結晶性を崩す点で好ましく、特には10~95モル%、さらには30~90モル%であることが好ましい。
また、前記直鎖ポリオール(a2-2)由来の構造単位が、ポリオール(a2)由来の構造単位として含まれる場合は、直鎖ポリオール(a2-2)由来の構造単位が、ポリオール(a2)由来の構造単位中に3~95モル%含有することが安定した樹脂形成の点から好ましく、さらに好ましくは5~90モル%、特に好ましくは10~80モル%、殊に好ましくは15~60モル%である。
ここで、上記ポリエステル系樹脂(A)の各成分由来の構造単位割合(組成割合)は、例えば、NMRにより求めることができる。
また、上記ポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量は、粘着剤の凝集力の点から5,000~300,000である。好ましくは8,000~200,000であり、特に好ましくは10,000~150,000、さらに好ましくは20,000~100,000である。かかる重量平均分子量が小さすぎると粘着剤として充分な凝集力が得られず、耐熱性や機械的強度が低下しやすい。また、重量平均分子量が大きすぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造時にゲル化しやすくなり、樹脂が得られにくく、さらに基材への密着性が低下する。
なお、本発明における重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、「HLC-8320GPC」)に、カラム:TSKgel SuperMultipore HZ-M(排除限界分子量:2×106、理論段数:16,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:4μm)を2本にして直列にして用いることにより測定されるものである。数平均分子量も同様の方法を用いることができる。
また、ポリエステル系樹脂(A)中のエステル結合濃度は、通常1~15mmol/gであり、好ましくは1.5~14mmol/g、特に好ましくは2~13mmol/g、より好ましくは3~12mmol/g、さらに好ましくは4~11mmol/g、殊に好ましくは5~10.5mmol/g、好ましくは6~10mmol/g、最も好ましくは7~9.5mmol/gである。エステル結合濃度が低すぎると、貯蔵弾性率が低くなり凝集力が低下する傾向があり、エステル結合濃度が高すぎると、貯蔵弾性率が高くなり密着性が低下する傾向がある。
なお、上記ポリエステル系樹脂(A)のエステル結合濃度は、出来上がり樹脂の重量(g)に対する酸成分のモル数(mmol)として算出されるものである。
エステル結合濃度(mmol/g)=酸成分のモル数/出来上がり樹脂の重量
上記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、粘着物性の点から-80~20℃であることが好ましく、特に好ましくは-70~15℃、さらに好ましくは-60~10℃である。かかるガラス転移温度(Tg)が高すぎると柔軟性が失われ、初期粘着性が低下し、指圧程度の圧力で粘着力が発揮しにくくなり、作業性が低下する傾向があり、低すぎると凝集力が低下し、粘着テープが変形しやすくなってしまい外観を損ねる傾向がある。
ここで、上記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計DSC Q20を用いて測定される値である。
なお、測定温度範囲は-90℃~100℃で、温度上昇速度は、10℃/分である。
上記ポリエステル系樹脂(A)は結晶化しないことが保存安定性の点から好ましいが、結晶化する場合においても、ポリエステル系樹脂(A)の結晶化エネルギーができるだけ低いことが好ましく、通常35J/g以下、好ましくは、20J/g以下、特に好ましくは10J/g以下、殊に好ましくは5J/g以下である。
上記ポリスエテル系樹脂(A)の酸価は10mgKOH/g以下であることが好ましく、特には3mgKOH/g以下、さらには1mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が高すぎると、粘着剤層の一方の面に、金属等の層を貼り合わせた場合に腐食してしまう傾向がある。例えば、金属酸化物薄膜層となる構成とした際に、腐食が起こり、金属酸化物薄膜の導電性が低下する傾向がある。
ここで、上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価は、JIS K 0070に基づき中和滴定により求められるものである。
[加水分解抑制剤(B)]
本発明で用いるポリエステル系粘着剤組成物[II]は、上記ポリエステル系樹脂(A)と共に、加水分解抑制剤(B)を含有することが好ましい。かかる加水分解抑制剤(B)は、長期耐久性を担保させるために含有されるものである。
上記加水分解抑制剤(B)としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、上記ポリエステル系樹脂(A)のカルボン酸末端基と反応して結合する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基等の官能基を含有する化合物等が挙げられる。これらのなかでもカルボジイミド基含有化合物が、カルボキシ基末端基由来のプロトンの触媒活性を消失させる効果が高い点で好ましい。
上記カルボジイミド基含有化合物としては、通常、カルボジイミド基(-N=C=N-)を分子内に1個以上有する公知のポリカルボジイミドを用いればよいが、より高温高湿下での耐久性を上げる点でカルボジイミド基を分子内に2個以上含有する化合物、すなわち多価カルボジイミド系化合物であることが好ましく、特には3個以上、さらには5個以上、殊には7個以上含有する化合物であることが好ましい。なお、30個以上含有すると分子構造が大きくなりすぎるために、好ましくない傾向がある。また、上記カルボジイミド基含有化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成する高分子量ポリカルボジイミドを用いることも好ましい。
このような高分子量ポリカルボジイミドとしては、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させたものが挙げられる。
かかるジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上を併用することができる。このような高分子量ポリカルボジイミドは、合成してもよいし市販品を使用してもよい。
カルボジイミド基含有化合物の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)シリーズが挙げられ、それらのなかでも、カルボジライト(登録商標)V-01、V-02B、V-03、V-04K、V-04PF、V-05、V-07、V-09、V-09GBは有機溶剤との相溶性に優れる点で好ましい。
上記エポキシ基含有化合物としては、例えば、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物等が好ましい。
グリシジルエステル化合物の具体例としては、例えば、安息香酸グリシジルエステル、t-Bu-安息香酸グリシジルエステル、p-トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサチック酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
グリシジルエーテル化合物の具体例としては、例えば、フェニルグリシジルエ-テル、o-フェニルグリシジルエ-テル、1,4-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ブタン、1,6-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4-ビス(β,γ-エポキシプポキシ)ベンゼン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-エトキシエタン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-ベンジルオキシエタン、2,2-ビス-[р-(β,γ-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパンおよび2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパンや2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン等のビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテル等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
上記オキサゾリン基含有化合物としては、ビスオキサゾリン化合物等が好ましい。具体的には、例えば、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4’-ジエチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-プロピル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-シクロヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-o-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ヘキサメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-デカメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-9,9’-ジフェノキシエタンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-シクロヘキシレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ジフェニレンビス(2-オキサゾリン)等を例示することができ、これらの中では、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)が、ポリエステル系樹脂(A)との反応性の観点から最も好ましい。また、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
これら加水分解抑制剤(B)としては、揮発性が低い方が好ましく、そのために数平均分子量は高いものを用いる方が好ましく、通常、300~10,000、好ましくは1,000~5,000のものを用いる。
また、加水分解抑制剤(B)としては、耐加水分解性の観点から重量平均分子量が高いものを用いる方が好ましい。加水分解抑制剤(B)の重量平均分子量は、500以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましく、3,000以上であることがさらに好ましい。なお、重量平均分子量の上限は通常50,000、好ましくは10,000である。
加水分解抑制剤(B)の分子量が小さすぎると、耐加水分解性が低下する傾向がある。なお、分子量が大きすぎると、ポリエステル系樹脂(A)との相溶性が低下する傾向がある。
加水分解抑制剤(B)のなかでも、カルボジイミド基含有化合物を使用することが好ましく、その際の、カルボジイミド当量は、好ましくは、50~10,000、特には100~1,000、さらには150~500であることが好ましい。なお、カルボジイミド当量とは、カルボジイミド基1個あたりの化学式量を示す。
上記加水分解抑制剤(B)の含有量は、上記ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは0.2~3重量部である。かかる含有量が、多すぎるとポリエステル系樹脂(A)との相溶性不良により濁りが発生する傾向があり、少なすぎると充分な耐久性が得られにくい傾向がある。
また、上記加水分解抑制剤(B)の含有量は、上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価に応じて、含有量を最適化させることが好ましく、粘着剤組成物中のポリエステル系樹脂(A)の酸性官能基のモル数合計(a)に対する、粘着剤組成物中の加水分解抑制剤(B)の官能基のモル数合計(b)のモル比((b)/(a))が、0.5≦(b)/(a)であることが好ましく、特に好ましくは1≦(b)/(a)≦1,000、さらに好ましくは1.5≦(b)/(a)≦100である。
(a)に対する(b)のモル比が低すぎると、耐湿熱性能が低下する傾向がある。なお、(a)に対する(b)のモル比が高すぎると、ポリエステル系樹脂(A)との相溶性が低下したり、粘着力、凝集力、耐久性能が低下する傾向がある。
[ウレタン化触媒(C)]
本発明で用いるポリエステル系粘着剤組成物[II]は、上記ポリエステル系樹脂(A)を含有するものであり、好ましくは上記加水分解抑制剤(B)を含むものであるが、反応速度の点からウレタン化触媒(C)を含有することがより好ましい。
ウレタン化触媒(C)としては、例えば、有機金属系化合物、3級アミン化合物等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記有機金属系化合物としては、例えば、ジルコニウム系化合物、鉄系化合物、錫系化合物、チタン系化合物、鉛系化合物、コバルト系化合物、亜鉛系化合物等を挙げることができる。
ジルコニウム系化合物としては、例えば、ナフテン酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネート等が挙げられる。
鉄系化合物としては、例えば、鉄アセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸鉄等が挙げられる。
錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
チタン系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等が挙げられる。
鉛系化合物としては、例えば、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
コバルト系化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸コバルト、安息香酸コバルト等が挙げられる。
亜鉛系化合物としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛等が挙げられる。
また、上記3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-ウンデセン-7等が挙げられる。
これらウレタン化触媒(C)のなかでも、反応速度と粘着剤層のポットライフの点で、有機金属系化合物が好ましく、特にジルコニウム系化合物が好ましい。さらにウレタン化触媒(C)は触媒作用抑制剤としてアセチルアセトンを併用することが好ましい。アセチルアセトンを含むことで、低温における触媒作用が抑制され、ポットライフが長くなる点で好ましい。
[架橋剤(D)]
本発明で用いるポリエステル系粘着剤組成物[II]は、上記ポリエステル系樹脂(A)を含有するものであり、好ましくは加水分解抑制剤(B)を含むものであるが、通常は架橋剤(D)をさらに含有することが好ましく、架橋剤(D)を含有させることにより、ポリエステル系樹脂(A)を架橋剤(D)で架橋させ凝集力に優れたものとし、粘着剤としての性能を向上させることができる。
かかる架橋剤(D)としては、例えば、ポリイソシアネート系化合物、ポリエポキシ系化合物等、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基およびカルボキシ基の少なくとも一方と反応する官能基を有する化合物が挙げられる。これらのなかでも初期粘着性と機械的強度、耐熱性をバランスよく両立できる点から、特にポリイソシアネート系化合物を用いることが好ましい。
かかるポリイソシアネート系化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、等のポリイソシアネートが挙げられ、また、上記ポリイソシアネートと、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体や、これらポリイソシアネート系化合物のビュレット体、イソシアヌレート体、等が挙げられる。なお、上記ポリイソシアネート系化合物は、フェノール、ラクタム等でイソシアネート部分がブロックされたものでも使用することができる。これらの架橋剤(D)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
かかる架橋剤(D)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)の分子量と用途目的により適宜選択できるが、通常は、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基およびカルボキシ基の少なくとも一方の1当量に対して、架橋剤(D)に含まれる反応性基が、0.2~10当量となる割合で架橋剤(D)を含有することが好ましく、特に好ましくは0.5~5当量、さらに好ましくは0.5~3当量である。
かかる架橋剤(D)に含まれる反応性基の当量数が小さすぎると凝集力が低下する傾向があり、大きすぎると柔軟性が低下する傾向がある。
またポリエステル系樹脂(A)と架橋剤(D)との反応においては、これら(A)および(D)成分と反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
本発明で用いるポリステル系粘着剤組成物[II]は、上記の、ポリエステル系樹脂(A)、加水分解抑制剤(B)、ウレタン化触媒(C)、架橋剤(D)の他にも、本発明の効果を損なわない範囲において、ヒンダードフェノール類等の酸化防止剤(E)、軟化剤、紫外線吸収剤、安定剤、耐電防止剤、粘着付与剤等の添加剤やその他、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料等の粉状、粒子状等の添加剤を配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
また、本発明で用いるポリエステル系粘着剤は、上記ポリエステル系粘着剤組成物[II]からなるもの、即ち、ポリエステル系粘着剤組成物[II]が硬化されてなるものである。
<粘着テープ>
本発明の粘着テープは、前記基材[I]とポリエステル系粘着剤組成物[II]を用いて、例えば、つぎのようにして作製することができる。
かかる粘着テープの製造方法としては、公知一般の粘着テープの製造方法に従って製造することができ、例えば、基材[I]上に、上記ポリエステル系粘着剤組成物[II]を塗工、乾燥し、ポリエステル系粘着剤組成物[II]層の表面に離型シート(または離型フィルム)を貼合し、必要により養生することで基材[I]上に、ポリエステル系粘着剤からなる粘着剤層を有する本発明の粘着テープが得られる。
また、離型シート上に、上記ポリエステル系粘着剤組成物[II]を塗工、乾燥し、ポリエステル系粘着剤組成物[II]層の表面に基材[I]を貼合し、必要により養生することでも、本発明の粘着テープが得られる。
さらには、本発明の粘着テープは、基材[I]の両面にポリエステル系粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着テープとしてもよい。
上記離型シートとしては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド;シクロオレフィンポリマー等の合成樹脂からなるシート、アルミニウム、銅、鉄の金属箔、上質紙、グラシン紙等の紙、ガラス繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布等に離型処理したものを使用することができる。離型シートとしては、シリコーン系の離型シートを用いることが好ましい。
上記ポリエステル系粘着剤組成物[II]の塗工方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター等を用いればよい。
上記養生処理の条件としては、温度は通常室温(23℃)~70℃、時間は通常1~30日間であり、具体的には、例えば23℃で1~20日間、好ましくは23℃で3~14日間、40℃で1~10日間等の条件で行えばよい。
また、乾燥条件として、乾燥温度は60~140℃が好ましく、特に好ましくは80~120℃であり、乾燥時間は0.5~30分間が好ましく、特に好ましくは1~5分間である。
上記粘着テープの粘着剤層の厚みは、2~500μmであることが好ましく、特に好ましくは5~200μm、さらに好ましくは10~100μmである。かかる粘着剤層の厚みが薄すぎると、粘着力が低下する傾向があり、厚すぎると均一に塗工することが困難となるうえ、塗膜に気泡が入る等の不具合が発生しやすい傾向がある。なお、衝撃吸収性を考慮する際には、厚みを50μm以上とすることが好ましい。
なお、上記粘着剤層の厚みは、ミツトヨ社製「ID-C112B」を用いて、粘着テープ全体の厚みの測定値から、粘着剤層以外の構成部材の厚みの測定値を差し引くことにより求められる。
また、基材[I]の厚みを100とした場合の、粘着剤層の厚みは、通常5~100、好ましくは10~50である。上記比率が低すぎると、粘着力が低下する傾向があり、比率が高すぎると、粘着剤層を均一に塗工することが困難となるうえ、塗膜に気泡が入る等の不具合が発生しやすい傾向がある。
上記粘着テープの粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と粘着力の点から10重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは15~95重量%、さらに好ましくは20~90重量%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低下することにより耐久性が低下する傾向がある。なお、ゲル分率が高すぎると凝集力の上昇により粘着力が低下する傾向がある。
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材[I]に粘着剤層が形成されてなる粘着テープ(離型シートを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の粘着剤成分の重量に対する、浸漬後の金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材[I]の重量は差し引いておく。
さらに、かかる粘着テープは、必要に応じて、粘着剤層の外側に離型シートを設け保護されていてもよい。また、粘着剤層が基材[I]の片面に形成されている粘着テープでは、基材[I]の粘着剤層とは反対側の面に剥離処理を施すことにより、該剥離処理面を利用して粘着剤層を保護することも可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」とあるのは、重量基準を意味する。
粘着テープの作製に先立ち、基材[I]として下記のポリオレフィン系樹脂フォーム基材を準備した。なお、ポリオレフィン系樹脂フォーム基材の見かけ密度および厚みは、メーカーのカタログ値を用い、引張強度および伸び率は、前述の方法に従い測定した。
<ポリオレフィン系樹脂フォーム基材>
(ポリプロピレン系樹脂フォーム基材)
・I-1:ポリプロピレン系樹脂フォーム基材(見かけ密度180kg/m3、引張強度0.66MPa、伸び率295%、厚み1mm)
・I-2:ポリプロピレン系樹脂フォーム基材(見かけ密度270kg/m3、引張強度0.59MPa、伸び率268%、厚み1mm)
(ポリエチレン系樹脂フォーム基材)
・I-3:ポリエチレン系樹脂フォーム基材(見かけ密度90kg/m3、引張強度0.68MPa、伸び率177%、厚み0.75mm)
<ポリエステル系樹脂(A)の製造>
つぎに、ポリエステル系樹脂を準備した。
以下の製造例で記載するモル%とは、多価カルボン酸類(a1)の合計量を100モル%とした場合のモル比を示す。また、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度、重量平均分子量及びエステル結合濃度の測定に関しては、前述の方法に従って測定した。
〔ポリエステル系樹脂(A-1)の製造〕
加熱装置、温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(a1)としてイソフタル酸(IPA)66.3部(20モル%)およびセバシン酸(SebA)322.9部(80モル%)、ポリオール(a2)としてネオペンチルグリコール(NPG)207.9部(100モル%)、1,4-ブタンジオール(1,4BG)89.9部(50モル%)、およびトリメチロールプロパン(TMP)4.0部(1.5モル%)、水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)として水添ポリブタジエンポリオール(日本曹達社製、「GI-1000」)9.0部(0.3モル%)、触媒として酢酸亜鉛0.05部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。
その後、内温260℃まで上げ、触媒としてテトラブチルチタネート0.05部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-1)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A-1)のガラス転移温度は-46.8℃、出来上がり成分由来の構造単位比(以下、「出来上がり成分比」と略すことがある)は、多価カルボン酸類(a1)としてイソフタル酸/セバシン酸=20モル%/80モル%、ポリオール(a2)としてネオペンチルグリコール/1,4-ブタンジオール/トリメチロールプロパン/水添ポリブタジエンポリオール=64.5モル%/33.7モル%/1.5モル%/0.3モル%であった。
ポリエステル系樹脂(A-1)中の水添ポリブタジエン構造含有化合物(a3)由来の構造単位の含有量は、1.7重量%であり、重量平均分子量は73,000、エステル結合濃度は7.6mmol/gであった。
<ポリエステル系粘着剤組成物[II]の製造>
上記で得られたポリエステル系樹脂(A-1)を用いてポリエステル系粘着剤組成物[II]を製造した。
(ポリエステル系粘着剤組成物[II-1]の製造)
上記で得られたポリエステル系樹脂(A-1)をトルエンで固形分濃度50%に希釈し、このポリエステル系樹脂(A-1)溶液200部(固形分として100部)に対し、加水分解抑制剤(日清紡ケミカル社製、「カルボジライトV-09BG」)1部(固形分)、および架橋剤としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(東ソー社製、「コロネートL55E」)2部(固形分)、ウレタン化触媒としてアセチルアセトンで固形分濃度1%に希釈したジルコニウム系化合物(マツモトファインケミカル社製、「オルガチックスZC-150」)0.01部(固形分)配合し、撹拌、混合することにより、ポリエステル系粘着剤組成物[II-1]を得た。
また、粘着テープに一般的に用いられている粘着剤として、アクリル系粘着剤組成物[II’]を下記の方法に従い製造した。
<アクリル系樹脂の製造>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート91.9部、アクリル酸8部、ヒドロキシエチルメタクリレート0.1部及び酢酸エチル80部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5部を加え、酢酸エチル還流温度で7時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂溶液を製造した。
得られたアクリル系樹脂のガラス転移温度は-46℃、重量平均分子量は750,000であった。なお、上記ガラス転移温度は、Foxの式を用いて算出したものであり、上記重量平均分子量は、ポリエステル系樹脂と同様の方法で測定したものである。
(アクリル系粘着剤組成物[II’]の製造)
上記で得られたアクリル系樹脂溶液285部(固形分として100部)に対し、架橋剤としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(東ソー社製、「コロネートL55E」)1部(固形分)配合し、撹拌、混合することにより、アクリル系粘着剤組成物[II’]を得た。
<粘着テープの作製>
前記基材[I]と上記ポリエステル系粘着剤組成物[II]またはアクリル系粘着剤組成物[II’]を用いて、実施例1~3、および比較例1、2の粘着テープを作製した。
〔実施例1〕
ポリエステル系粘着剤組成物[II-1]を、厚み38μmのPET製離型フィルム(三井化学東セロ社製、「SP-PET-03-BU」)上にアプリケータを用いて塗布し、100℃で4分間乾燥し、粘着剤組成物層の厚みが50μmの離型フィルム付き粘着シートを得た。
次いで、得られた離型フィルム付き粘着シートの粘着剤組成物層表面をポリプロピレン系樹脂フォーム基材[I-1](見かけ密度180kg/m3、厚み1mm)上に転写塗工し40℃で4日間エージング処理を行い、片面離型フィルム付き粘着テープを得た。
〔実施例2〕
上記実施例1において、ポリプロピレン系樹脂フォーム基材[I-1]をポリプロピレン系樹脂フォーム基材[I-2](見かけ密度270kg/m3、厚み1mm)に変更した以外は、同様にして実施例2の粘着テープを得た。
〔実施例3〕
上記実施例1において、ポリプロピレン系樹脂フォーム基材[I-1]をポリエチレン系樹脂フォーム基材[I-3](見かけ密度90kg/m3、厚み0.75mm)に変更した以外は、同様にして実施例3の粘着テープを得た。
〔比較例1〕
上記実施例1において、ポリプロピレン系樹脂フォーム基材[I-1]をPETフィルム(東レ社製、ルミラーT60、厚み38μm)に変更した以外は、同様にして比較例1の粘着テープを得た。
〔比較例2〕
上記実施例1において、ポリエステル系粘着剤組成物[II-1]をアクリル系粘着剤組成物[II’]、ポリプロピレン系樹脂フォーム基材[I-1]をポリエチレン系樹脂フォーム基材 [I-3]に変更した以外は、同様にして比較例2の粘着テープを得た。
上記で得られた実施例1~3、および比較例1、2の粘着テープを用いて、ポリプロピレン被着体に対する剥離強度を測定した。
<ポリプロピレン被着体に対する剥離強度>
23℃、50%RHの環境下で、粘着テープを25mm×200mmの大きさに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側をポリプロピレン板に2kgローラーを往復させ加圧貼付し、同雰囲気下で90分間放置した後に、オートグラフ(島津製作所社製「オートグラフAGS-H 500N」)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。結果を下記表1に示す。
上記表1の結果より、実施例1~3の粘着テープは、ポリプロピレン被着体に対する剥離強度に優れるものであった。このことは、実施例1~3の粘着テープがポリオレフィン系樹脂フォーム基材とポリエステル系粘着剤層との密着力および、ポリエステル系粘着剤層とポリプロピレン被着体との接着性に優れることを意味する。
これに対して、PET基材を用いた比較例1は、実施例1~3と比較してポリプロピレン被着体に対する剥離強度に劣るものであった。また、アクリル系粘着剤を用いた比較例2は、ポリオレフィンフォーム基材から粘着剤層が剥離してしまい、更に基材や被着体に糊残りが生じる等、ポリオレフィン被着体に対する剥離強度を正確に測定することができず、ポリオレフィンフォーム基材への密着性の劣るものであった。このことから、ポリオレフィンフォーム基材とポリエステル系粘着剤とを用いた粘着テープの構成とすることにより接着性に優れることがわかる。