以下、本開示の実施形態における負荷装置について、図面を参照して説明する。なお、負荷装置は、電子負荷装置又は負荷試験装置と称される場合がある。
図1は、第1の実施形態における負荷装置の構成を例示する図である。図1に示す負荷装置50は、被試験装置41の負荷試験を行い、より具体的には、被試験装置41に出力させる電力(被試験装置41に付与する電力負荷)を急変させる負荷急変試験を行う。被試験装置41は、例えば、UPSや発電機等の電源装置である。図1は、被試験装置41が、三相交流の入力電力から三相交流の出力電力を生成する三相交流電源の場合を示している。
図1では、被試験装置41の出力側は、トランス52の入力側に接続され、トランス52の出力側は、フィルタ回路53を介してインバータ55に接続されている。負荷装置50は、フィルタ回路53のフィルタリアクトル54aに流れる電流を制御することで、被試験装置41の出力部から電力を吸い出し、吸い出した電力をインバータ55の直流部を介して交流電圧源46の入力側に回生する。この回生動作によって、負荷装置50が被試験装置41に電力負荷を付与している時の消費電力を低減できる。
整流器47は、系統48からの交流電力を直流電力に変換して直流リンク49に出力する交流直流変換装置である。なお、整流器47は、直流リンク49の直流電圧が一定になるように、系統48からの交流電力を直流電力に変換する機能を備える交流直流変換装置に置換されてもよい。
交流電圧源46は、入力側が直流リンク49に接続され出力側が被試験装置41の入力側に接続されている。交流電圧源46は、直流リンク49からの直流電力を交流電力に変換して被試験装置41の入力側に供給する直流交流変換装置である。
負荷装置50は、トランス52、フィルタ回路53、インバータ55、リンクコンデンサ51、第1の電流検出器56、電圧検出器57、第2の電流検出器58、制御装置59及び設定入力部90を備える。なお、負荷装置50の構成要素に、交流電圧源46が含まれてもよい。
トランス52は、被試験装置41の出力側に一次側が接続される変圧器であり、負荷装置50の入力部に設けられている。トランス52は、被試験装置41から出力される三相交流電圧を、インバータ55の入力に適した三相交流電圧に変換する。
フィルタ回路53は、トランス52の二次側とインバータ55の入力側との間に接続され、被試験装置41からトランス52を介して入力される交流電力のノイズ(高調波)を抑制する。図1の場合、フィルタ回路53は、複数の相(U相、V相及びW相)のそれぞれに設けられる複数のフィルタリアクトル54aと、複数の相(U相、V相及びW相)のそれぞれに設けられる複数のフィルタコンデンサ54bとにより形成されるLCフィルタである。なお、フィルタ回路53は、図1に示す形態に限られず、他の形態でもよい。
フィルタリアクトル54aは、フィルタコンデンサ54bとインバータ55の入力側との間に接続され、インバータ55の動作により発生する高調波を抑制するフィルタリアクトル(交流リアクトル)である。フィルタコンデンサ54bは、トランス52の二次側に接続され、トランス52を介して入力される交流電力の高調波を抑制する容量素子である。
インバータ55は、被試験装置41の出力側に入力側が接続される電力変換装置である。インバータ55は、被試験装置41からトランス52を介して供給される交流電力を、複数のスイッチング素子により直流電力に変換し、直流リンク49に供給する回生動作を行う。インバータ55から直流リンク49に供給される電力は、交流電圧源46を介して被試験装置41の入力側に回生されるので、負荷装置50が被試験装置41の負荷試験をしている時の消費電力を低減できる。
リンクコンデンサ51は、インバータ55の出力側に接続されており、直流リンク49の電圧を平滑化する。
第1の電流検出器56は、トランス52とフィルタコンデンサ54bとの間に流れる第1の入力電流(より具体的には、被試験装置41からトランス52を介して入力される電流)を検出する。図1の場合、第1の電流検出器56は、検出された第1の入力電流の大きさを表す値(第1の入力電流検出値Iacu,Iacv,Iacw)を出力する。Iacu,Iacv,Iacwは、それぞれ、U相ラインでの入力電流検出値、V相ラインでの入力電流検出値、W相ラインでの入力電流検出値を表す。第1の電流検出器56は、例えば、変流器(CT)である。
電圧検出器57は、トランス52とインバータ55との間の電圧(より具体的には、トランス52とフィルタリアクトル54aとの間の電圧)を検出する。図1の場合、電圧検出器57は、検出された電圧の大きさを表す値(電圧検出値Vu,Vv,Vw)を出力する。Vu,Vv,Vwは、それぞれ、U相ラインでの電圧検出値、V相ラインでの電圧検出値、W相ラインでの電圧検出値を表す。電圧検出器57は、例えば、変圧器(PT又はVT)である。
第2の電流検出器58は、フィルタリアクトル54aに流れる第2の入力電流(より具体的には、インバータ55に入力されるインバータ電流)を検出する。図1の場合、第2の電流検出器58は、フィルタコンデンサ54bとフィルタリアクトル54aとの間に流れる電流(インバータ電流)を検出し、検出されたインバータ電流の大きさを表す値(第2の入力電流検出値Istu,Istv,Istw)を出力する。Istu,Istv,Istwは、それぞれ、U相ラインでの入力電流検出値、V相ラインでの入力電流検出値、W相ラインでの入力電流検出値を表す。第2の電流検出器58は、例えば、変流器(CT)である。
制御装置59は、ゲートパルス信号Gpをインバータ55に対して出力することにより、インバータ55の電力変換動作及び回生動作を制御する。制御装置59がインバータ55を制御することにより、被試験装置41に付与する電力負荷を変化させる負荷試験を行うことが可能になるとともに、被試験装置41から出力される電力が交流電圧源46を介して被試験装置41の入力側に回生される。これにより、負荷試験の実施による電力消費量の増大が抑制される。
制御装置59は、CPU(Central Processing Unit)59aと記憶装置59bとを有する。制御装置59の各機能(例えば、後述の図3に示す制御機能)は、記憶装置59bに読み出し可能に記憶されるプログラムによってCPU59aが動作することにより実現される。
設定入力部90は、ユーザからの設定入力を受け付ける部位である。制御装置59は、ユーザから設定入力部90への設定入力に基づいて、負荷試験の条件及び試験パターンなどを設定又は変更する。設定入力部90は、例えば、操作パネル、タッチパネル、操作ボタン、操作ダイヤルなどである。
次に、制御装置59が備える制御機能について説明する。第1の実施形態における制御装置59が備える制御機能について説明する前に、一比較形態における制御装置が備える制御機能について説明する。
図2は、一比較形態における制御装置159が備える制御機能を例示する制御ブロック図である。制御装置159が備える制御機能として、電力制御系170、二相三相変換器164、電流制御系180及びゲートパルス生成回路165がある。
電力制御系170は、インバータ55への入力電力検出値を電力指令値に追従させる電力制御を行う。電力制御系170は、減算器171,172と、PI制御器173,174とを有する。減算器171は、インバータ55に入力される有効電力の検出値(入力電力検出値Pd_det)と、インバータ55に入力される有効電力の指令値(電力指令値Pd_ref)との偏差を算出する。PI制御器173は、当該偏差を零に近づける有効電流指令Id_refをPI制御により生成する。減算器172は、インバータ55に入力される無効電力の検出値(入力電力検出値Pq_det)と、インバータ55に入力される無効電力の指令値(電力指令値Pq_ref)との偏差を算出する。PI制御器174は、当該偏差を零に近づける無効電流指令Iq_refをPI制御により生成する。
なお、PI制御のPは、比例制御を表し、PI制御のIは、積分制御を表す。
二相三相変換器164は、回転座標系の二相の有効電流指令Id_ref及び無効電流指令Iq_refを、二相三相変換(固定座標変換、逆パーク変換)して、固定座標系の三相の電流指令値Iu_ref,Iv_ref,Iw_refを演算する。
電流制御系180は、インバータ55への入力電流検出値を電流指令値に追従させる電流制御を行う。電流制御系180は、減算器181,182,183と、P制御器184,185,186と、加算器187,188,189とを有する。減算器181は、インバータ55に入力されるU相の入力電流の検出値(入力電流検出値Istu)と、インバータ55に入力されるU相の入力電流の指令値(電流指令値Iu_ref)との偏差を算出する。P制御器184は、当該偏差を零に近づけるU相電圧指令VurをP制御により生成する。加算器187は、U相電圧指令VurとU相電圧検出値Vuとを加算することによりU相電圧指令Vurを補正し、U相補正電圧指令Vu*を生成する(Vu*=Vur+Vu)。減算器182は、インバータ55に入力されるV相の入力電流の検出値(入力電流検出値Istv)と、インバータ55に入力されるV相の入力電流の指令値(電流指令値Iv_ref)との偏差を算出する。P制御器185は、当該偏差を零に近づけるV相電圧指令VvrをP制御により生成する。加算器188は、V相電圧指令VvrとV相電圧検出値Vvとを加算することによりV相電圧指令Vvrを補正し、V相補正電圧指令Vv*を生成する(Vv*=Vvr+Vv)。減算器183は、インバータ55に入力されるW相の入力電流の検出値(入力電流検出値Istw)と、インバータ55に入力されるW相の入力電流の指令値(電流指令値Iw_ref)との偏差を算出する。P制御器186は、当該偏差を零に近づけるW相電圧指令VwrをP制御により生成する。加算器189は、W相電圧指令VwrとW相電圧検出値Vwとを加算することによりW相電圧指令Vwrを補正し、W相補正電圧指令Vw*を生成する(Vw*=Vwr+Vw)。
なお、P制御のPは、入力電流検出値と電流指令値との偏差にゲインKを乗算して電圧指令を生成する比例制御を表す。
ゲートパルス生成回路165は、三相の補正電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に基づいて、パルス幅変調されたゲートパルス信号Gpをインバータ55に出力する。
一方、図3は、第1の実施形態における負荷装置50の制御装置59が備える制御機能を例示する制御ブロック図である。制御装置59が備える主な制御機能として、電力制御系70、二相三相変換器64、電流制御系80及びゲートパルス生成回路65がある。また、制御装置59は、ストレージ60を備える。なお、図2に示す構成と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
電力制御系70は、インバータ55への入力電力検出値を電力指令値に追従させる電力制御を行う。電力制御系70は、減算器71,72と、PI制御器73,74とを有する。減算器71,72及びPI制御器73,74は、それぞれ、減算器171,172及びPI制御器173,174と同機能である。
なお、制御装置59は、上述の入力電流検出値Iacu,Iacv,Iacwと電圧検出値Vu,Vv,Vwとを用いて、有効電力の検出値(入力電力検出値Pd_det)及び無効電力の検出値(入力電力検出値Pq_det)を公知の方法で算出(検出)する。
ストレージ60は、有効電流指令Id_ref及び無効電流指令Iq_refを保存する記憶装置である。ストレージ60は、上述の記憶装置59bでもよいし、記憶装置59bとは異なる記憶装置でもよい。ストレージ60に保存される有効電流指令Id_ref及び無効電流指令Iq_refは、第1の電流指令の一例である。
電流制御系80は、インバータ55への入力電流検出値を電流指令値に追従させる電流制御を行う。電流制御系80は、減算器81,82,83と、P制御器84,85,86と、加算器87,88,89とを有する。二相三相変換器64、減算器81,82,83、P制御器84,85,86、加算器87,88,89及びゲートパルス生成回路65は、それぞれ、二相三相変換器164、減算器181,182,183、P制御器184,185,186、加算器187,188,189及びゲートパルス生成回路165と同機能である。
ここで、負荷装置50の動作モードには、少なくとも、第1の動作モードと第2の動作モードとがある。
第1の動作モードでは、制御装置59は、入力電力検出値Pd_detを電力指令値Pd_refに追従させ且つ入力電力検出値Pq_detを電力指令値Pq_refに追従させる電力制御を行う。制御装置59は、この電力制御を第1の動作モードで行うことによって、入力電力検出値Pd_detを電力指令値Pd_refに追従させる有効電流指令Id_ref、及び、入力電力検出値Pq_detを電力指令値Pq_refに追従させる無効電流指令Iq_refを生成する。電力制御によって第1の動作モードで生成される有効電流指令Id_ref及び無効電流指令Iq_refは、第2の電流指令の一例である。また、第1の動作モードでは、制御装置59は、入力電流検出値Istu,Istv,Istwの各々を、電力制御によって第1の動作モードで生成される電流指令Id_ref,Iq_refに基づく電流指令値Iu_ref,Iv_ref,Iw_refに追従させる電流制御を行う。制御装置59は、この電流制御を第1の動作モードで行うことにより、入力電流検出値Istu,Istv,Istwの各々が、第1の動作モードで生成される電流指令値Iu_ref,Iv_ref,Iw_refに追従するようにインバータ55を動作させる。
一方、第2の動作モードでは、制御装置59は、第1の動作モードで行われる上述の電力制御を行わない。制御装置59は、第2の動作モードでは、入力電流検出値Istu,Istv,Istwの各々を、ストレージ60に保存された電流指令Id_ref,Iq_refに基づく電流指令値Iu_ref,Iv_ref,Iw_refに追従させる電流制御を行う。制御装置59は、この電流制御を第2の動作モードで行うことにより、入力電流検出値Istu,Istv,Istwの各々が、ストレージ60を用いて生成される電流指令値Iu_ref,Iv_ref,Iw_refに追従するようにインバータ55を動作させる。例えば、制御装置59は、第2の動作モードでは、ストレージ60に保存された回転座標系の電流指令Id_ref,Iq_refを二相三相変換器64により二相三相変換して、固定座標系の電流指令値Iu_ref,Iv_ref,Iw_refを演算する。
したがって、図2に示す一比較形態では、負荷急変試験を実施するために、電力制御の応答性が速くなるように電力制御系170のPI制御のゲインを上げると、図5に示すように、被試験装置41に付与する電力負荷がオーバーシュートするおそれがある。また、図2に示す制御系では、電力制御の後に電流制御が行われるため、電力制御の応答速度を上げるためには、電流制御の応答速度を向上させることが求められる。しかしながら、電力制御の応答速度を上げるために電流制御の応答速度を上げると、電流制御が電力制御の応答を邪魔することにより、制御系全体が不安定になるおそれがある。仮に電流制御の応答速度を向上できた場合でも、電力検出を安定させるフィルタの存在により、応答速度の向上には限界がある。
これに対し、図3に示す第1の実施形態では、このようなオーバーシュートの発生が抑制される。つまり、第2の動作モードでは、インバータ55への入力電力検出値を電力指令値に追従させる電力制御ではなく、インバータ55への入力電流検出値をストレージ60に保存された電流指令に基づく電流指令値に追従させる電流制御が行われる。第2の動作モードでは電力制御が行われないので、被試験装置41に付与する電力負荷を急変させる制御を第2の動作モードで実行しても、電力制御(例えば、PI制御の積分器)によるオーバーシュートは図6に示すように発生しない。また、第2の動作モードでは電力制御が行われないので、被試験装置41に付与する電力負荷を急変させる制御を第2の動作モードで実行しても、電流制御が電力制御の応答を邪魔することもない。したがって、被試験装置41に付与する電力負荷の制御の安定性を確保できる。よって、被試験装置41に付与する電力負荷を急変させる制御の不安定化を抑制することが可能となる。また、ストレージ60に保存された電流指令に基づいて電流制御が行われることにより、電流制御用の電流指令を電力制御により逐一演算しなくてもよくなるので、電力負荷を急変させる制御の応答性が向上する。
また、制御装置59は、第1の動作モード及び第2の動作モードにおいて、インバータ55の出力電力が被試験装置41の入力側に回生されるようにインバータ55を動作させることで、両動作モードでの省電力化が可能となる。
ここで、図3において、制御装置59は、電力制御系70によって実際に生成された有効電流指令Id_ref及び無効電流指令Iq_refを、第2の動作モードで使用するための第1の電流指令としてストレージ60に保存することが好ましい。これにより、ストレージ60に保存すべき電流指令を、負荷装置50内の電力制御系70によって予め生成できるので、負荷装置50外で生成する場合に比べて、ストレージ60に保存すべき電流指令の生成が容易になる。
また、制御装置59は、入力電力検出値Pd_detが電力指令値Pd_refに図4のように収束しているときの有効電流指令Id_refを、第2の動作モードで使用するための第1の電流指令としてストレージ60に保存することが好ましい。同様に、制御装置59は、入力電力検出値Pq_detが電力指令値Pq_refに図4のように収束しているときの無効電流指令Iq_refを、第2の動作モードで使用するための第1の電流指令としてストレージ60に保存することが好ましい。このように、電力制御による結果が保存されるので、第2の動作モードにおいて、電力制御が行われなくても、その保存された電流指令に基づき電流制御が行われることで、インバータ55への入力電力を電力指令値に速やかに収束させることができる。
また、制御装置59が備える制御機能として、例えば、制御部66及び制御スイッチ63がある。制御部66は、負荷急変試験を行う場合、制御スイッチ63を切り替えることによって、ストレージ60から電流指令を読み出し可能にする。
また、例えば、制御部66は、ユーザから設定入力部90への設定入力(例えば、動作モードを設定するための信号)に基づいて、制御スイッチ63を切り替えることによって、第1の動作モードから第2の動作モードに切り替える。このように、ユーザは設定入力部90を操作することによって、負荷装置50の動作モードを容易に切り替えできる。
また、例えば、制御部66は、第2の動作モードにおいて、電力制御系70におけるPI制御器73,74のPI制御を停止することが好ましい。PI制御の停止によって、PI制御の積分動作が停止するので、第2の動作モードから第1の動作モードへの復帰時に、制御系が不安定になることを防止できる。
また、例えば、制御装置59は、第2の動作モードにおいて、ストレージ60に保存される電流指令に基づく電流指令値Iu_ref,Iv_ref,Iw_refの変化時間を変更する制御機能を備えてもよい。電流指令値Iu_ref,Iv_ref,Iw_refの変化時間の変更により、電力負荷の変化速度を変化させることができるので、任意の変化速度で負荷変動を実施することが可能となる。電流指令値Iu_ref,Iv_ref,Iw_refの変化時間を変更する制御機能として、例えば、ストレージ60から読み出される電流指令に基づく電流指令値が単位時間当たりに変化する量(傾きΔI)を制限する傾きリミッタ61,62がある。
例えば、ストレージ60は、第1の指令(指令1)と第2の指令(指令2)とを、第2の動作モードで使用するための第1の電流指令として保存する。制御装置59は、第2の動作モードにおいて、ストレージ60に保存された第1の電流指令に基づいて生成された電流指令値を、指令1に基づく値から指令2に基づく値に変化させる。この場合、制御装置59は、第2の動作モードにおいて、ストレージ60に保存された電流指令に基づいて生成される電流指令値が、指令1に基づく値から指令2に基づく値に変化するまでの時間を傾きリミッタ61,62により変更する。これにより、ストレージ60に保存された電流指令に基づいて生成される電流指令値Iu_ref,Iv_ref,Iw_refの変化時間の変更が可能となる。
図7は、電力制御で使用される入力電力検出値Pd_det,Pq_detを検出(算出)する電力検出機能を例示する制御ブロック図である。制御装置59が備える電力検出機能として、三相二相変換器91、回転座標変換器92、乗算器93,94、全波整流回路95及びローパスフィルタ(LPF96)がある。
三相二相変換器91は、三相の入力電流検出値Iacu,Iacv,Iacwを二相の入力電流検出値Iα,Iβに変換(クラーク変換)する。回転座標変換器92は、電圧検出値Vu,Vv,Vwの位相を用いて、固定座標系の二相の入力電流検出値Iα,Iβを、回転座標系の二相の入力電流検出値Id,Iqに座標変換(パーク変換)する。全波整流回路95は、三相交流の電圧検出値Vu,Vv,Vwを全波整流して、全波整流波形後の整流波信号を生成する。LPF96は、この整流波信号にローパスのフィルタ処理を施すことによって、交流電圧最大値Vpeakを算出する。有効電力の入力電力検出値Pd_detは、入力電流検出値Idと交流電圧最大値Vpeakとが乗算器93により乗算されることで算出される(Pd_det=Id×Vpeak)。無効電力の入力電力検出値Pq_detは、入力電流検出値Iqと交流電圧最大値Vpeakとが乗算器94により乗算されることで算出される(Pq_det=Iq×Vpeak)。
図8は、負荷急変試験の試験パターンと有効電流指令とを例示する図である。ストレージ60の第1のメモリ領域#1には、有効電力の入力電力検出値Pd_detが電力値Wt1に収束しているときの第1の指令(指令1)が保存されている。一方、ストレージ60の第2のメモリ領域#2には、有効電力の入力電力検出値Pd_detが電力値Wt2に収束しているときの第2の指令(指令2)が保存されている。ストレージ60には、無効電流指令も、同様に保存されている。
制御装置59は、第2の動作モードにおいて、ストレージ60に保存された電流指令に基づいて生成された電流指令値を、指令1に基づく値から指令2に基づく値に変化させる。これにより、インバータ55に入力される有効電力の電力値がWt1からWt2に変化する。また、制御装置59は、ストレージ60に保存された電流指令に基づいて生成された電流指令値が、指令1に基づく値から指令2に基づく値に変化するまでの時間を傾きリミッタ61,62により変化させる。これにより、ストレージ60に保存された電流指令に基づいて生成される電流指令値Iu_ref,Iv_ref,Iw_refの変化時間が変更されるので、Wt1からWt2への上昇時間T1が変化する。下降時間T2も同様に変化させることが可能である。
図9は、設定入力部90を例示する図である。例えば、ユーザは設定入力部90を操作して所望の設定値を入力することにより、電力値Wt1,Wt2、上昇時間T1、下降時間T2及び保持時間T3を当該設定値に設定でき、負荷装置50が行う所望の試験パターンを制御装置59に生成させる。制御装置59は、設定入力部90に入力された電力値Wt1,Wt2に基づいて、電力指令値Pd_ref,Pq_refを演算する。また、制御装置59は、設定入力部90の実行ボタン97が押されることにより、第1の動作モードから第2の動作モードに切り替え、ストレージ60に保存された電流指令に基づいて、負荷急変試験を開始する。
図10は、第2の実施形態における負荷装置の構成を例示する図である。なお、上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。図10に示す負荷装置150は、電源装置の一例である発電機1の負荷試験を行い、より具体的には、発電機1に出力させる電力(発電機1に付与する電力負荷)を急変させる負荷急変試験を行う。
発電機1から出力される出力電圧は、後述するコンバータ装置5に適した電圧に変換する変圧器2に供給されて電圧変換される。変圧器2の出力は、高調波電流を抑制するフィルタ回路3を介してコンバータ装置5に供給される。フィルタ回路3は、例えば、交流リアクトル4a(ACL)とコンデンサ4bとにより形成されるLCフィルタである。コンバータ装置5は、複数のスイッチング素子を有する電力変換装置である。
コンバータ装置5は、入力される交流電力を、力率制御を行いながら直流電力に変換して出力する。コンバータ装置5の直流出力は、複数のスイッチング素子を有する半導体電力変換装置で構成されるチョッパ回路6に供給される。
チョッパ回路6は、コンバータ装置5から出力される直流電圧を任意のデューティ比で電圧変換することで、出力電圧を調整して抵抗器7に出力する。チョッパ回路6からの電圧は、抵抗器7に印加されて、電力が消費する。
ここで、コンバータ装置5は、電界効果トランジスタや絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等のパワー半導体素子をオン・オフ制御することで交流電力を直流電力に変換する。このとき、コンバータ装置5に流入する有効電力と無効電力を制御することで、発電機出力の力率を制御する。
コンバータ装置5の有効電力及び無効電力の制御は、制御装置の一例である力率制御回路11によって行われる。力率制御回路11には、有効電力設定値Psと力率設定値cosθとが入力される。力率制御回路11は、有効電力設定値Psと力率設定値cosθとに基づいて無効電力設定演算回路12で下記の式の演算を行うことにより、無効電力設定値Qsを演算する。有効電力設定値Ps及び無効電力設定値Qsは、電力指令値の一例である。
Qs=Ps×(√(1-cos2θ))/cosθ
また、交流リアクトル4aとコンバータ装置5との間の電流及び電圧が、例えば変流器(CT)で構成される電流検出器13及び変圧器(PT又はVT)で構成される電圧検出器14で検出される。電流検出器13及び電圧検出器14で検出された電流検出値及び電圧検出値は、それぞれ、有効電力検出回路15及び無効電力検出回路16に供給され、有効電力検出値Pd及び無効電力検出値Qdが検出される。
そして、有効電力設定値Psは、有効電力検出値Pdが供給された減算器17に供給され、有効電力設定値Psから有効電力検出値Pdが減算されて有効電力偏差ΔP(=Ps-Pd)が算出される。同様に、無効電力設定値Qsは、無効電力検出値Qdが供給された減算器18に供給され、無効電力設定値Qsから無効電力検出値Qdが減算されて無効電力偏差ΔQ(=Qs-Qd)が算出される。
そして、有効電力偏差ΔPは、有効電力調節器19(APR)に供給され、無効電力偏差ΔQは、無効電力調節器20(AQR)に供給される。有効電力調節器19は、有効電力検出値Pdが有効電力設定値Psに追従するようにq軸電流指令値Iq*を生成する。無効電力調節器20は、無効電力検出値Qdが無効電力設定値Qsに追従するようにd軸電流指令値Id*を生成する。
一方、電流検出器13で検出された電流検出値は、電流検出回路21に入力される。電流検出回路21は、電流検出器13から入力される電流検出値に基づいて、回転座標系であるdq座標系のd軸電流検出値Idist及びq軸電流検出値Iqistを算出する。
そして、有効電力調節器19から出力されるq軸電流指令値Iq*は、q軸電流検出値Iqistが供給された減算器22に供給され、q軸電流指令値Iq*からq軸電流検出値Iqistが減算されてq軸電流偏差ΔIqが算出される。同様に、無効電力調節器20から出力されるd軸電流指令値Id*は、d軸電流検出値Idistが入力された減算器23に供給されて、d軸電流指令値Id*からd軸電流検出値Idistが減算されてd軸電流偏差ΔIdが算出される。
そして、q軸電流偏差ΔIqは、電流調節器24(ACR)に供給される。電流調節器24は、電流検出値Iqistを電流指令値Iq*に追従させるq軸電流指令Iq**を生成する。d軸電流偏差ΔIdは、電流調節器25(ACR)に供給される。電流調節器25は、電流検出値Idistを電流指令値Id*に追従させるd軸電流指令Id**を生成する。q軸電流指令Iq**及びd軸電流指令Id**は、ゲートパルス生成回路26に入力される。ゲートパルス生成回路26は、q軸電流指令Iq**及びd軸電流指令Id**に基づいて、パルス幅変調を行うことにより、パルス成形されたゲートパルス信号Gpを生成し、このゲートパルス信号Gpをコンバータ装置5に出力する。これにより、コンバータ装置5を構成するパワー半導体素子は、力率を制御しながら交流電力を直流電力に変換するようにスイッチングされる。
また、チョッパ回路6には、有効電力設定値Psが入力された電力制御回路30が接続されている。電力制御回路30は、有効電力設定値Psに応じたデューティ比のゲートパルス信号Gcをチョッパ回路6に出力する。これにより、チョッパ回路6を構成するパワー半導体素子から、電力制御された直流電力が抵抗器7に出力される。つまり、チョッパ回路6から出力される電力は、抵抗器7で消費する。
図11は、図10に示す第2の実施形態における力率制御回路11が備える制御機能35を詳細に示す制御ブロック図である。力率制御回路11も、上述の実施形態と同様に、ストレージ60を備える。なお、上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図11に示すストレージ60は、q軸電流指令Iq*及びd軸電流指令Id*を保存する記憶装置である。ストレージ60に保存されるq軸電流指令Iq*及びd軸電流指令Id*は、第1の電流指令の一例である。
第1の動作モードでは、力率制御回路11は、有効電力検出値Pdを有効電力設定値Psに追従させ且つ無効電力検出値Qdを無効電力設定値Qsに追従させる電力制御を行う。制御装置59は、この電力制御を第1の動作モードで行うことによって、有効電力検出値Pdを有効電力設定値Psに追従させるq軸電流指令Iq*、及び、無効電力検出値Qdを無効電力設定値Qsに追従させるd軸電流指令Id*を生成する。電力制御によって第1の動作モードで生成されるq軸電流指令Iq*及びd軸電流指令Id*は、第2の電流指令の一例である。また、第1の動作モードでは、力率制御回路11は、電流検出値Iqist,Idistの各々を、電力制御によって第1の動作モードで生成される電流指令Iq*,Id*に基づく電流指令値に追従させる電流制御を行う。力率制御回路11は、この電流制御を第1の動作モードで行うことにより、電流検出値Iqist,Idistの各々が、第1の動作モードで生成される電流指令Iq*,Id*に基づく電流指令値に追従するようにコンバータ装置5を動作させる。
一方、第2の動作モードでは、力率制御回路11は、第1の動作モードで行われる上述の電力制御を行わない。力率制御回路11は、第2の動作モードでは、電流検出値Iqist,Idistの各々を、ストレージ60に保存された電流指令Iq*,Id*に基づく電流指令値に追従させる電流制御を行う。力率制御回路11は、この電流制御を第2の動作モードで行うことにより、電流検出値Iqist,Idistの各々が、ストレージ60を用いて生成される電流指令値に追従するようにコンバータ装置5を動作させる。
したがって、第2の実施形態では、発電機1に付与する電力負荷のオーバーシュートの発生が抑制される。つまり、第2の動作モードでは、コンバータ装置5への入力電力検出値を電力指令値に追従させる電力制御ではなく、コンバータ装置5への入力電流検出値をストレージ60に保存された電流指令に基づく電流指令値に追従させる電流制御が行われる。第2の動作モードでは電力制御が行われないので、発電機1に付与する電力負荷を急変させる制御を第2の動作モードで実行しても、電力制御(例えば、PI制御の積分器)によるオーバーシュートは図6に示すように発生しない。また、第2の動作モードでは電力制御が行われないので、発電機1に付与する電力負荷を急変させる制御を第2の動作モードで実行しても、電流制御が電力制御の応答を邪魔することもない。したがって、発電機1に付与する電力負荷の制御の安定性を確保できる。よって、発電機1に付与する電力負荷を急変させる制御の不安定化を抑制することが可能となる。また、ストレージ60に保存された電流指令に基づいて電流制御が行われることにより、電流制御用の電流指令を電力制御により逐一演算しなくてもよくなるので、電力負荷を急変させる制御の応答性が向上する。
以上、負荷装置を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
例えば、負荷装置が負荷試験を行う試験対象は、交流電源装置に限られず、直流電源装置でもよい。