JP7286225B2 - 光導波路デバイスの製造方法 - Google Patents

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本発明は、高調波発生素子などの光導波路デバイスの製造方法に関するものである。
強誘電体非線型光学材料に周期状の分極反転構造を形成する手法としては、いわゆる電圧印加法が知られている。この方法では、強誘電性結晶基板の一方の主面に櫛形電極を形成し、他方の主面に一様電極を形成し、両者の間にパルス電圧を印加する。
また、強誘電性結晶基板に周期分極反転構造を形成した後、強誘電性結晶基板の表面にレーザーアブレーションや研削加工によって少なくとも一対のリッジ溝を形成し、リッジ溝の間にリッジ型光導波路を設けることが知られている(特許文献1)。こうした高調波発生素子を製造するには、光導波路基板内に周期分極反転構造を形成し、次いで光導波路基板の主面に光導波路および実装用電極を設ける。
特許5695590
ところが、本発明者が実際に従来法によって高調波発生素子を作製してみると、以下の問題が生ずることがわかった。
すなわち、光導波路基板内に周期分極反転構造を形成した後、光導波路基板の主面に光導波路を形成し,次いで光導波路の両側に実装用電極を設けてみた。
ところが、実装用電極を設けた後に光導波路の光伝搬性能に変化が見られることがあった。このため、例えば二次高調波発生素子の場合には、実装用電極を設ける前の位相整合波長と実装用電極を設けた後の位相整合波長との間で0.5nmの変化が観察された。
本発明の課題は、光導波路基板、光導波路基板の主面に設けられた光導波路および実装用電極を備える光導波路デバイスを製造するのに際して、容易な工程で実装用電極の形成前後における光導波路の光伝搬特性の変化を抑制することである。
本発明は、光導波路基板、
この光導波路基板の主面に設けられた光導波路、および
前記光導波路基板の前記主面上に設けられた実装用電極
を備える光導波路デバイスを製造する方法であって、
前記光導波路基板の前記主面上にバッファ層を形成する工程、
次いで前記光導波路基板のうち電極形成領域において前記バッファ層を除去して前記主面を露出させ、かつ前記光導波路上の前記バッファ層を残留させる工程、
次いで前記光導波路基板の電極形成領域の主面上および前記光導波路上の前記バッファ層上に金属層を設ける工程
次いで少なくとも電極形成領域において前記金属層上にレジストを形成する工程、
次いで前記光導波路上の前記バッファ層および前記金属層を除去することで前記実装用電極を形成する工程、および
次いで前記電極形成領域において前記レジストを除去することによって、前記実装用電極を露出させる工程
を有することを特徴とする。
本発明者は、光導波路基板、光導波路基板の主面に設けられた光導波路および実装用電極を備える光導波路デバイスを製造するのに際して、実装用電極の形成前後における光導波路の光伝搬特性が変化する原因を検討した。この場合、従来法では、光導波路基板に光導波路を形成した後、光導波路基板の主面上に金属層を形成し、次いで金属層のうち光導波路を被覆する部分を除去し、電極形成領域上の金属層を残留させることで、電極形成領域に実装用電極を設けていた。しかし、光導波路上に金属層を形成した時点で、微量の金属材料が光導波路内に内拡散し、金属酸化物に変化し、光導波路の特性、光導波路の屈折率を僅かに変化させることが判明した。
本発明者は、こうした発見にもとづき、実装用電極の形成プロセスを変更してみた。すなわち、光導波路基板の主面上にまずバッファ層を設け、バッファ層によって光導波路を被覆するとともに、電極形成領域では主面を露出させた。次いで、電極形成領域上およびバッファ層上に金属層を形成し、電極形成領域上の金属層をレジストで保護した。次いで、光導波路上の金属層およびバッファ層を除去し、実装用電極を形成した後、実装用電極上のレジストを除去することで、光導波路および実装用電極を露出させた。
この結果、光導波路基板がバッファ層によって被覆されているので、光導波路が金属層と直接接触することがない。これによって、金属層を構成する金属が光導波路に内拡散して光導波路の特性を変化させることがなく、ゆえに実装用電極の形成前後において光導波路の光伝搬特性が変化することを抑制できる。
光導波路デバイス1を模式的に示す斜視図である。 光導波路デバイス1と実装基板7との結合体を示す。 (a)は、光導波路基板3にリッジ型光導波路10を形成した状態を示し、(b)は、光導波路基板3の主面にバッファ層11を形成した状態を示し、(c)は、電極形成領域Eにおいてバッファ層11を除去した状態を示す。 (a)は、電極形成領域上およびバッファ層上に金属層12を設けた状態を示し、(b)は、電極形成領域において金属層12上にレジスト13を設けた状態を示す。 (a)は、光導波路10上の金属層12およびバッファ層11を除去した状態を示し、(b)は、電極形成領域において実装用電極6A、6Bを露出させた状態を示す。 比較例において、金属層から光導波路基板の主面近傍への拡散を示すグラフである。
以下、図面を適宜参照しつつ、本発明を更に詳細に説明する。
図1は光導波路デバイス1を模式的に示す斜視図である。
光導波路基板3の主面3a側にはリッジ型光導波路10が形成されている。光導波路10は、一対の溝5A、5Bと、これら溝によって形成されたリッジ部4からなる。また、光導波路10の両側にはそれぞれ実装用電極6A、6Bが設けられている。光導波路基板3の他方の主面は別体の支持基板2に対して接合され、一体化されている。なお、Eは電極形成領域であり、Wは光導波路形成領域である。
図2は、光導波路デバイス1と実装基板7との接合体を模式的に示す図である。
実装基板7の表面には実装用の金属パターン8が設けられている。金属パターン8は、光導波路デバイス1の実装用電極6A、6Bに対して、接合体9を通して接合される。本例では、光導波路の直下において実装基板7に空隙7aが形成されている。これによって、光導波路のリッジ部からの漏れ光が実装基板7に染み出すことが少なくなるので、実装後の素子で安定した特性が得られる。本例では、実装基板7の空隙7aを形成したものを示したが、接合体9を厚み1um以上として実装できる場合は、空隙7aが無い状態でも、漏れ光の実装基板への染み出しが少なく、安定した特性が得られる。
以下、本発明の製法について順次述べる。
図3(a)に示すように,光導波路基板3の主面3a側には光導波路10が形成されており、光導波路基板3の他方の主面3bは支持基板2に接合されている。なお、支持基板2は必須ではない。本例では、光導波路10がリッジ型光導波路であり、一対の溝5A、5Bとリッジ部4を有する。
次いで、図3(b)に示すように、光導波路基板3の主面3a上にバッファ層11を形成する。これによって、光導波路形成領域Wおよび電極形成領域Eの全体をバッファ層11によって被覆する。
次いで、図3(c)に示すように、光導波路基板3のうち電極形成領域Eにおいてバッファ層11を除去して光導波路基板3の主面3aを露出させる。これとともに、光導波路10上のバッファ層11を残留させる。なお、本例では、電極形成領域Eと光導波路形成領域Wとの間隙Sにおいてもバッファ層11を残留させた。
次いで、図4(a)に示すように、光導波路基板3の電極形成領域Eの主面上および光導波路10上のバッファ層11上に金属層12を設ける。
次いで、少なくとも電極形成領域Eにおいて金属層12上にレジスト13を形成する(図4(b))。この際、光導波路10上の金属層12上にはレジスト13を設けないようにし、金属層12を露出させる。
次いで、図5(a)に示すように、光導波路10上の金属層12およびバッファ層11を除去し、光導波路10を露出させる。なお、間隙Sにおいても金属層12およびバッファ層11を除去し、光導波路基板主面を露出させる。一方、電極形成領域Eにおいては、金属層が光導波路形成領域においてエッチングされることで、結果的に実装用電極6A、6Bが形成される。
次いで、図5(b)に示すように、電極形成領域Eにおいてレジスト13を除去することによって、実装用電極6A、6Bを露出させることで、光導波路デバイス1を得る。
好適な実施形態においては、光導波路基板3と支持基板2とを接合する。ここで、光導波路基板3と支持基板2との接合方法は特に限定されないが、接合層を介して接合してもよく、直接接合しても良い。
また、光導波路基板3内には周期分極反転構造を形成してよい。光導波路基板3に周期分極反転構造を形成する方法は限定されないが、いわゆる電圧印加法が好ましい。
また、光導波路基板の材質は、強誘電性結晶であることが好ましく、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム-タンタル酸リチウム固溶体、KLiNb15、LaGaSiO14を例示できる。強誘電性結晶は単結晶であることが特に好ましい。
光導波路基板3を構成する強誘電性結晶基板としては、Xカット基板、オフカットXカット基板、Yカット基板、オフカットYカット基板が好ましい。これらのオフカット角度は、10°以下が好ましく、5°以下が更に好ましい。
支持基板の具体的材質は、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、石英ガラスなどのガラスや水晶、Siなどを例示することができる。
光導波路基板3の厚さを薄くする薄板化工程を設けることが好ましく、こうした工程においては、研削加工、研磨加工、化学機械的研磨加工(CMP)などを利用できる。
光導波路基板3にリッジ溝およびリッジ部を形成するための加工方法は限定されず、機械加工、イオンミリング、ドライエッチング、レーザーアブレーションなどの方法を用いることができる。
本発明の光導波路デバイスは、高調波発生素子に対して好適に適用できる。高調波発生素子は、第二高調波、第三高調波などを発生する素子であってよい。また、高調波発生素子が発振する高調波の波長は特に限定されないが、例えば350~2000nmとすることができる。
また、本発明の光導波路デバイスは、差周波発生や和周波発生素子に適用することも可能である。
実装用電極6A、6Bは金属からなるが、こうした金属としては、銅を例示できる。但し銅は水分がある雰囲気であると腐食する可能性がある。
好適な実施形態においては、実装用電極6A、6Bが、光導波路基板3の主面に接する下地層と、下地層上に設けられた電極層とを有する。電極層の材質が光導波路基板に対して強固に接合しにくい材質である場合には、下地層を設けることで電極層の光導波路基板に対する接合性、密着性を改善できるので有利である。
こうした電極層の材質としては、表層には腐食しにくい安定したAu(金)が好ましい。また、下地層の材質としては、Cr(クロム)、Ti(チタン)やTiとPt(白金)を積層したものが好ましい。
この中で、パターニングが容易な下地層の材質としてCr、電極層(表層)の材質としてAuという組み合わせが一番扱いやすい。
バッファ層は、光導波路基板内に拡散しない材質とするが、具体的にはSiO、Alが好ましい。また、光導波路内への金属の拡散を防止するという観点からは、バッファ層の厚さは50nm以上が好ましく、100 nm以上が更に好ましい。一方、バッファ層の厚さの上限は特にないが、実用的には1000nm以下が好ましい。
(実施例)
図1および図3~5を参照しつつ説明した手順に従って、光導波路デバイス1を試作した。
具体的には、厚さ300μmのMgOドープニオブ酸リチウム単結晶からなる強誘電性結晶基板に、電圧印加法によって周期状分極反転構造を形成した。この強誘電性結晶基板の主面にSiOのクラッド層を厚さ0.4μm成膜した。さらにクラッド層に接着剤をスピンコートにより塗布し、厚さ1mmのノンドープニオブ酸リチウムからなる支持基板2に接合した。次いで、強誘電性結晶基板の主面を厚さ3.5μmとなるまで研削、研磨で加工し、光導波路基板2を形成した。
次いで、図3(a)に示すように、リッジ型光導波路10を形成した。二つのリッジ溝5A、5Bはレーザーアブレーション加工用のマスクを用意して形成した。リッジ溝の深さ2μmとし、リッジ溝の幅は5μmとし、リッジ部の幅は5μmとした。
次いで、図3(b)に示すように、酸化珪素からなるバッファ層11を厚さ200nm成膜した。ついで、図3(c)に示すように、電極形成領域E上のバッファ層11をエッチングした。この際、光導波路10上にバッファ11が残留するようにパターニングするとともに、光導波路形成領域Wと電極形成領域Eとの間隙S(幅20μm)にもバッファ層11が残留するようにパターニングした。
次いで、図4(a)に示すように、バッファ層11上および光導波路基板3の主面上に金属層12を成膜した。ただし、金属層12は、クロムからなる厚さ20nmの下地層と、金からなる厚さ200nmの電極層からなる。
次いで、電極形成領域Eにおいて金属層12上にレジスト13を成膜し、エッチングを行うことで、光導波路形成領域Wおよび間隙Sにおいて金属層12およびバッファ層11を除去し、主面を露出させるとともに、実装用電極6A、6Bをパターニングした(図5(a)。)次いで、実装用電極上のレジスト13を除去し、図5(b)に示す光導波路デバイス1を得た。
次いで、得られた光導波路デバイスを所定寸法の矩形チップに切断し、端面研磨した。素子の長さは8mmとした。リッジ型光導波路10の入射面には、基本光に対する反射防止膜を成膜し、出射面には基本光と第二高調波に対する反射防止膜を成膜し、第二高調波発生素子を得た。
得られた素子のリッジ型光導波路に対して基本光(波長975.8nm、出力100mW)を入射させたところ、波長変換光の波長は487.9nmであった。
(比較例1)
比較し易くするため、実施例で作製した素子に隣接する距離1mm未満の位置に、リッジ型導波路10を形成した。次いで、実施例と異なり、バッファ層11を形成せずに、光導波路基板3の主面3a上に金属層12を直接成膜した。金属層12は、クロムからなる厚さ20nmの下地層と、金からなる厚さ200nmの電極層からなる。
次いで、電極形成領域Eにおいて金属層12上にレジスト13を成膜し、エッチングを行うことで、光導波路形成領域Wおよび間隙Sにおいて金属層12を除去し、主面を露出させるとともに、実装用電極6A、6Bをパターニングした。次いで、実装用電極上のレジストを除去し、光導波路デバイスを得た。
得られた光導波路デバイスについて、実施例と同じ処理を行い、第二高調波発生素子を得た。
得られた素子のリッジ型光導波路に対して基本光(波長976.4nm、出力100mW)を入射させたところ、波長変換光の波長は488.2nmであった。
(比較例2)
さらに比較例2として、バッファ層、実装用電極を形成しない素子を用意した。すなわち、実施例および比較例1の素子に近い位置で、かつ特に比較例1の素子から2mm以内の距離に、光導波路10を形成した。次いで、バッファ層や実装用金属が表面に成膜されないように、金属マスクを表面に設置して作製した。
次いで、実施例、比較例1と同様に8mmの長さの素子を用意し、反射防止膜を形成した。
得られた素子のリッジ型光導波路に対して基本光(波長975.8nm、出力100mW)を入射させたところ、波長変換光の波長は487.9nmであり、実施例1と同じ波長で位相整合した。
以上のことから、金属層と光導波路との間にバッファ層を形成する工程を設けることで、位相整合波長がほとんど変化しなくなる。一方、光導波路上にバッファ層を形成せずに直接金属層を形成した場合には、位相整合波長が変化する現象が確認できた。
本発明者は、位相整合波長のズレの原因を調査してみた。このため、光導波路基板3の主面近傍における各原子の原子強度を拡散濃度を
ダイナミックSIMSによって測定した。この結果を図6に示す。
図6に示すように、光導波路基板3の主面から深さ60nmほどの領域においては、クロムが基板内部に内拡散していることが判明した。これによって光導波路10における特性、特に屈折率が僅かに変動し、位相整合波長にズレが生じたものと考えられる。

Claims (5)

  1. 光導波路基板、
    この光導波路基板の主面に設けられた光導波路、および
    前記光導波路基板の前記主面上に設けられた実装用電極
    を備える光導波路デバイスを製造する方法であって、
    前記光導波路基板の前記主面上にバッファ層を形成する工程、
    次いで前記光導波路基板のうち電極形成領域において前記バッファ層を除去して前記主面を露出させ、かつ前記光導波路上の前記バッファ層を残留させる工程、
    次いで前記光導波路基板の前記電極形成領域の主面上および前記光導波路上の前記バッファ層上に金属層を設ける工程
    次いで少なくとも前記電極形成領域において前記金属層上にレジストを形成する工程、
    次いで前記光導波路上の前記バッファ層および前記金属層を除去して前記実装用電極を形成する工程、および
    次いで前記電極形成領域において前記レジストを除去することによって、前記実装用電極を露出させる工程
    を有することを特徴とする、光導波路デバイスの製造方法。
  2. 前記実装用電極が、前記光導波路基板の前記主面に接する下地層と、前記下地層上に設けられた電極層とを有することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記下地層が純クロムまたはクロム合金からなることを特徴とする、請求項2記載の光導波路デバイスの製造方法。
  4. 前記光導波路デバイスが高調波発生素子であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つの請求項に記載の製造方法。
  5. 前記光導波路内に周期分極反転構造が形成されていることを特徴とする、請求項4記載の製造方法。
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