JP7284689B2 - 触媒層及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents

触媒層及び固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、触媒層及び固体高分子形燃料電池に関し、さらに詳しくは、カーボン材料の酸化に対する耐性が高い触媒層、及び、これをアノード側触媒層に用いた固体高分子形燃料電池に関する。
固体高分子形燃料電池は、電解質膜の両面に触媒を含む電極が接合された膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly,MEA)を備えている。電極は、通常、触媒層とガス拡散層の2層構造を取る。MEAの両面には、さらに、ガス流路を備えた集電体(セパレータ)が配置される。固体高分子形燃料電池は、通常、このようなMEAと集電体からなる単セルが複数個積層された構造(燃料電池スタック)を備えている。
燃料電池スタック内の各単セルは、電気的に直列に接続されている。このような燃料電池スタックを用いて発電する場合において、一部の単セルのみが、燃料供給が途絶えた状態(燃料欠状態)になることがある。例えば、低温始動時において燃料ガス流路の一部が凍結により閉塞していると、一部の単セルのみが燃料欠状態となる。以下、燃料欠状態にある単セルを「燃料欠セル」ともいう。この状態で発電を続けると、残りの単セルが電源となる形で燃料欠セルにも電流が流れる。その結果、燃料欠セルのアノード電位が上昇し、燃料以外のアノードの成分(例えば、触媒を担持するための担体カーボン、単セル内に保持されている水など)の酸化反応が進行する。燃料欠セルにおいて担体カーボンの酸化が起こると、触媒層構造が破壊され、セル性能が著しく低下する。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、燃料を電気化学的に酸化させるための第1の触媒組成物と、水から酸素を発生させるための第2の触媒組成物(いわゆる、水電解触媒)とを備えたアノードが開示されている。
同文献には、
(A)アノードに水電解触媒を添加すると、水の電気分解が促進され、アノード成分の劣化が抑制される点、及び、
(B)酸化ルテニウムと酸化イリジウムの固溶体からなる触媒は、Pt/Ru合金からなる触媒よりも酸素発生機能が良好である点、
が記載されている。
特許文献1に記載されているように、酸素生成反応(OER)を促進する触媒(以下、「OER触媒」ともいう)をアノードに添加すると、水素欠時でもカーボン酸化の代わりに水の酸化が優先的に起こり、アノードの劣化をある程度抑制することができる。
しかし、酸化イリジウムは、高温での活性が酸化ルテニウムより低い。他方、酸化ルテニウムは低温での活性が低いため、単独で使用すると氷点下時の水素欠に対応できない。酸化ルテニウムと酸化イリジウムの固溶体については、温度のロバスト性にどのような問題があるかは、組成や構造によって活性の絶対値や温度依存性が異なるので、一概には言えない。さらに、固溶体は、触媒合成のプロセスコストが高くなる可能性がある。
特表2003-508877号公報
本発明が解決しようとする課題は、高温運転時及び低温運転時のいずれの条件下においても、燃料欠によるアノード成分の酸化を抑制することが可能な触媒層を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような触媒層を備えた固体高分子形燃料電池を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る触媒層は、以下の構成を備えている。
(1)前記触媒層は、
電極触媒と、
アイオノマと、
第1~第n酸素生成(OER)触媒(n≧2、nは整数)
を備えている。
(2)第iOER触媒(1≦i≦n)のOER反応の活性化エネルギーEiは、第jOER触媒(1≦j≦n、i≠j)のOER反応の活性化エネルギーEjより大きい。
(3)前記第iOER触媒及び前記第jOER触媒は、後述する式(3)の関係を満たす。
本発明に係る固体高分子形燃料電池は、本発明に係る触媒層をアノード側触媒層として用いたことを要旨とする。
OER反応の活性化エネルギーが大きい第iOER触媒は、活性の温度依存性が大きい。そのため、第iOER触媒は、低温では活性が低いが、高温では高い活性を示す。
一方、OER反応の活性化エネルギーが小さい第jOER触媒は、活性の温度依存性が小さい。そのため、第jOER触媒は、高温では活性が低いが、低温では比較的高い活性を示す。
このような活性の温度依存性が異なる少なくとも2種類のOER触媒を触媒層に添加すると、高温運転時には主として第iOER触媒がアノード成分の酸化を抑制し、低温運転時には主として第jOER触媒がアノード成分の酸化を抑制する。その結果、高温運転時及び低温運転時のいずれの条件下においても、アノード成分の酸化を抑制することができる。特に、各OER触媒の性状(すなわち、活性化エネルギー、総表面積、及び頻度因子)を最適化すると、各OER触媒を単独で用いた場合に比べて、高い活性を示す。
酸化イリジウム又は酸化ルテニウムを添加したMEAの30℃での水素欠運転耐性を示す図である。 酸化イリジウム又は酸化ルテニウムを添加したMEAの60℃での水素欠運転耐性を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 触媒層]
本発明に係る触媒層は、
電極触媒と、
アイオノマと、
第1~第n酸素生成(OER)触媒(n≧2、nは整数)
を備えている。
[1.1. 電極触媒]
「電極触媒」とは、電極反応を生じさせるための触媒をいう。本発明に係る触媒層はアノードに用いられるので、電極反応とは、具体的には、水素酸化反応(HOR)(H2→2H++2e-)をいう。
電極触媒は、このような電極反応を生じさせる触媒粒子のみからなるものでも良く、あるいは、このような触媒粒子が担体表面に担持されているものでも良い。
[1.1.1. 触媒粒子]
[A. 触媒粒子の組成]
本発明において、触媒粒子の材料は、特に限定されない。触媒粒子の材料としては、
(a)貴金属(Pt、Au、Ag、Pd、Rh、Ir、Ru、Os)、
(b)2種以上の貴金属元素を含む合金、
(c)1種又は2種以上の貴金属元素と、1種又は2種以上の卑金属元素(例えば、Fe、Co、Ni、Cr、V、Tiなど)とを含む合金、
などがある。
これらの中でも、触媒粒子は、Pt又はPt合金が好ましい。これは、燃料電池の電極反応に対して高い活性を有するためである。
Pt合金としては、例えば、Pt-Fe合金、Pt-Co合金、Pt-Ni合金、Pt-Pd合金、Pt-Cr合金、Pt-V合金、Pt-Ti合金、Pt-Ru合金、Pt-Ir合金などがある。
[B. 触媒粒子の粒径]
触媒粒子の粒径は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な粒径を選択することができる。一般に、触媒粒子の粒径が小さすぎると、触媒粒子が溶解しやすくなる。従って、触媒粒子の粒径は、1nm以上が好ましい。
一方、触媒粒子の粒径が大きくなりすぎると、質量活性が低下する。従って、触媒粒子の粒径は、20nm以下が好ましい。触媒粒子の粒径は、好ましくは、10nm以下、さらに好ましくは、5nm以下である。
[1.1.2. 担体]
[A. 材料]
触媒粒子は、そのままの状態で各種用途に用いても良く、あるいは、担体表面に担持された状態で用いても良い。触媒粒子を担体表面に担持させると、微細な触媒粒子を安定して分散させることができるので、触媒使用量を低減することができる。
担体としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、活性炭、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ガラス状炭素粉末などがある。
[B. 触媒担持量]
触媒粒子が担体表面に担持されている場合、触媒担持量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な担持量を選択することができる。一般に、触媒担持量が少なすぎると、十分な活性が得られない。一方、触媒担持量を必要以上に多くしても、効果に差がなく、実益がない。
例えば、カーボン担体表面にPt又はPt合金からなる触媒粒子を担持させる場合、触媒担持量は、5mass%~70mass%が好ましい。
[1.2. アイオノマ]
[1.2.1. 組成]
アイオノマは、触媒粒子とプロトンの授受を行うためのものである。本発明において、アイオノマの種類は、特に限定されない。
アイオノマとしては、例えば、
(a)分子内に脂肪族環構造と、酸基とを備えた含フッ素イオン交換樹脂(以下、これを「高酸素透過アイオノマ」ともいう)、
(b)ナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)、アクイヴィオン(登録商標)、アシプレックス(登録商標)などの、フッ化スルホニルビニルエーテルモノマに基づく繰り返し単位を含む含フッ素イオン交換樹脂(以下、これらを総称して、「低酸素透過アイオノマ」ともいう)
などがある。
アイオノマには、これらのいずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
アイオノマは、特に、高酸素透過アイオノマが好ましい。高酸素透過アイオノマを含む触媒インクを用いて作製される触媒層は、高い酸素透過性を示す。そのため、これを空気極側の触媒層として用いると、高い発電性能が得られる。
[1.2.2. 含有量]
触媒層に含まれるアイオノマの量は、触媒層の性能に影響を与える。例えば、電極触媒がカーボン担体表面に触媒粒子が担持されているものである場合、触媒層に含まれるカーボン担体の質量に対するアイオノマの質量の比(I/C)は、触媒層の性能に影響を与える。そのため、電極触媒がカーボン担体を含む場合、触媒インク中のアイオノマの含有量は、I/Cが所定の値となるように設定するのが好ましい。
一般に、I/C比が小さくなりすぎると、プロトン伝導度が低下し、触媒層の性能が低下する。従って、I/C比は、0.2以上が好ましい。I/C比は、好ましくは、0.4以上である。
一方、I/C比が過剰になると、電極中の細孔容積の減少が大きくなり、触媒層の性能が低下する。従って、I/C比は、1.5以下が好ましい。I/C比は、好ましくは、1.4以下である。
[1.3. 酸素生成(OER)触媒]
[1.3.1. 組成]
「酸素生成(OER)触媒」とは、燃料電池のアノードにおいて、酸素生成反応(2H2O→O2+4H++4e-)を生じさせることが可能な触媒をいう。
本発明において、触媒層には、2種以上のOER触媒、すなわち、第1~第n酸素生成(OER)触媒(n≧2、nは整数)が添加される。これらの内、少なくとも2種類のOER触媒(すなわち、第iOER触媒及び第jOER触媒、i≠j)は、後述する条件を満たしている必要がある。これら以外のOER触媒は、後述する条件をさらに満たしていても良く、あるいは、満たしていなくても良い。
後述する条件を満たす限りにおいて、各OER触媒の組成は、特に限定されない。OER触媒としては、例えば、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化オスミウムなどがある。
[1.3.2. 平均粒径]
「平均粒径」とは、レーザー回折散乱法により測定される粒径のメディアン値(d50)をいう。
一般に、OER触媒の平均粒径が小さくなるほど、少量の添加で高い効果が得られる。従って、OER触媒の平均粒径は、1μm以下が好ましい。平均粒径は、好ましくは、0.5μm以下、さらに好ましくは、0.2μm以下である。
一方、OER触媒の平均粒径が小さくなりすぎると、耐久性が低下する。従って、OER触媒の平均粒径は、1nm以上が好ましい。
[1.3.3. 活性化エネルギー]
燃料欠は、燃料電池の温度が高温である場合及び低温である場合のいずれの環境下でも起こりうる。高温運転時及び低温運転時のいずれの運転条件下においても、アノード成分の酸化を抑制するためには、少なくとも、第iOER触媒(1≦i≦n)のOER反応の活性化エネルギーEiは、第jOER触媒(1≦j≦n、i≠j)のOER反応の活性化エネルギーEjより大きいことが必要である。
より大きな活性化エネルギーEiを持つ第iOER触媒は、活性の温度依存性が高く、高温において活性が高くなる。一方、より小さな活性化エネルギーEjを持つ第jOER触媒は、活性の温度依存性が低く、低温でも比較的高い活性を持つ。そのため、少なくともこれらの2種類のOER触媒を触媒層に添加すると、高温運転時及び低温運転時のいずれの条件下においても、燃料欠によるアノード成分の酸化を抑制することができる。
なお、3種類以上のOER触媒を用いる場合において、第iOER触媒及び第jOER触媒以外のOER触媒の活性化エネルギーは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
[1.3.4. 活性化エネルギーの差]
アノード成分の酸化を効率良く抑制するためには、第iOER触媒と第jOER触媒の活性化エネルギーの差(=Ei-Ej)は、後述する条件を満たしているのが好ましい。以下に、高い活性を得るための活性化エネルギーの差の条件、並びに、これを満たすためのOER触媒の総面積及び頻度因子の条件の導出過程を示す。
触媒層の温度をT、水素欠が起こりうる最低温度をTL、水素欠が起こりうる最高温度をTHとする。
また、触媒層に含まれる第iOER触媒の活性化エネルギーをEi、総表面積をWi、OER反応の触媒表面積当たりの頻度因子をAiとする。
さらに、触媒層に含まれる第jOER触媒の活性化エネルギーをEj(<Ei)、総表面積をWj、OER反応の触媒表面積当たりの頻度因子をAjとする。
ここで、
(a)活性化エネルギーの異なる2種類の触媒を同時に用いた場合(ケース1)、
(b)第iOER触媒を添加せずに第jOER触媒の量を多くし、第jOER触媒のみで総表面積がWi+Wjとなるようにした場合(ケース2)、及び、
(c)第jOER触媒を添加せずに第iOER触媒の量を多くし、第iOER触媒のみで総表面積がWi+Wjとなるようにした場合(ケース3)
について、温度TH及びTLのいずれの条件下においてもケース1の活性が最低とならない条件を導く。
まず、温度THにおいて、ケース1がケース2より活性が高くなる十分条件は、式(1)で表される。ここで、Rは気体定数であり、式(1)においては、ケース1に含まれる第iOER触媒のみでケース2より活性が高くなるとしている。さらに、式(1)を変形すると、式(1)’が得られる。
Figure 0007284689000001
次に、温度TLにおいて、ケース1がケース3より活性が高くなる十分条件は、式(2)で表される。ここで、式(2)においては、ケース1に含まれる第jOER触媒のみでケース3より活性が高くなるとしている。さらに、式(2)を変形すると、式(2)’が得られる。
Figure 0007284689000002
式(1)’及び式(2)’より、式(3)が得られる。
Figure 0007284689000003
但し、
Lは、水素欠状態が起こりうる最低温度、
Hは、水素欠状態が起こりうる最高温度、
iは、前記触媒層に含まれる前記第iOER触媒の総表面積、
iは、前記第iOER触媒の前記OER反応の触媒表面積当たりの頻度因子、
jは、前記触媒層に含まれる前記第jOER触媒の総表面積、
jは、前記第jOER触媒の前記OER反応の触媒表面積当たりの頻度因子、
Rは、気体定数。
H及びTLは、燃料電池の使用環境が決まると、一義的に定まる。OER触媒の活性化エネルギーEは、OER触媒の組成、原子配列、粒子形態などが決まると、一義的に定まる。OER触媒の総表面積Wは、OER触媒の比表面積及び添加量が決まると、一義的に定まる。
OER触媒の頻度因子Aは、単位面積当たりの活性サイトの数、反応中間体の占有数、OER触媒の粒径、組成、原子配列、粒子形態などに依存する。一般に、粒径が大きいほど、頻度因子Aが大きくなる傾向がある。頻度因子Aは、例えば、回転ディスク電極法を用いて、材料間で電位を揃えて活性を測定することにより知ることができる。
[1.3.5. OER触媒の組み合わせの具体例]
[A. 活性化エネルギーE]
例えば、過電圧0.5VでのOERの活性化エネルギーEは、酸化ルテニウムが66kJ/mol(参考文献1)、酸化イリジウムが26kJ/mol(参考文献2)と報告されている。従って、第iOER触媒として酸化ルテニウムを用い、第jOER触媒として、酸化イリジウムを用いることができる。
[参考文献1]J. Phys. Chem., 97(1989)7381
[参考文献2]Electrochimica acta 281(2018)466
[B. 総表面積W]
上述したように、総表面積Wは、OER触媒の比表面積と添加量で決まる。また、OER触媒の添加量は、OER触媒の比表面積、失活のしやすさ、コスト等を考慮して決定する。一般に、失活しやすいOER触媒の場合、その添加量は、「失活しないための下限値」以上とするのが好ましい。一方、失活しにくいOER触媒の場合、必要以上に添加しても効果に差が無く、実益がない。従って、そのようなOER触媒の添加量は、「その効果が飽和する上限値」以下、又は、その上限値に安全係数をかけた値以下が好ましい。
例えば、酸化ルテニウムは、失活しやすいことが知られている。本願発明者らによる研究より、酸化ルテニウムが失活しないための、触媒層の幾何学的面積(geometric area)当たりの酸化ルテニウムの添加量の下限値は、0.02mg/cm2 GEOと判明している。一方、市販の酸化ルテニウム粉末のBET比表面積は、約50m2/gである。
従って、酸化ルテニウムを第iOER触媒として用いる場合において、酸化ルテニウムの総表面積Wiの下限値は、50×104cm2 RuOx/g×0.02×10-3g/cm2 GEO=10cm2 RuOx/cm2 GEOと見積もられる。すなわち、酸化ルテニウムを第iOER触媒として用いる場合において、酸化ルテニウムの失活を抑制するためには、Wiは、10cm2 RuOx/cm2 GEO以上が好ましい。
一方、酸化イリジウムは、失活しにくいことが知られている。本願発明者らによる研究により、触媒層の幾何学的面積当たりの酸化イリジウムの添加量は、0.01mg/cm2 GEO程度で十分であることが分かっている。そこで、酸化イリジウムの上限を、上記の値より若干大きい0.015mg/cm2 GEOとする。一方、市販の酸化イリジウム粉末のBET比表面積は、約25m2/gである。
従って、酸化イリジウムを第jOER触媒として用いる場合において、酸化イリジウムの総表面積Wjの上限値は、25×104cm2 IrOx/g×0.015×10-3g/cm2 GEO=3.75cm2 IrOx/cm2 GEOと見積もられる。すなわち、酸化ルテニウムを第jOER触媒として用いる場合において、不必要なコスト増を抑制するためには、Wjは、3.75cm2 IrOx/cm2 GEO以下が好ましい。
[C. 頻度因子]
例えば、Wi=6Wj、Ai=4×107×Aj、TH=333K(60℃)、TL=243K(-30℃)である場合、式(3)より、次の式(4)が導かれる。
39.3kJ/mol<Ei-Ej<48.0kJ/mol …(4)
式(4)は、
(a)第iOER触媒として酸化ルテニウムを用い、第jOER触媒として酸化イリジウムを用いることが可能であること、及び、
(b)この場合において、Wi=6Wj、及び、Ai=4×107×Ajとなるように、各OER触媒の添加量及び性状を最適化すると、酸化ルテニウム単独又は酸化イリジウム単独で用いた場合よりも、OER反応の活性が高くなること、
を表す。
これらの内、Wi=6Wjの条件は、各OER触媒の比表面積及び添加量を制御することにより、容易に満たすことができる。
一方、Ai=4×107×Ajの条件は、例えば、
(a)各OER触媒の粒径を制御する方法、
(b)各OER触媒の酸素親和性を制御する方法、
などにより満たすことができる。
[2. 固体高分子形燃料電池]
本発明に係る固体高分子形燃料電池は、本発明に係る触媒層をアノード側触媒層として用いたことを特徴とする。
本発明に係る触媒層の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
また、固体高分子形燃料電池のその他の構成要素(電解質膜、カソード側触媒層、ガス拡散層、セパレータ等)の材料、構造等については、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。
[3. 作用]
OER反応の活性化エネルギーが大きい第iOER触媒は、活性の温度依存性が大きい。そのため、第iOER触媒は、低温では活性が低いが、高温では高い活性を示す。
一方、OER反応の活性化エネルギーが小さい第jOER触媒は、活性の温度依存性が小さい。そのため、第jOER触媒は、高温では活性が低いが、低温では比較的高い活性を示す。
このような活性の温度依存性が異なる少なくとも2種類のOER触媒を触媒層に添加すると、高温運転時には主として第iOER触媒がアノード成分の酸化を抑制し、低温運転時には主として第jOER触媒がアノード成分の酸化を抑制する。その結果、高温運転時及び低温運転時のいずれの条件下においても、アノード成分の酸化を抑制することができる。特に、各OER触媒の性状(すなわち、活性化エネルギー、総表面積、及び頻度因子)を最適化すると、各OER触媒を単独で用いた場合に比べて、高い活性を示す。
例えば、高温(~60℃)では、酸化ルテニウムは酸化イリジウムよりOER活性が高いため、通常運転時の急な水素欠に対する耐性を向上させる上で有力な添加剤である。しかし、低温(30℃以下)では、酸化ルテニウムは活性が著しく低いため、これを単独で用いると、氷点下始動時の水素欠に対する耐性がほとんど無くなってしまう。
これに対し、酸化ルテニウムと酸化イリジウムとを共存させると、高温と低温の両方での水素欠耐性が高い燃料電池にすることが可能となる。
[1. 試験方法]
アノードに酸化イリジウムを添加した場合、及び、酸化ルテニウムを添加した場合の耐水素欠運転の特性を調べるため、以下の実験を行った。
サンプルとして、アノオードに、
(a)酸化イリジウムを0.01mg/cm2添加したMEA(試料No.1)、
(b)酸化ルテニウムを0.01mg/cm2添加したMEA(試料No.2)、及び、
(c)酸化ルテニウムを0.03mg/cm2添加したMEA(試料No.3)
の3種類を準備した。
これらを用い、水素欠運転模擬耐久試験を行った。すなわち、アノードに窒素、カソードに空気を供給した状態で、30℃又は60℃にセル温度を設定した。この状態で電流を1.0A/cm2に保持し、セル電圧及び運転継続時間を調べた。
[2. 結果]
図1に、酸化イリジウム又は酸化ルテニウムを添加したMEAの30℃での水素欠運転耐性を示す。図2に、酸化イリジウム又は酸化ルテニウムを添加したMEAの60℃での水素欠運転耐性を示す。図1及び図2において、横軸は電流保持時間、縦軸はセル電圧(=カソード電位-アノード電位)である。
[2.1. 60℃での水素欠運転]
まず、酸化ルテニウムを0.01mg/cm2添加した場合、いずれの温度においても、試験開始直後に運転が継続できなくなっていることが分かる。これは、酸化ルテニウムは高電流域でOER活性が失活するためである。
これに対しては、酸化ルテニウムの添加量を単純に増やす(すなわち、総表面積を増やす)ことが有効である。図2から分かるように、酸化ルテニウムを0.03mg/cm2添加した場合、60℃、1.0A/cm2の条件では酸化イリジウム添加品よりセル電圧が高く、アノード電位上昇の抑制効果が高い。
なお、酸化ルテニウム0.03mg/cm2添加品の運転継続時間は酸化イリジウム添加品のそれより短いが、200秒程度はある。実際に起こりうる水素欠運転状態の継続時間は数十秒程度であるため、200秒程度の運転継続時間があれば十分といえる。
以上から、酸化ルテニウム0.03mg/cm2添加品(試料No.3)は、酸化イリジウム0.01mg/cm2添加品(試料No.1)より、60℃での水素欠運転時のカーボン劣化抑制効果が高いと言える。
[2.2. 30℃での水素欠運転]
図1に示すように、酸化ルテニウム0.03mg/cm2添加品は、30℃、1.0A/cm2の条件下では水素欠耐性が低い。そのため、酸化ルテニウムを単独で使用した場合において、このような条件で水素欠運転状態に陥った時には、セルが致命的なダメージを受ける可能性がある。
他方、酸化イリジウム添加品は、この条件でも長い時間運転を継続できていることから、比較的高いOER活性を発揮できていることが分かる。このことから、酸化ルテニウム添加品に酸化イリジウムを追加で添加すると、酸化ルテニウムの高温での高OER活性を活用しつつ、低温域での水素欠運転にも耐性が高いセルになると考えられる。
ここで、酸化イリジウムと酸化ルテニウムとでOER活性が高い温度域が異なる理由は、これらの活性化エネルギーが異なるためである。従って、酸化イリジウムと酸化ルテニウムとの組み合わせに限らず、活性化エネルギーが異なる触媒の組み合わせであれば、酸化イリジウム-酸化ルテニウム系と同様の効果(すなわち、作動温度に応じて、異なる触媒が高OER活性を示すという効果)が得られると考えられる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る触媒層は、固体高分子形燃料電池のアノード側触媒層に用いることができる。

Claims (4)

  1. 以下の構成を備えた触媒層。
    (1)前記触媒層は、
    電極触媒と、
    アイオノマと、
    第1~第n酸素生成(OER)触媒(n≧2、nは整数)
    を備えている。
    (2)第iOER触媒(1≦i≦n)のOER反応の活性化エネルギーEiは、第jOER触媒(1≦j≦n、i≠j)のOER反応の活性化エネルギーEjより大きい。
    (3)前記第iOER触媒及び前記第jOER触媒は、次の式(3)の関係を満たす。
    Figure 0007284689000004
    但し、
    Lは、水素欠状態が起こりうる最低温度、
    Hは、水素欠状態が起こりうる最高温度、
    iは、前記触媒層に含まれる前記第iOER触媒の総表面積、
    iは、前記第iOER触媒の前記OER反応の触媒表面積当たりの頻度因子、
    jは、前記触媒層に含まれる前記第jOER触媒の総表面積、
    jは、前記第jOER触媒の前記OER反応の触媒表面積当たりの頻度因子、
    Rは、気体定数。
  2. 前記第iOER触媒は、酸化ルテニウムからなり、
    前記第jOER触媒は、酸化イリジウムからなる
    請求項1に記載の触媒層。
  3. 前記Wiは、10cm2 RuOx/cm2 GEO以上であり、
    前記Wjは、3.75cm2 IrOx/cm2 GEO以下である
    請求項2に記載の触媒層。
  4. 請求項1から3までのいずれか1項に記載の触媒層をアノード側触媒層として用いた固体高分子形燃料電池。
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