JP7284356B1 - 陰イオンの分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有用な陰イオンの取得収率を向上させることができる陰イオンの分離方法を提供すること。【解決手段】有用な陰イオンを含む原料液から、電気透析法により陰イオンを製品液中に分離濃縮する陰イオンの分離方法であって、電気透析法として、副原料室、第1の陰イオン交換膜、原料室兼副塩室、第2の陰イオン交換膜、中間室、第3の陰イオン交換膜、製品室、陽イオン交換膜までの4室4膜を一組として繰り返し配置される電気透析槽を用い、原料室兼副塩室には、中間室を通過させた液もしくは、中間室を通過させた液に原料液を加えた液を通過させ、中間室には、原料液、もしくは希釈した製品液を通過させることを特徴とする陰イオンの分離方法。【選択図】図1

Description

本発明は、電気透析法による陰イオンの分離方法に関する。
工業廃液、海水等、陰イオンを含む水溶液から、陰イオンを分離する技術として電気透析法が知られている。このような技術は、排水の処理、及びヨウ素等の希少な元素を回収する手段として重要である。
例えば、液晶画面用偏光膜を製造する際に発生する廃液中には、ヨウ素が多量に含まれており、そこからヨウ素を回収することは、限られた資源の有効利用の観点からも重要である。また、前記廃液中のヨウ素は、天然資源としてヨウ素生産の原料となっている天然ガス付随かん水に比べて、非常に高い濃度で存在する。このため、廃液中からのヨウ素の回収は、かん水中からヨウ素を取得する場合に比べて容易に行うことができる。特に、前記廃液中のヨウ素動態のほとんどは、ヨウ化物イオン(I)であるため、電気透析法にて容易に分離取得することができる。
しかしながら、工業廃液にはホウ素やフッ素が含まれている場合があり、製品液中へのホウ素やフッ素の移動が問題となる場合がある。
例えば、特許文献1には、原料液のpHを3以上6以下に調整し、2段階の電気透析を行い、得られる稀薄ヨウ化水素酸に対してさらに蒸留精製を行い、ヨウ化水素酸水溶液として取得する方法が開示されている。この方法では、電気透析を2段階で行うことでホウ素の移動量を減らすこと、及び、バイポーラ膜電気透析法で対になる陽イオンを水素イオンにしている。
また、特許文献2には、原料液のpHを8以上に調整し、廃液中のホウ素をホウ酸イオンもしくは四ホウ酸2価陰イオンの形とするとともに、原料室中のヨウ素濃度を監視し、原料室中のヨウ化物イオンが一定以上の濃度の間のみ製品液を取得し、原料室中のヨウ化物イオンが一定以下の濃度になったところで第2の製品液に切り替え、ホウ素濃度が高い製品液を第2の製品液として別取りする方法が開示されている。
また、特許文献3には、フッ素を含む原料液中に陽イオンを添加し、その陽イオンとフッ素とで陽イオン型の錯体を形成させ、原料液に含まれるフッ素の陰イオン交換膜を介して濃縮液側への移動を制限することで、原料液に含まれるフッ素以外の陰イオンを陰イオン交換膜を介して濃縮液に分離する方法が開示されている。
特許文献1乃至3に記載の方法は、ヨウ素及び、ホウ素やフッ素の特性をよく観察した方法であり、原料液中にホウ素やフッ素が含まれる場合に、それらの除去を目的とする場合には優れた方法であるが、資源回収を目的とする場合には、十分な方法とは言えない。
例えば、特許文献2に記載の2室電気透析法、特許文献3に記載の4室複置換電気透析法では、取得したい陰イオンの収率が良くない。これは、透析運転後半で製品室の取得したい陰イオン濃度が高くなり、原料室の取得したい陰イオン濃度が低くなった時に、製品室から原料室への濃度差を動力とする、拡散による電荷とは逆方向の移動が増大してくるからである。透析運転後半では、原料室から製品室への見かけの陰イオンの移動速度、言い換えると、電気的に移動する移動速度と、拡散により移動する移動速度との合計であり、陰イオン濃度を測定することで得られる移動速度、が低下する。
透析の最終段階では、濃度差による製品室から原料室への移動速度と、電気的な原料室から製品室への移動速度とが釣り合って、見かけの移動速度が0近くになる。ただし、このとき、浸透圧差による原料室から製品室への水の移動速度が増大し、原料室では濃縮が起こり、製品室では希釈が起こる。この濃縮と希釈とによって濃度差が緩和されるため、透析終了時まで、移動速度は0にはならない。また、原料室中の陰イオンもしくは陽イオンが減少し、ある一定濃度以下になると、電流がほとんど流れなくなるため、取得したい陰イオンの原料室から製品室への電気的移動速度が減少する。そのため、状態によっては、見かけの移動速度がマイナスとなる、言い換えると、陰イオンの製品室から原料室への逆移動がおこる。このため、取得したい陰イオンが原料室に確実に残ってしまう。
また、非特許文献1に記載されるように、電流密度を上げて電荷方向への移動速度を増した場合、陽イオン交換膜をすり抜けての製品室からの電荷方向への移動も増える。そのため、2室電気透析法の場合、取得したい陰イオンは、原料室に到達するため、見かけの移動速度が低下する。また、4室複置換法の場合、陰イオンは、副原料室に到達し、さらに副塩室へ移動するため、ロスとなる。
そのため、透析運転終了時の、製品室:原料室での取得したい陰イオン濃度比は、20以上30以下程度であり、これを大きく上回ることはない。これらの電気透析法では、製品室の仕上がりヨウ化物イオン濃度を下げれば収率を上げることができるが、濃縮あるいは結晶化等の後工程を持つ場合、後工程での負担が大きくなる。
以上のように、陰イオンの分離方法に電気透析法を用いることは、合理的であると考えられるが、なお解決しなければならない問題が存在する。
特開2008-013379号公報 特開2020-82078号公報 特開2018-94525号公報
製塩用次世代イオン交換膜の研究開発:日本海水学会誌第66巻 第5号(2012)p246-256 :吉川直人
本発明の目的は、有用な陰イオンの取得収率を向上させることができる陰イオンの分離方法を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の陰イオンの分離方法は、有用な陰イオンを含む原料液から前記有用な陰イオンを製品液中に分離濃縮し、前記製品液中で、前記有用な陰イオンおよび対となる陽イオンから、塩もしくは酸を合成する電気透析法であり、
前記製品液中で前記有用な陰イオンと対となる陽イオンは、当該対となる陽イオンを含む副原料室液から供給されるものであり、
前記電気透析法として、前記副原料室液が通過する副原料室、第1の陰イオン交換膜、原料室、第2の陰イオン交換膜、中間室、第3の陰イオン交換膜、製品室、陽イオン交換膜までの4室4膜を一組として繰り返し配置される電気透析槽を用いることを特徴とする。
本発明の陰イオンの分離方法では、
前記副原料室には、前記副原料室液を通過させ、
前記原料室には、前記中間室を通過させた液もしくは、前記中間室を通過させた液に前記原料液を加えた液を通過させ、
前記中間室には、前記原料液、もしくは希釈した前記製品液を通過させ、
前記製品室には、前記製品液を希釈した液を通過させる、ことが好ましい。
本発明の陰イオンの分離方法では、前記原料室の浸透圧が、常に、前記中間室及び前記副原料室の浸透圧よりも高く保持されるように、前記電気透析槽の運転を行う、ことが好ましい。
本発明の陰イオンの分離方法では、前記副原料室を有する前記電気透析槽において、正極室と接する室と、負極室と接する室が同じ室であり、両電極室に接する室が前記副原料室である、ことが好ましい。
本発明の陰イオンの分離方法では、前記有用な陰イオンを含む前記原料液が、液晶画面偏光膜製造時に発生する廃液であり、前記有用な陰イオンが、ヨウ化物イオンである、ことが好ましい。
本発明によれば、有用な陰イオンの取得収率を向上させることができる陰イオンの分離方法を提供することができる。
図1は、本発明の陰イオンの分離方法において用いる電気透析槽の構成例を示す模式図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]陰イオンの分離方法
まず、本発明の陰イオンの分離方法について説明する。
図1は、本発明の陰イオンの分離方法において用いる電気透析槽の構成例を示す模式図である。
本発明に係る陰イオンの分離方法は、有用な陰イオンを含む原料液から、電気透析法により陰イオンを製品液中に分離濃縮する陰イオンの分離方法である。
なお、本明細書において、有用な陰イオンとは、所定の目的で利用できる各種陰イオンのことをいう。
また、以下の説明では、有用な陰イオンを「有用陰イオン」と記載する場合がある。
そして、本実施形態では、電気透析において、図1に示す電気透析槽1を用いる。
図1に示す電気透析槽1では、負極2と正極3との間に、負極側から、負極室10、陽イオン交換膜4Cに続けて、第1の副原料室11、陰イオン交換膜である第1の陰イオン交換膜5A、原料室12、陰イオン交換膜である第2の陰イオン交換膜6A、中間室13、陰イオン交換膜である第3の陰イオン交換膜7A、製品室14、陽イオン交換膜8Cの順に、4室4膜を一組とする膜室組が複数繰り返し配置され、続けて第2の副原料室15、陽イオン交換膜9C、正極室16が配置されている。
これにより、有用な陰イオンの取得収率を向上させることができる陰イオンの分離方法を提供することができる。
そして、本実施形態の陰イオンの分離方法では、例えば、第1及び第2の副原料室11,15には、副原料室液21,25を通過させ、原料室12には、原料室液22として、中間室13を通過させた液もしくは、中間室13を通過させた液に原料液を加えた液を通過させ、中間室13には、中間室液23として、原料液、もしくは希釈した製品液を通過させ、製品室14には、製品室液24として、製品液を希釈した液を通過させる。
これにより、有用な陰イオンの取得収率をさらに向上させることができる。
なお、以下の説明では、電気透析槽1において、負極室10と第1の副原料室11とを仕切る膜として、陽イオン交換膜4Cを用い、第2の副原料室15と正極室16とを仕切る膜として、陽イオン交換膜9Cを用いた場合について中心的に説明する。
本発明で用いる電気透析槽1は、特許文献3に記載されているような方法で用いられている4室電気透析槽の原料室と製品室との間に、両側が陰イオン交換膜で仕切られた中間室13を設け、さらに、原料室と副塩室とを合わせて1つの室、言い換えると、原料室12としたものである。
この電気透析槽1では、透析運転中に、原料室12から中間室13に移動した陰イオンとほぼ当量の陰イオンが、第1の副原料室11から原料室12に供給されるため、原料室液22の総イオン濃度はほとんど変化せず、電解質濃度及び浸透圧は、ほとんど変化しない。ただし、透析運転中の水の移動によって希釈されるため、総イオン濃度は、若干減少する。
また、中間室13から製品室14へ移動した陰イオンとほぼ当量の陰イオンが、原料室12から中間室13に供給されるため、中間室13の総イオン濃度はほとんど変化せず、電解質濃度及び浸透圧は、ほとんど変化しない。ただし、透析運転中に若干の水が出て行くため、総イオン濃度は、若干上昇する。
本発明の課題である、透析終了間際での電流の低下は、主に、原料室の総イオン濃度の低下に起因するが、本発明においては、原料室液22中の総イオン濃度は、ほとんど変化しない。
そのため、この電気透析槽1を用いることで、原料室液22の電気伝導度は、透析運転終了時まで高く維持され、透析終盤での電流低下を防ぐことが出来る。
なお、透析終盤では、副原料室液21,25の総イオン濃度の低下に起因する電流低下が生じる可能性があるが、これは、副原料室液の量を多くすること、あるいは、副原料室液21,25に仕込む総イオン量を増やすことで防ぐことができる。
なお、中間室を持たない複置換電気透析法で原料室と副塩室とを1つの室にまとめた場合、言い換えると、副原料室、原料室及び製品室の3室法とした場合には、透析終盤で原料室の陰イオン中の有用イオンの割合が低下したときに、有用陰イオン以外の陰イオンが多量に製品室へ移動する。そのため、製品液の純度が低下してしまう。
そこで、本実施形態の電気透析槽1では、原料室12と製品室14との間に、両側が陰イオン交換膜で仕切られた中間室13を設けている。中間室液23は、有用陰イオンを十分に含む。透析終盤で原料室12から中間室13に移動してくる有用陰イオン以外の陰イオン量が増えたときにおいても、有用陰イオン以外の陰イオンは、中間室13にとどまり、ほぼ当量の有用陰イオンが製品室14へ移動するため、製品液の純度の低下は起こらない。
上述したように、原料室12には、中間室13に移動した陰イオンとほぼ当量の陰イオンが副原料室から供給される。そのため、透析終盤では、原料室12の陰イオン中の有用陰イオンの比率が低下する。このとき、有用陰イオン以外の陰イオンの原料室12から中間室13への移動率が増加し、有用陰イオンの移動率が低下する。
一方、中間室13においては、有用陰イオンの比率が高く保たれているため、中間室13から製品室14への、有用陰イオンの移動率はほとんど低下しない。そのため、透析終盤においても、製品室14への有用陰イオン以外のイオンの混入を低下させることができる。
また、原料室と製品室とが直接接している従来の電気透析法に比べ、本発明の陰イオンの分離方法では、原料室12対中間室13、中間室13対製品室14における有用陰イオンの濃度比が低くなるので、見かけの有用陰イオンの移動速度、言い換えると、電気的移動速度と、濃度差を動力とする拡散での逆移動速度との合計速度が下がりにくい。その結果、有用陰イオンの高い収率を得ることができる。さらに、中間室13を通過した後の原料液では、有用陰イオンの濃度が低下するため、原料室12で有用陰イオンの回収率を上げるのに有利である。
これにより、本発明の陰イオンの分離方法では、有用な陰イオンの取得収率を向上させることができる。また、原料液よりも有用陰イオン濃度の高い製品液を得ることができる。
次に、製品液中において有用陰イオンの対となる陽イオンの選択性について説明する。
例えば、特許文献2に記載されているような2室電気透析法においては、原料液中の陽イオンが、そのまま、製品液においてヨウ化物イオンの対となる陽イオンとなるため、製品液中でヨウ化物イオンの対となる陽イオンを、任意に選択できないという問題があった。そのため、例えば、ナトリウムイオンとカリウムイオンとを含む混合水溶液を原料液として用い、製品液として、カリウムを含まないヨウ化ナトリウム溶液、ナトリウムを含まないヨウ化カリウム溶液、あるいはナトリウム、カリウム以外の別のヨウ化物塩水溶液を直接製造することはできなかった。
本実施形態の電気透析法では、特開2008-272602号公報に記載されている、4室複置換電気透析法と同様に、製品液中において有用陰イオンの対となる陽イオンは、第1及び第2の副原料室11,15から供給される。そのため、第1及び第2の副原料室11,15に通液される副原料室液21,25の仕込みにおいて陽イオンを選択することにより、有用陰イオンの対となる陽イオンを任意に選択できる。
有用陰イオンの対となる陽イオンは、特に限定されないが、例えば、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、水素イオン(H)等が挙げられる。
本実施形態の電気透析法では、例えば、ナトリウムイオンとカリウムイオンとを含む混合水溶液を原料液として用いた場合に、製品液として、実質的にカリウムを含まないナトリウム塩の水溶液、実質的にナトリウムを含まないカリウム塩の水溶液、あるいは、ナトリウム、カリウム以外の別の塩の水溶液を直接製造することが可能となる。
ここで、原料液中にホウ素やフッ素が含まれている場合、ホウ素やフッ素の製品液中への移動が問題になる場合がある。
原料液中にホウ素やフッ素が含まれており、製塩業で用いられているような2室電気透析法で有用陰イオンの塩を取得した場合、製品液に移動してくるホウ素やフッ素が多量になる場合がある。
特許文献3に記載されているように、ホウ素やフッ素等の分子サイズの小さい物質は、分子状態であるかイオン状態であるかにかかわらず、拡散により非電気的にイオン交換膜を移動する。また、ホウ素やフッ素の移動の大半は、電気透析中の水の移動に随伴してイオン交換膜を透過しての移動であり、イオン交換膜を介しての拡散による移動や、イオンの電気的移動は、極わずかである。
そして、水の移動には、水和イオンの移動に伴っての移動、浸透圧差を動力とする移動と、室間圧力差による移動があり、浸透圧差により生じるものが大半である。そのため、もし水の移動を管理するならば、原料室と製品室との浸透圧を測定し、製品室の浸透圧が原料室の浸透圧を超えない範囲で運転することが好ましいと考えられる。
特に、2室電気透析法等では、透析終盤において浸透圧差による原料室から製品室への移動が、正極側と負極側の両方向になるため、その影響は、非常に大きい。このうち、室間圧力差による移動は、室液の流速をコントロールすることで防ぐことが可能である。また、水和イオンの移動に伴う水の移動は、必然的であり、防止することはできない。
浸透圧差による水の移動については、原料室の浸透圧を製品室の浸透圧より高く維持することで、水の移動を製品室から原料室への一方向にコントロールすることができる。
特許文献2及び特開2021-79318号公報には、原料液中の有用陰イオン濃度を測定し管理することが記載されている。そして、上記公報に記載されているように、有用陰イオン濃度が原料液中の濃度より低い製品液のみを取得する方法でも、ホウ素あるいはフッ素の含有量が少ない製品液を得ることが可能であるが、稀薄製品液しか得られないため、合理的な方法ではない。
また、電解質もしくは非電解質等の浸透圧を上げる成分を、原料室液に多量に投入して電気透析を行う方法も、有用陰イオン採取後の原料液の処理が難しくなるため、合理的ではない。いずれにしても、有用陰イオン濃度を常時測定し管理していくこと、及び製品室を透析途中で切り替えることは、操作が煩雑である。
そこで、本実施形態の陰イオンの分離方法では、原料室12の浸透圧が、常に、中間室13及び第1の副原料室11の浸透圧よりも高く保持されるように、電気透析槽1の運転を行うことが好ましい。
前述したように、この電気透析槽1においては、原料室12及び中間室13の浸透圧は、透析運転中ほとんど増減しないため、透析運転開始時の仕込みによって、原料室12の浸透圧を、中間室13の浸透圧よりも高くすること、及び、透析運転中も、常に、原料室12の浸透圧が中間室13の浸透圧よりも高い状態を、容易に実現することができる。これにより、透析運転中における、浸透圧差を動力とする水の移動を、中間室13から原料室12への一方向に限定することができる。
従来の2室電気透析法、バイポーラ膜電気透析法、あるいは4室複置換電気透析法において、原料室の浸透圧は、単調に減少し、原料室に接する製品室の浸透圧は、単調に上昇する。そのため、原料室の浸透圧を製品室の浸透圧よりも高く保持することは、本実施形態の方法に比べて容易ではない。
また、この電気透析槽1においては、第1の副原料室11の浸透圧は、透析運転中、単調に減少する。そのため、透析運転開始時の仕込みの段階で、第1の副原料室11の浸透圧が、原料室12の浸透圧より低くなるように設定すれば、透析運転中、常に、第1の副原料室11の浸透圧が原料室12の浸透圧よりも低い状態、言い換えると、原料室12の浸透圧が、第1の副原料室11の浸透圧よりも高い状態を、容易に保つことができる。これにより、透析運転中における、浸透圧差を動力とする水の移動を、第1の副原料室11から原料室12への一方向に限定することができる。
これにより、浸透圧差を動力とする水の移動に随伴した、ホウ素もしくはフッ素の原料室12から中間室13、及び原料室12から第1の副原料室11への移動は、効果的に抑制される。また、水和イオンの移動に伴うホウ素もしくはフッ素の移動や、拡散による非電気的移動は、そのまま残ることになるが、これらを原因とするホウ素もしくはフッ素の移動量は、浸透圧差を動力とする水の移動に随伴するホウ素もしくはフッ素の移動に比べて少ない。また、仕込み時点では、中間室液23及び副原料室液21,25にはホウ素もしくはフッ素がほとんど含まれないため、結果的に、原料液中のホウ素もしくはフッ素の製品液への移動を著しく減少させることができる。
さらに、電気透析槽1では、原料室12と製品室14との間に中間室13を設けることで、原料室12と製品室14とが直接接していない構造になるため、拡散による製品室14へのホウ素及びフッ素の移動も抑制される。
その結果、原料液中にホウ素もしくはフッ素が含まれる場合においても、ホウ素もしくはフッ素の含有量が少ない製品液を取得することができる。
透析終了後、中間室液23には有用陰イオンが多量に残るが、次バッチで原料室液22もしくは、原料室液22の一部として使用されるので、透析終了後、中間室13に残る有用陰イオンはロスにはならない。
電気透析槽1において、電極室を仕切るイオン交換膜として、陽イオン交換膜を用いた場合には、負極室10に接する室から、陽イオン交換膜4Cを介して負極室10に陽イオンが移動していく。また、正極室16に接する室には、正極室16から、陽イオン交換膜9Cを介して陽イオンが移動してくる。そのため、片側では濃縮、反対側では希釈が起こる。正極室16と接する室と、負極室10と接する室とを同じ室にしておけば、それぞれの室液は、電気透析槽1の通過後に混合されて元の濃度に戻るため、不都合を生じないが、別の室にした場合には、希釈及び濃縮が積算されていくため問題が生じる場合がある。そのため、電気透析槽1において、正極室16と接する室と、負極室10と接する室とを同じ室にすることが好ましい。
また、正極室16に接する室からは、わずかであるが、陽イオン交換膜9Cを介して陰イオンが正極室16に移動していく。したがって、両電極室に接する室は、有用陰イオン濃度が最も低い室を選択することが好ましい。有用陰イオンの電極室への移動は、単にロスの問題だけでなく、有用陰イオンが電極室内で電極を腐蝕したり、電極で酸化されて腐蝕性の強いガスを発生したりする場合があり、電極等を守る観点からも、両電極室に接する室は、有用陰イオン濃度が最も低い室にすることが好ましい。一方、副原料室液21,25に含まれる陰イオンは、任意に選択できるものであるから、電極室で使用する陰イオンと同一のイオンを選択することもできるし、電極室に移動しても悪影響を及ぼさないイオンを選択することもできる。
なお、特許文献3等に記載されているような4室複置換電気透析法において、電極室の隣に副塩室を設置している場合がある。4室複置換電気透析法における各室の有用陰イオン濃度は、仕込み時では、原料室>製品室>>>副塩室≒副原料室≒0であるが、終了付近では、製品室>原料室>>副塩室>副原料室となる。
これに対し、本発明の陰イオンの分離方法において、電気透析槽1の各室の有用陰イオン濃度は、仕込み時では、中間室13>原料室12>製品室14>>第1及び第2の副原料室11,15≒0、もしくは、原料室12>中間室13≧製品室14>>第1及び第2の副原料室11,15≒0であり、終了付近では、製品室14>中間室13>>原料室12>第1及び第2の副原料室11,15となる。4室複置換電気透析法における副塩室に相当する、原料室12では、有用陰イオン濃度が著しく高い。
そのため、本実施形態の副原料室を有する電気透析槽1において、両電極室と接する室は、有用陰イオン濃度が最も低い、副原料室であることが好ましい。
副原料室を有する電気透析槽1において、正極室16と接する室と、負極室10と接する室を同じ室とし、両電極室に接する室を副原料室(第1の副原料室11、第2の副原料室15)とすることで、陽イオン交換膜を介して電極室に陰イオンが侵入した時の影響を最も少ないものとすることができる。
なお、第2の副原料室15での有用陰イオンの濃度は、製品室14から陽イオン交換膜8Cを介しての移動があるため、運転中上昇する。一方、第1の副原料室11では、有用陰イオンは、第1の副原料室11の正極側に配置された第1の陰イオン交換膜5Aを介し、さらに正極側に配置された原料室12に優先的に移動するため、第1の副原料室11中に蓄積してはいかない。
一方、特許文献2,3に記載されている電気透析槽の副塩室では、正極側が陽イオン交換膜で仕切られているため、副原料室から移動してきた有用陰イオンが時間とともに蓄積していく。
[1-1]電気透析槽について
電気透析槽1では、両側に一対の電極が配置され、これら一対の電極のうちの一方が負極2(陰極)とされ、他方が正極3(陽極)とされる。
正極3を構成する材料としては、例えば、白金(Pt)、カーボン(C)、ニッケル(Ni)や、チタン(Ti)/白金、ルテニウム(Ru)/チタン、イリジウム(Ir)/チタン、チタン/パラジウム(Pd)等の複合材料(例えば、合金、メッキ等)等が挙げられる。
負極2を構成する材料としては、例えば、鉄(Fe)、ニッケル、白金、チタン/白金、カーボン、ステンレス鋼としてのクロム(Cr)鋼等が挙げられる。
電気透析槽1は、図示しない切欠部を有する平面視で矩形状の枠体としての室枠を備えている。
この室枠の長手方向に沿った両端部の内側に正極3、負極2が取り付けられ、この電気透析槽1の負極2の正極側に配置された陽イオン交換膜4Cによって負極側の電極室(負極室10)が構成され、正極3の負極側に配置された陽イオン交換膜9Cによって正極側の電極室(正極室16)が構成される。
これら負極室10と正極室16との間には、負極側から正極側へ向かって、第1の陰イオン交換膜5A、第2の陰イオン交換膜6A、第3の陰イオン交換膜7A及び陽イオン交換膜8Cが順次配置されている。そして、これらイオン交換膜によって、負極室10から正極室16へ向かって、第1の副原料室11、原料室12、中間室13、製品室14、及び第2の副原料室15に仕切られている。
そして、第1の副原料室11、第1の陰イオン交換膜5A、原料室12、第2の陰イオン交換膜6A、中間室13、第3の陰イオン交換膜7A、製品室14及び陽イオン交換膜8Cの4室4膜を一組として、数組から数百組程度(n組)が繰り返し配置される。繰り返し回数nとしては、特に限定されないが、例えば、数組から数百組程度、より具体的には、4組以上1800組以下であることが好ましい。
なお、以下の説明では、陽イオン交換膜4C、陽イオン交換膜8C、及び陽イオン交換膜9Cを総称して「陽イオン交換膜」と記す場合がある。
また、以下の説明では、第1の陰イオン交換膜5A、第2の陰イオン交換膜6A及び第3の陰イオン交換膜7Aを総称して「陰イオン交換膜」と記す場合がある。
また、以下の説明では、負極室10、第1の副原料室11、原料室12、中間室13、製品室14、第2の副原料室15及び正極室16を総称して「液室」と記す場合がある。
各イオン交換膜にてそれぞれ仕切られた各液室における室枠の内面には、この室枠の内部に連通した図示しない液供給口及び液排出口が設けられている。また、室枠内には、この室枠内の厚みを均一にする配流作用を有する図示しないスペーサが設けられている。
これら負極室10、第1の副原料室11、原料室12、中間室13、製品室14、第2の副原料室15及び正極室16には、それぞれ目的に応じた室液が、所定濃度及び所定液量に調整され、それぞれ個別に通過させる。
各液室には、それぞれ、対応する室液をワンパスで通過させてもよいし、循環で通過させてもよい。
また、これら室液を供給させる図示しない外部タンクを設けて、これら室液を液室と外部タンクとの間でそれぞれを循環させてもよい。
第1の副原料室11には、副原料室液21を通過させ、第2の副原料室15には、副原料室液25を通過させる。副原料室液21,25は、例えば、製品室14の出口から得られる製品液において、有用陰イオンの対になる陽イオンを含む水溶液である。
原料室12には、原料室液22を通過させる。原料室液22は、例えば、中間室13を通過させた液もしくは、中間室13を通過させた液に原料液を加えた液である。
中間室13には、中間室液23を通過させる。中間室液23は、例えば、原料液、もしくは希釈した製品液である。
ここで、原料液は、有用陰イオンを含む水溶液である。
また、希釈した製品液とは、ワンパス運転の場合には、製品室14の出口から得られる製品液を水で希釈した液であり、循環運転の場合には、前バッチで取得した製品液を水で希釈した液である。
製品室14には、製品室液24を通過させる。製品室液24は、例えば、原料液に含まれる有用陰イオンと、副原料室液21,25に含まれる陽イオンとによって合成された塩もしくは酸の水溶液である。製品室液24は、例えば、希釈した製品液である。
なお、製品室液24及び製品室14の出口から得られる製品液が、塩の水溶液になるか、酸の水溶液になるかは、副原料室液21,25中に含まれる陽イオンによって任意に決定される。
原料液にホウ素もしくはフッ素が実質的に含まれていない場合、或いは、原料液にホウ素もしくはフッ素が含まれていても、ホウ素もしくはフッ素の製品液中への移動が問題にならない場合においては、中間室13には、中間室液23として原料液を通過させ、原料室12には、原料室液22として、中間室13を通過させた液を通過させることができる。
また、原料液にホウ素もしくはフッ素が含まれており、ホウ素もしくはフッ素の製品液中への移動を抑制する必要がある場合、第1及び第2の副原料室11,15には、原料室液22よりも低い浸透圧に調整された副原料室液21,25を供給し、中間室13には、中間室液23として、原料室液22よりも低い浸透圧に調整された、製品液の希釈液を通過させ、原料室12には、原料室液22として、中間室13を通過させた液に原料液を加えた液を通過させることが好ましい。
これにより、透析運転中、原料室12の浸透圧を、常に、中間室13及び第1の副原料室11の浸透圧よりも高く保持することができ、浸透圧差を動力とした水の移動に随伴しての、ホウ素もしくはフッ素の製品液中への移動を確実に抑制することができる。
(陰イオン交換膜)
陰イオン交換膜としては、陰イオンの選択透過性を高めた膜を好適に用いることができる。このような陰イオン選択透過膜としては、例えば、強酸性スチレン-ジビニルベンゼン系均一陰イオン交換膜等が用いられる。
陰イオン交換膜の具体例としては、例えば、ネオセプタASE(株式会社アストム製)、ネオセプタAHA(株式会社アストム製)、ネオセプタAXPD(株式会社アストム製)、セレミオンAMV-N(AGC株式会社製)、セレミオンASV-N(AGC株式会社製)等が挙げられる。
(陽イオン交換膜)
陽イオン交換膜としては、陽イオンの選択透過性を高めた膜を好適に用いることができる。
陽イオン交換膜の具体例としては、例えば、ネオセプタCSE(株式会社アストム製)、ネオセプタCXPX(株式会社アストム製)、セレミオンCMVN(AGC株式会社製)、セレミオンCSO(AGC株式会社製)等が挙げられる。
[1-2]原料液について
有用な陰イオンを含む水溶液である原料液としては、特に限定されないが、例えば、液晶画面用変光膜、具体的には、ヨウ素付加ポリビニルアルコール偏光膜製造時に発生する廃液、ヨウ素工業におけるヨウ素濃縮液、製塩業におけるにがり液(臭化物イオンを含む)等を用いることができ、中でも、液晶画面用変光膜製造時に発生する廃液を好適に用いることができる。
また、原料液に含まれる有用な陰イオンとしては、所定の目的で利用できるものであれば、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヨウ化物イオン(I)、臭化物イオン(Br)、塩化物イオン(Cl)、有機酸イオン等が挙げられ、中でも、ヨウ化物イオン(I)であることが好ましい。
なお、以下の説明では、有用な陰イオンがヨウ化物イオンであり、有用な陰イオンを含む原料液として、液晶画面用偏光膜製造時に発生するヨウ素含有廃液を用いた場合について中心的に説明する。
以下の説明では、液晶画面用偏光膜製造時に発生するヨウ素含有廃液を「液晶廃液」と記す場合がある。
液晶画面用偏光膜の製造においては、染色、架橋及び延伸工程等においてヨウ素、ヨウ化カリウム(KI)、ホウ素含有化合物(代表的には、ホウ酸(HBO))が大量に用いられている。さらに、偏光膜の原反としてポリビニルアルコール系樹脂フィルムが用いられている。
したがって、液晶廃液中には、有用な陰イオンであるヨウ化物イオンが含まれており、それ以外にも、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ヨウ素酸イオン、ホウ素化合物、ポリビニルアルコール(PVA)等が含まれている。液晶廃液中のヨウ化物イオンの含有率は、例えば、13質量%以上15質量%以下である。また、液晶廃液中において、ホウ素は、ポリホウ酸イオンの形で存在すると推定される。
液晶廃液中には、その他の微量成分が含まれていてもよい。このような微量成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の低級多価アルコール類、アニオン系界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
[1-2-1]原料液の前処理について
原料液を電気透析槽1に供給して電気透析を行う前に、原料液に対し、所定の前処理を施しておくことが好ましい。
これにより、電気透析を好適に行うことができ、上述した本発明の効果をより顕著なものとすることができる。
原料液が、液晶廃液のようなヨウ素含有廃液である場合、前処理を施す目的としては、例えば、(1)ヨウ化物イオン以外の動態のヨウ素成分をヨウ化物イオンに還元すること、(2)原料液に界面活性剤が含まれている場合には、界面活性剤をその限界ミセル濃度以下になるまで除去すること、等が挙げられる。
[1-2-1-1]ヨウ化物イオン以外のヨウ素成分の還元
原料液中に含まれるヨウ化物イオン以外の動態のヨウ素成分の、ヨウ化物イオンへの還元について説明する。
原料液中に含まれるヨウ化物イオン(I)以外の動態のヨウ素成分としては、例えば、ヨウ素(I)、ヨウ素酸イオン(IO )、次亜ヨウ素酸(HIO)、三ヨウ化物イオン(I )等のポリヨウ化物イオン等が挙げられる。
ヨウ化物イオン以外のヨウ素成分については、特許文献2には、いずれの動態であっても構わない旨が記載されているが、電気透析では、原理上、ヨウ化物イオン以外の動態のヨウ素を分離取得することはできない。
例えば、原料液中に含まれるヨウ素酸イオン(IO )は、イオン選択性の問題から、電気透析では製品液中に取得できない。ヨウ素酸イオンのほぼ全量が原料室に残る。
また、電気透析では、イオン交換膜のイオン交換基に吸着されやすいイオンが、イオン交換膜の原料室側表面近傍でのイオンの存在率が高くなり移動しやすい。
ヨウ素酸イオン(IO )は、イオン交換基への吸着力が弱く、ヨウ素酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ヨウ化物イオンの中で、ヨウ素酸イオンは、陰イオン交換基へもっとも吸着されにくい。つまり、電気透析においては、ヨウ素酸イオンは、原料液中に存在する陰イオンの中で最も遅く移動する。ヨウ素酸イオンが移動するときには、他のほとんどのイオンが移動した後なので、原料液中の電解質濃度は、非常に低い状態である。この状態では、電流がほとんど流れないため、ヨウ素酸イオンは、結局移動できない。ヨウ素酸イオンは、原料液中にほぼ全量残る。
ヨウ素(I)は、電荷を持たないので電気的には移動しない。したがって、電気透析では、電荷を持たないヨウ素を製品液中に取得することはできない。
ヨウ素とヨウ化物イオンとが結合した形の三ヨウ化物イオン(I )のようなポリヨウ化物イオンは、陰イオン交換基に非常に強く吸着するため、通常の電流密度では、陰イオン交換膜を介しては移動できない。
次亜ヨウ素酸(HIO)は、pH8以上ではほぼ存在しないが、存在しているpH範囲においても、陰イオンの形では存在しない。したがって、電気透析では、電荷を持たない次亜ヨウ素酸を製品液中に取得することはできない。
このように、原料液中のヨウ化物イオン以外の動態のヨウ素を電気透析で分離取得することはできない。すなわち、ヨウ化物イオン以外の動態のヨウ素は、すべてロスになる。
そのため、ヨウ素の収率を上げるためには、電気透析に供する前の段階で、原料液中のヨウ素酸イオン(IO )、ヨウ素(I)、次亜ヨウ素酸(HIO)等をヨウ化物イオン(I)に還元しておく必要がある。
ところで、原料液が液晶廃液である場合、液晶廃液は、pH14を超える強アルカリ性である。pH8以上では、ヨウ素酸イオンは安定であり、還元剤を加えてもほとんど還元できない。例えば、「定番!科学実験 化学反応速度(時計反応)」(http://dencho.o.oo7.jp/hannousokudo.html)や「製塩工程におけるヨウ素及びフッ素の挙動」(日本海水学会誌 第50巻 第1号(1996)p23-25 新野靖他)等に記載されているように、ヨウ素酸イオンを還元するためには、まず、液晶廃液を中性から酸性、具体的には、例えば、pHを7.5以下、好ましくは7以下に調製する必要がある。
しかしながら、液晶廃液のpHを下げた場合、ホウ酸架橋PVA(ポリビニルアルコール)ゲルや、PVA結晶が生成する場合があり、注意を要する。特に、ホウ酸架橋PVAゲルが生成すると、再溶解させるのは困難である。また、ゲル内に有用陰イオンを多く含むため、分離取得できないヨウ素が多量に生じる。ゲル生成の機構についての詳細は不明であるが、pH14を超えると、ホウ酸が、七ホウ酸や八ホウ酸等の巨大なポリホウ酸イオンとなり、エステル合成反応である架橋化反応が起きにくいが、pH10未満においては、架橋化反応が最も起きやすい四ホウ酸イオンが生成することが原因と考えられる。
また、「ホウ酸架橋ポリアルコールフィルムの構造と物性」(繊維学会誌 Vol.48,No2(1992)p74-83:佐野真弘他)には、ホウ酸架橋PVAゲルのPVA濃度とゲル転移温度、言い換えると、ゲル転移温度以下でゲル状になり、ゲル転移温度以上で液状になる温度、との関係が示されているが、液晶廃液においては、文献に示された値よりもかなり高い温度、もしくはかなり低い濃度でゲル状になる。これは、共存する塩濃度が高く水分活性が低い、言い換えると、自由水割合が少ないため、高温、低濃度でもゲル化するためと考えられる。
ゲル生成を防止するためには、液晶廃液のpH調製前にポリビニルアルコール濃度を測定し、必要に応じて希釈しておくことが好ましく、pH調整と同時に希釈することがより好ましく、pH調製用の酸を希釈用水で希釈した稀薄酸水溶液中に、液晶廃液を投入することがさらに好ましい。
また、架橋ゲルが生成しない程度のポリビニルアルコール濃度を含有する液晶廃液においては、pH調製時にPVA結晶の沈殿を生じることがある。この結晶は、pH調製時にヨウ素酸イオンとヨウ化物イオンが反応し遊離ヨウ素が生じたときに発生する。元々水分活性が低く結晶化しやすい状態にあったポリビニルアルコールが、pH調製時に発生した遊離ヨウ素を包接する形で集まり、部分的にさらに高濃度になって結晶化するためと推定される。この沈殿は、核となっている遊離ヨウ素を還元後80℃以上に加熱することで溶解することができる。
しかしながら、液晶廃液中のヨウ素成分を還元することはともかく、80℃以上に加熱することは容易ではない。特に、液晶廃液を酸性条件下で60℃以上に加熱すると、液晶廃液中に硫酸イオン、亜硫酸イオンが含まれる場合、ヨウ化物イオンによってこれらが還元され、硫化水素や単体の硫黄を生じることもある。工程を容易に進めるためには、PVA結晶の沈殿を発生させないことが好ましい。PVA結晶を生成させない、言い換えると、遊離ヨウ素を生成させないためには、液晶廃液にあらかじめ亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤を加えてから、攪拌している稀薄酸水溶液中に液晶廃液を投入し、中和と還元と希釈とを同時に行う方法がさらに好ましい。
前処理において、液晶廃液のpHは、5以上7.5以下に調製されることが好ましく、6.5以上7以下に調製されることがより好ましい。
pH7.5以上では、ヨウ素酸の還元にかかる時間が長くなり、pH8以上では、実質ヨウ素酸が還元されない。
一方、pH5未満であると、ヨウ素生成速度の方が還元剤によるヨウ素酸分解速度より早くなるため、瞬間的に遊離ヨウ素が発生し、核となってPVA結晶の沈殿ができることがある。また、pH4以下では、亜硫酸が揮散しやすく、pH3以下では、亜硫酸が自己分解消失する。そのため、pH5未満の酸性域に調製すると、常時、追加の還元剤を添加し続けなければ、遊離ヨウ素を発生し、PVA結晶を生じることになる。
還元剤は、pH調整前に液晶廃液に混和しておくことが好ましい。pH調整よりも先に還元剤を液晶廃液に混和することで、還元したいヨウ素酸イオンの近傍に還元剤が平均的に存在することになるため、還元剤が不足する部分をなくすことができる。これに対して、pH調整後に還元剤を投入した場合には、還元剤が不足する部分が発生する場合がある。液晶廃液に添加した還元剤が十分かどうかは、還元剤添加後の液晶廃液数滴を稀薄酸水溶液に滴下することにより確認できる。具体的には、青く着色が残る場合には、還元剤が不足している。還元剤の投入量は、電気透析前の保管時間、電気透析運転中に消費される量を考慮して、理論量よりも過剰に添加することが好ましい。
以上をまとめると、原料液に含まれるヨウ化物イオン以外の動態のヨウ素成分をヨウ化物イオンに還元する前処理方法は、原料液のポリビニルアルコール濃度を測定し、希釈倍率を決定する第1の工程と、原料液を中和滴定し、pH7に中和するのに必要な酸の量を決定する第2の工程と、原料液に還元剤を過剰に添加する第3の工程と、希釈水で希釈した酸水溶液の中に、還元剤を添加した原料液を投入する第4の工程と、をこの順に有することが好ましい。
これにより、原料液中に含まれるヨウ化物イオン以外の動態のヨウ素成分、より具体的には、ヨウ素酸イオン(IO )、ヨウ素(I)、次亜ヨウ素酸(HIO)等を、ヨウ化物イオン(I)に好適に還元することができる。
その結果、有用陰イオンであるヨウ化物イオンの収率を向上できる。
なお、特許文献2に記載されているような方法のように、原料液をpH8以上に調製して透析運転するのであれば、ヨウ化物イオン以外のヨウ素動態をヨウ化物イオンに還元してから、もう一度pH8以上に調製しなおす必要がある。
[1-2-1-2]界面活性剤の除去
原料液が界面活性剤を含む場合、界面活性剤がイオン交換膜を覆うとイオンがイオン交換基に到達できなくなるため、電気透析の効率が著しく低下してしまう。そのため、原料液が界面活性剤を含む場合においては、前処理により界面活性剤を除去しておくことが好ましい。
界面活性剤の除去方法としては、特に限定されないが、例えば、原料液を、吸着剤を充填したカラムに通過させることで、界面活性剤を吸着剤に吸着させて除去することができる。
吸着剤としては、特に限定されないが、例えば、活性炭等を用いることができる。
上記[1-2-1-1]、[1-2-1-2]の前処理は、必要に応じて行えばよく、また、いずれか一方の処理のみを行ってもよいし、両方の処理を行ってもよい。両方の処理を行う場合、その順番は、特に限定されず、どちらを先に行ってもよい。
また、原料液に対する前処理として、上述した処理以外の処理を行ってもよい。このような処理としては、例えば、濾過等による不純物除去等の処理が挙げられる。
上述したような本実施形態の方法によれば、電気透析法において、有用な陰イオンの取得収率を向上させることができる。そして、原料液中にホウ素やフッ素が含まれている場合であっても、製品液へのホウ素やフッ素の移動を抑制することができ、ホウ素やフッ素の含有量の少ない製品液を得ることができる。また、原料液よりも有用陰イオン濃度の高い製品液を得ることができる。さらに、本実施形態の方法によれば、有用陰イオンの対となる陽イオンを任意に選択可能である。
なお、上述した説明では、有用な陰イオンを含む原料液から、電気透析法により、有用な陰イオンを製品液中に分離濃縮する場合について説明したが、本実施形態の陰イオンの分離方法は、環境保護上等の問題から、陰イオンを含む水溶液中から、リン酸イオン(PO 3-)、硝酸イオン(NO )、亜硝酸イオン(NO )等の陰イオンを分離除去する場合にも適用することができる。
また、本実施形態の陰イオンの分離方法は、ホウ素もしくはフッ素を含む原料液から、ホウ素もしくはフッ素の分離取得を妨害する陰イオンを分離除去する場合にも適用することができる。
なお、上述した説明では、電気透析槽1において、それぞれの電極室を仕切る膜として陽イオン交換膜を用いた場合を例に挙げて説明したが、電極室を仕切る膜として、陽イオン交換膜に代えて、陰イオンの移動をさらに抑制する能力を持つバイポーラ膜を用いることも可能である。
なお、バイポーラ膜とは、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを張り合わせた構造を持つイオン交換膜のことをいう。
バイポーラ膜電気透析法ではない、副原料室を備えた電気透析槽において、電極室を仕切る膜として、陽イオン交換膜に換えてバイポーラ膜を用いることが可能である。バイポーラ膜は、イオンを通過させないため、バイポーラ膜の使用は、電極の保護や、イオンバランスを保つためには都合が良いが、極室を仕切る膜としてバイポーラ膜を用いた場合には、負極室に接する室では、pHが上昇し、正極室に接する室では、pHが低下する。こちらも同じ室にしていれば、それぞれの室液は、電気透析槽の通過後に混合されるため、問題を生じることは少ないが、別の室にした場合、pH上昇、もしくは低下が積算されるので問題を生じる場合がある。そのため、両極室に接する室は、同じ室であることが好ましい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、本発明の趣旨に沿った範囲内で条件を変更したり、他の工程を加える等の改変を加えることは差し支えない。
最後に本発明の特徴について記す。
第一に、電気透析においての主体となる原料室から製品室への有用陰イオンの電気的な移動以外のマイナーな移動に着目し、それを抑える方法を開発したことである。具体的には、原料室と製品室の間で、有用陰イオンの濃度差を動力とした拡散での製品室から原料室への移動がある。電気透析槽の原料室と製品室との間に、両側が陰イオン交換膜で仕切られた中間室を設け、さらに、原料室と副塩室とを合わせて原料室とすることでこの問題を解決した。また陽イオン交換膜を介してのイオンの電気的移動により生じる極室への有用陰イオンの移動をできるだけ少なくする方法として、正極室と接する室と、負極室と接する室を同じ室とし、最も有用陰イオン濃度が少ない副原料室を極室の隣に配置することとした。
第二に、原料液中にホウ素やフッ素が含まれている場合、ホウ素やフッ素の製品液中への移動が問題になる場合がある。ホウ素やフッ素の移動は、主に、浸透圧を原因とする水の移動に随伴するものであることに着目し、それを抑える方法を開発したことである。具体的には、原料室の浸透圧が、常に、中間室及び副原料室の浸透圧よりも高く保持されるように、電気透析槽の運転を行うことでこの問題を解決した。
第三に、有用陰イオンがヨウ化物イオンであり、原料液に、ヨウ化物イオン以外の動態のヨウ素成分が含まれている場合、電気透析法ではヨウ化物イオン以外の動態のヨウ素成分を回収することができず、ロスになっていることに着目し、それを抑える方法を開発したことである。具体的には、電気透析に供する前に、前処理により、原料液中のヨウ化物イオン以外の動態のヨウ素をヨウ化物イオンに還元しておくことでこの問題を解決した。
第四に、製品液中において有用陰イオンの対となる陽イオンの選択性が挙げられる。本発明の方法では、製品液中において有用陰イオンの対となる陽イオンは、副原料室液から供給されるため、副原料室液の仕込みにおいて陽イオンを選択することにより、有用陰イオンの対となる陽イオンを任意に選択できる。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
以下で説明する、実施例1及び2、比較例1においては、電気透析槽(旭化成株式会社製、G4型:有効膜面積2dm)を含む電気透析装置を用いて電気透析を行った。陽イオン交換膜には、セレミオンCSO(AGC株式会社製)を、陰イオン交換膜には、セレミオンAMV-N(AGC株式会社製)、及びセレミオンASV-N(AGC株式会社製)を用いた。
なお、陰イオンの分析に際しては、試料を純水で希釈し、イオンクロマトグラフ(メトローム社製883プロフェッショナルケミカルサプレッサー付き、炭酸ガスサプレッサー付き)を用いて測定した。また、ホウ素の分析には、原子吸光法を用いた。
(比較例1)
<電気透析槽の構成>
電気透析槽は負極と正極との間に負極側から、負極室、陽イオン交換膜に続き、副塩室、陽イオン交換膜、原料室、陰イオン交換膜である第1の陰イオン交換膜、製品室、陽イオン交換膜、副原料室、陰イオン交換膜である第2の陰イオン交換膜の順に4室4膜を一組とする4組を配置し、続けて、副塩室、陽イオン交換膜、正極室を配置した。
第1の陰イオン交換膜には、セレミオンASV-Nを用い、第2のイオン交換膜には、セレミオンAMV-Nを用いた。
<仕込み液の調製>
以下の各室の仕込み液を調製した。
極室液:5質量%硫酸ナトリウム水溶液2000mL
製品室液:ヨウ化物イオン24.5gを含む水溶液1000mL
原料室液:ヨウ化物イオン127g、塩化物イオン35.5g、ホウ素1.1g(ホウ酸6.1g)を含む水溶液1200mL
副原料室液:塩化物イオン42gを含む水溶液2000mL
副塩室液:塩化物イオン10gを含む水溶液800mL
<電気透析>
電極室(正極室及び負極室)には極室液をそれぞれ1.5L/分の流速で、循環で通液し、製品室には製品室液を、原料室には原料室液を、副原料室には副原料室液を、副塩室には副塩室液を、それぞれ0.2L/分の流速で、循環で通液した。
<イオン量分析>
運転を2A定電流運転で3.5時間行い、製品室、原料室、副原料室、及び副塩室からの排出液を取得し、それぞれの取得液中の、ヨウ化物イオン(I)、塩化物イオン(Cl)、及びホウ素量を分析した。
その結果、以下の各室からの取得液を得た。
製品室からの取得液:ヨウ化物イオン124.5g、塩化物イオン5.0g、ホウ素0.21gを含む水溶液1200mL
原料室からの取得液:ヨウ化物イオン15.1g、塩化物イオン30.5g、ホウ素0.73gを含む水溶液800mL
副原料室液からの取得液:ヨウ化物イオン1.6g、塩化物イオン3.6g、ホウ素0.020gを含む水溶液1500mL
副塩室液からの取得液:ヨウ化物イオン10.3g、塩化物イオン4.2g、ホウ素0.032gを含む水溶液1100mL
<ヨウ素収率及びホウ素移動率の算出>
そして、ヨウ素収率及びホウ素移動率を、以下の式から算出した。
ヨウ素収率(%)={製品室からの取得ヨウ素量÷(原料室への仕込みヨウ素量+製品室への仕込みヨウ素量)}×100
ホウ素移動率(%)=(製品室からの取得ホウ素量÷原料室への仕込みホウ素量)×100
その結果、ヨウ素収率は、82%であり、ホウ素移動率は、19%であった。
結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
Figure 0007284356000002
Figure 0007284356000003
<結果>
原料液中のヨウ化物イオンのうち82%が製品液中に取得できた。また、原料液から製品液へのホウ素の移動率は19%であった。
また、比較例1では、透析運転中、極室液に遊離ヨウ素による着色がみられた。このことは、負極室の隣の室の陰イオンが陽イオン交換膜を介して容易に移動したことを示している。
(実施例1)
<電気透析槽の構成>
電気透析槽は、負極と正極との間に負極側から、負極室、陽イオン交換膜に続き、第1の副原料室、陰イオン交換膜である第1の陰イオン交換膜、原料室、陰イオン交換膜である第2の陰イオン交換膜、中間室、陰イオン交換膜である第3の陰イオン交換膜、製品室、陽イオン交換膜の順に4室4膜を一組とする4組を配置し、続けて、第2の副原料室、陽イオン交換膜、正極室を配置した。
第1の陰イオン交換膜には、セレミオンAMV-Nを用い、第2及び第3のイオン交換膜には、セレミオンASV-Nを用いた。
<仕込み液の調製>
以下の各室の仕込み液を調製した。
極室液:5質量%硫酸ナトリウム水溶液2000mL
製品室液:ヨウ化物イオン24.5gを含む水溶液1000mL
原料室液:ヨウ化物イオン127g、塩化物イオン35.5g、ホウ素1.1g(ホウ酸6.1g)を含む水溶液1200mL
副原料室液:塩化物イオン42gを含む水溶液2000mL
中間室液:ヨウ化物イオン20.3gを含む水溶液800mL
<電気透析>
電極室(正極室及び負極室)には極室液をそれぞれ1.5L/分の流速で、循環で通液し、副原料室には副原料室液を、原料室には原料室液を、中間室には中間室液を、製品室には製品室液を、それぞれ0.2L/分の流速で、循環で通液した。
<イオン量分析>
運転を2A定電流運転で4時間行い、副原料室、原料室、中間室、及び製品室からの排出液を取得し、それぞれの取得液中の、ヨウ化物イオン(I)、塩化物イオン(Cl)及びホウ素量を分析した。
その結果、以下の各室からの取得液を得た。
製品室からの取得液:ヨウ化物イオン136.9g、塩化物イオン6.7g、ホウ素0.0017gを含む水溶液1100mL
原料室からの取得液:ヨウ化物イオン25.7g、塩化物イオン65.6g、ホウ素0.84gを含む水溶液1300mL
副原料室からの取得液:ヨウ化物イオン2g、塩化物イオン2.7g、ホウ素0.025gを含む水溶液1850mL
中間室からの取得液:ヨウ化物イオン3.6g、塩化物イオン4.2g、ホウ素0.032gを含む水溶液1100mL
<ヨウ素収率及びホウ素移動率の算出>
そして、ヨウ素収率及びホウ素移動率を、以下の式から算出した。
ヨウ素収率(%)={1-(原料室からの取得ヨウ素量+副原料室からの取得ヨウ素量)÷(原料室への仕込みヨウ素量+中間室への仕込みヨウ素量)}×100
ホウ素移動率(%)=(製品室からの取得ホウ素量÷原料室への仕込みホウ素量)×100
その結果、ヨウ素収率は、80%であり、ホウ素移動率は、0.15%であった。
結果を表3及び表4にそれぞれ示す。
Figure 0007284356000004
Figure 0007284356000005
<結果>
実施例1では、ホウ素の除去を主目的としての電気透析を行った。その結果、原料液中のヨウ化物イオンのうち80%を製品液中に取得できた。また、原料液から製品液へのホウ素の移動率を0.15%に抑えることができた。
また、実施例1では、比較例1に比べて、製品液へのホウ素の移動をさらに低く抑えることができた。すなわち、実施例1では、仕込み時において、原料室の浸透圧が、中間室及び副原料室の浸透圧よりも高くなるように調整することで、浸透圧差を動力とする水の移動に随伴しての、製品室へのホウ素の移動が好適に抑制されていることが確認された。
また、実施例1では、透析運転中、極室液に遊離ヨウ素による着色は見られなかった。すなわち、実施例1では、電極室に接する液室を副原料室とすることで、電極室へのヨウ化物イオンの移動が、好適に抑えられていることが確認された。
(実施例2)
<電気透析槽の構成>
電気透析槽は実施例1と同じ構成のものを用いた。
<原料液への前処理>
原料液として液晶廃液を用い、前処理により、液晶廃液中に含まれるヨウ化物イオン以外の動態のヨウ素成分を、ヨウ化物イオンへ還元した。
<仕込み液の調製>
以下の各室の仕込み液を調製した。
極室液:5質量%硫酸ナトリウム水溶液2000mL
製品室液:前バッチ(実施例1)の製品液を希釈した水溶液であり、ヨウ化物イオン9.85g、塩化物イオン0.5g、硫酸イオン0.8g、ホウ素0.0g、TOC(全有機炭素)0.015gを含む水溶液500mL
原料室液:前バッチ(実施例1)の中間室液残液であり、ヨウ化物イオン36.6g、塩化物イオン15.3g、硫酸イオン3.3g、ホウ素0.56g、TOC 0.85gを含む水溶液1350mL
副原料室液:塩化物イオン1.1g、硫酸イオン32.5g、ホウ素0.0g、TOC 0.09gを含む水溶液1000mL
中間室液:前処理済みの液晶廃液であり、ヨウ化物イオン68.1g、塩化物イオン11.9g、硫酸イオン3g、ホウ素0.78g、TOC 0.84gを含む水溶液1400mL
<電気透析>
電極室(正極室及び負極室)には極室液をそれぞれ1.5L/分の流速で、循環で通液し、副原料室には副原料室液を、原料室には原料室液を、中間室には中間室液を、製品室には製品室液を、それぞれ0.2L/分の流速で、循環で通液した。
<イオン量分析>
運転を3A定電流運転で2.5時間行い、副原料室、原料室、中間室、及び製品室からの排出液を取得し、それぞれの取得液中の、ヨウ化物イオン(I)、塩化物イオン(Cl)、硫酸イオン(SO 2-)、ホウ素及び、TOC(全有機炭素)量を分析した。
その結果、以下の各室からの取得液を得た。
製品室からの取得液:ヨウ化物イオン95.5g、塩化物イオン5.2g、硫酸イオン2.4g、ホウ素0.044g、TOC0.041gを含む水溶液700mL
原料室からの取得液:ヨウ化物イオン2.1g、塩化物イオン10g、硫酸イオン30.6g、ホウ素0.47g、TOC 0.88gを含む水溶液1350mL
副原料室からの取得液:ヨウ化物イオン1.4g、塩化物イオン1.2g、硫酸イオン2.5g、ホウ素0.020g、TOC 0.018gを含む水溶液850mL
中間室からの取得液:ヨウ化物イオン14.5g、塩化物イオン4.2g、硫酸イオン4.2g、ホウ素0.76g、TOC0.87gを含む水溶液1370mL
<ヨウ素収率及びホウ素移動率の算出>
そして、ヨウ素収率及びホウ素移動率を、以下の式から算出した。
ヨウ素収率(%)={(中間室への仕込みヨウ素量-原料室からの取得ヨウ素量-副原料室からの取得ヨウ素量)÷中間室への仕込みヨウ素量}×100
ホウ素移動率(%)=(製品室からの取得ホウ素量÷中間室への仕込みホウ素量)×100
その結果、ヨウ素収率は、95%であり、ホウ素移動率は、5.6%であった。
結果を表5及び表6にそれぞれ示す。
Figure 0007284356000006
Figure 0007284356000007
<結果>
実施例2では、ヨウ素の収率向上を主目的としての電気透析を行った。その結果、原料液中のヨウ化物イオンのうち95%を製品液中に取得できた。また、原料液から製品液へのホウ素の移動率を5.6%に抑えることができた。特に、実施例2では、前処理により、原料液中に含まれるヨウ化物イオン以外の動態のヨウ素を、ヨウ化物イオンに還元しておくことで、比較例1、実施例1に比べて、原料液中のヨウ化物イオンを、さらに高い収率で取得することができた。
また、実施例2では、比較例1に比べて、製品液へのホウ素の移動をより低く抑えることができた。すなわち、実施例2では、仕込み時において、原料室の浸透圧が、中間室及び副原料室の浸透圧よりも高くなるように調整することで、浸透圧差を動力とする水の移動に随伴しての、製品室へのホウ素の移動が好適に抑制されていることが確認された。
また、実施例2では、透析運転中、極室液に遊離ヨウ素による着色は見られなかった。すなわち、実施例2では、電極室に接する液室を副原料室とすることで、電極室へのヨウ化物イオンの移動が、好適に抑えられていることが確認された。また、電極室に移動したヨウ化物イオンによるロスが抑えられたことにより、比較例1に比べて収率がさらに向上した。
仕込み液の調製において、ホウ素(ホウ酸)に代えて、フッ素(フッ素含有化合物)を用いた以外は、前記実施例と同様にして電気透析を行ったところ、前記と同様に良好な結果が得られた。
本発明の陰イオンの分離方法は、有用な陰イオンを含む原料液から、電気透析法により陰イオンを製品液中に分離濃縮する陰イオンの分離方法であって、負極と正極との間に、負極側から、負極室、陽イオン交換膜に続けて、副原料室、陰イオン交換膜である第1の陰イオン交換膜、原料室、陰イオン交換膜である第2の陰イオン交換膜、中間室、陰イオン交換膜である第3の陰イオン交換膜、製品室、陽イオン交換膜の順に、4室4膜を一組とする膜室組を複数繰り返し配置し、続けて副原料室、陽イオン交換膜、正極室を配置した電気透析槽を用いる方法である。
本発明の陰イオンの分離方法によれば、有用な陰イオンの取得収率を向上させることができる。
したがって、本発明の陰イオンの分離方法は、産業上の利用可能性を有する。
1 電気透析槽
2 負極
3 正極
4C 陽イオン交換膜
5A 第1の陰イオン交換膜
6A 第2の陰イオン交換膜
7A 第3の陰イオン交換膜
8C 陽イオン交換膜
9C 陽イオン交換膜
10 負極室
11 第1の副原料室
12 原料室
13 中間室
14 製品室
15 第2の副原料室
16 正極室
21 副原料室液
22 原料室
23 中間室液
24 製品室液
25 副原料室液
26 負極室液
27 正極室液

Claims (5)

  1. 有用な陰イオンを含む原料液から前記有用な陰イオンを製品液中に分離濃縮し、前記製品液中で、前記有用な陰イオンおよび対となる陽イオンから、塩もしくは酸を合成する電気透析法であり、
    前記製品液中で前記有用な陰イオンと対となる陽イオンは、当該対となる陽イオンを含む副原料室液から供給されるものであり、
    前記電気透析法として、前記副原料室液が通過する副原料室、第1の陰イオン交換膜、原料室、第2の陰イオン交換膜、中間室、第3の陰イオン交換膜、製品室、陽イオン交換膜までの4室4膜を一組として繰り返し配置される電気透析槽を用いることを特徴とする陰イオンの分離方法。
  2. 前記副原料室には、前記副原料室液を通過させ、
    前記原料室には、前記中間室を通過させた液もしくは、前記中間室を通過させた液に前記原料液を加えた液を通過させ、
    前記中間室には、前記原料液、もしくは希釈した前記製品液を通過させ、
    前記製品室には、前記製品液を希釈した液を通過させる、請求項1に記載の陰イオンの分離方法。
  3. 前記原料室の浸透圧が、常に、前記中間室及び前記副原料室の浸透圧よりも高く保持されるように、前記電気透析槽の運転を行う、請求項1又は2に記載の陰イオンの分離方法。
  4. 前記副原料室を有する前記電気透析槽において、正極室と接する室と、負極室と接する室が同じ室であり、両電極室に接する室が前記副原料室である請求項1又は2に記載の陰イオンの分離方法。
  5. 前記有用な陰イオンを含む前記原料液が、液晶画面偏光膜製造時に発生する廃液であり、前記有用な陰イオンが、ヨウ化物イオンである、請求項1又は2に記載の陰イオンの分離方法。
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