以下、本開示の加熱調理器である炊飯器の具体的な実施の形態として圧力式炊飯器について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本開示の加熱調理器としては、以下の実施の形態に記載した圧力式炊飯器の構成に限定されるものではなく、以下の実施の形態において説明する技術的特徴を有する技術的思想と同等の技術に基づく加熱調理器の構成を含むものである。
また、以下の実施の形態において示す数値、形状、構成、ステップ(工程、モード)、およびステップの順序などは、一例を示すものであり、発明を本開示の内容に限定するものではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、図面においては、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
以下の実施の形態の説明においては、説明の便宜上、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」などの方向を示す用語を用いる場合があるが、これらの用語は本開示の加熱調理器の一例である炊飯器の使用状態を限定することを意味するものではない。
先ず始めに、本開示の加熱調理器における各種態様を例示する。
本開示に係る第1の態様の加熱調理器は、
天面部が開口し、被調理物を収納する鍋、
前記鍋を収容可能な鍋収容部を有する加熱調理器本体
前記鍋の天面部の開口を閉成する蓋、および
前記蓋が装着され、前記加熱調理器本体に収納された前記鍋を閉成するように前記加熱調理器本体に係止可能な蓋体、を備えた加熱調理器であって、
前記蓋体は、自動挟着機構を備え、
前記自動挟着機構は、
前記蓋が装着された前記蓋体において、前記蓋の外周位置に沿って配設された複数の挟着ユニットと、
前記挟着ユニットを固定し、前記蓋体に固定された挟着ユニット固定板と、を有し、
前記蓋を装着した前記蓋体が前記鍋を収納した前記加熱調理器本体に係止されて、前記蓋が前記鍋の天面部の開口を閉成した状態において、前記挟着ユニットは、前記蓋の外周縁部と接触する挟着部を含み、
前記鍋の内部の圧力が上昇したとき、前記蓋の外周縁部が前記鍋の外周縁部に対して持ち上がり、前記蓋の外周縁部により押圧された前記挟着部が回動して、前記挟着部が前記蓋の外周縁部と前記鍋の外周縁部とを挟み付けて挟着するよう構成されている。このように構成された第1の態様の加熱調理器は、軽量化、小型化を達成した、信頼性および安全性の高い加熱調理器を提供することができる。また、第1の態様の加熱調理器においては、自動挟着機構が設けられているため、蓋体を頑丈で重量物の枠体で構成する必要がなくなり、蓋体を簡単な構成で軽量化および小型化を図ることが可能となり、取り扱いが容易な構成となる。
本開示に係る第2の態様の加熱調理器において、前記の第1の態様における前記挟着部は、前記蓋体に装着された前記蓋の配設方向に突出する一方の上部挟着端と他方の下部挟着端とを有して一体的に揺動するよう構成されており、
前記蓋が前記鍋の開口を閉成した状態において、前記上部挟着端が前記前記蓋の外周縁部の上面側に接触し、前記下部挟着端が前記鍋の外周縁部の下面側に入り込む直前位置に配置され、
前記鍋の内部の圧力が上昇したとき、前記蓋の外周縁部が前記上部挟着端を持ち上げて、前記挟着部が回動し、前記下部挟着端が前記鍋の外周縁部の下面側に入り込み、前記挟着部の前記上部挟着端と前記下部挟着端とにより前記蓋の外周縁部と前記鍋の外周縁部とを挟着するよう構成されてもよい。このように構成された第2の態様の加熱調理器においては、安全性および信頼性を確保するための複雑で特別な機構を設ける必要がなくなり、装置のシンプル化、小型化、軽量化に大きく寄与する構成となる。
本開示に係る第3の態様の加熱調理器において、前記の第第2の態様における前記挟着部は付勢部を有し、前記蓋が前記鍋の開口を閉じた状態において、前記鍋の内部の圧力が大気圧のとき、前記付勢部の付勢力により前記挟着部が回動して、前記上部挟着端が前記蓋の外周縁部を前記鍋の外周縁部の方向に押圧し、前記下部挟着端が前記鍋の外周縁部から離れるように構成されてもよい。このように構成された第3の態様の加熱調理器においては、加熱調理器本体に対して蓋体を容易に開閉することが可能となると共に、蓋体が加熱調理器本体を閉じた閉成状態においては、挟着部が蓋の外周縁部と鍋の外周縁部とを挟着可能な位置に確実に配置される構成となる。
本開示に係る第4の態様の加熱調理器は、前記の第1から第3の態様におけるいずれかの態様において、前記挟着部の回動中心が、前記蓋の外周縁部と前記挟着部との接触位置より外側に配置され、前記鍋の外周縁部の上方となるように配設されてもよい。このように構成された第4の態様の加熱調理器においては、挟着部と蓋の外周縁部との接触により、挟着部が回動し、挟着部の回動時の最下点の位置に鍋の外周縁部が配置される構成となり、蓋の外周縁部と鍋の外周縁部とを挟着部により確実に挟着可能な構成となる。
本開示に係る第5の態様の加熱調理器は、前記の第1から第4の態様におけるいずれかの態様において、前記挟着ユニットが、前記蓋の外周縁部と前記鍋の外周縁部が挟着されたことを検知する挟着検知部を備えてもよい。このように構成された第5の態様の加熱調理器においては、挟着部が蓋の外周縁部と鍋の外周縁部とを挟着しない異常事態を確実に検出することができ、安全性および信頼性の高い調理器を提供することができる。
本開示に係る第6の態様の加熱調理器は、前記の第1から第5の態様における前記蓋と前記鍋が、前記鍋の内部の圧力が上昇して前記蓋の外周縁部が前記鍋の外周縁部に対して持ち上がった状態においても、前記蓋と前記鍋との間の気密状態を保持する弾性部材が前記蓋と前記鍋との間に配設されてもよい。このように構成された第6の態様の加熱調理器においては、自動挟着機構が起動して挟着部が蓋と鍋とをより確実に挟着できる構成となる。
本開示に係る第7の態様の加熱調理器は、前記の第1から第6の態様における前記挟着ユニットが、前記蓋の外周位置に均等間隔に配設されてもよい。このように構成された第7の態様の加熱調理器においては、挟着ユニットが蓋と鍋とをより確実に密封して挟着できる構成となる。
本開示に係る第8の態様の加熱調理器において、前記の第1から第6の態様における前記挟着ユニットは、前記蓋の外周位置において、前記蓋体の前面側の配設間隔が、前記蓋体の背面側の配設間隔より狭くなるように構成されてもよい。このように構成された第8の態様の加熱調理器においては、挟着ユニットによる蓋と鍋との間の挟着状態が異常事態で外れる場合があったとしても、加熱調理器の背面側が破損される構成となり、ユーザが存在する可能性のある正面側への影響を少なくすることができ、安全性の高い機器となる。
(実施の形態1)
以下、本開示の加熱調理器に係る実施の形態1の圧力式炊飯器について、図面を参照しながら説明する。図1は実施の形態1の圧力式炊飯器1の外観を示す斜視図である。実施の形態1の圧力式炊飯器1は、炊飯時に鍋内の圧力を大気圧以上の加圧状態、例えば、1.2気圧以上の状態として炊飯動作を行う炊飯器である。なお、実施の形態1の説明においては、図1に示した状態の圧力式炊飯器における上下方向を上下位置として説明する。
実施の形態1の圧力式炊飯器1は、有底で天面部(上部)が開口した略筒状の鍋収容部を有する加熱調理器本体である炊飯器本体2と、炊飯器本体2の鍋収容部の天面部の開口部分を開閉可能に構成された蓋体3とを備えている。炊飯器本体2の鍋収容部には、米や水などの被調理物が入れられる鍋4(図11、12参照)が収納可能に構成されている。
蓋体3は炊飯器本体2に対してヒンジ機構を介して開閉可能に結合されている。蓋体3には、炊飯器本体2に収容された鍋4の天面部の開口である上部開口部を実質的に密閉可能に閉成する蓋5が設けられている。蓋5は、蓋体3に対して着脱可能に構成されており、蓋5を蓋体3から取り外して、洗浄可能である。
蓋体3は、炊飯器本体2に対して開成方向に常時付勢されている。蓋体3が炊飯器本体2に係止して、閉成状態を保持するために、炊飯器本体2と蓋体3には係止機構が設けられている。蓋体3の上面には、炊飯器本体2に対して蓋体3を開成して、鍋4の上部開口部を表出させるためのフックボタン6が設けられている。フックボタン6を押圧することにより、蓋体3の係止機構が炊飯器本体2から外れて、蓋体3が回動する構成である。
また、蓋体3の上面には当該炊飯器の炊飯条件を設定するための操作部7、選択された炊飯コース、炊飯時間、炊飯動作状態などの各種情報を表示する表示部8、および炊飯動作時に蒸気を放出する蒸気放出口9を有する蒸気タンク部10などが設けられている。蒸気タンク部10は蓋体3に対して着脱可能である。
本開示に係る実施の形態1の圧力式炊飯器においては、鍋4の内部の圧力を調整するための「調圧開閉弁機構」、および高圧炊飯動作時に鍋4と蓋5との結合状態を保持して、鍋4の内部の高圧状態を維持するための「自動挟着機構」が蓋体3に設けられている。
以下、実施の形態1の圧力式炊飯器における蓋体3に設けられた「調圧開閉弁機構」および「自動挟着機構」の構成について詳細に説明する。なお、実施の形態1の圧力式炊飯器におけるその他の構成については、炊飯器において通常備える構成を有するものであるが、本開示においてはそれらの構成の詳細な説明については省略する。その他の構成としては、例えば、蓋体3により開閉される炊飯器本体2においては、鍋4を収容可能な構成を有しており、収容された鍋4および蓋5に対しては誘導加熱などの制御可能な加熱源を用いて加熱し、温度センサ、圧力センサなどからの各種情報に基づき制御部(図示省略)において加熱源などを制御して、効果的な炊飯動作を実行する加熱調理可能な構成を有するものである。実施の形態1の圧力式炊飯器において、炊飯器本体2に収容された鍋4の上部開口部を実質的に封止し、蓋体3に装着可能な部材を蓋5として説明するが、この蓋5には加熱源、例えば誘導加熱により加熱可能な構成の加熱板としても機能する。
なお、実施の形態1の圧力式炊飯器においては、蓋5により閉成された鍋4の内部の温度を検出する温度センサとしては、例えば、炊飯器本体2に設けられて、鍋4の鍋底の温度を検出する底温度センサや、蓋体3に設けられて、蓋5を通して鍋内の温度を検出する蒸気センサである蓋温度センサが用いられる。圧力センサである圧力検知部は、鍋4の内部の圧力を検出している。これらのセンサからの各種情報、時間情報、炊飯設定条件などに基づいて、実施の形態1の圧力式炊飯器における制御部(図示省略)が加熱源、「調圧開閉弁機構」などの各要素を最適に制御している。また、蓋温度センサによって、後述する弁孔12aを開閉してもよい。実施の形態1の圧力式炊飯器においては、後述するように、「自動挟着機構」からの鍋4と蓋5とが挟着しているか、否かを示す鍋蓋挟着情報が制御部に送信されて、炊飯動作の制御に用いられている。
[蓋体の構成]
図2は、実施の形態1の圧力式炊飯器における蓋体3を示す図であり、蓋体3の内面側、即ち炊飯器本体2側から見た下面図(裏面図)である。図2に示すように、蓋体3には円盤状の蓋5が装着されている。蓋5は、対向する炊飯器本体2の鍋収容部に収容された鍋4の上部開口部を覆い、鍋4の内部を実質的に密閉可能な位置に配設されている。
図3は、蓋5を斜め上方から見た斜視図である。図4は、蓋5の上面図であり、図5は、蓋5の下面図(裏面図)である。図3から図5に示すように、蓋5は、略円盤状であり、その内側が窪んだ皿形状を有している。蓋5の中央部分の平坦部分には略三角形状の「おねば」保持領域11が形成されている。なお、本実施の形態においては、「おねば」保持領域11を略三角形状の構成例で説明するが、本開示の炊飯器としては、この形状に特定されるものではなく、丸形状、四角形状、多角形状などの各種形状が適用可能である。なお、「おねば」保持領域11としては、蓋体3に設けた蒸気タンク部10おいて蒸気から分離された「おねば」を受け取り保持できる構成であればよい。実施の形態1の構成においては、「おねば」保持領域11が、溝11aにより取り囲まれた構成であり、その溝11aの内周側および外周側に上方(蓋体3の上面方向)に並行に突設した側壁(11b、11c)が形成されている。特に、蓋5が蓋体3に装着されたとき、外周側の側壁11cは、蓋体3において蓋5に対向して配設される蓋対向板25(図7、8参照)に当接して、「おねば」保持領域11を特定する「おねば」保持空間を規定する隔壁となる。この「おねば」保持領域11を特定する「おねば」保持空間が形成されているため、「おねば」が「おねば」保持領域11から外側へ漏出しない構成となっている。
また、「おねば」保持領域11には、後述する調圧開閉ユニット20の一部を構成する凹部形状の弁座12、および安全弁13が設けられている。安全弁13は鍋4の内部の圧力が規定以上に上昇したときに瞬時に起動して、鍋4の内部の圧力を開放し、当該炊飯器の安全性を担保するものである。
図3および図4に示すように、「おねば」保持領域11に設けられた弁座12の中央には弁孔12aが形成されており、後述する調圧開閉ユニット20において駆動される弁体21(図9参照)により弁孔12aが開閉制御される構成である。この弁孔12aの裏面側(鍋4側:図5参照)には、複数の小さな孔が形成されたフィルタ板14が配設されている。フィルタ板14は、炊飯動作時において突沸している米粒の弁孔12aへの流れ込みを防止するものである。このため、フィルタ板14は、米粒より小さい複数の孔を有して、鍋からの米粒などの異物が弁孔12aを通過しないように構成されている。このようにフィルタ板14を設けることにより、調圧開閉ユニット20の開成状態において、鍋4の内部から蓋体3の蒸気通路への蒸気と共に米粒などの異物が流れ込むことが防止されている。
弁座12の中央に形成された弁孔12aは、後述するように、「おねば」保持領域11に貯留されている「おねば」を鍋4の内部に環流する機能を有する。炊飯動作時において、弁孔12aの鉛直方向における上下位置は、「おねば」保持領域11おける最下点位置となるように形成されている。このため、「おねば」保持領域11に貯留されていた「おねば」は、弁孔12aが開放されたとき、この弁孔12aから鍋4に確実に流れ落ちるものとなる。
図6は、図4に示した蓋5における「おねば」保持領域11をVI-VI線により切断した断面を示す図である。図6に示すように、「おねば」保持領域11においては、蒸気タンク部10から受け取った「おねば」が弁孔12aに向かって確実に流れるように、弁孔12aの開口部の周辺は斜面により形成されている。
[調圧開閉弁機構]
実施の形態1の圧力式炊飯器においては、前述の蓋5に設けられた弁孔12aと一体となって機能する調圧開閉弁機構の調圧開閉ユニット20が蓋体3に設けられている。
図7は、蓋体3の上面のカバーなどを取り除き、実施の形態1の圧力式炊飯器における蓋体3の内部構成を示す平面図である。図7においては、主として実施の形態1の圧力式炊飯器における「調圧開閉弁機構」、および後述する「自動挟着機構」を示しており、その他の構成は省略している。図8は、図7に示した内部構成の分解斜視図である。
図7および図8に示すように、蓋体3においては装着された蓋5の上部を覆うように蓋対向板25が設けられており、蓋5における「おねば」保持領域11が蓋対向板25に覆われて「おねば」保持空間に形成される。この「おねば」保持領域11の「おねば」保持空間に蒸気タンク部10からの「おねば」が流れ込む構成である。
また、蓋対向板25には、蓋5の弁座12に対向する位置に調圧開閉ユニット20が配設されている。図9は、蓋対向板25に設けられる調圧開閉ユニット20の構成を示す分解斜視図である。図9に示すように、調圧開閉ユニット20は、蓋5に設けられた弁座12に対して離接方向に移動して弁孔12aの開閉を行う弁体21と、弁体21と連動する開閉弁押さえ22と、開閉弁押さえ22を軸方向に移動させる開閉弁駆動軸23と、開閉弁駆動軸23を移動させる開閉弁駆動モータ24と、開閉弁駆動モータ24を蓋対向板25に固定し、開閉弁押さえ22の移動方向をガイドする開閉弁取付け台26と、を備える。
上記のように構成された調圧開閉ユニット20において、弁体21を固着する開閉弁押さえ22は、開閉弁駆動軸23の螺刻された螺刻部23aに貫通されており、開閉弁押さえ22の内周面には螺刻部23aに係合する突起(係合突起)22bが形成されている。また、開閉弁押さえ22が開閉弁取付け台26を貫通して軸方向(上下方向)に移動し、開閉弁取付け台26の内部で回動しないように、開閉弁押さえ22のガイド溝22aと開閉弁取付け台26のガイドリブ26aが軸方向に摺動可能に係合する構成である。従って、開閉弁駆動軸23が開閉弁駆動モータ24により回転駆動されることにより、開閉弁駆動軸23が回動して、開閉弁押さえ22が軸方向(上下方向)に移動する。即ち、開閉弁駆動モータ24が正/逆方向への回転駆動を行うことにより、蓋5に設けられた弁座12に対して、弁体21が軸方向(上下方向)に移動して、調圧開閉ユニット20の開閉制御が行われる。弁体21の弁座12に対して移動する離接方向は、鍋4の内部の圧力が上昇したとき、蓋5が鍋4に対して持ち上がる方向である。このため、実施の形態1における調圧開閉弁機構は、鍋4の内部の圧力が上昇するにつれて、蓋5が蓋体3の方向へ上昇するため、弁座12と弁体21との間のシール性能が確保されており、信頼性の高い構成である。
[調圧開閉ユニットの開閉動作]
図10は、調圧開閉ユニット20の開閉動作を模式的に示す端面図である。図10においては、蓋5が蓋体3に装着されて、蓋5が蓋対向板25に対向するように配置された状態を示している。図10の(a)は、調圧開閉ユニット20の開成状態を示しており、弁体21が弁座12から離れた状態である。図10の(b)は、調圧開閉ユニット20の閉成状態を示しており、弁体21が弁座12に向かって移動し当接した状態を示している。図10の(c)は、図10の(b)に示した閉成状態と同じであるが、蓋5が蓋対向板25に向かって僅かに上昇し、蓋5が持ち上がった状態を示している。図10の(b)に示す状態から、図10の(c)に示す状態への移行においては、弁体21の移動はなく、蓋5の弁座12が調圧開閉ユニット20の弁体21に向かって僅かに移動した状態である。このように、蓋5が蓋対向板25に向かって僅かに移動する動作は、高圧炊飯動作時に生じる動作であり、後述する「自動挟着機構」に関連する動作である。図10の(b)に示す状態から、図10の(c)に示す状態への移行については、「自動挟着機構」において詳細に説明する。
図10の(d)に示す開成状態は、図10の(a)に示した開成状態と同じであり、高圧炊飯動作が終了した後の状態を示している。なお、調圧開閉ユニット20の開閉動作を行う弁体21の移動は、鍋4の内部の圧力を検出する圧力検知部である圧力センサからの情報などに基づいて制御される。
図10の(a)から(d)に示すように、蓋5が蓋体3に装着された状態においては、蓋5における「おねば」保持領域11を規定する外周側側壁11cが蓋対向板25に当接しており、「おねば」保持領域11により「おねば」保持空間が形成されている。外周側側壁11cは弾性部材で構成されているため、蓋5が蓋体3に装着された状態においては、蓋5が移動しても、例えば、図10に示すように僅かに上下方向に移動しても、当接状態が維持される構成である。
また、前述のように、蓋5が蓋体3に装着され、炊飯動作が行われている状態においては、蓋5の中央部分の平坦部分は略水平方向に配置されており、その平坦部分に設けられた「おねば」保持領域11における弁座12の弁孔12aは、鉛直方向における最下点位置に配置されている。このため、「おねば」保持領域11における弁孔12aが開成状態であれば、「おねば」保持領域11に貯留していた「おねば」は、弁孔12aを通して鍋4に確実に流れ落ちる。この結果、従来の構成においては、「おねば」を鍋内に環流させるために必要としていた逆止弁が、実施の形態1における構成では不要となり、蓋体3の構成をシンプル化することができ、軽量化、小型化、および取り扱いの容易性を達成できる構成となる。
上記のように、実施の形態1の圧力式炊飯器の構成においては、調圧開閉弁機構が設けられているため、従来の圧力式炊飯器には用いられていた調圧弁、開閉弁、逆止弁、および安全弁という複数の複雑な弁機構を設ける必要がなくなり、特に実施の形態1における蓋5は、必須である安全弁の他はシンプルな構成の弁座だけを設ける構成となり、蓋5が装着される蓋体3において調圧開閉弁機構の主要部を備える構成となる。この結果、実施の形態1の圧力式炊飯器においては、蓋体3から外された蓋5の洗浄が容易なものになると共に、炊飯器本体2の天面部の上部開口部分を塞ぐ蓋体3においても、重量物で構成された頑丈な枠体を設ける必要がなく、シンプルで軽量化を図ることができる構成とすることができ、取り扱いが容易な炊飯器となる。
「自動挟着機構」
次に、実施の形態1の圧力式炊飯器における蓋体3に設けられた「自動挟着機構」の構成について説明する。
図11は、図7および図8に示したように、上面のカバーなどが取り除かれた状態の蓋体3に対して、鍋4が結合された状態を斜め上方から見た斜視図である。図12は、図11と同様の状態を示しており、蓋体3と鍋4との結合状態を斜め下方から見た斜視図である。図11および図12は、蓋体3の蓋5が鍋4の上部開口部を閉鎖した高圧炊飯動作が可能な状態を示している。なお、図11および図12に示す蓋体3に鍋4が結合した状態においては、蓋体3が鍋4を収納する炊飯器本体2に対して係止手段により係止されて閉成状態が維持されている。
実施の形態1の圧力式炊飯器において、蓋体3の蓋5と鍋4との間が結合された高圧炊飯動作状態は、自動挟着機構により達成されている。前述の図8に示した分解斜視図において、自動挟着機構は、複数の挟着ユニット30と、これらの挟着ユニット30を固定し、蓋体3に固定された挟着ユニット固定板31と、を備えている。複数の挟着ユニット30は、蓋体3に装着された蓋5の外周位置に沿って配設されている。
図8に示すように、実施の形態1の圧力式炊飯器においては、4つの挟着ユニット30が略等間隔を有して配設された例を示している。なお、挟着ユニット30の個数としては、鍋4と蓋5との間の結合が確実となるものであればよく、個数を限定するものではないが、3個以上を設けることがより好ましい。また、複数の挟着ユニット30の配設間隔としては、等間隔が好ましいが、異常事態が発生したときに、当該炊飯器の背面側、即ちユーザが存在しない側が破壊されるように、背面側に設けた挟着ユニット30の配設間隔を正面側、即ちユーザが存在する側に比べて広く設定してもよい。
実施の形態1の構成においては、当該圧力式炊飯器の外観形状に対応して、挟着ユニット固定板31を四角形状とし、その四隅に挟着ユニット30を配設している。本開示の炊飯器としては、このような構成に限定されるものではなく、挟着ユニット30が鍋4と蓋5との間を結合できる配置となるような挟着ユニット固定板31の形状、構成であればよい。
[挟着ユニットの構成]
次に、実施の形態1の圧力式炊飯器において、挟着ユニット固定板31に固定された挟着ユニット30の構成について説明する。
図13から図16は、実施の形態1の圧力式炊飯器において、鍋4と蓋5とを結合していない状態の挟着ユニット30を示す斜視図である。図13は斜め上から見た斜視図であり、図14は斜め下から見た斜視図である。また、図15および図16は挟着ユニット30の分解斜視図であり、図15が斜め上から見た分解斜視図であり、図16が斜め下から見た分解斜視図である。
図13から図16に示すように、挟着ユニット30は、枠体である挟着ユニット固定板31に固定されるフックボックス32を有し、このフックボックス32には位置検知センサ40が装着される。この位置検知センサ40は、後述するように、挟着ユニット30により鍋4と蓋5が結合状態であるか、否かを検知して、その検知情報を制御部に送信する挟着検知部である。位置検知センサ(挟着検知部)40から出力された検知情報は、炊飯動作制御を行うための鍋蓋挟着情報として使用される。また、フックボックス32にはフック固定板35が固定されている。このフック固定板35にはフック33が回動(揺動)可能に設けられている。フック固定板35とフック33とはフック軸39により貫設されており、フック軸39を回動中心として揺動する構成である。
図17は、図15に示した挟着ユニット30を更に分解した斜視図である。図17に示すように、フック33は、上端部分(上端突出部33a)および下端部分(下端突出部33c)が内側(鍋側)に突出した形状を有しており、これらの上端突出部33aと下端突出部33cとを一体的に連結する基部33bにより上下が繋がった形状、即ち、側面形状が所謂「コ」の字の形状である。フック33の上端突出部33aには、フック当て板34が固着されている。フック33の上端突出部33aに設けたフック当て板34と、フック33の下端突出部33cとの間には、後述するように、蓋5と鍋4とが配置されて挟着される。
実施の形態1における挟着ユニット30においては、上端突出部33aと下端突出部33cとを有するフック33と、上端突出部33aに固着されたフック当て板34と、フック33を一方向に付勢する付勢部である後述のフックバネ37と、を挟着部50として備えている。また、挟着部50において、フック33の上端突出部33aに固着されたフック当て板34が上部挟着端となり、フック33の下端突出部33cが下部挟着端となる。但し、挟着部50の上部挟着端と下部挟着端は、鍋4の外周縁部4aと蓋5の外周縁部5aとを挟み付けて結合(挟着)させるために、一体的に揺動するよう構成された部位を示すものであり、実施の形態1の構成に限定されるものではない。
フック当て板34の上部には、挟着検知突起36およびバネ支持突起38が形成されている。挟着検知突起36は、位置検知センサ40が配設されている上方に突出するように形成された挟着検知棒であり、フック当て板34の回動と同じ動きを行う。位置検知センサ40が挟着検知棒である挟着検知突起36の有無を検知して、鍋4と蓋5との挟着状態が確認される。バネ支持突起38は付勢部であるフックバネ37を支持するものである。フック33は、通常は、フックバネ37の付勢力によりフック当て板34と下端突出部33cとの間の開口部分(「コ」の字の開口部分)が下向きとなるように配置されている。従って、付勢部であるフックバネ37は、蓋5が鍋5の開口を閉じた状態において、蓋5の外周縁部5aを鍋4の外周縁部4aの方向(略下向き)に押圧している。そのため、当該圧力式炊飯器に対して鍋4および蓋5が装着されていない無装着状態においては、蓋体3におけるフック33の開口部分が斜め下向き状態となる。このため、鍋4が炊飯器本体2に収容され、蓋5が蓋体3に装着されて、蓋体3により炊飯器本体2を閉じたとき(閉成状態)、鍋4および蓋5のそれぞれの外周縁部(4a、5a)がフック33の開口部分の間に確実に配置される状態となる。なお、鍋内の圧力が大気圧においては、フックバネ37の付勢力によりフック当て板34が蓋5の外周縁部5aを下方へ押圧すると共に、下端突出部33cが鍋4の外周縁部4aから外れた外側の位置となり、当該蓋体3を容易に開くことが可能となる。
[挟着ユニットの動作]
次に、閉成状態において、鍋4および蓋5のそれぞれの外周縁部(4a、5a)を挟着する挟着ユニット30における動作について説明する。
図18は、挟着ユニット30における動作を説明する図であり、各要素の端面を示している。図18の(a)は、圧力式炊飯器に対して鍋4および蓋5が装着されていない無装着状態のときのフック33などの回動位置を示している。挟着部50におけるフック当て板34の下面には半球状の突起である当接部34aが形成されている。この当接部34aが蓋5の外周縁部との当接箇所となり、点接触となる。図18の(a)に示すように、フック当て板34の当接部34aは、フック軸39の中心であるフック33の回動中心を含む鉛直線Aより鍋側(図18の(a)においては右側)に配置されている。即ち、挟着部50の回動中心(鉛直線A)は、蓋5の外周縁部5aと挟着部50との接触位置より外側にある。また、挟着部50の回動中心(フック軸39の中心)は、鍋4の外周縁部4aの上方となるように配設されている。なお、フック当て板34の下面の当接部34aの形状としては、半球状に特定されるものではなく、蓋5の外周縁部と点接触若しくは線接触となるような構成であればよい。
また、フック当て板34の当接部34aと、フック当て板34に対向して配設されたフック33の下端突出部33cとの間の対向距離L1(図18の(a)参照)は、鍋4および蓋5のそれぞれの外周縁部(4a、5a)を挟むことが可能な距離に設定されている。但し、対向距離L1としては、挟み込む鍋4および蓋5のそれぞれの外周縁部(4a、5a)の厚みに+1.0~5.0mm以下に設定される。
更に、フック33の下端突出部33cの鍋側(内側)への突出距離は、フック当て板34の当接部34aの鍋側(内側)への突出距離に比べて、オフセット距離L2(図18の(a)参照)だけ短く設定されている。図18の(a)に示すように、実施の形態1の構成においては、鍋4および蓋5の無装着状態におけるフック33の下端突出部33cの突出端位置は、フック33の回動中心を含む鉛直線Aより外側の位置(鍋から離れる位置)に配置されている。このため、無装着状態において、鍋4が炊飯器本体2に収容され、蓋5が蓋体3に装着されて、蓋体3が炊飯器本体2に閉じられるとき、鍋4および蓋5のそれぞれの外周縁部(4a、5a)がフック33の下端突出部33cに接触することなく通過して、蓋5の外周縁部5aがフック当て板34の当接部34aに当接する状態となる。
図18の(b)は、蓋5の外周縁部5aがフック当て板34の当接部34aに当接した状態(挟着準備状態)であり、蓋体3が炊飯器本体2に係止部を介して閉じた閉成状態を示している。図18の(b)に示すように、蓋5の外周縁部5aがフック当て板34の当接部34aに当接して、フック当て板34を少し持ち上げた状態であり、フック33がフック軸39を中心として反時計方向に回動している。この結果、フック33の下端突出部33cの突出端が鍋4の外周縁部の直下近傍に隙間を有して配置された状態となる。図18の(b)に示す挟着準備状態において、炊飯動作が開始される。
図18の(c)は、炊飯動作が開始され、鍋内の圧力が昇圧して高圧になったときの状態を示している。図18の(c)に示す状態は、鍋4および蓋5のそれぞれの外周縁部(4a、5a)が挟着ユニット30において挟着された状態(挟着状態)を示している。炊飯動作が開始されて鍋内が沸騰状態となると、鍋内の圧力が上昇して、蓋5は持ち上がり、鍋4から離れるように僅かに持ち上がる(上昇する)。その結果、図18の(c)に示すように、蓋5の外周縁部5aがフック当て板34の当接部34aを持ち上げて、フック33を反時計方向に回動させる。このため、フック33の下端突出部33cが、鍋4の外周縁部4aの下面側に入り込み、最終的に外周縁部4aに当接する。このとき、フック33の下端突出部33cは、最初に鍋4の外周縁部4aの下面側に入り込み、その後に外周縁部4aに当接するように、前述の対向距離L1(図18の(a)参照)、オフセット距離L2(図18の(a)参照)、およびフック33の回動(揺動)角度などが設定されている。
上記のように、鍋内の圧力が昇圧した高圧状態においては、挟着ユニット30により鍋4および蓋5のそれぞれの外周縁部(4a、5a)が確実に挟着状態となる。図18の(c)に示すように、この挟着状態においては、鍋内が高温度であり高圧状態であるため、蓋5の外周縁部5aに設けられた弾性部材である外周縁部パッキン5bが膨張して、鍋4の内周面に接触した状態が維持される。挟着ユニット30においては、対向距離L1が所望の距離に設定され、蓋5の持ち上がり距離が所定距離内となるように規定されているため、挟着状態において蓋5が鍋4から持ち上がった状態でも外周縁部パッキン5bのシール効果により鍋内の気密状態を維持することが可能となる。
挟着ユニット30における挟着動作と、調圧開閉ユニット20における開閉動作との関連について説明する。
図18の(b)に示す挟着準備状態において、調圧開閉ユニット20が閉成動作を行ったとき、弁体21の先端である弁体接圧部21aが下降して蓋5の弁座12に接触して閉成状態となる。このときの閉成状態が、前述の図10の(b)に示す状態である。この結果、鍋内の圧力が高くなり、挟着ユニット30は、図18の(b)に示す挟着準備状態から図18の(c)に示す挟着状態に移行する。このとき、調圧開閉ユニット20における弁体21の先端であり、弁座12に接触する弁体接圧部21aは、前述の図10の(b)に示す状態から図10の(c)に示す状態へ移行する。即ち、弁体21の先端である弁体接圧部21aは、蓋5の弁座12に接触した状態から、蓋5が持ち上がることにより、更に押しつぶされて閉成状態が維持される。このように、弁体接圧部21aは柔軟性を有する弾性体で構成されているため、閉成状態において蓋5が持ち上がって、鍋4と蓋5が挟着状態となっても、弁体接圧部21aと弁座12との接圧状態は維持され、閉成状態は確実に保たれる。
実施の形態1における挟着ユニット30は、鍋内に生じた高圧状態を利用して鍋4と蓋5とに圧力が加わったときに自動的に挟着して、確実に鍋内の気密状態を維持できる構成である。このため、圧力式炊飯器で高圧炊飯動作を行う構成であっても、蓋体3に頑丈で重量物の枠体を設ける必要がなく、蓋体3に自動挟着機構を設けて、蓋体3を簡単な構成で軽量化、小型化することが可能となり、蓋体3の取り扱いも容易な構成となる。また、上記のように構成された挟着ユニット30は、鍋内に5kPa以上の圧力が残っている状態においては、鍋4と蓋5との挟着状態を確実に維持する構成であるため、安全性および信頼性を確保するための複雑な特別な機構を設ける必要がなく、装置のシンプルか、小型化、軽量化に大きく寄与する構成である。実施の形態1の圧力式炊飯器の構成においては、調圧開閉弁機構の調圧開閉ユニット20および自動挟着機構の挟着ユニット30が設けられているため、圧力式炊飯器における所望の炊飯動作を確実に実行することが可能な構成となる。
[圧力式炊飯器の炊飯動作]
次に、実施の形態1の圧力式炊飯器の炊飯動作について説明する。図19は、実施の形態1の圧力式炊飯器において通常の炊飯動作を行ったときの一例を示す波形図であり、鍋内の温度および圧力の推移と、調圧開閉ユニット20の開閉のタイミングと、炊飯動作時の電力消費を模式的に示している。なお、鍋4の内部の温度としては、炊飯器本体2の内部に設けられて鍋4の鍋底の温度を検知する鍋底温度センサと、蓋体3の内部に設けられて蓋5を通して鍋内の温度を検知する蓋温度センサとにより検知される構成である。また、鍋4の内部の圧力は、蓋体3に設けた圧力センサである圧力検知部により検知されている。
ユーザにより米や水などの被調理物が入れられた鍋4を炊飯器本体2に収容して、蓋5が装着された蓋体3が炊飯器本体2の鍋4の上部開口部を密閉するように閉じられる(閉成状態)。その後、ユーザにより操作部7において炊飯コースなどが選択され、必要な炊飯条件が設定されて、炊飯動作が開始される。炊飯動作が開始されると、最初に前炊き工程(予熱工程)が実行される。
前炊き工程は、以降の工程において、米の中心部まで十分に糊化状態となるように、糊化温度よりも低温の水に米を浸して、予め米に吸水させる工程である。前炊き工程において、制御部は、鍋内の水の温度を米の糊化が始まる温度(約60℃)近くまで昇温させて、その温度を鍋底温度センサの検知温度に基づいて維持するように、加熱源を制御する。前炊き工程においては、調圧開閉ユニット20が開いた状態に保持される。
選択された炊飯コースに応じた所定時間が前炊き工程の開始から経過すると、炊上げ工程に移行する。炊上げ工程は、鍋4を強火で一気に加熱して、鍋内の水を沸騰状態にする工程である。この炊上げ工程においても、調圧開閉ユニット20は開いた状態に保持されている。
炊上げ工程において、蓋体3に設けた蓋温度センサの検知温度が沸騰温度(約105℃)に達すると、沸騰維持工程に移行する。沸騰維持工程においては、鍋内の水を沸騰状態に維持して、米の澱粉を所望の状態に糊化させる工程である。この沸騰維持工程においては、調圧開閉ユニット20を開閉制御して、鍋内の水において複数回の突沸状態を生じさせて米粒を攪拌させる。このように沸騰維持工程を実行することにより、鍋内の米粒がムラなく攪拌されて、各米粒に対して所望の加熱を行うことができ、炊きムラのない美味しいご飯を炊くことができる。沸騰維持工程においては、連続的に水を沸騰させるため、蒸気が大量に発生して、その蒸気と共に「おねば」が蒸気タンク部10に貯留され、その「おねば」が蓋5の「おねば」保持領域11の「おねば」保持空間に流れ込む。この沸騰維持工程においては、調圧開閉ユニット20が開閉制御され、「おねば」保持領域11にある弁座12の弁孔12aが開放された時、「おねば」は弁孔12aを通して鍋4に流れ落ちる。
沸騰維持工程において、鍋内の水がほとんどなくなると、鍋4の鍋底温度が水の沸点以上の温度(例えば、130℃)に上昇する。この鍋底温度を鍋底温度センサが検知すると、蒸らし工程に移行する。蒸らし工程は、余熱を利用して余分な水分蒸発させ、米の糊化を100%近くまで引き上げる工程である。蒸らし工程においては、調圧開閉ユニット20が開成状態に維持されて、鍋内の圧力は、大気圧まで減圧される。蒸らし工程の開始から予め設定された時間が経過すると、蒸らし工程が終了となり、当該炊飯動作は完了する。
なお、調圧開閉ユニット20において弁体21を移動制御する開閉動作は、鍋4の内部の圧力を検出する圧力検知部や鍋4の内部の温度を検出する温度検知部などの情報や、時間情報などに基づいて制御される。実施の形態1の炊飯器においては、調圧開閉弁機構により鍋内の圧力を調整できる構成であるため、従来の構成においては必要であった調圧弁を廃止することができる構成となる。また、実施の形態1の炊飯器においては、調圧開閉弁機構により鍋内の任意に圧力制御することができるため、炊飯動作により出来上がるご飯の食味を大幅に上昇させることができる。
上記のように、実施の形態1の圧力式炊飯器における炊飯動作では、鍋4と蓋5とにより構成される鍋が自動挟着機構が高圧状態において、自動的に起動して鍋4と蓋5とを気密状態に確実に挟着して、所望の調理が行われる構成である。また、炊飯動作においては、蓋体3に調圧開閉弁機構が設けられているため、蓋体3に装着する蓋5をシンプルな構成で軽量化を図ることができ、ユーザにおいては取り扱いが容易な構成となると共に、蓋5から鍋4に対して「おねば」を確実に環流させることができる構成となる。
以上のように、実施の形態1において加熱調理器の例示として圧力式炊飯器を用いて説明したように、本開示の加熱調理器である炊飯器においては、自動挟着機構における挟着ユニットが、鍋内に生じた高圧状態を利用して鍋と蓋とに対して鍋内の圧力が高くなったときに自動的に互いに挟着するように構成されているため、確実に鍋内の気密状態を維持できる構成であり安全性および信頼性の高い加熱調理器を構築することができる。従って、高圧で加熱調理を行う加熱調理器においては、蓋体を頑丈な重量物の枠体を備える必要がなくなり、蓋体を簡単な構成で軽量化、小型化を図ることが可能となり、調理器自体として取り扱いが容易な構成とすることが可能な構成となる。
また、本開示の加熱調理器である炊飯器においては、調圧開閉弁機構を設けているため、従来の圧力式炊飯器には用いられていた調圧弁、開閉弁、および逆止弁という複雑な弁機構を共通にすることも可能となる。特に、蓋においては必須である安全弁の他はシンプルな構成とすることが可能となり、蓋が装着される蓋体において調圧開閉弁機構の主要部を設ける構成としている。この結果、本開示の加熱調理器としての炊飯器においては、炊飯器本体の上部開口部分を塞ぐ蓋体をシンプルな構成で軽量化を図ることができ、取り扱いが容易な炊飯器を構築することができる。
また、本開示の加熱調理器の例示として、実施の形態1において圧力式炊飯器を用いて説明したが、圧力式炊飯器において用いた「自動挟着機構」および「調圧開閉弁機構」の構成およびその技術的思想は、蓋体に装着された蓋により、加熱調理器本体に収容された鍋の上部開口部を閉じて実質的に密封し、鍋の内部を加圧して加熱調理する圧力式の加熱調理器に適用することができる構成である。特に、「自動挟着機構」を用いた加熱調理器においては、蓋体を頑丈で重量物の枠体で構成する必要がなくなり、蓋体を簡単な構成で軽量化することが可能となり、取り扱いも容易な構成となる。また、加熱調理器において、安全性および信頼性を確保するための複雑な特別な機構を設ける必要がなくなり、装置のシンプル化、小型化、軽量化に大きく寄与する構成となる。なお、加熱調理器において、炊飯動作以外の調理に用いる場合には、「調圧開閉弁機構」において蒸気と共に排出される異物が、「おねば」ではなく被調理物からのものとなるが、「調圧開閉弁機構」の構成および動作は実質的に同じであり、同様の効果を奏するものである。
本発明をある程度の詳細さをもって実施の形態において説明したが、この構成は例示であり、実施の形態の開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものである。本発明においては、実施の形態における要素の置換、組合せ、および順序の変更は請求された本発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明および添付の図面を開示した。よって、詳細な説明および添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が、詳細な説明および添付の図面に記載されているからといって、直ちに、それらの必須ではない構成要素に対して必須であると認定されるべきではない。
上記の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置換、付加、省略などを行うことが可能である。