JP7281359B2 - コイル部品及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、コイル部品及びその製造方法に関する。
近年、携帯用電子機器の多機能化、並びに自動車における電動化及び制御の電子化が進んでいる。そして、こうしたデバイスにおける消費電力低減の要請は、ますます強まっている。これに伴い、搭載されるチップタイプと呼ばれる小型のコイル部品ないしインダクタンス部品には、コアロスの低減及び効率の改善が求められている。このため、コイル部品のコアを構成する磁性材料についても、低損失化のための検討が行われている。
低損失の磁性材料としては、非晶質のマトリックス中にナノサイズの結晶が析出・分散したナノ結晶軟磁性合金が知られている。このナノ結晶軟磁性合金は、十分に結晶化された結晶粒子が均一な大きさで分布しているほど、磁気特性に優れたものとなる。このため、ナノ結晶軟磁性合金製磁心の製造方法として、非晶質粉末をホットプレス等で温度を正確に制御しながら熱処理して、適切なサイズの結晶粒を析出させた後、これを成形する方法(特許文献1)等が採用されている。
しかし、非晶質軟磁性合金粉末を予め結晶化した上で圧粉磁心を製造した場合、成型時の加圧で発生した内部応力を除去できないため、磁気特性が劣化する恐れがあることが知られている(特許文献2)。
他方、非晶質軟磁性合金粉末を成型後に加熱して結晶化した場合、相変態(結晶析出)に伴う発熱により温度が急上昇して粗大結晶又は不純物相が生成し、磁気特性が劣化することも知られている(特許文献2~5)。
そこで、内部応力又は粗大結晶若しくは不純物相による磁気特性の劣化を抑える手段として、下記[1]~[4]のものが報告されている。
[1]予め加熱した塩浴中に、非晶質軟磁性合金の薄帯を浸漬し、その表面近傍に集中してナノ結晶相を析出させて結晶化度を30%未満とする。次いで、該薄帯を粉砕して得た軟磁性合金粉末をバインダーと混合して造粒粉を作製し、これを金型中でプレス成形した後、追加熱処理して圧粉磁心とする(特許文献2)。
[2]結晶化開始温度の異なる複数種の軟磁性合金粉末の混合粉を成型し、結晶化開始温度の低い軟磁性合金粉末を選択的に結晶化するように熱処理を行って圧粉磁心とする(特許文献3)。
[3]構成成分としてSnを含む特定組成の非晶質軟磁性合金の薄帯を粉砕して非晶質軟磁性合金粉末を得た後、該粉末をバインダーと混合して造粒粉を作製し、これを金型中でプレス成形して得た圧粉体を加熱して圧粉磁心とする(特許文献4)。
[4]非晶質軟磁性合金粉末とバインダーとの混合粉末体を加圧成形して得た原料部材を、アルミナ等の放熱性セラミックス粉末に埋設して熱処理を行う(特許文献5)。
特開2019-14960号公報 特開2016-162947号公報 特開2014-75528号公報 特開2016-3366号公報 国際公開第2017/086145号
このように、非晶質軟磁性合金が結晶化する際の温度上昇の抑制によって、粗大結晶又は不純物相の生成を抑制することは可能である。しかし、この場合でも、磁心ないしコイル部品内の位置によってナノ結晶粒子の大きさが相違することが明らかとなった。この相違は、結晶化熱処理の際に、位置によって温度が異なることに起因すると考えられる。すなわち、磁心ないしコイル部品の表面近傍では、非晶質軟磁性合金が結晶化する際に発生する熱は、容易に環境中に放散されるため、温度上昇は小さくなる。これに対し、表面から離れた箇所では、放熱が起こりにくいため、温度上昇は大きくなる。このため、磁心ないしコイル部品の表面から離れた箇所では、結晶粒子の粒径が表面近傍に比べて大きくなるということである。なお、前記[4]の手段によれば、磁心ないしコイル部品の表面近傍からの放熱は促進されるものの、表面から離れた箇所からの放熱への影響は小さいと考えられる。
このような磁心ないしコイル部品内の位置による結晶粒子の大きさの相違が低減できれば、さらに高性能のコイル部品、特にコアロスが低減されたコイル部品が得られることが期待される。そこで本発明は、コアロスが低減されたコイル部品を提供することを目的とする。
本発明者は、前述の目的を達成するために種々の検討を行ったところ、コイル部品の内部に含有される前記ナノ結晶軟磁性合金粒子のうち任意の2粒子についての、該各粒子中に存在するナノ結晶の平均結晶径の差を、該各平均結晶径の50%以下とすることで、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、前記課題を解決するための本発明の第1の実施形態は、ナノ結晶軟磁性合金粒子を含む基体部と、該基体部中に配置され、両端部が該基体部の表面に露出する内部導体とを備えたコイル部品であって、前記基体部は、その内部に含有される前記ナノ結晶軟磁性合金粒子のうち任意の2粒子についての、該各粒子中に存在するナノ結晶の平均結晶径の差が、該各平均結晶径の50%以下であることを特徴とするコイル部品である。
また、本発明の第2の実施形態は、ナノ結晶軟磁性合金粒子を含む基体部と、該基体部中に配置され、両端部が該基体部の表面に露出する内部導体とを備えたコイル部品の製造方法であって、非晶質軟磁性合金粒子を含む基体部前駆体中に内部導体ないしその前駆体を配置して、該内部導体ないしその前駆体の両端部が表面に露出したコイル部品前駆体を作製すること、及び前記コイル部品前駆体を熱処理して、非晶質軟磁性合金粒子を結晶化してナノ結晶軟磁性合金粒子とすると共に、前記基体部前駆体を基体部とし、前記内部導体の前駆体を内部導体とすることを含むコイル部品の製造方法である。
さらに、本発明の第3の実施形態は、前述のコイル部品を搭載した回路基板である。
本発明によれば、コアロスが低減されたコイル部品を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る、直線状の内部導体を備えたコイル部品構造の説明図 本発明の一実施形態に係る、螺旋状の内部導体を備えたコイル部品構造の説明図 本発明の一実施形態に係る、外部電極を備えたコイル部品構造の説明図 ナノ結晶軟磁性合金粒子の電子線回折パターンの説明図 本発明の一実施形態に係るコイル部品の製造方法において、内部導体ないしその前駆体の端部に放熱部材を接触させる態様の説明図 比較例1に係る2ピース成形体の説明図 比較例2に係る2ピース成形体及びコイル部品の断面形状の説明図((a):2ピース成形体、(b):コイル部品) 実施例6,7に係るコイル部品前駆体形状の説明図((a):実施例6、(b):実施例7)
以下、図面を参照しながら、本発明の構成及び作用効果について、技術的思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、数値範囲の記載(2つの数値を「~」でつないだ記載)については、下限及び上限として記載された数値をも含む意味である。
[コイル部品]
本発明の第1の実施形態に係るコイル部品(以下、単に「第1実施形態」と記載することがある。)は、ナノ結晶軟磁性合金粒子を含む基体部と、該基体部中に配置され、両端部が該基体部の表面に露出する内部導体とを備える。前記基体部は、その内部に含有される前記ナノ結晶軟磁性合金粒子のうち任意の2粒子についての、該各粒子中に存在するナノ結晶の平均結晶径の差が、該各平均結晶径の50%以下である。ここで、本明細書における基体部の内部とは、基体部中の、表面から50μm以内の領域を除いた部分を意味する。
第1実施形態に係るコイル部品11は、図1に示すように、基体部21と、該基体部21中に配置され、両端部311,312が該基体部の表面に露出する内部導体31とを備える。図1には、内部導体31が直線状(棒状)に形成されたコイル部品を示しているが、第1実施形態はこれに限定されず、内部導体がミアンダー状又は平面コイル状に形成されたものでもよく、図2に示すような内部導体31が螺旋状(螺旋の外形を示し、螺旋内部の詳細は図示せず)に形成されたものでもよい。また、図3に示すように、外部電極4が、内部導体31の端部(図示せず)を覆うように形成されたものでもよい。
基体部21は、ナノ結晶軟磁性合金粒子を含む。これは、本明細書においては、以下のことを意味する。すなわち、基体部の内部に位置する断面200nm×200nmの観察領域について、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した電子線回折パターン(図4参照)において、7.0±0.3[nm-1]の位置にピークが確認されることである。ここで、「ピークが確認される」とは、前記電子線回折パターンにおける7.5nm-1、7.6nm-1、7.7nm-1、7.8nm-1、7.9nm-1及び8.0nm-1の位置における各回折強度の相加平均に対して1.1倍以上の回折強度を示すことをいう。なお、前述の電子線回折パターンの測定領域は、必ずしも個々の単一の軟磁性合金粒子に対応しているとは限らず、該領域に複数の粒子が含まれる場合もあり、また結晶質軟磁性合金粒子や樹脂などのナノ結晶軟磁性合金粒子以外を含む場合がある。しかし、本明細書中では、このような場合についても、前述のピークが確認された場合には、該領域における透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した電子線回折パターンを、ナノ結晶軟磁性合金粒子のものと判定する。
ナノ結晶軟磁性合金の組成は特に限定されないが、高い透磁率が得られる点でFeの含有量が多いものが好ましい。特に、Feの含有量を85質量%以上とすることで、高透磁率が得られる。具体的な組成の例としては、FeSiBNbCu系、FeSiBPCu系、FeSiBC系及びFeSiCrBC系等が挙げられる。
前記基体部21においては、その内部に含有されるナノ結晶軟磁性合金粒子のうち任意の2粒子について、該各観察領域中に存在するナノ結晶の平均結晶径の差が、該各平均結晶径の50%以下である。すなわち、前記2箇所の観察領域のうち、一方の観察領域中に存在するナノ結晶の平均結晶径(値の小さいもの)をD、他方の観察領域中に存在するナノ結晶の平均結晶径(値の大きいもの)をDとした場合に、下記(式1)を満たす。
Figure 0007281359000001
ただし、各観察領域の平均結晶径が等しい場合は、任意にD及びDを定める。
ここで、前記観察領域(ナノ結晶軟磁性合金粒子)内の平均結晶径は、以下の方法で算出する。
まず、前述した観察領域内の電子線回折パターンにおいて、7.0±0.3[nm-1]の位置にピークが確認された領域のTEM像を取得する。次いで、該TEM像を画像処理して、像中に観察されるナノ結晶軟磁性合金粒子中の各結晶の面積を計測し、該面積を有する円の直径である円相当径を各粒子の各結晶について算出する。TEM像における結晶質と、非晶質の各領域については、試料を傾斜させてTEM像を撮像した際に、コントラストが変化する部位が結晶質、変化しない部位が非晶質として見分けることができる。このことから、同一の観察領域において、試料の傾斜を変えて撮像した複数枚の画像、もしくは連続的に試料の傾斜を変化さて撮像された動画を、コントラストの変化に基づき画像処理することで、像中に観察されるナノ結晶軟磁性合金粒子中の各結晶の領域の形や面積を、観測ないし計測できる。次いで、算出された各円相当径の相加平均を算出し、これを当該観察領域(ナノ結晶軟磁性合金粒子)の平均結晶径とする。
この場合、観察領域に結晶質軟磁性合金粒子や樹脂などのナノ結晶軟磁性合金粒子以外のものが含まれていても、算出される平均結晶径は、ナノ結晶軟磁性合金粒子からのみ算出される。また、観察領域に複数のナノ結晶軟磁性合金粒子が含まれていてもよく、算出される平均結晶径は、単一粒子中のナノ結晶のものと同じくその観察領域を代表する平均結晶径であるとする。ただし、観察領域に複数のナノ結晶磁性合金粒子が含まれる場合には、平均結晶径が正確に算出されないことが、ごくまれに起こり得る。これは、粒子間にはナノ結晶が観察されない部分が存在するため、単一粒子のみの場合に比べて円相当径を算出するナノ結晶の数が少なくなることによる。このため、平均結晶径の算出に際しては、観察領域が単一のナノ結晶軟磁性合金粒子中に位置するように調節することが好ましい。
ナノ結晶の平均結晶径を比較するナノ結晶軟磁性合金粒子(観察領域)の選び方は任意でよい。しかし、上述したように、基体部の表面近傍とそこから離れた中心部(内部導体近傍)とのナノ結晶の平均結晶径の差が特に大きくなることを鑑みれば、比較対象とするナノ結晶軟磁性合金粒子(観察領域)は、該各箇所から1個ずつ選択することが好ましい。また、前述した理由により、観察領域が単一のナノ結晶軟磁性合金粒子中に位置するように調節されることが好ましい。
このように、基体部21中の位置によるナノ結晶粒子の平均結晶径の大きさの相違を小さくすることで、コアロスが低減されたコイル部品が得られる。前述したナノ結晶の平均結晶径の差は、該各平均結晶径の40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。
基体部21は、ナノ結晶軟磁性合金粒子に加えて、Fe、Si及びM(ただし、MはFeより酸化しやすい金属元素から選択される少なくとも1種)を必須成分とする結晶質軟磁性合金粒子をさらに含んでもよい。前記Mとしては、Cr、Al、Ti及びZr等が例示される。前記結晶質軟磁性合金粒子はナノ結晶を含有しないため、該粒子を含むことで、ナノ結晶軟磁性合金粒子間のナノ結晶の大きさの違いに起因する特性低下を緩和できる。また、コイル部品のインダクタンスの向上も可能となる。
前記結晶質軟磁性合金粒子の含有量は、コイル部品に要求される特性に応じて適宜決定することができる。前述した特性低下の緩和作用が十分に得られる点で、その含有量は、金属磁性粒子全体に対して20体積%以上とすることが好ましく、25体積%以上とすることがよりこのましい。他方、ナノ結晶軟磁性合金粒子による優れた磁気特性を保持する点で、その含有量は、50体積%以下とすることが好ましく、45体積%以下とすることがより好ましい。
基体部21は、前述したナノ結晶軟磁性合金粒子及びFe、Si及びMを必須成分とする結晶質軟磁性合金粒子等の金属磁性粒子に加えて、樹脂を含んでもよい。基体部21が樹脂を含むことで、その機械的強度が向上する。また、電気的絶縁性も向上する。含有する樹脂としては、金属磁性粒子同士を接着して保形できるものであれば、その種類に制限はなく、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の各種樹脂が使用できる。また樹脂の含有量も制限されず、例えば軟磁性合金粉100質量部に対して1~10質量部とすることができる。
第1実施形態で使用する内部導体31及び外部電極4の材質は、導電性が高く、コイル部品11の使用環境下で物理的及び化学的に安定なものであれば特に限定されず、例えば、銀若しくは銅、又はこれらの合金等が使用できる。また、これらの金属又は合金に被覆を施した被覆導線を使用してもよい。これらの金属又は合金は、熱抵抗が小さい(熱伝導が大きい)点からも好ましい。なぜならば、ナノ結晶粒子の平均結晶径は熱処理によって決まるが、熱抵抗の小さい内部導体の存在によって基体部内部で発生する結晶化熱が放熱されやすくなるため、この結晶径が部分的に大きくなることを抑制できるからである。他方、これらの金属又は合金に施される被覆材料には、相対的に熱抵抗が大きい(熱伝導が小さい)ものが多い。このため、結晶化熱の放熱の点からは、内部導体は、被覆を有さず、かつ基体部に接していることが好ましい。
[コイル部品の製造方法]
本発明の第2実施形態に係るコイル部品の製造方法(以下、単に「第2実施形態」と記載することがある。)は、非晶質軟磁性合金粒子を含む基体部前駆体中に内部導体ないしその前駆体を配置して、該内部導体ないしその前駆体の両端部が表面に露出したコイル部品前駆体を作製すること、及び前記コイル部品前駆体を熱処理して、非晶質軟磁性合金粒子を結晶化してナノ結晶軟磁性合金粒子とすると共に、前記基体部前駆体を基体部とし、前記内部導体の前駆体を内部導体とすることを含む。
非晶質軟磁性合金粒子としては、FeSiBNbCu系、FeSiBPCu系、FeSiBC系及びFeSiCrBC系等の組成を有するアトマイズ粉、又は薄帯若しくは薄片を粉砕・分級したものが使用できる。非晶質軟磁性合金粒子の粒径は特に限定されず、例えば、体積基準で測定した粒度分布から算出される平均粒径(メジアン径(D50))が1~50μmのものが使用でき、2~30μmのものが好ましく、4~20μmのものがより好ましい。なお、この平均粒径は、例えば、レーザー回折/散乱法を利用した粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
基体部前駆体中には、非晶質軟磁性合金粒子に加え、必要に応じて結晶質軟磁性金属粒子等の磁性粒子や、樹脂等のバインダー、可塑剤等の成形・保形助剤といった成分が含まれてもよい。
基体部前駆体中に配置される内部導体は、そのままコイル部品中で内部導体となるものである。他方、内部導体の前駆体は、コイル部品中で内部導体となる導体材料に加えて、バインダー等を含み、後述するコイル部品前駆体の熱処理によって内部導体となるものである。内部導体又はその前駆体中の導体材料は、導電性が高く、コイル部品前駆体の熱処理条件下及びコイル部品の使用環境下で物理的及び化学的に安定なものであれば特に限定されない。一例として、銀若しくは銅、又はこれらの合金等が使用できる。また、これらの金属又は合金に被覆を施した被覆導線を内部導体としてもよい。これらの金属又は合金は、熱抵抗が小さい(熱伝導が大きい)点からも好ましい。なぜならば、ナノ結晶粒子の平均結晶径は熱処理によって決まるが、熱抵抗の小さい内部導体の存在によって基体部内部で発生する結晶化熱が放熱されやすくなるため、この結晶径が部分的に大きくなることを抑制できるからである。他方、これらの金属又は合金に施される被覆材料には、相対的に熱抵抗が大きい(熱伝導が小さい)ものが多い。このため、基体部前駆体中に内部導体を配置する場合には、結晶化熱の放熱の点から、被覆を有さないものを使用し、かつ基体部前駆体に接するように配置することが好ましい。
内部導体ないしその前駆体は、その両端部がコイル部品前駆体の表面に露出するように基体部前駆体中に配置される。内部導体ないしその前駆体は、基体部前駆体に比べて高い熱伝導率を有し、かつコイル部材前駆体の中央部にまで入り込んでいる。このため、その端部をコイル部品前駆体の表面に露出させると、後述する熱処理時に、基体部前駆体中で発生した熱が、内部導体ないしその前駆体に流れ込み、その延伸方向に沿って移動し、両端部から外部に放散される。すなわち、内部導体ないしその前駆体がヒートシンクとして作用する。従来技術では、内部導体ないしその前駆体の端部を表面に露出させることなく熱処理を行った後、切断等により該端部を露出させて電気的な接続をとるため、熱処理時に内部導体ないしその前駆体を通じて外部に放散される熱量は多くないといえる。
基体部前駆体中の内部導体ないしその前駆体の配置は、コイル部品に要求される特性に応じて適宜決定すればよい。内部導体ないしその前駆体をコイル部品前駆体の表面に近接して配置すると、内部導体ないしその前駆体に流れ込んだ熱が、その延伸方向に沿って移動・放出される上に、コイル部品前駆体の表面からも放散される点で好ましい。こうしたコイル部品前駆体表面からの放熱を促進する点からは、コイル部品前駆体の表面までの距離が1mm以下の部分を有するように内部導体ないしその前駆体を配置することが好ましい。より好ましくは、内部導体ないしその前駆体の延伸方向に垂直な任意の断面からコイル部材前駆体表面までの距離が1mm以下となるように配置する。なお、平面コイル状ないし螺旋状等の、延伸方向が測定箇所により異なる内部導体ないしその前駆体を用いる場合には、その延伸方向は、対象となる箇所における内部導体ないしその前駆体の接線方向とする。
コイル部品前駆体の作製方法には、公知の方法が採用できる。一例として、非晶質軟磁性合金粒子とバインダーとを含む複数のグリーンシートにそれぞれ導体パターンを形成した後、該グリーンシートを所定の順序で積層・圧着することで一体形状とする方法が挙げられる。また、他の方法として、非晶質軟磁性合金粒子と樹脂とを混合して混合物を調製した後、予め内部導体ないしその前駆体を配置した金型等の成形型に該混合物を投入し、プレス成形した後、樹脂を硬化させる方法も挙げられる。
コイル部品前駆体の大きさは特に限定されず、ハンドリングのしやすさや製造されるコイル部品の大きさに応じて適宜決定すれば良い。ただし、第2実施形態は、中央部からの放熱がより起こりにくい、寸法の大きなコイル部品前駆体において大きな効果を発揮する。このため、コイル部品前駆体は、図1に示す長さL及び幅Wがそれぞれ1.0mm及び0.5mm以上のものが好ましく、2.5mm及び2.0mm以上のものがより好ましい。また、コイル部品前駆体は、図1に示す厚さTが0.5mm以上のものが好ましく、1.0mm以上のものがより好ましい。
中央部からの放熱が起こりにくいという点から見ると、第2実施形態は、表面積(mm)に対する体積(mm)の割合が大きいコイル部品前駆体において大きな効果を発揮するともいえる。該割合は、0.2以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。
第2実施形態では、図5に示すように、コイル部品前駆体10の表面に露出した前記内部導体の前駆体30の両端部301,302に、放熱部材5を接触させてもよい。この場合、内部導体と放熱部材とを一体化して作製することも、前述の接触に含む。内部導体と放熱部材とを一体化した場合には、熱処理後の適宜の製造段階にて放熱部材相当部を切断することで、最終的な内部導体の形態とすることができる。これにより、内部導体の前駆体30に流れ込んだ熱を効率的に外部へと放散させることができる。なお、基体部前駆体20中に、内部導体前駆体30に代えて内部導体31を配置してもよいことは言うまでもない。
放熱部材5は、コイル部品前駆体を熱処理する雰囲気ガスよりも、熱抵抗が小さい材料で構成される。より好ましくは、内部導体、ないしその前駆体よりも、熱抵抗が小さい材料で構成されることで、結晶の成長による発熱をより効果的に放熱できる。また、放熱部材5には、熱処理の条件下で物理的及び化学的に安定であることが要求される。放熱部材5の材質の例としては、Al、Ti、Cu、Cr、Fe、Ni若しくはAg、又はこれらの合金をはじめとする金属材料が挙げられる。
放熱部材5の形状ないし構造、及び内部導体の前駆体30との接触態様は特に限定されず、スプリングプローブ等のバネ押圧を利用するものや、導線等の線材を半田付けないしろう付けするもの等が例示される。
第2実施形態では、内部導体ないしその前駆体に放熱部材を接触させた状態で、コイル部品前駆体の熱処理を行う。該熱処理によって、基体部前駆体に含まれる非晶質軟磁性合金粒子が結晶化して、ナノ結晶軟磁性合金粒子となり、基体部が形成される。このとき、樹脂を含む基体部前駆体においては、該樹脂の硬化又は揮発が同時に起こる。また、基体部前駆体中に内部導体の前駆体を配置した場合には、前記熱処理によって内部導体が形成される。これにより、基体部と内部導体とを備えたコイル部品が得られる。
熱処理の条件は、基体部前駆体及び内部導体ないしその前駆体の組成やコイル部品に要求される特定等に応じて適宜設定することができる。熱処理雰囲気の一例としては、大気等の酸化性雰囲気や窒素、アルゴン等の不活性雰囲気が挙げられる。熱処理温度の一例としては、450~600℃が挙げられ、450~550℃とすることが好ましい。熱処理時間の一例としては、20~60分が挙げられ、30~50分とすることが好ましい。熱処理温度を450℃以上とし、熱処理時間を20分以上とすることで、非晶質軟磁性合金粒子を十分に結晶化することで結晶軟磁性合金粒子とするができる。他方、熱処理温度を600℃以下とし、熱処理時間を60分以下とすることで、結晶化により析出し、適度なサイズに成長したナノ結晶同士が、一体化して粗大な結晶となることを防止できる。
コイル部品前駆体の熱処理時には、内部導体ないしその前駆体に接触する放熱部材を冷却してもよい。これにより、内部導体ないしその前駆体から放熱部材へと移動する熱量が増加し、コイル部材前駆体中央部からの放熱を効率的に実現できる。放熱部材の冷却方法としては、熱処理装置中の放熱部材への局所的な送風や、熱処理装置外部に延伸した放熱部材の低温物質への接触等が例示される。
前記熱処理は、バッチ処理であってもフロー処理であってもよい。フロー処理の例としては、前述のコイル部品前駆体を載せた複数の耐熱トレーをトンネル炉中に断続的ないし連続的に投入し、所定の雰囲気及び温度に保持した領域を所定の時間で通過させる方法が挙げられる。
第2実施形態において、コイル部品に外部電極を形成する場合には、予め用意した導体ペーストを、熱処理されたコイル部品の表面に塗布した後、焼成炉等の加熱装置を用いて焼付け処理を行う方法が採用できる。導体ペーストの塗布には、ディップ塗布機やローラー塗布機等の塗布機を用いることができる。使用する導体ペーストとしては、導体粉末と有機ビヒクルとを含むものが挙げられる。導体粉末としては、銀若しくは銅又はこれらの合金等の粉末が用いられる。導体粉末の粒径は特に限定されないが、例えば、体積基準で測定した粒度分布から算出される平均粒径(メジアン径(D50))が1μm~10μmのものが用いられる。有機ビヒクルとしては、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂を、ブチルカルビトール等のグリコールエーテル系溶剤に溶解ないし膨潤させたものが使用できる。導体ペーストにおける導体粉末及び有機ビヒクルの配合比率は、塗布に使用する機材や形成しようとする導体パターンの膜厚等に応じて適宜調節することができる。
以上説明した第2実施形態によれば、基体部の内部に含有されるナノ結晶軟磁性合金粒子間で、ナノ結晶の粒径差が小さいコイル部品を得ることができ、これによりコアロスの低減が可能となる。
[回路基板]
本発明の第3の実施形態に係る回路基板(以下、単に「第3実施形態」と記載することがある。)は、第1実施形態に係るコイル部品を載せた回路基板である。
回路基板の構造等は限定されず、目的に応じたものを採用すればよい。
第3実施形態は、第1実施形態に係るコイル部品を使用することで、損失の小さいものとなる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<コイル部品前駆体の作製>
まず、FeSiBNbCu系軟磁性合金の水アトマイズ粉(非晶質,平均粒径4μm)をポリビニルアルコール系のバインダー及び水と混合して成形用スラリーを調製した。次いで、この成形用スラリーをドクターブレードにてシート状に成形し、乾燥して厚さ30μmのグリーンシートを作製した。このグリーンシートを所定枚数積層すると共に、積層方向中央部に1mm×1mmの正方形断面を有する銀製の導線を配置し、プレス成形することで、図5に示す形状のコイル部品前駆体を作製した。
<コイル部品の作製>
前述のコイル部品前駆体の表面に露出した内部導体の両端部に、放熱部材としてのSUS310Sを接触させ、大気中、540℃で30分間熱処理した。なお、この放熱部材の接触態様、すなわち放熱部材に特段の冷却処理を行わない態様を、以後「放熱」と記載することがある。その後、個々の素子を分離し、実施例1に係るコイル部品を得た。コイル部品の寸法を、図1と対応させて記載すると、L=3.0mm、W=3.0mm、T=6.0mmであった。
<基体部中のナノ結晶軟磁性合金粒子における結晶粒径測定>
得られたコイル部品における内部導体の延伸方向中央部から、集束イオンビーム装置(FIB)を用いて厚さ50nm~100nmの薄片試料を取り出し、直ちに透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った。内部導体からの距離が0.1mmの位置(以下、「中央部」と記載する。)を観察領域の中心としたときに観察されたナノ結晶、及び同距離が0.5mmの位置(以下、「表面近傍」と記載する。)で観察されたナノ結晶のそれぞれについて、上述した方法で、含有するナノ結晶の平均結晶径を算出したところ、表1に示す結果が得られた。両粒子におけるナノ結晶の平均結晶径の差(D-D)は、表面近傍の粒子における平均結晶径Dの15%であった。
<インダクタンス及びコアロスの測定>
得られたコイル部品について、インダクタンス及びコアロスの測定を行った。インダクタンスの測定は、インピーダンスアナライザ(Keysight Technologys製 E4990A)を用い、測定周波数1MHzにて行った。コアロスの測定は、B-Hアナライザ(岩崎通信機製 SY8232)を用い、1MHz、Ip-p=1000mAにて行った。各測定は、10個の試料について行い、その平均値を算出した。結果を表1に示す。
[実施例2]
コイル部品作製時の熱処理を、放熱部材を炉外に設置したAl製ヒートシンクにより冷却しながら行った以外は実施例1と同様の方法で、実施例2に係るコイル部品を得た。なお、この放熱部材の接触態様を、以後「冷却」と記載することがある。
このコイル部品について、実施例1と同様の方法で、ナノ結晶軟磁性合金粒子中のナノ結晶の平均結晶径、インダクタンス及びコアロスを測定した。結果を表1に示す。ナノ結晶軟磁性合金粒子におけるナノ結晶の平均結晶径の差(D-D)は、中央部の粒子における平均結晶径Dの5%であった。この結果と実施例1の結果との対比から、熱処理時に放熱部材を冷却することで、内部導体近傍の温度上昇が抑えられ、ナノ結晶の粗大化がさらに抑制されるといえる。
[比較例1]
<コイル部品の作製>
実施例1と同一ロットの軟磁性合金粉を圧縮成形し、図6に示す形状の2ピース成形体を得た。該各成形体を実施例1と同一の条件で熱処理した後、これらを1mm×1mmの正方形断面を有する銀製の導線と共に図1に示す形状に組み立てて、コイル部品とした。コイル部品の寸法は、実施例1と同様、L=3.0mm、W=3.0mm、T=6.0mmであった。
<基体部の観察及び磁気特性測定>
得られたコイル部品について、実施例1と同様の方法で基体部を観察し、ナノ結晶軟磁性合金粒子中のナノ結晶の平均結晶径を算出した。また、実施例1と同様の方法で、インダクタンス及びコアロスを測定した。結果を表1に示す。ナノ結晶軟磁性合金粒子におけるナノ結晶の平均結晶径の差(D-D)は、表面近傍の粒子における平均結晶径Dの53%に上った。
実施例1,2の結果を比較例1の結果と対比すると、ナノ結晶軟磁性合金粒子間でのナノ結晶の平均結晶径の差が、該各平均結晶径の50%以下となる実施例1,2では、これが50%を超える比較例1に比べて、コアロスが低減していることが判る。この結果から、前記平均結晶径の差を該各平均結晶径の50%以下とすることで、コイル部品のコアロスを低減できるといえる。
また、実施例1,2では、比較例1に比べてインダクタンスが大きくなっており、ナノ結晶軟磁性合金粒子間の平均結晶径の差を小さくすることは、インダクタンスの向上にも寄与するといえる。
[実施例3,4]
実施例3,4では、ナノ結晶軟磁性合金粒子に加えてFe、Si及びMを必須成分とする結晶質軟磁性合金粒子を含むコイル部品について、本発明の効果を確認した。
軟磁性合金粉を、FeSiBNbCu系軟磁性合金の水アトマイズ粉(非晶質,平均粒径4μm)とFeSiCr系軟磁性合金粉(結晶質,平均粒径2μm)とを体積比8:2で混合したものとした以外は実施例1,2と同様の方法で、実施例3,4に係るコイル部品を得た。
これらのコイル部品について、実施例1と同様の方法で、ナノ結晶軟磁性合金粒子におけるナノ結晶の平均結晶径、インダクタンス及びコアロスを測定した。結果を表1に示す。
実施例3,4の結果を実施例1,2の結果と対比すると、ナノ結晶軟磁性合金粒子に加えて結晶質軟磁性合金粒子を含む実施例3,4は、これを含まない実施例1,2と同程度又はより優れたコアロスを有することが判る。また、実施例3,4では、コイル部品のインダクタンスも実施例1,2に比べて向上している。この結果から、ナノ結晶軟磁性合金粒子間でのナノ結晶の平均結晶径の差が、該各平均結晶径の50%以下となるコイル部品において、基体部を、該ナノ結晶軟磁性合金粒子に加えて結晶質軟磁性合金粒子を含むものとすることで、コアロスのさらなる低減とインダクタンスの向上とが達成できるといえる。
[実施例5]
本実施例及び後述する比較例2では、螺旋状の内部導体を備えるコイル部品について、本発明の効果を確認した。
<コイル部品前駆体の作製>
実施例1で作製したグリーンシートにスルーホールを穿孔し、これに銀ペーストをスクリーン印刷して内部導体の前駆体を形成した。該グリーンシートと内部導体の前駆体を形成していないグリーンシートとを組み合わせて積層・プレス成形し、内部導体の前駆体が螺旋状に2.5ターン巻き回されたコイル部品前駆体を作製した。
<コイル部品の作製>
前述のコイル部品前駆体の表面に露出した内部導体の両端部に、放熱部材としてのSUS310Sを接触させ、大気中、540℃で30分間熱処理した。その後、表面加工を行い、実施例5に係るコイル部品を得た。コイル部品の寸法は、実施例1と同様、L=3.0mm、W=3.0mm、T=6.0mmであった。
<基体部の観察及び磁気特性測定>
得られたコイル部品について、実施例1と同様の方法で基体部を観察し、ナノ結晶軟磁性合金粒子中のナノ結晶の平均結晶径を算出した。また、実施例1と同様の方法で、インダクタンス及びコアロスを測定した。結果を表1に示す。ナノ結晶軟磁性合金粒子におけるナノ結晶の平均結晶径の差(D-D)は、表面近傍の粒子における平均結晶径Dの37%であった。
[比較例2]
<コイル部品の作製>
実施例1と同一ロットの軟磁性合金粉を圧縮成形し、図7(a)に示す断面形状の2ピース成形体を得た。該各成形体を実施例1と同一の条件で熱処理した後、これらを、銀導線を2.5ターン巻き回した螺旋状導体(空芯コイル)と共に図7(b)に示す形状に組み立て、個々の素子を分離してコイル部品とした。コイル部品の寸法は、実施例1と同様、L=3.0mm、W=3.0mm、H=6.0mmであった。
<基体部の観察及び磁気特性測定>
得られたコイル部品について、実施例1と同様の方法で基体部を観察し、ナノ結晶軟磁性合金粒子中のナノ結晶の平均結晶径を算出した。また、実施例1と同様の方法で、インダクタンス及びコアロスを測定した。結果を表1に示す。ナノ結晶軟磁性合金粒子におけるナノ結晶の平均結晶径の差(D-D)は、表面近傍の粒子における平均結晶径Dの75%に上った。
実施例5の結果を比較例2の結果と対比すると、ナノ結晶軟磁性合金粒子間でナノ結晶の平均結晶径の差が該各平均結晶径の50%以下となる実施例5では、これが50%を超える比較例2に比べて、コアロスが低減していることが判る。この結果から、前記平均結晶径の差を該各平均結晶径の50%以下とすることで、螺旋状の内部導体を備えるコイル部品においてもコアロスを低減できるといえる。
また、実施例5では、比較例2に比べてインダクタンスが大きくなっており、ナノ結晶軟磁性合金粒子間の平均結晶径の差を小さくすることは、インダクタンスの向上にも寄与するといえる。
[実施例6,7]
実施例6,7では、基体部前駆体中に配置された内部導体ないしその前駆体からコイル部品前駆体表面までの距離が、ナノ結晶軟磁性合金粒子中のナノ結晶の平均結晶径及び磁気特性に及ぼす影響を検討した。
図1と対応させて記載したコイル部品の寸法がそれぞれ、L=6.0mm、W=4.0mm、T=2.0mm(実施例6)及びL=6.0mm、W=2.0mm、T=4.0mm(実施例7)となるようにコイル部品前駆体を構成した以外は実施例1と同様の方法で、実施例6,7に係るコイル部品を得た。実施例6に係るコイル部品前駆体の形状の模式図を図8(a)に、実施例6に係るコイル部品前駆体の形状の模式図を図8(b)に、それぞれ示す。実施例6に係るコイル部品前駆体は、実施例7のものに比べて、内部導体から表面までの距離が1mm以下の部分を多く有している。
得られたコイル部品について、実施例1と同様の方法で、ナノ結晶軟磁性合金粒子の平均結晶径、インダクタンス及びコアロスを測定した。結果を表1に示す。
実施例6を実施例7と対比すると、内部導体からコイル部品前駆体の表面までの距離が1mm以下の部分を多く有する実施例6は、該部分が少ない実施例7に比べてナノ結晶軟磁性合金粒子間でのナノ結晶の平均結晶径の差が小さいことが判る。これは、基体部前駆体から内部導体に流れ込んだ熱が、コイル部品前駆体の表面からより多く放散されたことに起因すると解される。そして、実施例6に係るコイル部品が実施例7に係るものに比べてコアロスが低く、インダクタンスが高いことは、ナノ結晶軟磁性合金粒子間でのナノ結晶の平均結晶径の差が小さいことに起因するものと解される。
Figure 0007281359000002
本発明によれば、コアロスが低減されたコイル部品が提供される。本発明に係るコイル部品は、駆動時の発熱が抑制できるため、携帯用電子機器や自動車等の用途に好適である。また、本発明の好ましい形態によれば、インダクタンスも向上するため、より高性能なコイル部品の提供が可能となる点でも、本発明は有用なものである。
10 コイル部品前駆体
11 コイル部品
20 基体部前駆体
21 基体部
30 内部導体の前駆体
301,302 内部導体の前駆体の端部
31 内部導体
311,312 内部導体の端部
4 外部電極
5 放熱部材

Claims (10)

  1. ナノ結晶軟磁性合金粒子を含む基体部と、該基体部中に配置され、両端部が該基体部の表面に露出する内部導体とを備えたコイル部品であって、
    前記基体部は、その内部に含有される前記ナノ結晶軟磁性合金粒子のうち任意の2粒子についての、該各粒子中に存在するナノ結晶の平均結晶径の差が、該各平均結晶径の50%以下であること
    を特徴とするコイル部品。
  2. 前記ナノ結晶軟磁性合金粒子は、Feを85質量%以上含む、請求項1に記載のコイル部品。
  3. 前記基体部が、Fe、Si及びM(ただし、MはFeより酸化しやすい金属元素から選択される少なくとも1種)を必須成分とする結晶質軟磁性合金粒子をさらに含む、請求項1又は2に記載のコイル部品。
  4. 前記結晶質軟磁性合金粒子の割合が、磁性金属粒子全体に対して20~50体積%である、請求項3に記載のコイル部品。
  5. 前記基体部がさらに樹脂を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のコイル部品。
  6. ナノ結晶軟磁性合金粒子を含む基体部と、該基体部中に配置され、両端部が該基体部の表面に露出する内部導体とを備えたコイル部品の製造方法であって、
    非晶質軟磁性合金粒子を含む基体部前駆体中に内部導体ないしその前駆体を配置して、該内部導体ないしその前駆体の両端部が表面に露出したコイル部品前駆体を作製すること、及び
    前記コイル部品前駆体を熱処理して、非晶質軟磁性合金粒子を結晶化すると共に、前記基体部前駆体を基体部とし、前記内部導体の前駆体を内部導体とすること
    を含み、前記熱処理に先立って、前記コイル部品前駆体の表面に露出した前記内部導体ないしその前駆体の両端部に、放熱部材を接触させることをさらに含む、コイル部品の製造方法。
  7. 前記熱処理中に、前記放熱部材を冷却することをさらに含む、請求項に記載のコイル部品の製造方法。
  8. 前記内部導体ないしその前駆体を、その延伸方向に垂直な任意の断面からコイル部材前駆体表面までの距離が1mm以下となるように配置する、請求項6又は7に記載のコイル部品の製造方法。
  9. 前記熱処理温度が450~600℃である、請求項6~のいずれか1項に記載のコイル部品の製造方法。
  10. 請求項1~5のいずれか1項に記載のコイル部品を搭載した回路基板。
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