JP7281271B2 - フィルムコンデンサ用封止樹脂組成物、及びフィルムコンデンサ - Google Patents
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Description
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1](A)熱硬化性樹脂、(B)無機充填材(ただし、(C)水酸化アルミニウムを除く)、及び(C)水酸化アルミニウムを含み、前記(C)水酸化アルミニウムの付着水分量が0.2~0.6質量%であることを特徴とするフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物。
[2]前記(C)水酸化アルミニウムの平均粒子径が0.1~5μmであることを特徴とする上記[1]に記載のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物。
[3]前記樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度未満での線膨張係数α1が15~35ppm/℃であり、当該硬化物のガラス転移温度以上での線膨張係数α2が45~105ppm/℃であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物。
[4]前記(B)無機充填材の平均粒子径が5~40μmであることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物。
[5]前記(B)無機充填材がシリカを含有しており、当該(B)無機充填材中のシリカ含有量が50~90質量%であることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物。
[6]前記(A)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物。
[7]フィルムコンデンサ素子が上記[1]~[6]のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物の硬化物で外装されてなるフィルムコンデンサ。
[フィルムコンデンサ用封止樹脂組成物]
本実施形態のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう)は、(A)熱硬化性樹脂、(B)無機充填材(ただし、(C)水酸化アルミニウムを除く)、及び(C)水酸化アルミニウムを含み、
上記(C)水酸化アルミニウムの付着水分量が0.2~0.6質量%であることを特徴とする。
本発明者は、水酸化アルミニウムの付着水分量を上げると樹脂組成物の粘度が上昇するが、樹脂組成物中に無機充填材を多量に含有させることができず、一方、水酸化アルミニウムの付着水分量を下げると樹脂組成物中に無機充填材を多量に含有させることができるが、樹脂組成物の粘度が低下することを見出した。このような両者の相反する性質から、(C)成分の水酸化アルミニウムの付着水分量について最適範囲を見出した。
上記(B)成分は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
なお、上記平均粒子径は、JIS Z8825(2013)に準拠した方法でレーザー法粒子測定器によって求められる体積加積曲線上の50質量%値で示される粒径(体積平均粒子径d50)である。
なお、上記(C)成分の水酸化アルミニウムの付着水分量は、JIS K 0067(1992)に準じて測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
また、(C)成分の水酸化アルミニウムの付着水分量は、(C)成分の水酸化アルミニウムを加熱乾燥、又は吸湿させることにより上記範囲内に調製することができる。
なお、上記平均粒子径は、JIS Z8825(2013)に準拠した方法でレーザー法粒子測定器によって求められる体積加積曲線上の50質量%値で示される粒径(体積平均粒子径d50)である。
酸無水物としては、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる分子中に酸無水物基を有するものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(Me-HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(Me-THPA)、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)等の脂環式酸無水物、無水フタル酸等の芳香族酸無水物、脂肪族二塩基酸無水物(PAPA)等の脂肪族酸無水物等が挙げられる。中でも、脂環式酸無水物を好ましく用いることができる。
硬化促進剤としては、一般にエポキシ樹脂の硬化に使用されている硬化促進剤を使用することができる。硬化促進剤としては、特に制限されないが、アミン系硬化促進剤が好ましい。アミン系硬化促進剤の市販品としては、U-CAT2030(サンアプロ(株)製)等を使用することができる。
なお、(B)成分の無機充填材を主剤、及び硬化剤に配分してもよく、その場合には、主剤、及び硬化剤を混合した後の無機充填材の含有量が、上記で説明した無機充填材の含有量となるように調製すればよい。また、(C)成分の水酸化アルミニウムを主剤、及び硬化剤に配分してもよく、その場合には、主剤、及び硬化剤を混合した後の無機充填材の含有量が、上記で説明した水酸化アルミニウムの含有量となるように調製すればよい。
なお、上記樹脂組成物の粘度、主剤及び硬化剤の粘度は、いずれもB型粘度計を用いて回転速度1.5rpmの条件で測定した値である。
また、本実施形態のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度以上での線膨張係数α2は、好ましくは45~105ppm/℃、より好ましくは50~100ppm/℃、更に好ましくは55~95ppm/℃である。線膨張係数α2が45~105ppm/℃の範囲にあるとフィルムコンデンサ構成部材と樹脂との熱応力によるクラック発生を抑制できる。
なお、上記線膨張係数α1及びα2は、実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、上記透湿性は、JIS Z0208(1976)に準拠して測定することができる。具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のフィルムコンデンサは、フィルムコンデンサ素子が上記フィルムコンデンサ用封止樹脂組成物の硬化物で外装されてなる。したがって、透湿性が低く、静電容量を高めることができ、信頼性に優れたフィルムコンデンサとすることができる。
フィルムコンデンサ素子1は、例えば、ポリプロピレンなどからなる誘電体フィルムの少なくとも片面にアルミニウムを蒸着して金属層(蒸着電極)を形成した金属化フィルムを一対とし、これら一対の金属化フィルムが重ね合わせられ、巻回して形成される。
バスバー3は、例えば銅などの金属材料からなり、正極バスバーと負極バスバーの2つから構成される。本実施形態において、正極バスバー及び負極バスバーは同形状を有しており、一方の極性のバスバーを他方のバスバーとして兼用することができる。
(調製例1:水酸化アルミニウム(c-1)(付着水分量:0.3質量%)の調製)
水酸化アルミニウム〔昭和電工製、商品名:H42M、平均粒子径:1μm〕300gを採取し、温度40℃、湿度90%雰囲気下で水分量が0.3質量%となるまで吸湿させ水酸化アルミニウム(c-1)〔付着水分量:0.3質量%〕を得た。
温度40℃、湿度90%雰囲気下で水分量が0.6質量%となるまで吸湿させたこと以外は調製例1と同様にして、水酸化アルミニウム(c-2)〔付着水分量:0.6質量%〕を得た。
水酸化アルミニウム〔昭和電工製、商品名:H42M、平均粒子径:1μm〕300gを採取し、温度120℃で水分量が0.1質量%となるまで加熱乾燥し、水酸化アルミニウム(x-1)〔付着水分量:0.1質量%〕を得た。
水酸化アルミニウム〔昭和電工製、商品名:H31、平均粒子径:18μm〕300gを採取し、温度120℃で水分量が0.1質量%となるまで加熱乾燥し、水酸化アルミニウム(x-2)〔付着水分量:0.1質量%〕を得た。
以下に示すようにして、主剤及び硬化剤からなる2液性の樹脂組成物を製造し、使用時に主剤と硬化剤を混合した。
表1に示す成分の各質量部を配合することにより実施例1と同様にして評価用の樹脂組成物を得た。なお、表1中、空欄は配合なしを表す。
〔(B)成分〕
・アエロジル(登録商標)#200(微細シリカ):日本アエロジル(株)製、商品名、平均粒子径:15nm
・LA800(アルミナ):太平洋ランダム(株)製、商品名、平均粒子径:18μm
・水酸化アルミニウム(x-1):調製例3で調製した水酸化アルミニウム、付着水分量:0.1質量%、平均粒子径:1μm
・水酸化アルミニウム(x-2):調製例4で調製した水酸化アルミニウム、付着水分量:0.1質量%、平均粒子径:18μm
〔(C)成分〕
・水酸化アルミニウム(c-2):調製例2で調製した水酸化アルミニウム、付着水分量:0.6質量%、平均粒子径:1μm
〔樹脂組成物の評価〕
(1)粘度
主剤及び硬化剤の粘度を、それぞれB型粘度計を用いて、温度70℃、回転速度1.5rpmの条件で測定した。また、主剤と硬化剤とを混合し得られた樹脂組成物の粘度を、B型粘度計を用いて、温度60℃、回転速度1.5rpmの条件で測定した。
樹脂組成物10gを注入した試験管を140℃のオイルバスに入れ、樹脂組成物が硬化した時間を測定した。
(1)ガラス転移点及び線膨張係数α1、α2
樹脂組成物を80℃で3時間、次いで110℃で3時間加熱硬化させ、4mm×4mm×10mmの試験片を作製した。当該試験片を用い、TMA法により、昇温速度15℃/分として室温(25℃)から185℃まで昇温させて測定した。この測定結果から、ガラス転移温度(Tg)、ガラス転移温度未満における線膨張係数α1、及びガラス転移温度以上における線膨張係数α2を算出した。
樹脂組成物を80℃で3時間、次いで110℃で3時間加熱硬化させ、125mm×13mm×6mmの試験片を作製した。当該試験片を用い、UL規格94に準拠して垂直燃焼試験を行った。試験の結果に基づいてV-0、V-1、又はV-2の等級で評価した。なお、比較例2の燃焼は、2回目の着火後、火が消えず、長さ125mmまで炎が上がった状態を示す。
樹脂組成物を80℃で3時間、次いで110℃で3時間加熱硬化させて得られた硬化物について、JIS C2110-1(2010)に準じて、DC500Vを印加して、温度25℃にて測定した。測定には、横河・ヒューレット・パッカード(株)製の4329Aハイレジスタンスメータ(製品名)を用いた。
樹脂組成物を80℃で3時間、次いで110℃で3時間加熱硬化させて得られた硬化物について、総研電機(株)製の電気絶縁材料誘電率・誘電正接測定器を用い、JIS C2138(2007)に準じて、50Hz条件下、温度25℃にて測定した。
樹脂組成物を80℃で3時間、次いで110℃で3時間加熱硬化させ、100mm×100mm×1mmの試験片を作製し、東京精電(株)製の絶縁破壊試験機を用いて、当該試験片の絶縁破壊電圧をJIS C 2105(2006)に準拠し、絶縁破壊電圧を10回測定し、温度25℃において測定した。
樹脂組成物を80℃で3時間、次いで110℃で3時間加熱硬化させ、直径70mm、厚さ1mmの試験片を作製した。当該試験片を用い、JIS Z0208(1976)のカップ法に基づき、透湿性試験を行った。
温湿度条件は85℃/85%RHとした。測定は、直径60mmの透湿カップに吸湿剤/塩化カルシウム(無水)を封入し、当該透湿カップの開口部にシリコンゴムシート及び試験片をこの順に載せ、300時間後に秤量し、透湿カップの質量変化量を算出した。その値に基づき、24時間の1m2当たりの質量増加分を透湿性の評価特性として算出した。なお、透湿量が少ないほど透湿性は高い。
樹脂組成物を80℃で3時間、次いで110℃で3時間加熱硬化させ、150mm×50mm×10mmの試験片を作製し、京都電子工業(株)製の熱伝導計を用いて、当該試験片の熱伝導率をJIS R2616(2001)に準拠し、温度25℃において測定した。
ポリプロピレンフィルムにアルミ蒸着した金属化フィルムを巻回してなるフィルムコンデンサ素子を作成し、フィルムコンデンサ素子の両端面に半田を用い外部電極であるメタリコン電極を作成した。外部電極から銅製のバスパーを半田接合し、金属ケース内にフィルムコンデンサを収納し樹脂組成物を注形し、100℃で3時間、次いで140℃で3時間加熱硬化し、フィルムコンデンサを得た。
成型後のフィルムコンデンサの表面を目視で確認、および任意の箇所を切断し、切断面におけるボイドの有無を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○:表面が平滑であり、切断面にボイドなし
△:表面に凹凸があり、切断面にボイドなし
×:切断面にボイドあり
成型後のフィルムコンデンサにおいて気相で、-40℃と115℃との温度による冷熱サイクル試験を各1時間で行い、1000サイクル前後のクラックの発生の有無を目視で確認し、以下の基準で評価した。
〇:クラック発生なし
×:クラック発生あり
成形後のフィルムコンデンサの初期の静電容量と、温度85℃、湿度85%RHの高温高湿槽内にて直流(DC)電圧を所定の時間印加した後の静電容量とを測定し、初期の静電容量に対して5%低下した時間を耐湿寿命とし、以下の基準で評価した。静電容量は、キーサイト・テクノロジー製のLCRメーターを用いて測定した。
〇:1000時間以上
△:500時間以上1000時間未満
×:500時間未満
1 フィルムコンデンサ素子
2 電極
3 バスバー
4 ケース
5 フィルムコンデンサ用封止樹脂組成物
Claims (6)
- (A)熱硬化性樹脂、(B)無機充填材(ただし、(C)水酸化アルミニウムを除く)、及び(C)水酸化アルミニウムを含み、
前記(C)水酸化アルミニウムの付着水分量が0.3~0.6質量%であるフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物であって、
前記(B)成分がシリカを含有しており、当該(B)成分中のシリカ含有量が60~90質量%であって、
前記樹脂組成物中に含まれる前記(C)成分の含有量が、6~18質量%である、
ことを特徴とするフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物。 - 前記(C)水酸化アルミニウムの平均粒子径が0.1~5μmであることを特徴とする請求項1に記載のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物。
- 前記樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度未満での線膨張係数α1が15~35ppm/℃であり、当該硬化物のガラス転移温度以上での線膨張係数α2が45~105ppm/℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物。
- 前記(B)無機充填材の平均粒子径が5~40μmであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物。
- 前記(A)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物。
- フィルムコンデンサ素子が請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ用封止樹脂組成物の硬化物で外装されてなるフィルムコンデンサ。
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