以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
<基板処理システムの概要>
図1は、基板処理システム100の構成の一例を概略的に示す図である。この基板処理システム100は、インデクサ部110と、処理装置120と、基板処理システム100を制御する制御部60とを含んでいる。
インデクサ部110には、基板W1を収容する基板収容器111が載置されている。基板W1は例えば半導体基板である。基板W1が半導体基板である場合、基板W1は略円盤状の形状を有している。基板収容器111としては、例えば、基板W1を密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)またはSMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、あるいは、収納した状態で基板Wを外気に曝すOC(open cassette)を採用することができる。図1の例では、複数の基板収容器111が一列に載置されている。
インデクサ部110には、基板搬送装置112が設けられている。基板搬送装置112は複数の基板収容器111の各々と基板W1の受け渡しを行う。図1の例では、基板搬送装置112は、複数の基板収容器111が載置された領域に隣り合って設けられている。インデクサ部110には、基板搬送装置112を移動させる移動機構(不図示)が設けられる。この移動機構は、基板搬送装置112を、基板収容器111の配列方向に沿って移動させ、複数の基板収容器111の各々と向かい合う位置で停止させる。基板搬送装置112は、基板収容器111の一つと向かい合う位置で停止した状態で、その一つの基板収容器111と基板W1の受け渡しを行うことができる。基板搬送装置112は基板収容器111から未処理の基板W1を取り出し、その基板W1を処理装置120へと渡す。また、基板搬送装置112は処理済みの基板W1を処理装置120から受け取り、その基板W1を基板収容器111内の載置面に載置させる。
処理装置120は、インデクサ部110(具体的には基板搬送装置112)から渡された基板W1に対して種々の処理を行う。図1の例では、処理装置120は基板搬送装置121と、複数の基板処理装置122とを含んでいる。基板搬送装置121はインデクサ部110および複数の基板処理装置122の各々と基板W1を受け渡す。図1の例では、複数の基板処理装置122は基板搬送装置121を取り囲むように配置されている。
基板搬送装置121はインデクサ部110から受け取った未処理の基板W1を基板処理装置122に渡す。基板処理装置122の各々は、基板搬送装置121から受け取った基板W1に対して処理を行う。この処理は特に限定される必要はないものの、例えば洗浄処理、成膜処理、熱処理、露光処理およびエッチング処理などの処理が挙げられる。基板搬送装置121は、基板処理装置122から受け取った処理済みの基板W1を他の基板処理装置122またはインデクサ部110に渡す。
<基板処理装置の概要>
図2は、基板処理装置1の構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1は、基板W1に対して処理を行う装置であり、複数の基板処理装置122の一つである。基板W1は例えば半導体基板であり、略円板形状を有している。基板W1に対する処理としては、処理液を用いたウェット処理を採用することができる。当該処理液としては、純水等のリンス液、および、フッ酸または硫酸等の酸もしくはアンモニア等のアルカリを含むエッチング液等の薬液の少なくともいずれか一方を採用することができる。ここでは、基板処理装置1はウェット処理を行うものとする。
図2に例示するように、基板処理装置1は、基板保持装置10と、第1処理液供給部50と、制御部60とを含んでいる。
基板保持装置10は基板W1を略水平に保持する。また、基板保持装置10は基板W1を水平面内において回転させる。換言すれば、基板保持装置10は、基板W1の略中心を通り鉛直方向に沿う回転軸Q1のまわりで、基板W1を回転させる。基板保持装置10の具体的な構成の一例は後に詳述する。
なお以下では、回転軸Q1についての周方向および径方向をそれぞれ単に周方向および径方向と呼ぶ。他の軸についての周方向および径方向については、軸を明記して述べる。
第1処理液供給部50は、基板保持装置10によって保持された基板W1の上面に処理液を供給する。図2の例では、第1処理液供給部50は、ノズル51と、供給管52と、バルブ53と、処理液供給源54とを含んでいる。ノズル51は、基板保持装置10によって保持された基板W1よりも鉛直上方に設けられている。図2の例では、ノズル51は基板W1の中央部と鉛直方向において対向する。ノズル51の下面には、処理液を吐出するための吐出口が形成される。
ノズル51は供給管52を介して処理液供給源54に接続されている。処理液供給源54は処理液を供給管52の内部に供給する。バルブ53は供給管52の途中に設けられている。バルブ53は制御部60によって制御され、供給管52の内部の流路の開閉を切り替える。バルブ53は、供給管52の内部を流れる処理液の流量を調整可能なバルブであってもよい。
バルブ53が開くことにより、処理液供給源54からの処理液が供給管52の内部を流れて、ノズル51の吐出口から基板W1の上面へと吐出される。基板W1の回転中にノズル51が処理液を吐出することにより、基板W1の上面に着液した処理液は遠心力を受けて基板W1の上面を広がり、基板W1の周縁から飛散する。これにより、処理液が基板W1の上面の全面に作用し、当該処理液に応じた処理を基板W1の上面に対して行うことができる。例えば処理液としてエッチング液を採用した場合には、基板W1の上面に対してエッチング処理が行われる。
なお、基板処理装置1には、ノズル51を処理位置と待機位置との間で往復移動させるノズル駆動部(不図示)が設けられてもよい。処理位置は、ノズル51が処理液を吐出するときの位置であり、基板保持装置10によって保持された基板W1よりも鉛直上方の位置である。待機位置は、ノズル51が処理液を吐出していないときの位置であり、例えば基板保持装置10によって保持された基板W1に対して鉛直方向において対向しない位置である。ノズル51が待機位置で待機しているときには、基板W1よりも鉛直上方の領域にノズル51が位置しないので、基板処理装置1と外部の基板搬送部(不図示)との間の基板W1の受け渡しが容易となる。
また、基板処理装置1には、基板保持装置10を囲む筒状のカップ(不図示)が設けられてもよい。基板W1の周縁から飛散した処理液は当該カップの内周面に当たって落下し、不図示の回収機構によって回収される。
また、第1処理液供給部50は複数種の処理液を供給してもよい。例えば第1処理液供給部50は薬液およびリンス液を基板W1の上面に順次に供給してもよい。この場合、第1処理液供給部50は、薬液用のノズル51、供給管52、バルブ53および処理液供給源54と、リンス液用のノズル51、供給管52、バルブ53および処理液供給源54とを含んでいてもよい。
<基板保持装置>
図3は、基板保持装置10の構成の一例を概略的に示す平面図である。図3では、基板W1を仮想線で示している。基板保持装置10は、基板保持部20と、対向部材30とを含んでいる。
<基板保持部>
図2および図3を参照して、基板保持部20は、基部21と、複数の保持ピン22と、ピン駆動部23と、複数の支持ピン24と、回転機構25とを含んでいる。
図2および図3の例では、基部21は略円環状の板状形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられている。また、基部21は基板W1に対して鉛直下方に設けられる。基部21の外周縁は平面視において(つまり、鉛直方向に沿って見て)、基板W1の周縁よりも外側に位置している。つまり、基部21は平面視において基板W1よりも外側に広がっている。言い換えれば、基部21の外径は基板W1の径よりも大きい。
複数の保持ピン22および複数の支持ピン24は基部21の上面21aに立設されている。なお、図2および図3の例では、基部21の上面21aから鉛直上方に突出するピン支持体26が設けられており、このピン支持体26の上面に保持ピン22および支持ピン24が立設されている。この場合、保持ピン22およびピン支持体26を纏めて保持ピンと把握することができ、また、支持ピン24およびピン支持体26を纏めて支持ピンと把握することもできる。
複数の保持ピン22は平面視において基板W1の周縁に沿って略等間隔に設けられている。図3の例では、4つの保持ピン22が90度ごとに設けられている。各保持ピン22は、以下に説明する保持位置と開放位置との間で移動可能に設けられる。
図4は、基板保持部20の一部の構成の一例を概略的に示す図であり、保持ピン22の位置の一例を説明するための図である。保持位置P1は、保持ピン22が基板W1の周縁と接触する位置である。複数の保持ピン22がそれぞれの保持位置P1で停止することにより、複数の保持ピン22が基板W1を略水平に保持する。つまり、保持位置P1は、保持ピン22が基板W1の周縁を保持する位置である。
開放位置P2は、保持ピン22が基板W1の周縁から離れた位置である。複数の保持ピン22がそれぞれの開放位置P2で停止することにより、保持ピン22による基板W1の保持が解除される。つまり、開放位置P2は、保持ピン22による基板W1の保持を解除する位置である。
ピン駆動部23は複数の保持ピン22の各々を保持位置P1と開放位置P2との間で移動させる。ピン駆動部23は例えばモータおよび磁石等の駆動機構を有している。ピン駆動部23は制御部60によって制御される。
以下では、複数の保持ピン22がそれぞれの保持位置P1で停止して基板W1を保持する状態を保持状態とも呼び、複数の保持ピン22がそれぞれの開放位置P2で停止して基板W1の保持を解除する状態を解除状態とも呼ぶ。
図2および図3を参照して、複数の支持ピン24は平面視において複数の保持ピン22に対して回転軸Q1側(つまり、内周側)に設けられており、基板W1の下面と鉛直方向において対向する。複数の支持ピン24は、例えば基板W1と略同心の仮想円上において略等間隔に設けられる。図3の例では、4つの支持ピン24が90度ごとに設けられている。
複数の支持ピン24は、複数の保持ピン22の各々が保持位置P1で停止した保持状態において、基板W1の下面と間隔を空けて対向している(図2も参照)。つまり、複数の支持ピン24は保持状態において基板W1の下面と接触しない。この保持状態において、支持ピン24と基板W1との間の間隔は例えば0.2mm程度に設定される。
一方で、複数の保持ピン22による保持が解除された解除状態においては、複数の支持ピン24の先端が基板W1の下面に接触し、複数の支持ピン24が基板W1を略水平に支持する。図5は、基板W1が複数の支持ピン24によって支持された状態での基板処理装置1の構成の一例を示している。図5の例では、基板W1の下面が支持ピン24の先端に当接している。この基板処理装置1においては、後に詳述するように、基板W1の回転中に複数の保持ピン22を解除状態として、複数の支持ピン24によって回転中の基板W1を保持する。
図3に例示するように、保持ピン22および支持ピン24は一対一で互いに対応して設けられてもよい。この場合、各支持ピン24は、他の支持ピン24よりも、対応する保持ピン22の近くに設けられる。図示の例では、互いに対応する保持ピン22および支持ピン24は一体に設けられる。図6は、保持ピン22および支持ピン24の構成の一例を概略的に示す斜視図である。保持ピン22および支持ピン24はピン支持体26の上面に設けられている。ここでは、互いに対応する保持ピン22、支持ピン24およびピン支持体26は同一材料で一体に設けられる。これにより、製造コストを低減できる。
図示の例では、ピン支持体26は略円柱形状を有しており、その中心軸が鉛直方向に沿う姿勢で設けられている。ピン支持体26は、鉛直方向に沿う回転軸Q2のまわりで回転可能に設けられる。
図示の例では、保持ピン22は略円柱形状を有しており、その中心軸が鉛直方向に沿う姿勢でピン支持体26の上面に設けられている。この保持ピン22は平面視において回転軸Q2とは異なる位置に設けられている。よって、ピン支持体26が回転軸Q2のまわりで回転すると、保持ピン22は回転軸Q2を中心とした周方向に沿って水平面内を移動する。保持位置P1および開放位置P2はこの保持ピン22の移動経路上に設定される。
ピン駆動部23は複数のピン支持体26をそれぞれの回転軸Q2のまわりで同期回転させることにより、複数の保持ピン22の各々を保持位置P1と開放位置P2との間で移動させる。例えば、ピン駆動部23は複数のピン支持体26を反時計回りに回転させることにより、複数の保持ピン22の各々を基板W1の周縁に向かって移動させて保持位置P1で停止させる。これにより、複数の保持ピン22が基板W1を略水平に保持する。一方で、ピン駆動部23は複数のピン支持体26を時計回りに回転させることにより、複数の保持ピン22の各々を基板W1の周縁から離れる方向に移動させて開放位置P2で停止させる。これにより、複数の保持ピン22による基板W1の保持が解除される。
図6に例示するように、保持ピン22の基板W1側の側面には、凹部221が形成されていてもよい。この凹部221は基板W1側に向かって開口する。言い換えれば、凹部221は基板W1とは反対側に向かって凹む。図7は、保持ピン22の構成の一例を概略的に示す断面図である。図7の例では、凹部221は基板W1側に広がる略V字形状に形成されている。以下では、凹部221を形成する面のうち鉛直上方の面を凹部天面221aと呼び、鉛直下方の面を凹部底面221bと呼ぶ。
図7では、保持ピン22が保持位置P1に位置している保持状態での基板W1も示されている。図7に例示するように、基板W1の周縁は保持状態において保持ピン22の凹部221に入り込んでおり、凹部221の凹部天面221aおよび凹部底面221bに当接する。これによれば、複数の保持ピン22は鉛直方向に基板W1を挟んで保持できるので、より高い保持力で基板W1を保持することができる。
次に回転軸Q2の位置について述べる。図4および図6の例では、回転軸Q2は、ピン支持体26の上面に立設された支持ピン24の先端を通るように設定されている。言い換えれば、ピン支持体26は、支持ピン24の先端を通る回転軸Q2のまわりで回転可能に設けられている。これによれば、支持ピン24の先端の基部21に対する位置はピン支持体26の回転によらず、略一定である。言い換えれば、支持ピン24の当該位置は保持ピン22の位置によらず、略一定である。よって、保持ピン22が保持位置P1と開放位置P2との間で移動するときにも、保持ピン22の基板W1に対する位置は略一定である。したがって、保持状態から解除状態への移行時においても、支持ピン24の先端は基板W1の下面をほとんど擦らない。よって、支持ピン24による基板W1の下面の擦傷を抑制することができる。
また、図示のように、支持ピン24は鉛直上方に向かうほど細くなる先細形状を有していてもよい。例えば支持ピン24の先端部は円錐形状または角錐形状を有する。これによれば、支持ピン24と基板W1の下面との接触面積を低減することができ、支持ピン24による基板W1の下面の汚染を抑制することができる。
再び図2を参照して、回転機構25は、基板保持部20によって保持された基板W1を回転軸Q1まわりで回転させる。図2の例では、回転機構25は、中空シャフト251と、中空モータ252とを含んでいる。中空シャフト251は略円筒形状を有しており、その中心軸が回転軸Q1に沿う姿勢で設けられる。中空シャフト251の先端には基部21の下面に連結される。中空モータ252が中空シャフト251を回転軸Q1のまわりで回転させることにより、基部21を回転軸Q1のまわりで回転させることができる。この基部21の回転に伴って、基板保持部20によって保持された基板W1も回転軸Q1のまわりで回転する。
このような基板保持部20はスピンチャックとも呼ばれ、基部21はスピンベースとも呼ばれ得る。
また図2の例では、基部21には貫通孔21bが形成されている。貫通孔21bは基部21の中央部を鉛直方向に沿って貫通する。貫通孔21bは平面視において例えば円形状を有する。図2の例では、中空シャフト251の先端は基部21の貫通孔21bを囲むように基部21に連結されており、貫通孔21bは鉛直方向において中空シャフト251の内部空間に繋がっている。基部21の貫通孔21bおよび回転機構25の中空部は、後に述べるように、対向部材30の固定に利用される。
<対向部材>
対向部材30は、基板保持部20によって保持された基板W1と基部21との間に設けられている。図2の例では、対向部材30は板状形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられている。対向部材30の上面(以下、対向面30aと呼ぶ)は、基板保持部20によって保持された基板W1の下面と間隔を空けて対向する。対向部材30の対向面30aは基板W1の下面と略平行であり、全ての支持ピン24の先端よりも鉛直下方に位置している。よって、基板W1が支持ピン24によって支持された状態でも、対向部材30の対向面30aは間隔を空けて基板W1の下面に対向する。基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の間隔は、基板W1が複数の保持ピン22に保持された保持状態において、例えば0.3~1.0mm程度に設定される。
対向部材30の対向面30aの周縁は、例えば基板W1と略同心の円形状を有する(図3も参照)。対向部材30の周縁は基板W1の周縁に対して回転軸Q1側(つまり、内周側)に位置している。基部21は基板W1よりも外側に広がっているので、基部21の上面21aは対向部材30よりも外側において基板W1の下面と対向する。複数の保持ピン22および複数の支持ピン24は対向部材30の外側において、基部21の上面21aに設けられる。逆に言えば、対向部材30の周縁は複数の支持ピン24に対して回転軸Q1側(つまり、内周側)に位置する。これによれば、回転機構25が基部21を回転軸Q1のまわりで回転させても、対向部材30は支持ピン24と衝突しない。つまり、対向部材30は基部21の回転を阻害しない。
基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの対向面積は基板W1の下面の面積の半分以上に設定され、より好ましくは、基板W1の下面の面積の9割以上に設定される。例えば、基板W1の直径および対向部材30の対向面30aの直径はそれぞれ300mmおよび294mmに設定される。
対向部材30は例えば非回転である。図2の例では、対向部材30は固定部材31を介して基板処理装置1内に固定される。固定部材31は例えば柱形状(具体な一例として円柱形状)を有しており、その中心軸が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。固定部材31は対向部材30の下面30bに連結されており、下面30bから鉛直下方に延在して、基部21の貫通孔21bおよび回転機構25の中空部を貫通する。固定部材31の外周面は基部21の内周面および回転機構25の内周面に接触しておらず、これらとの間には間隙が形成されている。固定部材31はその鉛直下方の端部において、基板処理装置1の筐体等に固定される。
基板W1が回転軸Q1のまわりで回転すると、基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の空間H1には、負圧が生じる。これは、基板W1の回転により、空間H1内の気体が対向部材30の周縁よりも外側に流出するからである。この負圧により、基板W1は対向部材30側に吸引される。この負圧の大きさは、基板W1の回転速度、基板W1と対向部材30との間の間隔および基板W1と対向部材30の対向面積等に依存する。
基板処理装置1は、後に詳述するように、基板W1の回転中に複数の保持ピン22を保持状態から解除状態に移行させることで、空間H1の負圧により基板W1を複数の支持ピン24の先端に押し付けて、複数の支持ピン24に基板W1を保持させる。
<制御部>
制御部60は、基板処理装置1を統括的に制御する。具体的には、制御部60は、ピン駆動部23、回転機構25およびバルブ53などの構成要素を制御する。
制御部60は電子回路であって、例えばデータ処理装置および記憶媒体を有していてもよい。データ処理装置は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶媒体は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶媒体には、例えば制御部60が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。処理装置がこのプログラムを実行することにより、制御部60が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部60が実行する処理の一部または全部がハードウェアによって実行されてもよい。
制御部60は、基板W1の回転速度が所定の範囲内となったときに、ピン駆動部23を制御して複数の保持ピン22の各々を保持位置P1から開放位置P2に移動させて、複数の支持ピン24に基板W1を保持させる。以下、基板処理装置1の動作の一例について詳述する。
<基板処理装置の動作>
図8は、基板処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。まず、ステップS1にて、制御部60はピン駆動部23を制御して、外部から搬入された基板W1を複数の保持ピン22に保持させる。具体的には、ピン駆動部23は複数の保持ピン22の各々を開放位置P2から保持位置P1に移動させて、複数の保持ピン22に基板W1を保持させる。
次にステップS2にて、制御部60は回転機構25を制御して、基板W1を回転軸Q1のまわりで回転させ始める。例えば制御部60は、基板W1の回転速度が所定の第1目標値となるように、回転機構25の制御を開始する。第1目標値は例えば1500rpmに設定される。この制御により、基板W1の回転速度は零から時間の経過とともに増加し、第1目標値に達すると、その後は、制御ばらつきの範囲内で略一定となる。
この基板W1の回転に伴って、基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の空間H1には、負圧が生じる。
次にステップS3にて、制御部60は基板W1の回転速度が所定の範囲内に維持されているか否かを判断する。所定範囲は、第1目標値を含む範囲である。基板W1が第1目標値で正常に略定速回転しているときには、基板W1の回転速度はこの所定の範囲内に維持される。一方、基板W1が加速または減速する際には、基板W1の回転速度はこの所定の範囲内で維持されない。
基板W1の回転速度が所定の範囲内に維持されていないときには、まだ基板W1が加速中であるので、制御部60は再びステップS3を実行する。基板W1の回転速度が所定の範囲内に維持されているときには、基板W1が略定速回転しているので、ステップS4にて、制御部60はピン駆動部23を制御して、複数の保持ピン22による基板W1の保持を解除する。具体的には、ピン駆動部23は複数の保持ピン22の各々を保持位置P1から開放位置P2へと移動させる。
基板W1と対向部材30との間の空間H1には負圧が生じているので、基板W1の保持の解除により、基板W1は鉛直下方に吸引されて支持ピン24の先端に押し付けられる。つまり、基板W1は支持ピン24によって保持される。
ここで、基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの対向面積、および、基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の間隔は、複数の支持ピン24が略定速回転中の基板W1を保持できる程度の負圧を空間H1に生じさせるように、設定される。
次にステップS5にて、制御部60は第1処理液供給部50を制御して、ノズル51から処理液を吐出させる。具体的には、制御部60は不図示のノズル駆動部を制御してノズル51を待機位置から処理位置に移動させた上で、バルブ53を開いてノズル51から処理液を吐出させる。処理液は基板W1の上面に着液し、遠心力を受けて基板W1の上面で広がって基板W1の周縁から外側に飛散する。処理液が基板W1の上面の全面に作用することにより、処理液に応じた処理を基板W1に対して行うことができる。
なお、ステップS5において、第1処理液供給部50は複数種の処理液を順に吐出しても構わない。例えば、第1処理液供給部50は薬液を基板W1の上面に供給して、薬液に応じた処理を基板W1に対して行った後に、リンス液を基板W1の上面に供給して、基板W1上の薬液を洗い流してもよい。
制御部60は例えばステップS5の開始から第1所定時間が経過したときに、第1処理液供給部50を制御して処理液の吐出を終了させる。経過時間の測定は例えば制御部60内のタイマ回路を用いて行うことができる。
次にステップS6にて、制御部60はピン駆動部23を制御して、複数の保持ピン22に基板W1を保持させる。具体的には、ピン駆動部23は複数の保持ピン22の各々を開放位置P2から保持位置P1へ移動させる。図7の例では、保持ピン22の凹部221の凹部底面221bが傾斜しているので、基板W1は凹部底面221bの傾斜に応じて持ち上げられる。よって、再び基板W1の下面は支持ピン24から離れる。
次にステップS7にて、制御部60はスピン乾燥処理を行う。具体的には、制御部60は回転機構25を制御して、基板W1の回転速度を第2目標値まで増加させる。第2目標値は第1目標値よりも高く、例えば2500rpm程度に設定される。基板W1がより高速に回転するので、基板W1の上面に残留した処理液をより確実に外側に飛散させることができ、基板W1が乾燥する。
例えばステップS7の開始から第2所定時間が経過したときに、ステップS8にて、制御部60は回転機構25を制御して、基板W1の回転を終了させる。つまり、基板W1の回転速度を零まで低下させる。
上記動作によれば、基板W1の回転速度が零から第1目標値まで増加させる加速期間の全期間において、複数の保持ピン22が基板W1を保持する(ステップS1およびステップS2)。これによって、より確実に基板W1を保持して基板W1を加速させることができる。
一方、回転速度が所定の範囲に維持される期間(つまり、回転速度がほぼ第1目標値に維持される定速期間)の少なくとも一部においては、複数の保持ピン22ではなく、複数の支持ピン24が基板W1を保持する(ステップS4)。この定速期間においては、基板W1に印加される周方向の力が加速期間における当該力に比して小さいので、支持ピン24と基板W1との間のずれが生じにくく、複数の支持ピン24は空間H1の負圧により基板W1を適切に保持することができる。このとき、回転機構25からの回転力は、基板W1と複数の支持ピン24の各々との間の摩擦によって基板W1に伝達される。
このように、基板処理装置1によれば、複数の保持ピン22ではなく複数の支持ピン24が基板W1を保持しつつ、基板W1を回転させることができる。よって、基板W1の周縁を保持しないで基板W1を回転させることができる。
そして、複数の支持ピン24が基板W1を保持しつつ基板W1が回転する状態で、処理液が基板W1の上面に供給される(ステップS5)。よって、回転の遠心力により基板W1の周縁へ広がる処理液は保持ピン22によって阻害されずに、基板W1の上面の周縁部を適切に流れる。つまり、保持ピン22が基板W1の周縁に接触していることに起因した処理不良を回避することができる。
しかも、基板処理装置1によれば、複数の支持ピン24が基板W1を保持するので、基板W1の下面に対して広い面積で密着する吸着チャックに比して、基板W1の下面の汚染を抑制できる。
また、上記動作によれば、スピン乾燥処理において、回転速度が第1目標値から第2目標値まで増加するので、その加速期間の全てにおいて、複数の保持ピン22が基板W1を保持している(ステップS6およびステップS7)。よって、基板W1をより確実に保持しつつ基板W1の回転速度を増加させることができる。
また、上記動作によれば、スピン乾燥処理の終了後に基板W1の回転速度を低減させる際にも、その減速期間の全てにおいて、複数の保持ピン22が基板W1を保持している(ステップS8)。よって、基板W1をより確実に保持しつつ基板W1の回転速度を低減することができる。
なお、スピン乾燥処理において定速期間が存在する場合には、ピン駆動部23はその定速期間の少なくとも一部において複数の保持ピン22を解除状態として、複数の支持ピン24に基板W1を保持させてもよい。これによれば、基板W1の周縁と複数の保持ピン22の各々との間に残留する処理液を低減することができ、より均一な乾燥に資する。
もちろん、基板W1の周縁と複数の保持ピン22とが接触していても十分に基板W1を乾燥させることができる場合には、定速期間においても複数の保持ピン22が基板W1を保持していればよい。
また、上述の例では、制御部60は、処理液を基板W1の上面に供給する処理期間の開始前に、ピン駆動部23を制御して複数の保持ピン22の各々を保持位置P1から開放位置P2に移動させており(ステップS4)、処理期間の終了後に、ピン駆動部23を制御して複数の保持ピン22の各々を開放位置P2から保持位置P1に移動させている(ステップS6)。言い換えれば、制御部60は処理期間の全てに亘って、複数の保持ピン22を開放位置P2で停止させている。これによれば、処理期間の全てに亘って、複数の支持ピン24が基板W1を保持できる。
処理不良の抑制という観点では、複数の保持ピン22は処理期間の全てに亘って開放位置P2で停止していることが望ましいものの、必ずしもこれに限らない。制御部60は、処理期間の少なくとも一部において、複数の保持ピン22を開放位置P2で停止させていればよい。なぜなら、処理期間の少なくとも一部において処理不良を抑制できるからである。
<保持ピンと支持ピンとの相対位置>
図9は、基板保持部20の構成の一例を概略的に示す図であり、解除状態における保持ピン22と支持ピン24との位置関係の一例を概略的に示している。ここでは、基板W1は時計回りに回転するものとする。この基板W1の回転に伴って、基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の気体はその周縁から外側に流出する。図9では、この気体の流線方向の一例を太線で模式的に示している。
図9の例では、保持ピン22の一例として、保持ピン22’も示されている。この保持ピン22’は、自身に対応する支持ピン24と流線方向に沿って並ぶ位置に設けられている。この位置関係によれば、支持ピン24を回り込んだ気体が再び保持ピン22’に衝突するので、保持ピン22’と支持ピン24との間で乱流が形成されやすい。当該乱流は基板W1に対してランダムな力を局所的に作用し得る。これにより、基板W1の吸引力の平面視における分布ばらつきが大きくなり、ひいては、支持ピン24が基板W1を適切に保持できなくなる可能性がある。また、乱流により気体の一部が基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の空間H1に戻り得る。これにより、負圧の大きさが低減し得る。つまり、支持ピン24側への基板W1の吸引力が低下し得る。これによっても、支持ピン24が基板W1を適切に保持できなくなり得る。
したがって、解除状態において、保持ピン22は、流線方向に交差した方向に沿って支持ピン24と並んでいることが望ましい。より具体的には、図9に例示するように、平面視において、保持ピン22は、対応する支持ピン24に対して、基板W1の回転方向とは反対側に位置していることが望ましい。より具体的には、保持ピン22は、支持ピン24に対する回転方向の反対側であって支持ピン24の直前に位置する。図9の例では、支持ピン24の周方向の位置を示す仮想線A1も示されている。仮想線A1は回転軸Q1と支持ピン24の中心とを通る線である。図9に例示するように、保持ピン22は仮想線A1に対して基板W1の回転方向とは反対側に位置する。これにより、気体は保持ピン22と支持ピン24との間を通り抜けることができるので、保持ピン22と支持ピン24との間に乱流が形成されにくい。よって、複数の支持ピン24は基板W1をより適切に保持することができる。
<支持ピン>
図10は、支持ピン24の構成の一例を概略的に示す図である。図10に例示するように、支持ピン24は、ピン本体241と、保護部材242とを含んでいてもよい。ピン本体241は例えば保持ピン22およびピン支持体26と同一の材料で形成される。ピン本体241はピン支持体26の上面から鉛直上方に突出する。図10の例では、ピン本体241は鉛直上方に向かうほど細くなる先細形状を有しており、ピン本体241の上面は略水平となっている。
保護部材242はピン本体241の上面に設けられており、支持ピン24の先端を構成する。保護部材242は弾性を有する。具体的には、保護部材242はピン本体241よりも低い弾性率を有している。保護部材242は、例えばシリコーンまたはゴム等の合成樹脂によって形成される。図10の例では、保護部材242も鉛直上方に向かうほど細くなる先細形状を有している。
これによれば、支持ピン24が、ピン本体241よりも柔らかい保護部材242で基板W1の下面に接触するので、基板W1の下面の損傷を抑制することができる。
<保持ピン>
図11は、基板保持部20の一部の構成の他の一例を概略的に示す図である。図11の例では、保持ピン22は平面視において長尺形状を有している。ここで、長尺形状とは、その長手方向が短手方向よりも長い形状を言う。図11に例示するように、保持ピン22は、その長手方向における中央部の幅が、長手方向における端部22aおよび端部22bよりも広くなる形状を有している。保持ピン22は解除状態において、その長手方向が流線方向に沿う姿勢で配置される。言い換えれば、保持ピン22の短手方向は流線方向に略直交する。
ここで、保持ピン22の配置姿勢の一例を仮想線B1との対比で説明する。仮想線B1は、回転軸Q1と保持ピン22の重心とを通る線である。図11の例では、保持ピン22の長手方向の両端のうち仮想線B1に対して回転方向とは反対側に位置する端部22aは、仮想線B1に対して回転方向側に位置する端部22bよりも、基板W1の周縁に近い。
このように、保持ピン22が流線方向に長く、中央部が太い長尺形状を有していれば、気体が保持ピン22の側面に沿って流れやすい。よって、乱流の発生をさらに抑制することができる。したがって、支持ピン24は基板W1をさらに適切に保持できる。
また、図11の例では、保持ピン22は平面視において略流線形状を有している。より具体的には、保持ピン22は端部22aにおいて略円弧形状を有し、端部22bにおいて端部22aよりも細い先細形状を有している。これによれば、気体が保持ピン22の側面に沿ってさらに流れやすく、乱流の発生をさらに抑制することができる。
なお、保持ピン22は略流線形状に限らず、略紡錘形状または略楕円形状を有していてもよい。また、支持ピン24も平面視において、保持ピン22と同様に長尺形状(例えば略流線形状、略紡錘形状または略楕円形状)を有していてもよい。これによれば、気体が支持ピン24の側面を流れやすく、支持ピン24の近傍での乱流の発生を抑制できる。
<気体供給部>
上述のように空間H1には負圧が生じるものの、基板W1の回転速度が例えば1500rpm程度以上であれば、基板W1の周縁を流れる処理液には、負圧よりも遠心力が大きく作用する。よって、処理液は基板W1の周縁から下面にあまり回り込まずに、外側に飛散することが多い。その一方で、処理液の基板W1の下面への回り込みをより確実に抑制することが望まれる場合もある。以下では、処理液の基板W1の下面への回り込みをより確実に抑制する技術について述べる。
図12は、基板処理装置1Aの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1Aは気体供給部80の有無を除いて、基板処理装置1と同様の構成を有している。気体供給部80は基板W1の下面の中央部を避けて、当該下面の周縁部に気体を供給する。当該気体としては、窒素またはアルゴン等の不活性ガスを採用することができる。ここでいう不活性ガスとは、基板W1との反応性が低い気体である。
図12の例では、当該気体の流れを太線の矢印で模式的に示している。ただし、図面の煩雑を避けるため、回転軸Q1に対して一方側の気体の流れを示し、他方側の気体の流れについての図示は省略している。図11の例では、当該気体は、回転機構25の内周面と固定部材31の外周面との間の空間、および、基部21の内周面と固定部材31の外周面との間の空間を鉛直上方に向かって流れて、対向部材30の下面30bと基部21の上面21aとの間の空間H2に流出し、空間H2内を外側に流れる。さらに当該気体は対向部材30の周縁から基板W1の下面の周縁部へ流れ、当該周縁部に沿って基板W1の外側に流れる。
図12の例では、気体供給部80は、供給管81と、バルブ82と、気体供給源83とを含んでいる。供給管81の一端は回転機構25の内周面と固定部材31の外周面との間の空間に連通しており、他端は気体供給源83に接続される。気体供給源83は気体(不活性ガス)を供給管81の内部に供給する。バルブ82は供給管81の途中に設けられている。バルブ82は制御部60によって制御され、供給管81の内部の流路の開閉を切り替える。バルブ82は、供給管81の内部を流れる気体の流量を調整可能なバルブであってもよい。
バルブ82が開くことにより、気体供給源83からの気体が供給管81の内部を流れて回転機構25の内周面と固定部材31の外周面との間の空間に供給される。当該気体は上述した経路に沿って流れる。
図12に例示するように、供給管81は、複数の分岐管811と、共通管812とを含んでいてもよい。複数の分岐管811は固定部材31を周方向に囲むように配置されていており、複数の分岐管811の各々の一端は回転機構25の内周面と固定部材31の外周面との間の空間に連通し、他端は共通して共通管812の一端に接続される。共通管812の他端は気体供給源83に接続されており、バルブ82は共通管812の途中に設けられている。この構造によれば、周方向に配置された複数の分岐管811が気体を供給するので、周方向に沿ってより均一に気体を供給することができる。
図13は、基板処理装置1Aの動作の一例を示すフローチャートである。まず、ステップS10にて、制御部60はピン駆動部23を制御して、外部から搬入された基板W1を複数の保持ピン22に保持させる。次にステップS11にて、制御部60は気体供給部80のバルブ82を開いて、基板W1の下面の周縁部に気体を供給する。気体の流量は適宜に設定されればよいものの、例えば100L/m程度に設定される。
次に制御部60はステップS12からステップS18をこの順に実行する。ステップS12からステップS18はそれぞれステップS2からステップS8と同一であるので、繰り返しの説明を避ける。次にステップS19にて、制御部60は気体供給部80のバルブ82を閉じて、気体の供給を終了する。
この動作によれば、ステップS15の処理液の供給中において、気体供給部80からの気体が基板W1の下面の周縁部に沿って外側に流れる。これにより、基板W1の周縁を回り込んで下面に流れる処理液を当該気体で外側に吹き飛ばすことができる。したがって、処理液が基板W1の下面に流れることを抑制または回避することができる。
また、基板W1よりも外側の気体が基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の空間H1に流入することも抑制できる。よって、基板W1の吸引力の低下も抑制できる。
また、気体供給部80は基板W1の下面の中央部を避けて基板W1の下面の周縁部に気体を供給している。もし基板W1の下面の中央部に気体を供給すれば、空間H1の負圧の大きさが低減するのに対して、気体供給部80は基板W1の周縁部のみに気体を供給するので、空間H1における負圧の低減をほとんど招かない。
<気体供給部の他の例>
図12の例では、対向部材30の下面30bと基部21の上面21aとの間の空間H2を気体の流路として利用した。しかるに、必ずしもこれに限らない。対向部材30の内部に気体の流路を形成してもよい。
図14は、基板処理装置1Bの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1Bは気体供給部80の構成を除いて、基板処理装置1Aと同様の構成を有している。基板処理装置1Bにおいては、対向部材30の内部に気体用流路301が形成されている。図14の例では、気体用流路301の吐出口301aは対向部材30の対向面30aに形成されており、基板W1の下面の周縁部に対向している。吐出口301aは複数形成され、例えば、基板W1と略同心の仮想円上に略等間隔で形成される。
図14の例では、気体用流路301は吐出口301aの付近において傾斜して延在している。具体的には、気体用流路301は、吐出口301aから対向部材30の下面30bに近づくにしたがって対向部材30の中心側に向かうように傾斜して延在し、さらに屈曲して水平方向に沿って対向部材30の中心側に延在している。気体用流路301が吐出口301aから傾斜して延在しているので、気体はその傾斜に沿って吐出口301aから径方向外側に向かって流出する。よって、気体を基板W1の下面の周縁部に沿って外側に流しやすい。
図14の例では、固定部材31の内部にも気体用流路311が形成されている。気体用流路311は鉛直方向に沿って固定部材31を貫通しており、その鉛直上方の一端が対向部材30の内部の気体用流路301に接続されている。気体供給部80の供給管81の一端は固定部材31の気体用流路311の他端に接続されている。気体供給源83からの気体は供給管81、気体用流路311および気体用流路301をこの順に流れ、吐出口301aから基板W1の下面の周縁部に向かって吐出される。
基板処理装置1Bにおいても、気体供給部80は基板W1の下面の周縁部のみに気体を供給して、当該気体を基板W1の下面の周縁部に沿って外側に流すことができる。したがって、処理液が基板W1の周縁から下面に回り込むことを抑制できる。また、基板W1よりも外側の気体が基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の空間H1に流入することも抑制できる。よって、基板W1の吸引力の低下も抑制できる。
<センサ>
図15は、基板処理装置1Cの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1Cはセンサ90および報知部61の有無を除いて、基板処理装置1と同様の構成を有している。センサ90は、基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の空間H1の圧力と関連した測定値を測定し、その測定値を制御部60に出力する。
例えば、センサ90は非接触式の測位センサ(測距センサともいう)であり、基板W1の一部の鉛直方向における位置(以下、鉛直位置と呼ぶ)を測定する。図15の例では、センサ90は、基板保持部20によって保持された基板W1よりも鉛直上方に設けられている。例えばセンサ90は、測定用の光または超音波である測定波を基板W1の上面に送波する。センサ90は、基板W1の上面で反射した測定波を受波し、当該測定波に基づいて、基板W1の上面の鉛直位置を測定する。センサ90は基板W1の上面の一部(センサ90と鉛直方向において対向する部分)に測定波を送波するので、基板W1の上面の当該一部の鉛直位置を測定する。基板W1が回転することにより、センサ90は基板W1の径方向における一部領域に対して全周に亘って測定波を送波するので、その環状領域(測定領域とも呼ぶ)内の各周方向位置における鉛直位置を測定する。
さて、基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の空間H1の負圧が大きいほど、基板W1に対する吸引力は大きくなる。よって、基板W1は当該負圧が大きいほど鉛直下方に撓み得る。基板W1が複数の保持ピン22によって保持されている状態では、基板W1は複数の保持ピン22との接触位置を支点として、下に凸の形状に撓み得る(図15参照)。また、基板W1が複数の支持ピン24によって支持されている状態では、基板W1は複数の支持ピン24との接触位置を支点として、下に凸の形状に撓み得る。
空間H1の負圧が大きいほど基板W1の撓み量は大きいので、センサ90によって測定された基板W1の鉛直位置は負圧が大きいほど低くなる。負圧と撓み量との関係は例えば予めシミュレーションまたは実験等により把握することができる。
ここでは、センサ90は基板W1の上面の測定領域内の各周方向位置における鉛直位置を測定するので、制御部60は、センサ90によって測定された複数の鉛直位置の平均値を基板W1の測定領域の鉛直位置として算出してもよい。
制御部60は、基板W1の略定速回転中に複数の保持ピン22の各々を保持位置P1から開放位置P2に移動させるか否かを、センサ90によって測定された測定値に基づいて判断する。つまり、制御部60は、複数の支持ピン24による基板W1の保持に十分な負圧が空間H1に生じているか否かをセンサ90を用いて確認し、十分な負圧が生じているときに、複数の保持ピン22を解除状態とする。
より具体的な一例として、制御部60は空間H1の負圧の大きさが所定の基準値以上となるか否か、つまり、センサ90によって測定された基板W1の測定領域の鉛直位置が所定の基準位置と同じ、または、当該基準位置よりも鉛直下方となっているか否かを判断する。当該基準値は、複数の支持ピン24が基板W1を保持できる負圧の大きさの下限値以上の値であり、当該基準位置は、負圧の大きさが基準値と一致するときの基板W1の測定領域の鉛直位置である。
制御部60はその判断結果が肯定的(YES)であるときに、基板W1の略定速回転中にピン駆動部23を制御して、複数の保持ピン22の各々を保持位置P1から開放位置P2に移動させる。一方で、制御部60はその判断結果が否定的(NO)であるときには、基板W1の略定速回転中において、複数の保持ピン22の各々を保持位置P1から開放位置P2に移動させない。
これによれば、基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の空間H1に十分な負圧が生じた状態で、支持ピン24に基板W1を保持させることができる。
図16は、基板処理装置1Cの動作の一例を示すフローチャートである。ステップS21からステップS23はそれぞれステップS1からステップS3と同一であるので、繰り返しの説明は避ける。
次にステップS24にて、センサ90は、空間H1の負圧の大きさに関連する測定値を測定し、当該測定値を制御部60に出力する。測定値としては、基板W1の上面のうち測定領域の鉛直位置を採用できる。
次にステップS25にて、制御部60は空間H1の負圧の大きさが基準値以上であるか否かを判断する。具体的な一例として、制御部60はセンサ90によって測定された複数の鉛直位置を平均して基板W1の測定領域の鉛直位置を算出し、算出された鉛直位置が所定の基準位置と同じ、または、当該基準位置よりも鉛直下方となっているか否かを判断する。なお、制御部60の記憶媒体には、予め作成された鉛直位置と負圧の大きさとの関係を示すテーブルが記憶されていてもよい。制御部60は、測定された鉛直位置と、テーブルとに基づいて負圧の大きさを求め、当該負圧の大きさと基準値とを比較してもよい。
空間H1の負圧の大きさが基準値以上であるときには、支持ピン24による基板W1の保持に必要な負圧が空間H1に生じているので、ステップS26にて、制御部60はピン駆動部23を制御して、複数の保持ピン22の各々を保持位置P1から開放位置P2に移動させる。次に制御部60はステップS27からステップS30をこの順に実行する。ステップS27からステップS30はそれぞれステップS5からステップS8と同一であるので、繰り返しの説明を避ける。
一方、ステップS25において、負圧の大きさが基準値未満であるときには、支持ピン24による基板W1の保持に必要な負圧が生じていないので、制御部60はステップS26からステップS29を実行せずに、ステップS30において、回転機構25を制御して基板W1の回転を終了する。
以上のように、制御部60は複数の保持ピン22による基板W1の保持の解除の可否を、センサ90の測定値に基づいて判断しているので、負圧の大きさが基準値に満たない状態で支持ピン24に基板W1を保持させることを回避できる。
しかも上述の例では、センサ90として非接触式の測距センサを採用している。このセンサ90は、空間H1の圧力に関連する測定値を測定するにもかかわらず、空間H1内に設ける必要がなく、基板W1の上面よりも鉛直上方に設ければよい。よって、センサ90の設置が容易である。
なお、上述の例では、空間H1の負圧についての基準値として、略定速回転中の基板W1を複数の支持ピン24を保持できる負圧の下限値以上の値を採用した。しかるに、基板W1の上面には処理液が供給される。この処理液が基板W1の上面に供給されると、処理液の着液時に処理液が基板W1の上面に力を作用させる。この力は基板W1を鉛直下方に押し下げるので、支持ピン24による保持力を向上できるものの、処理液の着液位置が基板W1の中心からずれたりして処理液が乱れると、基板W1に生じる力の平面視におけるばらつきが大きくなり、基板W1が支持ピン24から外れる可能性もある。そこで、空間H1の負圧の大きさについての基準値としては、処理液を供給した状態でも、複数の支持ピン24が略定速回転中の基板W1を適切に保持できる程度の値を採用することが望ましい。
図16に例示するように、空間H1の負圧の大きさが基準値以上であるときに、処理液が基板W1の上面に供給され(ステップS27)、負圧の大きさが基準値未満であるときには、処理液が基板W1の上面に供給されない。よって、制御部60は、処理液を供給するか否かを、センサ90の測定値に基づいて判断している、ともいえる。
なお、空間H1の負圧の大きさは時間ともに変動し得るので、ステップS26の時点において負圧が基準値以上であっても、ステップS27の時点で負圧が基準値未満となっている可能性は零ではない。そこで、制御部60はステップS27の直前にも、空間H1の負圧の大きさを確認してもよい。
図17は、基板処理装置1Cの上記動作の一例を示すフローチャートである。図17の例では、図16と比較してステップS31およびステップS32がさらに実行される。ステップS31およびステップS32はステップS26とステップS27との間で実行される。ステップS31においては、センサ90は空間H1の圧力に関する測定値を測定し、当該測定値を制御部60に出力する。
次にステップS32にて、制御部60は空間H1の負圧の大きさが基準値以上であるか否かを判断する。具体的な判断方法の一例はステップS25と同様であるので、繰り返しの説明を避ける。なお、ステップS32で採用する基準値は、ステップS25で採用する基準値と異なっていてもよい。例えばステップS32で採用する基準値は、ステップS25で採用する基準値よりも大きくてもよい。
ステップS32において、空間H1の負圧の大きさが基準値以上であるときには、処理液を供給した状態での複数の支持ピン24による基板W1の保持に必要な負圧が空間H1に生じているので、ステップS27にて、制御部60は第1処理液供給部50に処理液を供給させる。次に制御部60はステップS28からステップS30を実行する。
一方、ステップS32において、負圧の大きさが基準値未満であるときには、処理液を供給した状態での支持ピン24による基板W1の保持に必要な負圧が空間H1に生じていないので、制御部60はステップS27からステップS29を実行せずに、ステップS30において、回転機構25を制御して基板W1の回転を終了する。
上記動作によれば、基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の空間H1に十分な負圧が生じた状態で、処理液を供給させることができる。したがって、処理液が供給されても、支持ピン24は基板W1を適切に保持できる。
なお、上述の例では、ステップS25またはステップS32において負圧が基準値未満であるときに、制御部60は基板W1に対する処理を終了している(ステップS30)。しかしながら、必ずしもこれに限らない。基板W1に対する処理を優先する場合、基板処理装置1は、複数の保持ピン22によって基板W1を保持した保持状態で、処理液を基板W1の上面に供給して処理を行ってもよい。
ところで、支持ピン24が保護部材242(図10)を含んでいる場合には、複数の支持ピン24が基板W1を保持している状態において、保護部材242は空間H1の負圧が大きいほど基板W1に押圧されて縮む。よって、基板W1の上面の鉛直位置は、保護部材242が設けられていない場合に比べて低くなる。つまり、センサ90によって測定される鉛直位置は、負圧の大きさの変化に応じてより大きく変化する。したがって、より高い精度で負圧の大きさを検出することができる。
<異常検知>
経年劣化により支持ピン24の先端が摩耗して支持ピン24の高さが低くなる場合がある。複数の支持ピン24の相互間において摩耗の程度がばらつくと、いくつかの支持ピン24が基板W1の下面に接触できなくなり得る。
複数の支持ピン24が基板W1を保持する状態においては、支持ピン24が基板W1に回転力を伝達する。よって、いくつかの支持ピン24が基板W1と離れることは望ましくなく、このピン異常を検出できることが望ましい。
さて、複数の支持ピン24が基板W1を保持している状態では、基板W1は負圧によって支持ピン24の先端に押圧されるので、支持ピン24の接触位置を支点として下に凸となるように撓む。この基板W1は、隣り合う支持ピン24の接触位置の間の円弧領域においても、下に凸に撓み得る。
ここでは、センサ90の測定領域が支持ピン24の接触位置を含むものとする。図18は、センサ90によって測定された鉛直位置の一例を概略的に示すグラフである。正常な状態では、鉛直位置は4つの支持ピン24の接触位置においてピークをとるので、鉛直位置の波形は、隣り合う支持ピン24の間の周間隔を1周期とした波状の形状を有する。
これに対して、1つの支持ピン24が基板W1の下面に接触していないピン異常が生じた場合には、当該支持ピン24の接触位置において基板W1が支持されないので、当該接触位置における鉛直位置はピークをとらない。図18の例では、1つの支持ピン24が基板W1に接触していない場合の鉛直位置の波形を破線で示している。
制御部60は、センサ90によって測定された鉛直位置に基づいて、基板処理装置1にピン異常が生じているか否かを判断する。具体的な一例として、制御部60は、基板W1の1回転中にセンサ90によって測定された複数の鉛直位置のうちの各ピーク値が、支持ピン24の接触位置に対応しているか否かを判断する。ここでは4つの支持ピン24が略等間隔で配置されているので、制御部60はピーク値に対応する4つの測定位置が略等間隔に位置してるか否かを判断する。当該4つの測定位置が略等間隔に位置していない場合には、制御部60はピン異常が生じていると判断する。
図15の例では、基板処理装置1には、報知部61が設けられている。報知部61はユーザに対して報知を行うことができる。報知部61は例えばディスプレイまたはスピーカなどの報知手段である。制御部60はピン異常が生じていると判断したときには、報知部61にピン異常を報知させつつ、処理を終了する。
なお、上述の例では、支持ピン24の基板W1に対する非接触を異常として検出したものの、必ずしもこれに限らない。例えば基板W1が適切な姿勢で基板保持部20に保持されない異常も生じ得る。具体的には、基板保持部20が基板W1を傾斜姿勢で保持する可能性もある。このような保持異常も検出できることが望ましい。
センサ90は基板W1の上面における各周方向位置の鉛直位置を測定するので、基板W1が傾斜して保持された状態を検出することができる。図19は、基板W1およびセンサ90の一例を概略的に示している。図19では、基板W1が傾斜しており、その厚み方向が回転軸Q1と交差している。この状態で基板W1が回転軸Q1の周りで回転すると、センサ90によって測定された複数の鉛直位置のうち最大値と最小値との間の差が大きくなる。図19の例では、センサ90が測定する鉛直位置が最も高くなるときの基板W1が実線で示され、最も小さくなるときの基板W1が二転鎖線で示されている。
そこで、制御部60は基板W1の1回転中にセンサ90によって測定された複数の鉛直位置の最大値と最小値との差が許容差以上であるか否かを判断する。当該差が許容差以上であるときには、制御部60は保持異常が生じていると判断してもよい。制御部60は保持異常が生じていると判断したときには、報知部61に保持異常を報知させつつ、処理を終了する。
以上のように、制御部60はセンサ90によって測定された鉛直位置に基づいて異常の有無を判断してもよい。
<センサの他の具体例>
図20は、基板処理装置1Dの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1Dはセンサ90の種類および位置を除いて、基板処理装置1Cと同様の構成を有している。基板処理装置1Dにおいては、センサ90は、マノメータなどの圧力センサである。このセンサ90は空間H1の圧力を測定する。
図20の例では、対向部材30の対向面30aには、空間H1側に開口する孔302が形成されている。図20の例では、孔302は対向部材30の対向面30aの中央部に形成されており、平面視において、例えば基板W1と略同心の円形状を有する。孔302は対向部材30を鉛直方向に貫通しつつ、固定部材31の内部にも延在している。センサ90は孔302内に設けられている。
センサ90は有線または無線で制御部60に接続される。センサ90が有線で制御部60に接続される場合、固定部材31には、センサ90からの配線を引き出すための配線用孔(不図示)が形成される。ただし、孔302は対向部材30の対向面30a以外において外気に開口していないことが望ましい。なぜなら、孔302が外気に繋がっていると、孔302を介して気体が空間H1に流入してしまい、空間H1の負圧の大きさが低減するからである。そこで、配線用孔と配線との間は気密に封止されるとよい。
孔302内の圧力は空間H1の圧力とみなすことができるので、センサ90は空間H1の圧力を測定することができる。センサ90は、測定した圧力(測定値)を制御部60に出力する。
基板処理装置1Dの動作の一例は基板処理装置1Cと同様である(例えば図16および図17)。これによっても、負圧の大きさが基準値に満たない状態で複数の支持ピン24に基板W1を保持させることを回避できる。またセンサ90は空間H1の圧力を直接に測定するので、より高い精度で圧力を測定することができる。
<処理液供給部>
図21は、基板処理装置1Eの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1Eは第2処理液供給部40の有無を除いて、基板処理装置1と同様の構成を有している。第2処理液供給部40は基板W1の下面に処理液を供給する。図21の例では、対向部材30および固定部材31を鉛直方向に貫通する処理液用流路303が形成されている。よって、処理液用流路303は対向部材30の対向面30aにおいて開口しており、その開口は吐出口として機能する。言い換えれば、対向部材30は、基板W1の下面に処理液を供給するノズルとして機能する。図21の例では、処理液用流路303(吐出口)は基板W1の下面の中央部と鉛直方向において対向している。
第2処理液供給部40は、複数の保持ピン22の各々が保持位置P1で停止した保持状態において、処理液を対向部材30の吐出口から基板W1の下面へと処理液を供給する。複数の保持ピン22が基板W1を保持するので、基板W1の下面に処理液が衝突して基板W1に鉛直上方の力が作用しても、適切に基板W1を保持することができる。逆に言えば、より確実に基板W1を保持した状態で、基板W1の下面に処理液を供給できる。第2処理液供給部40が供給する処理液としては、例えば純水等の洗浄液を採用することができる。
図21の例では、第2処理液供給部40は、供給管41と、バルブ42と、処理液供給源43とを含んでいる。供給管41の一端は固定部材31の下面において処理液用流路303の下端に接続されており、他端は処理液供給源43に接続される。処理液供給源43は処理液を供給管41の内部に供給する。バルブ42は供給管41の途中に設けられている。バルブ42は制御部60によって制御され、供給管41の内部の流路の開閉を切り替える。
バルブ42が開くことにより、処理液供給源43からの処理液は供給管41および処理液用流路303をこの順に流れて基板W1の下面に吐出される。基板W1の下面に着液した処理液は遠心力によって当該下面の全面に広がる。これにより、処理液に応じた処理を基板W1の下面に対して行うことができる。例えば処理液が純水等の洗浄液である場合には、基板W1の下面に対して洗浄処理が行われる。
<昇降機構>
処理液を供給する際の基板W1の回転速度の第1目標値は、その処理液の種類に応じて変わり得る。そして、基板W1の回転速度が高い場合には、空間H1の負圧が大きくなるので、基板W1に生じる吸引力は大きくなる。この吸引力が大きすぎると、基板W1に不要な応力が作用するので、好ましくない。一方で、回転速度が低い場合には、空間H1の負圧が小さくなるので、基板W1に生じる吸引力が小さくなる。この吸引力が小さすぎると、複数の支持ピン24は基板W1を適切に保持することができない。
そこで、以下では、基板W1の回転速度とは異なるパラメータで空間H1の負圧を調整できる技術を提供する。
図22は、基板処理装置1Fの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1Fは昇降機構32の有無を除いて、基板処理装置1と同様の構成を有している。昇降機構32は対向部材30を基板保持部20に対して相対的に昇降させる。図22の例では、昇降機構32は固定部材31の鉛直下方の端部に固定されており、固定部材31および対向部材30を一体に昇降させる。昇降機構32は例えばボールねじ機構またはエアシリンダなどを有しており、制御部60によって制御される。
昇降機構32が対向部材30を昇降させることにより、基板保持部20によって保持された基板W1の下面と、対向部材30の対向面30aとの間の間隔(つまり、空間H1の厚み)を調整することができる。よって、基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間に生じる負圧の大きさを調整することができる。
制御部60は、基板W1の回転速度が高いときには、基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の間隔が広くなるように昇降機構32を制御する。これにより、高速回転に起因した負圧の増大を抑制することができる。一方で、制御部60は、基板W1の回転速度が低いときには、基板W1の下面と対向部材30の対向面30aとの間の間隔が狭くなるように昇降機構32を制御する。これにより、低速回転に起因した負圧の低下を抑制することができる。
言い換えれば、昇降機構32は、基板W1の回転速度が第1値であるときに、基板W1の回転速度が第1値よりも高い第2値であるときの対向部材30の鉛直位置よりも高い位置に対向部材30を移動させる。
図23は、基板W1の回転速度と対向部材30の鉛直位置との関係の一例を示すグラフである。図23の例によれば、制御部60は、基板W1の回転速度が大きくなるにしたがって、対向部材30の鉛直位置を段階的に下降させている。つまり、制御部60は回転速度が高くなるほど、対向部材30の鉛直位置をより鉛直下方に設定している。
これにより、基板W1の回転速度によらず、空間H1の負圧の大きさを所定範囲内に維持することができる。つまり、回転速度が高いときに負圧が過大となることを抑制でき、回転速度が低いときに負圧が不足することを抑制できる。
なお、図23の例では、対向部材30の鉛直位置を基板W1の回転速度の増加に対して段階的に下降させているものの、直線的に下降させてもよい。また、上述の例では、昇降機構32は対向部材30を昇降させているものの、基板保持部20を昇降させてもよい。
<ストッパー>
複数の支持ピン24が基板W1を保持している状態においては、諸要因により、基板W1を保持できずに基板W1が基板保持部20から飛び出してしまう可能性がある。当該諸要因としては、例えば、空間H1の負圧の不足、乱流による基板W1への局所的な力の印加、あるいは、処理液の乱れによる基板W1への力の乱れなどが考えられる。そこで、基板保持部20には、基板W1用のストッパーが設けられてもよい。
図24は、基板保持部20の一部の構成の他の一例を概略的に示す図である。図24の例では、基板保持部20はストッパー27をさらに含んでいる。ストッパー27は基部21の上面に立設されている。このストッパー27は複数設けられ、例えば基板W1と略同心の仮想円上に沿って略等間隔に設けられる。具体的な一例として、4つのストッパー27が90度ごとに設けられる。
各ストッパー27はストッパー位置と待機位置との間で移動可能に設けられる。図24では、ストッパー27がストッパー位置で停止した状態での基板保持部20の一例が示されている。図25は、ストッパー27の構成の一例を概略的に示す断面図である。図25では、ストッパー27がストッパー位置で停止したときの基板W1も示されている。
ストッパー位置は、ストッパー27が基板W1の周縁部に対して鉛直方向および径方向で間隔を空けて対向する位置である。図25の例では、ストッパー27は、支柱271と、庇部272とを含んでいる。支柱271は鉛直方向に沿って延在しており、庇部272は支柱271から基板W1側に突出する。庇部272は、ストッパー27がストッパー位置で停止した状態において、基板W1の上面の周縁部に対して間隙を空けて鉛直方向で対向する。また支柱271は、ストッパー27がストッパー位置で停止した状態において、基板W1の周縁に対して間隙を空けて径方向で対向する。
複数のストッパー27がそれぞれのストッパー位置で停止することにより、基板W1が支持ピン24から外れたとしても、基板W1を複数のストッパー27で受け止めることができ、基板W1が基板保持部20から飛び出すことを抑制または回避できる。
待機位置は、ストッパー27の庇部272が基板W1と鉛直方向において対向しない位置である。複数のストッパー27がそれぞれの待機位置で待機することにより、不図示の基板搬送部が基板W1を基板保持部20から鉛直上方に持ち上げたり、あるいは、基板W1を鉛直下方に下降させて基板W1を基板保持部20に渡すことができる。
図24の例では、ストッパー27もピン支持体26の上面に設けられている。よって、ストッパー27は保持ピン22と一体で移動する。このストッパー27は回転軸Q2についての周方向において、保持ピン22と異なる位置に設けられている。
ストッパー27によるストッパー機能は、複数の支持ピン24が基板W1を保持する状態で発揮する必要がある。したがって、保持ピン22が開放位置P2で停止した状態において、ストッパー27がストッパー位置で停止するように、保持ピン22およびストッパー27の位置が決められる。図24の例では、保持ピン22が開放位置P2で停止した解除状態において、ストッパー27はストッパー位置で停止している。よって、ストッパー27は、複数の支持ピン24が基板W1を保持する状態でストッパー機能を発揮することができる。
図24の例では、保持ピン22はストッパー27に対して反時計回り側に位置する。よって、ピン駆動部23が回転軸Q2を中心として反時計回りにピン支持体26を回転させると、保持ピン22は基板W1の周縁に近づき、ストッパー27は基板W1の周縁から遠ざかる。
図26は、基板保持部20の一部の構成の一例を概略的に示す図である。図26の例では、保持ピン22およびストッパー27の両方が基板W1の周縁から離れている。具体的には、保持ピン22およびストッパー27の両方が基板W1と鉛直方向において対向しない。ピン駆動部23はこの状態でピン支持体26の回転を停止させる。この状態では、基板W1が鉛直方向において保持ピン22にもストッパー27にも対向していないので、外部の基板搬送部は基板保持部20から基板W1を鉛直上方に持ち上げることができる。逆に、基板搬送部は基板W1を基板保持部20よりも鉛直上方から下降させて、基板保持部20に渡すことができる。
図26の状態から、ピン駆動部23が回転軸Q2を中心として反時計回りにピン支持体26をさらに回転させると、保持ピン22は基板W1の周縁にさらに近づき、ストッパー27は基板W1の周縁からさらに遠ざかる。
図27は、基板保持部20の一部の構成の一例を概略的に示す図である。図27の例では、保持ピン22は、基板W1の周縁に接触する保持位置P1に位置しており、ストッパー27は基板W1の周縁から離れている。ピン駆動部23はこの状態でピン支持体26を停止させる。この状態では、保持ピン22が基板W1の周縁を保持することができる。
次に、このような基板保持部20を有する基板処理装置1についての動作の一例を、図8を参照して説明する。まずステップS1にて、基板W1が基板保持部20に渡されて保持ピン22によって基板W1が保持される。このステップS1において、初期的には、ピン駆動部23は図26の状態で保持ピン22およびストッパー27を停止させる。これにより、外部の基板搬送部が基板W1を基板保持部20に渡すことができる。基板W1が基板保持部20の支持ピン24の上に渡されると、制御部60はピン駆動部23を制御して、複数の保持ピン22に基板W1の周縁を保持させる。このとき、複数のストッパー27は基板W1の周縁に対して外側に位置している(図27)。
次に制御部60はステップS2からステップS8をこの順に実行する。ステップS4において、複数の保持ピン22の各々が開放位置P2に移動すると、複数のストッパー27はそれぞれのストッパー位置に移動する(図24)。これより、複数の支持ピン24が略定速回転中の基板W1を保持しているときに、ストッパー27のストッパー機能を有効にできる。したがって、基板W1が支持ピン24の上から外れたとしても、基板W1はストッパー27によって受け止められる。したがって、基板W1が基板保持部20の外側に飛び出すことを抑制または回避できる。
<ストッパーの形状>
図24、図26および図27の例では、ストッパー27は平面視において、保持ピン22と同様の長尺形状(例えば略流線形状、略紡錘形状または略楕円形状)を有している。ストッパー27は、ストッパー位置で停止した状態において、その長手方向が保持ピン22と同様に流線方向に沿うように、設けられる。これにより、複数の支持ピン24が基板W1を保持しているときに、乱流の発生を抑制することができる。
なお、上述の例では、保持ピン22およびストッパー27が一体で移動しているものの、これらが別々に移動可能に設けられてもよい。この場合、ストッパー27を駆動するストッパー駆動部がピン駆動部23とは別に設けられる。ストッパー駆動部は例えばモータ等の駆動機構を有し、制御部60によって制御される。
基板処理装置および基板処理方法は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての態様において例示であって限定的ではない。したがって、基板処理装置は、その開示の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。また上述の実施の形態は適宜に組み合わせることが可能である。