JP7277213B2 - 固体電解質組成物、それを用いた成形体、及び全固体二次電池 - Google Patents
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Description
このような状況下で有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体電池は正極、負極および電解質すべてが固体からなるため、有機電解液を用いた電池の課題である安全性、信頼性を大きく改善できる可能性があり、また安全装置の簡略化が図れることから高エネルギー密度化が可能となるため、電気自動車や大型蓄電池等への応用が期待されている。
本発明の固体電解質組成物は、周期表第1族に属する金属イオンの伝導性を有する無機固体電解質と、一般式(I)で表されるリン化合物とを含有することを特徴とする。
本発明で用いるリン化合物は、下記一般式(I)で表される。
本発明の固体電解質組成物は、周期表第1族に属する金属イオンの伝導性を有する無機固体電解質とリン化合物とを含む。リン化合物は無機固体電解質に対して良好な濡れ性を示すとともに、無機固体電解質を適度に溶解させる。これにより、固体電解質組成物を加圧成形した時に、リン化合物を介して固体電解質の拡散および溶解、再析出が促進され、リン化合物を含まない無機固体電解質の成形体と比較して空隙の少ないより緻密な成形体が形成できると考えられる。そして、本発明の固体電解質組成物によれば、より緻密な成形体を形成することができることから、全固体二次電池に用いることで、長期にわたって連続的なイオンおよび電子のパスを形成することができ、これにより、優れた電池特性の実現が期待できるものである。また、本発明の固体電解質組成物を、全固体二次電池の固体電解質層に用いた場合には、緻密な成形体を形成できることから、デンドライトの生成や成長の抑制も期待できる。
無機固体電解質は、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオンおよびアニオンに解離または遊離していない。無機固体電解質は周期律表第1族に属する金属イオンの伝導性を有するものであれば特に限定されず電子伝導性をほとんど有さないものが一般的である。
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、かつ、周期律表第1族に属する金属イオンの伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。前記硫化物系無機固体電解質は周期律表第1族に属する金属硫化物と下記一般式(II)で表される硫化物の少なくとも1種を反応させるにより製造することができ、一般式(II)で表される硫化物を2種以上併用しても良い。
Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-Al2S3、Li2S-GeS2、Li2S-Ga2S3、Li2S-GeS2-Ga2S3、Li2S-GeS2-P2S5、Li2S-GeS2-Sb2S5、Li2S-GeS2-Al2S3、Li2S-SiS2、Li2S-Al2S3、Li2S-SiS2-Al2S3、Li2S-SiS2-P2S5、Li10GeP2S12。
本発明の固体電解質組成物の作製方法は、特に限定されず、例えば、前記無機固体電解質の粉末に対して、特定の割合のリン化合物を添加し遊星ミル等で混合する方法、固体電解質を含むスラリーにリン化合物を添加する方法が好適に挙げられる。また固体電解質組成物の成形方法は、特に限定されず、例えば、前記固体電解質組成物の粉末を加圧形成する方法や固体電解質組成物の粉末を溶剤に加えてスラリーにした後、この正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製のラス板等に塗布して、乾燥、加圧成型する方法などが好適に挙げることができる。上記の方法で得られた固体電解質組成物の成形体は空隙が少なく無機固体電解質の真密度に近い値をとることが好ましい。固体電解質の真密度と成形体の密度から計算される、固体電解質組成物の成形体中における無機固体電解質の相対密度(相対密度=(実際の成形体中における無機固体電解質の密度/無機固体電解質の真密度)×100)は特に限定されないが、91%以上が好ましく、92.5%以上であることが更に好ましい。同じ加圧および温度条件であれば、成形体の相対密度が高くなるほど、固体電解質組成物の成形性が高いと言うことができる。
本発明の全固体二次電池は、正極、負極及び正極と負極間に位置する固体電解質層からなり、固体電解質層、正極、及び負極のいずれかに本発明の固体電解質組成物を含まれていれば正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。本発明の全固体二次電池においては、固体電解質層、正極、及び負極のいずれかに本発明の固体電解質組成物が含まれていればよく、例えば、固体電解質層が、本発明の固体電解質組成物を含む場合、正極や負極として、本発明の固体電解質組成物以外の固体電解質を含有するものを用いてもよい。
例えば、リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、及びニッケルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独で用いるか又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiCo1-xMxO2(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、及びCuから選ばれる1種又は2種以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiMn2O4、LiNiO2、LiCo1-xNixO2(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、Li2MnO3とLiMO2(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体、及びLiNi1/2Mn3/2O4から選ばれる1種以上が好適に挙げられ、2種以上がより好適である。また、LiCoO2とLiMn2O4、LiCoO2とLiNiO2、LiMn2O4とLiNiO2のように併用してもよい。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W及びZr等から選ばれる1種以上の元素での置換が可能であり、またはこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することもできる。これらの中では、LiFePO4またはLiMnPO4が好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力において、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することが更に好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm以下、特に0.335~0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが特に好ましい。
また、高結晶性の炭素材料(コア材)はコア材よりも低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、特性が一段と良好となるので好ましい。被覆の炭素材料の結晶性は、TEMにより確認することができる。
負極合剤層の形成方法は、特に限定されず、例えば、前記負極合剤の粉末を加圧形成する方法や負極合剤の粉末を溶剤に加えてスラリーにした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型する方法などが好適に挙げることができる。
〔硫化物系無機固体電解質の合成〕
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、硫化リチウム(Li2S)及び五硫化二リン(P2S5)をLi2S:P2S5=75:25のモル比になるように秤量し、メノウ乳鉢で混合し、原料組成物を得た。
次に、80mLのジルコニアポットにジルコニアボール(直径5mm、160g)と得られた原料組成物2gを投入し、アルゴン雰囲気下で容器を密閉した。このポットを遊星型ボールミル機にセットし、回転数510rpmで16時間メカニカルミリングを行い、黄色粉体の硫化物固体電解質(LPSガラス)を得た。
80mLのジルコニアポットにジルコニアボール(直径4mm、20g)を投入し、上記で合成した硫化物固体電解質(LPSガラス)とリン化合物としてリン酸トリエチル(TEP)をLPSガラス:TEP=97.5:2.5の体積比になるように投入した。その後、このポットを遊星型ボールミル機にセットし、回転数200rpmで15分間撹拌を続け、実施例1の硫化物固体電解質組成物を調製した。
リン化合物として、下記表1~3に記載の化合物を使用し、その配合量を、表1に示す量に変えた以外は実施例1の硫化物固体電解質組成物と同様にして、下記表1~3に記載の硫化物固体電解質組成物を調製した。
なお、表2の実施例6,7においては、リン化合物として、2種の化合物を混合して用いた。また、表2の実施例8,9においては、リン化合物に対し、1MのLiTFSIをさらに配合した。
上記硫化物固体電解質組成物をそれぞれ100mg秤量し、これらの試料を、室温で10分プレス(360MPa)することで直径10mm、厚さ約0.7mmのペレットを作製した。
<イオン電導度測定>
上記ペレットの上下面を金でスパッタリングし、インピーダンス測定を行うことで固体電解質層の伝導度を算出した。イオン伝導度は固体電解質層の厚さと、Cole-coleプロットの実軸上の抵抗値から算出した。結果を表1~表3に示す。
<相対密度の評価>
上記ペレットの体積およびペレット中に含まれるLPSガラスの質量から計算されるLPSガラスのペレット密度とLPSガラスの密度(真密度)から計算される密度を用いて相対密度は下記の式にて算出した。
相対密度(%)= (LPSガラスのペレット密度/LPSガラスの密度(真密度))×100
結果を表1~3に示す。
上記結果より、本発明の硫化物固体電解質組成物を用いることでより、優れたイオン導電性を実現しながら、緻密な成形体を形成することができ、更にその成形体を用いることで長期にわたって連続的なイオンおよび電子のパスを形成することができるため、優れた電池特性を有することが期待される。
Claims (8)
- 周期表第1族に属する金属イオンの伝導性を有する無機固体電解質と、下記一般式(I)で表されるリン化合物とを含有し、
前記リン化合物が固体電解質組成物に対して1体積%以上、10体積%未満の割合で含有されていることを特徴とする固体電解質組成物。
- 前記リン化合物がリン酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載の固体電解質組成物。
- 固体電解質組成物が、前記リン化合物を二種以上含有することを特徴とする請求項1または2に記載の固体電解質組成物。
- 固体電解質組成物が、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)2、及びLiN(SO2C2F5)2から選ばれる少なくとも一種のリチウム塩を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の固体電解質組成物。
- 前記無機固体電解質が、硫化物固体電解質であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の固体電解質組成物。
- 固体電解質組成物を加圧することにより成形体を製造する方法であって、前記成形体が請求項1から5のいずれかに記載の固体電解質組成物からなる成形体の製造方法。
- 前記無機固体電解質の真密度に対する、前記成形体中における前記無機固体電解質の密度である、相対密度が91%以上であることを特徴とする請求項6に記載の成形体の製造方法。
- 正極、負極および固体電解質層を備えた全固体二次電池であって、前記正極、前記負極および前記固体電解質層の少なくとも1つが請求項1から5のいずれかに記載の固体電解質組成物を含むことを特徴とする全固体二次電池。
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