本発明のアクリルゴムの製造方法は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化し重合触媒存在下に乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、撹拌機を有する装置内で撹拌数100rpm以上、周速0.5m/s以上で撹拌している凝固剤濃度が0.5重量%以上の凝固液に得られた乳化重合液を添加して含水クラムを生成する凝固工程と、生成した含水クラムを洗浄する洗浄工程と、洗浄した含水クラムを乾燥する乾燥工程とを含むことを特徴とする。
<単量体成分>
使用される単量体成分は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とすることを特徴とする。単量体成分中の(メタ)アクリル酸エステルの割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、格別な限定はないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体成分の好適な例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル、反応性基含有単量体、及び必要に応じて共重合可能なその他の単量体からなるものが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、格別な限定はないが、通常炭素数が1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、好ましくは炭素数1~8のアルキルを有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、より好ましくは炭素数2~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、格別な限定はないが、通常2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、好ましくは2~8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、より好ましくは炭素数2~6のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシエステルである。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどが好ましく、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチルがより好ましい。
これら(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上が組み合わせて用いられ、アクリルゴム中の割合は、通常50重量%以上、好ましくは70~99.9重量%、より好ましくは80~99.5重量%、最も好ましくは87~99重量%である。単量体成分中の(メタ)アクリル酸エステル量が、過度に少ないと得られるアクリルゴムの耐候性、耐熱性、及び耐油性が低下するおそれがあり好ましくない。
反応性基含有単量体としては、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、例えば、カルボキシル基、エポキシ基及びハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性基を有する単量体が好ましく、特にカルボキシル基又はエポキシ基を有する単量体が好ましい。
カルボキシル基を有する単量体としては、格別な限定はないが、エチレン性不飽和カルボン酸を好適に用いることができる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、エチレン性不飽和モノカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルなどが挙げられ、これらの中でも特にエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルがアクリルゴムをゴム架橋物とした場合の耐圧縮永久歪み特性をより高めることができ好ましい。
エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、格別な限定はないが、炭素数3~12のエチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などを挙げることができる。
エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、格別な限定はないが、炭素数4~12のエチレン性不飽和ジカルボン酸が好ましく、例えば、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などが挙げることができる。なお、エチレン性不飽和ジカルボン酸は、無水物として存在しているものも含まれる。エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、格別な限定はないが、通常、炭素数4~12のエチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~12のアルキルモノエステル、好ましくは炭素数4~6のエチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数2~8のアルキルモノエステル、より好ましくは炭素数4のブテンジオン酸の炭素数2~6のアルキルモノエステルである。
エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn-ブチル、フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシルなどのブテンジオン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn-ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;などが挙げられ、これらの中でもはフマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノn-ブチルが好ましく、フマル酸モノn-ブチルが特に好ましい。
エポキシ基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有ビニルエーテル;などが挙げられる。
ハロゲン基を有する単量体としては、例えば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、ハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルとしては、例えば、クロロ酢酸ビニル、2-クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酢酸アリルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2-ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸2,3-ジクロロプロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和エーテルとしては、例えば、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、3-クロロプロピルビニルエーテル、2-クロロエチルアリルエーテル、3-クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和ケトンとしては、例えば、2-クロロエチルビニルケトン、3-クロロプロピルビニルケトン、2-クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物としては、例えば、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、o-クロロメチルスチレン、p-クロロメチル-α-メチルスチレンなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和アミドとしては、例えば、N-クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。ハロアセチル基含有不飽和単量体としては、例えば、3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p-ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。
本発明においては、また、反応性基含有単量体としてラジカル反応性基含有単量体を用いることが出来、具体的にはジエン単量体が挙げられる。ジエン単量体としては、例えば、共役ジエン、非共役ジエンなどが挙げられる。共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、ピペリレンなどを挙げることができる。非共役ジエンとしては、例えば、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸2-ジシクロペンタジエニルエチルなどを挙げることができる。
これらの反応性基含有単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上が組み合わせて用いられ、単量体成分中の割合は、通常0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~3重量%である。
必要に応じて使用されるその他の単量体としては、上記単量体と共重合可能であれば格別な限定はなく、例えば、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、アクリルアミド系単量体、その他のオレフィン系単量体などが挙げられる。芳香族ビニルとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。エチレン性不飽和ニトリルとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。アクリルアミド系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。その他のオレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
これらのその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられ、単量体成分中の割合は、通常0~30重量%、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0~15重量%、最も好ましくは0~10重量%の範囲である。
本発明に使用される単量体成分が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル、反応性基含有単量体、及び必要に応じてその他の単量体からなる場合の割合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルが、通常50重量%以上、好ましくは70~99.9重量%、より好ましくは80~99.5重量%、特に好ましくは87~99重量%の範囲であり、反応性基含有単量体が、通常0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%、特に好ましくは1~3重量%の範囲であり、その他の単量体が、通常0~30重量%、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0~15重量%、特に好ましくは0~10重量%の範囲である。単量体成分がこれらの範囲にあるときに耐熱性、耐圧縮永久歪み特性、及び耐水性などの架橋特性を高度にバランスさせたアクリルゴムを製造することができ好適である。
<乳化重合工程>
本発明のアクリルゴムの製造方法における乳化重合工程は、上記単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化し重合触媒存在下に乳化重合し乳化重合液を得ることを特徴とする。使用される乳化剤としては、格別な限定はなく常法に従えばよいが、例えば、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤などを挙げることができる。これらの中でも、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤が好ましく、アニオン性乳化剤が特に好ましい。
アニオン性乳化剤としては、格別な限定はなく常法に従えばよいが、通常、脂肪酸系乳化剤、硫酸系乳化剤、リン酸系乳化剤などが用いられ、好ましくは硫酸系乳化剤、リン酸系乳化剤、特に好ましくはリン酸系乳化剤であるときに生産性と得られるアクリルゴムの耐水性が高度にバランスされ好適である。
脂肪酸系乳化剤としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩などが挙げられる。硫酸系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩などを挙げることが出来る。リン酸系乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩などのリン酸エステル塩などが挙げられる。肪酸系乳化剤、硫酸系乳化剤及びリン酸系乳化剤以外の乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルスルホコハク酸塩などを挙げることができる。
カチオン性乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライドなどを挙げることができる。
ノニオン性乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンドデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル;ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルなどを挙げることができ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルがより好ましい。
これら乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.01~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは1~3重量部の範囲である。
単量体成分と水と乳化剤との混合方法としては、常法に従えばよく、単量体と乳化剤と水とをホモジナイザーやディスクタービンなどの撹拌機などを用いて撹拌する方法などが挙げられる。水の使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常1~1,000重量部、好ましくは5~500重量部、より好ましくは10~300重量部、特に好ましくは15~150重量部、最も好ましくは20~80重量部の範囲である。
使用される重合触媒としては、乳化重合で通常使われるものであれば格別な限定はないが、例えば、ラジカル発生剤と還元剤とからなるレドックス触媒を用いることができる。
ラジカル発生剤としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物などが挙げられる好ましくは過酸化物である。過酸化物としては、無機系過酸化物や有機系過酸化物が用いられる。無機系過酸化物としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウムなどが挙げられ、これらの中でも過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウムが好ましく、過硫酸カリウムが特に好ましい。
有機過酸化物としては、乳化重合で使用される公知のものであれば格別な限定は無く、例えば、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1-ジ-(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)吉草酸n-ブチル、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラエチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジイソブチリルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5,-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブイチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2.5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンなどが挙げられ、これらの中でもジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどが好ましい。
アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソプチロニトリル、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス(プロパン-2-カルボアミジン)、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロパンアミド]、2,2'-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}、2,2'-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)及び2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロパンアミド}などが挙げられる。
これらのラジカル発生剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.0001~5重量部、好ましくは0.0005~1重量部、より好ましくは0.001~0.5重量部の範囲である。
還元剤としては、乳化重合のレドックス触媒で使用されるものであれば格別な限定なく用いることができるが、本発明においては、特に少なくとも2種の還元剤を用いることが好ましい。少なくとも2種の還元剤としては、例えば、還元状態にある金属イオン化合物とそれ以外の還元剤の組み合わせが好適である。
還元状態にある金属イオン化合物としては、特に限定されないが、例えば、硫酸第一鉄、ヘキサメチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、ナフテン酸第一銅などが挙げられ、これらの中でも硫酸第一鉄が好ましい。これらの還元状態にある金属イオン化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.000001~0.01重量部、好ましくは0.00001~0.001重量部、より好ましくは0.00005~0.0005重量部の範囲である。
還元状態にある金属イオン化合物以外の還元剤としては、特に限定はないが、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸又はその塩;エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウムなどのエリソルビン酸又はその塩;ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムなどのスルフィン酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルデヒド亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムの亜硫酸塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウムなどのピロ亜硫酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸塩;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム、亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウムの亜燐酸(塩);ピロ亜燐酸、ピロ亜燐酸ナトリウム、ピロ亜燐酸カリウム、ピロ亜燐酸水素ナトリウム、ピロ亜燐酸水素カリウムなどのピロ亜燐酸又はその塩;ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが挙げられる。これらの中でも、アルコルビン酸又はその塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが好ましく、特にアスコルビン酸又はその塩が好ましい。
これらの還元状態にある金属イオン化合物以外の還元剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対し、通常0.001~1重量部、好ましくは0.005~0.5重量部、より好ましくは0.01~0.3重量部の範囲である。
還元状態にある金属イオン化合物とそれ以外の還元剤との好ましい組み合わせは、硫酸第一鉄とアスコルビン酸塩及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの組み合わせで、より好ましくは硫酸第一鉄とアスコルビン酸塩及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの組み合わせ、最も好ましくは硫酸第一鉄とアルコルビン酸塩の組み合わせである。このときの、硫酸第一鉄の使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.000001~0.01重量部、好ましくは0.00001~0.001重量部、より好ましくは0.00005~0.0005重量部の範囲で、アスコルビン酸塩及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの使用量は、単量体成分100重量部に対し、通常0.001~1重量部、好ましくは0.005~0.5重量部、より好ましくは0.01~0.3重量部の範囲である。
乳化重合反応における水の使用量は、前記単量体成分エマルジョン化時に使用したものだけでもよいが、重合に用いる単量体成分100重量部に対して、通常10~1,000重量部、好ましくは50~500重量部、より好ましくは80~400重量部、最も好ましくは100~300重量部の範囲になるように調整される。
乳化重合反応の方式は、常法に従えばよく、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合温度及び重合時間は、特に限定されず、使用する重合開始剤の種類などから適宜選択できる。重合温度は、通常0~100℃、好ましくは5~80℃、より好ましくは10~50℃の範囲であり、重合時間は通常0.5~100時間、好ましくは1~10時間である。重合転化率は、格別限定はないが、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上である。重合停止に当たっては、重合停止剤を使用してもよい。
<凝固工程>
本発明のアクリルゴムの製造方法における凝固工程は、上記得られた乳化重合液を撹拌機を有する装置内で撹拌数100rpm以上、周速0.5m/s以上で撹拌されている凝固剤濃度が0.5重量%以上の凝固液に添加して含水クラムを生成することを特徴とする。
凝固工程で使用される乳化重合液の固形分濃度は、格別な限定はないが、通常5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは20~40重量%の範囲に調整される。
凝固剤としては、特に限定されないが、通常は金属塩が用いられる。金属塩としては、例えば、アルカリ金属、周期表第2族金属塩、その他の金属塩などが挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩、周期表第2族金属塩であり、特に乳化剤として硫酸系乳化剤を用いた場合はアルカリ金属塩が好ましく、また、乳化剤としてリン酸系乳化剤を用いた場合は周期表第2族金属塩が好ましい。
アルカリ金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウムなどが挙げられ、これらの中でも塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムである。
周期表第2族金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ベリリウム、硝酸ベリリウム、硫酸ベリリウム、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、塩化ラジウム、硝酸ラジウム、硫酸ラジウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられ、これらの中でも塩化カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどが好ましく、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムが特に好ましく、硫酸マグネシウムが最も好ましい。
その他の金属塩としては、例えば、塩化亜鉛、塩化チタン、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化スズ、硝酸亜鉛、硝酸チタン、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硝酸スズ、硫酸亜鉛、硫酸チタン、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸スズなどが挙げられる。
これら凝固剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対し、通常0.01~100重量部、好ましくは0.1~50重量部、より好ましくは1~30重量部の範囲である。凝固剤がこの範囲にあるときに、アクリルゴムの凝固を充分なものとしながら、アクリルゴムを架橋した場合の耐圧縮永久歪み特性や耐水性を高度に向上させることができるので好適である。
凝固液の凝固剤濃度は、0.5重量%以上、好ましくは0.5~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは1.5~10重量%の範囲であるときに生成する含水クラムの粒径を特定の領域に且つ均一に集束でき好適である。
凝固液の温度は、格別限定はないが、通常40℃以上、好ましくは40~90℃、より好ましくは50~80℃の範囲であるときに均一な含水クラムが生成され好適である。
撹拌している凝固液の撹拌数(回転数)は、すなわち、撹拌装置の撹拌翼の回転数は、激しく撹拌されている方が生成する含水クラム粒径を小さく且つ均一にでき好適で、100rpm以上、好ましくは200~1,000rpm、より好ましくは300~900rpm、特に好ましくは400~800rpmの範囲である。凝固液の撹拌数(回転数)が過度に低いと、大きいクラム粒径のものと小さいクラム粒径の物が出来てしまい、過度に高いと凝固反応の制御が困難になりいずれも好ましくない。
撹拌されている凝固液の周速は、すなわち、撹拌装置の撹拌翼の外周の速度で、ある程度激しく撹拌されている方が生成する含水クラム粒径を小さく且つ均一にでき好適で、0.5以上、好ましくは1m/s以上、より好ましくは1.5m/s以上、特に好ましくは2m/s以上、最も好ましくは2.5m/s以上であるときにクラム形状及びクラム径が洗浄時・脱水時の乳化剤及び凝固剤の除去に容易となり好適である。撹拌している凝固液の周速の上限値は、格別限定はないが、通常50m/s、好ましくは30m/s以下、より好ましくは25m/s以下、特に好ましくは20m/s以下であるときに、凝固反応の制御が容易になり好適である。
凝固反応の上記条件(接触方法、乳化重合液の固形分濃度、凝固液の濃度、温度、撹拌数及び周速など)を特定にすることで生成する含水クラムの形状及びクラム径が均一で且つ特定領域に集束化され、洗浄及び脱水時の乳化剤や凝固剤の除去が格段に容易になり好適である。
<洗浄工程>
本発明のアクリルゴムの製造方法における洗浄工程は、上記生成した含水クラムを洗浄する工程である。
洗浄方法としては、格別限定されるものでなく常法に従えばよく、例えば、生成した含水クラムを多量の水と混合して行うことが好適である。
使用する水の量としては、特に限定されないが、単量体成分100重量部に対して、水洗1回当たりの量が、通常50重量部以上、好ましくは50~15,000重量部、好ましくは100~10,000重量部、より好ましくは500~5,000重量部の範囲であるときに、アクリルゴム中の灰分量を効果的に低減することができ好適である。
使用する水の温度は、格別限定はないが、温水を使うのが好ましく、通常40℃以上、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~90℃、最も好ましくは60~80℃のときに洗浄効率を格段に上げることができ好適である。洗浄水の温度が過度に低いと、乳化剤や凝固剤が含水クラムから遊離せず洗浄効率が極端に落ち好ましくない。
洗浄時間としては、格別な限定はないが、通常1~120分、好ましくは2~60、より好ましくは3~30分の範囲である。
水洗回数としては、格別な限定はなく、通常は1~10回、好ましくは1~5回、より好ましくは2~3回である。なお、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を低減するという観点からは、水洗回数が多い方が望ましいが、前記含水クラムの形状及び含水クラム径を特定にすること及び/又は洗浄温度を前記範囲にすることで洗浄回数を格段に低減できる。
<脱水工程>
本発明のアクリルゴムの製造方法において、上記洗浄したクラムを乾燥工程にかける前に含水量1~50重量%まで脱水する脱水工程を更に備えることが乳化剤や凝固剤の除去を格段に向上でき好適である。
含水クラムの脱水は、格別な限定はなく常法に従えばよく、例えば、遠心分離機、スクイザー、スクリュー型押出機などの脱水機を用いて含水クラムから水分を排出させることができる。これらの脱水機の中でも、本発明のアクリルゴムは粘着性が強く遠心分離機などでは含水量45~55重量%程度までしか脱水できないので、強制的に含水クラムから水分を絞り出すスクイザーやスクリュー型押出機が好ましく、スクリュー型押出機がより好ましい。
脱水後の含水クラムの含水量は、通常1~50重量%、好ましくは2~40重量%、より好ましくは3~35重量%、最も好ましくは5~30重量%であるときに、乳化剤や凝固剤の除去が格段に向上し且つ乾燥工程での乾燥か効率化し好適である。
<乾燥工程>
本発明のアクリルゴムの製造方法における乾燥工程は、上記洗浄後、好ましくは洗浄後に脱水した含水クラムを乾燥してアクリルゴムを得る工程である。
含水クラムの乾燥方法は、常法に従えばよく、例えば、熱風乾燥機、減圧乾燥機、エキスパンダー乾燥機、ニーダー型乾燥機、スクリュー型押出機などの乾燥機を用いて乾燥することができる。
含水クラムの乾燥温度は、格別限定されるものではないが、通常80~250℃、好ましくは100~200℃、より好ましくは120~180℃の範囲である。乾燥後のアクリルゴムの含水量は、通常1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.6重量%以下である。
<アクリルゴム>
かくして得られるアクリルゴムは、高度に耐水性に優れるものである。本発明で製造されるアクリルゴムの単量体組成は、アクリル酸エステルを主成分とする以外は格別限定されないが、(メタ)アクリル酸エステルの割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
本発明で製造されるアクリルゴムの更に好ましい単量体組成は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル、反応性基含有単量体、及び必要に応じてその他の単量体からなり、それぞれの割合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルが、通常50重量%以上、好ましくは70~99.9重量%、より好ましくは80~99.5重量%、特に好ましくは87~99重量%の範囲であり、反応性基含有単量体が、通常0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%、特に好ましくは1~3重量%の範囲であり、その他の単量体が、通常0~30重量%、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0~15重量%、特に好ましくは0~10重量%の範囲である。アクリルゴム中のそれぞれの単量体をこの範囲にすることによりアクリルゴムの架橋物としたときに耐水性や耐圧縮永久歪み特性を高度に改善することができ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの反応性基含有量は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、反応性基自体の重量割合で、通常0.001~5重量%、好ましくは0.01~3重量%、より好ましくは0.05~1重量%、特に好ましくは0.1~0.5重量%の範囲あるときに加工性、強度特性、耐圧縮永久歪み特性、耐油性、耐寒性、及び耐水性などの特性が高度にバランスされ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの灰分量は、限定されないが、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下、特に好ましくは0.25重量%以下、最も好ましくは0.2重量%以下であるときに、保存安定性や耐水性が高度に優れ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの灰分量の下限値は、格別限定されるものではないが、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、特に好ましくは0.005重量%以上、最も好ましくは0.01重量以上であるときに、金属付着性が抑制され作業性に優れ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの含水量は、格別限定されるものではないが、通常1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.6重量%以下であるときに加硫特性が最適化され耐熱性や耐水性などの特性が高度となり好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、格別限定されるものではないが、通常10~150、好ましくは20~100、より好ましくは25~70の範囲であるときに加工性や強度特性が高度にバランスされ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムは、耐水性が高度に優れるために、例えば、O-リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、バアリングシース、メカニカルシール、ウエルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧縮機器用シールなどのシール材;シリンダブロックとシリンダヘッドとの連結部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダヘッドあるいはトランスミッションケースとの連結部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板及び負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着された燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;緩衝材、防振材;電線被覆材;工業用ベルト類;チューブ・ホース類;シート類;などとして好適に用いられる。
本発明で製造されるアクリルゴムは、また、自動車用途に用いられる押し出し成形型品及び型架橋製品として、例えば、燃料ホース、フィラーネックホース、ベントホース、ペーパーホース、オイルホースなどの燃料タンク周りの燃料油系ホース、ターボエアーホース、ミッションコントロールホースなどのエアー系ホース、ラジエターホース、ヒーターホース、ブレーキホース、エアコンホースなどの各種ホース類に好適に用いられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」、「%」及び「比」は、特に断りのない限り、重量基準である。各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
[単量体組成]
アクリルゴムにおける単量体組成に関して、アクリルゴム中の各単量体単位の単量体構成はH-NMRで確認し、アクリルゴム中に反応性基の活性が残存していること及びその各反応性基含有量は下記試験法で確認した。また、各単量体単位のアクリルゴム中の含有割合は、各単量体の重合反応に用いた使用量及び重合転化率から算出した。具体的には、重合反応は乳化重合反応でその重合転化率は、未反応の単量体がいずれも確認できない略100%であったことから、各単量体単位の含有割合を各単量体の使用量と同一とした。
[反応性基含有量]
アクリルゴムの反応性基の含有量は、下記方法により測定した。
(1)カルボキシル基量は、アクリルゴムをアセトンに溶解し水酸化カリウム溶液で電位差滴定を行うことにより算出した。
(2)エポキシ基量は、アクリルゴムをメチルエチルケトンに溶解し、それに規定量の塩酸を加えてエポキシ基と反応させ、残留した塩酸量を水酸化カリウムで滴定することにより算出した。
(3)塩素量は、アクリルゴムを燃焼フラスコ中で完全燃焼させ、発生する塩素を水に吸収させ硝酸銀で滴定することにより算出した。
[灰分量]
アクリルゴム中に含まれる灰分量(%)は、JIS K6228 A法に準じて測定した。
[含水量]
アクリルゴムの含水量(%)は、JIS K6238-1:オーブンA(揮発分測定)法に準じて測定した。
[ムーニー粘度(ML1+4,100℃)]
ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、JIS K6300の未架橋ゴム物理試験法に従って測定した。
[耐水性評価]
アクリルゴムの耐水性は、JIS K6258に準拠してアクリルゴムのゴム架橋物を温度85℃蒸留水中に100時間浸漬させて浸漬試験を行い、浸漬前後の体積変化率を下記式に従って算出し、比較例1を100とする指数で評価した(指数が小さいほど耐水性に優れる)。
浸漬前後の体積変化率(%)=((浸漬後の試験片体積-浸漬前の試験片体積)/浸漬前の試験片体積)×100
[実施例1]
ホモミキサーを備えた混合容器に、純水46部、アクリル酸エチル42.2部、アクリル酸n-ブチル35部、アクリル酸メトキシエチル20部、アクリロニトリル1.5部、クロロ酢酸ビニル1.3部、及び乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム塩0.709部とポリオキシエチレンドデシルエーテル(分子量1500)1.82部を仕込み撹拌して、単量体エマルジョンを得た。
次いで、温度計、撹拌装置を備えた重合反応槽に、純水170部及び前記で得られた単量体エマルジョン3部を投入し、窒素気流下で12℃まで冷却した。重合反応槽中に、単量体エマルジョンの残部、硫酸第一鉄0.00033部、アスコルビン酸ナトリウム0.264部、及び過硫酸カリウム0.22部を3時間かけて連続的に滴下した。その後、重合反応槽内の温度を23℃に保った状態にて反応を継続し、重合転化率が略100%に達したことを確認し、重合停止剤としてのハイドロキノンを添加して重合反応を停止し、乳化重合液を得た。
温度計と撹拌装置を備えた凝固槽で、80℃に加温した激しく撹拌(600回転:周速3.1m/s)されている2%硫酸ナトリウム水溶液(凝固液)中に、上記のように得られた乳化重合液を80℃に加温して連続的に添加して重合体を凝固させ濾別して含水クラムを得た。
凝固槽内に194部の温水(70℃)を添加して15分間撹拌した後に、水分を排出させ、再度194部の温水(70℃)を添加して15分間撹拌して含水クラムの洗浄を行った(合計洗浄回数は2回)。洗浄後の含水クラムを160℃の熱風乾燥機で乾燥させて含水量0.4重量%のアクリルゴム(A)を得た。得られたアクリルゴム(A)の反応性基含有量、灰分量、含水量及びムーニー粘度(ML1+4,100℃)を測定し、その結果を表2に示した。
次いで、アクリルゴム(A)100部と表1に記載の「配合1」の配合剤Aをバンバリーミキサーに投入し50℃で5分間混合した。そして、得られた混合物を50℃のロールに移して、「配合1」の配合剤Bを配合してゴム混合物を得た。
得られたゴム混合物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら180℃で10分間プレスすることにより一次架橋し、次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに180℃、2時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、シート状のゴム架橋物を得た。そして、得られたシート状のゴム架橋物から3cm×2cm×0.2cmの試験片を切り取って耐水性試験を行い、その結果を表2に示した。
[実施例2]
乳化剤をトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩1.8部に変更し、凝固剤を硫酸マグネシウムに変更する以外は実施例1と同様に行い、アクリルゴム(B)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例3]
単量体成分を、アクリル酸エチル28部、アクリル酸n-ブチル38部、アクリル酸メトキシエチル27部、アクリロニトリル5部、アリルグリシジルエーテル2部に変更し、乳化剤をノニルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩に変更する以外は実施例2と同様に行い、アクリルゴム(C)を得て各特性(配合剤を「配合2」に替えて)を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例4]
単量体成分をアクリル酸エチル48.25部、アクリル酸n-ブチル50部、フマル酸モノn-ブチル1.75部に変更し、乳化剤をオクチルオキシジオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩に変更する以外は実施例2と同様に行い、アクリルゴム(D)を得て各特性(配合剤を「配合3」に替えて)を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例5]
実施例1と同様にして含水クラムの洗浄まで行い、次いで洗浄した含水クラムを、スクリュー型押出機に供給し、脱水・乾燥してアクリルゴム(E)を得た。
なお、本実施例5で用いたスクリュー型押出機は、1つの供給バレル、3つの脱水バレル(第1~第3の脱水バレル)、5つの乾燥バレル(第1~第5の乾燥バレル)で構成されている。第1の脱水バレルは排水を行い、第2及び第3の脱水バレルは排蒸気を行うようになっている。スクリュー型押出機の操業条件は、以下のとおりとした。
含水量:
・第1の脱水バレルでの排水後の含水クラムの含水量:30%
・第3の脱水バレルでの排蒸気後の含水クラムの含水量:10%
ゴム温度:
・第1の供給バレルに供給する含水クラムの温度:65℃
・スクリュー型押出機から排出されるゴムの温度:140℃
各バレルの設定温度:
・第1の脱水バレル:100℃
・第2の脱水バレル:120℃
・第3の脱水バレル:120℃
・第1の乾燥バレル:120℃
・第2の乾燥バレル:130℃
・第3の乾燥バレル:140℃
・第4の乾燥バレル:160℃
・第5の乾燥バレル:180℃
運転条件:
・バレルユニット内のスクリューの直径(D):132mm
・バレルユニット内のスクリューの全長(L):4620mm
・L/D:35
・バレルユニット内のスクリューの回転数:135rpm
・ダイからのゴムの押出量:700kg/hr
・ダイの樹脂圧:2MPa
上記の方法により得られたアクリルゴム(E)の反応性基含有量、灰分量、含水量及びムーニー粘度(ML1+4,100℃)を測定し、その結果を表2に示した。
次いで、バンバリーミキサーを用いて、アクリルゴム(E)100部と表1に記載の「配合1」の配合剤Aを投入して、50℃で5分間混合した。こうして得られた混合物を50℃のロールに移して、「配合1」の配合剤Bを配合して混合してゴム混合物を得た。
次いで、得られたゴム混合物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら180℃で10分間プレスすることにより一次架橋し、次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに180℃、2時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、シート状のゴム架橋物を得た。そして、得られたシート状のゴム架橋物から3cm×2cm×0.2cmの試験片を切り取って耐水性試験を行い、それらの結果を表2に示した。
[実施例6]
乳化剤をトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩1.8部及び凝固剤を硫酸マグネシウムに変更する以外は実施例5と同様に行い、アクリルゴム(F)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例7]
単量体成分をアクリル酸エチル28部、アクリル酸n-ブチル38部、アクリル酸メトキシエチル27部、アクリロニトリル5部、アリルグリシジルエーテル2部に変更し、乳化剤をノニルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩に変更する以外は実施例6と同様に行い、アクリルゴム(G)を得て各特性(配合剤を「配合2」に替えて)を評価し、それらの結果を表2に示した。
[実施例8]
単量体成分をアクリル酸エチル48.25部、アクリル酸n-ブチル50部、フマル酸モノn-ブチル1.75部に変更し、乳化剤をオクチルオキシジオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩に変更する以外は実施例6と同様に行い、アクリルゴム(H)を得て各特性(配合剤を「配合3」に替えて)を評価し、それらの結果を表2に示した。
[実施例9]
第1の脱水バレルの温度を90℃、第2の脱水バレルの温度を100℃に変えて第1及び第2の脱水バレルで排水を行うようにし、第2の脱水バレルでの排水を含水量20%まで行う以外は実施例8と同様に行い、アクリルゴム(I)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2に示した。
[比較例1]
凝固反応を、乳化重合液(回転数100ppm、周速0.5m/s)に0.7%硫酸ナトリウム水溶液を添加して行い、且つ、洗浄方法を、凝固反応後の含水クラム100部に対し、工業用水194部を添加し、凝固槽内で25℃、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出する含水クラムの洗浄を4回行い、次いで、pH3の硫酸水溶液194部を添加して25℃で5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させて酸洗浄を1回行った後、純水194部添加して純水洗浄を1回行うように変更する以外は実施例1と同様に行い、アクリルゴム(J)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2に示した。
[比較例2]
凝固反応を、乳化重合液(回転数100rpm、周速0.5m/s)に0.7%硫酸マグネシウム水溶液を添加して行う以外は実施例2と同様に行い、アクリルゴム(K)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2に示した。
表2から、本発明の製造方法で製造されるアクリルゴム(A)~(I)は、耐水性に格段に優れていることがわかる(実施例1~9と比較例1~2との比較)。
表2から、また、凝固反応を乳化重合液に凝固液を添加して行う方法から凝固液に乳化重合液を添加して行う方法に変更すること、凝固液の凝固剤濃度を高めること、及び乳化重合液を添加する凝固液の撹拌数及び周速を相当高めに設定することで得られるアクリルゴム(A)~(I)の耐水性を格段に向上させていることがわかる(実施例1~9と比較例1~2との比較)。また、かかる凝固工程後に生成した含水クラムから水分を絞り出す脱水工程を設けることで格段に耐水性が改善されること(実施例1~4と実施例5~9との比較)、及び含水量を30%より20%まで脱水を行うことにより更に改善されること(実施例8と実施例9との比較)がわかる。
表2から、また、アクリルゴムの反応性基を塩素からカルボキシル基又はエポキシ基に変更することにより耐水性がより優れることがわかる(実施例1~2と実施例3~4との比較、実施例5~6と実施例7~9との比較)。また、乳化剤としてリン酸系乳化剤及び凝固剤として周期律表第2族金属塩である硫酸マグネシウムを用いたアクリルゴム(B)及び(F)は、乳化剤として硫酸系乳化剤及び凝固剤としてアルカリ金属塩である硫酸ナトリウムを用いたアクリルゴム(A)及び(E)よりも灰分量は多いが、耐水性は格段に優れていることがわかる(実施例1と2との比較、実施例5と6との比較)。
一方、表記はしていないが、比較例1の洗浄方法を温水を用いずに従来技術での水洗4回、pH3酸洗浄1回、及び純水洗浄1回を行ったものは耐水性を改善できず更に悪化させることがわかった。すなわち、本発明の特定な凝固方法で生成する含水クラムを温水で洗浄することで耐水性を更に向上させていることがわかった。