JP6879339B2 - アクリルゴムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アクリルゴムの製造方法に関し、さらに詳しくは、耐水性に優れるアクリルゴムの製造方法に関する。
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、一般に耐熱性、耐油性及び耐オゾン性に優れたゴムとして知られ、自動車関連の分野などで広く用いられている。
例えば、特許文献1(国際公開第2018/079783号パンフレット)には、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、フマル酸モノn−ブチルからなる単量体成分を純水とラウリル硫酸ナトリウムとポリオキシエチレンドデシルエーテルからなる乳化剤を用いてエマルジョン化し、重合開始剤存在下に重合転化率95重量%まで乳化重合をして乳化重合液を得、硫酸ナトリウムを連続して添加することにより含水クラムを生成させ、次いで、生成した含水クラムを工業用水での水洗4回、pH3の酸洗浄1回、及び1回の純水洗浄を行った後に、熱風乾燥機にて110℃で1時間乾燥することにより、乳化剤や凝固剤の残留量が少ない耐水性(80℃蒸留水中70時間浸漬後の体積変化)に優れるアクリルゴムが得られる方法が開示されている。しかしながら、最近は、アクリルゴムに対して、より厳しい環境下での高度な耐水性が求められている。
国際公開第2018/079783号パンフレット
本発明は、かかる実状に鑑みてなされたものであり、耐水性に優れるアクリルゴムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究した結果、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体成分を乳化剤と水でエマルジョン化し乳化重合した乳化重合液を、凝固剤で凝固させて特定クラム径分布の含水クラムを生成させて温水で洗浄することで、使用した凝固剤の殆どを除去でき、耐水性に優れるアクリルゴムを製造できることを見出した。
本発明者らは、また、特定クラム径分布の含水クラムを特定含水量まで脱水することで使用した乳化剤の多くを除去できること、及び乳化剤として特定乳化剤を使用することでより耐水性に優れるアクリルゴムを容易に製造することができることを見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成させるに至ったものである。
かくして本発明によれば、(メタ)アクリル酸エステルを50重量%以上含む単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化し重合触媒存在下に乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、
得られた乳化重合液を、凝固剤水溶液と接触させて下記(a)〜(e)の条件を満足する含水クラムを生成する凝固工程と、
(a)目開き9.5mmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が10重量%以下、
(b)目開き9.5mmのJIS篩を通過して6.7mmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が30重量%以下、
(c)目開き6.7mmのJIS篩を通過して710μmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が70重量%以上、
(d)目開き710μmのJIS篩を通過して425μmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が30重量%以下、及び
(e)目開き425μmのJIS篩を通過する含水クラムの割合が10重量%以下、
生成した含水クラムを温水で洗浄する洗浄工程と、
洗浄した含水クラムを乾燥する乾燥工程と
を含むアクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、生成した全含水クラムのうち、(f)目開き6.7mmJIS篩を通過して4.75mmを通過しない含水クラムの割合が、40重量%以下であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、生成した全含水クラムのうち、(g)目開き4.75mmを通過して710μmを通過しない含水クラムの割合が、通常40重量%以上であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、生成した全含水クラムのうち、(h)目開き3.35mmを通過して710μmを通過しない含水クラムの割合が、20重量%以上であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法においては、洗浄した含水クラムを含水量1〜50重量%まで脱水する脱水工程をさらに含むことが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法において、乳化剤が、リン酸系乳化剤であることが好ましい。
本発明のアクリルゴムの製造方法において、凝固剤が、周期律表第2族金属塩であることが好ましい。
本発明によれば、耐水性に優れるアクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明の一実施形態に係るアクリルゴムの製造に用いられるアクリルゴム製造システムの一例を模式的に示す図である。 図1のスクリュー型押出機の構成を示す図である。
本発明のアクリルゴムの製造方法は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化し重合触媒存在下に乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、
得られた乳化重合液を凝固剤と接触させ、生成した全含水クラムをJIS分級篩により篩分けを行ったときに下記(a)〜(e)の条件;
(a)目開き9.5mmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が10重量%以下であること、
(b)目開き9.5mmのJIS篩を通過するが目開き6.7mmのJIS篩は通過しない含水クラムの割合が30重量%以下であること、
(c)目開き6.7mmのJIS篩を通過するが目開き710μmのJIS篩は通過しない含水クラムの割合が20重量%以上であること、
(d)目開き710μmのJIS篩を通過するが目開き425μmのJIS篩は通過しない含水クラムの割合が30重量%以下であること、及び
(e)目開き425μmのJIS篩を通過する含水クラムの割合が10重量%以下であること、
を全て満足する含水クラムを生成する凝固工程と、
生成した含水クラムを温水で洗浄する洗浄工程と、
洗浄した含水クラムを乾燥する乾燥工程と
を含むことを特徴とする。
<単量体成分>
本発明のアクリルゴムに使用される単量体成分は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とすることを特徴とする。単量体成分中の(メタ)アクリル酸エステルの割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。なお、本発明において「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のエステル類を総称する用語として使用される。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、限定されないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体成分の好適な例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル、反応性基含有単量体、及び必要に応じて含まれる共重合可能なその他の単量体からなるものが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、限定されないが、通常炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、好ましくは炭素数1〜8のアルキルを有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、より好ましくは炭素数2〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルが好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルがより好ましい。
上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、限定されないが、通常2〜12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、好ましくは2〜8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、より好ましくは炭素数2〜6のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシエステルである。かかる(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどが好ましく、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチルがより好ましい。
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独であるいは2種以上組み合わせて用いられ、アクリルゴム中の割合は、通常50重量%以上、好ましくは70〜99.9重量%、より好ましくは80〜99.5重量%、最も好ましくは87〜99重量%である。単量体成分中の(メタ)アクリル酸エステル量が、過度に少ないと得られるアクリルゴムの耐候性、耐熱性及び耐油性が低下するおそれがあり好ましくない。
本発明のアクリルゴムに使用される反応性基含有単量体としては、特に限定されず使用目的に応じて適宜選択されるが、例えば、カルボキシル基、エポキシ基及びハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性基を有する単量体が好ましく、カルボキシル基を有する単量体が特に好ましい。耐水性を高度に高めるためには、反応性基含有単量体としてカルボキシル基やエポキシ基などのイオン反応性基含有単量体の使用が好適である。
上記カルボキシル基を有する単量体としては、限定されないが、エチレン性不飽和カルボン酸を好適に用いることができる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、エチレン性不飽和モノカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルなどが挙げられ、これらの中でも特にエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルがアクリルゴムをゴム架橋物とした場合の耐圧縮永久歪み性をより高めることができ好ましい。
エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、限定されないが、炭素数3〜12のエチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などを挙げることができる。
エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、限定されないが、炭素数4〜12のエチレン性不飽和ジカルボン酸が好ましく、例えば、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などを挙げることができる。なお、エチレン性不飽和ジカルボン酸は、無水物として存在しているものも含まれる。
エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、限定されないが、通常、炭素数4〜12のエチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜12のアルキルモノエステル、好ましくは炭素数4〜6のエチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数2〜8のアルキルモノエステル、より好ましくは炭素数4のブテンジオン酸の炭素数2〜6のアルキルモノエステルである。
かかるエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシルなどのブテンジオン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn−ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;などが挙げられ、これらの中でもフマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノn−ブチルが好ましく、フマル酸モノn−ブチルが特に好ましい。
エポキシ基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有ビニルエーテル;などが挙げられる。
ハロゲン基を有する単量体としては、例えば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、ハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルとしては、例えば、クロロ酢酸ビニル、2−クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酢酸アリルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2−ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2−クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3−クロロプロピル、(メタ)アクリル酸2,3−ジクロロプロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和エーテルの具体例としては、クロロメチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、3−クロロプロピルビニルエーテル、2−クロロエチルアリルエーテル、3−クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和ケトンの具体例としては、2−クロロエチルビニルケトン、3−クロロプロピルビニルケトン、2−クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物の具体例としては、p−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、o−クロロメチルスチレン、p−クロロメチル−α−メチルスチレンなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和アミドとしては、例えば、N−クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。ハロアセチル基含有不飽和単量体としては、例えば、3−(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p−ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。
本発明においては、また、反応性基含有単量体としてラジカル反応性基含有単量体を用いることができ、具体的にはジエン単量体が挙げられる。ジエン単量体としては、例えば、共役ジエン、非共役ジエンなどが挙げられる。共役ジエンの具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、ピペリレンなどを挙げることができる。非共役ジエンの具体例としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸2−ジシクロペンタジエニルエチルなどを挙げることができる。
これらの反応性基含有単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上組み合わせて用いられ、単量体成分中の割合は、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%、最も好ましくは1〜3重量%である。
必要に応じて使用される上記単量体以外の単量体(以下「その他の単量体」という)としては、上記単量体と共重合可能であれば限定されず、例えば、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、アクリルアミド系単量体、その他のオレフィン系単量体などが挙げられる。
芳香族ビニルとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。エチレン性不飽和ニトリルとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。アクリルアミド系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。その他のオレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
これらのその他の単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられ、単量体成分中の割合は、通常0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜15重量部、最も好ましくは0〜10重量部の範囲である。
本発明に使用される単量体成分が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル、反応性基含有単量体及び必要に応じて含まれるその他の単量体からなる場合、それぞれの割合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルが、通常50重量%以上、好ましくは70〜99.9重量%、より好ましくは80〜99.5重量%、特に好ましくは87〜99重量%の範囲であり、反応性基含有単量体が、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは1〜3重量%の範囲であり、その他の単量体が、通常0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%の範囲である。各単量体成分がこれらの範囲にあるときに耐熱性、耐圧縮永久歪み及び耐水性などの架橋特性を高度にバランスさせたアクリルゴムを製造することができ好適である。
<乳化重合工程>
本発明のアクリルゴムの製造方法における乳化重合工程は、上記単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化し、重合触媒存在下に乳化重合し乳化重合液を得ることを特徴とする。
乳化重合工程で使用される乳化剤は、限定されず常法に従えばよいが、例えば、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤などを挙げることができる。これらの中でも、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤が好ましく、アニオン性乳化剤が特に好ましい。
アニオン性乳化剤としては、限定されないが、通常、脂肪酸系乳化剤、硫酸系乳化剤、リン酸系乳化剤などが用いられ、好ましくは硫酸系乳化剤、リン酸系乳化剤であるときに生産性と得られるアクリルゴムの耐水性が高度にバランスされ好適である。
上記の脂肪酸系乳化剤としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩などが挙げられ、硫酸系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩などを挙げることができ、これらの中でも、ラウリル硫酸ナトリウムが特に好適である。リン酸系乳化剤としては、例えば、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩などのリン酸エステル塩などが挙げられる。肪酸系乳化剤、硫酸系乳化剤及びリン酸系乳化剤以外の乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルスルホコハク酸塩などを挙げることができる。これらのアニオン性乳化剤は、それぞれ単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
カチオン性乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライドなどを挙げることができる。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンドデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル;ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルなどを挙げることができ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルがより好ましい。
これら乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは1〜3重量部の範囲である。
単量体成分と水と乳化剤との混合方法としては、常法に従えばよく、単量体と乳化剤と水とをホモジナイザーやディスクタービンなどの撹拌機などを用いて撹拌する方法などが挙げられる。水の使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常1〜1000重量部、好ましくは5〜500重量部、より好ましくは10〜300重量部、特に好ましくは15〜150重量部、最も好ましくは20〜80重量部の範囲である。
乳化重合工程で使用される重合触媒としては、乳化重合で通常使われるものであれば限定されないが、例えば、ラジカル発生剤と還元剤とからなるレドックス触媒を用いることができる。
上記ラジカル発生剤としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物などが挙げられ、好ましくは過酸化物である。過酸化物としては、無機系過酸化物や有機系過酸化物が用いられる。
無機系過酸化物としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウムなどが挙げられ、これらの中でも過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウムが好ましく、過硫酸カリウムが特に好ましい。
有機過酸化物としては、乳化重合で使用される公知のものであれば限定されず、例えば、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1−ジ−(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)吉草酸n−ブチル、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラエチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジイソブチリルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5,−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブイチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2.5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどが挙げられ、これらの中でもジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどが好ましい。
アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソプチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2'−アゾビス(プロパン−2−カルボアミジン)、2,2'−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]、2,2'−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)及び2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロパンアミド}などが挙げられる。
これらのラジカル発生剤は、それぞれ単独であるいは2種類以上組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.0001〜5重量部、好ましくは0.0005〜1重量部、より好ましくは0.001〜0.5重量部の範囲である。
還元剤としては、乳化重合のレドックス触媒で使用されるものであれば格別な限定なく用いることができるが、本発明においては、特に少なくとも2種の還元剤を用いることが好ましい。少なくとも2種の還元剤としては、例えば、還元状態にある金属イオン化合物とそれ以外の還元剤の組み合わせが好適である。
還元状態にある金属イオン化合物としては、特に限定されないが、例えば、硫酸第一鉄、ヘキサメチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、ナフテン酸第一銅などが挙げられ、これらの中でも硫酸第一鉄が好ましい。これらの還元状態にある金属イオン化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.000001〜0.01重量部、好ましくは0.00001〜0.001重量部、より好ましくは0.00005〜0.0005重量部の範囲である。
還元状態にある金属イオン化合物以外の還元剤としては、特に限定はないが、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸又はその塩;エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウムなどのエリソルビン酸又はその塩;ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムなどのスルフィン酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルデヒド亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムの亜硫酸塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウムなどのピロ亜硫酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸塩;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム、亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウムの亜燐酸(塩);ピロ亜燐酸、ピロ亜燐酸ナトリウム、ピロ亜燐酸カリウム、ピロ亜燐酸水素ナトリウム、ピロ亜燐酸水素カリウムなどのピロ亜燐酸又はその塩;ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが挙げられる。これらの中でも、アルコルビン酸又はその塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが好ましく、特にアスコルビン酸又はその塩が好ましい。
これらの還元状態にある金属イオン化合物以外の還元剤は、それぞれ単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対し、通常0.001〜1重量部、好ましくは0.005〜0.5重量部、より好ましくは0.01〜0.3重量部の範囲である。
還元状態にある金属イオン化合物とそれ以外の還元剤との好ましい組み合わせは、硫酸第一鉄とアスコルビン酸塩及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートで、より好ましくは硫酸第一鉄とアスコルビン酸塩及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、最も好ましくは硫酸第一鉄とアルコルビン酸塩の組み合わせである。
このときの、硫酸第一鉄の使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.000001〜0.01重量部、好ましくは0.00001〜0.001重量部、より好ましくは0.00005〜0.0005重量部の範囲であり、アスコルビン酸塩及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの使用量は、単量体成分100重量部に対し、通常0.001〜1重量部、好ましくは0.005〜0.5重量部、より好ましくは0.01〜0.3重量部の範囲である。
乳化重合反応における水の使用量は、上記単量体成分エマルジョン化時に使用した量だけもよいが、重合に用いる単量体成分100重量部に対して、通常10〜1000重量部、好ましくは50〜500重量部、より好ましくは80〜400重量部、最も好ましくは100〜300重量部の範囲になるように調整される。
乳化重合反応の方式は、常法に従えばよく、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合温度及び重合時間は、特に限定されず、使用する重合開始剤の種類などから適宜選択できる。重合温度は、通常0〜100℃、好ましくは5〜80℃、より好ましくは10〜50℃の範囲であり、重合時間は通常0.5〜100時間、好ましくは1〜10時間である。重合転化率は、格別な限定はないが、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上である。重合停止に当たっては、重合停止剤を使用してもよい。
<凝固工程>
本発明のアクリルゴムの製造方法における凝固工程は、上記得られた乳化重合液を凝固剤と接触させて、特定なクラム径分布の含水クラムを生成することを特徴とする。
凝固工程で使用される乳化重合液の固形分濃度は、限定されないが、通常5〜50重量%、好ましくは10〜45重量%、より好ましくは20〜40重量%の範囲に調整される。
凝固剤としては、特に限定されないが、通常は金属塩が用いられる。凝固剤に使用される金属塩としては、例えば、アルカリ金属、周期表第2族金属塩、その他の金属塩などが挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩、周期表第2族金属塩であり、好ましくは周期表第2族金属塩であり、特に好ましくはマグネシウム塩である。
上記アルカリ金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウムなどが挙げられ、これらの中でも塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムが好適である。
上記周期表第2族金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ベリリウム、硝酸ベリリウム、硫酸ベリリウム、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、塩化ラジウム、硝酸ラジウム、硫酸ラジウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム)、塩化マグネシウムなどが挙げられ、これらの中でも塩化カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどが好ましく、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムが特に好ましく、硫酸マグネシウムが最も好ましい。
その他の金属塩としては、例えば、塩化亜鉛、塩化チタン、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化スズ、硝酸亜鉛、硝酸チタン、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硝酸スズ、硫酸亜鉛、硫酸チタン、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸スズなどが挙げられる。
これらの凝固剤は、それぞれ単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対し、通常0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部の範囲である。凝固剤がこの範囲にあるときに、アクリルゴムの凝固を充分なものとしながら、アクリルゴムを架橋した場合の耐圧縮永久歪み性や耐水性を高度に向上させることができるので好適である。
本発明において、上記凝固剤は、その水溶液(凝固液)として用いるのが凝固反応を効率的に進める上で好適である。凝固液の凝固剤濃度は、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%の範囲であるときに生成する含水クラムの粒径を特定の領域に且つ均一に集でき好適である。
凝固液の温度は、限定されないが、通常40℃以上、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜80℃の範囲であるときに均一な含水クラムが生成されるので好適である。
乳化重合液と凝固液との接触方法は、限定されないが、例えば、撹拌されている凝固液中に乳化重合液を添加する方法、撹拌されている乳化重合液中に凝固液を添加する方法のいずれでもよい。この中でも、撹拌されている凝固液中に乳化重合液を添加する方法が、生成する含水クラムの形状やクラム径を均一且つ特定領域に集束し乳化剤や凝固剤の洗浄効率を格段に改善できるので特に好適である
撹拌されている凝固液の撹拌数(回転数)は、本発明では凝固浴槽に設けた撹拌装置の撹拌翼の回転数で表わされるが、凝固液が激しく撹拌されている方が生成する含水クラム粒径を小さく且つ均一化できるため好適であり、通常100rpm以上、好ましくは200〜1000rpm、より好ましくは300〜900rpm、特に好ましくは400〜800rpmの範囲に設定される。凝固液の撹拌数(回転数)が過度に低いと、大きいクラム粒径のものと小さいクラム径のものが生成されてしまい、乳化剤や凝固剤の洗浄効率が悪くなり、また、過度に高いと凝固反応の制御が困難になるので、いずれも好ましくない。
撹拌されている凝固液の周速は、凝固浴槽に設けた撹拌装置の撹拌翼の外周の線速度で表されるが、一定程度まで激しく撹拌されている方が生成する含水クラム径を小さく且つ均一にでき好適で、周速は通常0.5m/s以上、好ましくは1m/s以上、より好ましくは1.5m/s以上、特に好ましくは2m/s以上、最も好ましくは2.5m/s以上である。撹拌されている凝固液の周速の上限値は、限定されないが、通常50m/s、好ましくは30m/s以下、より好ましくは25m/s以下、特に好ましくは20m/s以下であるときに、凝固反応の制御が容易になり好適である。
凝固工程における凝固反応の上記諸条件(接触方法、乳化重合液の固形分濃度、凝固液の濃度及び温度、凝固液撹拌時の回転数及び周速など)を特定にすることで生成する含水クラムの形状及びクラム径が均一で且つ集束化され、洗浄及び脱水時の乳化剤や凝固剤の除去が格段に向上するので好適である。
かくして生成する含水クラムは、多様な粒径を有する粒状又は塊状を呈するが、その生成した全含水クラムについてJIS篩によって篩分けを行ったとき、下記(a)〜(e)の関係を満足するものとなる。なお、JIS篩は、日本工業規格(JIS Z 8801−1)の規定に従う。
(a)目開き9.5mmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が10重量%以下、
(b)目開き9.5mmのJIS篩を通過して6.7mmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が30重量%以下、
(c)目開き6.7mmのJIS篩を通過して710μmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が20重量%以上、
(d)目開き710μmのJIS篩を通過して425μmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が30重量%以下、及び
(e)目開き425μmのJIS篩を通過する含水クラムの割合が10重量%以下。
生成した含水クラムのうち、(a)目開き9.5mmのJIS篩を通過しない比較的大きな含水クラムの割合が、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下であるときに、乳化剤や凝固剤の洗浄効率を格段に改善でき好適である。また、生成した含水クラムのうち、(b)目開き9.5mmのJIS篩を通過して6.7mmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が、30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは5重量%以下であるときに、乳化剤や凝固剤の洗浄効率を格段に改善でき好適である。生成した含水クラムのうち、(c)目開き6.7mmのJIS篩を通過して710μmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が、20重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上であるときに、乳化剤や凝固剤の洗浄効率を格段に改善でき好適である。生成した含水クラムのうち、(d)目開き710μmのJIS篩を通過して425μmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が、30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下であるときに、乳化剤や凝固剤の洗浄効率を格段に改善されまた生産性も高く好適である。そして、生成した含水クラムのうち、(e)目開き425μmのJIS篩を通過する比較的微小な含水クラムの割合が、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下であるときに、乳化剤や凝固剤の洗浄効率を格段に改善されまた生産性も高く好適である。
本発明においては、生成した含水クラムに同様の篩分けをおこなったとき、上記の条件を満足するのに加え、(f)目開き6.7mmのJIS篩を通過して目開き4.75mmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が、通常40重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下であるときに、乳化剤や凝固剤の洗浄効率が改善され好適である。
また、本発明においては、生成した含水クラムの(g)目開き4.75mmのJIS篩を通過して目開き710μmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が、通常40重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上であるときに、乳化剤及び凝固剤の洗浄及び脱水時の除去効率が格段に向上し好適である。
また、本発明においては、生成した含水クラムの(h)目開き3.35mmのJIS篩を通過して目開き710μmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が、通常20重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、最も好ましくは70重量%以上であるときに、乳化剤及び凝固剤の洗浄及び脱水時の除去効率が格段に向上し好適である。
<洗浄工程>
本発明のアクリルゴムの製造方法における洗浄工程は、上記凝固工程で生成した特定の粒径(大きさ)及び粒径分布を有する含水クラムを温水で洗浄する工程であり、生成した含水クラムを温水で洗浄することを特徴とする。
洗浄方法としては、格別限定されるものでなく常法に従えばよく、例えば、生成した含水クラムを多量の温水と混合して行うことができる。
洗浄に使用する温水の量としては、特に限定されないが、単量体成分100重量部に対して、水洗1回当たりの量が、通常50重量部以上、好ましくは50〜15,000重量部、好ましくは100〜10,000重量部、より好ましくは500〜5,000重量部の範囲であるときに、アクリルゴム中の灰分量を効果的に低減することができ好適である。
使用する温水の温度は、格別な限定はないが、通常40℃以上、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃、最も好ましくは60〜80℃のときに洗浄効率を格段に向上させることができるので好適である。使用する温水の温度を上記の下限値以上とすることにより、乳化剤や凝固剤が含水クラムから遊離して洗浄効率がより向上する。
洗浄時間は、限定されないが、通常1〜120分、好ましくは2〜60分、より好ましくは3〜30分の範囲である。
洗浄工程での洗浄(水洗)の回数も、限定されないが、通常は1〜10回、好ましくは1〜5回、より好ましくは2〜3回である。なお、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を低減するという観点からは、水洗回数が多い方が望ましいが、上記含水クラムの形状及び含水クラム径を特定の範囲にすること、及び/又は洗浄温度を上記範囲にすることで、洗浄回数を格段に低減できる。
<脱水工程>
本発明のアクリルゴムの製造方法において、上記洗浄した含水クラムを乾燥工程にかける前に、予め含水量を1〜50重量%まで脱水する脱水工程をさらに設けることにより、乳化剤や凝固剤の除去を格段に向上できるため好適である。
脱水工程における含水クラムの脱水手段は、常法に従えばよく、例えば、遠心分離機、スクイザー、スクリュー型押出機などの脱水機を用いて含水クラムから水分を除去排出させることができる。これらの脱水機の中でも、本発明のアクリルゴムは粘着性が強く、遠心分離機などでは含水量45〜55重量%程度までしか脱水できないので、強制的に含水クラムから水分を絞り出すスクイザーやスクリュー型押出機の使用が好ましく、スクリュー型押出機がより好ましい。
脱水後のクラムの含水量は、通常1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは3〜35重量%、最も好ましくは5〜30重量%であるときに、乳化剤や凝固剤の除去が格段に向上し、且つ乾燥工程での乾燥が効率化し好適である。
<乾燥工程>
本発明のアクリルゴムの製造方法における乾燥工程は、上記洗浄後、好ましくは洗浄後に脱水した含水クラムを乾燥してアクリルゴムを得る工程である。乾燥工程における含水クラムの乾燥方法は、常法に従えばよく、例えば、熱風乾燥機、減圧乾燥機、エキスパンダー乾燥機、ニーダー型乾燥機、スクリュー型押出機などの乾燥機を用いて乾燥することができる。
含水クラムの乾燥温度は、格別限定されるものではないが、通常80〜250℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜180℃の範囲である。乾燥後のアクリルゴムの含水量は、通常1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.6重量%以下である。
(スクリュー型押出機による脱水・乾燥)
本発明においては、上記脱水工程と乾燥工程を、脱水スリットを有する脱水バレルと減圧下で乾燥する乾燥バレルと先端部にダイとを備えてなるスクリュー型押出機を用いて行うことが好ましい。以下にその具体的な実施態様を示すが、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。
脱水バレル部での脱水・乾燥
含水クラムの脱水は、スクリュー型押出機に設けた脱水スリットを有する脱水バレルで行われる。脱水スリットの目開きは、使用条件に応じて適宜選択されればよいが、通常0.1〜1mm、好ましくは0.2〜0.6mmの範囲であるときに、含水クラムの損出が少なく且つ含水クラムの脱水が効率的にできるため好適である。
スクリュー型押出機における脱水バレルの数は、限定されないが、通常複数個、好ましくは2〜10個、より好ましくは3〜6個であるときに粘着性のアクリルゴムの脱水を効率よく行う上で好適である。
脱水バレルにおける含水クラムからの水の除去は、脱水スリットから液状で除去するもの(排水)、蒸気状で除去するもの(排蒸気)の二通りがあるが、本発明においては、排水は脱水、排蒸気は予備的乾燥と定義して区別する。
脱水バレルを複数個備えるスクリュー型押出機を用いて行う場合は、排水(脱水)及び排蒸気(予備的乾燥)を組み合わせることで粘着性アクリルゴムの排水(脱水)と含水量の低減を効率よく実施できるため好適である。脱水バレルを3個以上備えるスクリュー型押出機では、各脱水バレルを排水型脱水バレルにするか排蒸気型脱水バレルにするかの選択は、使用目的に応じて適宜行えばよい。通常製造されるアクリルゴム中の灰分量を少なくする場合は排水型脱水バレルの数を多くし、例えば脱水バレルが3個ある場合は排水型バレルを2個、脱水バレルが4個ある場合は排水型バレルを3個などと適宜選択することができる。
脱水バレルの設定温度は、アクリルゴムの種類、灰分量、含水量及び操業条件などにより適宜選択されるが、通常60〜150℃、好ましくは70〜140℃、より好ましくは80〜130℃の範囲である。排水状態で脱水する排水型脱水バレルの設定温度は、通常60℃〜120℃、好ましくは70〜110℃、より好ましくは80〜100℃である。排蒸気状態で乾燥する排蒸気型脱水バレルの設定温度は、通常100〜150℃、好ましくは105〜140℃、より好ましくは110〜130℃の範囲である。
含水クラムの脱水後の含水量、すなわち、排水型脱水バレル通過直後の含水量としては、限定されないが、通常1〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%まで行うのが灰分量と含水量の低減を効率的に行うことができるため好適である。
反応性基を有する粘着性のアクリルゴムの脱水は、遠心分離機などを用いて行うと脱水スリット部にアクリルゴムが付着してしまい殆ど脱水できず、含水量は約45〜55重量%程度までしか低減できない。本発明においては、例えば、脱水スリットを有しスクリューで強制的に絞られる脱水バレルを備えるスクリュー型押出機を用いることによって、それ以下の含水量にまで脱水できるので好適である。
上記脱水後に排蒸気型脱水バレルで排蒸気による予備的乾燥した含水クラムの含水量は、通常1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%である。
乾燥バレル部での乾燥
上記脱水バレル部で脱水・乾燥した含水クラムは、さらにスクリュー型押出機内の下流側(押出側)に設けた減圧下の乾燥バレルで乾燥される。
乾燥バレル内部の減圧度は、適宜選択されればよいが、通常1〜50kPa、好ましくは2〜30kPa、より好ましくは3〜20kPaであるときに効率よく含水クラムを乾燥でき好適である。
乾燥バレルの設定温度は、適宜選択されればよいが、通常100〜250℃、好ましくは110〜200℃、より好ましくは120〜180℃の範囲であるときに、アクリルゴムのヤケや変質がなく効率よく乾燥ができ、且つアクリルゴムのゲル量を低減できるので好適である。
スクリュー型押出機における乾燥バレルの数は、限定されないが、通常は複数個、好ましくは2〜10個、より好ましくは3〜8個である。乾燥バレルを複数個有する場合の減圧度は、全ての乾燥バレルで近似した減圧度にしてもよいし、変えてもよい。乾燥バレルを複数個有する場合の設定温度は、全ての乾燥バレルで近似した温度にしてもよいし変えてもよいが、導入部(脱水バレルに近い方)の温度よりも排出部(ダイに近い方)の温度を高くすると、乾燥効率を上げることができ好適である。
乾燥後の乾燥ゴムの含水量は、通常1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.6重量%以下である。
アクリルゴムの形状(ダイ部)
上記脱水バレル及び乾燥バレルのスクリュー部で脱水及び乾燥されたアクリルゴムは、スクリュー型押出機の先端部付近に設けられた、スクリューの無い整流のダイ部に送られる。スクリュー部とダイ部との間には、ブレーカープレートや金網を設けてもよいし、設けなくてもよい。
スクリュー型押出機のダイ部から押し出されるアクリルゴムは、ダイのノズル形状により、粒状、柱状、丸棒状、シート状など、種々の形状のものとなり得る。
ダイ部における樹脂圧は、限定されないが、通常0.1〜10MPa、好ましくは0.5〜5MPa、より好ましくは1〜3MPaの範囲としたときに、押し出し時の空気の巻き込みが少なくゴムの比重が大きくなり、且つ生産性にも優れるので好適である。
スクリュー型押出機及び操業条件
使用されるスクリュー型押出機のスクリュー長(L)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常3,000〜15,000mm、好ましくは4,000〜10,000mm、より好ましくは4,500〜8,000mmの範囲である。
使用されるスクリュー型押出機のスクリュー径(D)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50〜250mm、好ましくは100〜200mm、より好ましくは120〜160mmの範囲である。
スクリュー型押出機のスクリュー長(L)とスクリュー径(D)との比(L/D)は、限定されないが、通常10〜100、好ましくは20〜80、より好ましくは30〜60、特に好ましくは40〜50の範囲であるときに、乾燥ゴムの分子量低下やヤケを起こさずに含水量を1重量%未満にできるため好適である。
使用されるスクリュー型押出機の回転数(N)は、諸条件に応じて適宜選択されればよいが、通常10〜1,000rpm、好ましくは50〜750rpm、より好ましくは100〜500rpm、最も好ましくは120〜300rpmであるときに、アクリルゴムの含水量とゲル量を効率よく低減でき好適である。
使用されるスクリュー型押出機の押出量(Q)は、限定されないが、通常100〜1,500kg/hr、好ましくは300〜1,200kg/hr、より好ましくは400〜1,000kg/hr、最も好ましくは500〜800kg/hrの範囲である。スクリュー型押出機の押出量(Q)と回転数(N)の比(Q/N)は、格別限定されないが、通常2〜10、好ましくは3〜8、より好ましくは4〜6の範囲である。
乾燥ゴム
スクリュー型押出機から押し出される乾燥ゴムの形状は、特に限定されず、例えば、クラム状、粉体状、棒状、シート状などが挙げられる。
スクリュー型押出機から押し出される乾燥ゴムの温度は、通常100〜200℃、好ましくは110〜180℃、より好ましくは120〜160℃の範囲である。
スクリュー型押出機から押し出される乾燥ゴムの含水量は、1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.6重量%以下である。
<アクリルゴム>
かくして得られるアクリルゴムは、高度に耐水性に優れるものである。
本発明で製造されるアクリルゴムの単量体組成は、アクリル酸エステルを主成分とすること以外は限定されないが、(メタ)アクリル酸エステルの割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
本発明で製造されるアクリルゴムのさらに好ましい単量体組成は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル、反応性基含有単量体、及び必要に応じてその他の単量体からなり、それぞれの割合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルが、通常50重量%以上、好ましくは70〜99.9重量%、より好ましくは80〜99.5重量%、特に好ましくは87〜99重量%の範囲であり、反応性基含有単量体が、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは1〜3重量%の範囲であり、その他の単量体が、通常0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%の範囲である。アクリルゴム中のそれぞれの単量体をこの範囲にすることにより、アクリルゴムの架橋物としたときに耐水性や耐圧縮永久歪み性を高度に改善することができ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの反応性基含有量は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、反応性基自体の重量割合で、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%、より好ましくは0.05〜1重量%、特に好ましくは0.1〜0.5重量%の範囲あるときに加工性、強度特性、耐圧縮永久歪み性、耐油性、耐寒性、及び耐水性などの特性が高度にバランスされ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの重量平均分子量(Mw)は、格別限定するものではないが、GPC−MALSで測定される絶対分子量で、通常100,000〜5,000,000、好ましくは500,000~4,000,000、より好ましくは700,000〜3,000,000、最も好ましくは1,000,000〜2,500,000の範囲であるときにアクリルゴムの加工性と強度特性が高度にバランスされるので好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムのz平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)は、限定されないが、GPC−MALSで測定される絶対分子量分布で、通常1.3以上、好ましくは1.4〜5、より好ましくは1.5〜2の範囲であるときに、アクリルゴムの加工性と強度特性が高度にバランスされ且つ保存時の物性変化を緩和でき好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムのガラス転移温度(Tg)は、限定されないが、通常20℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下である。
本発明で製造されるアクリルゴムの灰分量の上限値は、限定されないが、通常1重量%以下、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下、最も好ましくは0.2重量%以下であるときに、保存安定性や耐水性が高度に優れ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの灰分量の下限値は、限定されないが、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、特に好ましくは0.005重量%以上、最も好ましくは0.01重量以上であるときに金属付着性が抑制され作業性に優れ好適である。例えば灰分量の範囲としては0.0001〜0.5重量%が好ましい。
本発明で製造されるアクリルゴムの灰分中のナトリウム、イオウ、リン、マグネシウム及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素量が、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上であるときに金属付着性と耐水性と保存安定性が高度にバランスされ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの灰分中のリン量は、限定されないが、通常25重量%以上、好ましくは35重量%以上、より好ましくは45重量%以上であるときに保存安定性と耐水性が高度に優れ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの灰分中のマグネシウムとリンの合計量は、限定されないが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上であるときに保存安定性と耐水性が高度に優れ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの灰分中のマグネシウムとリンとの比率([Mg]/[P])は、限定されないが、重量比で、通常0.4〜2.5、好ましくは0.4〜1.3、より好ましくは0.4〜1、特に好ましくは0.45〜0.75、最も好ましくは0.5〜0.7の範囲であるときに、保存安定性や耐水性が高度に優れ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの含水量は、格別限定されるものではないが、通常1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.6重量%以下であるときに加硫特性が最適化され、耐熱性や耐水性などの特性が高度となり好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの比重は、限定されないが、通常0.7〜1.5、好ましくは0.8〜1.4、より好ましくは0.9〜1.3、特に好ましくは0.95〜1.25、最も好ましくは1.0〜1.2の範囲であるときに、保存安定性が高度に優れ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムのゲル量は、限定されないが、メチルエチルケトンの不溶解分で、通常50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下であるときに、加工性が高度に改善され好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムのpHは、限定されないが、通常2〜6、好ましくは2.5〜5.5、より好ましくは3〜5の範囲であるときに保存安定性が高度に改善され好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの60℃における複素粘弾性([η]60℃)は、限定されないが、通常15,000Pa・s以下、好ましくは2,000〜10,000Pa・s、より好ましくは2,500〜7,000Pa・s、最も好ましくは2,700〜5,500Pa・sの範囲にあるときに加工性、耐油性及び形状保持性に優れ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの100℃における複素粘弾性([η]100℃)は、限定されないが、通常1,500〜6,000Pa・s、好ましくは2,000〜5,000Pa・s、より好ましくは2,500〜4,000Pa・s、最も好ましくは2,500〜3,500Pa・sの範囲であるときに加工性、耐油性、及び形状保持性に優れ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムの100℃における複素粘度([η]100℃)と60℃における複素粘度([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)は、限定されないが、通常0.5以上、好ましくは0.5〜0.98、より好ましくは0.6〜0.95、最も好ましくは0.75〜0.93の範囲出るときに加工性、耐油性、及び形状保持性が高度にバランスされ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、格別限定されるものではないが、通常10〜150、好ましくは20〜100、より好ましくは25〜70の範囲であるときに加工性や強度特性が高度にバランスされ好適である。
本発明で製造されるアクリルゴムは、耐水性が高度に優れるために、例えば、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、バアリングシース、メカニカルシール、ウエルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧縮機器用シールなどのシール材;シリンダブロックとシリンダヘッドとの連結部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダヘッドあるいはトランスミッションケースとの連結部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板及び負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着された燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;緩衝材、防振材;電線被覆材;工業用ベルト類;チューブ・ホース類;シート類;などとして好適に用いられる。
本発明で製造されるアクリルゴムは、また、自動車用途に用いられる押し出し成形型品及び型架橋製品として、例えば、燃料ホース、フィラーネックホース、ベントホース、ペーパーホース、オイルホースなどの燃料タンク周りの燃料油系ホース、ターボエアーホース、ミッションコントロールホースなどのエアー系ホース、ラジエターホース、ヒーターホース、ブレーキホース、エアコンホースなどの各種ホース類に好適に用いられる。
<アクリルゴムの製造に用いられる装置構成>
次に、本発明の一実施形態に係るアクリルゴムの製造に用いられる装置構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るアクリルゴムの製造に用いられる装置構成を有するアクリルゴム製造システムの一例を模式的に示す図である。本発明に係るアクリルゴムの製造には、例えば、図1に示すアクリルゴム製造システム1を使用することができる。
図1に示すアクリルゴム製造システム1は、不図示の乳化重合反応器、凝固装置3、洗浄装置4、水切り機43、スクリュー型押出機により構成されている。
乳化重合反応器は、上述した乳化重合工程に係る処理を行うように構成されている。図1には不図示であるが、この乳化重合反応器は、例えば重合反応槽、反応温度を制御する温度制御部、モータ及び撹拌翼を備えた撹拌装置を有する。乳化重合反応器では、アクリルゴムを形成するための単量体成分に水と乳化剤とを混合して撹拌機で適切に撹拌しながらエマルジョン化し、重合触媒存在下において乳化重合することで乳化重合液を得ることができる。乳化重合反応器は、回分式、半回分式、連続式のいずれであってもよく、槽型反応器、管型反応器のいずれであってもよい。
図1に示す凝固装置3は、上述した凝固工程に係る処理を行うように構成されている。図1に模式的に図示されているように、凝固装置3は、例えば撹拌槽30、撹拌槽30内を加熱する加熱部31、撹拌槽30内の温度を制御する不図示の温度制御部、モータ32及び撹拌翼33を備えた撹拌装置34、撹拌翼33の回転数及び回転速度を制御する不図示の駆動制御部を有する。凝固装置3では、乳化重合反応器で得られた乳化重合液を、凝固剤としての凝固液と接触させて凝固させることにより含水クラムを生成することができる。
凝固装置3では、例えば、乳化重合液と凝固液との接触は、乳化重合液を撹拌しているマグネシウム塩水溶液中に添加する方法が採用される。すなわち、凝固装置3の撹拌槽30に凝固液を充填しておき、この凝固液に乳化重合液を添加及び接触させて乳化重合液を凝固させることによって含水クラムが生成される。
凝固装置3の加熱部31は、撹拌槽30に充填された凝固液を加熱するよう構成されている。また、凝固装置3の温度制御部は、温度計で計測された撹拌槽30内の温度を監視しながら加熱部31による加熱動作を制御することで、撹拌槽30内の温度を制御するように構成されている。撹拌槽30内の凝固液の温度は、温度制御部によって、通常40℃以上、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜80℃の範囲となるよう制御される。
凝固装置3の撹拌装置34は、撹拌槽30に充填された凝固液を撹拌するように構成されている。具体的には、撹拌装置34は、回転動力を生み出すモータ32と、モータ32の回転軸に対して垂直方向に広がる撹拌翼33を備えている。撹拌翼33は、撹拌槽30に充填された凝固液内で、モータ32の回転動力により回転軸を中心として回転することで凝固液を流動させることができる。撹拌翼33の形状や大きさ、設置数などは特に限定されない。
凝固装置3の駆動制御部は、撹拌装置34のモータ32の回転駆動を制御して、撹拌装置34の撹拌翼33の回転数及び回転速度を所定値に設定するように構成されている。凝固液の撹拌数が、例えば、通常100rpm以上、好ましくは200〜1000rpm、より好ましくは300〜900rpm、特に好ましくは400〜800rpmの範囲となるように、駆動制御部によって撹拌翼33の回転が制御される。凝固液の周速が、通常0.5m/s以上、好ましくは1m/s以上、より好ましくは1.5m/s以上、特に好ましくは2m/s以上、最も好ましくは2.5m/s以上となるように、駆動制御部によって撹拌翼33の回転が制御される。さらに、凝固液の周速の上限値が、通常50m/s以下、好ましくは30m/s以下、より好ましくは25m/s以下、最も好ましくは20m/s以下となるように、駆動制御部によって撹拌翼33の回転が制御される。
図1に示す洗浄装置4は、上述した洗浄工程に係る処理を行うように構成されている。図1に模式的に図示されているように、洗浄装置4は、例えば洗浄槽40、洗浄槽40内を加熱する加熱部41、洗浄槽40内の温度を制御する不図示の温度制御部を有する。洗浄装置4では、凝固装置3で生成された含水クラムを多量の水と混合して洗浄することにより、最終的に得られるアクリルゴム中の灰分量を効果的に低減することができる。
洗浄装置4の加熱部41は、洗浄槽40内を加熱するよう構成されている。また、洗浄装置4の温度制御部は、温度計で計測された洗浄槽40内の温度を監視しながら加熱部41による加熱動作を制御することで、洗浄槽40内の温度を制御するように構成されている。上述したように、洗浄槽40内の洗浄水の温度は、通常40℃以上、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃、最も好ましくは60〜80℃の範囲となるよう制御される。
洗浄装置4で洗浄された含水クラムは、脱水工程及び乾燥工程を行うスクリュー型押出機5に供給される。このとき、洗浄後の含水クラムは、遊離水を分離することが可能な水切り機43を通ってスクリュー型押出機5に供給されることが好ましい。水切り機43には、例えば金網、スクリーン、電動篩機などを用いることができる。
また、洗浄後の含水クラムがスクリュー型押出機5に供給される際、含水クラムの温度は40℃以上、更に60℃以上であることが好ましい。例えば、洗浄装置4における水洗に用いられる水の温度を60℃以上(例えば70℃)とすることで、スクリュー型押出機5に供給された際の含水クラムの温度を60℃以上に維持することができるようにしてもよく、洗浄装置4からスクリュー型押出機5に搬送する際に含水クラムの温度が40℃以上、好ましくは60℃以上となるよう加温してもよい。これにより、後工程である脱水工程及び乾燥工程を効果的に行うことが可能となり、最終的に得られる乾燥ゴムの含水率を大幅に低減させることが可能となる。
図1に示すスクリュー型押出機5は、上述した脱水工程及び乾燥工程に係る処理を行うように構成されている。なお、図1には好適な例としてスクリュー型押出機5が図示されているが、脱水工程に係る処理を行う脱水機として遠心分離機やスクイザーなどを用いてもよく、乾燥工程に係る処理を行う乾燥機として熱風乾燥機、減圧乾燥機、エキスパンダー乾燥機、ニーダー型乾燥機などを用いてもよい。
スクリュー型押出機5は、脱水工程及び乾燥工程を経て得られる乾燥ゴムを所定の形状に成形して排出するように構成されている。具体的には、スクリュー型押出機5は、洗浄装置4で洗浄された含水クラムを脱水する脱水機としての機能を有する脱水バレル部53と、含水クラムを乾燥する乾燥機としての機能を有する乾燥バレル部54とを備えており、さらにスクリュー型押出機5の下流側に含水クラムを成形する成形機能を有するダイ59を備えて構成されている。
以下、図2を参照しながら、スクリュー型押出機5の構成について説明する。図2は、図1で示したスクリュー型押出機5として好適な一具体例の構成を示している。このスクリュー型押出機5により、上述した脱水・乾燥工程を好適に行うことができる。
図2に示すスクリュー型押出機5は、バレルユニット51内に不図示の一対のスクリューを備えてなる二軸スクリュー型の押出乾燥機である。スクリュー型押出機5は、バレルユニット51内の一対のスクリューを回転駆動する駆動ユニット50を有する。駆動ユニット50は、バレルユニット51の上流端(図2で左端)に取り付けられている。また、スクリュー型押出機5は、バレルユニット51の下流端(図2で右端)にダイ59を有する。
バレルユニット51は、上流側から下流側(図2で左側から右側)にわたり、供給バレル部52、脱水バレル部53、乾燥バレル部54を有する。
供給バレル部52は、2つの供給バレル、すなわち、第1の供給バレル52a及び第2の供給バレル52bにより構成されている。
また、脱水バレル部53は、3つの脱水バレル、すなわち、第1の脱水バレル53a、第2の脱水バレル53b及び第3の脱水バレル53cにより構成されている。
また、乾燥バレル部54は、8個の乾燥バレル、すなわち、第1の乾燥バレル54a、第2の乾燥バレル54b、第3の乾燥バレル54c、第4の乾燥バレル54d、第5の乾燥バレル54e、第6の乾燥バレル54f、第7の乾燥バレル54g、第8の乾燥バレル54hにより構成されている。
このようにバレルユニット51は、分割された13個の各バレル52a〜52b,53a〜53c,54a〜54hが上流側から下流側にわたり連結されて構成されている。
また、スクリュー型押出機5は、上記各バレル52a〜52b,53a〜53c,54a〜54hを個別に加熱して、各バレル52a〜52b,53a〜53c,54a〜54h内の含水クラムをそれぞれ所定温度に加熱する不図示の加熱手段を有する。加熱手段は、各バレル52a〜52b,53a〜53c,54a〜54hに対応する数を備える。そのような加熱手段としては、例えば、各バレル52a〜52b,53a〜53c,54a〜54h内に形成されたスチーム流通ジャケットにスチーム供給手段から高温スチームを供給するなどの構成が採用されるが、これに限定はされない。また、スクリュー型押出機5は、各バレル52a〜52b,53a〜53c,54a〜54hに対応する各加熱手段の設定温度を制御する不図示の温度制御手段を有する。
なお、バレルユニット51における各バレル部52、53、54をそれぞれ構成する供給バレル、脱水バレル及び乾燥バレルの設置数は、図2に示す態様に限定されるものではなく、乾燥処理するアクリルゴムの含水クラムの含水量などに応じた数に設定することができる。
例えば、供給バレル部52の供給バレルの設置数は例えば1〜3個とされる。また、脱水バレル部53の脱水バレルの設置数は、例えば2〜10個が好ましく、3〜6個とすると、粘着性のアクリルゴムの含水クラムの脱水を効率よく行うことができるのでより好ましい。また、乾燥バレル部54の乾燥バレルの設置数は、例えば2〜10個が好ましく、3〜8個であるとより好ましい。
バレルユニット51内の一対のスクリューは、駆動ユニット50に格納されたモータなどの駆動手段によって回転駆動される。一対のスクリューはバレルユニット51内の上流側から下流側にわたって延在しており、回転駆動されることで、供給バレル部52に供給された含水クラムを混合しながら下流側に搬送することができるようになっている。一対のスクリューとしては、互いに山部と谷部とが噛み合わされる状態とされた二軸噛合型であることが好ましく、これにより、含水クラムの脱水効率及び乾燥効率を高めることができる。
また、一対のスクリューの回転方向は、同方向でも異方向でもよいが、セルフクリーニングの性能面からは同方向に回転する形式のものが好ましい。一対のスクリューのスクリュー形状としては、特に限定されず、各バレル部52、53、54において必要とされる形状であればよく、特に限定されない。
供給バレル部52は、含水クラムをバレルユニット51内に供給する領域である。供給バレル部52の第1の供給バレル52aは、バレルユニット51内に含水クラムを供給するフィード口55を有する。
脱水バレル部53は、含水クラムから、凝固剤などが含まれる液体(セラム水)を分離し排出する領域である。
脱水バレル部53を構成する第1〜第3の脱水バレル53a〜53cは、含水クラムの水分を外部に排出する脱水スリット56a、56b、56cをそれぞれ有する。各脱水スリット56a、56b、56cは、各脱水バレル53a〜53cにそれぞれ複数形成されている。
各脱水スリット56a、56b、56cのスリット幅すなわち目開きは、使用条件に応じて適宜選択されればよく、通常で0.01〜5mmとされ、含水クラムの損出が少なく、且つ含水クラムの脱水が効率的にできる点から、好ましくは0.1〜1mmであり、0.2〜0.6mmであればより好ましい。
脱水バレル部53の各脱水バレル53a〜53cにおける含水クラムからの水分の除去は、それぞれの脱水スリット56a、56b、56cから液状で除去する場合と、蒸気状で除去する場合との二通りがある。本実施形態の脱水バレル部53においては、水分を液状で除去する場合を排水と定義し、蒸気状で除去する場合を排蒸気と定義して区別する。
脱水バレル部53においては、排水及び排蒸気を組み合わせることで、粘着性アクリルゴムの含水率を低下させることが効率よくできるので好適である。脱水バレル部53では、第1〜第3の脱水バレル53a〜53cのうち、どの脱水バレルで排水又は排蒸気を行うかは、使用目的に応じて適宜に設定すればよいが、通常製造されるアクリルゴム中の灰分量を少なくする場合は、排水を行う脱水バレルを多くするとよい。その場合、例えば図2に示すように、上流側の第1及び第2の脱水バレル53a、53bで排水を行い、下流側の第3の脱水バレル53cで排蒸気を行う。また、例えば脱水バレル部53が4つの脱水バレルを有する場合には、例えば上流側の3つの脱水バレルで排水を行い、下流側の1つの脱水バレルで排蒸気を行うといった態様が考えられる。一方、含水量を低減する場合には、排蒸気を行う脱水バレルを多くするとよい。
脱水バレル部53の設定温度は、上述の脱水・乾燥工程で述べたように、通常60〜150℃、好ましくは70〜140℃、より好ましくは80〜130℃の範囲であり、排水状態で脱水する脱水バレルの設定温度は、通常60℃〜120℃、好ましくは70〜110℃、より好ましくは80〜100℃であり、排蒸気状態で脱水する脱水バレルの設定温度は、通常100〜150℃、好ましくは105〜140℃、より好ましくは110〜130℃の範囲である。
乾燥バレル部54は、脱水後の含水クラムを減圧下で乾燥させる領域である。乾燥バレル部54を構成する第1〜第8の乾燥バレル54a〜54hのうち、第2の乾燥バレル54b、第4の乾燥バレル54d、第6の乾燥バレル54f及び第8の乾燥バレル54hは、脱気のためのベント口58a、58b、58c、58dをそれぞれ有する。各ベント口58a、58b、58c、58dには、不図示のベント配管がそれぞれ接続されている。
各ベント配管の末端には不図示の真空ポンプがそれぞれ接続されており、それら真空ポンプの作動により、乾燥バレル部54内が所定圧力に減圧されるようになっている。スクリュー型押出機5は、それら真空ポンプの作動を制御して乾燥バレル部54内の減圧度を制御する図示せぬ圧力制御手段を有する。
乾燥バレル部54での減圧度は適宜選択されればよいが、上述したように、通常1〜50kPa、好ましくは2〜30kPa、より好ましくは3〜20kPaに設定される。
また、乾燥バレル部54内の設定温度は適宜選択されればよいが、上述したように、通常100〜250℃、好ましくは110〜200℃、より好ましくは120〜180℃に設定される。
乾燥バレル部54を構成する各乾燥バレル54a〜54hにおいては、全ての乾燥バレル54a〜54h内の設定温度を近似した値にしてもよいし、異ならせてもよいが、上流側(脱水バレル部53側)の温度よりも下流側(ダイ59側)の温度の方を高温に設定すると、乾燥効率が向上するので好ましい。
ダイ59は、バレルユニット51の下流端に配置される金型であり、所定のノズル形状の吐出口を有する。乾燥バレル部54で乾燥処理されたアクリルゴムは、ダイ59の吐出口を通過することで、所定のノズル形状に応じた形状に押出成形される。ダイ59を通過するアクリルゴムは、ダイ59のノズル形状に応じて、粒状、柱状、丸棒状、シート状など、種々の形状に成形される。スクリューとダイ59との間には、ブレーカープレートや金網を設けてもよいし、設けなくてもよい。
洗浄工程を経て得られたアクリルゴムの含水クラムは、フィード口55から供給バレル部52に供給される。供給バレル部52に供給された含水クラムは、バレルユニット51内の一対のスクリューの回転により、供給バレル部52から脱水バレル部53に送られる。脱水バレル部53では、前述したように第1〜第3の脱水バレル53a〜53cにそれぞれ設けられた脱水スリット56a、56b、56cから、含水クラムに含まれる水分の排水や排蒸気が行われて、含水クラムが脱水処理される。
脱水バレル部53で脱水された含水クラムは、バレルユニット51内の一対のスクリューの回転により乾燥バレル部54に送られる。乾燥バレル部54に送られた含水クラムは可塑化混合されて融体となり、発熱して昇温しながら下流側へ運ばれる。そして、このアクリルゴムの融体中に含まれる水分が気化し、その水分(蒸気)が各ベント口58a、58b、58c、58dにそれぞれ接続された不図示のベント配管を通じて外部へ排出される。
上記のように乾燥バレル部54を通過することで含水クラムは乾燥処理されてアクリルゴムの融体となり、そのアクリルゴムはバレルユニット51内の一対のスクリューの回転によりダイ59に供給されダイ59から押し出される。
ここで、本実施形態に係るスクリュー型押出機5の操業条件の一例を挙げる。
バレルユニット51内の一対のスクリューの回転数(N)は、諸条件に応じて適宜選択されればよく、通常で10〜1000rpmとされ、アクリルゴムの含水量とゲル量を効率よく低減できる点から、好ましくは50〜750rpm、より好ましくは100〜500rpmであり、120〜300rpmが最も好ましい。
また、アクリルゴムの押出量(Q)は、格別限定されないが、通常で100〜1500kg/hrとされ、好ましくは300〜1200kg/hr、より好ましくは400〜1000kg/hrであり、500〜800kg/hrが最も好ましい。
また、アクリルゴムの押出量(Q)とスクリューの回転数(N)との比(Q/N)は、格別限定されないが、通常で1〜20とされ、好ましくは2〜10、より好ましくは3〜8であり、4〜6が特に好ましい。
上述したように、ダイ59のノズル形状に応じて、スクリュー型押出機5から排出された乾燥ゴムは、粒状、柱状、丸棒状、シート状など、種々の形状に押出成形される。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」、「%」及び「比」は、特に断りのない限り、重量基準である。各種の物性などについては、以下の方法に従って評価した。
[単量体組成]
アクリルゴムにおける単量体組成に関して、アクリルゴム中の各単量体単位の単量体構成はH−NMRで確認し、アクリルゴム中に反応性基の活性が残存していること及びその各反応性基含有量は下記試験法で確認した。また、各単量体単位のアクリルゴム中の含有割合は、各単量体の重合反応に用いた使用量及び重合転化率から算出した。具体的には、重合反応は乳化重合反応でその重合転化率は、未反応の単量体がいずれも確認できない略100%であったことから、各単量体単位の含有割合を各単量体の使用量と同一とした。
[反応性基含有量]
アクリルゴムの反応性基の含有量は、下記方法により測定した。
(1)カルボキシル基量は、アクリルゴムをアセトンに溶解し水酸化カリウム溶液で電位差滴定を行うことにより算出した。
(2)エポキシ基量は、アクリルゴムをメチルエチルケトンに溶解し、それに規定量の塩酸を加えてエポキシ基と反応させ、残留した塩酸量を水酸化カリウムで滴定することにより算出した。
(3)塩素量は、アクリルゴムを燃焼フラスコ中で完全燃焼させ、発生する塩素を水に吸収させ硝酸銀で滴定することにより算出した。
[ゲル量]
アクリルゴムのゲル量(%)は、メチルエチルケトンに対する不溶解分の量であり、以下の方法により求めた。
アクリルゴム0.2g程度を秤量(Xg)し、100mlメチルエチルケトンに浸漬させて室温で24時間放置後、80メッシュ金網を用いてメチルエチルケトンに対する不溶解分を濾別した濾液、すなわち、メチルエチルケトンに溶解するゴム成分のみが溶解した濾液を蒸発乾燥固化させた乾燥固形分(Yg)を秤量し、下式により算出した。
ゲル量(%)=100×(X−Y)/X
[比重]
アクリルゴムの比重は、JIS K6268架橋ゴム−密度測定のA法に準じて測定した。
[含水量]
アクリルゴムの含水量(%)は、JIS K6238−1:オーブンA(揮発分測定)法に準じて測定した。
[灰分量]
アクリルゴム中に含まれる灰分量(%)は、JIS K6228 A法に準じて測定した。
[灰分成分量]
アクリルゴム灰分中の各成分量(ppm)は、上記の灰分量測定の差異に採取した灰分をΦ20mmの滴定濾紙に圧着し、ZSX Primus(Rigaku社製)を用いてXRF測定した。
[ムーニー粘度(ML1+4,100℃)]
ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、JIS K6300の未架橋ゴム物理試験法に従って測定した。
[耐水性評価]
アクリルゴムの耐水性は、JIS K6258に準拠してアクリルゴムの架橋物を温度85℃の蒸留水中に100時間浸漬させて浸漬試験を行い、浸漬前後の体積変化率を下記の式に従って算出し、比較例2を100とする指数で評価した(指数が小さいほど耐水性に優れる)。
浸漬前後の体積変化率(%)=((浸漬後の試験片体積−浸漬前の試験片体積)/浸漬前の試験片体積)×100
[実施例1]
ホモミキサーを備えた混合容器に、純水46部、アクリル酸エチル48.25部、アクリル酸n−ブチル50部、フマル酸モノn−ブチル1.75部、及び乳化剤としてオクチルオキシジオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩1.8部を仕込み撹拌して、単量体エマルジョンを得た。
そして、温度計、撹拌装置を備えた重合反応槽に、純水170部及び上記で得られた単量体エマルジョン3部を投入し、窒素気流下で12℃まで冷却した。引き続き、重合反応槽中に、単量体エマルジョンの残部、硫酸第一鉄0.00033部、アスコルビン酸ナトリウム0.264部、及び過硫酸カリウム0.22部を3時間かけて連続的に滴下した。その後、重合反応内の温度を23℃に保った状態にて反応を継続し、重合転化率が略100%に達したことを確認し、重合停止剤としてのハイドロキノンを添加して重合反応を停止し、乳化重合液を得た。
温度計と撹拌装置を備えた凝固槽で、80℃に加温した激しく撹拌(600回転:周速3.1m/s)した2%硫酸マグネシウム水溶液(凝固液)中に、上記の得られた乳化重合液を80℃に加温して連続的に添加して重合体を凝固させ濾別して含水クラムを得た。得られた含水クラムについてJIS分級篩を用いて各割合を測定し、その結果を表2に示した。
次いで、凝固槽内に194部の温水(70℃)を添加して15分間撹拌した後に水分を排出させ、再度194部の温水(70℃)を添加して15分間撹拌して含水クラムの洗浄を行った。洗浄後の含水クラムをスクリュー型押出機に供給し、脱水・乾燥してアクリルゴム(A)を得た。
なお、本実施例1で用いたスクリュー型押出機は、1つの供給バレル、3つの脱水バレル(第1〜第3の脱水バレル)、5つの乾燥バレル(第1〜第5の乾燥バレル)で構成されている。第1及び第2の脱水バレルは排水を行い、第3の脱水バレルは排蒸気を行うようになっている。スクリュー型押出機の操業条件は、以下のとおりとした。
含水量:
・第2の脱水バレルでの排水後の含水クラムの含水量:20%
・第3の脱水バレルでの排蒸気後の含水クラムの含水量:10%
ゴム温度:
・第1の供給バレルに供給する含水クラムの温度:65℃
・スクリュー型押出機から排出されるゴムの温度:140℃
各バレルの設定温度:
・第1の脱水バレル:90℃
・第2の脱水バレル:100℃
・第3の脱水バレル:120℃
・第1の乾燥バレル:120℃
・第2の乾燥バレル:130℃
・第3の乾燥バレル:140℃
・第4の乾燥バレル:160℃
・第5の乾燥バレル:180℃
運転条件:
・バレルユニット内のスクリューの直径(D):132mm
・バレルユニット内のスクリューの全長(L):4620mm
・L/D:35
・バレルユニット内のスクリューの回転数:135rpm
・ダイからのゴムの押出量:700kg/hr
・ダイの樹脂圧:2MPa
このようにして得られたアクリルゴム(A)の反応性基含有量、灰分量、灰分成分量、比重、ゲル量、含水量、及びムーニー粘度(ML1+4,100℃)を測定し、表2に示した。
次いで、バンバリーミキサーを用いて、アクリルゴム(A)100部と表1に記載の「配合1」の配合剤Aを投入して、50℃で5分間混合した。そして、得られた混合物を50℃のロールに移して、「配合1」の配合剤Bを配合して混合してゴム混合物を得た。
Figure 0006879339
得られたゴム混合物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら180℃で10分間プレスすることにより一次架橋し、次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに180℃、2時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、シート状のゴム架橋物を得た。そして、得られたシート状のゴム架橋物から3cm×2cm×0.2cmの試験片を切り取って耐水性試験を行い、その結果を表2に示した。なお、表2の脱水工程欄に示す「脱水(排水)後含水量(%)」の値は、排水型脱水バレルによる排水直後(排蒸気型脱水バレルの直前)の含水クラムの含水量である。
[実施例2]
第1の脱水バレルの温度を100℃、第2の脱水バレルの温度を120℃に変えて第1の脱水バレルのみで排水を行うようにし、第1の脱水バレルでの排水後の含水クラムの含水量を30%に変更する以外は実施例1と同様に行い、アクリルゴム(B)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例3]
単量体成分を、アクリル酸エチル28部、アクリル酸n−ブチル38部、アクリル酸メトキシエチル27部、アクリロニトリル5部及びアリルグリシジルエーテル2部に変更し、乳化剤をノニルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩に変更する以外は実施例2と同様に行い、アクリルゴム(C)を得て各特性(配合剤は「配合2」に替えて)を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例4]
単量体成分を、アクリル酸エチル42.2部、アクリル酸n−ブチル35部、アクリル酸メトキシエチル20部、アクリロニトリル1.5部、クロロ酢酸ビニル1.3部に変更し、乳化剤をトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩に変更する以外は実施例2と同様に行い、アクリルゴム(D)を得て各特性(配合剤は「配合3」に替えて)を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例5]
実施例1と同様にして含水クラムの洗浄までを行い、洗浄した含水クラムを160℃の熱風乾燥機で乾燥させて含水量0.4重量%のアクリルゴム(E)を得た。得られたアクリルゴム(E)の反応性基含有量、灰分量、灰分成分量、比重、ゲル量、含水量及びムーニー粘度(ML1+4,100℃)を測定し、表2に示した。
次いで、アクリルゴム(E)100部と表1に記載の「配合1」の配合剤Aをバンバリーミキサーに投入し50℃で5分間混合した。得られた混合物を50℃のロールに移して、「配合1」の配合剤Bを配合してゴム混合物を得た。
得られたゴム混合物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら180℃で10分間プレスすることにより一次架橋し、次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに180℃、2時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、シート状のゴム架橋物を得た。そして、得られたシート状のゴム架橋物から3cm×2cm×0.2cmの試験片を切り取って耐水性試験を行い、その結果を表2に示した。
[実施例6]
単量体成分を、アクリル酸エチル28部、アクリル酸n−ブチル38部、アクリル酸メトキシエチル27部、アクリロニトリル5部及びアリルグリシジルエーテル2部に変更し、乳化剤をノニルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩に変更する以外は実施例5と同様に行い、アクリルゴム(F)を得て各特性(配合剤は「配合2」に替えて)を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例7]
単量体成分を、アクリル酸エチル42.2部、アクリル酸n−ブチル35部、アクリル酸メトキシエチル20部、アクリロニトリル1.5部、クロロ酢酸ビニル1.3部に変更し、乳化剤をトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩に変更する以外は実施例5と同様に行い、アクリルゴム(G)を得て各特性(配合剤は「配合3」に替えて)を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例8]
凝固液の撹拌を、回転数100rpm、周速0.5m/sに変更する以外は実施例7と同様に行い、アクリルゴム(H)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2に示した。
[実施例9]
凝固液の濃度を0.7%に変更する以外は実施例8と同様に行い、アクリルゴム(I)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2に示した。
[比較例1]
凝固反応を、乳化重合液(回転数100rpm、周速0.5m/s)に凝固液を添加して行う以外は実施例9と同様に行い、アクリルゴム(J)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2に示した。
[比較例2]
乳化剤を、トリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル2.5部及びポリオキシエチレンドデシルエーテル(分子量1500)0.5部に変更し、凝固液を硫酸ナトリウム水溶液に変更し、25℃の洗浄水で洗浄を1回行う以外は比較例1と同様に行い、アクリルゴム(K)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2に示した。
Figure 0006879339
表2から、本発明の製造方法で製造されるアクリルゴム(A)〜(I)は、耐水性に格段に優れていることがわかる(実施例1〜9)。特に、凝固工程において生成される含水クラムを、目開き9.5mmや6.7mmのJIS篩を通過しないもの及び425μmや710μmのJIS篩を通過するものが共に少なく、目開き6.7mmJIS篩を通過して710μmJIS篩を通過しないものの割合を多くすることにより、洗浄工程(実施例5〜9)及び脱水工程(実施例1〜4)で灰分量を低下させることができ、しかも耐水性が格段に改善されることがわかる(比較例1及び2との比較)。
また、表2から、凝固反応を乳化重合液に凝固液を添加して行う方法から凝固液に乳化重合液を添加して行う方法に変更すること、凝固液の凝固剤濃度を高めること、及び乳化重合液を添加する凝固液の撹拌数及び周速を相当高めに設定することで、目開き9.5mmや6.7mmのJIS篩を通過しないもの及び目開き425μmや710μmのJIS篩を通過するものの割合が急激に減少し、且つ得られるアクリルゴム中の灰分量を大幅に低下させ、しかもアクリルゴムの耐水性を格段に向上させていることがわかる(実施例7〜9と比較例1の比較)。また、9.5mmや6.7mmのJIS篩を通過しないもの及び425μmや710μmのJIS篩を通過するものを減少させて洗浄時の乳化剤や凝固剤の除去効率を向上させていくと、マグネシウムとリンとの比(Mg/P)が低下し、それに合わせて耐水性が急激に向上していることがわかる(実施例7〜9と比較例1の比較)。
また、表2から、アクリルゴムの反応性基を塩素からカルボキシル基又はエポキシ基に変更することにより耐水性が一段と優れることがわかる(実施例7と実施例5〜6との比較、実施例4と実施例2〜3との比較)。また、脱水工程において、含水量を30%より低い20%まで排水による脱水を行うことによって、アクリルゴム中の灰分量を低下させて耐水性を向上できるが、耐水性の効果の差は小さくなっていることがわかる(実施例1と実施例2〜3との比較)。
一方、表2には記載はしていないが、比較例1の洗浄に温水を用いずに従来技術による常温水洗4回、pH3の酸洗浄1回、及び純水洗浄1回を行ったものは灰分量を低下させることができず、さらに耐水性も悪化させることがわかった。すなわち、本発明の方法の凝固工程で生成する含水クラムのクラム径分布を特定とし且つ温水で洗浄することで、洗浄効率を格段に向上させ、アクリルゴムの灰分量を低下させ、且つ耐水性を向上させていることがわかった。
1 アクリルゴム製造システム
3 凝固装置
4 洗浄装置
5 スクリュー型押出機

Claims (7)

  1. (メタ)アクリル酸エステルを50重量%以上含む単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化し重合触媒存在下に乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、
    得られた乳化重合液を、凝固剤水溶液と接触させて下記(a)〜(e)の全ての条件を満足する含水クラムを生成する凝固工程と、
    (a)目開き9.5mmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が10重量%以下、
    (b)目開き9.5mmのJIS篩を通過して6.7mmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が30重量%以下、
    (c)目開き6.7mmのJIS篩を通過して710μmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が70重量%以上、
    (d)目開き710μmのJIS篩を通過して425μmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が30重量%以下、及び
    (e)目開き425μmのJIS篩を通過する含水クラムの割合が10重量%以下、
    生成した含水クラムを温水で洗浄する洗浄工程と、
    洗浄した含水クラムを乾燥する乾燥工程と
    を含むアクリルゴムの製造方法。
  2. 生成した含水クラムの(f)目開き6.7mmのJIS篩を通過して4.75mmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が、40重量%以下である請求項1記載のアクリルゴムの製造方法。
  3. 生成した含水クラムの(g)目開き4.75mmのJIS篩を通過して710μmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が、40重量%以上である請求項1又は2記載のアクリルゴムの製造方法。
  4. 生成した含水クラムの(h)目開き3.35mmのJIS篩を通過して710μmのJIS篩を通過しない含水クラムの割合が、20重量%以上である請求項1〜3のいずれかに1項記載のアクリルゴムの製造方法。
  5. 洗浄した含水クラムを含水量1〜50重量%まで脱水する脱水工程をさらに含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクリルゴムの製造方法。
  6. 乳化剤が、リン酸系乳化剤である請求項1〜5のいずれか1項に記載のアクリルゴムの製造方法。
  7. 凝固剤が、周期律表第2族金属塩である請求項1〜6のいずれか1項に記載のアクリルゴムの製造方法。
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