図面を参照して、調光シートおよび調光装置の一実施形態を説明する。
[調光装置の基本構造]
図1および図2を参照して、調光装置が備える調光シートの構造を中心に、調光装置の基本構造を説明する。
図1が示すように、調光装置は、調光シート10と、調光シート10への駆動電圧の印加を制御する制御部20とを備えている。調光シート10は、ノーマルタイプおよびリバースタイプのいずれかの構造を有する。図1は、ノーマルタイプの調光シート10Nの断面構造を示す。
ノーマルタイプの調光シート10Nは、調光層11と、一対の透明電極層である第1透明電極層12Aおよび第2透明電極層12Bと、一対の透明支持層である第1透明支持層13Aおよび第2透明支持層13Bとを備えている。第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとは、調光層11を挟み、第1透明支持層13Aと第2透明支持層13Bとは、調光層11および透明電極層12A,12Bを挟んでいる。第1透明支持層13Aは、第1透明電極層12Aを支持し、第2透明支持層13Bは、第2透明電極層12Bを支持している。
第1透明電極層12Aは、第1透明電極層12Aの表面に接続された第1端子部15Aから延びる配線を通じて制御部20に接続されている。第2透明電極層12Bは、第2透明電極層12Bの表面に接続された第2端子部15Bから延びる配線を通じて制御部20に接続されている。第1端子部15Aは、調光シート10Nの端部にて、第1透明電極層12Aが、調光層11、第2透明電極層12B、および、第2透明支持層13Bから露出している領域に配置されている。第2端子部15Bは、調光シート10Nの端部にて、第2透明電極層12Bが、調光層11、第1透明電極層12A、および、第1透明支持層13Aから露出している領域に配置されている。端子部15A,15Bは、調光シート10Nの一部を構成する。
制御部20は、交流電圧である駆動電圧を生成し、第1透明電極層12Aおよび第2透明電極層12Bに印加する。駆動電圧の大きさは可変であり、制御部20によって制御される。
調光層11は、ポリマーと液晶分子とを含む。調光層11は、例えば、高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、カプセル型ネマティック液晶(NCAP:Nematic Curvilinear Aligned Phase)等から構成される。例えば、高分子ネットワーク型液晶は、3次元の網目状を有した高分子ネットワークを備え、高分子ネットワークが有する空隙に液晶分子を保持する。調光層11が含む液晶分子は、例えば、誘電率異方性が正であって、液晶分子の長軸方向の誘電率が液晶分子の短軸方向の誘電率よりも大きい。なお、調光層11は、所定の色を有する色素であって、液晶分子の運動を妨げない色素を含んでもよい。こうした構成によれば、所定の色を有する調光シート10が実現される。
第1透明電極層12Aおよび第2透明電極層12Bの各々は、導電性を有する透明な層である。透明電極層12A,12Bを構成する材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を含むポリマー、Ag合金薄膜を含む多層膜等が挙げられる。
第1透明支持層13Aおよび第2透明支持層13Bの各々は、透明な基材である。透明支持層13A,13Bとしては、例えば、ガラス基板やシリコン基板、あるいは、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリサルホン、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース等からなる高分子フィルムが用いられる。
第1端子部15Aおよび第2端子部15Bの各々は、例えば、金属テープや導電性フィルムや導電性ペースト等の導電性接着層、および、FPC等の配線基板やリード線等から構成される。
図2は、リバースタイプの調光シート10Rの断面構造を示す。リバースタイプの調光シート10Rは、調光層11、透明電極層12A,12B、透明支持層13A,13Bに加えて、調光層11を挟む一対の配向層である第1配向層14Aおよび第2配向層14Bを備えている。第1配向層14Aは、調光層11と第1透明電極層12Aとの間に位置し、第2配向層14Bは、調光層11と第2透明電極層12Bとの間に位置する。すなわち、第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとは、調光層11および配向層14A,14Bを挟んでいる。
配向層14A,14Bは、垂直配向膜である。配向層14A,14Bは、第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとが等電位であるときに、調光層11が含む液晶分子の長軸方向を、配向層14A,14Bに沿って広がる面の法線方向に沿わせるように、液晶分子を配向する。一方、配向層14A,14Bは、透明電極層12A,12B間に電位差が生じているときに、調光層11が含む液晶分子の長軸方向を上記法線方向以外の方向に変更可能にする。
配向層14A,14Bを構成する材料としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレートが挙げられる。
[調光シートの製造方法]
調光シート10について、標準的な製造方法を説明する。以下では、調光層11が、高分子ネットワーク型液晶から構成される場合について説明する。まず、ノーマルタイプの調光シート10Nの製造方法を説明する。
まず、第1透明支持層13Aの表面に第1透明電極層12Aが形成され、第2透明支持層13Bの表面に第2透明電極層12Bが形成される。透明電極層12A,12Bは、その材料に応じて、スパッタリング、真空蒸着、コーティング等の公知の薄膜形成方法によって形成される。
続いて、調光層11の前駆体である塗布層が、第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとの間に挟まれるように形成される。塗布層の形成には、例えば、インクジェット法、グラビアコーティング法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、フレキソコーティング法、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法等の公知の塗布方法が用いられる。
上記塗布層の形成のための塗布液には、調光層11にて高分子ネットワークを構成するポリマーのモノマーやオリゴマー、紫外線反応性重合開始剤、および、液晶分子を含む液晶組成物が含まれる。塗布液には、さらに、消泡剤や酸化防止剤等の各種の添加剤、および、第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとの間に調光層11が位置する空間を確保するための支持体となる粒子が含まれてもよい。
続いて、塗布層、透明電極層12A,12B、透明支持層13A,13Bを備える積層体に紫外線が照射される。これにより、塗布層が含むモノマーやオリゴマーが重合して高分子ネットワークを形成し、高分子ネットワークが有する空隙に液晶分子が保持された調光層11が形成される。
調光層11、透明電極層12A,12B、透明支持層13A,13Bを備える調光シート用多層体は、例えば、ロール・ツー・ロール方式の利用により大判のシート状に形成される。調光シート用多層体が、調光シート10Nの貼付対象に応じた所望の形状に切り出され、切り出された調光シート用多層体に対して端子部15A,15Bが形成されることによって、調光シート10Nが形成される。
次に、リバースタイプの調光シート10Rの製造方法を説明する。リバースタイプの調光シート10Rの製造工程では、第1透明支持層13A上に形成された第1透明電極層12Aの表面に、第1配向層14Aが形成され、第2透明支持層13B上に形成された第2透明電極層12Bの表面に、第2配向層14Bが形成される。配向層14A,14Bの形成には、例えば、インクジェット法、グラビアコーティング法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、フレキソコーティング法、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法等の公知の塗布方法が用いられる。配向層14A,14Bを垂直配向膜として機能させる処理は、例えば、ラビング処理、偏光照射処理、微細加工処理である。
続いて、調光層11の前駆体である塗布層が、第1配向層14Aと第2配向層14Bとの間に挟まれるように形成される。塗布層の形成方法、および、塗布層の形成のための塗布液の構成は、ノーマルタイプの調光シート10Nを製造する場合と同様である。塗布層が第1配向層14Aと第2配向層14Bとに挟まれるときに、塗布層が含む液晶分子が垂直配向される。
続いて、塗布層、透明電極層12A,12B、透明支持層13A,13Bを備える積層体に紫外線が照射される。これにより、塗布層が含むモノマーやオリゴマーが重合して高分子ネットワークを形成し、高分子ネットワークが有する空隙に液晶分子が保持された調光層11が形成される。
調光層11、透明電極層12A,12B、透明支持層13A,13B、配向層14A,14Bを備える調光シート用多層体は、例えば、ロール・ツー・ロール方式の利用により大判のシート状に形成される。調光シート用多層体が、調光シート10Rの貼付対象に応じた所望の形状に切り出され、切り出された調光シート用多層体に端子部15A,15Bが形成されることによって、調光シート10Rが形成される。
[調光シートの駆動モード]
図3~図5を参照して、調光シート10の駆動モードについて説明する。調光装置は、調光シート10の駆動モードとして、透明モード、不透明モード、および、中間調モードの3つのモードを有している。本実施形態の調光装置の特徴は、中間調モードを有していることであり、本実施形態の調光シート10は、上述した基本的な構造および製造方法に加えて中間調モードを実現させるための特徴を有している。この特徴については後述する。
ノーマルタイプにおいては、透明電極層12A,12Bに駆動電圧が印加されていないとき、すなわち、第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとが等電位であるとき、調光層11が含む液晶分子の長軸方向の向きは不規則になる。そのため、調光層11に入射した光は散乱し、調光シート10は不透明になる。一方、透明電極層12A,12Bに駆動電圧が印加され、第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとの間に電位差が生じているとき、その電位差に応じて液晶分子が配向され、長軸方向が透明電極層12A,12B間の電界方向に沿った向きとなる。その結果、調光層11を光が透過しやすくなる。印加される駆動電圧が所定の範囲内で大きくなるにつれて、調光シート10の透明度は高くなる。
リバースタイプにおいては、透明電極層12A,12Bに駆動電圧が印加されていないとき、配向層14A,14Bによって液晶分子が配向され、液晶分子の長軸方向が配向層14A,14Bの法線方向に沿った向きとなる。その結果、調光シート10は、透明になる。一方、透明電極層12A,12Bに駆動電圧が印加されているとき、第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとの間の電位差に応じて、液晶分子が上記法線方向と異なる方向に向けられ、調光層11を光が透過しにくくなる。印加される駆動電圧が所定の範囲内で大きくなるにつれて、調光シート10の透明度は低くなる。
透明モードは、調光シート10が一様に透明となるモードである。透明モードにおいて、調光シート10の光透過率、すなわち、平行光線透過率は最高値付近であり、調光シート10のヘイズは最低値付近である。すなわち、透明モードは、ノーマルタイプにおいては、高電圧の駆動電圧が印加されている状態であり、リバースタイプにおいては、低電圧の駆動電圧が印加されている、もしくは、駆動電圧が印加されていない状態である。
不透明モードは、調光シート10が一様に不透明となるモードである。不透明モードにおいて、調光シート10の光透過率は最低値付近であり、調光シート10のヘイズは最高値付近である。すなわち、不透明モードは、ノーマルタイプにおいては、低電圧の駆動電圧が印加されている、もしくは、駆動電圧が印加されていない状態であり、リバースタイプにおいては、高電圧の駆動電圧が印加されている状態である。
中間調モードは、調光シート10が、互いに異なる光透過率を有する複数の領域を含み、これらの領域の光透過率の差に起因したパターンを呈するモードである。中間調モードにおいて、調光シート10の光透過率は、透明モードでの光透過率と不透明モードでの光透過率との間の大きさを有する。言い換えれば、中間調モードにおいて、調光シート10のヘイズは、透明モードでのヘイズと不透明モードでのヘイズとの間の大きさを有し、部分的なヘイズの差が生じることにより調光シート10がパターンを呈する。
なお、中間調モードにおいては、調光シート10における光透過率が最も高い領域と最も低い領域との少なくとも一方での光透過率が、透明モードでの光透過率と不透明モードでの光透過率との間の大きさであればよい。ノーマルタイプおよびリバースタイプのいずれにおいても、中間調モードにて透明電極層12A,12Bに印加される駆動電圧の大きさは、透明モードでの駆動電圧と不透明モードでの駆動電圧との間の大きさである。
図3は、透明モードの調光シート10の一例を示し、図4は、中間調モードの調光シート10の一例を示し、図5は、不透明モードの調光シート10の一例を示す。透明モードおよび不透明モードの各々においては、調光シート10はパターンを呈さない。中間調モードにおいて調光シート10が呈するパターンは、特に限定されず、例えば、絵柄、規則的あるいは不規則な模様、図形、文字、記号、および、これらの組み合わせである。図4は、繊維が分散した様子を表す障子調のパターンを例示している。
中間調モードにおいて、調光シート10は、光透過率が高い領域と低い領域との2つの領域から構成されてもよいし、互いに光透過率が異なる3つ以上の領域から構成されてもよい。言い換えれば、調光シート10において、光透過率は二段階に変化していてもよいし、三段階以上に段階的または連続的に変化していてもよい。
調光装置の制御部20は、調光シート10に印加する駆動電圧の大きさ、すなわち交流電圧の実効値を変化させることによって、透明モードと、中間調モードと、不透明モードとの間で駆動モードを変える。これらのモードは瞬間的に切り替えられてもよいし、駆動電圧を漸増あるいは漸減させることによって、調光シート10の光透過率が徐々に変化するように、モードが連続的に遷移されてもよい。また、中間調モードにおいて、駆動電圧の大きさを変えて各領域の光透過率を二段階以上に変化させることにより、中間調モードには、光透過率の差による同一のパターンを呈しつつも、全体的な透明度が異なる複数の状態が含まれてもよい。
上述の光透過率が異なる複数の領域は、駆動電圧と調光層11が含む液晶分子の分極方向との関係がこれらの領域間で異なるように構成されている。液晶分子の分極方向は、調光層11が含む多数の液晶分子における長軸方向の平均の方向である。制御部20は、透明モードおよび不透明モードでは、駆動電圧の大きさを、上記分極方向を上記領域間で等しくする大きさとし、中間調モードでは、上記分極方向を上記領域間で異ならせる大きさとする。その結果、中間調モードでは、上記領域間に光透過率の差が生じ、調光シート10が、光透過率の差に起因したパターンを呈する。
以下、調光シート10に光透過率の差を生じさせる具体的な構成およびその製造方法について、5つの形態を説明する。以下の説明において、各形態の調光シート10a~10eは、上述したノーマルタイプの調光シート10Nもしくはリバースタイプの調光シート10Rと同様の層構成を有し、かつ、中間調モードにて光透過率の差を生じさせるための、形態ごとに異なる特徴を有する。以下の各形態の説明では、こうした特徴について詳述する。
[第1形態]
図6が示すように、第1形態の調光シート10aにおいては、調光層11の厚さが部分的に異なる。そして、中間調モードでは、調光層11の厚さの差に起因して、調光シート10a内で光透過率の差が生じ、パターンが視認される。
例として、調光シート10aが、相対的に調光層11が厚い第1領域R1aと、相対的に調光層11が薄い第2領域R2aとを有する場合について説明する。なお、図6においては、リバースタイプを例示しているが、ノーマルタイプにも第1形態は適用可能である。
図7は、高分子ネットワーク型液晶から構成される調光層11を備えるリバースタイプの調光シート10aについて、第1領域R1aおよび第2領域R2aにおける印加電圧とヘイズとの関係を示すグラフである。印加電圧は、制御部20が端子部15A,15Bに印加する駆動電圧の大きさを示す。
図7が示すように、印加電圧が0V以上第1閾値V1未満である領域では、調光層11が厚い第1領域R1aと調光層11が薄い第2領域R2aとで、ヘイズに差はなく、印加電圧が増減してもヘイズは最小値付近でほぼ変わらない。すなわち、第1領域R1aと第2領域R2aとで、調光層11が含む液晶分子の分極方向は等しい。したがって、0V以上第1閾値V1未満の駆動電圧を印加することで、透明モードが実現される。透明モードでは、第1領域R1aと第2領域R2aとに視認可能な光透過率の差はなく、パターンは視認されない。
印加電圧が第1閾値V1以上第2閾値V2未満である領域では、第1領域R1aと第2領域R2aとで、ヘイズに差が生じる。すなわち、第1領域R1aと第2領域R2aとで、調光層11が含む液晶分子の分極方向は異なる。第1領域R1aと第2領域R2aとのいずれにおいても、印加電圧の上昇に伴って、ヘイズは上昇する。
第1領域R1aと比較して、第2領域R2aの調光層11は薄いため、第2領域R2aでは、調光シート10aを透過する光の拡散が小さくなる。また、第1領域R1aと第2領域R2aとに共通の駆動電圧が印加されていても、第2領域R2aの調光層11にかかる実効電圧は、第1領域R1aよりも大きくなる。リバースタイプにおいては、実効電圧が大きい方が、液晶分子の長軸方向を、配向層14A,14Bの法線方向とは異なる方向へ向ける力が大きい。そのため、共通の駆動電圧の上昇に対して、第1領域R1aよりも第2領域R2aの方がヘイズの上昇が早く起こる。第2領域R2aにて光の拡散が小さくなることと、実効電圧が大きくなることとは、第2領域R2aにおける光透過率およびヘイズの増減に対して相反する作用をもたらすが、実効電圧が大きくなることによる作用の方が大きい。それゆえ、リバースタイプにおいては、第1閾値V1以上第2閾値V2未満の駆動電圧が印加されているとき、第1領域R1aよりも第2領域R2aの方が、光透過率が低くなると共にヘイズが高くなる。これにより、中間調モードが実現され、第1領域R1aと第2領域R2aとの光透過率の差に起因したパターンが視認される。
印加電圧が第2閾値V2以上である領域では、第1領域R1aと第2領域R2aとで、ヘイズに差はなく、印加電圧が増減しても、ヘイズは飽和して最大値付近でほぼ変わらない。すなわち、第1領域R1aと第2領域R2aとで、調光層11が含む液晶分子の分極方向は等しい。したがって、第2閾値V2以上の駆動電圧を印加することで、不透明モードが実現される。不透明モードでは、第1領域R1aと第2領域R2aとに視認可能な光透過率の差はなく、パターンは視認されない。
一方、ノーマルタイプの場合、ヘイズが最大値付近でほぼ変わらない0V以上第1閾値V1未満の駆動電圧を印加することで、不透明モードが実現される。不透明モードでは、第1領域R1aと第2領域R2aとに視認可能な光透過率の差はなく、パターンは視認されない。
印加電圧が第1閾値V1以上第2閾値V2未満である領域では、第1領域R1aと第2領域R2aとで、ヘイズに差が生じる。第1領域R1aと第2領域R2aとのいずれにおいても、印加電圧の上昇に伴って、ヘイズは低下する。ノーマルタイプにおいては、実効電圧が大きい方が、液晶分子の長軸方向を、透明電極層12A,12B間の電界方向、すなわち、調光層11の法線方向に配向させる力が大きい。そのため、共通の駆動電圧の上昇に対して、第1領域R1aよりも第2領域R2aの方がヘイズの低下が早く起こる。したがって、第2領域R2aにて光の拡散が小さくなること、および、実効電圧が大きくなることにより、第1領域R1aよりも第2領域R2aの方が、光透過率が高くなると共にヘイズが低くなる。したがって、第1閾値V1以上第2閾値V2未満の駆動電圧を印加することで、中間調モードが実現され、第1領域R1aと第2領域R2aとの光透過率の差に起因したパターンが視認される。
そして、ヘイズが最小値付近でほぼ変わらない第2閾値V2以上の駆動電圧を印加することで、透明モードが実現される。透明モードでは、第1領域R1aと第2領域R2aとに視認可能な光透過率の差はなく、パターンは視認されない。
なお、第1閾値V1以上第2閾値V2未満であって互いに異なる大きさの駆動電圧を印加することで、光透過率の差による同一のパターンを呈しつつも、全体的な透明度が異なる複数の状態が表現可能である。例えば、図7に示す電圧Vaを印加した場合と、電圧Vaよりも大きい電圧Vbを印加した場合とでは、調光シート10aは、同一のパターンを呈するが、第1領域R1aおよび第2領域R2aの双方について、電圧Vbを印加した場合の方が、ヘイズが高くなる。すなわち、電圧Vbを印加した場合の方が、透明度が低くなる。
第1形態の調光シート10aの製造方法を説明する。第1形態の調光シート10aは、上述の調光シート用多層体を、所望のパターンに対応する凹凸を有する版で押圧することによって、形成される。上記版での押圧によって、調光層11の厚さの差が形成される。具体的には、上記パターンに対応する凹凸を有する第1ロールと、第1ロールと対向して配置され、表面に凹凸を有さない第2ロールとの間に、調光シート用多層体を通し、調光シート用多層体をこれら2つのロールで押圧する。これにより、第1ロールの凹凸が調光シート用多層体に転写される。すなわち、第1ロールの凸部と当接する部分で調光シート用多層体の調光層11が潰れ、第2領域R2aが形成される。
ここで、第1形態の調光シート10aの製造に適した調光シート用多層体の構成について説明する。
図8は、リバースタイプの第1形態の調光シート10aの形成に用いられる調光シート用多層体30を示す。調光シート用多層体30は、調光層11の厚さの差が形成される前の積層体であって、調光層11、透明電極層12A,12B、透明支持層13A,13B、および、配向層14A,14Bを備えている。
透明支持層13A,13Bとして、ポリエチレンテレフタレート等の高分子フィルムが用いられる場合、第1透明支持層13Aおよび第2透明支持層13Bの各々の厚さTsは、通常、50μm以上200μm以下の程度である。また、高分子ネットワーク型液晶から構成される調光層11の厚さTlは、通常、10μm以上15μm以下の程度である。
第1形態の調光シート10aの製造に用いる調光シート用多層体30においては、上記版での押圧によって調光層11の厚さの差が形成されやすいように、換言すれば、押圧力が調光層11に作用しやすいように、上記範囲のなかで薄い透明支持層13A,13Bと、上記範囲のなかで厚い調光層11とが用いられることが好ましい。具体的には、例えば、透明支持層13A,13Bの厚さTsは50μm、調光層11の厚さTlは15μmとされる。薄い透明支持層13A,13Bと厚い調光層11とが用いられることを、これらの層の厚さの関係で表すと、調光層11の厚さTlは、透明支持層13A,13Bの厚さTsの1/3以上であることが好ましい。
なお、上記調光層11と透明支持層13A,13Bとの厚さの関係は、ノーマルタイプの第1形態の調光シート10aの形成に用いられる調光シート用多層体30にも適用される。
以上のように、第1形態では、調光層11の厚さの差によって、駆動電圧と調光層11が含む液晶分子の分極方向との関係が異なる領域、詳細には、駆動電圧を上昇させた場合に光透過率およびヘイズが変化し始める電圧の大きさが異なる領域を生じさせている。調光層11の厚さは、二段階に限らず、三段階以上に変化していてもよい。なお、調光シート10が、高分子ネットワーク型液晶から構成される調光層11を備える場合に限らず、駆動電圧の印加によって調光層11が含む液晶分子の向きを変えることで、光透過率を変える調光シート10であれば、第1形態の適用によって、パターンを呈する調光シート10の実現が可能である。
[第2形態]
図9が示すように、第2形態の調光シート10bは、リバースタイプであって、配向層14A,14Bの厚さが部分的に異なる。そして、中間調モードでは、配向層14A,14Bの厚さの差に起因して、調光シート10b内で光透過率の差が生じ、パターンが視認される。
例として、調光シート10bが、相対的に配向層14A,14Bが厚い第1領域R1bと、相対的に配向層14A,14Bが薄い第2領域R2bとを有する場合について説明する。第2領域R2bにおいては、第1配向層14Aと第2配向層14Bとの少なくとも一方が、第1領域R1bよりも薄い。
配向層14A,14Bが薄いほど、配向層14A,14Bによる液晶分子の規制力が小さくなる。すなわち、第2領域R2bでは、第1領域R1bと比較して、液晶分子の長軸方向を、配向層14A,14Bの法線方向へ沿わせる力が小さい。したがって、共通の駆動電圧の上昇に対して、第1領域R1bよりも第2領域R2bの方がヘイズの上昇が早く起こる。
第1形態と同様、印加電圧を増減してもヘイズが最小値付近でほぼ変わらない低電圧領域で駆動電圧を印加することにより、透明モードが実現される。また、印加電圧を増減してもヘイズが飽和して最大値付近でほぼ変わらない高電圧領域で駆動電圧を印加することにより、不透明モードが実現される。透明モードおよび不透明モードでは、第1領域R1bと第2領域R2bとに視認可能な光透過率の差はなく、パターンは視認されない。
一方、低電圧領域と高電圧領域との間の領域で駆動電圧を印加することにより、第1領域R1bと第2領域R2bとで、ヘイズに差が生じ、中間調モードが実現される。すなわち、上述のように、配向層14A,14Bの厚さの差に起因して、印加電圧の上昇に対して第1領域R1bよりも第2領域R2bの方がヘイズの上昇が早く起こることから、第1領域R1bよりも第2領域R2bの方が、光透過率が低くなると共にヘイズが高くなる。これにより、第1領域R1bと第2領域R2bとの光透過率の差に起因したパターンが視認される。
第2形態の調光シート10bは、第1形態と同様、上述の調光シート用多層体を、所望のパターンに対応する凹凸を有する版で押圧することによって、形成される。
第2形態の調光シート10bの製造に用いる調光シート用多層体においては、上記版での押圧によって配向層14A,14Bの厚さの差が形成されやすいように、換言すれば、押圧力が配向層14A,14Bに作用しやすいように、厚さが例えば50μm程度である薄い透明支持層13A,13Bが用いられることが好ましい。
なお、押圧によっていずれの層に厚さの差が形成されるかは、各層の材料や厚さの調整の他、調光シート用多層体の端部の封止によって、各層の内部の圧力を調整すること等によっても制御可能である。
以上のように、第2形態では、配向層14A,14Bの厚さの差によって、駆動電圧と調光層11が含む液晶分子の分極方向との関係が異なる領域、詳細には、駆動電圧を上昇させた場合に光透過率およびヘイズが変化し始める電圧の大きさが異なる領域を生じさせている。第1配向層14Aおよび第2配向層14Bの各々において、その厚さは、二段階に限らず、三段階以上に変化していてもよい。
[第3形態]
図10が示すように、第3形態の調光シート10cにおいては、透明電極層12A,12Bの厚さが部分的に異なる。そして、中間調モードでは、透明電極層12A,12Bの厚さの差に起因して、調光シート10c内で光透過率の差が生じ、パターンが視認される。
例として、調光シート10cが、相対的に透明電極層12A,12Bが厚い第1領域R1cと、相対的に透明電極層12A,12Bが薄い第2領域R2cとを有する場合について説明する。第2領域R2cにおいては、第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとの少なくとも一方が、第1領域R1cよりも薄い。なお、図10においては、リバースタイプを例示しているが、ノーマルタイプにも第3形態は適用可能である。
透明電極層12A,12Bが薄いほど、透明電極層12A,12Bの抵抗が増加することに起因して、調光層11にかかる実効電圧は小さくなる。したがって、リバースタイプの場合、第2領域R2cでは、第1領域R1cと比較して、液晶分子の長軸方向を、配向層14A,14Bの法線方向とは異なる方向へ向ける力が小さい。そのため、共通の駆動電圧の上昇に対して、第1領域R1cよりも第2領域R2cの方がヘイズの上昇が遅れて生じる。
リバースタイプの場合、低電圧領域で駆動電圧を印加することにより、透明モードが実現され、高電圧領域で駆動電圧を印加することにより、不透明モードが実現される。透明モードおよび不透明モードでは、第1領域R1cと第2領域R2cとに視認可能な光透過率の差はなく、パターンは視認されない。
そして、低電圧領域と高電圧領域との間の領域で駆動電圧を印加することにより、第1領域R1cと第2領域R2cとで、ヘイズに差が生じ、中間調モードが実現される。すなわち、上述のように、透明電極層12A,12Bの厚さの差に起因して、印加電圧の上昇に対して第1領域R1cよりも第2領域R2cの方がヘイズの上昇が遅いことから、第1領域R1cよりも第2領域R2cの方が、光透過率が高くなると共にヘイズが低くなる。これにより、第1領域R1cと第2領域R2cとの光透過率の差に起因したパターンが視認される。
これに対し、ノーマルタイプの場合、第2領域R2cでは、第1領域R1cと比較して調光層11にかかる実効電圧が小さくなるため、液晶分子の長軸方向を、透明電極層12A,12B間の電界方向、すなわち、調光層11の法線方向に沿わせる力が小さくなる。したがって、共通の駆動電圧の上昇に対して、第1領域R1cよりも第2領域R2cの方がヘイズの低下が遅れて起こる。
ノーマルタイプの場合、低電圧領域で駆動電圧を印加することにより、不透明モードが実現され、高電圧領域で駆動電圧を印加することにより、透明モードが実現される。透明モードおよび不透明モードでは、第1領域R1cと第2領域R2cとに視認可能な光透過率の差はなく、パターンは視認されない。
そして、低電圧領域と高電圧領域との間の領域で駆動電圧を印加することにより、第1領域R1cと第2領域R2cとで、ヘイズに差が生じ、中間調モードが実現される。すなわち、上述のように、透明電極層12A,12Bの厚さの差に起因して、印加電圧の上昇に対して第1領域R1cよりも第2領域R2cの方がヘイズの低下が遅いことから、第1領域R1cよりも第2領域R2cの方が、光透過率が低くなると共にヘイズが高くなる。これにより、第1領域R1cと第2領域R2cとの光透過率の差に起因したパターンが視認される。
第3形態の調光シート10cは、第1形態と同様、調光シート用多層体を、所望のパターンに対応する凹凸を有する版で押圧することによって、形成される。
第3形態の調光シート10cの製造に用いる調光シート用多層体においては、上記版での押圧によって透明電極層12A,12Bの厚さの差が形成されやすいように、換言すれば、押圧力が透明電極層12A,12Bに作用しやすいように、厚さが例えば50μm程度である薄い透明支持層13A,13Bが用いられることが好ましい。さらに、上記版での押圧によって透明電極層12A,12Bが変形しやすいように、透明電極層12A,12Bの柔軟性が高いことが好ましい。具体的には、透明電極層12A,12Bは、PEDOT等の有機系材料から構成されることが好ましい。
以上のように、第3形態では、透明電極層12A,12Bの厚さの差によって、駆動電圧と調光層11が含む液晶分子の分極方向との関係が異なる領域、詳細には、駆動電圧を上昇させた場合に光透過率およびヘイズが変化し始める電圧の大きさが異なる領域を生じさせている。第1透明電極層12Aおよび第2透明電極層12Bの各々において、その厚さは、二段階に限らず、三段階以上に変化していてもよい。
[第4形態]
図11が示すように、第4形態の調光シート10dは、高分子ネットワーク型液晶から構成される調光層11を備え、調光層11において、高分子ネットワークを構成するポリマーの密度が部分的に異なる。そして、中間調モードにおいては、ポリマーの密度の差に起因して、調光シート10d内で光透過率の差が生じ、パターンが視認される。
例として、調光シート10dが、相対的にポリマーの密度が高い第1領域R1dと、相対的にポリマーの密度が低い第2領域R2dとを有する場合について説明する。なお、図10においては、リバースタイプを例示しているが、ノーマルタイプにも第4形態は適用可能である。
高分子ネットワークを構成するポリマーは、液晶分子の配向について規制力を有さない場合と、当該配向について規制力を有する場合とがあり得る。上記規制力を有さない場合、ポリマーは、方向性を有さずに無秩序な網目状のネットワークを形成している。上記規制力を有する場合、ポリマーは、特定の方向に沿ってポリマー鎖が延びるようにネットワークを形成している。こうした規制力は、ポリマーにおける極性の有無によって制御可能である。
まず、ポリマーが規制力を有さない場合について説明する。この場合、ポリマーの密度が低いほど、高分子ネットワークの網目が大きくなるため、空隙に保持されている液晶分子が方向を変えやすくなる。したがって、共通の駆動電圧の上昇に対して、第1領域R1dよりも第2領域R2dの方がヘイズの変化が早く起こる。
リバースタイプの場合、低電圧領域で駆動電圧を印加することにより、透明モードが実現され、高電圧領域で駆動電圧を印加することにより、不透明モードが実現される。透明モードおよび不透明モードでは、第1領域R1dと第2領域R2dとに視認可能な光透過率の差はなく、パターンは視認されない。
そして、低電圧領域と高電圧領域との間の領域で駆動電圧を印加することにより、第1領域R1dと第2領域R2dとで、ヘイズに差が生じ、中間調モードが実現される。すなわち、上述のように、調光層11におけるポリマーの密度の差に起因して、印加電圧の上昇に対して第1領域R1dよりも第2領域R2dの方がヘイズの上昇が早く起こることから、第1領域R1dよりも第2領域R2dの方が、光透過率が低くなると共にヘイズが高くなる。これにより、第1領域R1dと第2領域R2dとの光透過率の差に起因したパターンが視認される。
ノーマルタイプの場合、低電圧領域で駆動電圧を印加することにより、不透明モードが実現され、高電圧領域で駆動電圧を印加することにより、透明モードが実現される。透明モードおよび不透明モードでは、第1領域R1dと第2領域R2dとに視認可能な光透過率の差はなく、パターンは視認されない。
そして、低電圧領域と高電圧領域との間の領域で駆動電圧を印加することにより、第1領域R1dと第2領域R2dとで、ヘイズに差が生じ、中間調モードが実現される。すなわち、上述のように、調光層11におけるポリマーの密度の差に起因して、印加電圧の上昇に対して第1領域R1dよりも第2領域R2dの方がヘイズの低下が早く起こることから、第1領域R1dよりも第2領域R2dの方が、光透過率が高くなると共にヘイズが低くなる。これにより、第1領域R1dと第2領域R2dとの光透過率の差に起因したパターンが視認される。
次に、ポリマーが規制力を有する場合について説明する。ポリマーは、印加電圧の上昇と共に液晶分子の長軸方向が向けられる方向に、規制力を有する。すなわち、リバースタイプの場合は、配向層14A,14Bの法線方向と異なる方向、例えば、当該法線方向と直交する方向にポリマー鎖が延びるように、ポリマーが設計される。また、ノーマルタイプの場合は、透明電極層12A,12B間の電界方向、すなわち、調光層11の法線方向にポリマー鎖が延びるように、ポリマーが設計される。これらの場合、ポリマーの密度が低いほど、ポリマーの規制力が弱くなり、規制力の働く方向に液晶分子が向きを変えにくくなる。したがって、共通の駆動電圧の上昇に対して、第1領域R1dよりも第2領域R2dの方がヘイズの変化が遅く生じる。
リバースタイプの場合、上述したポリマーが規制力を有さない場合と同様に、低電圧領域で駆動電圧を印加したときは透明モードとなり、高電圧領域で駆動電圧を印加したときは不透明モードとなる。
そして、低電圧領域と高電圧領域との間の領域で駆動電圧を印加することにより、第1領域R1dと第2領域R2dとで、ヘイズに差が生じ、中間調モードが実現される。すなわち、調光層11におけるポリマーの密度の差に起因して、印加電圧の上昇に対して第1領域R1dよりも第2領域R2dの方がヘイズの上昇が遅れて生じることから、第1領域R1dよりも第2領域R2dの方が、光透過率が高くなると共にヘイズが低くなる。これにより、第1領域R1dと第2領域R2dとの光透過率の差に起因したパターンが視認される。
ノーマルタイプの場合、上述したポリマーが規制力を有さない場合と同様に、低電圧領域で駆動電圧を印加したときは不透明モードとなり、高電圧領域で駆動電圧を印加したときは透明モードとなる。
そして、低電圧領域と高電圧領域との間の領域で駆動電圧を印加することにより、第1領域R1dと第2領域R2dとで、ヘイズに差が生じ、中間調モードが実現される。すなわち、調光層11におけるポリマーの密度の差に起因して、印加電圧の上昇に対して第1領域R1dよりも第2領域R2dの方がヘイズの低下が遅れて生じることから、第1領域R1dよりも第2領域R2dの方が、光透過率が低くなると共にヘイズが高くなる。これにより、第1領域R1dと第2領域R2dとの光透過率の差に起因したパターンが視認される。
第4形態の調光シート10dの製造方法を説明する。第4形態の調光シート10dは、上述の調光シート10の製造方法で説明した塗布層に対する紫外線の照射工程において、単位面積当たりに照射される紫外線の積算光量を部分的に異ならせることにより形成される。積算光量が相対的に多い部分では、重合が進み、ポリマーの密度が相対的に大きくなる。これにより、ポリマーの密度が部分的に異なる調光層11が形成され、その結果、第1領域R1dと第2領域R2dとを有する調光シート10dが形成される。第1領域R1dと第2領域R2dとでは、モノマーに対するポリマーの割合が異なっている。
以上のように、第4形態では、調光層11におけるポリマーの密度の差によって、駆動電圧と調光層11が含む液晶分子の分極方向との関係が異なる領域、詳細には、駆動電圧を上昇させた場合に光透過率およびヘイズが変化し始める電圧の大きさが異なる領域を生じさせている。調光層11におけるポリマーの密度は、多段階に変化していてもよい。なお、調光層11が高分子ネットワーク型液晶から構成される場合に限らず、ポリマーの間に液晶分子を保持する調光層11を備える調光シート10であれば、第4形態の適用によって、パターンを呈する調光シート10の実現が可能である。
[第5形態]
図12が示すように、第5形態の調光シート10eは、リバースタイプであって、配向層14A,14Bの硬化状態が部分的に異なる。そして、中間調モードにおいては、配向層14A,14Bの硬化状態の差に起因して、調光シート10e内で光透過率の差が生じ、パターンが視認される。
例として、調光シート10eが、相対的に配向層14A,14Bの硬化が進行していない第1領域R1eと、相対的に配向層14A,14Bの硬化が進行している第2領域R2eとを有する場合について説明する。第2領域R2eにおいては、第1配向層14Aと第2配向層14Bとの少なくとも一方が、第1領域R1eよりも硬い。
配向層14A,14Bが乾燥して硬化が進行しているほど、すなわち、配向層14A,14Bが硬いほど、配向層14A,14Bを構成する分子の密度が大きくなり、配向層14A,14Bによる液晶分子の規制力が大きくなる。すなわち、第2領域R2eでは、第1領域R1eと比較して、液晶分子の長軸方向を、配向層14A,14Bの法線方向へ沿わせる力が大きい。したがって、共通の駆動電圧の上昇に対して、第1領域R1eよりも第2領域R2eの方がヘイズの上昇が遅れて生じる。
第5形態においても、低電圧領域で駆動電圧を印加することにより、透明モードが実現され、高電圧領域で駆動電圧を印加することにより、不透明モードが実現される。透明モードおよび不透明モードでは、第1領域R1eと第2領域R2eとに視認可能な光透過率の差はなく、パターンは視認されない。
そして、低電圧領域と高電圧領域との間の領域で駆動電圧を印加することにより、第1領域R1eと第2領域R2eとで、ヘイズに差が生じ、中間調モードが実現される。すなわち、配向層14A,14Bの硬化状態の差に起因して、印加電圧の上昇に対して第1領域R1eよりも第2領域R2eの方がヘイズの上昇が遅いことから、第1領域R1eよりも第2領域R2eの方が、光透過率が高くなると共にヘイズが低くなる。これにより、第1領域R1eと第2領域R2eとの光透過率の差に起因したパターンが視認される。
第5形態の調光シート10eの製造方法を説明する。第5形態の調光シート10eは、上述の調光シート10の製造方法において、塗膜の乾燥により配向層14A,14Bを形成する際に、単位面積当たりに供給される温風の熱量を部分的に異ならせることにより形成される。熱量が相対的に多い部分では、乾燥による硬化がより進行する。これにより、硬化状態が部分的に異なる配向層14A,14Bが形成され、その結果、第1領域R1eと第2領域R2eとを有する調光シート10eが形成される。
以上のように、第5形態では、配向層14A,14Bにおける硬化状態の差によって、駆動電圧と調光層11が含む液晶分子の分極方向との関係が異なる領域、詳細には、駆動電圧を上昇させた場合に光透過率およびヘイズが変化し始める電圧の大きさが異なる領域を生じさせている。第1配向層14Aおよび第2配向層14Bの各々において、その硬化状態は、多段階に変化していてもよい。
[その他の形態]
上述した第1~第5形態は、互いに組み合わされてもよい。例えば、第1形態と第3形態とが組み合わされた場合、調光層11の厚さの違いおよび透明電極層12A,12Bの厚さの違いに起因して、駆動電圧と液晶分子の分極方向との関係が異なる領域が形成される。これにより、調光シート10内で光透過率の差が生じ、パターンが視認される。
また、調光装置が、透明電極層12A,12Bに印加する駆動電圧の大きさと調光層11の液晶分子の分極方向との関係の違いによって、調光シート10内で光透過率に差を生じさせ、これによってパターンを呈する構成であれば、調光装置の構成は、第1~第5形態とは異なっていてもよい。さらに、上記構成の調光シート10が形成可能であれば、調光シート10は、上記各形態で例示した製造方法とは異なる方法によって製造されてもよい。
例えば、配向層を用いて液晶分子を配向させることにより、ノーマルタイプ、すなわち、駆動電圧の非印加時に不透明であって駆動電圧の上昇に印加に伴い透明度が高くなるタイプの調光シートが実現されてもよい。
また、上述した透明モード、不透明モード、中間調モードのうち、少なくとも中間調モードが実施される調光装置であれば、調光シートの意匠性を高めることは可能である。また、調光シートの駆動の形態は、最も透明度が低い状態において調光シートに一切模様が表れない形態に限定されない。最も透明度が低い状態において、間仕切りとしての機能を最大限発揮しつつもパターンが残存して認識できる意匠性に富んだ形態も採用しうる。
[適用例]
上述した調光シート10を、窓ガラス等に貼り付けることによって2つの空間を仕切る仕切り部材に利用する場合に、適用可能な構成について説明する。
図13が示すように、調光シート10は、その表面に、調光シート10の表面の領域を区画する区画部材40を備えていてもよい。区画部材40は、例えば、障子枠のように、縦方向と横方向とに延びる格子状に配置され、調光シート10の表面を複数の矩形領域に区画する。区画部材40は、例えば樹脂等からなる化粧テープから構成され、調光シート10の表面に貼り付けられている。
調光シート10が障子調のパターンを呈し、区画部材40が障子枠を構成するように配置される形態であれば、調光シート10を障子の代替として用いることができる。透明モードと中間調モードとの切り替えによって、障子が開けられている状態と障子が閉められている状態との各々の代替となる状態が実現できる。
住宅等において、窓がある箇所に本物の障子を配置するためには、窓のサッシに隣接して障子用の敷居および鴨居を配置したり、縁側を設けたりする必要がある。それゆえ、障子の配置のための工事が大掛かりとなり、また、現代の住宅においては障子の配置のためのスペースの確保が容易でない場合も多い。一方で、カーテンは、容易に配置が可能ではあるが、和風の部屋の雰囲気には合いにくい。
これに対し、調光シート10は、窓ガラスへの貼り付けによって利用可能であるため、障子と比較して、配置に要する負荷およびスペースが小さい。したがって、障子の代替として調光シート10を用いることで、障子の配置が困難である箇所にも、障子のように、プライバシーの保護を図りつつ光を取り入れる調光効果と和室に適した装飾効果とを有する仕切り部材を配置することが可能となる。
また、障子紙は破れやすく、劣化も生じやすい。したがって、障子においては、メンテナンスとして障子紙の貼り替えが必要になるが、調光シート10を障子の代替として用いれば、こうしたメンテナンスに要する負荷の軽減も可能である。
また、区画部材40によって区画された複数の領域のうちの1以上の領域では、他の領域とは独立して駆動モードの制御が可能であってもよい。独立して駆動モードの制御が可能である対象領域においては、第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとの少なくとも一方が、他の領域と絶縁されており、他の領域とは別に駆動電圧が印加される。対象領域に駆動電圧を印加するための端子部や配線は、区画部材40と重なる部分に配置されることが好ましい。寸法上問題がなければ、区画部材40に相当する框や組子などに開口空間を設け当該空間に上記配線等を配設することが可能である。これにより、調光シート10の表面と対向する位置から見て、上記端子部や配線が視認されることが抑えられるため、調光シート10の意匠性がより高められる。
例えば、図14が示すように、下部の対象領域C1が、他の領域C2とは独立して駆動モードの制御が可能とされる。この場合、例えば、対象領域C1を透明モードとし、他の領域C2を中間調モードとすることで、雪見障子の代替として調光シート10を利用することができる。このように、区画部材40によって区画された1以上の領域において、独立した駆動モードの制御が可能であれば、各領域の駆動モードの選択によって、多様な装飾効果が得られる。また、各領域の駆動モードの選択によって、調光シート10が区切る一方の空間から他方の空間へ取り入れられる光量を調整することも可能である。
なお、区画部材40に代えて、調光シート10が呈するパターンに、障子枠に模した部分が含まれてもよい。言い換えれば、調光シート10は、光透過率の差によって、障子枠に模した格子状のパターンを含むパターンを呈してもよい。
また、調光シート10が貼り付けられる面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。そして、調光シート10が貼り付けられる対象は、窓ガラスやガラス壁等の建材に限らず、自動車の窓ガラス等の車両用部材であってもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)調光シート10が、透明電極層12A,12Bに印加される駆動電圧の大きさと調光層11が含む液晶分子の分極方向との関係が異なる領域を有する。そして、これらの領域間で上記分極方向を異ならせる大きさの駆動電圧が印加されることによって、調光シート10に光透過率の差が生じる。これによって、調光シート10が、光透過率の差に起因したパターンを呈するため、調光シート10の意匠性が高められる。
(2)調光層11の厚さの差に起因して上記関係の違いが生じる形態、透明電極層12A,12Bの厚さの差に起因して上記関係の違いが生じる形態、配向層14A,14Bの厚さの差に起因して上記関係の違いが生じる形態の各々であれば、光透過率の差に起因したパターンを呈する調光シート10が好適に実現される。また、こうした調光シート10は、調光シート用多層体に対する型を用いた押圧によって形成可能である。すなわち、各層の積層後に、所望のパターンを呈するように、調光シート10を形成できる。したがって、種々のパターンに共通する部材として調光シート用多層体の形成および保管が可能であり、また、調光シート用多層体を、パターンを呈さない調光シートとして出荷することもできる。したがって、多様なパターンの調光シート10を製造する場合でも、その在庫の圧縮が可能であり、製造コストの削減も可能である。
(3)調光層11におけるポリマーの密度の差に起因して上記関係の違いが生じる形態、配向層14A,14Bにおける硬化状態の差に起因して上記関係の違いが生じる形態の各々であれば、光透過率の差に起因したパターンを呈する調光シート10が好適に実現される。
(4)制御部20による駆動電圧の大きさの制御によって、調光シート10がパターンを呈する中間調モードと、調光シート10が透明であってパターンを呈さない透明モードとの間で駆動モードが変えられる。また、制御部20による駆動電圧の大きさの制御によって、上記中間調モードと、調光シート10が不透明であってパターンを呈さない不透明モードとの間で駆動モードが変えられる。これらの構成によれば、駆動モードの変更によって、調光シート10が面する空間に対する装飾を変更することが可能であり、調光シート10による多様な装飾効果が得られる。また、駆動モードの変更によって、調光シート10が区切る一方の空間から他方の空間へ取り入れられる光量を調整することも可能である。そして、透明モードと中間調モードと不透明モードとの間で駆動モードが変えられる構成であれば、装飾効果と調光効果とのさらなる多様化が可能である。
[付記]
上記課題を解決するための手段には、上記実施形態から導き出される技術的思想として以下の付記が含まれる。
液晶分子を含む調光層と、
前記調光層を挟む一対の透明電極層と、
前記調光層および前記一対の透明電極層を挟む一対の透明支持層と、
を備える調光シート用多層体であって、
前記調光層の厚さは、前記透明支持層の厚さの1/3以上であり、
前記調光シート用多層体は、当該多層体に対する押圧によって前記調光層の厚さが互いに異なる複数の領域を有する調光シートの形成に用いられる
調光シート用多層体。
上記調光シート用多層体によれば、一般的な調光層と透明支持層との厚さの関係よりも、薄い透明支持層と厚い調光層とが用いられているため、押圧によって調光層の厚さの差が形成されやすい。したがって、こうした調光シート用多層体を用いて調光シートを形成することによって、調光層の厚さの差に起因して光透過率の差が生じることによりパターンを呈する調光シートが製造される。それゆえ、意匠性の高い調光シートを形成することができる。