JP7274171B2 - 希土類元素の吸着剤、及び希土類元素の分離方法 - Google Patents
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Description
上記に鑑み、本発明は、希土類元素の相互分離を小規模、低コストで実現できる新規な希土類元素の吸着剤を提供することを課題とする。さらに、希土類元素の吸着剤を用いる希土類元素の相互分離方法を提供することを課題とする。
<1> 希土類元素を含む溶液と接触して希土類元素を吸着する吸着剤であって、
基材とフェナントロリン骨格を含み、
前記基材にフェナントロリン骨格がアミド結合を介して導入されていることを特徴とする希土類元素の吸着剤。
<2> 下記式(1)で表される、<1>に記載の希土類元素の吸着剤。
<3> 下記式(2)で表される、<2>に記載の希土類元素の吸着剤。
<5> 前記R1が炭素数1~10のアルキレン基である、<3>又は<4>に記載の希土類元素の吸着剤。
<6> 前記基材が、シリカである、<1>~<5>の何れかに記載の希土類元素の吸着剤。
<7> <1>~<6>の何れかに記載の希土類元素の吸着剤に希土類元素を含む溶液を接触させて、希土類元素を前記希土類元素の吸着剤に吸着させる吸着工程、を含む希土類元素の分離方法。
<8> 前記吸着工程において、アミン化合物を添加する、<7>に記載の希土類元素の分離方法。
<9> 前記吸着工程において、前記希土類元素を含む溶液がpH0以上5.5以下であ
る、<7>又は<8>に記載の希土類元素の分離方法。
<10> 前記希土類元素を含む溶液が2種以上の希土類元素を含み、前記2種以上の希土類元素を相互に分離する方法である、<7>~<9>の何れかに記載の希土類元素の分離方法。
本発明の一実施形態は、希土類元素を含む溶液と接触して希土類元素を吸着する吸着剤であって、基材とフェナントロリン骨格を含み、前記基材にフェナントロリン骨格がアミド結合を介して導入(固定)されていることを特徴とする。
本実施形態において、基材は、機械的強度、耐酸性、水溶液への不溶性を備えれば、材質、形状は特に限定されない。吸着剤設計において、配位子の導入、すなわち固定化は、物理的な固定と化学的な固定に大別できる。本実施形態では実用の観点から、繰り返しの利用が期待できる化学的な固定化方法を採用した。以下、配位子を固定化する担体となる基材について詳細に説明する。
基材の材質としては、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、キトサンなどの第一級アミン又は/及び第二級アミンを有するポリマーのアミンの残基が挙げられる。また、前記基材がポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンを含む態様も好ましい。また、汎用性の観点から、前記基材がシリカゲルを含む態様も好ましい。
基材の形状は、具体的には粒子状、板状、棒状、管状、繊維状、膜状等が挙げられる。取扱い性、分離性能の観点から、球状粒子が好ましい。
本実施形態の希土類元素の吸着剤としては、合成容易性の観点から、式(1)で表される吸着材が好ましい。
Rは水素、置換若しくは無置換の炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基を表す。
無置換の1価の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、2-エチルヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、2-メチルアリル基、1-ペプチニル基、1-ヘ
キセニル基、1-ヘプテニル基、1-オクテニル基、2-メチル-1-プロペニル基等のアルケニル基;プロパルギル基等のアルキニル基;等が挙げられる。
炭素数6~12の無置換の1価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
なお、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基が置換基としてアルキル基又はシクロアルキル基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
R1が2価の脂肪族炭化水素基である場合、炭素数は、2~15であることが好ましく、2~10であることがより好ましく2~8であることがさらに好ましい。また、前記2価の脂肪族炭化水素基は、鎖状であってもよく、環状であってもよい。また、鎖状である場合、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。前記2価の脂肪族炭化水素基として具体的には、例えば、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基等の直鎖状アルキレン基;2-メチルプロピレン基、2-メチルへキシレン基、テトラメチルエチレン基等の分岐鎖状アルキレン基;シクロプロピレン基、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、シクロペプチレン、シクロオクチレン、シクロノニレン、シクロデシレン等の環状アルキレン(シクロアルキレン)基等が挙げられる。中でも、R1としては、炭素数2~10の直鎖状アルキレン基であることが好ましく、炭素数2~8の直鎖状アルキレン基であることがより好ましく、炭素数3~8の直鎖状アルキレン基であることがさらに好ましい。
希土類元素の吸着剤の製造方法としては、基材にフェナントロリン骨格がアミド結合を介して導入されればよく、従来公知の有機合成の手法を用いて製造することができる。以下、基材としてシリカゲルを用いる場合の、吸着剤の製造方法を説明する。
が挙げられる。
上記の希土類元素の吸着剤に希土類元素を含む溶液を接触させて、希土類元素を前記希土類元素の吸着剤に吸着させる吸着工程、を含む希土類元素の分離方法も本発明の一実施形態である。
本発明の一実施形態においては、吸着工程において、添加剤を加えることにより、希土類元素の吸着挙動を制御することが可能である。添加剤は、希土類元素とフェナントロリンアミドとの錯体を識別して、当該錯体と相互作用する化合物であれば特に限定されないが、隣接希土類元素の吸着率の差が大きくできることから、アミン化合物が好ましく挙げ
られる。アミン化合物としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、1-プロピルアミン、2-プロピルアミン、1-ブチルアミン、2-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、アリルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,2-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,3-ブタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、ビス(3-プロピルアミノ)アミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、ピリジン、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、4-ジメチルアミノピリジン、2-メチルピラジン、ビピリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、アニリン等の水溶性アミンが好ましく、アンモニア、1-プロピルアミン、ビス(3-プロピルアミノ)アミンがより好ましい。一方、吸着率が低下するような添加剤は、マスキング剤として作用する。このように、添加剤による協同効果発現により、希土類元素の相互分離性向上が期待できる。
本工程を実施する温度は、通常5℃以上80℃以下であり、10℃以上70℃以下が好ましい。
吸着工程のpHは特に限定されないが、分離効率の観点から、pH0以上5.5以下であることが好ましい。
本発明の一実施形態としては、希土類元素を含む溶液が2種以上の希土類元素を含み、前記2種以上の希土類元素を相互に分離する方法が挙げられる。本実施形態によると、吸着剤のアミド位の窒素の置換基や、吸着工程の条件により、分離挙動を制御することができ、各種の希土類元素を効率よく分離することが可能である。
本実施形態において、吸着工程で得られた希土類元素の吸着剤に吸着した希土類元素は、酸によって脱離させることができる。コストの観点から塩酸、硝酸、硫酸が好ましく、より好ましくは塩酸である。この場合、酸濃度は好ましくは0.001M以上2M以下、より好ましくは0.01M以上1M以下である。
(吸着剤1~5の作製)
2-carboxy-1,10-phenanthroline塩酸塩に塩化チオニル(20.0eq)を加え、85°Cで4.5時間反応させ、その後、過剰の塩化チオニルを減圧留去し、フェナントロリン酸クロリド体を得た。作製したフェナントロリン酸クロリド体(2.9eq)をジクロロメタン(25mL/g)に加え,真空乾燥させたアミノシリカゲルおよびトリエチルアミン(4.8eq)を加え、室温で反応させた。一昼夜反応させた後、メタノールでクエンチし、反応物をろ別し、メタノール、水、アセトン、ク
ロロホルムで順次洗浄し、40°Cで減圧真空乾燥を行ない、吸着剤1~5を得た。吸着剤1~5の修飾率を表1に示す。なお、修飾率換算は回収した吸着剤量と仕込みアミノシリカゲル量の差から概算した。
プロメチウムを除く14種類のランタノイドイオン(ランタン,セリウム,プラセオジム,ネオジム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ジスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム)各0.1mM、初期pH3.0、4.0、5.4にそれぞれ調整した吸着試験水溶液5mLに作製した吸着剤1~5を100mg加え、振とうしながら25℃で吸着試験を行なった。3日後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中の金属イオン濃度を測定し、マスバランスから金属イオンの吸着率を算出した。結果を図1~5に示す。
図1~5に示されるように、フェナントロリンアミドのアミド位の窒素の側鎖の違いにより希土類元素の吸着量に大きな違いが発現することが確認された。吸着の傾向としては
、軽希土類元素において隣接した希土類元素間で吸着率に差が確認できた。さらに、フェニル基を有する吸着剤5において、従来の吸着剤ではあまり見られない傾向、すなわち一連の希土類元素吸着プロファイルにおいてユウロピウム、ガドリニウム付近に吸着率の最大値が見られた。このように、アミド位の窒素への官能基置換により吸着挙動を制御できる可能性を見出した。
プロメチウムを除く14種類のランタノイドイオン(ランタン,セリウム,プラセオジム,ネオジム,サマリウム,ユウロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ジスプロシウム,ホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム)各0.1mM、初期pH3.0、4.0にそれぞれ調整した吸着試験水溶液5mLに作製した吸着剤6を100mg加え、振とうしながら25℃で吸着試験を行なった。3日後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中の金属イオン濃度を測定し、マスバランスから金属イオンの吸着率を算出した。結果を図6に示す。
図6より、吸着剤5の試験結果と比較し、吸着量が飛躍的に増加したことがわかる。これは修飾率が19%から30%に上昇し、導入されたフェナントロリンアミド基が1.5倍になったことに起因していると考えられる。一方、吸着剤5の時に確認された特異的なプロファイルが見られなくなった。吸着剤5の系では、シリカゲル上に未反応のアミノ基が多く存在し、希土類元素吸着に関与していることが推定される。このことから、アミンを吸着剤6と共存させることで、協同効果が発現することが期待できる。
協同効果現象発現によりさらなる相互分離効果を得るため、カルボン酸系、アミン系配位子を中心に検討を行った。
酢酸(0.5M)、イタコン酸(10mM)、アンモニア(10mM)、プロピルアミン(10mM)もしくはビス(3-プロピルアミノ)アミン(10mM)にプラセオジム、ネオジムおよびサマリウムがそれぞれ1mMとなるよう調製し、初期pH3.0、4.0にそれぞれ調整した水溶液を吸着試験溶液とした。吸着試験溶液5mLに吸着剤6を100mg加え、振とうしながら25°Cで吸着試験を行なった。3日後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中の金属イオン濃度を測定し、マスバランスから各金属イオンの吸着率を算出した。結果を図7に示す。なお、図中のpHは、吸着後の平衡pH(pHeq)である。
カルボン酸系化合物を添加したところ、希土類元素の吸着挙動に影響は見られなかった。一方で、アミン化合物を添加すると希土類元素の吸着率が変化し,隣接希土類元素の吸着率の差が大きくなることが明らかとなった。この協同効果発現により、希土類元素の相互分離性向上が期待できる。
Claims (8)
- 前記R1が炭素数2~10の直鎖のアルキレン基である、請求項2に記載の希土類元素の吸着剤。
- 前記基材が、シリカである、請求項1~3の何れか1項に記載の希土類元素の吸着剤。
- 請求項1~4の何れか1項に記載の希土類元素の吸着剤に希土類元素を含む溶液を接触させて、希土類元素を前記希土類元素の吸着剤に吸着させる吸着工程、を含む希土類元素の分離方法。
- 前記吸着工程において、アミン化合物を添加する、請求項5に記載の希土類元素の分離方法。
- 前記吸着工程において、前記希土類元素を含む溶液がpH0以上5.5以下である、請求項5又は6に記載の希土類元素の分離方法。
- 前記希土類元素を含む溶液が2種以上の希土類元素を含み、前記2種以上の希土類元素を相互に分離する方法である、請求項5~7の何れか1項に記載の希土類元素の分離方法。
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