以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による運行管理システム10の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す運行管理システム10は、運転指令員400が行う車両の運行管理を支援するシステムである。運行乱れが発生した場合に列車運行の順序などの列車の運転計画を変更する運転整理においては、実際に何分くらい遅延が発生しているかという遅延状況を、運転指令員400が把握した上で、運転整理を行う。運転整理では、遅延の現状把握とともに、運転整理を実施した時点以降にどのような状況が発生するかなどの、運転整理の方針に基づき運転整理を行うことが重要である。例えば、平日に運転整理を実施する場合には、旅客が多いことから、できるだけ運休は避ける、休日に運転整理を実施する場合には、各駅停車の旅客が少ないことから、各駅停車の列車を運休させることで特急のような優等列車を確実に運行させるなど、運転指令員400は状況に応じた方針をとる必要がある。
運行管理システム10は、運転指令員支援部100と、運転整理支援処理部200と、運行管理装置300とを備える。
運転指令員支援部100は、運転指令員400が行う運行管理を支援する機能を備える。本実施形態において、運転指令員支援部100は、運転整理案提示部110を備える。運転整理案提示部110は、運転整理支援処理部200から出力される運転整理提案結果(運転整理要否判断結果)を運転指令員400に提示する。すなわち、運行管理の支援とは、運転整理要否判断結果が運転指令員400に提示され、運転指令員400による運転整理の判断の参考にされることである。
運転整理支援処理部200は、車両の運行管理の業務である運転整理を支援するのに必要な処理を行う。運転整理支援処理部200は、この処理によって情報を生成し、運転指令員支援部100に送る。運転整理支援処理部200は、運行予測部210と、運転整理案決定部220とを備える。
運行予測部210は、列車の運転計画を変更する運転整理の実施時点までの列車の予測ダイヤを運行予測により作成する。運行予測部210は、予測ダイヤを運転整理案決定部220に送る。
運転整理案決定部220は、要否判断モデル作成部221と要否判断部222とを有する。
運転整理案決定部220の要否判断モデル作成部221は、過去に列車が運行された結果である過去実績ダイヤデータに基づいて、運転整理要否判断モデルを作成する。運転整理要否判断モデルとは、例えば、運転整理が必要であるか否かをモデル化した数式である。また、運転整理案決定部220の要否判断部222は、運転整理要否判断モデルを、当日に列車が運行された結果である当日実績ダイヤデータおよび予測ダイヤに適用して、運転整理の要否を示す運転整理要否判断結果を作成する。運転整理案決定部220は、運転整理要否判断結果を運転整理案提示部110に送る。運転整理要否判断結果は運転整理案提示部110を介して提示され、運転指令員400による運転整理の要否判断が支援される。列車が駅にまだ到着せず、当日実績ダイヤが得られていないところ(駅)では、予測ダイヤが運転整理要否判断モデルに適用される。これにより、運転整理案決定部220は、運転整理の実施前に運転整理要否判断結果を作成することができる。尚、運転整理要否判断モデルの詳細については、図2を参照して、後で説明する。
運行管理装置300は、運行されている車両の管理を実際に管理する機能を備える。例えば、運行管理装置300は、実行された運転整理内容を運転整理案提示部110から受け取る。運行管理装置300は、運転整理内容を受け取ると、運行管理装置300内の進路制御機能により転てつ機などの地上装置を制御する。また、ディジタル無線装置により必要な情報が車両に送付される。尚、運行管理装置300は、運行管理システム10の外部に設けられていてもよい。
図2は、第1実施形態による運行管理システム10で用いる運転整理要否判断モデルを説明するダイヤ図である。
図2の横軸は時間を示し、横軸の単位は分である。図2の縦軸は駅を示す。図2の丸印は、各駅での列車の遅延時間(遅延量)を示す。例えば、実線の丸印は当日実績ダイヤデータによる駅での到着遅延の遅延量を示し、破線の丸印は予測ダイヤによる駅での到着遅延の遅延量を示す。四角印は、当該列車(T1)が当該駅(S7)で運転整理が行われることを示す。尚、図2に示す丸印は、発車遅延の遅延量を示してもよく、また、発車遅延および到着遅延の両方を示してもよい。
運転整理案決定部220は、運転整理提案を過去の実績ダイヤデータから学習し、各状況に応じた運転整理要否判断モデルを作成し、それに照らし合わせて運転整理要否判断をする。運転整理案決定部220は、運転整理の対象列車および対象列車の遅延に関連すると考えられる複数の関連列車の過去実績ダイヤデータを用いて、対象列車の運転整理要否判断モデルを作成する。
図2に示す例では、対象列車T1および関連列車T2~T5の過去実績ダイヤデータに基づいて、対象列車T1の運転整理要否判断モデルが作成される。予め設定されているダイヤでは、駅S7で待避のため停車している列車T5よりも先に列車T1は駅S7を発車する。しかし、運転整理が実施されると、例えば、列車T5が駅S7を発車した後に列車T1は駅S7を発車する。関連列車の数は、例えば、待避する列車の本数によって変更されてもよい。これは、待避する列車が遅延した列車の追い越しを待つことにより、列車の遅延がさらに拡大しやすくなるためである。
図2に示す例では、列車T1が駅S3に到達した時点(運転整理判断時点)において、駅S7における列車T1の運転整理の要否を判断する。従って、列車T1の前後の列車なども遅延に関わると考えられると仮定し、運転整理要否判断モデルを作成する際に過去実績ダイヤが用いられる。具体的には、過去実績ダイヤデータを用いて、以下のような予測(判断)式を作成する。
運転整理要否z=g(各丸印の遅延量の数式) (式1)
丸印は、運転整理対象列車と、運転整理対象列車の先行列車の駅着遅延、駅発遅延から選ぶ。丸印の実際の値は、予測を行う日の前日以前の過去実績ダイヤデータや予測を行う日の当日実績ダイヤデータなどから構成する。過去実績ダイヤデータと過去運転整理実績データとから運転整理要否の数式を作成する。数式の作成方法については、要否という2値であることから、回帰式による方法の中でもニューラルネットワークなどの機械学習による方法、など、得られる過去実績ダイヤの分量や精度に応じて、丸印の遅延量と運転整理要否の関係を作成する。
このようにして作成された運転整理要否判断モデルを用いて、運転整理案決定部220は、当日の実績ダイヤデータ(丸印の遅延量)を適用し、当該列車の当該駅での列車の運転整理の要否を判断する。この判断は、例えば、特定の列車、駅での遅延を監視し、遅延を検知した場合に運転整理要否判断モデルを適用する、という方法による。
ここで、実際に対象列車への運転整理が行われる時刻より、例えば5分前には運転整理の判断をしていないと、駅での旅客案内表示など現場での対応が間に合わない場合が発生する。そこで、前もって運転整理要否判断を行うためには、当日実績ダイヤデータが得られていないところは運行予測による予測ダイヤにより求めた遅延量が用いられる。図2に示す例では、破線の丸印が予測による遅延量である。当日実績ダイヤデータおよび予測ダイヤから求められる遅延量により、列車T1の運転整理要否判断が行われる。その後、運転整理要否判断の結果が運転指令員400に提示され、運転整理の参考にされる。すなわち、運転整理要否判断結果が、運転整理を必要としていることを示しているのか、または、運転整理は必要ないことを示しているのかに応じて、この情報を参酌して、運転指令員400は運転整理を行うかどうかを決定する。
図3は、第1実施形態による運行予測部210の内部構成と、運行予測部210、運行管理装置300、運転整理案決定部220および運転整理案提示部110の間のデータの入出力関係とを示すブロック図である。
運行予測部210は、パラメータ群算出部219と、パラメータ選択部211と、ファイル読込部214と、着発時刻取込部215と、運行予測計算部216とを有する。
パラメータ群算出部219は、予測ダイヤの作成に用いられるパラメータである予測計算用パラメータ群213を作成し、パラメータ選択部211に送る。
パラメータ選択部211は、過去実績ダイヤに基づいて、駅に列車が停車した時間のばらつきを表す駅停車時間の変動と、列車が駅間を走行するのに要した時間のばらつきを表す駅間走行時間の変動とを抽出する。また、パラメータ選択部211は、駅停車時間の変動および駅間走行時間の変動を列車の運行条件ごとに分類し、変動の分散が小さい運行条件における駅停車時間の変動および駅間走行時間の変動を抽出してもよい。運行条件は、例えば、月、曜日、天候などのパラメータ選択条件212である。
パラメータ選択部211は、パラメータ選択条件212に基づいて、予測計算用パラメータ群213からより適切なパラメータ、すなわち、駅間走行時間延び縮み(変動分)および駅停車時間の延び縮み(変動分)を選択する。尚、パラメータ群算出部219およびパラメータ選択部211の機能の詳細については、図6~図8を参照して、後で説明する。
一方、ファイル読込部214は、手動設定により、運行予報結果に応じたパラメータ選択条件212を設定することにより、内蔵する予測計算用パラメータ群213に対してより適切なパラメータを該当パラメータ値として選択することも可能とする。これは、例えば、工事などにより臨時速度制限が設定されている区間の場合、当該区間における走行時間の延びを過去データから求めることができないためである。この場合、手作業により走行時間の延びを設定し、予測に反映させる必要がある。このため、パラメータ選択部211は、手作業で作成したパラメータ一式をファイルから読み込んで、運行予測計算ができるようにしておく。
パラメータの区分け(パラメータ選択条件212)は、例えば、曜日および時期があり、これらの組み合わせ方はオフラインで決めておく。曜日は、例えば、月曜日用、火曜日用、...、木曜日用、金曜日用がある。時期は、例えば、夏休み用、冬休み用、平常時用がある。この区分けを運行予測当日の選択条件として入力することにより、運行予測に使用するパラメータが一意に設定される。
運行管理装置300からは、着発時刻取込部215に実績ダイヤデータが出力される。着発時刻取込部215は、実績ダイヤデータから実績着発時刻を取り込み、 実績着発時刻を運行予測計算部216へ出力する。着発時刻取込部215は、毎回、運行予測周期の予測計算開始時に、その時刻で実績ダイヤが得られている列車の着発時刻を検索し取り込む。運行予測周期は、例えば、10秒~2分である。
運行予測計算部216は、パラメータ選択部211により抽出された駅停車時間の変動および駅間走行時間の変動を、運行管理の基準となる制御ダイヤにあてはめて、予測ダイヤを作成する。制御ダイヤは、例えば、予め設定されるダイヤである。
運行予測計算部216は、各列車について、着発時刻取込部215から新しく来た実績着発時刻を初期値として、予測計算を行う。予測計算では、運行予測計算部216は、所定の駅間走行時間や駅停車時間として朝一番のダイヤである実施ダイヤを、および、予測時点の列車順序などは制御ダイヤを、それぞれ運行管理装置300から取得する。運行予測計算部216は、予測ダイヤを運転整理案決定部220に送る。
本実施形態においては、列車の運行遅延の要素が、乗降混雑や接続などにより生じる「駅停車時間の延び」と、速度低下や信号の影響などに生じる「駅間走行時間の延び」から構成されていると考えて、これらの変動量をモデル化することにより、列車運行を予測する。すなわち、過去データの分析結果から、「駅停車時間の延び」と「駅間走行時間の延び」を分析してパラメータ化し、運行予測に反映する。尚、「駅停車時間の延び」および「駅間走行時間の延び」は、パラメータ選択部211により選択されたパラメータである。
図4は、第1実施形態による運行管理システム10による「駅停車時間の延び」と「駅間走行時間の延び」をモデル化するための考え方を説明する図である。運行管理の基準となる、駅停車時間、駅間走行時間については、制御ダイヤが用いられる。実際の運行予測においては、遅延などが発生する可能性があることから、客扱い時間の変動、駅間走行時間の変動、を考慮した上で、運行予測をする必要がある。例えば、駅Cから駅Bの走行では、信号による速度節制を受ける場合があり、駅間走行時間の変動が大きい。駅F、駅Dは他の列車との接続をとる場合が多いことから駅停車時間の変動が大きい。運行予測計算部216は、このような運行予測の条件をパラメータとして保持しておく。
図5は、第1実施形態による運行管理システム10における運行予測の式の一例を説明する図である。駅i+1の到着時刻は、前の駅である駅iの出発時刻に、駅iの駅停車時間の変動と、駅iから駅i+1への走行時間と、駅iから駅i+1への駅間走行時間の変動とを加算することで求めることができる。駅iの出発時刻と、駅iから駅i+1への走行時間は、運転整理のない標準的な運行の制御ダイヤに基づいて設定される。すなわち、駅i+1の到着予測時刻Tarr(i+1) = 駅iの出発時刻Tdep(i) + 駅iの駅停車時間の変動kdep(i) + 駅iから駅i+1への走行時間tdri(i) + 駅iから駅i+1への駅間走行時間の変動kdri(i)により、駅i+1の到着予測時刻Tarr(i+1)が算出される。
図3に示すように、運転整理案決定部220は、当日実績ダイヤおよび予測ダイヤを運行予測計算部216から受け取り、運転整理要否判断モデルに適用し、運転整理要否判断結果を作成する。運転整理案決定部220は、運転整理要否判断結果を運転整理案提示部110に送る。
次に、図6~図8を参照して、パラメータ群算出部219による予測計算用パラメータ群213の作成およびパラメータ選択部211によるパラメータの選択について説明する。
図6は、第1実施形態によるパラメータ群算出部219の入出力関係を示すブロック図である。パラメータ群算出部219は、パラメータ選択条件212を用いて、パラメータ算出用実績ダイヤデータ218の属性・値別の分散・平均値を集計し、予測計算用パラメータ群213を作成する。パラメータ算出用実績ダイヤデータ218は、例えば、過去の実績ダイヤデータである。属性は、パラメータ選択条件212により設定され、また、図6に示す例では、月、曜日、天候である。
図7は、第1実施形態によるパラメータ属性定義表の一例を示す図である。パラメータ属性定義表とは、ある属性について、ある日がどの属性値となるか、ある列車がどの属性値となるか、を定義するものである。図7に示す例では、2017/5/1は、曜日という属性では月曜日という属性値をとり、天候という属性では晴という属性値をとり、xxxという属性ではCという属性値をとる、ということを定義する。xxxは、例えば、天候、時期や式典などのイベントである。パラメータ群算出部219は、過去の実績ダイヤデータをこのパラメータ属性定義表に従って集計する。
過去の実績ダイヤデータには、各日の各列車の各駅での駅停車時間の所定値からの延び縮み秒数、各日の各列車の各駅間での駅間走行時間の所定値からの延び縮み秒数が格納されている。例えば、パラメータ群算出部219は、2017/5/1の実績ダイヤデータは月曜日として集計し、2017/5/2の実績ダイヤデータは火曜日として集計する。最終的に集計が終わると、パラメータ群算出部219は、図8に示すような、列車番号ごとの駅間走行時間の延び縮みおよび駅停車時間の延び縮みの集計結果として、平均値および分散を求める。
図8は、第1実施形態による運行管理システム10における駅間走行時間の延び縮みおよび駅停車時間の延び縮みの平均値および分散の属性ごとの集計結果の一例を示す図である。
実際に予測する当日となった場合、パラメータ選択部211は、パラメータ選択条件212から選択条件を取得する。ここでの選択条件は、各属性に対する属性値であり、例えば、当日が2018/5/2であり、曜日という属性値が火曜日、天候という属性値が晴をそれぞれとるとする。このような当日の選択条件に対して、パラメータ選択部211は、図8の集計結果を参照する。列車番号1の駅8の駅停車時間の延び縮みパラメータは、曜日(火曜日)の分散が1.8、天候(晴)の分散が12.9であることから、パラメータ選択部211は分散の小さい曜日(火曜日)の平均値である-6を採用する。同様に、駅3から駅2への駅間走行時間の延び縮みパラメータは、曜日(火曜日)の分散が16.2、天候(晴)の分散が0.4であることから、パラメータ選択部211は天候(晴)の平均値である2を採用する。
もし、パラメータの分散が大きい属性における平均値を採用する場合、平均値から大きくずれた延び縮みが発生する可能性が高い。すなわち、予測ダイヤの作成に用いるパラメータの分散が大きい場合、予想ダイヤの精度が落ちてしまう。
これに対して、分散の小さい属性における平均値を採用することにより、例えば、平均値などの代表値をパラメータに採用した場合に、分散が大きい属性からより平均値からのずれが小さくなる。これにより、予測ダイヤの精度を向上させることができる。また、予測ダイヤの精度向上により、運転整理支援での運転整理要否判断の精度向上につながる。
尚、パラメータ選択部211は、或る閾値よりも大きい駅停車時間の変動および駅間走行時間の変動を、運行条件ごとの分類から除外し、または、抽出から除外してもよい。集計の際に、例えば、事故などによる大乱れの日は所定値からの延びが極端に大きく、このまま平均値や分散を集計しないほうがより精度向上となると考えられる。そこで、大乱れの日を除去するため、所定値からの延びが閾値(例えば、600秒)以上延びている場合、パラメータ群算出部219は、このデータまたはこの日を集計に含めないようにしてもよい。このように、異常値を集計から除外することで、大乱れの日が平均値や分散に影響を与えることを抑制し、予測ダイヤの精度を向上させることができる。また、大乱れの日を集計に含める場合でも、例えば、パラメータ選択部211により閾値よりも大きい変動をカットする処理をしてもよい。この場合、再び平均値および分散が計算される。
次に、運行管理システム10の動作について説明する。
図9は、第1実施形態による運行予測部210および運転整理案決定部220の動作例を示すフロー図である。
まず、パラメータ選択部211は、予測対象に関する情報を取得する(S1010)。予測対象に関する情報とは、例えば、駅・駅間の情報や列車番号などである。運行予測部210は、例えば、運行管理装置300から予測対象に関する情報を取得する。
次に、パラメータ選択部211は、パラメータ選択条件212から、当日のパラメータ選択条件に関する情報を取得する(S1020)。
次に、パラメータ選択部211は、パラメータである、駅間走行時間の延び縮みおよび駅停車時間の延び縮みを選択(抽出)する(S1030)。このとき、パラメータ選択部211は、分散の小さい属性からパラメータを選択する。
次に、運行予測計算部216は、運行予測をして予測ダイヤを作成する(S1040)。
次に、運転整理案決定部220は、運転整理要否判断をする(S1050)。運転整理案決定部220は、運転整理要否判断結果を運転整理案提示部110に送る。
次に、パラメータ選択部211および運行予測計算部216は、一日の運行終了か否かを判断する(S1060)。パラメータ選択部211および運行予測計算部216がまだ一日の運転が終了していないと判断した場合(S1060のNO)、次周期の動作が行われる(S1070)。ステップS1040,S1050は、運行予測周期ごとに繰り返し実行される。また、ステップS1020~S1050は、パラメータ選択条件変更確認周期ごとに繰り返し実行される。パラメータ選択条件変更確認周期は、運行予測周期より長くてよい。例えば、天候が変化するといった大きな周期でのパラメータの変更が可能になる。これにより、運行予測と実際の運行状況との乖離を少なくすることができる。
パラメータ選択部211および運行予測計算部216が一日の運行終了と判断した場合(S1060のYES)、運行管理システム10は運転整理要否判断の動作を終了する。
以上のように、第1実施形態によれば、運行予測部210は、予測ダイヤを運行予測により作成する。また、運転整理案決定部220は、運転整理要否判断モデルを、当日実績ダイヤおよび予測ダイヤに適用して、運転整理の要否を示す運転整理要否判断結果を作成する。これにより、運行管理システム10は、運転整理の実施前の時点における運転整理の要否を適切に判断することができる。従って、運転指令員400に特別なスキルなどは必要とされず、運転指令員400の経験によらない適切な運転整理の判断が可能になる。この結果、より少ない人数で運転整理の判断が可能となり、また、異なる運転指令員400の間で運行管理の品質を略均一にすることができる。従って、運転指令員400の手が離せないときに、システムの支援により略一定のレベルの運転整理判断が可能となる。また、運転指令員400は、時間に余裕をもって運転整理の判断をすることができる。
もし、予測ダイヤが用いられない場合、運転整理判断時点から運転整理の実施までの間の当日実績ダイヤデータがまだ得られていないため、運転整理要否判断の精度が落ちてしまう。
これに対して、第1実施形態による運行管理システムは、運転整理判断時点から運転整理の実施までの間のダイヤを過去の実績ダイヤデータにより予測する。従って、当日実績データが無い場合でも、予測ダイヤで補完して、運転整理の要否判断をすることができる。運転整理案決定部220は、運転整理要否判断モデルを必要な列車、駅に関してあらかじめ作成しておき、特定の列車、駅での遅延を監視し、遅延を検知した場合に運転整理要否判断モデルにより、運転整理の要否を判断する。過去データからモデルが作成されるため、実績データを遅延予測モデルに適用することにより遅延予測モデルの正解率も利用可能である。これにより、運転指令員400は遅延予測量の妥当性を念頭においたうえで、運転整理を検討できる。尚、遅延予測モデルとは、遅延予測量の数式である。例えば、図2において、列車T1が駅S3に到達した時点で、駅S7における遅延量が予測される。具体的には、過去実績ダイヤデータを用いて、以下のような予測式を作成する。
遅延量y=f(各丸印の遅延量の数式) (式2)
数式の作成方法については、運転整理要否を遅延量として、運転整理要否判断モデルの数式の作成方法と同様でよい。
また、予測ダイヤについて、変動分の抽出方法により、予測ダイヤの精度、運転整理要否判断精度は変わる。所定値からの変動分として、例えば、曜日別に集計して月曜日は月曜日の平均値を使うことにより分散を小さくとれる。さらに、このような属性を季節別などいくつか用意しておき、分散の小さい属性の平均値を使うことで予測ダイヤの精度を向上させることができる。
尚、運転整理案決定部220は、過去に運転整理を行って運行された列車の過去運転整理実績ダイヤに基づいて、運転整理要否判断モデルを作成してもよい。この場合、要否判断モデル作成部221は、過去運転整理実行データを検索し、ある列車群の過去実績ダイヤが得られた時に、過去に実施した運転整理を今回も行うかどうかを予測してもよい。一般に、過去に運転整理を行って運行された列車の過去運転整理実績ダイヤに関するデータはそう多くは無いため、要否判断モデル作成部221は、過去実績ダイヤに基づいて、運転整理要否判断モデルをまずは作成する。しかし、運転整理を実施した過去運転整理実績ダイヤに関するデータが多くあれば、運転整理案決定部220は、運転整理の内容、例えば順序変更、列車運休など、運転整理案ごとに運転整理要否判断モデルを作成し、運転整理案ごとに運転整理要否判断結果を作成するようにしてもよい。
また、パラメータ群算出部219は、平均値に代えて、中央値を集計してもよい。
(変形例1)
第1実施形態の変形例1は、列車番号に代えて、着発時刻により列車が特定されて運転整理要否判断モデルが作成される点で、第1実施形態と異なる。
運転整理要否判断モデルにおける列車は、運行管理の基準となる制御ダイヤにおける駅の出発時刻または到着時刻に基づいて特定される。年1回などのあるタイミングで行われるダイヤ改正のうち、例えば、使われる車両の変更による列車番号名の変更が行われるのみで、着発時刻や前後の列車の関係は変更なし、というレベルのダイヤ改正が行わる場合がある。この場合においては、第1実施形態における列車T1の特定として、列車T1という列車番号名を用いた方法では、ダイヤ改正により、運転整理要否判断モデルが改正後に使えなくなってしまう。そこで、図10下部に示すように、例えば、列車番号の代わりに出発時刻での識別方法により、列車T1が特定される。
図10は、変形例1による運行管理システム10で用いる運転整理要否判断モデルを説明するダイヤ図である。図10に示すように、列車は、列車番号に代えて、N0812,N0814,N0816,N0819,N0823などの、駅S1の発車時刻で特定されている。尚、列車の特定方法の他は、図2と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
図10に示す例では、列車N0823は駅S1を8時23分に発車するということからこのように識別する。自社線のみの場合は、列車番号名のみが変わる、という状況は少ないと考えられるが、他社線列車による相互直通運転の場合、このような時刻など変化のない情報を用いて運転整理要否判断モデルを作成する。例えば、出発時刻は変わらず、列車番号名のみが変わるような場合に有用である。
変形例1による運行管理システム10は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
尚、駅の発車時刻に限られず、到着時刻や、列車の始発時刻により列車が特定されてもよい。
(変形例2)
第1実施形態の変形例2によれば、走行順序の関係に基づいて、複数の列車のパターンごとに運転整理要否判断モデルが作成される点で、第1実施形態と異なる。
第1実施形態による運転整理要否判断モデルは、運転整理対象列車番号、運転整理内容および運転整理対象駅の3つ組の単位で作成される。すなわち、列車番号名単位でモデルが作成されることになる(全個別方式)。しかし、例えば、朝ラッシュ時では、ある遅延状況は列車番号名によるというよりは、運転整理対象列車と関連列車との関係で運転整理の要否が判断される場合がある。この場合、列車番号名を用いない運転整理要否判断モデルが作成される。
第1実施形態の全個別方式では、列車番号の特性をモデル化できるものの、同じ列車番号は1日に1本であるため、モデル作成のデータを収集するには時間を要する。一方、例えば、運転整理対象列車および対象列車の運転整理の原因となりうる関連列車として、基本的には対象列車の先行列車n本(例えば、n=4)から、モデルが構成される。モデルは、ダイヤ図上での形状によりA,B,...と複数のパターンに分けられる。
図11は、変形例2による運行管理システム10で用いる運転整理要否判断モデルを説明するダイヤ図である。図11の横軸は時間を示し、図11の縦軸は駅を示す。図11の丸印は、各駅での運転整理対象列車および対象列車に関連する列車群(この例では対象列車に先行する4つの関連列車)の遅延量を示す。尚、図11の丸印は、過去実績ダイヤデータの遅延量である。
図11に示す例では、丸印の遅延量を用いて運転整理要否判断モデルが作成される。一日のダイヤでは、このような列車群のかたまりがいくつか存在するとの前提で、図11では破線丸四角で囲ったいくつかのパターンに複数の列車が分けられる。
図12は、図11のダイヤ図における列車群のパターンを分類した模式図である。
運転整理案決定部220は、走行順序の関係に基づいて複数の列車をパターンに分類し、パターンごとに運転整理要否判断モデルを作成する。例えば、運転整理案決定部220は、同じまたは類似する走行順序の関係を有する複数の列車をパターンに分類する。図12に示す例では、パターンとしては、パターンA,B,Cの3種類を考える。パターンAでは、1本の運転整理対象列車、4本の関連列車、駅Sで2本待避の列車があるダイヤであり、すべての列車は駅Uから走行する。パターンBでは、1本の運転整理対象列車、4本の関連列車、駅Sで1本待避の列車があるダイヤであり、すべての列車が駅Uから走行する。パターンCでは、1本の運転整理対象列車、4本の関連列車、駅Sで2本待避の列車があるダイヤであり、4本の列車が駅Uから走行し、1本の列車が駅T始発である。
図12に示す例では、PA1、PA2、PA3、PB1、PB2、PC1の6つの運転整理対象列車および関連列車の列車群が存在する。パターンAに属するPA1、PA2、PA3を合わせて1つ、パターンBに属するPB1、PB2を合わせて1つ、PC1で1つ、の計3つの運転整理要否判断モデルが作成される。例えば、PA1、PA2、PA3は、列車の運転間隔などが必ずしも同等である必要はなく、極端に運転間隔が異なるなどが無ければよい。また、モデル数が減り、走行順序のなどの列車のつながり関係によるモデルで一般化ができる。従って、例えば、ダイヤ改正の場合においても、極端に運転間隔が異なるなどが無ければ、改正後のダイヤでもモデルが利用可能である。さらに、例えば、パターンAは1日に複数存在するため、モデル作成のデータ収集が短時間でよくなる。
変形例2による運行管理システム10は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、変形例2による運行管理システム10に変形例1を組み合わせてもよい。
(第2実施形態)
第2実施形態によれば、当日における予測時点(運転整理判断時点)までの運行乱れを考慮して、駅間走行時間の変動分および駅停車時間の変動分などの運行予測パラメータを選択する点で、第1実施形態と異なる。
パラメータ選択部211は、駅停車時間の変動および駅間走行時間の変動を列車の遅延量の程度ごとに分類し、当日の列車の遅延量の程度に基づいて、駅停車時間の変動および駅間走行時間の変動を抽出する。
第2実施形態による運行管理システム10のその他の構成は、第1実施形態による運行管理システム10の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
図13は、第2実施形態による運行状況の一例を示すグラフである。図13は、例えば、或る列車番号における過去1年のうち156日分の運行状況を示す。図13の運行状況は、過去実績ダイヤデータから作成される。図13の横軸は、予測時点前である駅3到着までの各駅における駅着遅延および駅発遅延、並びに、予測時点以降である駅3での停車時間および駅3から駅4までの走行時間を示す。尚、列車の進行方向は、図13の左方向である。図13の縦軸は、所定値からの延び縮み秒数を示す。
図14は、図13における予測時点前の運行状況を曜日ごとに分類した例を示すグラフである。図15は、図13における予測時点前の運行状況を時期ごとに分類した例を示すグラフである。尚、時期は、例えば、春夏秋冬などである。これらの図では、予測時点以前の運行状況は、例えば、同じ月曜日でもばらつきがあり、予測時点以降のパラメータについてもばらつきが大きくなる可能性がある。
このため、パラメータ選択部211は、予測時点前の区間の遅延量の傾向をK平均法などの分類手法を用いてあらかじめ分類しておき、当日のダイヤを得た時点でSVM(Support Vector Machine)などの識別アルゴリズムにより、どの分類に属するかを識別する。パラメータ選択部211は、識別された分類において、予測時点以降の停車時間の延び縮みおよび走行時間の延び縮みの平均値を予測ダイヤ作成のパラメータとして抽出する。
図16は、図13における予測時点前の運行状況をK平均法で分類した例を示すグラフである。図16に示す例では、図14および図15の分類にくらべ、各クラスタでの予測時点以前のばらつきが小さくなるように分類される。従って、予測時点以降のパラメータについてのばらつきも小さくなることが期待される。
尚、パラメータ選択部211は、変動のばらつきが大きい分類に含まれる駅停車時間の変動および駅間走行時間の変動を除外して、駅停車時間の変動および駅間走行時間の変動を遅延量の程度ごとに再び分類してもよい。上記分類アルゴリズムによる分類で、図16のクラスタ4のように、各クラスタ内でのばらつきが大きいクラスタに含まれるデータは運行予測に使うデータとしてもばらつきが大きく、平均値などを採用しても予測ダイヤの精度が向上しないことが考えられる。そこで、前述のK平均法などにより分類されたクラスタのうち、ばらつきの大きいクラスタを特定し、このクラスタは、大乱れの発生している日のデータであるとする。この大乱れの日を除いたデータをもとに、パラメータ選択部211は、再度、K平均法などの分類アルゴリズムによる分類を行う。
図17は、図13の運行状況から図16のクラスタ4に分類された運行状況を除く例を示すグラフである。
図17の全日2に示すように、全日のデータから、クラスタ4のデータが除かれている。これにより、大乱れの日の運行予測は行わない、という前提で、中乱れ以下の運行に関し、グループ分けによる大きなばらつきを低減させることができる。従って、全日2から再び分類されたグループにおける駅間走行時間の変動分および駅停止時間の変動分の平均値などを用いて、より精度のよい予測ダイヤの作成が可能となる。
第2実施形態による運行管理システム10は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2実施形態による運行管理システム10に変形例1および変形例2を組み合わせてもよい。
(変形例3)
第2実施形態の変形例3によれば、簡易な計算により運行状況を分類する点で、第2実施形態とは異なる。
遅延量は、例えば、列車の総遅延時間である。また、パラメータ選択部211は、当日の総遅延時間に近い分類における駅停車時間の変動および駅間走行時間の変動を抽出する。
分類手法による分類は、使用する分類アルゴリズムにより、分類が多少異なる場合がある。さらに、分類そのものは計算量を要するものとなること、また、分類されたグループは統計的に算出されるもののこのグループが人間には直感的には理解しにくい、グループに名前をつけるのが容易ではない、といった場合がある。
そこで、分類アルゴリズムによらない、値そのものの方法でもよい。例えば、予測時点前の遅延状況を総遅延秒数の大きさに応じて、総遅延秒数が1000秒以上は大、1000秒未満500秒以上は中、これら以外は小の3グループに運行状況が分類される。その後、当日のダイヤを得た時点での総遅延秒数を算出して大中小のグループを判定し、判定された各グループにおける所定値からの延びの平均値を当日のパラメータとする、といった簡便な方法でもよい。
図18は、図13における予測時点前の運行状況を総遅延時間ごとに分類した例を示すグラフである。本方法は、グループの分類を作成する場合、当日のグループを判定する場合、いずれにおいても総遅延秒数などの算術演算のみであり、計算量も少なくなる。また、各グループに意味を与えることができるため、直感的にも採用しやすい。
変形例3による運行管理システム10は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、変形例3による運行管理システム10に変形例1および変形例2を組み合わせてもよい。
尚、パラメータ選択部211は、グループの分類を作成する場合、当日のグループを判定する場合、いずれにおいても予測時点から直近の数駅(例えば、2駅)のみを用いるなど、計算をより簡易にしてもよい。
(第3実施形態)
第3実施形態によれば、予測ダイヤを作成せず運転整理要否判断にも用いない点で、第1実施形態や第2実施形態と異なる。
運転整理案決定部220は、予測ダイヤを適用せず、当日実績ダイヤを適用する。これは、パラメータが十分にそろっていないなどで予測ダイヤの精度が十分でない場合には、予測ダイヤを用いず、実績ダイヤを用いるほうが精度の向上が見込めるためである。第3実施形態では、運転整理要否判断の時刻が運転整理実施より一定時間以上手前の場合には、実績ダイヤのみによる要否判断が行われる。
第3実施形態による運行管理システム10のその他の構成は、第1実施形態による運行管理システム10の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
また、運転整理要否判断モデルは、運転整理の実施時点よりも所定数前の駅までにおける過去実績ダイヤに基づいて作成される。
図19は、第3実施形態による運行管理システム10で用いる運転整理要否判断モデルを説明するダイヤ図である。図19は、運転整理の対象駅(S7)から一定駅手前の駅(S4)までの実績ダイヤを用いる場合の例を示す。この場合、運転整理の要否が対象駅から何駅か手前の駅で判断されるため、運転指令員400は、対象駅への到着前に運転整理の要否を判断することができる。また、対象駅から手前の駅までの間において待避駅が無いなどの運行乱れの要因が少ない場合は、運転整理の実施時刻を前倒しすることができる。
図20は、第3実施形態による運行予測部210および運転整理案決定部220の動作例を示すフロー図である。ステップS1010は、図9に示す第1実施形態におけるステップS1010と同様である。図20に示すフロー図では、図9に示すフロー図と異なり、運行予測が行われない。従って、ステップS1010の後、運転整理案決定部220は、運転整理要否判断をする(S1015)。
このように、運転整理要否判断の時刻を前倒しできることにより、運転指令員400は、余裕をもって指令を出すことができる。
第3実施形態による運行管理システム10は、第1実施形態と同様に、運転整理の実施前の時点における運転整理の要否を適切に判断することができる。また、第2実施形態による運行管理システム10に変形例1および変形例2を組み合わせてもよい。
また、予測ダイヤが作成されないため、運行予測部210は、着発時刻取込部215および運行予測計算部216を有しなくてもよい。しかし、当日実績データが十分に得られた場合に、第1実施形態および第2実施形態のように、予測ダイヤを用いるように切り替えてもよい。例えば、運転整理の対象駅から或る程度手前の時刻または駅に列車が達した場合、切り替えが行われる。
(変形例4)
第3実施形態による変形例によれば、運転整理の実施時点よりも所定時間前の駅までにおける運転整理要否判断モデルが作成される点で、第3実施形態とは異なる。
運転整理要否判断モデルは、運転整理の実施時点よりも所定時間前の駅までにおける過去実績ダイヤに基づいて作成される。例えば、運転整理要否判断モデルは、複数の所定時間に対応して複数作成される。
図21~図23は、変形例4による運行管理システム10で用いる運転整理要否判断モデルを説明するダイヤ図である。図21~図23では、同じく実績ダイヤのみを使う方法として、手前時刻を何段階か区切り、その単位で運転整理要否判断モデルが作成される。この場合、時刻で切るモデルであることから、他列車の状況に応じては実績がそろっていない場合が生じる可能性がある。その場合、運転整理案決定部220は、例えば、あらかじめ決められた時刻を加算する、などの局所的、簡易的な運行予測を行い、データを補完する。このため、運転整理案決定部220は、各列車走行にともなう実績ダイヤの取得にあわせて時々刻々要否判断ができように当該列車の当該駅での当該運転整理に関し、複数の要否判断モデルを持つ。
図21~図23に示す例では、運転整理案決定部220は、それぞれ、列車T1の駅S1出発時、列車T2の駅S2出発時および列車T2の駅S5出発時における運転整理要否判断を行う。
例えば、運転整理案決定部220が、必要、必要、必要、の順番で判断した場合、運転指令員400は、遅延が継続していると判断して運転整理をすると判断する。また、例えば、運転整理案決定部220が、必要、不要、不要、の順番で判断した場合、運転指令員400は、遅延が改善したと判断して運転整理をしないと判断する。このように、運転指令員400は、遅延の傾向の変化を考慮しながら、運転整理を実施するか否かを判断することができる。
変形例4による運行管理システム10は、第1実施形態と同様に、運転整理の実施前の時点における運転整理の要否を適切に判断することができる。また、変形例4による運行管理システム10に変形例1および変形例2を組み合わせてもよい。
尚、運転整理要否判断モデルは、複数ではなく、単体であってもよい。例えば、過去の運転整理の実施状況から、複数の時点のうちの或る時点の運転整理の要否判断の精度が高い場合、その或る時点のモデル単体が運転整理の要否判断に用いられてもよい。これにより、より簡易に運転整理の要否を判断することができる。
本実施形態による運行管理システム10の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、運行管理システム10の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。また、運行管理システム10の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。