以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着性組成物〕
本実施形態に係る粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、ポリロタキサン化合物(B)と、活性エネルギー線硬化性成分(C)とを含有し、好ましくはさらに架橋剤(D)を含有する。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを17質量%以上、50質量%以下含有する。また、活性エネルギー線硬化性成分(C)は、ヌレート構造を有しないものである。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
上記粘着性組成物Pから得られる粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを上記の量で含有するとともに、活性エネルギー線硬化性成分(C)としてヌレート構造を有しないものを使用することにより、常温環境下でのヘイズ値を低くすることができる。また、低温環境におかれたときにも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)とポリロタキサン化合物(B)との相溶性が維持され、ヘイズ値の上昇を抑制することができる。例えば、上記粘着剤からなる厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着シートを-40℃の条件にて3日間保管した後のヘイズ値を、8%以下に抑えることができる。
また、ポリロタキサン化合物(B)は、環状分子とそれを貫通する直鎖状分子との機械的結合を有しており、環状分子は直鎖状分子上を自由に移動(スライド)することが可能となっている。粘着性組成物Pから得られる粘着剤は、かかるポリロタキサン化合物(B)を含有することにより、応力緩和性が高くなり、被着体における反りの発生を抑制することができる。また、上記粘着性組成物Pから得られる粘着剤を活性エネルギー線照射により硬化した硬化後粘着剤層は、ポリロタキサン化合物による応力緩和性を有しつつ、硬化によって被膜強度が向上しているため、耐ブリスター性にも優れたものとなる。
例えば、高温高湿条件下でアウトガスを発生したり水蒸気を透過するプラスチック板と、当該プラスチック板とは線膨張係数が異なるガラス板とを、粘着性組成物Pから得られる粘着剤層によって貼合した後、当該粘着剤層を活性エネルギー線照射により硬化させて硬化後粘着剤層として得られる構成体を、高温高湿条件下、例えば、85℃、85%RH条件下に72時間置いた場合でも、被着体と硬化後粘着剤層との界面に、気泡、浮き、剥がれ等のブリスターが発生することが抑制される。また、上記構成体を、高温条件下、例えば、105℃、乾燥条件下に72時間置いた場合でも、当該構成体に反りが発生することを抑制することができる。
特に、粘着性組成物Pが架橋剤(D)を含有する場合に、粘着性組成物Pを架橋させると、架橋剤(D)の反応性基(例えばイソシアネート基)と、ポリロタキサン化合物(B)が有する環状分子の反応性基(例えば水酸基)とが反応し、架橋剤付加物が形成される。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体が有する反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基により、架橋剤付加物中の架橋剤(D)を介してポリロタキサン化合物(B)の1つの環状分子と結合し、同様に、別の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が当該ポリロタキサン化合物(B)の別の環状分子と結合するものと推定される。その結果、複数の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)同士が、上記のスライド可能な機械的結合を有するポリロタキサン化合物(B)を介して架橋された構造(架橋構造)が形成される。かかる架橋構造を含むことで、得られる粘着剤、そして硬化後粘着剤層は、応力緩和性により優れ、反りの発生を抑制する効果がより高くなるとともに、耐ブリスター性により優れたものとなる。
なお、得られる粘着剤の全てが上記の構造である必要はなく、2つの(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、ポリロタキサン化合物(B)を介さず、架橋剤(D)により直接結合されている構造等を含んでいてもよい。
(1)各成分
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを17質量%以上、50質量%以下含有する。これにより、得られる粘着剤の低温環境下でのヘイズ値を低く抑えることができる。理由は必ずしも明らかではないが、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中における反応性官能基(特に水酸基)の量が多いと、当該(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、末端に官能基(特に水酸基)を有するポリロタキサン化合物(B)との親和性が高くなり、ポリロタキサン化合物(B)の凝集が抑制されるためであると推測される。
上記反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの反応性官能基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記反応性官能基含有モノマーの中でも、低温環境下でのヘイズ値を低くする観点から、水酸基含有モノマーが特に好ましい。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。上記の中でも、低温環境下でのヘイズ値を低くする観点および架橋剤(D)との反応性の観点から、炭素数が1~4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が好ましく挙げられ、特に、アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたはアクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
低温環境下でのヘイズ値上昇抑制効果をより高めるために、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中における構成モノマー単位としての反応性官能基含有モノマーの含有量は、20質量%以上であることが好ましく、特に23質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、40質量%以下であることが好ましく、特に30質量%以下であることが好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを含まないことも好ましい。カルボキシ基は酸成分であるため、カルボキシ基含有モノマーを含有しないことにより、粘着剤の貼付対象に、酸により不具合が生じるもの、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電膜や、金属膜、金属メッシュなどが存在する場合にも、酸によるそれらの不具合(腐食、抵抗値変化等)を抑制することができる。
ここで、「カルボキシ基含有モノマーを含まない」とは、カルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しないことを意味し、カルボキシ基含有モノマーを全く含有しない他、カルボキシ基による透明導電膜や金属配線等の腐食が生じない程度にカルボキシ基含有モノマーを含有することを許容するものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下の量で含有することを許容するものである。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、良好な粘着性を発現することができる。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、粘着性の観点から、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
上記の中でも、粘着力を効率的に付与するとともに、良好な耐ブリスター性を確保する観点から、アルキル基の炭素数が2~12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が4~10のアクリル酸アルキルエステルが特に好ましく、アルキル基の炭素数が5~8のアクリル酸アルキルエステルがさらに好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルまたは(メタ)アクリル酸イソオクチルが好ましく、特にアクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルまたはアクリル酸イソオクチルが好ましく、さらにはアクリル酸2-エチルヘキシルまたはアクリル酸イソオクチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、粘着性を付与する観点から、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30質量%含有することが好ましく、40質量%以上含有することがより好ましく、50質量%含有することが特に好ましい。また、他の成分の配合量を確保する観点から、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを80質量%以下含有することが好ましく、70質量%以下含有することがより好ましく、60質量%以下含有することが特に好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含有することが好ましい。脂環式構造含有モノマーを含有することにより、その嵩高い官能基により(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)間の距離を広げ、得られる硬化後粘着剤の柔軟性をより高くし易く、それによって反り抑制効果をより優れたものにすることができる。
脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。脂環式構造の炭素数は、5~20であることが好ましく、特に6~15であることが好ましく、さらには7~12であることが好ましい。
脂環式構造としては、例えば、シクロヘキシル骨格、ジシクロペンタジエン骨格、アダマンタン骨格、イソボルニル骨格、シクロアルカン骨格(シクロヘプタン骨格、シクロオクタン骨格、シクロノナン骨格、シクロデカン骨格、シクロウンデカン骨格、シクロドデカン骨格等)、シクロアルケン骨格(シクロヘプテン骨格、シクロオクテン骨格等)、ノルボルネン骨格、ノルボルナジエン骨格、多環式骨格(キュバン骨格、バスケタン骨格、ハウサン骨格等)、スピロ骨格などを含むものが好ましく挙げられる。中でも、反り抑制効果の向上に加えて、耐ブリスター性をさらに優れたものとする観点から、アダマンタン骨格およびイソボルニル骨格を含むものが好ましい。
上記脂環式構造含有モノマーとしては、上記の骨格を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、得られる硬化後粘着剤の柔軟性をより高くする観点から、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーを3質量%以上含有することが好ましく、6質量%以上含有することがさらに好ましく、9質量%以上含有することが特に好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、他の成分の配合量を確保する観点から、脂環式構造含有モノマーの含有量を30質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがさらに好ましく、15質量%以下とすることが特に好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有することが好ましい。窒素原子含有モノマーを含有することにより、ガラス等の被着体への密着性を向上させることができる。窒素原子含有モノマーとしては、アミノ基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、窒素含有複素環を有するモノマーなどが挙げられ、中でも、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。また、構成される粘着剤の高次構造中で上記窒素原子含有モノマー由来部分の自由度を高める観点から、当該窒素原子含有モノマーは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を形成するための重合に使用される1つの重合性基以外に反応性不飽和二重結合基を含有しないことが好ましい。なお、前述の反応性官能基含有モノマーは、ここでいう窒素原子含有モノマーからは除かれる。
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。
なお、窒素原子含有モノマーとして、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等を使用することもできる。
以上の窒素原子含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、ガラス等の被着体への密着性を向上させる観点から、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、4質量%以上含有することがより好ましく、8質量%以上含有することが特に好ましい。また、窒素原子含有モノマーの含有量は、他の成分の配合量を確保する観点から、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、14質量%以下であることが特に好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。溶液重合物であることにより高分子量のポリマーが得やすく、耐ブリスター性により優れた粘着剤が得られる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、下限値として、20万以上であることが好ましく、特に30万以上であることが好ましく、さらには40万以上であることが好ましい。重量平均分子量の下限値が上記であると、得られる粘着剤の凝集力を確保して、耐ブリスター性をより優れたものにすることができる。また、上記重量平均分子量は、上限値として、180万以下であることが好ましく、150万以下であることがより好ましく、特に120万以下であることが好ましく、さらには75万以下であることが好ましい。重量平均分子量の上限値が上記であると、得られる粘着剤の柔軟性を確保して、反り抑制効果をより向上させることができる。ここで、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係る粘着性組成物P中における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の含有量は、下限値として、70質量%以上であることが好ましく、特に80質量%以上であることが好ましく、さらには85質量%以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の含有量の下限値が上記であることにより、得られる粘着剤の粘着力が良好なものとなる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の含有量は、上限値として、99質量%以下であることが好ましく、特に96質量%以下であることが好ましく、さらには92質量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の含有量の上限値が上記であることにより、ポリロタキサン化合物(B)および活性エネルギー線硬化性成分(C)(ならびに架橋剤(D))の含有量を確保して、低温環境下におけるヘイズ値上昇抑制効果、耐ブリスター性および反り抑制効果を良好に得ることができる。
(1-2)ポリロタキサン化合物(B)
ポリロタキサン化合物(B)は、少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、かつ、直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなる化合物である。このポリロタキサン化合物(B)においては、環状分子が直鎖状分子上を自由に移動することが可能であるが、ブロック基により環状分子は直鎖状分子からは抜け出せない構造となっている。すなわち、直鎖状分子および環状分子は、共有結合等の化学結合ではなく、いわゆる機械的結合によりその形態を維持するものとなっている。
本実施形態におけるポリロタキサン化合物(B)は、反応性基を含む環状分子を有することが好ましい。当該反応性基としては、架橋剤(D)の反応性基と反応可能なものであれば特に限定されず、例えば、水酸基、カルボキシ基等が挙げられ、中でも水酸基が好ましい。
本実施形態におけるポリロタキサン化合物(B)は、環状分子として環状オリゴ糖を有することが好ましい。環状オリゴ糖は、修飾しない状態で、反応性基として水酸基を有する。また、ポリロタキサン化合物(B)の環状分子として環状オリゴ糖を使用することにより、適切な環径の選択が可能となり、それにより、直鎖状分子上で環状分子が移動することによる効果が発現しやすい。さらに、様々な置換基等の導入も容易であり、それにより、得られる粘着剤の物性を調整することが可能となる。さらに、環状オリゴ糖であれば、入手も容易であるという利点もある。なお、本明細書において、「環状分子」または「環状オリゴ糖」の「環状」は、実質的に「環状」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で移動可能であれば、環状分子は完全には閉環でなくてもよく、例えば螺旋構造であってもよい。
環状オリゴ糖としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等のシクロデキストリンが好ましく挙げられ、中でも特にα-シクロデキストリンが好ましい。ポリロタキサン化合物(B)の環状分子は、ポリロタキサン化合物(B)中または粘着性組成物P中で2種以上混在していてもよい。
上記環状オリゴ糖が反応性基として有する水酸基は、環状オリゴ糖がオリジナル(修飾前の状態をいう。)で有する水酸基であってもよいし、環状オリゴ糖に置換基として導入された水酸基であってもよい。
上記環状分子の水酸基価は、下限値として10mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましく、50mgKOH/g以上であることが特に好ましい。水酸基価の下限値が上記であると、ポリロタキサン化合物(B)が架橋剤(D)と十分に反応することができる。また、上記環状分子の水酸基価は、上限値として1000mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが特に好ましい。水酸基価の上限値が上記の値を超えると、同一の環状分子において多数の架橋が生じることにより、当該環状分子自体が架橋点となり、ポリロタキサン化合物(B)全体としての架橋点の効果を発揮できなくなり、その結果、得られる粘着剤において十分な柔軟性が確保できなくなるおそれがある。
ポリロタキサン化合物(B)の直鎖状分子は、環状分子に包接され、共有結合等の化学結合でなく機械的な結合で一体化することができる分子または物質であって、直鎖状のものであれば、特に限定されない。なお、本明細書において、「直鎖状分子」の「直鎖」は、実質的に「直鎖」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で環状分子が移動可能であれば、直鎖状分子は分岐鎖を有していてもよい。
ポリロタキサン化合物(B)の直鎖状分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく、これらの直鎖状分子は、粘着性組成物P中で2種以上混在していてもよい。
ポリロタキサン化合物(B)の直鎖状分子の数平均分子量は、下限値として3,000以上であることが好ましく、特に10,000以上であることが好ましく、さらには20,000以上であることが好ましい。数平均分子量の下限値が上記であると、環状分子の直鎖状分子上での移動量が確保され、ポリロタキサン化合物(B)に起因する架橋構造の柔軟性が十分に得られる。また、ポリロタキサン化合物(B)の直鎖状分子の数平均分子量は、上限値として300,000以下であることが好ましく、特に200,000以下であることが好ましく、さらには100,000以下であることが好ましい。数平均分子量の上限値が上記であると、ポリロタキサン化合物(B)の溶媒への溶解性が良好になる。
ポリロタキサン化合物(B)のブロック基は、環状分子が直鎖状分子により串刺し状になった形態を保持し得る基であれば、特に限定されない。このような基としては、嵩高い基、イオン性基等が挙げられる。
具体的には、ポリロタキサン化合物(B)のブロック基は、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、アントラセン類等、あるいは、数平均分子量1,000~1,000,000の高分子の主鎖または側鎖等が好ましく、これらのブロック基は、ポリロタキサン化合物(B)中または粘着性組成物P中で2種以上混在していてもよい。
以上説明したポリロタキサン化合物(B)は、従来公知の方法(例えば特開2005-154675に記載の方法)によって得ることができる。
本実施形態に係る粘着性組成物P中におけるポリロタキサン化合物(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として1質量部以上であることが好ましく、特に2質量部以上であることが好ましく、さらには4質量部以上であることが好ましい。ポリロタキサン化合物(B)の含有量の下限値が上記であると、得られる粘着剤の応力緩和性がより高くなり、それによって反り抑制効果がより優れたものとなる。また、ポリロタキサン化合物(B)の含有量は、上限値として30質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましく、7質量部以下であることがさらに好ましい。ポリロタキサン化合物(B)の含有量の上限値が上記であると、得られる粘着剤の低温環境下でのヘイズ値が高くなり過ぎることを抑制することができる。
(1-3)活性エネルギー線硬化性成分(C)
本実施形態における活性エネルギー線硬化性成分(C)は、ヌレート構造を有しないものである。これにより、得られる粘着剤の低温環境下でのヘイズ値を低く抑えることができる。理由は必ずしも明らかではないが、ヌレート構造に含まれるNCO構造によって、ポリロタキサン化合物(B)の相溶性が悪化し、相分離または凝集が促進されると考えられることから、かかるヌレート構造を有しない活性エネルギー線硬化性成分(C)を使用することにより、上記の効果が得られる。また、活性エネルギー線硬化性成分(C)を含有する粘着剤を活性エネルギー線硬化させることにより、得られる硬化後粘着剤層は耐ブリスター性に優れたものとなる。
なお、活性エネルギー線硬化性成分(C)としてヌレート構造を有するものを使用すると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が当該重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを17質量%以上、50質量%以下含有したとしても、得られる粘着剤の低温環境下でのヘイズ値が大きく上昇してしまう。
活性エネルギー線硬化性成分(C)は、ヌレート構造を有さず、活性エネルギー線の照射によって硬化し、上記の効果が得られる成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、耐ブリスター性により優れる多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
ヌレート構造を有しない多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。上記の中でも、得られる粘着剤の耐ブリスター性の観点から、2官能型もしくは3官能型の多官能アクリレート系モノマーが好ましく、また、ヘイズ値を低く抑える観点から、芳香環含有多官能アクリレート系モノマー、脂環式構造含有多官能アクリレート系モノマー、および脂肪族系多官能アクリレート系モノマーのいずれかが好ましく、脂肪族系多官能アクリレート系モノマーがより好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートまたはエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましく、さらにはポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートまたはエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性の観点から、多官能アクリレート系モノマーは、分子量1000未満のものが好ましい。
粘着性組成物P中における活性エネルギー線硬化性成分(C)の含有量は、低温環境下でのヘイズ値上昇抑制効果および耐ブリスター性をより優れたものとする観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることが特に好ましい。一方、上記含有量は、反り抑制効果をより良好にする観点から、上限値として20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
(1-4)架橋剤(D)
架橋剤(D)は、反応性基を有する。この反応性基は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する水酸基と反応可能なものであればよく、さらには、ポリロタキサン化合物(B)の環状分子が有する反応性基と反応可能なものであることが好ましい。かかる架橋剤(D)は、ポリロタキサン化合物(B)と架橋剤付加物を形成し、当該架橋剤付加物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)同士を架橋する。
架橋剤(D)が有する反応性基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、ビニルスルホン基、有機金属等が挙げられる。かかる反応性基を有する架橋剤(D)としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、ビニルスルホン系架橋剤、有機チタン・ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらの中でも、水酸基との反応性が高いイソシアネート系架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する水酸基との反応性が高い。また、反応性基として水酸基を有するポリロタキサン化合物(B)の架橋剤付加を十分に行うことができ、それによって、得られる粘着剤の応力緩和性をより優れたものにすることができる。なお、架橋剤(D)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。また、ヘイズ値低減の観点からは、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
粘着性組成物P中における架橋剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.17質量部以上であることが好ましい。架橋剤(D)の含有量の下限値が上記であると、前述したポリロタキサン化合物(B)の架橋剤付加物を良好に形成することができ、得られる粘着剤の応力緩和性をより優れたものにすることができる。また、架橋剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、上限値として2.5質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがより好ましく、特に1.5質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましい。架橋剤(D)の含有量の上限値が上記であると、架橋の程度を適度なものとし、反り抑制効果をより優れたものにすることができる。
(1-5)光重合開始剤(E)
粘着性組成物Pから得られる粘着剤層を硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着性組成物Pは、光重合開始剤(E)を含有することが好ましい。光重合開始剤(E)を含有することにより、活性エネルギー線硬化性成分(C)を効率良く硬化させることができ、また重合硬化時間および紫外線の照射量を少なくすることができる。
光重合開始剤(E)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。かかるフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、濃度0.1質量%のアセトニトリル溶液における波長390nmの吸光度が0.3以上である。当該フォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有する粘着剤層に対し、紫外線遮蔽性部材(具体的には、波長360nmの光線透過率が20%以下であり、波長390nmの光線透過率が10%以上であり、波長390nmの光線透過率の方が波長360nmの光線透過率よりも大きいもの)を介して活性エネルギー線を照射したとしても、光重合開始剤を開裂させるための波長(390nm付近)の活性エネルギー線が紫外線遮蔽性部材に遮蔽されず、光重合開始剤が問題なく開裂する。その結果、粘着剤の硬化反応が良好に進行し、粘着剤層が十分に硬化して、得られる硬化後粘着剤層の耐ブリスター性がより優れたものとなる。
粘着性組成物P中における光重合開始剤(E)の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(C)100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、特に4質量部以上であることが好ましく、さらには8質量部以上であることが好ましい。また、上記含有量は、30質量部以下であることが好ましく、特に20質量部以下であることが好ましく、さらには15質量部以下であることが好ましい。
(1-6)各種添加剤
粘着性組成物Pは、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤等を含有してもよい。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
粘着性組成物Pは、さらにシランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、被着体にガラス部材があると、得られる粘着剤は、当該ガラス部材との密着性が向上する。また、被着体がプラスチック板であっても、得られる粘着剤は、プラスチック板との密着性が向上する。これにより、得られる粘着剤は、耐ブリスター性により優れたものとなる。
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、1質量部以下であることが好ましく、特に0.5質量部以下であることが好ましく、さらには0.3質量部以下であることが好ましい。
(2)粘着性組成物の製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、ポリロタキサン化合物(B)と、活性エネルギー線硬化性成分(C)とを混合するとともに、所望により、架橋剤(D)、光重合開始剤(E)、添加剤等を加えることで製造することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、無溶剤にて重合してもよい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、ポリロタキサン化合物(B)、活性エネルギー線硬化性成分(C)、ならびに所望により、架橋剤(D)、光重合開始剤(E)、希釈溶剤、添加剤等を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
〔粘着剤〕
本実施形態に係る粘着剤は、前述した粘着性組成物Pを架橋することにより得られる。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~5分であることが好ましい。
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
粘着性組成物Pが架橋剤(D)を含有する場合、上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(D)を介して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)(およびポリロタキサン化合物(B))が架橋される。
本実施形態に係る粘着剤のゲル分率は、下限値として30%以上であり、40%以上であることが好ましく、43%以上であることが特に好ましい。粘着剤のゲル分率の下限値が上記であると、当該粘着剤は所定の凝集力を有することとなり、粘着シートを裁断加工等する際に刃に粘着剤が付着したり、保管時等に粘着剤層から粘着剤が染み出すことが効果的に抑制される。また、本実施形態に係る粘着剤のゲル分率は、上限値として80%以下であり、70%以下であることが好ましく、特に60%以下であることが好ましく、さらには55%以下であることが好ましい。粘着剤のゲル分率の上限値が上記であると、活性エネルギー線照射後の硬化後粘着剤が硬くなり過ぎず、硬化後粘着剤層の反り抑制効果がより優れたものとなる。ここで、粘着剤のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
〔粘着シート〕
本実施形態に係る粘着シートは、少なくとも、前述した粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着シートであり、好ましくは、当該粘着剤層の片面または両面に剥離シートを積層してなる粘着シートである。
本実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を図1に示す。
図1に示すように、一実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
(1)構成要素
(1-1)粘着剤層
粘着剤層11は、前述した粘着剤から構成され、すなわち、粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤から構成される。
本実施形態に係る粘着シート1における粘着剤層11の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として10μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、特に50μm以上であることが好ましく、さらには100μm以上であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの下限値が上記であると、2つの被着体の収縮率差に伴うずれを硬化後粘着剤層によってより緩和し易くなり、もって反り抑制効果により優れたものとなる。
また、粘着剤層11の厚さは、上限値として1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、特に300μm以下であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの上限値が上記であると、加工性が良好なものとなる。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
(1-2)剥離シート
剥離シート12a,12bは、粘着シート1の使用時まで粘着剤層11を保護するものであり、粘着シート1(粘着剤層11)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
(2)物性(ヘイズ値)
本実施形態に係る粘着シート1の粘着剤層11の23℃におけるヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、特に5%以下であることが好ましく、さらには3%以下であることが好ましい。粘着剤層11のヘイズ値が上記であることにより、活性エネルギー線硬化した硬化後粘着剤層が、常温環境下でも、低温環境下でも、光透過性に優れ、光学用途として好適なものとなる。なお、上記ヘイズ値は粘着剤層の厚さも含めた特性値であり、粘着剤層の厚さにかかわらず、上記ヘイズ値を満たすことが好ましい。
本実施形態における粘着剤層11は、厚さが50μmと比較的厚くても、上記ヘイズ値を満たし易い。本実施形態に係る粘着シート1では、前述した粘着剤組成物Pを使用することにより、上記のような低いヘイズ値を達成することができる。
一方、本実施形態に係る粘着シート1の粘着剤層11の23℃におけるヘイズ値の下限値は、特に限定されず、0%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましい。ここで、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
(3)粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例としては、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。以上の工程により、粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層11となる。以上の工程により、上記粘着シート1が得られる。この製造例によれば、粘着剤層11が厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
(4)用途
本実施形態に係る粘着シート1は、種々の用途に使用することができ、特に光学用として使用することが好ましい。中でも、-80℃~0℃、特に-60℃~-10℃、さらには-40℃~-20℃の環境下での使用が想定される光学用として使用することが好ましい。なお、上記温度の環境下での使用には、当該温度で常時曝される場合ばかりでなく、例えば、通常は室温下で使用されるが、時折、上記のような苛酷な環境下に持ち出されて使用される場合や、さらには、そのような環境下でかばん等に収納して運搬される場合も含まれる。また、光学用の2枚の硬質板同士を貼合する用途にも好ましく使用することができる。2枚の硬質板は、互いに線膨張係数が異なる材料からなることが好ましい。かかる光学用途としては、例えば、表示体(ディスプレイ)や太陽電池モジュールが好ましく挙げられ、特に車載用の表示体が好ましく挙げられる。
なお、光学用の2枚の硬質板同士を貼合する用途において、一方または両方の硬質板は、粘着剤層11側に段差を有するものであってもよいし、両方の硬質板とも段差を有しないものであってもよい。段差を有しない硬質板の場合でも、本実施形態における粘着剤層11は、応力緩和性に優れるという特性によって高い柔軟性を有しており、それにより、貼合時にしならない硬質板同士を良好に貼合することができる。
〔構成体〕
本発明の一実施形態に係る構成体は、一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材と、一の表示体構成部材と他の表示体構成部材とを互いに貼合する硬化後粘着剤層とを備えた構成体である。本実施形態に係る構成体は、表示体を構成する一部材であってもよいし、表示体そのものであってもよい。
一の表示体構成部材および他の表示体構成部材は、互いに線膨張係数が異なる材料からなることが好ましい。例えば、一の表示体構成部材および他の表示体構成部材の一方がプラスチック板を備えており、他方がガラス板を備えている構成が好ましく挙げられる。
上記硬化後粘着剤層は、前述した実施形態に係る粘着シートの粘着剤層を活性エネルギー線硬化させてなる硬化後粘着剤層である。
本実施形態に係る構成体の一例としての具体的構成を図2に示す。
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る構成体2は、第1の表示体構成部材21(一の表示体構成部材)と、第2の表示体構成部材22(他の表示体構成部材)と、それらの間に位置し、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22を互いに貼合する硬化後粘着剤層11’とを備えて構成される。本実施形態に係る構成体2では、第1の表示体構成部材21は、硬化後粘着剤層11’側の面に段差を有しており、具体的には、印刷層3による段差を有しているが、これに限定されるものではない。
上記構成体2が有する硬化後粘着剤層11’は、前述した粘着シート1の粘着剤層11を、活性エネルギー線照射により硬化させたものである。この硬化後粘着剤層11’を構成する硬化後粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と架橋剤(D)とから構成される架橋構造または(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)とポリロタキサン化合物(B)と架橋剤(D)とから構成される架橋構造を有するとともに、活性エネルギー線硬化性成分(C)の硬化物(重合物)を含有し、場合によって、光重合開始剤(E)および添加剤をさらに含有する。活性エネルギー線硬化性成分(C)は、重合して網目がある程度粗になった三次元網目構造を形成するとともに、上記の架橋構造に絡み付き、高次構造を形成しているものと推定される。かかる構造によって、優れた反り抑制効果および耐ブリスター性が発揮される。
なお、上記硬化後粘着剤層11’を構成する硬化後粘着剤に含まれる光重合開始剤(E)は、粘着性組成物Pに含まれていた光重合開始剤(E)が、活性エネルギー線照射によっても開裂せずに残存したものである。したがって、その含有量は多くなく、通常、粘着剤中にて0.00001質量%以上、0.1質量%以下であり、好ましくは、0.0001質量%以上、0.01質量%以下である。
硬化後粘着剤層11’の厚さは、基本的には粘着シート1の粘着剤層11の厚さと同じである。
硬化後粘着剤層11’を構成する硬化後粘着剤のゲル分率は、下限値として35%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、特に55%以上であることが好ましく、さらには60%以上であることが好ましい。硬化後粘着剤のゲル分率の下限値が上記であると、硬化後粘着剤層11’の耐ブリスター性がより優れたものとなる。また、硬化後粘着剤のゲル分率は、上限値として90%以下であることが好ましく、特に80%以下であることが好ましく、さらには70%以下であることが好ましい。硬化後粘着剤のゲル分率の上限値が上記であると、硬化後粘着剤層11’の反り抑制効果がより優れたものとなる。この硬化後粘着剤のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
硬化後粘着剤層11’の23℃におけるヘイズ値(以下「常温ヘイズ値」という場合がある。)は、10%以下であることが好ましく、特に4%以下であることが好ましく、さらには2%以下であることが好ましい。硬化後粘着剤層11’の常温ヘイズ値が上記であると、少なくとも常温環境下における光透過性に優れ、光学用途(表示体用)として好適なものとなる。上記常温ヘイズ値の下限値は、特に限定されず、0%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましい。
また、硬化後粘着剤層11’を-40℃の条件にて72時間保管した後、23℃の条件にて1時間放置したときの、当該硬化後粘着剤層11’のヘイズ値(以下「低温ヘイズ値」という場合がある。)は、15%以下であることが好ましく、特に10%以下であることが好ましく、さらには8%以下であることが好ましい。硬化後粘着剤層11’の低温ヘイズ値が上記であることにより、低温環境下でも、光透過性に優れ、光学用途(表示体用)として好適なものとなる。上記低温ヘイズ値の下限値は、特に限定されず、0%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましい。
ここで、上記低温ヘイズ値(%)から常温ヘイズ値(%)を差し引いた値(ヘイズ値上昇;ポイント)は、13ポイント以下であることが好ましく、特に7ポイント以下であることが好ましく、さらには4ポイント以下であることが好ましい。低温環境におかれたときにも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)とポリロタキサン化合物(B)との相溶性が維持されていると、ヘイズ値上昇が上記のように小さくなる。
本実施形態における硬化後粘着剤層11’は、前述した粘着剤組成物Pを使用することにより、常温環境下でも低温環境下でも、上記のような低いヘイズ値を達成することができるとともに、上記のような小さいヘイズ値上昇を達成することができる。
硬化後粘着剤層11’の全光線透過率は、99%以上であることが好ましい。硬化後粘着剤層11’の全光線透過率が上記であると、透明性が非常に高く、光学用途(表示体用)として特に好適である。なお、本明細書における全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準じて測定した値とする。
上記硬化後粘着剤層11’の粘着剤について、厚さ500μm、幅10mm、長さ75mmに成形し、測定長を20mmとし、23℃、50%RHの環境下で、200mm/分の速度で伸長させる引張試験を行って測定される破断伸度(%)は、800%以上であることが好ましく、特に900%以上であることが好ましく、さらには950%以上であることが好ましい。硬化後粘着剤層11’は、上記のように大きな破断伸度を有することにより、優れた応力緩和性を有するということができる。なお、上記破断伸度の上限値は特に限定されないが、通常は、3000%以下であることが好ましく、特に2000%以下であることが好ましく、さらには1700%以下であることが好ましい。
また、上記硬化後粘着剤層11’の粘着剤について上記引張試験を行って、粘着剤が破断するまでに測定される最大応力は、1.3N/mm2以下であることが好ましく、特に1.0N/mm2以下であることが好ましく、さらには0.9N/mm2以下であることが好ましい。これにより、硬化後粘着剤層11’は、優れた応力緩和性を有するということができる。なお、上記最大応力の下限値は特に限定されないが、通常は、0.1N/mm2以上であることが好ましく、特に0.3N/mm2以上であることが好ましく、さらには0.5N/mm2以上であることが好ましい。
本実施形態における硬化後粘着剤層11’は、前述した粘着剤組成物Pを使用することにより、上記のような破断伸度および最大応力を達成することができる。
構成体2としては、例えば、液晶(LCD)ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電子ペーパー等の表示体の一部を構成する部材であってもよいし、当該表示体そのものであってもよい。なお、当該表示体は、タッチパネルであってもよい。
第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22は、互いに線膨張係数が異なる材料からなることが好ましい。一例として、第1の表示体構成部材21の線膨張係数は、第2の表示体構成部材22の線膨張係数の2倍以上であることが好ましく、特に3倍以上であることが好ましく、さらには5倍以上であることが好ましい。また、第1の表示体構成部材21の線膨張係数は、第2の表示体構成部材22の線膨張係数の1000倍以下であることが好ましく、特に100倍以下であることが好ましく、さらには10倍以下であることが好ましい。
第1の表示体構成部材21は、具体的には、プラスチック板、またはプラスチック板を含む積層体などからなる保護パネルであることが好ましい。
ここで、プラスチック板は、通常、高温条件下、例えば、85℃の条件下に置かれた場合に内部の低沸点成分が気化し、プラスチック板と硬化後粘着剤層11’との界面に、気泡、浮き、剥がれ等のブリスターが生じるおそれが出てくる。しかしながら、本実施形態に係る構成体2が、そのようなプラスチック板を備えているとしても、硬化後粘着剤層11’によってブリスターの発生を良好に抑制することができる。
プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)板、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)板等のアクリル樹脂板、ポリカーボネート樹脂板にポリメタクリル酸メチル樹脂層等のアクリル樹脂層を積層したプラスチック板などが挙げられる。なお、上記のポリカーボネート樹脂板は、それを構成する材料として、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含有してもよく、また、上記のアクリル樹脂板は、それを構成する材料として、アクリル樹脂以外の樹脂を含有してもよい。なお、このプラスチック板は、紫外線吸収剤入りのもの(前述した紫外線遮蔽性部材に該当)であることも好ましい。
プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2~5mmであり、好ましくは0.4~3mmであり、特に好ましくは0.6~2.5mmであり、さらに好ましくは1~2.1mmである。
上記プラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。また、透明導電膜および金属層は、パターニングされていてもよい。
上記光学部材としては、例えば、飛散防止フィルム、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、透明導電性フィルム等が挙げられる。飛散防止フィルムとしては、基材フィルムの片面にハードコート層が形成されてなるハードコートフィルム等が例示される。
第2の表示体構成部材22は、具体的には、ガラス板、またはガラス板を含む積層体などからなる光学部材であることが好ましい。かかる光学部材としては、例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等の表示体モジュールや、表示体モジュールの一部としての光学部材、または表示体モジュールを含む積層体が挙げられる。
上記ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1~10mmであり、好ましくは0.2~5mmであり、より好ましくは0.8~2mmである。
第2の表示体構成部材22を構成するガラス板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。また、透明導電膜および金属層は、パターニングされていてもよい。光学部材としては、前述したものが例示される。
第1の表示体構成部材21が保護パネルである場合、印刷層3は、第1の表示体構成部材21における硬化後粘着剤層11’側に、額縁状に形成されることが一般的である。
印刷層3を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層3の厚さ、すなわち段差の高さは、通常3~50μm程度である。本実施形態における硬化後粘着剤層11’であれば、このような印刷層3に対しても十分な追従性を示し、高温高湿条件下でも印刷層3との界面に気泡、浮き、剥がれ等が発生しないものとすることができる。
上記構成体2を製造するには、一例として、粘着シート1の一方の剥離シート12aを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11を、第1の表示体構成部材21の印刷層3が存在する側の面に貼合する。
次いで、粘着シート1の粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11と第2の表示体構成部材22とを貼合して積層体を得る。また、他の例として、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22の貼合順序を入れ替えてもよい。
その後、上記積層体中の粘着剤層11に対して活性エネルギー線を照射する。これにより、粘着剤層11中のエネルギー線硬化性成分(C)が重合し、粘着剤層11が硬化して硬化後粘着剤層11’となる。粘着剤層11に対するエネルギー線の照射は、通常、第1の表示体構成部材21または第2の表示体構成部材22のいずれか一方越しに行い、好ましくは、保護パネルとしての第1の表示体構成部材21越しに行う。
ここで、活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~1000mW/cm2程度であることが好ましい。また、光量は、50~10000mJ/cm2であることが好ましく、80~5000mJ/cm2であることがより好ましく、300~2000mJ/cm2であることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
上記構成体2は、常温環境にて硬化後粘着剤層11’のヘイズ値を低く抑えつつ、低温環境、例えば-40℃の環境でも、硬化後粘着剤層11’におけるヘイズ値の上昇を抑制することができる。具体的には、それぞれのヘイズ値を8%以下に抑えることができる。そのため、常温環境下でも、低温環境下でも、硬化後粘着剤層11’の光透過性が優れ、構成体2の視認性が十分に担保される。なお、上記の効果は、硬化後粘着剤層11’の厚さが比較的厚くても、発揮されるものである。
また、上記構成体2においては、硬化後粘着剤層11’が反り抑制効果に優れるため、構成体2が高温条件下(例えば、105℃、乾燥条件、72時間)に置かれた場合でも、構成体2に反りが発生することを抑制することができる。
さらに、上記構成体2においては、硬化後粘着剤層11’が耐ブリスター性に優れるため、構成体2が高温高湿条件下(例えば、85℃、85%RH、72時間)に置かれ、第1の表示体構成部材21および/または第2の表示体構成部材22からアウトガスが発生した場合でも、硬化後粘着剤層11’と表示体構成部材21,22との界面において気泡、浮き、剥がれ等のブリスターが発生することが抑制される。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよく、また、剥離シート12aおよび/または12bの替わりに所望の光学部材が積層されてもよい。また、第1の表示体構成部材21は、印刷層3以外の段差を有するものであってもよいし、段差を有していなくてもよい。さらには、第1の表示体構成部材21のみならず、第2の表示体構成部材22も硬化後粘着剤層11’側に段差を有するものであってもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル55質量部、アクリル酸イソボルニル10質量部、N-アクリロイルモルホリン10質量部、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル25質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、ポリロタキサン化合物(B)(アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製,製品名「セルム スーパーポリマー SH3400P」,直鎖状分子:ポリエチレングリコール,環状分子:ヒドロキシプロピル基およびカプロラクトン鎖を有するα-シクロデキストリン,ブロック基:アダマンタン基,重量平均分子量(Mw)70万,水酸基価72mgKOH/g)5.0質量部と、活性エネルギー線硬化性成分(C)としてのトリメチロールプロパントリアクリレート(C1)5.0質量部と、架橋剤(D)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(D1;日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートL」)0.25質量部と、光重合開始剤(E)としての2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド0.6質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.28質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
[活性エネルギー線硬化性成分(C)]
C1:トリメチロールプロパントリアクリレート
C2:エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製,製品名「NKエステル A-TMPT-3EO」)
C3:ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート(新中村化学社製,製品名「NKエステル A-9G」,ポリエチレングリコールの重量平均分子量:400)
C4:ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学社製,製品名「NKエステル A-9300-1CL」)
[架橋剤(D)]
D1:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートL」)
D2:ヘキサメチレンジイソシアネート
3.粘着シートの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層(厚さ:50μm)を形成することで、塗布層付きの重剥離型剥離シートを作製した。
一方、上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層(厚さ:50μm)を形成することで、塗布層付きの軽剥離型剥離シートを2枚作製した。
上記で得られた塗布層付きの重剥離型剥離シートにおける塗布層側の面と、上記で得られた塗布層付きの軽剥離型剥離シートのうちの1枚における塗布層側の面とを貼合し、厚さ100μmの塗布層が、重剥離型剥離シートと軽剥離型剥離シートとにより挟持された第1の積層体を得た。
次に、上記第1の積層体から軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した塗布層の露出面と、上記で得られた塗布層付きの軽剥離型剥離シートのうちの残る1枚における塗布層側の面とを貼合し、厚さ150μmの塗布層が、重剥離型剥離シートと軽剥離型剥離シートとにより挟持された第2の積層体を得た。
その後、上記第2の積層体を、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:150μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを製造した。
なお、上記粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
4.構成体の製造
上記工程3で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した活性エネルギー線硬化性の粘着剤層を、ポリカーボネート樹脂板にポリメタクリル酸メチル樹脂層を積層したプラスチック板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR58U」,厚さ:1mm,紫外線吸収剤入り,線膨脹係数:7.0×10-5/℃)のポリカーボネート樹脂板側の面に貼合して、粘着剤層付きプラスチック板を得た。
上記で得られた粘着剤層付きプラスチック板から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した活性エネルギー線硬化性の粘着剤層を介して、当該プラスチック板を70mm×150mmの大きさのソーダライムガラス(日本板硝子社製,厚さ:0.7mm,線膨脹係数:9×10-6/℃)に貼付した。そして、50℃、0.5MPaの条件下で20分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。
次に、上記活性エネルギー線硬化性の粘着剤層に対して、プラスチック板越しに、下記の条件で活性エネルギー線を照射し、当該粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。このようにして、硬化後粘着剤層によりプラスチック板(一の表示体構成部材)とガラス板(他の表示体構成部材)とを貼合した構成体A(70mm×150mm)を得た。
また、上記プラスチック板を、ポリメタクリル酸メチル樹脂からなるプラスチック板(三菱化学社製,製品名「アクリライトL」,厚さ:2mm,線膨脹係数:7.0×10-5/℃)に変更する以外、上記と同様にして構成体Bを製造した。
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm2,光量1000mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
〔実施例2~7,比較例1~5〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの割合、ポリロタキサン化合物(B)の配合量、活性エネルギー線硬化性成分(C)の種類、架橋剤(D)の種類、光重合開始剤(E)の配合量、シランカップリング剤の配合量、および粘着剤層の厚さを表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートおよび構成体を製造した。
なお、粘着剤層の厚さが50μmの粘着シートは、以下のようにして製造した。
粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層(厚さ:50μm)を形成した。次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを製造した。
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに72時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、粘着剤のゲル分率(UV照射前)を導出した。結果を表2に示す。
一方、実施例および比較例で得られた粘着シートの軽剥離型剥離シート上にプラスチック板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR58U」,厚さ:1mm,紫外線吸収剤入り)を載置し、当該プラスチック板越しに、上記粘着シートの粘着剤層に対して下記の条件で活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。この硬化後粘着剤層の粘着剤について、上記と同様にしてゲル分率(UV照射後)を導出した。結果を表2に示す。
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm2,光量1000mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
〔試験例2〕(ヘイズ値の測定)
(1)紫外線照射前のヘイズ値
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、ソーダライムガラスに貼付した。次いで、粘着剤層から重剥離型剥離シートを剥がし、得られた積層体における粘着剤層について、23℃、50%RHの条件にて、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH-5000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
(2)紫外線照射後、23℃におけるヘイズ値
(1)と同様にして粘着シートをソーダライムガラスに貼付した後、当該粘着シートの重剥離型剥離シート上にプラスチック板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR58U」,厚さ:1mm,紫外線吸収剤入り)を載置し、当該プラスチック板越しに、上記粘着シートの粘着剤層に対して活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射して、硬化後粘着剤層とした。活性エネルギー線の照射条件は、試験例1と同様である。次いで、硬化後粘着剤層から重剥離型剥離シートを剥がし、得られた積層体における硬化後粘着剤層について、23℃、50%RHの条件にて、(1)と同様にしてヘイズ値(常温ヘイズ値;%)を測定した。結果を表2に示す。
(3)紫外線照射後、-40℃におけるヘイズ値
(2)と同様にして硬化後粘着剤層を形成し、得られた積層体を、-40℃の条件にて3日間保管し、その後、23℃、50%RHの条件にて1時間放置した。次いで、硬化後粘着剤層から重剥離型剥離シートを剥がし、得られた積層体における硬化後粘着剤層について、(1)と同様にしてヘイズ値(低温ヘイズ値;%)を測定した。結果を表2に示す。
(4)ヘイズ値上昇の算出
(3)で測定した低温ヘイズ値(%)から、(2)で測定した常温ヘイズ値(%)を差し引いて、ヘイズ値上昇(ポイント)を算出した。結果を表2に示す。
〔試験例3〕(全光線透過率の評価)
試験例2の(2)と同様にして得た硬化後粘着剤層について、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH-5000」)を用いて、JIS K7361-1:1997に準じて全光線透過率(%)を測定した。結果を表2に示す。
〔試験例4〕(引張試験)
実施例および比較例で得られた粘着シートの軽剥離型剥離シート上にプラスチック板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR58U」,厚さ:1mm,紫外線吸収剤入り)を載置し、当該プラスチック板越しに、上記粘着シートの粘着剤層に対して活性エネルギー線(紫外線)を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。活性エネルギー線の照射条件は、試験例1と同様である。
得られた硬化後粘着剤層を、合計厚さが500μmとなるように複数層積層した後、10mm幅×75mm長のサンプルを切り出した。サンプル測定部位が10mm幅×20mm長(伸長方向)になるように上記サンプルを引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)にセットし、23℃、50%RHの環境下で当該引張試験機を用いて引張速度200mm/分で伸長させ、破断伸度(%)を測定した。また、サンプルを破断伸度まで伸長させたときの最大応力(N/mm2)も測定した。結果を表2に示す。
〔試験例5〕(耐ブリスター性の評価)
実施例および比較例で製造した構成体A,Bを、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管した。そして、硬化後粘着剤層と被着体(プラスチック板,ガラス板)との界面における状態を目視により確認し、以下の基準により耐ブリスター性を評価した。結果を表2に示す。
◎…気泡や浮き・剥がれが無かった。
〇…浮き・剥がれは無く、微小な気泡が1個~2個あった。
△…浮き・剥がれは無く、微小な気泡が3個以上あった。
×…気泡が多数あるか、浮き・剥がれがあった。
〔試験例6〕(反り抑制効果の評価)
実施例および比較例で製造した構成体Aを、105℃、ドライの高温条件下にて72時間保管した。次いで、当該構成体を、プラスチック板側を上にして水平な台の上に置き、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。
その後、上記構成体の反りが見られない側の一辺を上記台と接するように指で固定して、上記一辺と対向する他の辺の各角(2点)の台からの反り量(角と台との距離)を測定し、各角の反り量を合計した。その結果に基づき、以下の通り評価した。結果を表2に示す。
◎:反り量の合計が10mm未満
○:反り量の合計が10mm以上、20mm未満
△:反り量の合計が20mm以上
×:気泡や浮き・剥がれが発生した。
表2から分かるように、実施例で得られた粘着シートは、常温環境下でも、低温環境下でも、ヘイズ値が低く、また、耐ブリスター性および反り抑制効果にも優れていた。