JP7272717B1 - ホエイ蛋白含有食品を利用したゲルデザートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、スポーツ選手であれば、良質なタンパク質を集中的に短時間で摂取するために、プロテインサプリメントが汎用されている。医療現場においても患者個別のニーズに応じた栄養補助食品が提供されている。
医療現場や介護の現場においては、固形物の咀嚼力が劣る患者も存在し、手軽に美味しく、持続的に栄養摂取ができる商品形態の開発とその提供が必要である。
また、飲食形態としては、摂取時にパウダーを水やお湯に溶かすが、食味改善のために香料や甘味料添加、あるいは果汁の配合によって味付けをし、摂取しやすい加工を施したサプリメントの提供がおこなわれている。
出願人は、この点に鑑み、当該課題解決の一つとして、特定の添加成分で構成する調製技術を見出し、特許発明をなした(特許第7121376号)。
すなわち、特許文献1の構成に対し、高カロリー素材である特定の中鎖脂肪酸を添加したものであり、その製造方法自体は特許文献1と同じく、一定の範囲でpH調整を図りつつ、密封加熱処理の工程を必須としていることから、簡便に摂取できる体をなしていない。
その結果、特定の成分組成で構成される組成物が所望の効果を発揮することを見出し、本発明を完成した。具体的には以下のとおりである。
原因としては、ゲル形成のための本質的な部分が阻害されていることが考えられた。つまり、ホエイ蛋白中のカルシウムイオン(+)とペクチン中のカルボキシル基イオン(-)への立体障害が影響しているものと考えられ、対策としては、両成分ともに高分子の相互作用故に、分散均一性を高める物理的な操作が必要との仮説を立て、さらに検討を進めた。
具体的には、1剤としては、低メトキシルペクチンと親和性の良い特定の分散剤を含む処方で構成し、2剤としては、ホエイ蛋白含有食品と親和性の良い特定の乳化剤を含む処方で構成される酸性ゲルデザートの製造方法が提供される。
また、当該製造方法に供される最適なゲル形成能向上添加剤が提供される。
(1)精製水に、低メトキシルペクチン及び分散剤として、デキストリン、難消化性デキストリン、マルトデキストリン、上白糖、オリゴ糖、トレハロース及び澱粉から選択された1種又は2種以上を添加混合した溶液を1剤とし、これにホエイタンパク含有食品、乳化剤及び酸味料で構成される混合物を2剤として添加振盪することによって得られる酸性ゲルデザートの製造方法。
(2)低メトキシルペクチンと分散剤との重量比率が1:4乃至1:7である(1)に記載の酸性ゲルデザートの製造方法。
(3)上白糖またはトレハロースと、デキストリン、難消化性デキストリン、マルトデキストリン、オリゴ糖または澱粉から選ばれる1種又は2種以上との重量比率が1:1乃至7:3である請求項1に記載の酸性ゲルデザートの製造方法。
一方の2剤は、ホエイ蛋白含有食品を親和性の良い乳化剤および酸味料で均一化する。これら1剤と2剤とを混合振盪することによって、ゲル状のデザート食品を得ることができる。
すなわち、外観上赤い粒々が出現し、その食感が味わえることが明らかとなったことから、特別の添加物を加えずとも違った商品の演出ができる。
なお、食感調整に寄与する成分としては、二糖類があげられ、上白糖及びトレハロース以外にも例えば、マルトース,ラクトースが例示できるが、好適には上白糖またはトレハロースである。
また、嗜好により、味覚調整を要する場合には、食味改善剤として、特定の甘味料を添加することも許容される。当該甘味料は、糖アルコールが好ましいが、その中でも、本発明の要求水準である起泡や溶解性に関する機能性を損なわない素材が選択され、代表的なものを例示すれば、非糖質系甘味料、エリスリトール、マルチトール、トレハロース、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
また、既述のとおり、2剤に分けて用時調製するのは、品質安定なゲル、食感の良好性担保のために必須の条件だからである。
具体的には、先ず、1剤における低メトキシルペクチン分子間相互の嵩高さを相性が良い分散剤でほどき、均一に分散溶解させて2剤におけるホエイ蛋白中のカルシウムイオンとの反応場を準備する。一方の2剤では、ホエイ蛋白中のカルシウムイオンが立体障害なく接近できるよう、予め、相性の良い乳化剤と酸味料によって均一化しておき、1剤存在下の水溶液に添加する。
これら両剤の相互作用によって、迅速なゲルが形成されるが、当該方法によれば、加熱冷却等の操作も一切必要なく、上記各素材に備わる物理化学的特性の応用によって所望のゲル状デザート食品が提供される得るものである。
ここで、当該際立った食感の演出においては、単糖の2分子がグリコシド結合した二糖類の存在が重要であり、例えば、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、上白糖およびトレハロース等が例示されるが、分散性との兼合いから好適には上白糖またはトレハロースが最も好ましい。
ここで、WPC(Whey Protein Concentrate・ホエイプロテインコンセントレート)は、濃縮乳清たんぱく質、濃縮膜処理法とも呼ばれ、ホエイの中で最も定番である。原料の乳清をフィルターろ過し、さらに濃縮する製法で、タンパク質のみならずビタミンやミネラルなどの栄養素も取ることができるのは、上記のとおりである。
(試験方法)
本発明で選定特定した1剤で構成する分散剤のゲル形成能等について、以下の手順で評価した。
(1)供試試料
1剤で構成する分散剤として、デキストリン(マックス1000;松谷化学工業社)、難消化性デキストリン(FIDEX85;samyang社)、マルトデキストリン(TK-16AG;松谷化学工業社)、上白糖(上白糖FNS;フジ日本製糖社)、オリゴ糖(オリゴトース(粉末);三和澱粉工業社)、トレハロース(トレハ;林原社)およびデンプン(NSP-B1;日澱化学社)を使用した。
(2)水温;9℃乃至12度(冷水)
(3)室温;20℃
(4)操作方法;表1及び表2に開示する1剤と2剤を試験に供した。
なお、段落「0022」および「0033」で技術開示・説明したように、1剤と2剤の同時混合では、所望のゲル形成ができないため、以下のとおり、1剤調整の後、2剤を混合する手順を踏むことが必須である。また、分散剤無配合の場合、下記の手順を踏んだとしても、所望のゲルは形成しないことが確認できている。
1)シェイカーに冷水を200ml入れ、1剤を入れる。
2)フタを閉め、フタを持ちながら10回まわした後、縦に15秒間シェイクする。
3)1剤を溶かし終えたらフタを外し、溶液が入ったシェイカーに2剤を入れる。
4)フタを閉め、フタを持ちながら10回まわした後、縦に15秒シェイクする。
5)シェイカーから小皿に取り出す。
6)15分放置して離水の有無を確認する。
最適処方(基準)を軸に、検証処方を下記のように点数化する。
最終評価は、以下に示した各評価項目について、パネラー3人が3回実施の上、獲得した点数の平均点を算出し、割り付けて行う。
「表面の滑らかさ」(-1:ブツブツ多数で荒れている←→+1:液体)
「食感の滑らかさ」(-1:ざらつく←→+1:口にまとわりつく)
「スプーンの跡」 (-1:スプーンの跡が残らない←→+1角が残るほど跡がつく)
「とろみ」 (-1:シェイカーを傾けると液体が落ちる←→+1:とろみなし)
「15分放置した際の離水」(-1:あり、0:なし)
結果を表3に示した。7種の分散剤いずれの使用においても全てゲル化は効率的に形成し、1剤を構成する分散剤として適していることが確認できた。
但し、ゲル自体の性状にはそれぞれ特徴があり、その中でも澱粉は滑らかさ(表面・食感)の点で他の分散剤を使用した場合と劣り、嗜好性を加味すれば、他の分散剤との併用も適宜必要であると考えられる。
上白糖はゲルが凝集した擬似果肉のようなゲルが現れ、トレハロースは上白糖よりも小さなゲルの凝集が均一に現れることが確認され、ゲル強度・スピードの調整のほか、見た目・食感の違いを付与させる目的でも分散剤の選定の軸が広がることが示唆された。
(試験方法)
試験1の結果を受け、併用の効果を確認した。特に、7種類のうち、順位づけた成分のうち、全体評価の結果、性能向上を要すると思われる2成分「上白糖とマルトデキストリン(TK-16AG)」を選択し、一方の量を固定し、他の量比を変化させて、各評価項目の併用効果を検証した。
(1)供試試料
1剤で構成する分散剤として、マルトデキストリン(TK-16AG;松谷化学工業社)、上白糖(上白糖FNS;フジ日本製糖社)を固定し、他分散剤を併用した。
表4及び表5に組成を開示する。
「確認する組み合わせ」
下記の%は1剤全体処方に対する配合割合を表す。
1)タイプ1 上白糖 :分散剤(6種)=20%:55.425%
6種;デキストリン、難消化性デキストリン、マルトデキストリン、オリゴ糖、トレハロース、デンプン
2)タイプ2 マルトデキストリン:分散剤(6種)=55.425%:20%
6種;デキストリン、難消化性デキストリン、上白糖、オリゴ糖、トレハロース、デンプン
(2)水温、(3)室温および(4)操作方法については、試験1に準じた。
結果を表6乃至表9に示した。
1)タイプ1 上白糖 :分散剤(6種)=20%:55.425%の場合
本試験で構成した分散剤2種の組み合わせにおいて、いずれも所望のゲルを形成した。糖度の高い分散剤(オリゴ糖、トレハロース)の併用に関しては、2種組み合わせることでより滑らかさが増す傾向にあった。
試験結果1と比較した場合、いずれの場合にもゲル状態は向上し、いずれの場合にもゲル形成時の挙動(滑らかさ・ゲル強度・離水)が改良される傾向にあった。澱粉の場合にはその向上度が顕著であり、明らかに併用する意義が認められた。
上白糖を組み合わせた場合、特に難消化性デキストリン、トレハロース、澱粉との併用では赤い粒の出現が比較的多く見られた。
本試験で構成した分散剤2種の組み合わせにおいて、いずれも所望のゲルを形成した。食感と表面の滑らかさは、2種組み合わせで改善される傾向にあった。
試験結果1と比較した場合、粉っぽさは残るものの、澱粉使用のゲル化の挙動(滑らかさ・ゲル強度・離水)が改良される傾向にあった。
また、併用によって、赤い粒の形成が減る傾向にあった。特にトレハロースは赤い粒が均一化される傾向であり、デキストリンと同程度までに減少した。粒の食感を残すか減らすかについても、分散剤の組合せ方によって食感、舌触り感の調整が可能であることが示唆された。
上白糖やトレハロース等との組み合わせにおいては、赤い粒が形成されやすい傾向がある。マルトデキストリン主体の分散剤は上白糖との組み合わせに比べ、1剤の溶解性は良くなる傾向にあった。
このように、分散剤を併用することによって、多様な食感調整が可能であることが示唆された。
試験例1および試験例2の検討を通して、赤い粒の発生には、上白糖やトレハロース等の二糖類の存在が関係していることが判明した。食感のバリエーションを図るうえで意義があることから、他の分散剤と上白糖又はトレハロースとの量比検証を行うこととした。
(1)供試試料
表11の構成において、次の量比での検証をおこなった。
1)上白糖orトレハロース:マルトデキストリン=50:50
2)上白糖orトレハロース:マルトデキストリン=70:30
(2)水温、(3)室温および(4)操作方法については、試験1に準じた。
結果を表11に示した。
試験例1の結果も踏まえ、「上白糖orトレハロース:マルトデキストリン」の5つの量比で赤い粒の発生を検証した。
今回の結果によれば、分散剤のうち、上白糖orトレハロースが無配合だと赤い粒は発生しないこと、26%以下だと赤い粒は発生しづらく、50%以上になると赤い粒は大小・多少問わず発生するとわかった。
また赤い粒が発生することで、2種の食感を一度に感じることができる。すなわち、ゲル形成直後の赤い粒の食感は、シャリシャリとしており、周りのなめらかなゲルとは異なる舌触り感を得ることができる。
このように、一度に2種の食感を作り出し際には、上白糖orトレハロースを50%以上配合することで調整が可能だと分かった。
Claims (3)
- 精製水に、低メトキシルペクチン及び分散剤として、デキストリン、難消化性デキストリン、マルトデキストリン、上白糖、オリゴ糖、トレハロース及び澱粉から選択された1種又は2種以上を添加混合した溶液を1剤とし、これにホエイ蛋白含有食品、乳化剤及び酸味料で構成される混合物を2剤として添加振盪することによって得られる酸性ゲルデザートの製造方法。
- 低メトキシルペクチンと分散剤との重量比率が1:4乃至1:7である請求項1に記載の酸性ゲルデザートの製造方法。
- 上白糖またはトレハロースと、デキストリン、難消化性デキストリン、マルトデキストリン、オリゴ糖または澱粉から選ばれる1種又は2種以上との重量比率が1:1乃至7:3である請求項1に記載の酸性ゲルデザートの製造方法。
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