図1は、本実施形態で使用するインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成図である。図1において、x方向は水平方向、y方向(紙面と直交する方向)は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3とで個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFで自動給送される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを積載可能な第1カセット5Aと第2カセット5B(第1の供給源)とが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体Sが、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体Sが、それぞれ積載された状態で収容されている。各カセットの近傍にはそれぞれ、カセットに積載された記録媒体Sを1枚ずつ分離して給送するためのカセット給送ユニット(第1の給送部)が設けられている。以下の説明では、第1カセット5Aから記録媒体Sを給送するためのカセット給送ユニットを第1給送ユニット6Aと称し、第2カセット5Bから記録媒体Sを給送するカセット給送ユニットを第2給送ユニット6Bと称す。
プリント部2における筐体4の側部には、ユーザが記録媒体Sを比較的少数の記録媒体Sを供給する際に使用する手差しトレイ(第2の供給源)129が設けられている。手差しトレイ129には上記カセットのような定型の記録媒体Sのみならず、不定形のサイズの記録媒体Sを載置することが可能である。手差しトレイ129の所定位置に記録媒体Sを載置することにより、手差し給送ユニット6C(第2の給送部)が動作し、記録媒体Sを後述の搬送経路へと給送することができる。プリント部2は、第1の給送ユニット6A、第2の給送ユニット6B、および手差し給送ユニット6Cのうち、いずれか1つの給送ユニットを選択的に動作させて、記録ヘッド8とプラテン9との間の記録領域(被供給部)Pに1枚ずつ記録媒体Sの供給を行う。
搬送ローラ7、第1の中間ローラ71、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド部材18、インナーガイド19およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に搬送するための搬送機構(搬送手段)である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8(プラテン9)の上流側および下流側に配され、搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、排出モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8(プラテン9)の下流側に配される搬送ローラ7および排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
記録装置1には、上記駆動ローラを駆動するための複数のモータが設けられており、上記駆動ローラのそれぞれは、複数のモータのうちの1つに接続されている。モータと駆動ローラの対応関係については後に詳しく説明する。
ガイド部材18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材であって湾曲した側面を有し、その側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、記録媒体Sの一面に記録を行う片面記録動作と両面記録動作とに応じて、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載・保持するためのトレイである。
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、図1におけるy方向に沿って、適用可能な記録媒体Sの最大幅に相当する分だけ複数配列されている。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sの表面(第1面)とは反対側の面(裏面(第2面))を支持する。記録ヘッド8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う。メンテナンス動作については後に詳しく説明する。
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括的に制御するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括的に制御するコントローラユニット(制御手段)100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
コントローラユニット100において、CPU等により構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとして使用ながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してそのコマンドをスキャナ部3に送信する。
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための部分である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202はROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従ってRAM204をワークエリアとして使用しながらプリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8による記録動作(インク吐出動作)を実行可能とするために、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して図1に示す、第1、第2給送ユニット6A、6B、手差給送ユニット6C、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を適宜駆動して、記録媒体Sの給送および搬送を行なう。
搬送制御部207は、記録媒体Sの搬送状態を検知する検知部212と、複数の駆動ローラを駆動する駆動部211とに接続されており、検知部212から得られる検知結果に基づいて駆動部211を用いて記録媒体Sの給送および搬送を制御する。検知部212は、記録媒体Sの有無を検知する検知部材20と駆動ローラの回転量を検出するエンコーダ21を有している。
搬送制御部207によって記録媒体Sの搬送が行なわれる過程で、プリントコントローラ202の指示に従って、記録ヘッド8による記録動作が実行される。
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとして使用しながらスキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の記録媒体Sを支持する支持面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置1における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図3に示す記録位置に移動させる際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、キャップユニット10は、記録ヘッド8の吐出口面8aから離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。この状態で記録動作が行われる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
次に、プリント部2における記録媒体Sの搬送経路について説明する。記録コマンドが入力されると、プリントコントローラ202は、まず、メンテナンス制御部210およびヘッドキャリッジ制御部208を用いて、記録ヘッド8を図3に示す記録位置に移動させる。その後、プリントコントローラ202は搬送制御部207を用い、記録コマンドに従って第1給送ユニット6A、第2給送ユニット6B、および手差し給送ユニット6Cの中のいずれか1つを駆動し、記録媒体Sを給送する。
図4(a)~(c)は、第1カセット5Aに収容されているA4サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第1カセット5A内の1番上に積載された記録媒体Sは、第1給送ユニット6Aによって2枚目以降の記録媒体Sから分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aとにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域(被供給位置)Pに向けて搬送される。図4(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、第1給送ユニット6Aに給送されて記録領域Pに到達する間に、水平方向(x方向)から、水平方向に対して約45度傾いた方向に変更される。
記録領域Pでは、記録ヘッド8に設けられた複数の吐出口から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。記録領域に到達した記録媒体Sは、プラテン9によってその記録ヘッドと対向しない一面(裏面(第2面))が支持されており、吐出口面8aと記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された後の記録媒体Sは、搬送ローラ7と拍車7bに案内されながら、先端が右に傾いているフラッパ11の左側を通り、ガイド部材18に沿って記録装置1の鉛直方向上方へ搬送される。図4(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、水平方向に対し約45度傾いた記録領域Pの位置から、搬送ローラ7と拍車7bによって鉛直方向上方に変更されている。
記録媒体Sは、鉛直方向上方に搬送された後、排出ローラ12と拍車7bによって排出トレイ13に排出される。図4(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。排出された記録媒体Sは、記録ヘッド8によって画像が記録された面を下にした状態で、排出トレイ13上に保持される。
図5(a)~(c)は、第2カセット(第1の供給源)5Bに収容されているA3サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第2カセット5B内の1番上に積載された記録媒体Sは、第2給送ユニット6Bによって2枚目以降の記録媒体Sから分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aとにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
図5(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。第2給送ユニット6Bによって給送された記録媒体Sが記録領域Pに到達するまでの搬送経路には、複数の搬送ローラ7とピンチローラ7aおよびインナーガイド19が配されることで、記録媒体SはS字状に湾曲されてプラテン9まで搬送される。
その後の搬送経路は、図4(b)および(c)で示したA4サイズの記録媒体Sの場合と同様である。図5(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。図5(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
図6(a)~(d)は、A4サイズの記録媒体Sの裏面(第2面)に対して記録動作(両面記録)を行う場合の搬送経路を示す。両面記録を行う場合、第1面(表面)を記録した後に第2面(裏面)に記録動作を行う。第1面を記録する際の搬送工程は図4(a)~(c)と同様であるので、ここでは説明を省略する。以下、図4(c)以後の搬送工程について説明する。
記録ヘッド8による第1面への記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、プリントコントローラ202は、搬送ローラ7を逆回転させて記録媒体Sを記録装置1の内部へ搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が左側に傾くように制御されるため、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)はフラッパ11の右側を通過して鉛直方向下方へ搬送される。図6(a)は、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)が、フラッパ11の右側を通過する状態を示す。
その後記録媒体Sは、インナーガイド19の湾曲した外面に沿って搬送され、再び記録ヘッド8とプラテン9の間の記録領域Pに搬送される。この際、記録ヘッド8の吐出口面8aに、記録媒体Sの第2面が対向する。図6(b)は、第2面の記録動作のために、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。
その後の搬送経路は、図4(b)および(c)で示した第1面を記録する場合と同様である。図6(c)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。図6(d)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
図6ないし図12に示すように、本実施形態における記録装置1には、以上説明した搬送経路の他、手差し給送トレイ129に載置された記録媒体を給送する手差し給送ユニット(第2の給送部)6Cに接続される搬送経路C2が設けられている。手差し給送ユニット6Cは、記録装置1の一側部(図中、右側部)から突出する手差しトレイ(第2の供給源)129に載置された比較的少量の記録媒体Sを内部の搬送経路へと給送するものである。手差し給送ユニット6Cによって給送された記録媒体Sの搬送経路C2は、第2カセット5Bに収容されている記録媒体Sが給送されるときのS字状の搬送経路C1と合流位置Paで合流している。給送ユニット6Cは合流位置Paの下流側に位置している搬送ローラ7まで記録媒体Sを給送する。その後、記録媒体は、搬送ローラ7とピンチローラ7aによって搬送され、第2のカセットから給送された記録媒体Sの搬送経路C1と同一の搬送経路を経て記録領域Pに達する。なお、手差し給送ユニット6Cについては、後に詳しく説明する。
次に、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作について説明する。図1でも説明したように、本実施形態のメンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングでこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。
図7は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から図7における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
一方、記録ヘッド8を図3に示す記録位置から図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
図8は、記録装置1における複数のモータと駆動ローラの対応関係を示す図である。第1給送モータ22は、第1カセット5Aから記録媒体Sを給送するための第1給送ユニット6Aに設けられた後述の第2給送ローラ42を回転させる。第2給送モータ23は、第2カセット5Bから記録媒体Sを給送するための第2給送ユニット6Bに設けられた第2給送ローラ42を回転させる。第3給送モータ136は、手差し給紙トレイ81から記録媒体Sを給送するための手差給送ユニット6Cに設けられた第2手差しローラ132を駆動する。
第1搬送モータ24は、第1給送ユニット6Aにより給送された記録媒体Sを最初に搬送する第1中間ローラ71Aを駆動する。第2搬送モータ25は、第2給送ユニット6Bにより給送された記録媒体Sを最初に搬送する第2中間ローラ71Bを駆動する。
主搬送モータ26は、プラテン9の上流側に配され主に記録中の記録媒体Sを搬送する主搬送ローラ70を駆動する。また主搬送モータ26は、プラテン9の下流側に配され主搬送ローラ70により搬送される記録媒体Sを更に下流側に搬送する2つの搬送ローラ7を駆動する。
第3搬送モータ27は、第1面に記録が行われた記録媒体Sを下方に搬送する2つの搬送ローラ7を駆動する。また第3搬送モータ27は、インナーガイド19に沿って配された2つの搬送ローラ7の駆動も行う。この2つの搬送ローラ7は、第2カセット5Bから給送され第2中間ローラ71Bによって搬送された記録媒体S、または第1面に記録が行われ表裏が反転された記録媒体Sを記録ヘッド8に向けて搬送する。
第4搬送モータ28は、記録動作が行われた後の記録媒体Sを上方または下方に搬送する2つの搬送ローラ7を駆動する。排出モータ29は、記録が行われた記録媒体Sを排出トレイ13へ排出する排出ローラ12を駆動する。このように、3つの給送モータ22、23、136、5つの搬送モータ24~28、および排出モータ29のそれぞれは、1つ以上の駆動ローラに対応づけられている。
一方、搬送経路に沿った8箇所には、記録媒体Sの有無を検知するための検知部材20が配されている。個々の検知部材20は搬送経路を挟んで配置されたセンサとミラーによって構成され、搬送経路の一方側に発光部と受光部を有するセンサが配置され、搬送経路の他方側であってセンサと対向する位置にミラーが配置される。センサの発光部から発せられた光がミラーで反射し受光部がこれを検知したか否かによって、記録媒体Sの有無すなわち先端または後端の通過を判別する。
搬送制御部207は、複数の検知部材20それぞれの検知結果および各駆動ローラの回転量を検知するエンコーダの出力値に基づいて、第1、第2、第3給送モータ22、23、136、搬送モータ24~28、および排出モータ29を個別に駆動する。これによって装置全体の搬送が制御される。
以上のように本実施形態における記録装置1は、記録媒体Sに対して記録を行う記録ヘッド(記録手段)8と、記録ヘッド8へ記録媒体Sを供給する供給装置1Aとを備える。供給装置1Aは、第1、第2の給送ユニット(第1の給送部)6A、6Bと、手差給送ユニット(第2の給送部)6Cと、記録媒体Sを選択的に給送する給送装置と、給送された記録媒体Sを搬送する搬送手段とを備える。
また、本実施形態における供給装置1Aには、記録媒体Sを積載する積載部として、第1カセット5Aと第2カセット5Bが上下2段に設置されている。前述のように第1カセット5Aの近傍には第1給送ユニット6Aが、第2給送ユニット6Bの近傍には第2給送ユニット6Bがそれぞれ配置されている。第1カセット5Aに設けられている第1給送ユニット6Aと第2カセット5Bに設けられている第2給送ユニット6Bとは、給送し得る最大の記録媒体Sのサイズが異なる点を除き同様の構成を有している。よって以下では、図9に示す第2カセット5Bから給送を行う第2給送ユニット6Bを例に採り説明する。なお、図中、x、y、zに示す方向は図1と同様である。
図9は、第2給送ユニット6Bおよび手差し給送ユニット6Cを示す縦断面図であり、図1に示すA部の構成をより詳細に示している。
第2給送ユニット6Bは図1に示す第2カセット5Bから記録媒体Sを1枚ずつ給送するものであり、第1給送ローラ32、第2給送ローラ42、分離ローラ52などを含み構成されている。第2給送ローラ42は、前述の第1給送モータ(給送ローラ駆動手段)22を駆動源として回転し、その回転力は所定の回転伝達機構を介して第1給送ローラ32に伝達される。
記録媒体Sの給送に際し、第1給送ローラ32は、第2給送カセット5B(図1参照)に収容されている記録媒体Sの上面に当接し、記録媒体Sを第2カセット5Bから送り出す。第2カセット5Bから送り出された記録媒体Sは、第2給送ローラ42と分離ローラ52とにニップされ、搬送経路C1へと給送される。第2カセット5Bから給送された記録媒体Sは、第1中間ローラ71Bとピンチローラ7aとにニップされて、湾曲した搬送経路C1に沿って下流側へと搬送される。第1中間ローラ71Bとピンチローラ7aとで搬送された記録媒体Sは、搬送経路C1に配置された2つの搬送ローラ7とピンチローラ7aによってS字状に湾曲しながら搬送され、プラテン9と記録ヘッド8とが対向する記録領域(被供給位置)Pへと搬送される。
第2カセット5Bから給送された記録媒体Sがプラテン9へと搬送される間の搬送経路C1は、複数のガイド部材によって、記録媒体Sの移動がスムーズに行われるような空間領域が形成されている。本実施形態では、ガイド部材として、前述のガイド部材18およびインナーガイド19に加え、所定の間隙を介して相対向するガイド部材190、191と、手差し給送ユニットに設けられたガイド部材192などが設けられている。ガイド部材190、191は、搬送経路(第1の搬送経路)C1を構成し、ガイド部材192は第2の搬送経路C2を構成している。そして、以下に説明する手差し給送ユニット6Cに隣接するガイド部材191には開口部191aが形成されている。この開口部191aに手差し給送ユニット6Cにおける構成部分の一部が対向しており、その構成部分の一部が、後に説明するように、開口部191aを通過して搬送経路C1に対し突出、退避可能となっている。
一方、第2給送ユニット6Bの上方部には、筐体4の側部に突出する手差しトレイ129から搬送経路C1に向けて記録媒体Sを給送する手差し給送ユニット6Cが設けられている。手差しトレイ129には複数枚の記録媒体Sが積載可能であり、ここに積載された記録媒体Sは、手差し給送ユニット6Cによって1番上の記録媒体Sから順次、1枚ずつ給送される。
給送ユニット6Cには、第1手差しローラ131、第2手差しローラ132、および分離ローラ182が設けられている。第1、第2手差しローラ131、132は、ローラ保持部材133によって互いに一定の間隔を介して回転可能に支持されている。第2手差しローラ132は、第3給送モータ136の駆動力によって回転し、その回転力は所定の動力伝達機構を介して第1手差しローラ131に伝達される。
ローラ保持部材133は、第2手差しローラ132の駆動軸であるローラ駆動軸135を中心に上方および下方へと移動可能である。このローラ保持部材133を、ローラ駆動軸135を中心として下方へと移動させることにより、第1手差しローラ131は、手差しトレイ129に積載された記録媒体Sの1番上の記録媒体Sの上面に当接する。また、ローラ保持部材133を、ローラ駆動軸135を中心に上方へと移動させることにより、第1手差しローラ131は手差しトレイ129に積載された記録媒体Sの上面から離間する。
第2手差しローラ132は、ローラ駆動軸135に固定されており、ローラ保持部材133の移動位置に拘わらず一定の位置に保持されている。また、分離ローラ182は、分離ローラ保持部材183により第2手差しローラ132に対して接触、離間可能に保持されており、第2手差しローラ132との間で記録媒体Sをニップすることができる。
次に、手差し給送ユニット6Cにおける上記各ローラの動作を説明する。図9および図10は、手差しトレイ129に記録媒体Sを載置する前の初期状態を示している。この初期状態では、手差し給送ユニット6Cのローラ保持部材133がローラ駆動軸135を中心に上方へと移動し、第1手差しローラ131は手差しトレイ129の上面から上方へと離間している。この状態でユーザは、第1手差しローラ131と接触しない程度の枚数を手差しトレイ129上に載置することができる。
また、分離ローラ保持部材183を含む後述の離間機構によって、分離ローラ182は、第2手差しローラ132に当接する上昇位置に保持されている。このとき、分離ローラ保持部材183は、搬送経路C1を形成するガイド部材191に形成されている開口部191aの内側端縁部より外方位置、すなわち、搬送経路C1の内方に突出しない位置に保持されている。従って、この初期状態において、第2給送ユニット6Bおよび搬送ローラによる給送および搬送が行われたとしても、記録媒体Sは図9の矢印に示すように、分離ローラ保持部材183と干渉することなく搬送経路C1に沿ってスムーズに移動することができる。
図11は、手差しトレイ129に載置された記録媒体Sの給送動作(手差し給紙)が開始された状態を示している。手差し給紙を開始するに際し、ローラ保持部材133はローラ駆動軸135を中心に下方へと移動し、第1手差しローラ131が手差しトレイ129に載置された記録媒体Sの中の1番上の記録媒体Sに当接する。その後、第3給送モータ136が駆動され、ローラ駆動軸135と共に第2手差しローラ132が回転すると、その回転力は動力伝達機構を介して第1手差しローラ131に伝達され、第1手差しローラ131も回転する。
第1手差しローラ131の回転により、第1手差しローラ131に当接している記録媒体Sはガイド部材192に沿って第2手差しローラ132へと送られる。第2手差しローラ132に達した記録媒体Sは、回転状態にある第2手差しローラ132と分離ローラ182とにニップされる。分離ローラ182には、後述のトルクリミッタ184が連結されており、回転に所定の制動がかけられている。このため、仮に1番上の記録媒体Sと共に下方に位置する記録媒体Sが手差しカセットから重送されたとしても、重送された複数枚の記録媒体Sは、制動力が付与された分離ローラ182によって、1番上の記録媒体Sとその記録媒体以外の記録媒体とに分離される。これにより、1番上の記録媒体Sのみが第2手差しローラ132より下流側へと搬送される。なお、分離された記録媒体Sは、図12に示すようにガイド部材192から突出し、かつ手差しトレイ129側へと移動する戻し部材173によって手差しトレイ129へと送り戻される。
図12は、第2手差しローラ132によって給送された記録媒体Sが搬送ローラ7とピンチローラ7aとの間に送り込まれた状態を示す図である。搬送ローラ7は、手差し給送ユニット6Cによる給送が開始されると、第3搬送モータ27の駆動によって回転動作を開始する。このため、搬送ローラ7へと給送された記録媒体Sは、回転状態にある搬送ローラ7によってピンチローラ7aとの間でニップされ、両ローラ7、7aによって搬送経路C1の下流側へと搬送される。
搬送ローラ7による搬送動作が開始されると、搬送ローラ7にかかる負荷を軽減するため、分離ローラ182は、第2手差しローラ132から離間して記録媒体Sに対するニップを解除する。分離ローラ182の下降は、後述のカムによって分離ローラ保持部材183が下降することによって行われる。
分離ローラ保持部材183が下降する前の初期状態(図10)においては、分離ローラ保持部材183は、その全ての部分が、ガイド部材191に形成された開口部191aの内側端縁より外側(搬送経路C1の外側)に位置している。しかし、図12に示すように、分離ローラ保持部材183が下降すると、その一部が、開口部191aから搬送経路C1の内方へと突出可能となっている。手差し給送ユニット6Cから給送された記録媒体Sが搬送ローラ7によって搬送されている状態では、搬送経路C1が記録媒体Sの搬送に使用されることはない。従って、本実施形態では、この非使用状態にある搬送経路C1内の空間領域を利用して分離ローラ保持部材183の移動を行う。つまり、搬送経路C1によって構成される空間領域の一部を、手差し給送ユニット(第2の給送部)6Cの給送動作過程おいて使用される空間領域の少なくとも一部と兼用するように構成されており、これによって装置の小型化を図ることが可能になる。
次に、手差し給送ユニット6Cの構成および動作を、さらに詳細に説明する。
図13は、手差し給送ユニット6Cの外観を示す斜視図である。なお、図中、x、y、zに示す方向は図1と同様である。
図13に示すように、手差し給送ユニット6Cはy方向(記録媒体Sの幅方向)に延在し、その一側面(記録媒体S搬送方向の上下流側に位置する側面)には手差しトレイ129が固定される。また、手差し給送ユニット6Cには手差しトレイ129に積載された記録媒体Sを前述の搬送経路C1へと案内するガイド部材192が設けられている。ガイド部材192の下方部および両側部には、ローラ駆動軸135を中心としたローラ保持部材133の移動機構、手差しローラを移動させる手差しローラ移動機構、分離ローラ182を移動させる分離ローラ移動機構などを含む動作機構が設けられている。なお、本実施形態においては、手差し給送時においてガイド部材192の上面に残された記録媒体Sを手差しトレイ129へと戻す複数(図では4個)の戻し部材173が設けられている。
図14は、図13に示した手差し給送ユニット6Cからガイド部材192を取り外し、内部の構成を示した斜視図である。図示のように、第2手差しローラ132が固定されるローラ駆動軸135は、y方向に延在している。このローラ駆動軸135は、図8に示すように、第3給送モータ136(手差し給送モータ)の駆動力によって回転する。第3給送モータ136の駆動力は、図13に示すようにローラ駆動軸135の一端部に固定されたギア151およびこれに連動するギア152などを含む所定の動力伝達機構によってローラ駆動軸135に伝達される。前述のように、ローラ駆動軸135には第2手差しローラ132が固定されているため、第2手差しローラ132はローラ駆動軸135と共に回転し、その回転力はローラ保持部材133に設けられた所定の動力伝達機構によって第1手差しローラ131に伝達される。
ローラ駆動軸135の他端部(図13、図14において左端部)には駆動ギア153が固定されている。駆動ギア153の回転力は二段ギア154を介して平ギア155に伝達される。なお、二段ギア154は、その大径部154aが駆動ギア153に噛合し、小径部154bが平ギア155に噛合している。平ギア155は、Y方向に延在する離間駆動軸156に固定されており、離間駆動軸156は平ギア155と共に回転する。離間駆動軸156には、ローラ保持部材133の上下方向への移動を制御するための保持部材移動カム157と、戻し部材173の移動を制御するための戻しカム171が固定されている。保持部材移動カム157と戻しカム171は、いずれも外周面が所定のプロファイルを有するカム面となっている。
保持部材移動カム157のカム面にはローラ駆動軸135に回動自在に支持された従動アーム158の一端部が常時当接しており、カム面のプロファイルに従ってローラ駆動軸135を中心として上方または下方へと回転する。この従動アーム158は、ローラ駆動軸135に回動自在に支持されている前述のローラ保持部材133に固定されている。よって、ローラ保持部材133は従動アーム158と共にローラ駆動軸135を中心として上方または下方へと回転する。
また、戻しカム171のカム面には、従動部材172に設けられたカムフォロワ172aが常時当接している。このカムフォロワ172が戻しカム171のカム面のプロファイルに従って移動することにより、従動部材172は、y方向成分およびz方向成分を含む所定の移動を行う。従動部材172には前述の複数の戻し部材173が取り付けられており、従動部材172の移動に伴って戻し部材173が移動する。この移動において、戻し部材173は、前述のようにガイド部材192の上面から突出し、ガイド部材192に残された記録媒体Sを手差しトレイ129に戻す動作を行う。また、記録媒体Sの給送時には、記録媒体Sの給送を妨げとなるのを避けるため、戻し部材172はガイド部材192の上面より下方の退避位置へと移動する(図11参照)。
図15は、分離ローラ182を上方または下方へと移動させる分離ローラ移動機構を示す斜視図である。分離ローラ移動機構は、分離ローラ182を回動可能に支持する分離ローラ保持部材183を備える。分離ローラ保持部材183には、分離ローラ182の回転中心から偏倚した位置に支軸183aが突設され、この支軸183aが手差し給送ユニット6Cの所定の支持部に回動自在に支持されている。すなわち、分離ローラ保持部材183は、分離ローラ182の回転中心から偏倚した位置に設けられた支軸183aを中心として、上下方向成分(z方向成分)を含んだ回転運動を所定の回転角度範囲で行い得るよう支持されている。
分離ローラ保持部材183が回転運動を行うことにより、分離ローラ182も支軸183aを中心とした旋回運動を行い、上方または下方へと移動する。この上方または下方への移動によって、分離ローラ182は、第2手差しローラ132に対して当接または離間することとなる。すなわち、分離ローラ182は、上方への移動によって第2手差しローラ132の周面または記録媒体Sに当接し、下方への移動によって第2手差しローラ132または記録媒体Sから離間する。また、分離ローラ保持部材183は、第2手差しローラ132に当接する方向(上方)へと、ばね186(付勢手段)により付勢されている。
さらに、分離ローラ移動機構は、ばね186の付勢力に抗して分離ローラ182を押し下げ、分離ローラ182を第2手差しローラ132から離間させる離間機構(分離ローラ移動手段)187を備える。この離間機構187は、離間駆動軸156の先端に固定された離間カム188と、分離ローラ保持部材183に固定されたカムフォロワ189とにより構成されている。カムフォロワ189は、離間カム188の周面と対向する位置に設けられている。
離間駆動軸156と共に離間カム188が所定の回転位相に達すると、離間カム188の周面に突設された突出部188aがカムフォロワ189に当接し、これを下方へと押圧する。その結果、カムフォロワ189と共に分離ローラ保持部材183は、ばね186の付勢力に抗して支軸183aを中心とした下方への旋回運動を行う。これにより、分離ローラ182は、図12に示すように、第2手差しローラ132から離間する。このとき、離間機構187の分離ローラ保持部材183の一部およびカムフォロワ189が、搬送経路C1を構成するガイド部材191の開口部191aから搬送経路C1の空間領域へと突出する。
この後、離間駆動軸156が所定の回転位相まで回転すると、離間カム188の突出部188aはカムフォロワ189との当接位置から外れて下方への押圧力を解除する。その結果、ばね186の付勢力によって分離ローラ保持部材183は支軸183aを中心として上方へと旋回し、第2手差しローラ132の周面に当接する。この分離ローラ保持部材183の上昇により、搬送経路C1の空間領域内に突出していたカムフォロワ189およびこれを支持する分離ローラ保持部材183の一部は、図10に示すように、ガイド部材191の開口部191aから外方へと移動する。これにより、搬送経路C1は、第2給送カセット5Aからの記録媒体Sの給送・搬送が可能な状態となる。
以上のように本実施形態では分離ローラ182を第2手差しローラ132から離間させる際に、分離ローラ保持部材183の一部とカムフォロワ189を搬送経路C1に突出させ、分離ローラ182を離間させた際には搬送経路C1から退避させるよう構成している。すなわち、移動搬送経路C1の一部を利用して、カムフォロワおよびローラ保持部材183の一部を進退させる構成を採るため、手差し給送ユニット6Cが占有する空間領域を低減させることが可能になり、記録媒体供給装置の小型化を図ることが可能になる。
(他の実施形態)
上記実施形態では、搬送経路内C1の空間領域の一部を、分離ローラ保持部材183の一部とカムフォロワ189の動作過程において使用される空間領域の一部と兼用させる構成を示した。しかし、ローラ保持部材133およびカムフォロワ189に限らず、手差し給送ユニット6Cを構成する1以上の部材の動作過程において使用される空間領域を、搬送経路C1内の空間の一部と兼用させるように構成することも可能である。例えば、離間カム188の動作過程において使用する空間領域の一部を、搬送経路C1内の空間と兼用させるようにすることも可能である。
また、手差しカセットおよび手差し給送ユニットを設ける位置によっては、第1カセット5Aから給送された記録媒体の搬送経路内の空間領域の一部を、分離ローラ保持部材の動作過程において使用される空間領域の一部と兼用させるようにすることも可能である。さらに、4箇所以上の記録媒体の供給源から記録媒体を選択的に給送させる構成を採る記録装置にも本発明は適用可能である。例えば、3箇所に設けたカセット(第1の供給源)と、1箇所に設けた手差しトレイ(第2の供給源)から記録媒体の給送を行う記録装置にも、上記実施形態に用いる構成を適用可能である。この場合、1つのカセットから給送される記録媒体の搬送経路の空間領域を、手差し給送部(第2の給送部)の動作過程において占有される空間領域の少なくとも一部に兼用させるようにする。
また、本発明はインクジェット記録方式以外の記録方式を用いた記録装置にも適用可能である。例えば、電子写真方式により記録を行う記録装置、あるいは熱転写型の記録装置など、種々の記録装置における記録媒体の給送、搬送に本発明は適用可能である。