JP7270814B2 - 衛星コンステレーション形成システム、および、衛星コンステレーション形成方法 - Google Patents

衛星コンステレーション形成システム、および、衛星コンステレーション形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、衛星コンステレーション形成システム、および、衛星コンステレーション形成方法に関する。
近年、数百から数千機に及ぶ大規模な衛星コンステレーションが提唱されている。また、STM(宇宙交通管制)においては、複数の衛星コンステレーションが共存することによる衝突リスクを回避するための国際的なルール作りの必要性が高まっている。
特許文献1には、同一の円軌道に複数の衛星から成る衛星コンステレーションを形成する技術が開示されている。
特開2017-114159号公報
衛星コンステレーションでは、異なる軌道面の軌道高度は全て同一とすることが一般的である。よって、異なる軌道面を同一軌道高度で飛行する衛星同士が衝突するリスクがある。軌道面数、および、軌道面内の衛星数が増加するのに伴い、衝突リスクが高まることが課題となっている。
本発明は、各軌道面に複数の衛星が同じ軌道高度で飛行する複数の軌道面を有する衛星コンステレーションにおいて、衝突リスクを回避させることを目的とする。
本発明に係る衛星コンステレーション形成システムは、
衛星群により構成され、前記衛星群が連携してサービスを提供する衛星コンステレーションであって、各軌道面に複数の衛星が同じ軌道高度で飛行する複数の軌道面を有する衛星コンステレーションを形成する衛星コンステレーション形成システムにおいて、
前記複数の軌道面の各軌道面の軌道高度が同じであり、かつ、前記複数の軌道面の各軌道面が互いに異なる面に存在する前記衛星コンステレーションを形成する衛星コンステレーション形成部を備え、
前記衛星コンステレーション形成部は、
前記複数の軌道面の軌道面同士の交点を、各軌道面を飛行する衛星が通過する衛星通過時刻が、同一軌道面において、次衛星が飛来するまでの待ち時間を前記複数の軌道面の軌道面数で割った時刻ずれ値の倍数となっており、かつ、前記複数の軌道面のいかなる2面の軌道面の交点においても前記衛星通過時刻が一致しない前記衛星コンステレーションを形成し、
前記衛星コンステレーション形成部は、
前記複数の軌道面の各軌道面の軌道傾斜角が概略90度であり、全ての軌道面の全ての衛星が極域近傍を通過する前記衛星通過時刻が前記時刻ずれ値の間隔で互いにずれている前記衛星コンステレーションを形成する。
本発明に係る衛星コンステレーション形成システムは、各軌道面に複数の衛星が同じ軌道高度で飛行する複数の軌道面を有する衛星コンステレーションを形成する。衛星コンステレーション形成部が、軌道面同士の交点を、各軌道面を飛行する衛星が通過する衛星通過時刻が、同一軌道面において、次衛星が飛来するまでの待ち時間を軌道面数で割った時刻ずれ値の倍数となっており、かつ、複数の軌道面のいかなる2面の軌道面の交点においても衛星通過時刻が一致しない衛星コンステレーションを形成する。また、衛星コンステレーション形成部は、各軌道面の軌道傾斜角が概略90度であり、全ての軌道面の全ての衛星が極域近傍を通過する衛星通過時刻が時刻ずれ値の間隔で互いにずれている衛星コンステレーションを形成する。よって、本発明に係る衛星コンステレーション形成システムによれば、各軌道面に複数の衛星が同じ軌道高度で飛行する複数の軌道面を有する衛星コンステレーションにおいて、衛星コンステレーションの全ての衛星について衝突リスクが回避できるという効果がある。
地上に対し、複数衛星が地球の全球に亘り通信サービスを実現する例。 単一軌道面の複数衛星が地球観測サービスを実現する例。 実施の形態1に係る衛星コンステレーションの複数の軌道面の一例を示す模式図。 実施の形態1に係る衛星コンステレーションの複数の軌道面の別例を示す模式図。 実施の形態1に係る衛星コンステレーションの軌道面の1つを飛行する複数の衛星の例。 実施の形態1に係る衛星コンステレーション形成システムの構成図。 実施の形態1に係る衛星コンステレーション形成システムの動作を示す図。 実施の形態2に係る複数の軌道面の相対高度差を表す図。 比較例の対地サービス範囲を示す図。 実施の形態3に係る対地サービス範囲を示す図。 実施の形態4に係る太陽同期軌道の条件を満たす軌道面を示す図。 実施の形態5に係る衛星コンステレーション形成システムにより形成される衛星コンステレーションの例。 衛星コンステレーションにおける衝突の条件の一例を示す模式図。 衛星コンステレーションにおける衝突の条件の一例を示す模式図。 実施の形態6に係る衛星コンステレーション形成システムにより形成される衛星コンステレーションの例。 実施の形態7に係る衛星コンステレーションによる地表サービス範囲を示す図。 実施の形態7に係る衛星コンステレーションにおいて、軌道面数が偶数の場合の極通過タイミングを表す図。 実施の形態7に係る衛星コンステレーションにおいて、軌道面数が奇数の場合の極通過タイミングを表す図。 自由落下によるデオービットの概念を示す図。 衛星コンステレーションの上空の衛星がデオービットする際の衝突リスクを示す図。 衛星の増速と減速による軌道高度の変化を示す図。 推進装置の噴射による軌道傾斜角の変更を示す図。 実施の形態10に係る地上設備の構成を示す図。 実施の形態6に係る衛星コンステレーション形成システムにより形成される衛星コンステレーションの例。 実施の形態11に係る衛星コンステレーション20の具体例を示す模式図。 衛星コンステレーション形成システムの衛星の構成例。 衛星コンステレーション形成システムが備える地上設備の構成例。 衛星コンステレーション形成システムの機能構成例。 実施の形態12に係る宇宙交通管理システムの全体構成例。 実施の形態12に係る宇宙交通管理装置の構成例。 宇宙交通管理処理の例2の比較例であり、軌道面内での衛星配置を表す図。 実施の形態12に係る宇宙交通管理処理の例2における軌道面内での衛星配置を表す図。 法線ベクトルが同じで、かつ、軌道高度が異なる複数軌道面を表す図。 高高度のメガコンステレーション衛星による衛星軌道降下過程における密集領域(危険領域)侵入の様子を示す図。 実施の形態12に係る衛星軌道降下過程における密集領域侵入回避の宇宙交通管理処理を示す図。
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一または相当する部分については、説明を適宜省略または簡略化する。また、以下の図面では各構成の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、実施の形態の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「表」、「裏」といった方向あるいは位置が示されている場合がある。それらの表記は、説明の便宜上、そのように記載しているだけであって、装置、器具、あるいは部品といった構成の配置および向きを限定するものではない。
実施の形態1.
図1は、地上に対し、複数衛星が連携して地球70の全球に亘り通信サービスを実現する例を示す図である。
図1は、全球に亘り通信サービスを実現する衛星コンステレーション20を示している。
同一軌道面を同一高度で飛行している複数の衛星の各衛星では、地上に対する通信サービス範囲が後続衛星の通信サービス範囲とオーバーラップしている。よって、このような複数の衛星によれば、地上の特定地点に対して、同一軌道面上の複数の衛星が時分割的に交互に交代しながら通信サービスを提供することができる。
しかしながら、単一軌道面で通信サービスを提供できるのは衛星軌道直下付近に限定される。そこで、地球に対して軌道面が東西方向に回転した別の軌道面を隣接させ、その軌道面上の複数の衛星による通信サービスも同時に実施する。このように隣接軌道面を設けることにより、隣接軌道間の地上に対する通信サービスを面的に網羅することが可能となる。同様に、地球の周りに多数の軌道面を概ね均等配置すれば、全球に亘り地上に対する通信サービスが可能となる。地上の特定地点から見れば、個々の衛星は短い時間で飛び去ってしまう。しかし、軌道上複数の衛星が時分割的に交互に交代しながら通信サービスを提供すれば、地上の任意の地点に対して連続的に通信サービスを提供することが可能となる。その際、個々の衛星は、後継衛星と通信サービスを分担するために、衛星間の通信方式を用いて、必要な信号および情報を授受する。
低軌道を周回する衛星コンステレーションで通信サービスを実現する場合、全衛星のサービス領域が全球を網羅し、任意の地上ユーザの通信サービスを、次々に飛来する衛星が信号および情報を引継ぎながら分担して継続する。これにより、結果的に地上ユーザに連続的な通信サービスを提供できる。個々の衛星は、衛星と地上間の通信機能に加えて、衛星間の通信機能を具備することにより、近傍を通過する衛星同士で信号および情報を引継ぐことが可能となる。通信サービスのミッション連携に資する信号および情報の引継ぎを以後ハンドオーバーと称する。
衛星コンステレーションでは、異なる軌道面の軌道高度は全て同一とすることが一般的である。同一の軌道高度を飛行する衛星の対地速度は同様なので、地上に対するサービス範囲は個々の衛星のサービス範囲同士の相対位置関係を維持しながら衛星対地速度に応じて移動することになる。同一軌道面の後続衛星、あるいは、隣接軌道面の衛星におけるサービス範囲が、網羅的に地表をカバーしていれば、地上の任意の地点から見て、常にサービス範囲が維持される結果となる。
図2は、単一軌道面の複数衛星が地球観測サービスを実現する例を示す図である。
図2は、地球観測サービスを実現する衛星コンステレーション20を示している。図2の衛星コンステレーションは、光学センサあるいは合成開口レーダといった電波センサである地球観測装置を具備した衛星が同一軌道面を同一高度で飛行する。このように、地上の撮像範囲が時間遅れで後続衛星がオーバーラップする衛星群では、地上の特定地点に対して軌道上複数の衛星が時分割的に交互に交代しながら地上画像を撮像することにより地球観測サービスを提供する。しかしながら単一軌道面でサービス提供できるのは衛星軌道直下付近に限定される。これに対して地球に対して軌道面が東西方向に回転した別の軌道面を隣接させて、同様の複数衛星によるサービスを同時に実施すれば、隣接軌道間の地上サービスを面的に網羅することが可能となる。同様にして地球の周りに多数の軌道面を概ね均等配置すれば、全球に亘り網羅的に地球観測サービスが可能となる。地上の特定地点から見れば、個々の衛星は短い時間で飛び去ってしまうが、軌道上複数の衛星が時分割的に交互に交代しながらサービス提供すれば、地上の任意の地点に対していつでも地球観測サービスを提供することが可能となる。
***構成の説明***
本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システム100は、複数の軌道面21を有する衛星コンステレーション20を形成する。また、複数の軌道面21の各軌道面21には、複数の衛星30が同じ軌道高度で飛行する。
ここで、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システム100により形成される衛星コンステレーション20について簡単に説明する。
本実施の形態に係る衛星コンステレーション20は、各軌道面21の複数の衛星30からなる衛星群300により構成される。本実施の形態に係る衛星コンステレーション20は、衛星群300が連携してサービスを提供する。衛星コンステレーション20とは、具体的には、図1に示すような通信事業サービス会社による1つの衛星群から成る衛星コンステレーションを指す。また、衛星コンステレーション20とは、具体的には、図2に示すような観測事業サービス会社による1つの衛星群から成る衛星コンステレーションを指す。
図3は、本実施の形態に係る衛星コンステレーション20の複数の軌道面21の一例を示す模式図である。
図3では、衛星コンステレーション20における複数の軌道面の各軌道面21は、略同一面に存在する。一例として、各軌道面21には、複数の衛星として20機以上の衛星が飛行していてもよい。
図4は、本実施の形態に係る衛星コンステレーション20の複数の軌道面21の別例を示す図である。
図4では、衛星コンステレーション20における複数の軌道面の各軌道面21は、互いに異なる面に存在する。図4では、複数の軌道面の各軌道面21の軌道傾斜角は略90度となっているが、軌道面はずれている。すなわち、複数の軌道面21は互いに交差している。一例として、各軌道面21には、複数の衛星として20機以上の衛星が飛行していてもよい。また、図4の衛星コンステレーション20は、一例として、20面以上の軌道面21を有していてもよい。
図5は、本実施の形態に係る衛星コンステレーション20の軌道面21の1つを飛行する複数の衛星30の例である。
同一軌道面において同一高度を飛行する複数の衛星30は、相対的に同じ速度で軌道面における相対位相を維持しながら飛行する。よって、同一軌道面において同一高度を飛行する複数の衛星30は、衝突することはない。
図6を用いて、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システム100の構成を説明する。
衛星コンステレーション形成システム100は、コンピュータを備える。図6では、1つのコンピュータの構成を示しているが、実際には、衛星コンステレーション20を構成する複数の衛星の各衛星30、および、衛星30と通信する地上設備の各々にコンピュータが備えられる。そして、複数の衛星の各衛星30、および、衛星30と通信する地上設備の各々に備えられたコンピュータが連携して、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システム100の機能を実現する。以下において、衛星コンステレーション形成システム100の機能を実現するコンピュータの構成の一例について説明する。
衛星コンステレーション形成システム100は、プロセッサ910を備えるとともに、メモリ921、補助記憶装置922、入力インタフェース930、出力インタフェース940、および通信装置950といった他のハードウェアを備える。プロセッサ910は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
衛星コンステレーション形成システム100は、機能要素として、衛星コンステレーション形成部110を備える。衛星コンステレーション形成部110の機能は、ハードウェアあるいはソフトウェアにより実現される。
プロセッサ910は、衛星コンステレーション形成プログラムを実行する装置である。衛星コンステレーション形成プログラムは、衛星コンステレーション形成部110の機能を実現するプログラムである。
プロセッサ910は、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサ910の具体例は、CPU、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)である。
メモリ921は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ921の具体例は、SRAM(Static Random Access Memory)、あるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)である。
補助記憶装置922は、データを保管する記憶装置である。補助記憶装置922の具体例は、HDDである。また、補助記憶装置922は、SD(登録商標)メモリカード、CF、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVDといった可搬記憶媒体であってもよい。なお、HDDは、Hard Disk Driveの略語である。SD(登録商標)は、Secure Digitalの略語である。CFは、CompactFlash(登録商標)の略語である。DVDは、Digital Versatile Diskの略語である。
入力インタフェース930は、マウス、キーボード、あるいはタッチパネルといった入力装置と接続されるポートである。入力インタフェース930は、具体的には、USB(Universal Serial Bus)端子である。なお、入力インタフェース930は、LAN(Local Area Network)と接続されるポートであってもよい。
出力インタフェース940は、ディスプレイといった出力機器のケーブルが接続されるポートである。出力インタフェース940は、具体的には、USB端子またはHDMI(登録商標)(High Definition Multimedia Interface)端子である。ディスプレイは、具体的には、LCD(Liquid Crystal Display)である。
通信装置950は、レシーバとトランスミッタを有する。通信装置950は、具体的には、通信チップまたはNIC(Network Interface Card)である。衛星コンステレーション形成システム100は、通信装置950を介して、地上設備と衛星、あるいは、衛星同士の通信を行う。
衛星コンステレーション形成プログラムは、プロセッサ910に読み込まれ、プロセッサ910によって実行される。メモリ921には、衛星コンステレーション形成プログラムだけでなく、OS(Operating System)も記憶されている。プロセッサ910は、OSを実行しながら、衛星コンステレーション形成プログラムを実行する。衛星コンステレーション形成プログラムおよびOSは、補助記憶装置に記憶されていてもよい。補助記憶装置に記憶されている衛星コンステレーション形成プログラムおよびOSは、メモリ921にロードされ、プロセッサ910によって実行される。なお、衛星コンステレーション形成プログラムの一部または全部がOSに組み込まれていてもよい。
衛星コンステレーション形成システム100は、プロセッサ910を代替する複数のプロセッサを備えていてもよい。これら複数のプロセッサは、衛星コンステレーション形成プログラムの実行を分担する。それぞれのプロセッサは、プロセッサ910と同じように、衛星コンステレーション形成プログラムを実行する装置である。
衛星コンステレーション形成プログラムにより利用、処理または出力されるデータ、情報、信号値および変数値は、メモリ921、補助記憶装置922、または、プロセッサ910内のレジスタあるいはキャッシュメモリに記憶される。
衛星コンステレーション形成部110の「部」を「処理」、「手順」あるいは「工程」に読み替えてもよい。また衛星コンステレーション形成処理の「処理」を「プログラム」、「プログラムプロダクト」または「プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記憶媒体」に読み替えてもよい。
衛星コンステレーション形成プログラムは、上記の衛星コンステレーション形成部の「部」を「処理」、「手順」あるいは「工程」に読み替えた各処理、各手順あるいは各工程を、コンピュータに実行させる。また、衛星コンステレーション形成方法は、衛星コンステレーション形成システム100が衛星コンステレーション形成プログラムを実行することにより行われる方法である。
衛星コンステレーション形成プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体あるいは記憶媒体に格納されて提供されてもよい。また、衛星コンステレーション形成プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
***動作の説明***
図7を用いて、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システム100の動作について説明する。
ステップS101において、衛星コンステレーション形成システム100には、衛星コンステレーション20が備える各軌道面21の軌道高度が互いに異なるようにパラメータが設定される。
ステップS102において、衛星コンステレーション形成部110は、複数の軌道面の各軌道面21の軌道高度が互いに異なる衛星コンステレーション20を形成する。衛星コンステレーション形成部110は、予め設定されたパラメータを用いて、各軌道面21の軌道高度が互いに異なる衛星コンステレーション20を形成する。一例として、各軌道面21には、複数の衛星として20機以上の衛星が飛行していてもよい。また、図4の衛星コンステレーション20は、一例として、20面以上の軌道面21を有していてもよい。
衛星コンステレーション形成部110が、複数の軌道面の各軌道面21が互いに異なる面に存在する衛星コンステレーション20(図4参照)を形成する場合について、さらに詳しく説明する。上述したように、図4の衛星コンステレーション20の複数の衛星30は、地上の地点に対して時分割的に交互に交代しながらサービスを提供する。
異なる軌道高度を飛行させることにより衝突防止をするためには、2物体の寸法形状に加えて、地上で追跡管制する際の位置決定精度を考慮する必要がある。例えば、物体の寸法が1m程度であった場合、正確な位置が把握できているのであれば、3m以上の高度差を保てば衝突を回避できる。しかしながら、位置座標と時刻(x、y、z、t)の4要素に誤差が含まれる場合は衝突する可能性が残る。
衛星コンステレーションの運用事業者であれば、自己保有衛星の任意の時刻における位置決定精度として、100m程度に維持することはできると考えられる。よって、異なる軌道面の高度差を200m以上に設定することにより、本実施の形態に係る軌道高度が互いに異なる複数の軌道面21を有する衛星コンステレーション20を形成できる。あるいは、余裕を見て、異なる軌道面の高度差を300m以上に設定することで、本実施の形態に係る軌道高度が互いに異なる複数の軌道面21を有する衛星コンステレーション20を形成してもよい。軌道面数が約20面程度の衛星コンステレーション20であれば、衛星コンステレーション形成部110は、高度差6km程度の範囲で衛星コンステレーション20を構築できる。
一方、衛星位置決定の向上手法を保有しない衛星事業者が、公開情報に基づき衝突を回避する場合には、任意の時刻における位置決定精度は500mから1km程度まで劣化することが想定される。このため、異なる軌道面の高度差を2km以上に設定することにより、本実施の形態に係る軌道高度が互いに異なる複数の軌道面21を有する衛星コンステレーション20を形成できる。あるいは、余裕を見て、異なる軌道面の高度差を3km以上に設定することで、本実施の形態に係る軌道高度が互いに異なる複数の軌道面21を有する衛星コンステレーション20を形成してもよい。軌道面数が約20面程度の衛星コンステレーション20であれば、衛星コンステレーション形成部110は、高度差60km程度の範囲で衛星コンステレーション20を構築できる。
なお、近年SSA(Space Situation Awareness)と呼ばれる軌道上物体監視技術が着目されている。これにより、スペースフェンス構想と呼ばれる監視精度向上が実現されれば、衛星位置決定の向上手法を保有しない衛星事業者であっても高度差を縮小した衛星コンステレーションを実現可能となる。
次に、衛星コンステレーション形成部110が、複数の軌道面の各軌道面21が同じ面に存在する衛星コンステレーション20(図3参照)を形成する場合について、さらに詳しく説明する。上述したように、図3の衛星コンステレーション20の複数の衛星30は、地上の地点に対して時分割的に交互に交代しながらサービスを提供する。
図3の衛星コンステレーション20が実現する地球観測サービスでは、通信サービスとは異なり必ずしも常時サービスを継続し続けるニーズがあるわけではない。一方、地球観測サービスでは「撮りたい時にどこでも任意の地点を撮像できる」ことが求められる。このため少なくとも衛星進行方向に直交するクロストラック方向に視野方向を変更する装置を具備した地球観測装置を備えた衛星により衛星コンステレーション20を構成することが好ましい。このように、衛星が、赤道上空の隣接軌道間距離を包含する視野方向変更機能を具備することで、全球任意の地点を、何時でもどこでも撮像可能となる。個別の固定視野の地球観測装置による衛星コンステレーションと比較して、少ない軌道面数で衛星コンステレーション構築できるという効果があるので、システム構築コストを低減可能となる。
また衛星進行方向に対しても、必ずしも撮像可能視野範囲が網羅される必要はなく、後続衛星ないし、隣接軌道面の衛星が視野方向変更すれば撮像可能な場合は同一軌道面の衛星数を減らすことも可能である。視野変更範囲が地表面換算で2000km程度となれば、1軌道面あたり2機から3機だけで全球を網羅できる可能性もある。
***他の構成***
本実施の形態では、衛星コンステレーション形成部110の機能がソフトウェアで実現される。変形例として、衛星コンステレーション形成部110の機能がハードウェアで実現されてもよい。
衛星コンステレーション形成システム100は、プロセッサ910に替えて電子回路を備える。
電子回路は、衛星コンステレーション形成部110の機能を実現する専用の電子回路である。
電子回路は、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA、ASIC、または、FPGAである。GAは、Gate Arrayの略語である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略語である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略語である。
衛星コンステレーション形成部110の機能は、1つの電子回路で実現されてもよいし、複数の電子回路に分散して実現されてもよい。
別の変形例として、衛星コンステレーション形成部110の一部の機能が電子回路で実現され、残りの機能がソフトウェアで実現されてもよい。
プロセッサと電子回路の各々は、プロセッシングサーキットリとも呼ばれる。つまり、衛星コンステレーション形成システム100において、衛星コンステレーション形成部110の機能は、プロセッシングサーキットリにより実現される。
***本実施の形態の効果の説明***
本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システムでは、地上の特定地点に対して軌道上複数の衛星が時分割的に交互に交代しながらサービス提供する。そして、任意の軌道面では同一高度を飛翔する複数機の衛星が概略等間隔で飛翔する。さらに、互いに軌道高度の異なる複数の軌道面で構成された衛星コンステレーションを形成する。
本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システムでは、同一軌道面において同一高度を飛翔する衛星は相対的に同じ速度で軌道面における相対位相を維持しながら飛行するため衝突することはない。また異なる軌道面においては、2面の交線において衝突する可能性があるものの、異なる軌道高度を飛行する衛星は衝突することがない。このように、異なる軌道面においてそれぞれ軌道高度が異なっていれば、衛星コンステレーションの全ての衛星について衝突リスクが回避できるという効果がある。
なお、本実施の形態に係る衛星コンステレーションと同様に、同一軌道面を飛行して異なる軌道高度を飛行する衛星同士が衝突しないことは、異なる衛星コンステレーションの間でも同様である。よって、本実施の形態に係る基本概念は、複数衛星コンステレーションの衝突回避にも効果がある。近年混雑する宇宙空間における国際的なルール作りの必要性が訴求されているSTMにおいて、複数の衛星コンステレーションが共存して衝突回避するための方式を提供できるという効果がある。すなわち、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システムによれば、数千機におよぶような膨大な数の衛星が近傍高度に密集している場合でも、衛星の衝突を回避することができるという効果がある。
実施の形態2.
本実施の形態では、主に、実施の形態1との相違点あるいは追加点について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
本実施の形態では、衛星コンステレーション形成部110が、複数の軌道面における隣接する軌道面の相対高度差が正弦波状となる衛星コンステレーション20を形成する態様について説明する。
図8は、本実施の形態に係る複数の軌道面の相対高度差を表す図である。
図8では、17個の軌道面を有する衛星コンステレーション20における各軌道面の相対高度差を表している。縦軸は、軌道面1の高度が高く、降順で高度が低くなることを表しており、距離を示すものではない。図8では、軌道面1を基準とした場合に、隣接する軌道面1と軌道面2との軌道高度の差、軌道面2と軌道面3との軌道高度の差、というようにプロットしていくと、正弦波状となることを示している。
隣接する軌道面の高度が著しく異なると、衛星間通信によるハンドオーバーの距離が遠方になり、かつ、通信用アンテナを相互に見合うための駆動角度範囲も広くなり、デメリットとなる。これに対して、本実施の形態に係る衛星コンステレーション20によれば、隣接する軌道間の高度差を限定しているので、相対差が徐々に変化する。よって、近傍衛星とのミッション連携に資するハンドオーバーが容易になる。
また、地球観測衛星では、例えば光学センサの画像品質が衛星高度に依存するため、隣接する軌道間の高度差が小さいことにより、画像シーン間の不整合のない高品質の画像が得られるという効果がある。
地表面の画像を取得し、赤道上空の隣接軌道距離よりも広域の撮像が可能な光学センサを搭載した衛星コンステレーションによれば、全球をくまなく画像取得可能となる。光学センサの分解能と観測幅は軌道高度に依存するので、同じ仕様の光学センサを採用する衛星コンステレーションの場合、軌道高度の最も低い条件で撮像する場合が最も高分解能で、観測幅は最小となる。したがって、赤道上空で軌道高度が最低の条件における光学センサの観測幅が、隣接軌道間距離よりも大きければ、赤道上空を含めて網羅的に地表面の撮像が可能となる。
隣接軌道の高度が著しく異なると、画像のつなぎ目で分解能相違の伴う不連続性が顕在化しやすい。しかし、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システムでは、隣接軌道間の高度差を限定しているので、画像のつなぎ目が目立たず画像品質のよい全球画像データが取得できるという効果がある。また、衛星高度の差が大きいほど、対地サービス領域の相対移動速度が速くなる特徴がある。このため、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システムでは、隣接サービス領域の相対移動量を最小限にできるので、通信におけるハンドオーバーと呼ばれる後続衛星へのデータ引き継ぎが容易になり、エラーを抑制しやすいという効果がある。
実施の形態3.
本実施の形態では、主に、実施の形態1および2との相違点あるいは追加点について説明する。なお、実施の形態1および2と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
本実施の形態では、衛星コンステレーション形成部110が、衛星1機当たりの対地サービス範囲の半径が赤道上空における隣接軌道間距離の略√2/2以上となる衛星コンステレーション20を形成する。具体的には、この衛星コンステレーション20において、軌道高度が最も低い軌道面の衛星1機当たりの対地サービス範囲の半径が、赤道上空における隣接軌道間距離の略√2/2ないしそれ以上のカバレッジを確保している。
図9は、比較例の対地サービス範囲を示す図である。
衛星の相対位置が最適の状態では、対地サービス範囲の半径として、赤道上空隣接軌道間距離と同等に確保すれば、サービス範囲が全球を網羅可能となる。また、全ての軌道面において衛星高度が同じであればサービス領域も相対関係を維持するので、常に全球網羅したサービス継続が可能である。しかし、軌道高度が異なる軌道面においては、衛星進行速度が衛星高度に応じて相違があるために、衛星の相対位置が最適の状態で網羅的に確保されたサービス領域が、相対的に移動することにより空隙P、つまりサービスできない領域が生じる可能性がある。
図9では、3つの軌道面の対地サービス範囲が表されている。また、対地サービス範囲の半径raが赤道上空隣接軌道間距離Raの1/2である。この場合、図9に示すように、真ん中の軌道面の対地サービス範囲が45度前方にずれると、サービスできない領域(空隙)が生じてしまう。
図10は、本実施の形態に係る対地サービス範囲を示す図である。
図10では、対地サービス範囲の半径rbが赤道上空隣接軌道間距離Rbの√2/2である。この場合、図10に示すように、各軌道面の対地サービス範囲が45度ずつずれた場合でも、サービスできない領域(空隙)は生じない。
以上のように、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システムによれば、衛星相対配置が最悪の状態、すなわち隣接軌道のサービス領域が略45度前方に位置するときでも、サービス領域の空隙が生じない。よって、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システムによれば、隣接軌道のサービス領域が衛星進行方向に相対的に移動しても、間断なく全球網羅的にサービス継続できるという効果がある。
実施の形態4.
本実施の形態では、主に、実施の形態1から3との相違点あるいは追加点について説明する。なお、実施の形態1から3と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
本実施の形態では、衛星コンステレーション形成部110は、複数の軌道面の各軌道面の軌道高度が、太陽同期軌道の条件を満たす衛星コンステレーション20を形成する態様について説明する。また、衛星コンステレーション形成部110は、複数の軌道面の各軌道面の軌道高度が、太陽同期準回帰軌道のみで構成されている衛星コンステレーション20を形成する態様について説明する。
図11は、本実施の形態に係る太陽同期軌道の条件を満たす軌道面を示す図である。
地球観測衛星の光学衛星では、太陽光入射角がほぼ同一の条件で観測を継続することが望ましい。このため、太陽同期衛星と呼ばれる衛星の軌道が多用される。太陽同期衛星の軌道は、地球の公転と同期して軌道面が1年で1周回転する軌道面法線と太陽方向の角度が概ね一定である。また、太陽同期衛星の軌道は、地球の地方時LST(Local Sun Time)が年間を通して同じになる軌道である。
太陽同期軌道の条件が成立する軌道高度は間欠的に存在する。本実施の形態では、太陽同期軌道の条件に適合する軌道高度だけで軌道面を構成した衛星コンステレーション20が形成される。このような衛星コンステレーション20であれば、それぞれの軌道面が所望のLSTでのサービスを継続し、かつ衝突リスクのない衛星コンステレーションが実現可能になる。
光学センサは、太陽光入射角に依存して画像の明るさおよびS/N特性が変化する。このため、太陽同期軌道により、軌道面に対する太陽光入射角一定の条件で継続的に地球観測サービスを提供することが多い。さらに、LST10:00から11:00の軌道面は、十分な光量を確保でき、海面の直接反射もないことから多用される。しかしながら、LST10:30近傍の衛星群だけでは、「いつでも、どこでも」撮像できるわけではない。そこで、LSTの異なる軌道面の衛星群を組み合わせることにより、撮像頻度を向上させることが効果的である。
例えば、LST10:30に加えてLST9:00、および、LST12:00の軌道面を追加する。この場合、概ね90分毎に撮像できる可能性があり、低軌道衛星が地球を1周回するのに要する時間が約90から100分とすれば、次周回の撮像機会も含めて任意の地点の撮像頻度を向上できる効果がある。さらに、同一軌道面の衛星数が増えれば、面的に網羅することも可能となり、同様の考え方でLSTを均等配置していけば、原理的に「いつでも、どこでも」撮像可能となる。
なお、可視画像のみ撮像可能な光学センサの場合は夜間は撮像できないが、赤外センサあるいは電波センサであれば、夜間を通含めていつでも撮像が可能となる。
地表面の画像を取得し、赤道上空の隣接軌道距離よりも広域の撮像が可能な光学センサを搭載した衛星コンステレーションによれば、全球をくまなく画像取得可能となる。光学センサの分解能と観測幅は軌道高度に依存するので、同じ仕様の光学センサを採用する衛星コンステレーションの場合、軌道高度の最も低い条件で撮像する場合が最も高分解能で、観測幅は最小となる。したがって、赤道上空で軌道高度が最低の条件における光学センサの観測幅が、隣接軌道間距離よりも大きければ、赤道上空を含めて網羅的に地表面の撮像が可能となる。また、隣接軌道の高度が著しく異なると、画像のつなぎ目で分解能相違の伴う不連続性が顕在化しやすい。しかし、本実施の形態においても、実施の形態2に係る衛星コンステレーションを採用することにより、隣接軌道間の高度差を限定し、画像のつなぎ目が目立たず画像品質のよい全球画像データが取得できるという効果がある。
***本実施の形態の変形例***
本実施の形態の変形例として、衛星コンステレーション形成部110は、複数の軌道面の各軌道面の軌道高度が、太陽同期準回帰軌道のみで構成されている衛星コンステレーション20を形成する態様について説明する。
太陽同期準回帰軌道は、衛星軌道の地上投影線が複数周回後に再訪する軌道であり、地球観測衛星で多用される。太陽同期準回帰軌道の条件に適合する軌道高度は太陽同期軌道に適合する軌道高度の部分集合である。
複数の軌道面の各軌道面の軌道高度が太陽同期準回帰軌道のみで構成されている衛星コンステレーション20によれば、地球観測衛星で同一地点を長期に渡り繰り返し定常観測するための運用計画、撮像計画、およびデータ処理が容易になる。しかも、衝突リスクのない衛星コンステレーションが実現できるという効果がある。
回帰日数にこだわらない場合、太陽同期準回帰軌道の軌道高度は、例えば約540km(15日回帰)、約539km(14日回帰)、約537km(13日回帰)、約535km(12日回帰)、約533km(11日回帰)、約530km(10日回帰)といった軌道高度で構成できる。この軌道面6面で、高度差は最大でも約10kmの範囲で衛星コンステレーション20が実現できる。
また、例えば、13日回帰の軌道のみで構成する場合、約537km、約514km、約491km、約467km、445km、約422kmで構成すれば、軌道面6面で、高度差は最大でも約115kmの範囲で衛星コンステレーション20が実現できる。
実施の形態5.
本実施の形態では、主に、実施の形態1との相違点あるいは追加点について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図12は、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システム100により形成される衛星コンステレーション20の例を示す図である。
本実施の形態に係る衛星コンステレーション20は、衛星群300により構成される。また、衛星コンステレーション20では、衛星群300が連携してサービスを提供する。また、衛星コンステレーション20は、各軌道面21に複数の衛星30が同じ軌道高度で飛行する複数の軌道面21を有する。
また、本実施の形態に係る衛星コンステレーション20は、複数の軌道面の各軌道面21の軌道高度が同じであり、かつ、複数の軌道面の各軌道面21が互いに異なる面に存在する。
図12に示す衛星コンステレーション20では、複数の軌道面の各軌道面21の軌道傾斜角が約90度であり、かつ、複数の軌道面の各軌道面21が互いに異なる面に存在する。したがって、図12に示す衛星コンステレーション20は、極域において複数の軌道面21が交差する。
図13および図14は、衛星コンステレーションにおける衝突の条件の一例を示す模式図である。
同一軌道面において同一高度を飛翔する衛星は相対的に同じ速度で軌道面における相対位相を維持しながら飛行するため衝突することはない。しかしながら、異なる軌道面において、同じ軌道高度を飛行する衛星同士は、図13および図14に示すように、軌道面の交線上で軌道高度の一致する交点において衝突する可能性がある。特に、図14に示すように、軌道高度100kmから2000km程度を飛翔する低軌道周回衛星で軌道傾斜角が約90度の衛星では極域付近に交点が存在するため、北極と南極の極域近傍において衝突リスクがある。
しかしながら、衛星の交点通過タイミングが常にずれていれば、2物体が衝突することがない。衛星コンステレーション形成部110は、2物体が衝突することがない衛星コンステレーション20を形成する。具体的には、互いに異なる軌道面同士の交点を双方の軌道面を飛行する衛星が通過する時刻が、同一軌道面において「次衛星が飛来するまでの待ち時間T1/軌道面数」の倍数となっており、かつ、いかなる2面の軌道面の交点においても衛星通過時刻が一致しない衛星コンステレーション20を形成する。
図12に示す衛星コンステレーション20は、軌道傾斜角が約90度であり、互いに異なる複数の軌道面を有する。この衛星コンステレーション20では、全ての軌道面の全ての衛星が極域近傍を通過する。そこで、衛星コンステレーション形成部110は、衛星の極域通過時刻を同一軌道面において「次衛星が飛来するまでの待ち時間T1/軌道面数」の間隔で飛行させ、複数の軌道面において互いに衛星の極域通過時刻をずらしている。
具体的には、低軌道周回衛星が1周回に要する時間が約100分程度として、仮に軌道面当たり20機の衛星が飛行する場合、特定地点を衛星が通過してから、後続衛星が飛来するまで約5分かかることになる。仮に軌道面が20面あったとすれば、300秒を略等間隔に分割した15秒ずつずらすことで、本実施の形態に係る衛星コンステレーション20を実現できる。
本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システム100により形成された衛星コンステレーション20では、同一軌道面の複数衛星が同一高度を同期して飛行しており、異なる軌道面の衛星同士も軌道高度が一致して同じ衛星速度を保っている。よって、全ての軌道面においてそれぞれの軌道面の衛星同士が異なるタイミングで交点を通過するように初期設定すれば、相対タイミングが常に維持されるので、全ての軌道面の任意の2衛星について衝突リスクを回避できるという効果がある。
なお、本実施の形態では、後続する衛星が飛来するまでの待ち時間を軌道面数で均等配置するタイミングの例を示した。しかし、互いに極域通過タイミングをずらす間隔の選び方と、軌道面の順番の選び方は多様に存在する。
実施の形態6.
本実施の形態では、主に、実施の形態5との相違点あるいは追加点について説明する。なお、実施の形態5と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図15および図24は、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システム100により形成される衛星コンステレーション20の例を示す図である。
図15および図24に示す衛星コンステレーション20では、複数の軌道面の各軌道面21の軌道傾斜角が約90度ではなく、かつ、複数の軌道面の各軌道面21が互いに異なる面に存在する。この衛星コンステレーション20では、任意の2つの軌道面が極域以外の地点で交差する。そこで、衛星コンステレーション形成部110は、互いに異なる軌道面同士の交点を双方の軌道面の衛星が通過する時刻が、同一軌道面の「次衛星が飛来するまでの待ち時間T1/軌道面数」の倍数であり、かつ、いかなる2面の軌道面の交点においても衛星通過時刻が一致しないように衛星コンステレーション20を形成する。
図15および図24に示すように、軌道傾斜角が90度よりも傾斜している複数の軌道面の交点は軌道傾斜角に応じて極域から離れていく。また、軌道面の組合せによって赤道近傍を含む多様な位置で交点が存在する可能性がある。このため、実施の形態5の衛星コンステレーションに比べ、衝突の発生する可能性のある場所が多様化する。ただし、交点の数が増えるわけではないので、衝突確率が場所の多様化に応じて増加するわけではない。同一軌道面を多数の衛星が同期して飛行する場合に、特定の2軌道面間の衝突を回避するために、特定の交点において2軌道面の衛星通過タイミングをずらせば、この2軌道の衛星同士が衝突することがない。しかし、後続衛星が別の軌道面の衛星と衝突するリスクが残ることに留意を要する。任意の軌道面間に対して総当たりで交点通過タイミングが一致しないことを確認する必要があり、タイミング調整で解決できない場合は、軌道面か、一軌道面の衛星数のどちらかを変更する必要がある。なお、すべての交点で衝突しないことが確認できれば、その後は全ての軌道面内、および軌道面間の衛星が同期運用することになるので、衝突リスクが回避できるという効果がある。
なお、本実施の形態では、後続する衛星が飛来するまでの待ち時間を軌道面数で均等配置するタイミングの例を示した。しかし、互いに極域通過タイミングをずらす間隔の選び方と、軌道面の順番の選び方は多様に存在する。
ここで、具体例として、軌道傾斜角約98度、軌道周期約98分の太陽同期準回帰軌道が採用されている地球観測衛星の例について説明する。この軌道を採用して多数機衛星コンステレーションを構築した場合、軌道傾斜角が約98度と傾いているため、極域で全軌道面が会合することはない。しかし、異なる2軌道面間では必ず交線が存在し、同一高度で交点が存在するので、衝突リスクは依然存在する。さらに、異なる2軌道面間の全ての組合せにおいて衝突リスクが存在するため、本実施の形態では、任意の2面間における交点において、衛星通過タイミングをずらすことにより衝突を回避する。
さらに、軌道傾斜角が約45度程度を飛行する地球観測衛星も存在しており、この軌道では太陽非同期衛星となる。低軌道傾斜角の場合は異なる2軌道面の交点が低緯度側に存在し、しかも複数の緯度で交点が発生する可能性が生じる。軌道面数と1軌道面を飛行する衛星数の組合せ如何では、衝突を必ず回避できるとは限らない。よって、本実施の形態に係る衛星コンステレーション20では、全ての2軌道面の交点において衝突が発生しない軌道面数と1軌道面当たりの衛星数の組合せを見出し、その後各交点における通過タイミングを維持することにより衝突を回避する。
衛星数が極端に増加した場合は、総当たりの衝突回避計算が煩雑になるため、異なる軌道面により構成する実施の形態1を採用してもよい。
実施の形態7.
本実施の形態では、主に、実施の形態5との相違点あるいは追加点について説明する。なお、実施の形態5と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
本実施の形態では、複数の軌道面が極域で交差する図14の衛星コンステレーション20の場合の衛星の待ち時間のずらし方の態様について説明する。本実施の形態では、複数の軌道面が並ぶ順番に番号を付けた場合に、奇数の軌道面と偶数の軌道面で極通過タイミングの後続衛星が飛来するまでの待ち時間の約半分ずつずらす。このように衛星コンステレーション20を形成することにより、地上サービス範囲が隣接する奇数面と偶数面の間で交互の配置となるので、地表サービス範囲を合理的に網羅できるという効果がある。
図16は、本実施の形態に係る衛星コンステレーション20による地表サービス範囲を示す図である。
図16は、軌道面数が18面であって、相対的に10度ずつ軌道面の角度が変わる事例を示している。極通過タイミングとして、後続衛星が飛来するまでの待ち時間を18等分し、奇数面ではタイミング1から順に、偶数面ではタイミング10から順にずらして通過させていくと、結果的に地上サービス範囲は偶数面と奇数面で交互に間を埋める状態となるので、地表面を網羅的に包含できるという効果がある。
図17は、本実施の形態に係る衛星コンステレーション20において、軌道面数が偶数の場合の極通過タイミングを表す図である。
図18は、本実施の形態に係る衛星コンステレーション20において、軌道面数が奇数の場合の極通過タイミングを表す図である。
図17および図18に示すように、本実施の形態に係る衛星コンステレーション20では、軌道面数が奇数であることが好ましい。図17の例では、18面の隣に来る1面のサービス領域が隣り合ってしまって全球網羅する上で不整合を生じる可能性がある。そこで図18のように、軌道面数を奇数にすることにより、最終面と1面の地上サービス範囲が他と同様に交互に配置されるので、合理的に全球網羅できるという効果がある。
実施の形態8.
本実施の形態では、主に、実施の形態1から7に追加する点について説明する。なお、実施の形態1から7と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
本実施の形態では、衛星が衝突を回避しながらデオービット(軌道離脱)することができるデブリ除去方式のバリエーションについて説明する。
図19は、自由落下によるデオービットの概念を示す図である。
図20は、衛星コンステレーション20の上空の衛星がデオービットする際の衝突リスクを示す図である。
<デブリ除去方式の例1>
本実施の形態に係る例1のデブリ除去方式は、故障などにより制御不能となった故障衛星が降下して、衛星の密集する軌道面を経由する前に、故障衛星の軌道面を変更するための捕獲装置または外力付与装置と、故障衛星を推進する推進装置とを備える。
LST10:00からLST11:00程度の太陽同期準回帰軌道は、太陽光入射角と軌道面の関係が地球観測用光学センサの撮像に好適であり、地球観測光学衛星が多数飛行する密集軌道面となっている。軌道高度は高分解能撮像に好適で、大気抵抗の少ない500km以上1000km以下程度に集中している。しかし、超低高度衛星など軌道高度200km程度を飛行する例もある。
実施の形態1から実施の形態7で説明した衛星コンステレーション20を構成する衛星が、故障して制御不能となる場合がある。このとき、この故障衛星が、軌道高度1000kmから2000kmといった高高度から自由落下して地球の大気圏に突入して消滅するまでの図19に示すプロセスにおいて、軌道高度を変化させながら密集軌道面を通過する。その際、図20に示すように、故障衛星が、複数の軌道高度の衛星群と会合する可能性があるため衝突するリスクが高い。そこで、本実施の形態に係るデブリ除去方式により、予め密集軌道を通過しないよう軌道面を変更すれば、当該密集軌道の衝突を回避できるという効果がある。
図21は、衛星の増速と減速による軌道高度の変化を示す図である。
図22は、推進装置の噴射による軌道傾斜角の変更を示す図である。
デブリ除去方式の具体例としては、他衛星を捕獲する捕獲装置と、他衛星に推進力を与える推進装置とを備えたデブリ回収衛星により故障衛星を捕獲し、推進装置により人為的に軌道を変更する方式が有効である。
衛星進行方向に対して増速すれば一時的に軌道高度が上昇するので、密集軌道とは異なる周期で軌道面が摂動の効果により地球の略地軸周りに回転し、密集軌道面を回避することが可能となる。衛星進行方向に対して減速すれば一時的に軌道高度が下降して、密集軌道とは異なる周期で軌道面が摂動の効果により地球の略地軸周りに回転し、密集軌道面を回避することが可能となる。故障衛星が密集軌道を通過することを予測されるまでの時間的猶予に応じて、密集軌道と会合する前に降下させるか、密集軌道を通り過ぎた後に降下させるか、衝突回避方式を選択可能である。よって、確実に衝突を回避できるという効果がある。但し摂動による方法では滞留時間が長いというデメリットもあるため、積極的に推進装置を噴射して面外方向に軌道面を回転させる方式もありうる。この場合は推薬消費量の多いので、推進系タンクを含めてデブリ除去方式が大型化する。
なお、自衛星の回収は所謂協力的ターゲットの回収に相当する。よって、デブリ回収衛星は、予めデブリ除去方式に適合するアタッチメントを具備して捕獲を容易にすることが有効である。また、デブリ回収衛星は、自衛星あるいは捕獲用ターゲットの位置を知らせる情報を発信して、自衛星が接近あるいは接合しやすくする方法が有効である。ただし、制御能力を喪失して回転しているといった場合は例外となる。
<デブリ除去方式の例2>
本実施の形態に係る例2のデブリ除去方式は、楕円軌道を描きながら高度100kmから2000km程度を浮遊する物体が衛星コンステレーションを構成する軌道面を経由する前に、当該物体の軌道面を変更するための捕獲装置または外力付与装置と、当該物体に推進力を与える推進装置とを具備する。なお、外力付与装置は、「力」のみならず「トルク」、あるいは、合体することに伴う「質量特性変化」まで「外力」に含む場合がある。外力付与装置は、外乱付与装置ともいう。
STMにおいて障害物除去が課題となっている。楕円軌道を描いて飛行する物体の軌道面が、特定軌道高度の略円軌道上で衛星が多数飛行する軌道面一致して同一面を飛行すると衝突リスクが非常に高くなる。本実施の形態に係る例2のデブリ除去方式によれば、衝突リスクの高い障害物を安全に除去できるという効果がある。
デブリ除去方式の具体例は<デブリ除去方式の例1>と同様である。<デブリ除去方式の例1>では自衛星を捕獲するため、所謂協力的ターゲットとして、捕獲しやすいアタッチメントなどを予め具備することが可能である。しかし、自衛星以外の浮遊物体の場合は所謂非協力的ターゲットであり、形状が複雑な物体、回転している物体、重量の大きな物体、あるいは捕獲可能な適切な構造を持たない物体といった捕獲が難しい物体である。このため、具備すべき捕獲装置が高度化されている必要がある。具体例として、ロボットによる把持する方法、捕獲網状の装置で対象を覆いこむ方法、および、ワイヤー付きのもり状の棒材を突き刺して引っ張る方法といった方法が実現可能である。
実施の形態9.
本実施の形態では、主に、実施の形態1から8との相違点あるいは追加点について説明する。なお、実施の形態1から8と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
本実施の形態では、実施の形態1から7に記載の衛星コンステレーション形成システムにより構築される衛星コンステレーションに、実施の形態8のデブリ除去方式の例1または例2に記載のデブリ除去方式を適用した衛星コンステレーション構築方式のバリエーションについて説明する。
<衛星コンステレーション構築方式の例1>
本実施の形態に係る衛星コンステレーション構築方式の例1では、衛星コンステレーション20を構成する構成要素の軌道面の近傍の異なる軌道面であって、近傍軌道面の衛星が飛行する軌道高度とは異なる軌道高度に軌道投入する。そして、衛星コンステレーション構築方式の例1では、増速ないし減速して軌道高度と軌道面の地球地軸周りの角度を変更して構成衛星を追加する。
衛星を順番に打ち上げて所定の衛星コンステレーションを構築する途中経過において、多数機投入後の軌道面に追加衛星を投入するプロセスでは衝突リスクが高い。本実施の形態に係る衛星コンステレーション構築方式の例1では、投入済の衛星の軌道面若干角度をずらした軌道に投入することで打上げ時の衝突リスクを格段に減じることが可能となる。更に投入済の衛星高度と一致しない衛星高度から徐々に所望の軌道に接近することにより、過渡段階の衝突リスクを減じることが可能となる。
<衛星コンステレーション構築方式の例2>
本実施の形態に係る衛星コンステレーション構築方式の例2では、他国システムあるいは類似システムが採用する軌道上、軌道高度、飛行する衛星数などの情報を予め収集したデータベースを具備する。本実施の形態に係る衛星コンステレーション構築方式の例2では、既存の衛星の飛行する軌道面とは異なり、かつ構成要素の軌道面の近傍の異なる軌道面であって、近傍軌道面の衛星が飛行する軌道高度とは異なる軌道高度に軌道投入する。本実施の形態に係る衛星コンステレーション構築方式の例2では、増速ないし減速して軌道高度と軌道面の地球地軸周りの角度を変更して構成衛星を追加する。
本実施の形態に係る衛星コンステレーション構築方式の例2によれば、衛星コンステレーションが複数構築され、宇宙空間全体が混雑する環境下において、衝突リスクなく衛星コンステレーションを構築できるという効果がある。
また、衛星コンステレーション構築方式の例1では、自衛星の軌道および位置のデータ処理装置を地上に具備する。
また、衛星コンステレーション構築方式の例2では、宇宙空間の飛行物体の軌道および位置のデータ処理装置を地上に具備する。
実施の形態10.
本実施の形態では、主に、実施の形態1から9に追加する点について説明する。なお、実施の形態1から9と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
本実施の形態では、衛星コンステレーション20を構成する衛星30であって、設計寿命末期を迎えた衛星30に軌道制御コマンド51を送信する地上設備500のバリエーションについて説明する。軌道制御コマンド51は、上記衛星30の具備する推進装置を動作させることにより、衛星30をデオービットさせるコマンドである。
<地上設備500の例1>
図23は、本実施の形態に係る地上設備500の例1の構成を示す図である。
地上設備500の例1の構成は実施の形態10と同様である。
通信装置950は、衛星コンステレーション20を構成する衛星30を追跡管制運用する信号を送受する。
軌道制御コマンド送信部510は、設計寿命末期を迎えたなどのデオービットさせる衛星30に、軌道制御コマンド51を送信する。
解析予測部520は、軌道離脱用コマンド受信後の衛星30の通過軌道を解析予測する。
具体例として、解析予測部520が、太陽同期軌道における混雑軌道のLST10:30近傍の軌道面を軌道高度500kmから800kmで衛星30が通過すると判定した場合について説明する。このとき、軌道制御コマンド送信部510は、混雑軌道通過タイミングあるいは軌道面をずらして、衝突リスクを回避するアクティブデオービット運用を実施する軌道制御コマンド51を衛星30に送信する。衛星30は、軌道制御コマンド51を受信すると、衛星30の具備する軌道制御装置により、衛星速度の増速、ないし減速による軌道高度の上昇、ないし下降を実施する。あるいは、衛星30は、衛星進行方向と概略直交する方向への推進器の噴射による軌道面の面外方向への加速度付与による軌道傾斜角の変更をする。このようにして、衛星30は、混雑軌道通過タイミング、ないし軌道面をずらして衝突リスクを回避するアクティブデオービット運用を実施する。
メガコンステレーション構築に当たり、宇宙空間のデブリ総量が無制限に増加しない対策として、PMD(Post-Mission Disposal)を義務づけて、例えば99%以上の衛星を軌道上からデオービットすることの必要性が議論されている。また寿命末期において衛星が健全である確率を考慮すべきことから、寿命末期あるいは故障により機能喪失して自律的にデオービットできない衛星を外的手法によりデオービットするADR(Active Debris Removal)の必要性も議論されている。
しかしながらPMDあるいはADRでは、自由落下させて大気圏で燃え尽きる手法の必要性に訴求しているだけであって、落下途中で混雑軌道を通過する場合の回避策を有していない。また、静止軌道衛星では、デブリ衝突のリスクが予見された場合に、デブリの予測軌道情報を衝突警報と共に公表して、被衝突側衛星が衝突回避行動をとる事例がある。しかし、低軌道周回衛星において、別の衛星コンステレーションが構築されている場合、被衝突側衛星の回避行動が2次的衝突原因となるリスクが高い。すなわち、縦列駐車状態の前後衛星への衝突、同一面内で異なる高度の衛星群への衝突などのリスクである。
また、当該エリアに短期間に多数の被衝突側衛星が通過する可能性が高く、複数衛星が同時に回避行動をとった場合に、近傍衛星の挙動予測が困難となり、派生的な衝突リスクが発生する。
また、回避行動の結果として、軌道高度、軌道面内位相のみならず、軌道面の回転に伴うLSTの移動が発生し、復帰困難、ないし衛星コンステレーションが目的とするサービス継続に支障を来すリスクがある。
さらに、回避機能を持たない実験衛星であるCubeSatといった衛星が多数飛翔している場合がある。
また、自由落下に伴う軌道予測精度が悪い場合に、衝突警報を出すべきエリアと時間帯が広域かつ長時間となり、被衝突衛星側に頻繁に衝突警報が発せられ、対応不能になるという場合がある。
本実施の形態に係る地上設備500の例1によれば、デオービットによる高度低下途中においても、落下途中の軌道制御が可能となるので、混雑軌道の通過を回避でき、衝突を回避できるという効果がある。また、被衝突側衛星が回避行動をとらなくても衝突を回避できるという効果がある。
<地上設備500の例2>
本実施の形態の地上設備500の例2では、デブリ回収衛星31に、軌道制御機能を喪失した故障衛星をデオービットさせる捕獲コマンド52と軌道制御コマンド51を、デブリ回収衛星31に対して送信する。デブリ回収衛星31は、例えば、故障により軌道制御機能を喪失した衛星を回収する装置を具備する衛星である。デブリ回収衛星31は、故障衛星を捕獲する捕獲装置と推進装置とを備える。
地上設備500の例2は、故障衛星を、上記デブリ回収衛星の具備する捕獲装置と推進装置とを動作させることにより、デオービットさせる捕獲コマンド52と軌道制御コマンド51をデブリ回収衛星31に対して送信する。
通信装置950は、デブリ回収衛星を追跡管制運用する信号を送受する。
軌道制御コマンド送信部510は、軌道制御コマンド51あるいは捕獲コマンド52を送信する。
解析予測部520は、故障衛星を捕獲した状態のデブリ回収衛星の通過軌道を解析予測する。
具体例として、解析予測部520が、太陽同期軌道における混雑軌道のLST10:30近傍の軌道面を軌道高度500kmから800kmでデブリ回収衛星31が通過すると判明した場合について説明する。このとき、軌道制御コマンド送信部510は、混雑軌道通過タイミングあるいは軌道面をずらして、衝突リスクを回避するアクティブデオービット運用を実施する軌道制御コマンド51をデブリ回収衛星31に送信する。デブリ回収衛星31は、軌道制御コマンド51を受信すると、衛星30の具備する軌道制御装置により、衛星速度の増速、ないし減速による軌道高度の上昇、ないし下降を実施する。あるいは、衛星30は、衛星進行方向と概略直交する方向への推進器の噴射による軌道面の面外方向への加速度付与による軌道傾斜角の変更をする。このようにして、デブリ回収衛星31は、混雑軌道通過タイミング、ないし軌道面をずらして衝突リスクを回避するアクティブデオービット運用を実施する。
本実施の形態に係る地上設備500の例2によれば、予め、衛星コンステレーションの構成衛星がデブリ回収衛星の捕獲用アタッチメントといった設備を具備している。よって、本実施の形態に係る地上設備500の例2は、衛星コンステレーションの構成衛星の回収において有効である。
<地上設備500の例3>
本実施の形態に係る地上設備500の例3では、通信装置950は、軌道高度800km以上の混雑軌道よりも上空を飛翔するロケットの残骸を回収する装置を具備するデブリ回収衛星を追跡管制運用する信号を送受する。
軌道制御コマンド送信部510は、ロケットの残骸を、デブリ回収衛星の具備する捕獲装置と推進装置を動作させることにより、軌道離脱させる捕獲コマンドと軌道制御コマンドをデブリ回収衛星に対して送信する。
解析予測部520は、ロケットの残骸を捕獲した状態のデブリ回収衛星の通過軌道を解析予測する。
具体例として、解析予測部520が、太陽同期軌道における混雑軌道のLST10:30近傍の軌道面を軌道高度500kmから800kmで通過すると判明した場合について説明する。
本実施の形態に係る地上設備500の例3では、上記衛星の具備する軌道制御装置により、衛星速度の増速、ないし減速による軌道高度の上昇、ないし下降、あるいは衛星進行方向と概略直交する方向への推進器の噴射による軌道面の面外方向への加速度付与による軌道傾斜角の変更をする。そして、本実施の形態に係る地上設備500の例3では、混雑軌道通過タイミング、ないし軌道面をずらして衝突リスクを回避するアクティブデオービット運用を実施する。
ロケットの残骸は通常デブリ回収衛星の捕獲用アタッチメントを具備せず、軌道上で回転するなど捕獲が難しいため、地上設備500の例2よりも技術難度が高い。本実施の形態に係る地上設備500の例3によれば、捕獲装置としては投網のようにネット状物体で包み込む方式、ワイヤー付きのもり状の棒材を突き刺して引っ張る方式、あるいは捕獲対象の外表皮に粘着性物質あるいは接着材により密着する方式などが可能である。また、捕獲用アタッチメントを具備する衛星コンステレーション構成要素衛星のデオービットであっても、姿勢制御せず自由落下させた場合は姿勢が不定となるためデブリ回収衛星が捕獲用アタッチメントに容易にアクセスできない可能性が高い。このような場合に、本実施の形態に係る地上設備500の例3の捕獲装置が有効となる。
<地上設備500の例4>
ここでは、地上設備500の例1から例3で説明したように、衛星の軌道離脱あるいはデブリ回収による軌道離脱をする降下途中において、解析予測部520が、低高度に構築された別の衛星コンステレーションの極域密集域を通過すると判明した場合について説明する。
地上設備500の例4では、当該衛星コンステレーションとは異なる軌道傾斜角となるよう衛星進行方向と概略直交する方向への推進器の噴射による軌道面の面外方向への加速度付与による軌道傾斜角の変更をする。これにより、地上設備500の例4では、混雑軌道とは軌道面の傾きを変更するか、または通過タイミングをずらして衝突リスクを回避するアクティブデオービット運用を実施する。
地上設備500の例1から例3では、LST10:30近傍の混雑軌道回避をカバーするだけでなく、極域密集域通過の場合の衝突も回避することができる。
上記地上設備500の例1から例4をどのように組み合わせて実施しても構わない。例えば、以下の地上設備を実施することが可能である。
地上設備は、衛星コンステレーションを構成する衛星を追跡管制運用する信号を送受する通信装置と、軌道制御コマンドを送信する軌道制御コマンド送信部と、軌道離脱用コマンド受信後の上記衛星の通過軌道を解析予測する解析予測部とを備える。地上設備は、設計寿命末期を迎えた上記衛星を、上記衛星の具備する推進装置を動作させることにより、軌道離脱させる前記軌道制御コマンドを送信する。
地上設備は、衛星の軌道離脱あるいはデブリ回収による軌道離脱をする降下途中において、低高度に構築された別の衛星コンステレーションの極域密集域または混雑軌道面を通過することが解析予測で判明した場合に、衝突リスクを回避するアクティブデオービット運用を実施する。具体的には、地上設備は、当該衛星コンステレーションとは異なる軌道傾斜角となるよう衛星進行方向と概略直交する方向への推進器の噴射による軌道面の面外方向への加速度付与による軌道傾斜角の変更をすることによって、混雑軌道とは軌道面の傾きを変更するか、または通過タイミングをずらして衝突リスクを回避するアクティブデオービット運用を実施する。
地上設備は、故障して軌道制御機能を喪失した衛星を回収する装置を具備するデブリ回収衛星を追跡管制運用する信号を送受する通信装置と、軌道制御コマンド送信部と、故障衛星を捕獲した状態のデブリ回収衛星の通過軌道を解析予測する解析予測部を具備する。地上設備は、故障した衛星を、上記デブリ回収衛星の具備する捕獲装置と推進装置を動作させることにより、軌道離脱させる捕獲コマンドと軌道制御コマンドをデブリ回収衛星に対して送信する。
地上設備は、衛星の軌道離脱あるいはデブリ回収による軌道離脱をする降下途中において、低高度に構築された別の衛星コンステレーションの極域密集域または混雑軌道面を通過することが解析予測で判明した場合に、衝突リスクを回避するアクティブデオービット運用を実施する。具体的には、地上設備は、当該衛星コンステレーションとは異なる軌道傾斜角となるよう衛星進行方向と概略直交する方向への推進器の噴射による軌道面の面外方向への加速度付与による軌道傾斜角の変更をすることによって、混雑軌道とは軌道面の傾きを変更するか、または通過タイミングをずらして衝突リスクを回避するアクティブデオービット運用を実施する。
地上設備は、軌道高度800km以上の混雑軌道よりも上空を飛翔するロケットの残骸を回収する装置を具備するデブリ回収衛星を追跡管制運用する信号を送受する通信装置と、軌道制御コマンド送信部と、ロケットの残骸を捕獲した状態のデブリ回収衛星の通過軌道を解析予測する解析予測部を具備する。地上設備は、ロケットの残骸を、上記デブリ回収衛星の具備する捕獲装置と推進装置を動作させることにより、軌道離脱させる捕獲コマンドと軌道制御コマンドをデブリ回収衛星に対して送信する。
地上設備は、衛星の軌道離脱あるいはデブリ回収による軌道離脱をする降下途中において、低高度に構築された別の衛星コンステレーションの極域密集域または混雑軌道面を通過することが解析予測で判明した場合に、衝突リスクを回避するアクティブデオービット運用を実施する。具体的には、地上設備は、当該衛星コンステレーションとは異なる軌道傾斜角となるよう衛星進行方向と概略直交する方向への推進器の噴射による軌道面の面外方向への加速度付与による軌道傾斜角の変更をすることによって、混雑軌道とは軌道面の傾きを変更するか、または通過タイミングをずらして衝突リスクを回避するアクティブデオービット運用を実施する。
ここで、本実施の形態に係る効果について、さらに説明する。
低軌道衛星のデオービットは衛星進行方向と逆方向に推進器を動作して軌道高度を低下させ、大気圏突入により焼き尽くす手法が一般的である。しかしながら、昨今計画されているメガ衛星コンステレーションは、軌道高度が1000km以上と低軌道周回衛星よりも高高度であるため、寿命末期あるいは故障時にデオービットする際、より低軌道高度を飛行する衛星に衝突するリスクがある。
またメガ衛星コンステレーションでは軌道面も多様に構成され、それぞれの軌道面に多数衛星が隊列飛行しているため、デオービット時に衛星が通過する軌道経路も多岐に渡る。特に太陽同期軌道のLST10:30近傍あるいは極域といった低軌道衛星の混雑領域を通過する可能性がある場合に、衝突確率が高い。
デオービットを自由落下に依存する場合は、徐々に高度を低下させるのに伴って、軌道面が回転するため、いかなる軌道面からデオービットした衛星にも太陽同期衛星の混雑軌道を通過する可能性がある。
また極域付近を通過する軌道傾斜角略90度近傍の軌道面で構成される衛星コンステレーションの衛星をデオービットする場合、軌道高度が低下しても軌道傾斜角が概ね同様なため、より低軌道の極軌道衛星と衝突する確率が高い。
本実施の形態では、混雑軌道面通過を回避するために、軌道面の回転を利用して、混雑軌道通過前に落下を早めて通過するか、逆に混雑軌道面が通り過ぎた後に閑散として軌道面を落下させることにより衝突を回避する。混雑軌道面を通過するタイミングを変更する方式としては、デオービットする衛星を加速すれば軌道高度が上昇し、落下タイミングを遅らせることができる。また減速すれば軌道高度降下が加速するので、落下タイミングを早めることができる。また当該軌道高度での滞留時間に応じて、摂動により軌道面が回転する効果があるので、混雑軌道の通過を待つことが可能となる。なおデオービットする衛星の昇交点ないし降交点通過時に進行方向と直交方向に推進器を動作することで、軌道傾斜角が変更できるので、軌道面の回転を加速することも可能である。
特に地上設備500の例4では、軌道傾斜角を意図的に変更することにより、極域で混雑する高度では、極域を通過しないよう、軌道面を変更することにより、衝突を回避する。軌道傾斜角を変更する方式としては、デオービットする衛星の昇交点ないし降交点通過時に進行方向と直交方向に推進器を動作することで、軌道傾斜角が効果的に変更できる。
次に、上記の実施の形態1から10に係る効果について、さらに説明する。
近年数千機に及ぶ大規模衛星コンステレーションの構想が発表されているが、同一高度を飛翔する衛星は軌道面の交線上で、衛星高度の一致する2点で衝突するリスクがある。大規模コンステレーションでは特に全ての軌道面が高確率で会合する極域において衝突確率が極めて高くなる。
同一軌道面に多数の衛星が飛行する例として赤道上空で軌道高度約36000kmを飛行する静止軌道衛星が有名であり、同一軌道面を約300の衛星が飛行している。地球自転と同期しているため、地上から見るとあたかも宇宙空間で静止しているように見えるが、同一高度を略円軌道を描いて飛行しているため、静止軌道上衛星は衝突せず運用継続している。また地球から見た角度は約1度から2度程度しか離れていないので接近しているように感じるが、軌道上の2衛星間の距離は十分離れている。
これに対して近年増加傾向の低軌道周回衛星コンステレーションでは、単独コンステレーションでも衛星数が数千の規模であり、複数衛星コンステレーション構想の衛星総数は1万機に迫る規模となる。軌道高度が静止衛星に対して1/20~1/100倍程度と低く、2衛星間の距離も格段に接近しているため、静止軌道と比較しても衝突のリスクが高い。
また静止軌道とは異なり、異なる軌道面を同時に利用するため、2面の交線上で衝突する可能性が存在する。軌道傾斜角90°近傍の衛星コンステレーションでは複数の軌道面が地球の自転軸近傍を交線となし、全ての衛星が南極上空と北極上空を通過するため、軌道高度が一致すると衝突する可能性が高い。
また地球観測衛星で多用するLST10:00~11:00の太陽同期軌道は衛星が密集する軌道面が多く、同じ軌道面内に徐々に軌道高度を変化させる物体が侵入すると衝突リスクが高い。
また衛星コンステレーションの完成形態においては、いかなる2衛星も位置座標と時刻が同時に一致する条件(x1、y1、z1、t1)=(x2、y2、z2、t2)とならない限り衝突は発生しない。よって、軌道高度あるいはタイミング、軌道面内の位相などを人為的に操作することで衝突を回避することができる。しかし、衛星コンステレーションの構築過渡段階において、新規衛星をコンステレーションに追加するプロセスでは衝突リスクが高い。
また多数の衛星コンステレーションよりも高高度を飛行する衛星が制御不能な故障に陥って自由落下する場合に、密集軌道面を高度変更しながら通過すると、同一軌道面内で複数の軌道高度の衛星群と会合する可能性があるため、衝突リスクが高い。
宇宙空間は広大であるため絶対値としての衝突確率は依然十分小さいとしても、一度衝突が発生すると、大規模な破壊が起こり、多数飛散した残骸が所謂デブリとして、近傍を飛翔する衛星に再び衝突して2次被害を発生する恐れがある。ワーストケースでは衝突、破壊の連鎖により、近傍軌道全体がバイオレートされる懸念もある。
近傍軌道全体がバイオレートされて、多数のデブリが浮遊する状態になると、長期にわたりいかなる衛星も運用できなくなるリスクがあり、宇宙インフラへの依存性が高まる一方の社会生活全般に悪影響が及ぶ。
また衛星自体が高額であり、かつロケットによる打上げや運用に資する総コストが巨額であるため、衝突が発生すると巨額の経済的損失につながる。
また複数衛星が連携することにより例えば通信サービスといった目的を実現しているため、衝突に伴う衛星欠落により、当初目的のサービスの中断および品質劣化を来す。
上記の実施の形態1から10では、高度の異なる軌道面の組合せ、交点通過時刻を人為的にずらす方式、故障した衛星の除去方式、新規衛星軌道投入方式といった手法を提供することにより、衛星コンステレーションの衝突を回避することができる。
実施の形態11.
本実施の形態では、主に、実施の形態1から10に追加する点について説明する。なお、実施の形態1から10と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
実施の形態1で説明したように、衛星コンステレーション形成システム100は、衛星群300により構成され、衛星群300が連携してサービスを提供する衛星コンステレーション20を形成する。衛星コンステレーション形成システム100は、各軌道面21に複数の衛星が同じ軌道高度で飛行する複数の軌道面を有する衛星コンステレーション20を形成する。
また、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成部110は、複数の軌道面の各軌道面21の軌道高度が互いに異なり、かつ、複数の軌道面の各軌道面21の公転周期が互いに等しくなる軌道傾斜角を各軌道面が有する衛星コンステレーション20を形成する。例えば、複数の軌道面の各軌道面は、図11に示すような太陽同期軌道である。
衛星コンステレーション形成システム100には、衛星コンステレーション20が備える各軌道面21の軌道高度が互いに異なり、かつ、複数の軌道面の各軌道面21の公転周期が互いに等しくなる軌道傾斜角を各軌道面が有するようにパラメータが設定される。
そして、衛星コンステレーション形成部110は、設定されたパラメータを用いて、各軌道面21の軌道高度が互いに異なり、かつ、複数の軌道面の各軌道面21の公転周期が互いに等しくなる軌道傾斜角を各軌道面が有する衛星コンステレーション20を形成する。
図25は、本実施の形態に係る衛星コンステレーション20の具体例を示す模式図である。
太陽同期する軌道面同士は軌道高度が異なっていても公転周期が等しくなる。以下に、軌道高度が異なり、太陽同期軌道となる複数軌道面の例を示す。太陽同期するための制約条件は概ね軌道高度と軌道傾斜角の相関関係で決まるので、軌道高度に応じて軌道傾斜角を適切に設定すれば、太陽同期軌道を形成できる。
軌道高度1000km:軌道傾斜角約99.5°
軌道高度1100km:軌道傾斜角約99.9°
軌道高度1200km:軌道傾斜角約100.4°
軌道高度1300km:軌道傾斜角約100.9°
軌道高度1400km:軌道傾斜角約101.4°
軌道高度1500km:軌道傾斜角約102.0°
例えば、上記6種類の軌道高度の軌道面をLSTで以下のように設定すれば、互いに概略30°ずつ緯度方向に角度が異なる軌道面群が構成され、この軌道面間の相対角度は常に維持される。すなわち、公転周期が等しい6つの軌道面が形成される。
軌道高度1000kmの太陽同期軌道面:LST06:00
軌道高度1100kmの太陽同期軌道面:LST08:00
軌道高度1200kmの太陽同期軌道面:LST10:00
軌道高度1300kmの太陽同期軌道面:LST12:00
軌道高度1400kmの太陽同期軌道面:LST14:00
軌道高度1500kmの太陽同期軌道面:LST16:00
ここでは、公転周期が等しくなる典型的な例として太陽同期軌道を例示したが、太陽非同期軌道であっても、同様に公転周期が等しくなる複数の軌道高度の選定が可能である。
なお、衛星コンステレーション形成部110は、複数の軌道面の各軌道面21の軌道高度が互いに異なり、かつ、複数の軌道面の各軌道面21の回転が同期する軌道傾斜角を各軌道面が有する衛星コンステレーション20を形成してもよい。
次に、本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システム100により構築される衛星コンステレーション20を追跡管制する地上設備500について説明する。
本実施の形態に係る地上設備500は、複数の軌道面の各軌道面における複数の衛星の相対位相を維持するように各衛星の高度を調整するとともに、複数の軌道面間の相対角度を維持するように各軌道面の軌道高度および軌道傾斜角の調整を行うコマンドを生成し、衛星群の各衛星に送信する。
<地上設備500の例5>
図23は、本実施の形態に係る地上設備500である地上設備500の例5の構成を示す図である。
地上設備500の例5の構成は、実施の形態10の地上設備500の例1と同様である。
通信装置950は、衛星コンステレーション20を構成する衛星30を追跡管制運用する信号を送受する。
軌道制御コマンド送信部510は、複数の軌道面の各軌道面における複数の衛星の相対位相を維持するように各衛星の高度を調整するとともに、複数の軌道面間の相対角度を維持するように各軌道面の軌道高度および軌道傾斜角の調整を行う軌道制御コマンド51を衛星30に送信する。
***本実施の形態の効果の説明***
軌道高度が異なり、かつ、軌道傾斜角が等しい軌道面の公転周期は相違する。このため、長期間運用する内に軌道面同士の相対角度が変化してしまう。この結果、複数の衛星で連携してサービスを実施する際に、衛星の配置が変化してしまって、サービスに支障を来す虞がある。また適切な軌道配置を維持するために、別途推進器を用いて軌道面を調整する場合は、調整中の期間にはサービスの継続ができなくなるという虞がある。
本実施の形態に係る衛星コンステレーション形成システムによれば、軌道面間の相対関係が維持されるので、支障なくサービス提供し続けながら、衝突リスクを回避することが可能となる。
実施の形態12.
本実施の形態では、主に、実施の形態1から11に追加する点あるいは異なる点について説明する。なお、実施の形態1から11と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
***構成の説明***
図26は、衛星コンステレーション形成システム600の衛星30の構成例である。
ここで、衛星コンステレーション形成システム600を形成する衛星30の構成について説明する。
衛星30は、衛星制御装置310と衛星通信装置32と推進装置33と姿勢制御装置34と電源装置35とを備える。その他、各種の機能を実現する構成要素を備えるが、図26では、衛星制御装置310と衛星通信装置32と推進装置33と姿勢制御装置34と電源装置35について説明する。衛星30は、宇宙物体60の一例である。
衛星制御装置310は、推進装置33と姿勢制御装置34とを制御するコンピュータであり、処理回路を備える。具体的には、衛星制御装置310は、地上設備500から送信される各種コマンドにしたがって、推進装置33と姿勢制御装置34とを制御する。
衛星通信装置32は、地上設備500と通信する装置である。具体的には、衛星通信装置32は、自衛星に関する各種データを地上設備500へ送信する。また、衛星通信装置32は、地上設備500から送信される各種コマンドを受信する。
推進装置33は、衛星30に推進力を与える装置であり、衛星30の速度を変化させる。具体的には、推進装置33は、アポジキックモーターまたは化学推進装置、または電気推進装置である。アポジキックモーター(AKM:Apogee Kick Motor)は、人工衛星の軌道投入に使われる上段の推進装置のことであり、アポジモーター(固体ロケットモーター使用時)、またはアポジエンジン(液体エンジン使用時)とも呼ばれている。
化学推進装置は、一液性ないし二液性燃料を用いたスラスタである。電気推進装置としては、イオンエンジンまたはホールスラスタである。アポジキックモーターは軌道遷移に用いる装置の名称であり、化学推進装置の一種である場合もある。
姿勢制御装置34は、衛星30の姿勢と衛星30の角速度と視線方向(Line Of Sight)といった姿勢要素を制御するための装置である。姿勢制御装置34は、各姿勢要素を所望の方向に変化させる。もしくは、姿勢制御装置34は、各姿勢要素を所望の方向に維持する。姿勢制御装置34は、姿勢センサとアクチュエータとコントローラとを備える。姿勢センサは、ジャイロスコープ、地球センサ、太陽センサ、スター・トラッカ、スラスタおよび磁気センサといった装置である。アクチュエータは、姿勢制御スラスタ、モーメンタムホイール、リアクションホイールおよびコントロール・モーメント・ジャイロといった装置である。コントローラは、姿勢センサの計測データまたは地上設備500からの各種コマンドにしたがって、アクチュエータを制御する。
電源装置35は、太陽電池、バッテリおよび電力制御装置といった機器を備え、衛星30に搭載される各機器に電力を供給する。
衛星制御装置310に備わる処理回路について説明する。
処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
処理回路において、一部の機能が専用のハードウェアで実現されて、残りの機能がソフトウェアまたはファームウェアで実現されてもよい。つまり、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせで実現することができる。
専用のハードウェアは、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGAまたはこれらの組み合わせである。
ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
図27は、衛星コンステレーション形成システム600が備える地上設備500の構成例である。
地上設備500は、全ての軌道面の多数衛星をプログラム制御する。地上設備500は、地上装置の例である。地上装置は、地上アンテナ装置、地上アンテナ装置に接続された通信装置、あるいは電子計算機といった地上局と、地上局にネットワークで接続されたサーバあるいは端末としての地上設備から構成される。また、地上装置には航空機、自走車両、あるいは移動端末といった移動体に搭載された通信装置を含んでも良い。
地上設備500は、各衛星30と通信することによって衛星コンステレーション20を形成する。地上設備500は、宇宙交通管理装置200に備えられる。地上設備500は、プロセッサ910を備えるとともに、メモリ921、補助記憶装置922、入力インタフェース930、出力インタフェース940、および通信装置950といった他のハードウェアを備える。プロセッサ910は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。地上設備500のハードウェアについては、図6において説明した衛星コンステレーション形成システム100のハードウェアと同様である。
地上設備500は、機能要素として、軌道制御コマンド送信部510と、解析予測部520を備える。軌道制御コマンド送信部510および解析予測部520の機能は、ハードウェアあるいはソフトウェアにより実現される。
通信装置950は、衛星コンステレーション20を構成する衛星群300の各衛星30を追跡管制する信号を送受信する。また、通信装置950は、軌道制御コマンド55を各衛星30に送信する。
解析予測部520は、衛星30の軌道を解析予測する。
軌道制御コマンド送信部510は、衛星30に送信する軌道制御コマンド55を生成する。
軌道制御コマンド送信部510および解析予測部520は、衛星コンステレーション形成部11の機能を実現する。すなわち、軌道制御コマンド送信部510および解析予測部520は、衛星コンステレーション形成部11の例である。
図28は、衛星コンステレーション形成システム600の機能構成例を示す図である。
衛星30は、さらに、衛星コンステレーション20を形成する衛星コンステレーション形成部11bを備える。そして、複数の衛星の各衛星30の衛星コンステレーション形成部11bと、地上設備500の各々に備えられた衛星コンステレーション形成部11とが連携して、衛星コンステレーション形成システム600の機能を実現する。なお、衛星30の衛星コンステレーション形成部11bは、衛星制御装置310に備えられていてもよい。
図29は、本実施の形態に係る宇宙交通管理システム800の全体構成例である。
宇宙交通管理システム800は、複数の宇宙交通管理装置200を備える。
複数の宇宙交通管理装置200の各々は、宇宙を飛行する宇宙物体60を管理する複数の事業者の各々の事業装置40に実装される。複数の宇宙交通管理装置200は、互いに通信回線で接続されている。
図30は、本実施の形態に係る宇宙交通管理装置200の構成例を示す図である。
宇宙交通管理装置200は、他の事業装置40と通信する。宇宙交通管理装置200は、地上設備500に搭載されていてもよい。また、宇宙交通管理装置200は、衛星コンステレーション形成システム600に搭載されていてもよい。
事業装置40は、人工衛星、あるいは、デブリといった宇宙物体60に関する情報を提供する。事業装置40は、人工衛星、あるいは、デブリといった宇宙物体60に関する情報を収集する事業者のコンピュータである。
事業装置40には、メガコンステレーション事業装置41、LEOコンステレーション事業装置42、衛星事業装置43、軌道遷移事業装置44、デブリ除去事業装置45、ロケット打ち上げ事業装置46、およびSSA事業装置47といった装置が含まれる。LEOが、Low Earth Orbitの略語である。
メガコンステレーション事業装置41は、大規模衛星コンステレーション、すなわちメガコンステレーション事業を行うメガコンステレーション事業者のコンピュータである。
LEOコンステレーション事業装置42は、低軌道コンステレーション、すなわちLEOコンステレーション事業を行うLEOコンステレーション事業者のコンピュータである。
衛星事業装置43は、1機から数機の衛星を扱う衛星事業者のコンピュータである。
軌道遷移事業装置44は、衛星の宇宙物体侵入警報を行う軌道遷移事業者のコンピュータである。
デブリ除去事業装置45は、デブリを回収する事業を行うデブリ除去事業者のコンピュータである。
ロケット打ち上げ事業装置46は、ロケット打ち上げ事業を行うロケット打ち上げ事業者のコンピュータである。
SSA事業装置47は、SSA事業、すなわち、宇宙状況監視事業を行うSSA事業者のコンピュータである。
事業装置40は、人工衛星、あるいは、デブリといった宇宙物体に関する情報を収集し、収集した情報を宇宙交通管理システム800に提供する装置であれば、その他の装置でもよい。また、宇宙交通管理装置200が、SSAの公開サーバ上に搭載される場合は、宇宙交通管理装置200がSSAの公開サーバとして機能する構成でもよい。
宇宙交通管理装置200は、プロセッサ910を備えるとともに、メモリ921、補助記憶装置922、入力インタフェース930、出力インタフェース940、および通信装置950といった他のハードウェアを備える。プロセッサ910は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
宇宙交通管理装置200は、機能要素の一例として、宇宙交通管理部120と記憶部140を備える。記憶部140には、ルール情報515と密集領域識別情報525が記憶されている。
宇宙交通管理部120の機能は、ソフトウェアにより実現される。記憶部140は、メモリ921に備えられる。あるいは、記憶部140は、補助記憶装置922に備えられていてもよい。また、記憶部140は、メモリ921と補助記憶装置922に分けられて備えられてもよい。
宇宙交通管理部120は、例えば、ルール情報515にしたがって宇宙物体60を管理する。あるいは、宇宙交通管理部120は、密集領域識別情報525を用いて、ルール情報515にしたがって宇宙物体60を管理する。
プロセッサ910は、宇宙交通管理プログラムを実行する装置である。宇宙交通管理プログラムは、宇宙交通管理装置200および宇宙交通管理システム800の各構成要素の機能を実現するプログラムである。
宇宙交通管理装置200のハードウェアについては、図6において説明した衛星コンステレーション形成システム100のハードウェアと同様である。
宇宙交通管理プログラムは、プロセッサ910に読み込まれ、プロセッサ910によって実行される。メモリ921には、宇宙交通管理プログラムだけでなく、OS(Operating System)も記憶されている。プロセッサ910は、OSを実行しながら、宇宙交通管理プログラムを実行する。宇宙交通管理プログラムおよびOSは、補助記憶装置922に記憶されていてもよい。補助記憶装置922に記憶されている宇宙交通管理プログラムおよびOSは、メモリ921にロードされ、プロセッサ910によって実行される。なお、宇宙交通管理プログラムの一部または全部がOSに組み込まれていてもよい。
宇宙交通管理装置200は、プロセッサ910を代替する複数のプロセッサを備えていてもよい。これら複数のプロセッサは、プログラムの実行を分担する。それぞれのプロセッサは、プロセッサ910と同じように、プログラムを実行する装置である。
宇宙交通管理装置の各部の「部」を「処理」、「手順」、「手段」、「段階」あるいは「工程」に読み替えてもよい。また、通過判定処理と警報生成処理と警報通知処理の「処理」を「プログラム」、「プログラムプロダクト」または「プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体」に読み替えてもよい。「処理」、「手順」、「手段」、「段階」あるいは「工程」は、互いに読み換えが可能である。
宇宙交通管理プログラムは、宇宙交通管理システムの各部の「部」を「処理」、「手順」、「手段」、「段階」あるいは「工程」に読み替えた各処理、各手順、各手段、各段階あるいは各工程を、コンピュータに実行させる。また、宇宙交通管理方法は、宇宙交通管理装置200が宇宙交通管理プログラムを実行することにより行われる方法である。
宇宙交通管理プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に格納されて提供されてもよい。また、各プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
<本実施の形態の宇宙交通管理システムの機能概要について>
太陽同期軌道は地球観測で多用される軌道であり、特に以下の領域が密集している。
・太陽同期軌道LST10:30近傍で軌道高度500km以上1000km以下の領域。
・太陽同期軌道LST13:30近傍で軌道高度500km以上1000km以下の領域。
・太陽同期軌道LST06:00近傍で軌道高度500km以上1000km以下の領域。
・太陽同期軌道LST18:00近傍で軌道高度500km以上1000km以下の領域。
太陽同期軌道は軌道傾斜角が90度近傍となるので、同一軌道高度を飛行する衛星同士は極域において軌道面同士の交点が集中し、衝突するリスクが高い。
そこでSTM(宇宙交通管理)のルールとして、法線ベクトルの異なる軌道面の衛星同士は異なる軌道高度を採用することをルール化し、軌道の交点を解消すれば、定常運用における衝突確率がゼロとなり、衝突リスクが解消する。現実的には軌道投入時や軌道離脱時などの非定常運用を実施する際に衝突リスクは発生するが、定常運用における衝突確率がゼロであれば、リスクは激減するという効果がある。
また人為的な制御により極域通過タイミングをずらすことにより衝突回避をするという手段もある。しかし、太陽同期軌道には多数国の多数事業者が衛星を運用しており、相互連携がとり切れなければ衝突するリスクが残る。
またデブリ衝突といった不慮の事故により、人為的な制御が不能となる事態に陥った場合に、衝突するリスクが高いという課題がある。
このため定常運用における衝突確率がゼロであれば、人為的な制御ができなくなっても衝突事故を回避できるという効果がある。
具体的には、図29および図30に示すように、本実施の形態に係る宇宙交通管理システム800は、ルール情報515および密集領域識別情報525といった情報を用いて、宇宙物体60の宇宙交通管理を実施する宇宙交通管理処理を実行する。すなわち、宇宙交通管理システム800では、複数の宇宙交通管理装置200が、複数の宇宙交通管理装置200において共通のルール情報515と密集領域識別情報525とを用いて、宇宙物体60の交通を管理する。ルール情報515は、宇宙交通管理ルール501ともいう。
<宇宙交通管理処理の例1>
宇宙交通管理部120は、法線ベクトルの異なる軌道面の衛星同士が異なる軌道高度を採用するように、宇宙物体60の宇宙交通管理処理を実施する。
具体的には、ルール情報515には、法線ベクトルの異なる軌道面の衛星同士が異なる軌道高度を採用するルールを表す情報が設定されている。
宇宙交通管理部120は、ルール情報515にしたがって、宇宙物体60を管理する。
宇宙交通管理処理の例1によれば、法線ベクトルの異なる軌道面の衛星同士が異なる軌道高度を採用するので、極域における衝突確率がゼロとなり、定常運用における衝突リスクを解消できるという効果がある。
<宇宙交通管理処理の例2>
宇宙交通管理部120は、法線ベクトルが同じで、同一軌道高度を飛行する複数の衛星が、軌道面内で概略均等配置になる相対位相角を維持して飛行するように、宇宙物体60の宇宙交通管理処理を実施する。
具体的には、ルール情報515には、法線ベクトルが同じで、同一軌道高度を飛行する複数の衛星が、軌道面内で概略均等配置になる相対位相角を維持して飛行するルールを表す情報が設定されている。
宇宙交通管理部120は、ルール情報515にしたがって、宇宙物体60を管理する。
図31は、宇宙交通管理処理の例2の比較例における、軌道面内での衛星配置を表す図である。
図32は、本実施の形態に係る宇宙交通管理処理の例2における、軌道面内での衛星配置を表す図である。
図33は、法線ベクトルが同じで、かつ、軌道高度が異なる複数軌道面を表す図である。
図31および図32に示すように、同一軌道面で同一軌道高度を飛行する複数の衛星は、同期して飛行することにより衝突を回避できる。しかし、異なる事業者が管理する複数の衛星が、相対位相角を管理せずに衛星を飛行させた場合は衝突するリスクがある。
宇宙交通管理処理の例2によれば、宇宙交通管理ルール501を用いて、同一軌道面を飛行する複数衛星を識別し、かつ、同一軌道高度を飛行する複数の衛星が、軌道面内で概略均等配置になる相対位相角を維持して飛行する。これにより、衝突を回避できるという効果がある。
<宇宙交通管理処理の例3>
密集領域識別情報525は、以下の領域を密集領域として識別する情報である。
・太陽同期軌道LST10:30近傍で軌道高度500km以上1000km以下の領域。
・太陽同期軌道LST13:30近傍で軌道高度500km以上1000km以下の領域。
・太陽同期軌道LST06:00近傍で軌道高度500km以上1000km以下の領域。
・太陽同期軌道LST18:00近傍で軌道高度500km以上1000km以下の領域。
・北緯80度以上で軌道高度500km以上1000km以下の領域。
・南緯80度以上で軌道高度500km以上1000km以下の領域。
LST10:30近傍とLST13:30近傍は、光学衛星群あるいはA-Trainと呼ばれる各種地球観測衛星群が多用する軌道である。LST06:00近傍とLST18:00近傍は合成開口レーダを搭載したレーダ衛星群が多用する軌道である。
ルール情報515には、密集領域を飛行する衛星を管理する事業者が、衛星情報を公開するルールを表す宇宙交通管理ルール501が設定されている。
宇宙交通管理部120は、密集領域識別情報525とルール情報515とを用いて、同一軌道面を飛行する衛星を管理する事業者同士が、飛行安全対策について情報交換する手段を実現する。
宇宙交通管理処理の例3では、宇宙交通管理装置200は、密集領域識別情報525を具備する。かつ、宇宙交通管理装置200は、密集領域を飛行する衛星を管理する事業者が衛星情報を公開する宇宙交通管理ルール501と、同一軌道面を飛行する衛星を管理する事業者同士が飛行安全対策について情報交換できる手段とを具備する。
このように、当該軌道に複数事業者が無統制で衛星を飛行させることは危険であるため、交通ルールとして衛星軌道情報を公開し、飛行安全確保のための対策を調整できる環境を整備する。よって、宇宙交通管理処理の例3によれば、衝突回避をできるという効果がある。
飛行安全対策について情報交換できる手段としては、宇宙交通管理システム800のポータル上でチャットをできる機能を具備してもよいし、調整会議を主催するメッセージを発信してもよい。
<宇宙交通管理処理の例4>
宇宙交通管理部120は、密集領域識別情報525を用いて、宇宙物体60が軌道離脱して大気圏突入する途中過程において、密集領域のいずれかに侵入する前に、宇宙物体60を捕獲して軌道降下時衝突回避運用を実現する。このような軌道降下時衝突回避運用の実現方法を軌道降下時衝突回避運用方法という。
密集領域の具体例は、宇宙交通管理処理の例3で説明したものと同様である。
図34は、高高度のメガコンステレーション衛星による衛星軌道降下過程における密集領域(危険領域)侵入の様子を示す図である。
図35は、本実施の形態に係る衛星軌道降下過程における密集領域侵入回避の宇宙交通管理処理を示す図である。
具体的には、ルール情報515には、宇宙物体60が軌道離脱して大気圏突入する途中過程において、密集領域のいずれかに侵入する前に、宇宙物体60を捕獲して軌道降下時衝突回避運用を実現するルールを表す宇宙交通管理ルール501が設定されている。軌道降下時衝突回避運用は、アクティブデオービット運用ともいう。
宇宙交通管理部120は、密集領域識別情報525とルール情報515とを用いて、宇宙物体60が軌道離脱して大気圏突入する途中過程において、密集領域のいずれかに侵入する前に、宇宙物体60を捕獲して軌道降下時衝突回避運用を実現する。
図35を用いて、具体的に説明する。
(1)メガコンステレーション事業装置41の宇宙交通管理装置200は、高高度のメガコンステレーション衛星が故障衛星となり、密集領域(危険領域)に侵入することを予見する。この侵入予見情報は、通信回線を介して、宇宙交通管理システム800の全ての宇宙交通管理装置200に共有される。
(2)デブリ除去事業装置45の宇宙交通管理装置200は、ルール情報515に基づいて、密集領域のいずれかに侵入する前に、宇宙物体60を捕獲して軌道降下時衝突回避運用を実現する。具体的には、即応型デブリ除去衛星の打ち上げが行われる。
(3)即応型デブリ除去衛星は故障衛星を捕獲合体して、密集領域を回避して大気圏突入を行う。これにより、軌道降下時衝突回避運用が実現される。
以上の実施の形態1から12では、衛星コンステレーション形成システムおよび宇宙交通管理システムの各部を独立した機能ブロックとして説明した。しかし、衛星コンステレーション形成システムおよび宇宙交通管理システムの構成は、上述した実施の形態のような構成でなくてもよい。衛星コンステレーション形成システムおよび宇宙交通管理システムの機能ブロックは、上述した実施の形態で説明した機能を実現することができれば、どのような構成でもよい。また、衛星コンステレーション形成システムおよび宇宙交通管理システムは、1つの装置でも、複数の装置から構成されたシステムでもよい。
また、実施の形態1から12のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、1つの部分を実施しても構わない。その他、これらの実施の形態を、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施しても構わない。
すなわち、実施の形態1から12では、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
なお、上述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明の範囲、本発明の適用物の範囲、および本発明の用途の範囲を制限することを意図するものではない。上述した実施の形態は、必要に応じて種々の変更が可能である。
11,11b 衛星コンステレーション形成部、20 衛星コンステレーション、21
軌道面、30 衛星、31 デブリ回収衛星、32 衛星通信装置、33 推進装置、34 姿勢制御装置、40 事業装置、41 メガコンステレーション事業装置、42 LEOコンステレーション事業装置、43 衛星事業装置、44 軌道遷移事業装置、45 デブリ除去事業装置、46 ロケット打ち上げ事業装置、47 SSA事業装置、51 軌道制御コマンド、52 捕獲コマンド、60 宇宙物体、70 地球、100 衛星コンステレーション形成システム、200 宇宙交通管理装置、110 衛星コンステレーション形成部、120 宇宙交通管理部、140 記憶部、300 衛星群、310 衛星制御装置、500 地上設備、501 宇宙交通管理ルール、510 軌道制御コマンド送信部、515 ルール情報、525 密集領域識別情報、520 解析予測部、600 衛星コンステレーション形成システム、800 宇宙交通管理システム、910 プロセッサ、921 メモリ、922 補助記憶装置、930 入力インタフェース、940 出力インタフェース、950 通信装置。

Claims (9)

  1. 衛星群により構成され、前記衛星群が連携してサービスを提供する衛星コンステレーションであって、各軌道面に複数の衛星が同じ軌道高度で飛行する複数の軌道面を有する衛星コンステレーションを形成する衛星コンステレーション形成システムにおいて、
    前記複数の軌道面の各軌道面の軌道高度が同じであり、かつ、前記複数の軌道面の各軌道面が互いに異なる面に存在する前記衛星コンステレーションを形成する衛星コンステレーション形成部を備え、
    前記衛星コンステレーション形成部は、
    前記複数の軌道面の軌道面同士の交点を、各軌道面を飛行する衛星が通過する衛星通過時刻が、同一軌道面において、次衛星が飛来するまでの待ち時間を前記複数の軌道面の軌道面数で割った時刻ずれ値の倍数となっており、かつ、前記複数の軌道面のいかなる2面の軌道面の交点においても前記衛星通過時刻が一致しない前記衛星コンステレーションを形成し、
    前記衛星コンステレーション形成部は、
    前記複数の軌道面の各軌道面の軌道傾斜角が概略90度であり、全ての軌道面の全ての衛星が極域近傍を通過する前記衛星通過時刻が前記時刻ずれ値の間隔で互いにずれている前記衛星コンステレーションを形成する衛星コンステレーション形成システム。
  2. 前記衛星コンステレーション形成部は、
    前記複数の軌道面の各軌道面が並ぶ順番に番号を付けた場合に、奇数の軌道面と偶数の軌道面で極域通過のタイミングの後続衛星が飛来するまでの待ち時間が約半分ずつずれている前記衛星コンステレーションを形成する請求項1に記載の衛星コンステレーション形成システム。
  3. 前記衛星コンステレーション形成部は、
    前記複数の軌道面の全ての衛星が極域近傍を通過する前記衛星通過時刻が、前記時刻ずれ値の間隔で互いにずれており、前記複数の軌道面の各軌道面が並ぶ順番に番号を付けた場合に、奇数の軌道面と偶数の軌道面で極域通過のタイミングの後続衛星が飛来するまでの待ち時間が約半分ずつずれている前記衛星コンステレーションを形成する請求項1または請求項に記載の衛星コンステレーション形成システム。
  4. 衛星群により構成され、前記衛星群が連携してサービスを提供する衛星コンステレーションであって、各軌道面に複数の衛星が同じ軌道高度で飛行する複数の軌道面を有する衛星コンステレーションを形成する衛星コンステレーション形成システムにおいて、
    前記複数の軌道面の各軌道面の軌道高度が同じであり、かつ、前記複数の軌道面の各軌道面が互いに異なる面に存在する前記衛星コンステレーションを形成する衛星コンステレーション形成部を備え、
    前記衛星コンステレーション形成部は、
    前記複数の軌道面の軌道面同士の交点を、各軌道面を飛行する衛星が通過する衛星通過時刻が、同一軌道面において、次衛星が飛来するまでの待ち時間を前記複数の軌道面の軌道面数で割った時刻ずれ値の倍数となっており、かつ、前記複数の軌道面のいかなる2面の軌道面の交点においても前記衛星通過時刻が一致しない前記衛星コンステレーションを形成し、
    前記衛星コンステレーション形成部は、
    前記複数の軌道面の全ての衛星が極域近傍を通過する前記衛星通過時刻が、前記時刻ずれ値の間隔で互いにずれており、前記複数の軌道面の各軌道面が並ぶ順番に番号を付けた場合に、奇数の軌道面と偶数の軌道面で極域通過のタイミングの後続衛星が飛来するまでの待ち時間が約半分ずつずれている前記衛星コンステレーションを形成する衛星コンステレーション形成システム。
  5. 前記衛星コンステレーション形成部は、
    前記複数の軌道面の各軌道面の軌道傾斜角が概略90度であり、全ての軌道面の全ての衛星が極域近傍を通過する前記衛星通過時刻が前記時刻ずれ値の間隔で互いにずれている前記衛星コンステレーションを形成する請求項に記載の衛星コンステレーション形成システム。
  6. 前記衛星コンステレーション形成部は、
    前記複数の軌道面の各軌道面の軌道傾斜角が90度ではない前記衛星コンステレーションを形成する請求項に記載の衛星コンステレーション形成システム。
  7. 前記衛星コンステレーション形成部は、
    前記複数の軌道面の各軌道面が並ぶ順番に番号を付けた場合に、奇数の軌道面と偶数の軌道面で極域通過のタイミングの後続衛星が飛来するまでの待ち時間が約半分ずつずれている前記衛星コンステレーションを形成する請求項に記載の衛星コンステレーション形成システム。
  8. 衛星群により構成され、前記衛星群が連携してサービスを提供する衛星コンステレーションであって、各軌道面に複数の衛星が同じ軌道高度で飛行する複数の軌道面を有する衛星コンステレーションを形成する衛星コンステレーション形成システムの衛星コンステレーション形成方法において、
    前記複数の軌道面の各軌道面の軌道高度が同じであり、かつ、前記複数の軌道面の各軌道面が互いに異なる面に存在する前記衛星コンステレーションであって、前記複数の軌道面の軌道面同士の交点を、各軌道面を飛行する衛星が通過する衛星通過時刻が、同一軌道面において、次衛星が飛来するまでの待ち時間を前記複数の軌道面の軌道面数で割った時刻ずれ値の倍数となっており、かつ、前記複数の軌道面のいかなる2面の軌道面の交点においても前記衛星通過時刻が一致しない前記衛星コンステレーションを形成し、
    前記衛星コンステレーションは、前記複数の軌道面の各軌道面の軌道傾斜角が概略90度であり、全ての軌道面の全ての衛星が極域近傍を通過する前記衛星通過時刻が前記時刻ずれ値の間隔で互いにずれている衛星コンステレーション形成方法。
  9. 衛星群により構成され、前記衛星群が連携してサービスを提供する衛星コンステレーションであって、各軌道面に複数の衛星が同じ軌道高度で飛行する複数の軌道面を有する衛星コンステレーションを形成する衛星コンステレーション形成システムの衛星コンステレーション形成方法において、
    前記複数の軌道面の各軌道面の軌道高度が同じであり、かつ、前記複数の軌道面の各軌道面が互いに異なる面に存在する前記衛星コンステレーションであって、前記複数の軌道面の軌道面同士の交点を、各軌道面を飛行する衛星が通過する衛星通過時刻が、同一軌道面において、次衛星が飛来するまでの待ち時間を前記複数の軌道面の軌道面数で割った時刻ずれ値の倍数となっており、かつ、前記複数の軌道面のいかなる2面の軌道面の交点においても前記衛星通過時刻が一致しない前記衛星コンステレーションを形成し、
    前記衛星コンステレーションは、前記複数の軌道面の全ての衛星が極域近傍を通過する前記衛星通過時刻が、前記時刻ずれ値の間隔で互いにずれており、前記複数の軌道面の各軌道面が並ぶ順番に番号を付けた場合に、奇数の軌道面と偶数の軌道面で極域通過のタイミングの後続衛星が飛来するまでの待ち時間が約半分ずつずれている衛星コンステレーション形成方法。
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