以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下の説明において、「上」及び「下」との語は、鉛直方向を基準として用いられる。
図1及び図2を参照して、本実施形態に係るコイル装置10を備えた非接触給電システム1について説明する。コイル装置10は、例えば、非接触給電システム1における送電装置12として用いられる。非接触給電システム1は、受電装置11と送電装置12との間の磁気的結合を利用して送電装置12から受電装置11へ電力を供給する。非接触給電システム1は、例えば、地上又は水中を移動する移動体に搭載されるバッテリを充電する。
本実施形態では、海中を移動する移動体2に非接触給電システム1を適用した場合を例示する。この場合、受電装置11は、海中を移動する移動体2に設けられる。移動体2は、例えば自律型の無人潜水艇などの水中航走体である。移動体2は、例えば、前後方向に延びる円筒状をなす筐体2aを有する。受電装置11は、例えば、筐体2aの内部に配置されている。受電装置11は、例えば、筐体2aの内周面2bに取り付けられている。受電装置11は、受電回路及び充電回路などを介して筐体2aの内部に配置されたバッテリに電気的に接続されている。なお、受電装置11は、筐体2aの内部に配置されていなくてもよい。受電装置11は、例えば、筐体2aの外周面2cから露出していてもよく、外周面2cから突出していてもよい。
一方、送電装置12は、海中に設置されたプラットフォーム3に設けられる。プラットフォーム3は、移動体2のバッテリに送電するための施設である。プラットフォーム3は、例えば、半円筒状に形成された壁部3aを有する。送電装置12は、壁部3aの内周面3bに設けられている。送電装置12は、例えば、内周面3bから突出しており、内周面3bから露出している。送電装置12は、内周面3bから突出せずに壁部3aに埋め込まれていてもよい。送電装置12は、送電回路及び整流回路などを介して外部電源に電気的に接続されている。
図1及び図2に示すように、送電時には、プラットフォーム3の壁部3aの内周面3bの内側に移動体2が移動し、移動体2の内周面2bに取り付けられた受電装置11と内周面3bに設けられた送電装置12とが、上下方向において所定の間隔で互いに対面する。受電装置11と送電装置12とが上下方向に対面すると、受電装置11の内部の受電コイルC1と送電装置12の内部の送電コイルC2とが電磁気的に互いに結合して電磁結合回路を形成する。これにより、送電コイルC2から受電コイルC1への送電が行われる。言い換えれば、受電装置11は、送電装置12から非接触で電力を受け取る。電磁結合回路は、「電磁誘導方式」で送電及び受電を行う回路であってもよく、「磁界共鳴方式」で送電及び受電を行う回路であってもよい。
以下、コイル装置10を送電装置12として利用する態様を例に、コイル装置10について更に詳細に説明する。
コイル装置10は、例えば扁平な形状をなしている。コイル装置10は、筐体20と、送電コイルC2と、複数の電極Eと、電圧印加部30とを備えている。筐体20は、少なくとも送電コイルC2を収容する。筐体20は、カバー21とベース22とを含む。カバー21は、送電コイルC2の表面側に配置された箱体である。送電コイルC2の表面とは、コイル装置10に対面する受電装置11に近い面を指す。
カバー21は、送電コイルC2を含む内装部品を覆っている。カバー21は、例えば、非磁性且つ非導電性の材料により形成される。カバー21の材料として、例えばガラス繊維強化樹脂(GFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)などの樹脂材料を採用してもよい。カバー21は、上下方向において送電コイルC2とは反対側に位置する表面21aを含んでいる。表面21aは、カバー21の外側に露出する外面であり、上下方向において受電装置11と対面する。本実施形態では、表面21aは上下方向に直交する平面であり、表面21aの法線方向は例えば上下方向に一致する。
ベース22は、送電コイルC2の裏面側に配置された板状部材である。送電コイルC2の裏面とは、受電装置11から遠い面、すなわち上下方向において表面とは反対側の面を指す。ベース22は、コイル装置10の全体としての剛性を確保する。ベース22は、例えば、非磁性材料であって導電性を有する材料により形成される。ベース22の材料として、比較的剛性の高い材料を採用してもよい。また、ベース22の材料として、例えば透磁率の低い金属材料であるアルミニウムを採用してもよい。このようなベース22の材料の選択によれば、ベース22は、漏えい磁束の外部流出を遮蔽することができる。換言すると、ベース22は、磁気シールド特性を有する。これらのカバー21及びベース22によって、送電コイルC2などを収容する収容空間が形成されている。以上の構成を有する筐体20は、受電装置11にも具備されている。受電装置11の受電コイルC1は、筐体20の内部に収容されている。
図3に示すように、送電コイルC2は、受電コイルC1への送電のための磁束を示す磁束線B1を発生させる。送電コイルC2は、例えば、同一平面内で渦巻状に巻回された導線15によって形成される。送電コイルC2は、例えばサーキュラー型のコイルである。サーキュラー型のコイルにおいて、導線15は、巻軸(コイル軸)の周りを囲むように巻線方向に巻かれている。この場合、導線15の巻線方向は、巻軸に垂直な平面において渦巻状に延びる方向である。巻軸の延在方向は、例えば、カバー21の表面21aの法線方向と一致する。送電コイルC2は、導線15が渦巻状に巻回された態様であればよく、一層であっても多層であってもよい。
表面21aの法線方向から見た送電コイルC2の形状は、例えば矩形、円形、又は楕円形などの種々の形状を採り得る。図3に示される例では、送電コイルC2の形状は、略円形状である。導線15としては、例えば、互いに絶縁された複数の導体素線が撚り合わされたリッツ線が用いられてもよく、表皮効果による高周波抵抗を抑えたリッツ線が用いられてもよい。導線15は、例えば、銅又はアルミニウムの単線であってもよい。
送電コイルC2は、例えば、平板状の部材であるボビン(不図示)の溝にはめ込まれている。ボビンは、非磁性且つ非導電性の材料(例えばシリコーン又はポリフェニレンサルファイド樹脂など)によって形成される。そして、ボビンがベース22に固定されることにより、筐体20の収容空間内における送電コイルC2の位置が定まる(図1及び図2参照)。なお、必要に応じて、ボビンとベース22との間に、フェライト板が設けられてもよい。換言すると、フェライト板は、送電コイルC2とベース22との間に配置されてもよい。
送電コイルC2は、導線15が巻回された巻回部Caと、導線15が巻回されていない非巻回部Cbとを含んでいる。非巻回部Cbは、巻回部Caによって囲まれた部分であり、導線15の巻軸を含んでいる。図3には、送電コイルC2が発生する磁束が9本の磁束線B1によって示されている。図3に示す磁束線B1は、単に、磁界の方向を示すものである。磁束線B1は、巻回部Caの周囲に発生する。磁束線B1は、巻回部Caの内側である非巻回部Cbを導線15の巻軸に沿って延在し、当該巻軸の一方側から巻回部Caの外側を通って当該巻軸の他方側に至り、非巻回部Cbに再度進入する。したがって、非巻回部Cbは、磁束線B1が集中する部分となる。
図4に示すように、カバー21の表面21aは、表面21aの法線方向から見て、巻回部Caと重なる領域RA(第1の領域)と、非巻回部Cbと重なる領域RB(第2の領域)とを含んでいる。領域RBは、領域RAによって囲まれた領域であり、導線15の巻軸と表面21aとの交点Pを含んでいる。例えば、導線15の巻軸が表面21aの中心点を通る場合、交点Pは、表面21aの中心点に一致する。しかし、交点Pは、表面21aの中心点以外の位置であってもよい。上述したように非巻回部Cbは磁束線B1が集中する部分となるので、非巻回部Cb上の領域RBも、磁束線B1が集中する領域となる。
表面21aの法線方向から見ると、図3に示すように、磁束線B1は、表面21aの領域RBに含まれる交点Pから放射状に延在する。言い換えると、磁束線B1は、表面21aの交点Pを中心とする仮想円の径方向に沿って延在している。図3は、送電コイルC2がサーキュラー型のコイルである例を示しているが、送電コイルC2が他の形状を有するコイルである場合、磁束線B1の延在方向は、そのコイルの形状に応じて変化する。したがって、磁束線B1の延在方向は、図3に示す例に限られない。
以下では、「磁束線の延在方向」という場合、カバー21の表面21aの法線方向から見た場合を基準として説明する。この「磁束線」は、コイル装置10と受電装置11とが互いに対面するとき(すなわち送電時)に送電コイルC2から発生する磁束線であってもよいし、コイル装置10と受電装置11とが互いに対面しないとき(すなわち非送電時)に送電コイルC2から発生する磁束線であってもよいし、送電コイルC2単体から発生する磁束線であってもよい。
複数の電極Eは、カバー21の表面21aの領域RA(図4参照)に設けられている。具体的には、各電極Eは、表面21aの領域RA上に直接配置されている。各電極Eは、他の部材を介して間接的に表面21aの領域RA上に配置されていてもよい。電極Eは、例えば、矩形板状をなす電極板であり、矩形板状の下面が表面21aに接するように表面21aからほぼ垂直に立設(突出)している。矩形板状の下面とは、矩形板状の上記法線方向の表面21a側を向く面である。表面21aからの電極Eの突出高さは、例えば、受電装置11と送電装置12との給電可能距離を超えない高さに設定される。さらに詳細には、電極Eの突出高さは、要求される給電効率を満たすことが可能な受電装置11と送電装置12との間の距離を超えない高さに設定されてもよい。各電極Eの高さは一定でもよい。
電極Eは、導電性を有する導電材料を含んで形成される。導電材料としては、例えば、金、銅、又はアルミニウムなどの金属材料が挙げられる。なお、電極Eの材料における磁性の有無は問わない。例えば、電極Eの材料として、磁性を有する導電材料が選択されてもよく、非磁性の導電材料が選択されてもよい。また、電極Eの全てが導電材料によって構成されてもよいが、電極Eの一部が導電材料によって構成されてもよい。例えば、電極Eは、非導電性の板状部材の表面に導電性の塗料を塗布することによって構成されてもよい。
複数の電極Eは、送電コイルC2の周囲に発生する磁束線B1の延在方向を考慮して配列されている。各電極Eは、磁束線B1の延在方向に沿って延在するように配列されている。磁束線B1の延在方向は、前述したように、表面21aの交点Pを中心として放射状に延在しているので、各電極Eも、磁束線B1の延在方向と同様、表面21aの交点Pを中心として放射状に延在している。言い換えると、各電極Eは、表面21aの交点Pを中心として周方向に沿って所定の間隔を空けて(例えば等間隔で)並んでおり、交点Pを中心とする径方向に沿って直線状に延在している。
「電極Eが磁束線B1の延在方向に沿って延在する」とは、磁束線B1の延在方向(すなわち径方向)における電極Eの長さが、当該延在方向と直交する方向(すなわち周方向)における長さよりも長いことを意味する。したがって、表面21aからの電極Eの突出高さが一定である場合、磁束線B1の延在方向と直交する平面で切断したときの電極Eの断面積は、磁束線B1の延在方向と平行な平面で切断したときの電極Eの断面積よりも小さくなる。
このように、電極Eが磁束線B1の延在方向に沿って延在するように配列すると、磁束線B1が直交する方向における電極Eの断面積が小さくなる。電極Eへの磁束線B1の鎖交によって電極Eの内部で誘起される渦電流は、磁束線B1が直交する方向における電極Eの断面積に比例する。したがって、この断面積が小さくなれば、電極Eの内部で誘起される渦電流が抑制されるので、渦電流の発生に起因する給電効率の低下が抑制される。磁束線B1が直交する方向における電極Eの断面積を小さくするために、磁束線B1の延在方向と直交する方向(すなわち周方向)における電極Eの長さを極力短くするとよい。但し、この電極Eの長さとして、海流を受けて変形及び破損などが生じない程度の長さが少なくとも必要となる。
磁束線B1の延在方向(すなわち径方向)における電極Eの長さを長くしても、磁束線B1が直交する方向における電極Eの断面積は変化しないので、渦電流の発生に起因する給電効率は大きく低下しない。しかし、後述するように、周方向において互いに隣り合う一対の電極Eのそれぞれに互いに異なる電圧を印加する場合は、カバー21の表面21aのより広い領域に電場を形成するために、磁束線B1の延在方向における電極Eの長さを極力長くすることが望ましい。この電極Eの長さを長くすれば、表面21aの法線方向から見て、周方向において互いに隣り合う一対の電極Eの間の対向領域(すなわち、電場が形成される領域)の面積をより大きく確保できるからである。
なお、「電極Eが延在する」の意味は、電極Eが連続的に延在する場合と、電極Eが間欠的に延在する場合との両方を含む。したがって、「電極Eが磁束線B1の延在方向に沿って延在する」ことは、一体的に構成された1つの電極Eが磁束線B1の延在方向に沿って延在する態様であってもよいし、複数に分割された電極Eが隙間(空隙)を空けて磁束線B1の延在方向に沿って配列される態様であってもよい。また、「電極Eが磁束線B1の延在方向に沿って」の意味は、電極Eが磁束線B1の延在方向に平行な方向に延在する場合と、電極Eが磁束線B1の延在方向から僅かに傾斜した傾斜方向に延在する場合との両方を含む。
以下では、図3に示すように、説明の便宜のため、表面21aの交点Pを中心とする時計回りに順に並ぶ複数の電極Eをそれぞれ電極E1~E10と称する。なお、電極E1~E10を区別して説明する必要がない場合には、単に電極Eとして説明する。
電圧印加部30は、電極E1~E10に電気的に接続されている。電圧印加部30は、電極E1~E10のうち任意の電極Eに電圧を印加する。電圧印加部30は、例えば、正電圧を供給する電源31と、負電圧を供給する電源32と、電源31及び電源32を制御する制御部33とを含んでいる。電源31の正側端子は、電極E1,E3,E5,E7,及びE9のそれぞれに電気的に接続されており、電源31の負側端子は、グランド電位に電気的に接続されている。電源31は、電極E1,E3,E5,E7,及びE9に向けて、例えば1V程度の正電圧を供給する。電源32の負側端子は、電極E2,E4,E6,E8,及びE10のそれぞれに電気的に接続されており、電源32の正側端子は、グランド電位に電気的に接続されている。電源32は、電極E2,E4,E6,E8,及びE10に向けて、例えば‐1V程度の負電圧を供給する。
なお、電源31及び32がそれぞれ供給する電圧は、例示である。電源31及び32は、一対の電極Eの間の対向領域に電場を形成可能な態様の電圧をそれぞれ供給する。換言すると、電源31の電圧は、電源32の電圧に対して電位差を有していればよい。例えば、上述のように電源31の電圧の極性は、電源32の電圧の逆極性であってもよい。また、電源31及び32のそれぞれの電圧の極性が同極性であるとき、電源31及び32の一方の電圧の絶対値が他方の電圧の絶対値より大きくてもよい。
電源31の正側端子と、電極E1,E3,E5,E7,及びE9との間には、複数のスイッチSW1,SW3,SW5,SW7,及びSW9が設けられている。各スイッチSW1,SW3,SW5,SW7,及びSW9は、各電極E1,E3,E5,E7,及びE9に対応して設けられている。各スイッチの入力端は、電源31の正側端子に電気的に接続されており、各スイッチの出力端は、各電極E1,E3,E5,E7,及びE9に電気的に接続されている。
電源32の負側端子と、電極E2,E4,E6,E8,及びE10との間には、複数のスイッチSW2,SW4,SW6,SW8,及びSW10が設けられている。各スイッチSW2,SW4,SW6,SW8,及びSW10は、各電極E2,E4,E6,E8,及びE10に対応して設けられている。各スイッチSW2,SW4,SW6,SW8,及びSW10の入力端は、電源32の負側端子に電気的に接続されており、各スイッチSW2,SW4,SW6,SW8,及びSW10の出力端は、各電極E2,E4,E6,E8,及びE10に電気的に接続されている。
制御部33は、電源31及び電源32に電気的に接続されている。制御部33は、電源31から供給される正電圧の大きさなどを指定する電圧信号V1を電源31に出力する。電源31は、電圧信号V1に応じて各電極E1,E3,E5,E7,及びE9に正電圧を供給する。また、制御部33は、電源32から供給される負電圧の大きさなどを指定する電圧信号V2を電源32に出力する。電源32は、電圧信号V2に応じて各電極E2,E4,E6,E8,及びE10に負電圧を供給する。
更に、制御部33は、各スイッチSW1~SW10の動作を制御する各スイッチ信号S1~S10を出力する。制御部33から出力される各スイッチ信号S1~S10に応じて、各スイッチSW1~SW10が開閉する。いずれかのスイッチが閉じられると、閉じられたスイッチに対応する電極Eに電圧が印加される。このように、制御部33は、電源31及び32、並びに各スイッチ信号S1~S10を用いて、複数の電極E1~E10のうちの任意の電極Eに電圧を印加することができる。
例えば、制御部33は、複数の電極E1~E10のうち、周方向において互いに隣り合う一対の電極Eのそれぞれに互いに異なる電圧をそれぞれ印加する第1の制御を行うことができる。例えば、制御部33は、スイッチSW1及びSW2を同時に閉じるよう制御することにより、電源31から正電圧を電極E1に印加すると共に、電源32から負電圧を電極E2に印加する。これにより、周方向において互いに隣り合う一対の電極E1及びE2の間の対向領域R1に電場が形成される(図5参照)。
制御部33は、例えば、スイッチSW1,SW2,SW4,SW5,SW8,及びSW9を同時に閉じるように制御することにより、電源31から正電圧を電極E1,E4,及びE8に同時に印加すると共に、電源32から負電圧を電極E2,E5,及びE9に同時に印加することができる。これにより、電極E1及びE2の間の対向領域R1、電極E4及びE5の間の対向領域R4、並びに、電極E8及びE9の間の対向領域R8に電場を同時に形成できる(図5参照)。このようにして、周方向において互いに隣り合う一又は複数の一対の電極Eの間の対向領域に電場を形成できる。
また、制御部33は、複数の電極E1~E10のうち、交点Pを挟んで互いに対向する一対の位置に配置される一対の電極Eのそれぞれに互いに異なる電圧をそれぞれ印加する第2の制御を行うことができる。例えば、制御部33は、スイッチSW1及びSW6を同時に閉じるように制御することにより、電源31から正電圧を電極E1に印加すると共に、電源32から負電圧を電極E6に印加する。これにより、交点Pを挟んで互いに対向する電極E1及びE6の間の対向領域R11、すなわち表面21aの交点P上の領域に電場が形成される(図6参照)。
制御部33は、例えば、スイッチSW1,SW4,SW6,及びSW9を同時に閉じるように制御することにより、電源31から正電圧を電極E1及びE4に同時に印加すると共に、電源32から負電圧を電極E4及びE9に同時に印加することができる。これにより、電極E1及びE6の間の対向領域R11、並びに、電極E4及びE9の間の対向領域R14に電場を同時に形成できる(図6参照)。このようにして、交点Pを挟んで互いに対向する一又は複数の一対の電極Eの間の対向領域に電場を形成できる。
また、制御部33は、第1の制御と第2の制御とを同時に行うこともできる。すなわち、制御部33は、周方向において互いに隣り合う一対の電極Eの間の対向領域、及び、交点Pを挟んで互いに対向する一対の位置に配置される一対の電極Eの間の対向領域に電場を同時に形成できる。例えば、制御部33は、スイッチSW1,SW2,SW4,及びSW9を同時に閉じるように制御することにより、電源31から正電圧を電極E1及びE4に同時に印加すると共に、電源32から負電圧を電極E2及びE9に同時に印加する。これにより、電極E1及びE2の間の対向領域R1、並びに、電極E4及びE9の間の対向領域R14に電場が同時に形成される(図5及び図6参照)。
また、制御部33は、第1の制御において、各一対の電極Eの間の対向領域に電場を同時に形成しなくてもよく、各一対の電極Eの間の対向領域に異なるタイミングで電場を形成してもよい。例えば、制御部33は、スイッチSW1及びSW2を閉じるように制御することによって電極E1及びE2の間の対向領域R1に電場を形成した後、スイッチSW1を開くと共にスイッチSW3を閉じるように制御することによって電極E2及びE3の間の対向領域R2に電場を形成できる(図5参照)。
制御部33は、この開閉動作を各スイッチSW1~SW10に対して順次行うことによって、電極E1及びE2の間の対向領域R1、電極E2及びE3の間の対向領域R2、電極E3及びE4の間の対向領域R3、電極E4及びE5の間の対向領域R4、電極E5及びE6の間の対向領域R5、電極E6及びE7の間の対向領域R6、電極E7及びE8の間の対向領域R7、電極E8及びE9の間の対向領域R8、電極E9及びE10の間の対向領域R9、並びに電極E10及びE1の間の対向領域R10に電場を順次形成できる(図5参照)。つまり、制御部33は、周方向において互いに隣り合う各一対の電極Eの間の対向領域に電場を順次形成できる。
制御部33は、第2の制御において、各一対の電極Eの間の対向領域に電場を同時に形成しなくてもよく、各一対の電極Eの間の対向領域に異なるタイミングで電場を形成してもよい。例えば、制御部33は、スイッチSW1及びSW6を閉じるように制御することによって電極E1及びE6の間の対向領域R11に電場を形成した後、スイッチSW1及びSW6を開くと共にスイッチSW2及びSW7を閉じるように制御することによって電極E2及びE7の間の対向領域R12に電場を形成できる(図6参照)。制御部33は、この開閉動作を各スイッチSW1~SW10に対して順次行うことによって、電極E1及びE6の間の対向領域R11、電極E2及びE7の間の対向領域R12、電極E3及びE8の間の対向領域R13、電極E4及びE9の間の対向領域R14、並びに電極E5及びE10の間の対向領域R15に電場を順次形成できる(図6参照)。つまり、制御部33は、交点Pを挟んで互いに対向する位置に配置された各一対の電極Eの間の対向領域に電場を順次形成できる。
制御部33は、第1の制御と第2の制御とを順番に(又は交互に)行うこともできる。例えば、制御部33は、スイッチSW1及びSW2を同時に閉じるように制御することにより、正電圧及び負電圧を電極E1及びE2にそれぞれ印加した後、スイッチSW1及びSW2を開くと共にスイッチSW4及びSW9を同時に閉じるように制御することにより、正電圧及び負電圧を電極E1及びE4にそれぞれ印加する。これにより、電極E1及びE2の間の対向領域R1、並びに、電極E4及びE9の間の対向領域R14に電場が順次形成される(図5及び図6参照)。
このように、制御部33は、各スイッチSW1~SW10の開閉動作、並びに、スイッチSW1~SW10を開閉するタイミングを適宜調整することによって、任意の一対の電極Eの間の対向領域に電場を形成できる。なお、必ずしも一対の電極Eのそれぞれに電圧を印加する必要は無く、いずれか1つの電極Eのみに電圧が印加されてもよい。この場合、電圧が印加された電極Eの周囲に電場が形成される。
以上に説明したコイル装置10によって得られる作用・効果を説明する。コイル装置10では、送電コイルC2を覆うカバー21の表面21aに電極Eが設けられており、電極Eには電圧印加部30により電圧が印加される。電圧が印加された電極Eの周囲には電場が形成され、この電場は、生物に対する忌諱効果、すなわち生物が嫌って近寄らなくなる効果を有する領域(忌諱領域)を形成する。本実施形態のように、コイル装置10が海中に設置される場合、海中で電極Eの周囲に電場が形成されると、海水が電気分解されることで次亜塩素酸イオンが発生する。次亜塩素酸イオンは、例えば貝類などの海洋生物に対する忌諱効果を有する。このため、表面21aに設けられる電極Eに電圧を印加することによって、表面21aに生物が近づかないようにすることができる。つまり、表面21aへの生物の付着を抑制でき、表面21aに生物の堆積物が形成される事態を抑制できる。その結果、送電時に、コイル装置10に受電装置11を十分に接近させることができるので、コイル装置10と受電装置11との給電効率の低下を抑制できる。
更に、電極Eは、表面21aの法線方向から見て、送電コイルC2が発生する磁束を示す磁束線B1の延在方向に沿って延在している。これにより、前述したように、磁束線B1に直交する方向における電極Eの断面積を小さくすることができ。従って、電極E内で誘起され得る渦電流が小さくなる。その結果、電極Eへの磁束線B1の鎖交に起因するジュール損失の増大を抑制できるので、給電効率が著しく低下する事態を抑制できる。また、上記忌諱効果によって電極自体への生物の付着も抑制できるので、電極Eから生物を除去するためのメンテナンスが不要となり、継続的な運用を実現できる。
コイル装置10では、送電コイルC2は、サーキュラー型のコイルであり、電極Eは、送電コイルC2の非巻回部Cbと重なる領域RA(図4参照)に配置されている。領域RBには、送電コイルC2から発生する磁束線B1が集中する。上記構成によれば、磁束線B1が多く通る領域RBに、磁束線B1が鎖交する電極Eが配置されないので、磁束線B1の電極Eへの鎖交に起因するジュール損失の増大がより確実に抑制される。その結果、給電効率が著しく低下する事態をより確実に抑制できる。
コイル装置10では、制御部33は、複数の電極Eのうち周方向において互いに隣り合う一対の電極Eのそれぞれに互いに異なる電圧を印加する第1の制御を行う。制御部33が第1の制御を行うと、一対の電極Eの間の対向領域に電場が形成される。ここで、カバー21の表面21aの法線方向から見た場合に、周方向において互いに隣り合う一対の電極E同士の対向領域(例えば、図5における対向領域R1)の面積は、第2の領域を挟んで互いに対向する位置に配置される一対の電極E同士の対向領域(例えば、図6における対向領域R11)の面積よりも大きくなる。この対向領域の面積が大きいほど、一対の電極Eに電圧を印加したときに、カバー21の表面21a上のより広い領域に電場を形成できる。したがって、周方向において互いに隣り合う一対の電極Eのそれぞれに互いに異なる電圧を印加すれば、カバー21の表面21a上により広い忌諱領域を形成できるので、表面21aへの生物の付着をより確実に抑制できる。その結果、給電効率の低下をより確実に抑制できる。
コイル装置10では、制御部33は、複数の電極Eのうち交点Pを挟んで互いに対向する位置に配置された一対の電極Eに互いに異なる電圧をそれぞれ印加する第2の制御を行う。制御部33が第2の制御を行うと、カバー21の表面21aの領域RB上に忌諱領域を形成できる。したがって、カバー21の表面21aの領域RB上に忌諱領域を形成するために、カバー21の表面21aの領域RB上に電極Eを配置する必要がない。つまり、磁束線B1が多く通る領域RBに、磁束線B1に鎖交する電極Eが配置されないので、磁束線B1の電極Eへの鎖交に起因するジュール損失の増大がより確実に抑制される。その結果、給電効率が著しく低下する事態をより確実に抑制できる。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、送電コイルC2がサーキュラー型のコイルである例について説明した。しかし、送電コイルは、サーキュラー型のコイルである場合に限られず、ソレノイド型のコイルであってもよい。図7は、コイル装置10の変形例として、送電コイルがソレノイド型のコイルである場合を示している。この場合、送電コイルC3は、導線15Aを三次元的に螺旋状に巻回した構成を有する。
図7に示すように、送電コイルC3から発生する磁束を示す磁束線B2は、表面21aの法線方向から見て、例えば表面21aに沿った一方向に延在する。したがって、本変形例に係るコイル装置10Aでは、各電極EAも、磁束線B2の延在方向と同様、当該一方向に延在している。具体的には、各電極EAは、当該一方向における表面21aの一端部から他端部にわたって直線状に延在している。また、各電極EAは、当該一方向に直交する他方向に沿って所定の間隔で(例えば等間隔で)並んでいる。
以下では、上記実施形態と同様、説明の便宜のため、上記他方向における一方側(図7の上側)から他方側(図7の下側)に向かって順に並ぶ複数の電極EAをそれぞれ複数の電極E11~E16と称する。なお、電極E11~E16を区別して説明する必要がない場合には、単に電極EAとして説明する。
電極E11~E16には、電圧印加部30Aが電気的に接続されている。電圧印加部30Aでは、電源31の正側端子に、複数のスイッチSW11,SW13,及びSW15が電気的に接続されている。各スイッチSW11,SW13,及びSW15は、各電極E11,E13,及びE15に対応して設けられている。電源32の負側端子に、複数のスイッチSW12,SW14,及びSW16が電気的に接続されている。各スイッチSW12,SW14,及びSW16は、各電極E12,E14,及びE16に対応して設けられている。
制御部33Aは、各スイッチSW11~SW16の動作を制御する各スイッチ信号S11~S16を出力する。制御部33Aから出力される各スイッチ信号S11~S16に応じて、各スイッチSW11~SW16が開閉する。制御部33Aは、各スイッチ信号S11~S16を用いて、複数の電極E11~E16のうち任意の電極EAに電圧を印加することができる。
例えば、制御部33Aは、スイッチSW11及びSW12を同時に閉じるよう制御することにより、電源31から正電圧を電極E11に印加すると共に、電源32から負電圧を電極E12に印加する。これにより、電極E11及びE12の間の対向領域に電場が形成される。また、制御部33は、例えば、スイッチSW11,SW12,SW15,及びSW16を同時に閉じるように制御することにより、電源31から正電圧を電極E11及びE16に同時に印加すると共に、電源32から負電圧を電極E12及びE15に同時に印加する。これにより、電極E11及びE12の間の対向領域、並びに電極E15及びE16の間の対向領域に電場が同時に形成される。このようにして、互いに隣り合う一又は複数の一対の電極EAの間の対向領域に電場を形成できる。
制御部33Aは、各一対の電極EAの間の対向領域に電場を同時に形成しなくてもよく、各一対の電極Eの間の対向領域に異なるタイミングで電場を形成してもよい。例えば、制御部33Aは、スイッチSW11及びSW12を閉じるように制御することによって電極E11及びE12の間の対向領域に電場を形成した後、スイッチSW11を開くと共にスイッチSW13を閉じるように制御することによって電極E12及びE13の間の対向領域に電場を形成できる。この開閉動作が各スイッチSW11~SW16に対して順次行われることによって、電極E11及びE12の間の対向領域、電極E12及びE13の間の対向領域、電極E13及びE14の間の対向領域、電極E14及びE15の間の対向領域、並びに電極E15及びE16の間の対向領域に電場を順次形成できる。これにより、制御部33Aは、互いに隣り合う各一対の電極EAの間の対向領域に電場を順次形成できる。
各一対の電極EAの間の対向領域に電場を形成する態様は、上述した例に限られず、互いに隣り合う任意の電極EAの間の対向領域に、任意のタイミングで電場を形成できる。本変形においても、必ずしも一対の電極EAのそれぞれに電圧を印加する必要は無く、1つの電極EAのみに電圧を印加してもよい。この場合、電圧を印加した電極EAの周囲に電場が形成される。本変形例に係るコイル装置10Aによれば、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
上記実施形態及び変形例では、海中に設置されたプラットフォームに設けられた送電装置を例にコイル装置について説明した。しかし、コイル装置は、海中を移動する移動体に設けられた受電装置に採用してもよく、送電装置及び受電装置の両方に採用してもよい。上記実施形態及び変形例では、海中を移動する移動体のバッテリに給電するための非接触給電システムに用いられる送電装置を例に説明したが、本発明はこの態様に限定されない。コイル装置は、海以外の水中を移動する移動体のバッテリに給電するための非接触給電システムに用いられてもよく、水上を移動する移動体のバッテリに給電するための非接触給電システムに用いられてもよい。
また、コイル装置の構成は、上記実施形態及び変形例に限られず、特許請求の範囲の記載の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、電極の材料として、耐腐食性を有する導電材料が選択されてもよい。この場合、海水の電気分解によって電極が電気化学的に腐食する事態を抑制できる。また、各電極は、矩形板状の電極板に限られず、種々の形状を採用し得る。各電極は、カバーの表面において等間隔で並んでいる必要は無く、不等間隔で並んでいてもよい。各電極は、カバーの表面、すなわち受電装置と対面する表面に設けられている必要は無く、カバーにおける表面と交差する側面に設けられてもよい。また、コイル装置に含まれるコイルは、サーキュラー型又はソレノイド型のコイル以外のコイルであってもよい。