以下、添付図面を参照して、本発明に係る灰処理装置および方法並びにボイラの好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のボイラを表す概略構成図である。
第1実施形態のボイラは、例えば、石炭やバイオマスなどの炭素含有固体燃料を粉砕した微粉燃料を用い、この微粉燃料を燃焼バーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を回収して給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成することが可能な微粉燃料焚きボイラである。以降の説明で、上や上方や上部とは鉛直方向上側を示し、下や下方や下部とは鉛直方向下側を示すものである。
第1実施形態において、図1に示すように、ボイラ10は、火炉11と燃焼装置12と煙道13を有している。火炉11は、例えば四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置されている。火炉11を構成する火炉壁(伝熱管)は、複数の蒸発管とこれらを接続するフィンとで構成され、給水や蒸気と熱交換することにより火炉壁の温度上昇を抑制している。
燃焼装置12は、火炉11を構成する火炉壁の下部側に設けられている。本実施形態では、燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数の燃焼バーナ(例えば、21,22,23,24,25)を有している。例えば、燃焼バーナ21,22,23,24,25は、周方向に沿って均等間隔で配設されたものが1セットとして、鉛直方向に沿って複数段配置されている。但し、火炉の形状や一つの段における燃焼バーナの数、段数はこの実施形態に限定されるものではない。
各燃焼バーナ21,22,23,24,25は、微粉燃料供給管26,27,28,29,30を介して粉砕機(ミル)31,32,33,34,35に連結されている。この粉砕機31,32,33,34,35は、図示しないが、例えば、ハウジング内に回転テーブルが駆動回転可能に支持され、この回転テーブルの上方に複数のローラが回転テーブルの回転に連動して回転可能に支持されて構成されている。固体燃料が複数のローラと回転テーブルとの間に投入されると、ここで所定の微粉燃料の大きさに粉砕され、搬送用ガス(一次空気)により分級機へ搬送されて分級された微粉燃料を微粉燃料供給管26,27,28,29,30から燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給することができる。
また、火炉11は、各燃焼バーナ21,22,23,24,25の装着位置に風箱36が設けられており、この風箱36に空気ダクト37の一端部が連結されている。空気ダクト37は、他端部に送風機38が設けられている。
更に、火炉11は、各燃焼バーナ21,22,23,24,25の装着位置より上方にアディショナル空気ノズル39が設けられていてもよい。アディショナル空気ノズル39に空気ダクト37から分岐した分岐空気ダクト40の端部が連結されている。従って、送風機38により送られた燃焼用空気(燃料ガス燃焼用空気/二次空気)を空気ダクト37から風箱36に供給し、この風箱36から各燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給することができると共に、送風機38により送られた燃焼用追加空気(アディショナル空気)を分岐空気ダクト40からアディショナル空気ノズル39に供給することができる。
煙道13は、火炉11の鉛直方向上部に連結されている。煙道13は、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器として、例えば、過熱器41,42,43、再熱器44,45、節炭器46,47が設けられており、火炉11での燃焼で発生した燃焼ガスと各熱交換器を流通する給水や蒸気との間で熱交換が行われる。
煙道13は、その下流側に熱交換を行った燃焼ガスが排出されるガスダクト48が連結されている。ガスダクト48は、空気ダクト37との間にエアヒータ(空気予熱器)49が設けられ、空気ダクト37を流れる空気と、ガスダクト48を流れる燃焼ガスとの間で熱交換を行い、燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給する燃焼用空気を昇温することができる。
また、煙道13は、エアヒータ49より上流側の位置に脱硝触媒50が設けられている。脱硝触媒50は、アンモニア、尿素水等の窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を煙道13内に供給し、還元剤が供給された燃焼ガスを窒素酸化物と還元剤との反応を促進させることで、燃焼ガス中の窒素酸化物を除去、低減するものである。そして、煙道13に連結されるガスダクト48は、エアヒータ49より下流側の位置に煤塵処理装置(電気集塵機、脱硫装置)51、誘引送風機52などが設けられ、下流端部に煙突53が設けられている。
一方、粉砕機31,32,33,34,35が駆動すると、生成された微粉燃料が搬送用ガスと共に微粉燃料供給管26,27,28,29,30を通して燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給される。また、加熱された燃焼用空気が空気ダクト37から風箱36を介して各燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給される。すると、燃焼バーナ21,22,23,24,25は、微粉燃料と搬送用ガス(一次空気)とが混合した微粉燃料混合気を火炉11に吹き込むと共に燃焼用空気を火炉11に吹き込み、このときに着火することで火炎を形成することができる。火炉11内の下部で火炎が生じ、燃焼ガスがこの火炉11内を上昇し、煙道13に排出される。
火炉11は、下部の領域Aにて、微粉燃料混合気と燃焼用空気(二次空気)とが燃焼して火炎が生じる。ここで火炉11は、空気の供給量が微粉燃料の供給量に対して理論空気量未満となるように設定されることで、内部が還元雰囲気に保持される。即ち、領域Aの上部の領域Bにて、微粉燃料の燃焼により発生したNOxが火炉11で還元され、その後、アディショナル空気ノズル39からアディショナル空気が追加供給されることで微粉燃料の酸化燃焼が完結され、微粉燃料の燃焼によるNOxの発生量が低減される。
その後、燃焼ガスは、煙道13に配置される過熱器41,42,43、再熱器44,45、節炭器46,47で熱交換した後、脱硝触媒50により窒素酸化物が還元除去され、煤塵処理装置51で粒子状物質が除去されると共に硫黄分が除去された後、煙突53から大気中に排出される。
図2は、第1実施形態の灰処理装置を表す概略構成図であり、図3は、カメラが撮影した灰排出部における灰の発塵や飛散の状況の画像の概略図である。
第1実施形態において、図2に示すように、ボイラ10は、灰処理装置60を備えており、灰処理装置60は、例えば節炭器46、47や煤塵処理装置51などに設置される図示しないホッパによって捕集された灰を、図示しないサイロに貯留したあと、サイロから外部へ搬出する装置である。灰処理装置60のうちの灰加湿器は、ケーシング61と、搬送装置62と、加湿装置63と、検出器64と、制御装置65とを備える。
ケーシング61は、中空形状をなし、長手方向(図2にて、紙面左右方向)における一方側の上部に灰投入部71が設けられ、長手方向における他方側の下部に灰排出部72が設けられている。灰投入部71は、開閉弁73が設けられ、図示しないサイロに連結される。サイロに貯留された灰(フライアッシュなど)は、この灰投入部71を通してケーシング61の内部に投入される。灰排出部72は、開閉弁74が設けられる。ケーシング61の内部で加湿して湿灰となり、湿灰は、この灰排出部72を通してトラック75の荷台に払い出される。なお、ケーシング61の内部で加湿された湿灰は、この灰排出部72を通して搬送コンベヤに払い出され、船舶など別の輸送手段に積み込む場合や埋立地等に搬送される場合もある。
搬送装置62は、灰投入部71からケーシング61の内部に投入された灰を撹拌する。また撹拌しながら灰排出部72側に搬送するとさらに好ましい。搬送装置62は、例えば駆動モータ81と、伝達装置82と、例えば2本の回転軸83,84と、複数のパドル85,86とを有する。2本の回転軸83,84は、ケーシング61の内部で、軸方向がケーシング61の長手方向に沿って配置されると共に、ケーシング61の幅方向(図2にて、紙面直交方向)に平行に並んで配置される。2本の回転軸83,84は、軸方向の一端部がケーシング61の長手方向における一方側、つまり、灰投入部71側の縦壁部61aに回転自在に支持される。ケーシング61は、縦壁部61aに伝達装置82を介して駆動モータ81が設けられる。2本の回転軸83,84は、軸方向の一端部が伝達装置82に連結される。また、2本の回転軸83,84は、それぞれ複数のパドル85,86が固定される。複数のパドル85,86は、2本の回転軸83,84の軸方向に所定間隔を空けて配置されると。灰排出部72側にむけて搬送するように、螺旋を描くような位置に配置されてもよい。また、回転軸83のパドル85と回転軸84のパドル86は、回転軸83,84の軸方向における固定位置がずれていて、相互に干渉しないようにする。
そのため、駆動モータ81を駆動すると、その駆動力が伝達装置82を介して2本の回転軸83,84に伝達され、2本の回転軸83,84は、それぞれ相互に逆方向に回転する。2本の回転軸83,84が逆方向に回転すると、2本の回転軸83,84に固定された複数のパドル85,86が各回転軸83,84の周囲を周方向に移動し、ケーシング61の内部の灰を撹拌する。また灰を撹拌しながら灰排出部72側に搬送する。
なお、本実施形態では、2本の回転軸83,84を適用したが、この数や位置に限定されるものではない。また、パドル85,86の数や位置もこの数に限定されるものではない。また、本実施形態では、搬送装置62を駆動モータ81、伝達装置82、回転軸83,84、パドル85,86から構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、パドル85,86に代えて、スクリューなどを設けてもよい。
加湿装置63は、ケーシング61の内部で搬送装置62により撹拌される灰、らさらに搬送される灰に散水して加湿する。加湿装置63は、水タンク91と、給水ライン92と、複数の給水分岐ライン93と、複数の散水ノズル94と、流量調整弁95と、複数の開閉弁96とを有する。給水ライン92は、一端部が工業用水などが貯留されている水タンク91に連結され、他端部側に複数の給水分岐ライン93の一端部が所定間隔を空けて連結される。複数の散水ノズル94は、ケーシング61の天井部の下面に固定され、複数の給水分岐ライン93の他端部が連結される。流量調整弁95は、給水ライン92に設けられ、全体の給水量を調整可能である。複数の開閉弁96は、各給水分岐ライン93に設けられ、各散水ノズル94の給水の実行と停止を切替可能である。
そのため、必要な給水量に合わせて流量調整弁95を所定開度に調整し、複数の開閉弁96を開放すると、水タンク91の水が給水ライン92および各給水分岐ライン93を通して各散水ノズル94に供給される。すると、この各散水ノズル94からケーシング61の内部で搬送装置62により撹拌される灰、さらに搬送される灰の上方に散水され、灰が加湿され、湿灰となる。
検出器64は、灰排出部72から排出される灰の飛散を生じる発塵や飛散の状態である発塵状態を検出する。また、飛散を生じる発塵や飛散の状態の量である発塵状態の量を検出してもよい。検出器64は、例えば灰排出部72から排出される灰の近傍を撮影するカメラであり、制御装置65は、カメラの撮影画像に基づいて不定形物を灰の飛散を生じる発塵状態にあると判定する。カメラの撮影画像に基づいて不定形物から飛散を生じる発塵や飛散の状態の量である発塵状態の量を推定する。
図3は、カメラが撮影した灰排出部における灰の発塵状態の状況の画像の概略図である。
検出器64としてのカメラは、図3に示すように、灰排出部72から排出される灰の周辺を撮影し、制御装置65は、カメラが撮影した画像101を取得する。画像101は、灰排出部72からトラック75の荷台75aに払い出される湿灰FA及びその周辺が表示されるものである。ここで、湿灰FAから発塵や飛散して塵Dが舞い上がると、この塵Dも画像101に表示される。制御装置65は、画像101に基づいて不定形物を灰の飛散を生じる発塵状態であると判定する。ここで、灰排出部72からトラック75の荷台75aに払い出される湿灰FAも不定形物であることから、湿灰FAの両側領域を判定領域102,103に設定する。即ち、制御装置65は、画像101に基づいて判定領域102,103だけにある不定形物を灰の飛散を生じる発塵状態であると判定する。そして、制御装置65は、判定領域102,103にある不定形物の面積や濃度などにより飛散を生じる発塵の量を推定する。
なお、検出器64は、カメラに限定されるものではない。例えば、検出器として、微粒子計(パーティクルカウンタ/Particle Counter)を用いてもよい。微粒子計は、空気中にある塵やホコリなどをカウントする計測器であり、光散乱方式と光遮蔽方式があり、粒子の大きさに比例した電気信号を取得し、粒子径と粒子数を計測する。
図2に示すように、制御装置65は、検出器64が検出した灰の発塵状態もしくは発塵の量に基づいて加湿装置63による加湿量(散水量)を調整する。制御装置65は、検出器64が灰の発塵状態の発生を検出すると、複数の散水ノズル94の散水量を予め設定された基準増加量だけ増加させる。一方、制御装置65は、検出器64が灰の発塵状態を検出しないと、散水ノズル94の散水量を基準増加量より少ない予め設定された基準減少量だけ減少させる。
ここで、本実施形態の灰処理装置60による灰処理方法について説明する。図4は、第1実施形態の灰処理装置による加湿量の調整方法を表すフローチャートである。
本実施形態の灰処理方法は、灰排出部72から排出される灰の発塵状態の発生を検出する工程と、検出された灰の発塵状態に基づいて加湿装置63による加湿量を調整する工程とを有する。
図2に示すように、灰処理装置60が作動すると、灰が灰投入部71からケーシング61の内部に投入され、搬送装置62は、ケーシング61の内部に投入された灰を撹拌し、また灰排出部72へと搬送する。また、加湿装置63は、ケーシング61の内部で撹拌される灰に上方から散水して加湿して湿灰とする。ケーシング61の内部で加湿された湿灰は、灰排出部72からトラック75に排出される。
このとき、加湿装置63による加湿量Qは、予め設定された初期加湿量Q0に設定される。この初期加湿量Q0は、試験や過去の加湿量などにより求めた基準加湿量であり、流量調整弁95の開度を調整することで設定される。図4に示すように、ステップS11にて、検出器(カメラ)64は、灰排出部72から排出される灰の発塵状態の発生を検出する。即ち、検出器(カメラ)64は、灰排出部72から排出される灰の周辺を撮影し、制御装置65に出力する。ステップS12にて、制御装置65は、カメラが撮影した画像101に基づいて、判定領域102,103での不定形物を確認する。
ステップS13にて、制御装置65は、画像101における判定領域102,103に不定形物があるかどうかを判定する。具体的には、判定領域102,103における不定形物の量(灰の飛散を生じる発塵状態の量)が予め設定された判定値より多いかどうか、不定形物を灰の飛散を生じる発塵状態であるかどうかを判定する。この判定値とは、灰から発生する塵の埃の量が周囲の作業者や環境に悪影響を与えると推測される値であり、試験などにより判断基準が設定される。ここで、判定領域102,103における発塵状態の量が判定値より多いと判定(Yes)されると、灰から発塵状態であると判定し、ステップS14にて、制御装置65は、発塵状態に基づいて加湿装置63による加湿量を調整する。即ち、制御装置65は、流量調整弁95の開度を所定値だけ大きくすることで、現在の加湿量Qn(初期加湿量Q0)に対して基準増加量Δqだけ増加させる。すると、各散水ノズル94からの散水量が均一に増加される。
なお、加湿装置63による加湿量が増加されてから、灰排出部72での発塵や飛散の抑制の効果が発揮されるまで時間差が発生することから、このステップS11からステップS14までの処理は、この時間差を考慮した所定時間ごとに実行される。即ち、所定時間ごとに実行されるステップS11からステップS13までの処理で、灰排出部72での発塵や飛散が継続していれば、ステップS14にて、現在の加湿量Qnに基準増加量Δqを増加させる処理を繰り返し行う。
一方、加湿量を増加させる処理を繰り返し行うことで、灰排出部72での灰の発塵状態がなくなるとステップS14の処理をやめる。即ち、ステップS13にて、制御装置65は、検出器64が灰の発塵状態を検出しない、つまり、判定領域102,103における発塵状態の量が判定値以下であると判定(No)すると、ステップS15にて、制御装置65は、発塵状態に基づいて加湿装置63による加湿量を調整する。即ち、制御装置65は、流量調整弁95の開度を所定値だけ小さくすることで、現在の加湿量Qnに対して例えば基準減少量Δq/2だけ減少させる。すると、各散水ノズル94からの散水量が均一に減少される。現在の加湿量Qnに対して基準増加量Δqを増加させる処理に対して、基準減少量は基準増加量Δqより少なくして、例えば基準減少量をΔq/2として緩やかに減少することで、加湿量の増減をハンチングさせることなく、調整を容易にして適値への収束を容易にする。
そして、加湿装置63による加湿量が減少されてから、灰排出部72での灰の発塵状態が変化するまで時間差が発生することから、このステップS11からステップS14までの処理は、この時間差を考慮した所定時間ごとに実行される。即ち、所定時間ごとに実行されるステップS11からステップS13までの処理で、灰排出部72での灰の発塵状態がなければ、ステップS15にて、現在の加湿量Qnに基準減少量Δq/2を減少させる処理を繰り返し行う。
図5は、灰処理装置による加湿量の調整量を表すグラフである。
発塵状態にあると判断して加湿装置63により加湿量を増加させることで、時間t1にて、灰排出部72での灰の発塵状態がなくなると判断すると、ここから所定時間ごとに現在の加湿量Qnに基準減少量Δq/2を減少させていく。そして、加湿装置63により加湿量を減少させることで、時間t2にて、灰排出部72で発塵状態にあると判断すると、ここから所定時間ごとに現在の加湿量Qnに基準増加量Δqを増加させていく。その後、時間t3,t4,t5にて、時間t1,t2,t1と同様の処理を実行していくことで、調整を容易にして適値への収束を容易にする。このとき、時間t1から時間t2の間で基準減少量Δqの値を減少させる、すなわち、時間t1から時間t2の間で減少させる基準減少量Δq/2を徐々に小さくしたり、時間t2から時間t3の間で増加させる基準増加量Δqを徐々に小さくしたりすることで、加湿装置63による加湿量の変動をさらに小さくし、追加する基準増加・減少量であるΔq=0に近づけていくことが望ましい。
なお、加湿装置63による加湿量の調整方法は、上述したものに限定されるものではない。図6は、灰処理装置による加湿量の別の調整方法による調整量を表すグラフである。
図6に示すように、検出器64は、灰排出部72における灰の発塵状態の量を検出可能であり、制御装置65は、灰の発塵状態の量が減少するように加湿装置63による加湿量をPID制御する。即ち、図6の点線は、図5で上述したように、発塵状態があると加湿量を増加していき、発塵状態がなくなると加湿量を減少していく制御である。一方、図6の実線は、発塵状態の量を定量的に把握することで、この発塵状態の量が0となる加湿量を基準として許容可能な発塵状態の量を設定し、許容可能な発塵状態の量以下となるように加湿量を増加させていく制御である。即ち、加湿量Qが、発塵状態の量が下がるが過剰な加湿量Quと、発塵状態の量が許容上限となる加湿量Qdとの間に維持されるようにする。
このように第1実施形態の灰処理装置にあっては、中空形状をなして灰投入部71および灰排出部72を有するケーシング61と、灰投入部71からケーシング61の内部に投入された灰を撹拌しながら灰排出部72側に搬送する搬送装置62と、ケーシング61の内部にある灰に散水して加湿する加湿装置63と、灰排出部72から排出される灰の発塵状態もしくは発塵状態の量を検出する検出器64と、検出器64が検出した灰の発塵状態もしくは発塵状態の量に基づいて加湿装置63による加湿量を調整する制御装置65とを備える。
従って、灰が灰投入部71からケーシング61の内部に投入されると、搬送装置62が投入された灰を撹拌し、また灰排出部7へと搬送すると共に、加湿装置63が搬送される灰に散水して加湿して湿灰とし、加湿された湿灰が灰排出部72から排出される。このとき、検出器64は、灰排出部72から排出される灰の発塵状態の発生を検出し、制御装置65に出力する。制御装置65は、検出器64が検出した灰の発塵状態もしくは発塵状態の量に基づいて加湿装置63による加湿量を調整する。そのため、灰に対する加湿量を最適値に調整することで灰の発塵や飛散を抑制することができる。
第1実施形態の灰処理装置では、加湿装置63は、灰の搬送方向に所定間隔を空けて設けられる複数の散水ノズル94を有し、制御装置65は、検出器64が灰の発塵状態もしくは発塵状態の量を検出すると、複数の散水ノズル94の散水量を予め設定された基準増加量だけ増加させる。従って、灰に対する過剰な散水を抑制しながら、灰の発塵や飛散を抑制することができる。
第1実施形態の灰処理装置では、制御装置65は、検出器64が灰の発塵状態を検出しないときは、複数の散水ノズル94の散水量を基準増加量より少ない予め設定された基準減少量だけ減少させる。従って、灰に過剰な散水を行うことを抑制し、灰の発塵や飛散の変動を小さくして散水量を低減することができる。
第1実施形態の灰処理装置では、検出器64は、灰の発塵状態の量を検出可能であり、制御装置65は、灰の発塵や飛散量が減少するように加湿装置63による加湿量、すなわち複数の散水ノズル94の散水量をPID制御する。従って、加湿量の大幅な増加や減少をなくして適度な加湿量により灰の発塵や飛散を抑制することができる。
第1実施形態の灰処理装置では、検出器64は、灰排出部72から排出される灰の近傍を撮影するカメラであり、制御装置65は、検出器(カメラ)64の撮影画像に基づいて不定形物を発塵状態であると判定する。従って、発塵や飛散の検出精度を向上することができる。
また、第1実施形態の灰処理方法にあっては、灰排出部72から排出される灰の発塵状態もしくは発塵状態の量を検出する工程と、検出された灰の発塵状態もしくは発塵状態の量に基づいて加湿装置63による加湿量を調整する工程とを有する。従って、灰の発塵状態もしくは発塵状態の量に基づいて加湿量を調整するため、灰に対する加湿量を最適値に調整することで灰の発塵や飛散を抑制することができる。
また、第1実施形態のボイラにあっては、灰処理装置60を備える。従って、灰処理装置60が灰に対する加湿量を最適値に調整して発塵や飛散を抑制することから、ボイラ10の健全な運用を可能とすることができる。
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態の灰処理装置を表す概略構成図、図8は、第2実施形態の灰処理装置による加湿量(散水量)の調整方法を表すフローチャートである。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第2実施形態において、灰処理装置60Aは、ケーシング61と、搬送装置62と、加湿装置63Aと、検出器64と、制御装置65とを備える。ここで、ケーシング61、搬送装置62、検出器64は、第1実施形態と同様であることから説明は省略する。
加湿装置63Aは、ケーシング61の内部で搬送装置62により撹拌し、また灰排出部72へと搬送される灰に散水して加湿する。加湿装置63Aは、水タンク91と、給水ライン92と、複数の給水分岐ライン93と、複数の散水ノズル94a,94b,94c,94d,94e,94fと、流量調整弁95と、複数の流量調整弁111a,111b,111c,111d,111e,111fとを有する。給水ライン92は、一端部が水タンク91に連結され、他端部側に複数の給水分岐ライン93の一端部が所定間隔を空けて連結される。複数の散水ノズル94a,94b,94c,94d,94e,94fは、ケーシング61の天井部の下面に固定され、複数の給水分岐ライン93の他端部が連結される。流量調整弁95は、給水ライン92に設けられ、給水量を調整可能である。複数の流量調整弁111a,111b,111c,111d,111e,111fは、各給水分岐ライン93に設けられ、給水量を調整可能である。
そのため、必要な給水量に合わせて流量調整弁95を所定開度に調整し、複数の流量調整弁111a,111b,111c,111d,111e,111fを開放すると、水タンク91の水が給水ライン92および各給水分岐ライン93を通して各散水ノズル94a,94b,94c,94d,94e,94fに供給される。すると、この各散水ノズル94a,94b,94c,94d,94e,94fからケーシング61の内部で搬送装置62により撹拌されながら搬送される灰の上方に散水され、灰が加湿される。また、流量調整弁111a,111b,111c,111d,111e,111fの開度を調整することで、各散水ノズル94a,94b,94c,94d,94e,94fからケーシング61の内部灰に散水される給水量が調整される。
制御装置65は、検出器64が灰の発塵状態の発生を検出すると、複数の散水ノズル94a,94b,94c,94d,94e,94fのうちの、少なくとも灰排出部72に最も近い散水ノズル94fを含む灰の搬送方向の下流側における散水ノズルとして、例えば散水ノズル94e,94fの散水量を予め設定された基準増加量だけ増加させる。一方、制御装置65は、検出器64が灰の発塵状態を検出しないと、少なくとも灰排出部72に最も近い散水ノズル94fを含む灰の搬送方向の下流側における散水ノズルとして、例えば散水ノズル94e,94fの散水量を基準増加量より少ない予め設定された基準減少量だけ減少させる。
なお、複数の散水ノズル94a,94b,94c,94d,94e,94fのうちの灰の搬送方向の下流側における散水ノズルは、2個の散水ノズル94e,94fに限るものではなく、例えば、散水ノズル94fだけであってもよく、散水ノズル94d,94e,94fであってもよい。
そのため、灰処理装置60が作動すると、灰が灰投入部71からケーシング61の内部に投入され、搬送装置62は、ケーシング61の内部に投入された灰を撹拌し、また灰排出部72へと搬送する。また、加湿装置63は、ケーシング61の内部で搬送される灰に上方から散水して加湿する。ケーシングの内部で加湿された湿灰は、灰排出部72からトラック75に排出される。
このとき、加湿装置63による加湿量Qは、初期加湿量Q0に設定される。図8に示すように、ステップS21にて、検出器(カメラ)64は、灰排出部72から排出される灰の発塵状態の発生を検出する。ステップS22にて、制御装置65は、カメラが撮影した画像101に基づいて、判定領域102,103での不定形物を確認する。
ステップS23にて、制御装置65は、画像101における判定領域102,103に不定形物が発塵状態であるかどうかを判定する。具体的には、判定領域102,103における不定形物の量(発塵状態の量)が予め設定された判定値より多いかどうかを判定する。ここで、判定領域102,103における発塵状態の量が判定値より多いと判定(Yes)されると、灰から発塵状態があると判定し、ステップS24にて、制御装置65は、発塵状態もしくは発塵状態の量に基づいて加湿装置63による加湿量を調整する。即ち、制御装置65は、流量調整弁95の開度を所定値だけ大きくすると共に、少なくとも灰排出部72に最も近い流量調整弁111fを含む下流側の例えば流量調整弁111e,111fの開度を所定値だけ大きくすることで、現在の加湿量Qn(初期加湿量Q0)に対して基準増加量Δqだけ増加させる。すると、少なくとも灰排出部72に最も近い散水ノズル94fを含む下流側の例えば散水ノズル94e,94fからの散水量だけが均一に増加される。
一方、加湿量を増加させる処理を実行することで、灰排出部72での灰の発塵や飛散がなくなり発塵状態でないと判断されるとステップS24の処理をやめる。即ち、ステップS23にて、制御装置65は、検出器64が灰の発塵や飛散を検出しない、つまり、判定領域102,103における発塵状態の量が判定値以下であると判定(No)すると、ステップS25にて、制御装置65は、発塵状態もしくは発塵状態の量に基づいて加湿装置63による加湿量を調整する。即ち、制御装置65は、流量調整弁95の開度を所定値だけ小さくすると共に、少なくとも灰排出部72に最も近い散水ノズル94fを含む下流側の例えば流量調整弁111e,111fの開度を所定値だけ小さくすることで、現在の加湿量Qnに対して基準減少量Δq/2だけ減少させる。すると、下流側の散水ノズル94e,94fからの散水量が均一に減少される。
なお、制御装置65は、下流側の散水ノズル94e,94fからの散水量だけを増加させたり、減少させたりしたが、この方法に限定されるものではない。例えば、複数の散水ノズル94a,94b,94c,94d,94e,94fのうち、上流側の散水ノズル94aの散水量に対して下流側の散水ノズル94bから94fの加湿量(散水量)が徐々に多くなるように調整してもよい。
このように第2実施形態の灰処理装置では、加湿装置63は、灰の搬送方向に所定間隔を空けて設けられる複数の散水ノズル94a,94b,94c,94d,94e,94fを有し、制御装置65は、検出器64が灰の発塵状態の発生を検出すると、複数の散水ノズル94a,94b,94c,94d,94e,94fのうちの、少なくとも灰排出部72に最も近い散水ノズル94fを含む灰の搬送方向の下流側における例えば散水ノズル94e,94fの散水量を予め設定された基準増加量だけ増加させる。従って、灰排出部72に近い灰に対してより多く加湿することとなり、灰の発塵や飛散を迅速に抑制することができる。
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態の灰処理装置を表す概略構成図である。なお、第3実施形態の基本的な構成は、上述した第1実施形態と同様であり、図2を用いて説明し、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図2に示すように、制御装置65は、加湿装置63による加湿量(散水量)と検出器64が検出した発塵状態もしくは発塵状態の量との関係に基づいて加湿装置63による最適加湿量を設定する。
灰処理装置60が作動すると、灰が灰投入部71からケーシング61の内部に投入され、搬送装置62は、ケーシング61の内部に投入された灰を撹拌し、また灰排出部72へと搬送する。また、加湿装置63は、ケーシング61の内部で搬送される灰に上方から散水して加湿する。ケーシング61の内部で加湿された湿灰は、灰排出部72からトラック75に排出される。
このとき、加湿装置63による加湿量Qは、予め設定された初期加湿量Q0に設定される。図9に示すように、ステップS31にて、検出器(カメラ)64は、灰排出部72から排出される灰の発塵状態を検出する。ステップS32にて、制御装置65は、カメラが撮影した画像101に基づいて、判定領域102,103での不定形物を確認する。
ステップS33にて、制御装置65は、画像101における判定領域102,103に不定形物が発塵状態にあるかどうかを判定する。具体的には、判定領域102,103における不定形物の量(発塵状態の量)が予め設定された判定値より多いかどうかを判定する。ここで、判定領域102,103における発塵状態の量が判定値より多いと判定(Yes)されると、灰の発塵状態にあると判定し、ステップS34にて、制御装置65は、発塵状態もしくは発塵状態の量に基づいて加湿装置63による加湿量を調整する。即ち、制御装置65は、流量調整弁95の開度を所定値だけ大きくすることで、現在の加湿量Qn(初期加湿量Q0)に対して基準増加量Δqだけ増加させる。すると、各散水ノズル94からの散水量が均一に増加される。
一方、ステップS33にて、制御装置65は、検出器64が灰の発塵状態を検出しない、つまり、判定領域102,103における発塵状態の量が判定値以下であると判定(No)すると、ステップS35にて、制御装置65は、発塵状態もしくは発塵状態の量に基づいて加湿装置63による加湿量を調整する。即ち、制御装置65は、流量調整弁95の開度を所定値だけ小さくすることで、現在の加湿量Qnに対して基準減少量Δq/2だけ減少させる。すると、各散水ノズル94からの散水量が均一に減少される。
そして、ステップS36にて、制御装置65は、灰排出部72における開閉弁74が閉止されたかどうかを判定する。ここで、灰排出部72における開閉弁74が開放されたままであると判定(No)されると、変更をしないでスタートへ戻る。一方、灰排出部72における開閉弁74が閉止されたと判定(Yes)されると、ステップS37にて、ここまでの調整した加湿装置63の加湿量と、検出器64が検出した発塵状態(発塵状態の量)との関係に基づいて加湿装置63による最適加湿量を設定する。
ここで設定した最適加湿量は、次回、灰排出部72における開閉弁74が開放されて灰排出部72からの灰の払い出しが再開されたとき、加湿量の初期値として設定される。また、制御装置65は、今回処理した灰の種類を把握しているときは、特定の種類の灰と最適加湿量との関係を記憶しておき、同じ種類の灰を処理するとき、この最適加湿量を初期値として設定してもよい。
第3実施形態の灰処理装置では、制御装置65は、加湿装置63による加湿量と検出器64が検出した発塵状態もしくは発塵状態の量との関係に基づいて加湿装置63による最適加湿量を設定する。従って、次回の灰排出部72からの灰の払い出し時に、前回の灰排出部72からの灰の払い出し時に設定した最適加湿量を初期値に設定することができ、加湿量調整を安定して行うことができる。