以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。まず、図1を参照して、画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置1は、電子写真方式のモノクロレーザプリンタである。なお、本発明は、プリンタのほか、複写機、ファクシミリ、あるいは、これらのいずれか2つ又は3つの機能を備える複合機であってもよい。また、モノクロ画像形成装置に限らず、カラー画像形成装置であってもよい。
図1に示すように、画像形成装置1には、画像を形成する画像形成部2と、記録媒体としての用紙Pを画像形成部2に供給する記録媒体供給部3と、供給された用紙Pに画像を転写する転写部4と、用紙Pに転写された画像を定着する定着装置5と、画像が定着された用紙Pを装置外に排出する排出部6と、が設けられている。
画像形成部2は、ドラム状の感光体7と、感光体7の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ8と、感光体7の表面を露光して潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置9と、感光体7の表面にトナー(現像剤)を供給して潜像を可視画像化する現像手段としての現像ローラ10と、感光体7の表面をクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニングブレード11と、を備えている。
印刷動作開始の指示があると、画像形成部2において、感光体7が回転を開始し、帯電ローラ8によって感光体7の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置9が感光体7の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像ローラ10からトナーが供給され、感光体7上にトナー画像が形成される。
感光体7上に形成されたトナー画像は、転写部4に配置された転写ローラ15と感光体7との間の転写ニップにおいて用紙Pに転写される。この用紙Pは、記録媒体供給部3から供給されたものである。記録媒体供給部3では、給紙カセット12に収容されている用紙Pが給紙ローラ13によって1枚ずつ送り出される。送り出された用紙Pは、タイミングローラ対14によって感光体7上のトナー画像とタイミングを合わせて転写ニップへ搬送される。そして、転写ニップにおいて、感光体7上のトナー画像が用紙Pに転写される。また、トナー画像の転写が行われた後、感光体7上に残留するトナーは、クリーニングブレード11によって除去される。
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置5へ搬送される。そして、定着装置5において、用紙Pが定着ベルト22と加圧ローラ23との間を通過する際に加熱及び加圧されることで、トナー画像が用紙Pに定着される。その後、用紙Pは、排出部6に搬送され、排紙ローラ対16によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
次に、図2、図3に基づき、定着装置の構成について詳しく説明する。なお、 図2は、定着装置の側面断面図、図3は、定着装置の正面断面図を概略的に示したものである。図2および図3については、定着ベルト22をその幅方向両側で支持するベルト支持部材(詳しくは後述する)等の記載は省略している。
図2に示すように、定着装置5は、定着ベルト22と、加圧部材としての加圧ローラ23と、加熱部材としてのハロゲンヒータ31と、ニップ形成部材32と、当接部材としてのステー33と、反射部材34と、第一遮蔽部材35と、第二遮蔽部材36等を備えている。ハロゲンヒータ31や、ニップ形成部材32、ステー33、反射部材34、第一遮蔽部材35および第二遮蔽部材36は、定着ベルト22の幅方向にわたって延在する長手状の部材である(図3参照)。なお、定着ベルト22の幅方向とは、図2の紙面と直交する方向であり、定着ベルト22の長手方向でもある。また、定着ベルト22の周方向とは、図2の定着ベルト22に沿う回転方向である。以下の説明では、定着ベルト22の幅方向を単に幅方向とも呼ぶ。
図2に示すように、定着ベルト22は、用紙Pに未定着画像Tを定着させる筒状の定着部材であり、用紙Pの未定着画像担持面側に配置される。本実施形態では、定着ベルト22が、ニッケルやSUS等の金属材料やポリイミドなどの樹脂材料で形成された内周側の基材と、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などで形成された外周側の離型層と、を有する無端状のベルト(フィルムも含む。)で構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴムなどのゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。この弾性層の厚さを100μm程度にすれば、未定着画像(未定着トナー)を押し潰して定着させるときに弾性層の弾性変形により、ベルト表面の微小な凹凸を吸収でき、光沢ムラの発生を回避できる。また、本実施形態では、定着ベルト22の低熱容量化の観点から、定着ベルト22として、薄肉で小径のベルトを採用している。具体的には、定着ベルト22を構成する基材、離型層のそれぞれの厚さを、20~50μm、10~50μmの範囲に設定し、定着ベルト22全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト22が弾性層を有する場合は、弾性層の厚さを、100~300μmに設定するとよい。さらに低熱容量化を図るには、定着ベルト22全体としての厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、本実施形態では、定着ベルト22の直径が、20~40mmに設定されており、望ましくは、直径を30mm以下とするのがよい。
加圧ローラ23は、定着ベルト22の外周側に対向するように配置された対向部材である。本実施形態では、加圧ローラ23が、芯金と、芯金の表面に設けられた発泡性シリコーンゴムやフッ素ゴムなどから成る弾性層と、弾性層の表面に設けられたPFAやPTFEなどから成る離型層と、で構成されている。また、本実施形態では、加圧ローラ23を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。中空ローラの場合、加圧ローラ23の内部にハロゲンヒータなどの加熱部材を配置することも可能である。また、加圧ローラ23の弾性層は、ソリッドゴムでもよいが、内部に加熱部材が配置されていない場合は、弾性層にスポンジゴムを用いて加圧ローラ23の断熱性を高めることが望ましい。これにより、定着ベルト22の熱が加圧ローラ23に奪われにくくなり、定着ベルト22の熱効率が向上する。
また、加圧ローラ23は、画像形成装置本体に設けられた駆動源によって図2中の矢印Aで示す方向に回転駆動するように構成されている。一方、定着ベルト22は、加圧ローラ23が回転駆動することにより、これに伴って図2中の矢印B方向に従動回転する。定着ベルト22と加圧ローラ23との間(定着ニップN)に未定着画像Tが転写された用紙Pが搬送されると、回転する定着ベルト22と加圧ローラ23とによって用紙Pが搬送され定着ニップNを通過する。このとき、用紙Pに対して熱と圧力が付与されることで、未定着画像Tが用紙Pに定着される。
また、加圧ローラ23と定着ベルト22は、互いに接近離間するように構成されている。万が一、定着ニップNに用紙が詰まった場合は、加圧ローラ23と定着ベルト22を互いに離間させ、定着ニップNを開放することで、詰まった用紙のジャム処理などのメンテナンス作業を行うことが可能である。加圧ローラ23と定着ベルト22とは、いずれか一方に対して他方を動かして接近離間させるように構成されていてもよいし、両方を動かすことで接近離間させる構成であってもよい。
ハロゲンヒータ31は、定着ベルト22の内周側に配置され、赤外線光を放射することで、定着ベルト22を輻射熱により内周側から加熱する加熱部材である。定着ベルト22内にハロゲンヒータ31が1本だけ配置されている。加熱部材として、ハロゲンヒータ31以外に、カーボンヒータやセラミックヒータなどを用いることも可能である。
ニップ形成部材32は、加圧ローラ23との間で定着ベルト22を挟んで定着ニップNを形成するものである。詳しくは、ニップ形成部材32は、定着ベルト22の内周側で幅方向に渡って長手状に配置されており、定着ベルト22の内周面に接触する平板状のニップ形成部32aと、ニップ形成部32aのベルト回転方向Bの両端部から加圧ローラ23側とは反対側に屈曲する一対の屈曲部32bと、を有している。加圧ローラ23がバネなどの加圧手段によってニップ形成部材32側に加圧されることで、加圧ローラ23と定着ベルト22とが接触し、これらの間に定着ニップNが形成される。
ニップ形成部32aの定着ベルト22側のニップ形成面32cは、定着ベルト22の内周面に対して直接接触している。このため、定着ベルト22が回転したとき、定着ベルト22はニップ形成面32cに対して摺動する。従って、ニップ形成面32cの耐摩耗性や摺動性を向上させるために、ニップ形成面32cにアルマイト処理やフッ素樹脂系材料の塗布することが好ましい。また、経時的な摺動性の確保のために、ニップ形成面32cにフッ素系グリース等の潤滑剤を塗布してもよい。本実施形態では、ニップ形成面32cが、平坦面状となっているが、凹形状やその他の形状であってもよい。例えば、ニップ形成面32cが加圧ローラ23側とは反対側へ凹んだ凹形状である場合は、定着ニップNの出口部が加圧ローラ23寄りになり、定着ベルト22に対する用紙の分離性が向上する。
また、ニップ形成部材32は、ステー33よりも熱伝導率が大きい材料で形成されている。例えば、ニップ形成部材32の材料として、銅(熱伝導率:398W/mk)やアルミニウム(熱伝導率:236W/mk)などが好ましい。このように、ニップ形成部材32が熱伝導率の大きい材料で形成されていることで、ハロゲンヒータ31からの輻射熱はニップ形成部材32によって吸収され定着ベルト22へ効率良く伝達される。例えば、ニップ形成部材32の厚みを1mm以下に設定することで、ニップ形成部材32から定着ベルト22への熱伝達時間を短くすることができるため、定着装置5の立ち上がり速度を速める点において有利である。また、ニップ形成部材32の厚みを1mmより大きく5mm以下に設定した場合は、ニップ形成部材32の蓄熱性を高めることができる。
ステー33は、ニップ形成部材32にその背面側から当接し、加圧ローラ23の加圧力に抗してニップ形成部材32を支持する当接部材である。ステー33は、用紙搬送方向に垂直な方向(図の上下方向)であって、加圧ローラ23の加圧方向に延在する一対の部材であり、それぞれのステー33が、その一端で、ニップ形成部材32の用紙搬送方向一方側および他方側にその背面側から当接する。各ステー33が、加圧ローラ23の加圧方向に延在していることで、加圧方向の剛性が高まり、加圧ローラ23の加圧力によるニップ形成部32aの撓みが抑制される。このため、長手方向に渡って均一な幅のニップ部が得られる。ステー33は、その剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
反射部材34は、定着ベルト22の内周側でハロゲンヒータ31と対向するように配置されており、ハロゲンヒータ31から放射される輻射熱(赤外線光)をニップ形成部材32側へ反射するものである。反射部材34は、それぞれハロゲンヒータ31に対向する位置でハロゲンヒータ31に最も接近するような凸曲面状に形成された一対の部材である。反射部材34がこのような凸曲面状に形成されていることで、ハロゲンヒータ31から照射された赤外線光は、反射部材34によって各方向に反射される。この場合、平板状の反射部材と比べて、少ない反射回数で赤外線光(反射光)を定着ベルト22又はニップ形成部材32に照射することができるので、反射回数の増加に伴う赤外線光の減衰が抑制され、効果的に加熱することができる。ただし、本実施形態では、ハロゲンヒータ31は定着装置5内で相対移動可能に設けられており(詳しくは後述する)、図2の配置はその一例である。
反射部材34は、図の上方方向の両端にそれぞれ、屈曲部34a、34bを有する。それぞれの屈曲部34a、34bは、用紙搬送方向の互いに離れる方向へ屈曲している。反射部材34は、各屈曲部34aがステー33、33とニップ形成部材32のニップ形成部32aとの間に挟まれることで保持されている。
反射部材34は、ハロゲンヒータ31からの赤外線光を定着ベルト22やニップ形成部材32や定着ベルト22側へ反射する。また、反射部材34が、ハロゲンヒータ31とステー33との間に介在していることで、ハロゲンヒータ31からステー33への赤外線光の照射を遮断する機能も兼ねる。
反射部材34のハロゲンヒータ31側の面は、反射率を高くするような鏡面処理や表面処理がなされている。本実施形態では、反射率を分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製の紫外可視赤外分光光度計UH4150)を用いて測定し、測定時の入射角は5°である。一般的に、ハロゲンヒータは用途により色温度が異なるが、定着装置の加熱用としては色温度が2500K程度のものが用いられている。本実施形態で用いられる反射部材34の反射率は、発光強度の高いハロゲンヒータ31の波長、具体的には900~1600nmの波長、より好ましくは1000~1300nmの波長に対して70%以上であるのがよい。
第一遮蔽部材35および第二遮蔽部材36は、ハロゲンヒータ31からの熱を遮蔽する部材であり、それぞれ、定着ベルト22の周方向における異なる領域に設けられており、周方向の異なる部分の熱を遮蔽する。具体的には、第一遮蔽部材35はハロゲンヒータ31からニップ形成部材32への熱を、第二遮蔽部材36は、ハロゲンヒータ31から定着ベルト22の主に図の上側部分への熱をそれぞれ遮蔽する。
温度センサ(温度検知部材)28は、定着ベルト22の外周側に配置され、定着ベルト22の温度を検知するものである。本実施形態では、温度センサ28を、定着ベルト22に対してベルト幅方向の中央部と一端部側との2箇所に配置している。温度センサ28による定着ベルト22の表面温度の検知結果に基づいてハロゲンヒータ31の出力制御が行われる。これにより、定着ベルト22の温度が所望の温度(定着温度)となるように制御される。また、温度センサ28は、接触型又は非接触型のいずれでもよい。温度センサ28としては、例えばサーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサなど、公知の温度センサを適用可能である。
次に、各遮蔽部材による幅方向の遮蔽領域を説明し、ハロゲンヒータ31によってニップ形成部材32および定着ベルト22を加熱する様子について、図3および図4を用いて説明する。
図3に示すように、第一遮蔽部材35は定着ベルト22の幅方向中央側に対応する位置に開口部35aを有する(図4b参照)。一方、第二遮蔽部材36は、定着ベルト22の幅方向端部側に対応する位置に開口部36aを有する(図4a参照)。なお、定着ベルト22の幅方向中央側とは、定着ベルト22を幅方向で3分割した際に、その真ん中の領域を指し、端部側とは3分割した両側の領域を指している。本実施形態では、第一遮蔽部材35および第二遮蔽部材36は、それぞれの幅方向の開口領域が異なることにより、遮蔽領域が異なっている。また本実施形態では、幅方向において、開口部35aと開口部36aとは重なっていない。また本実施形態では、第一遮蔽部材35は、ハロゲンヒータ31に対向する面が光または熱を反射する反射面として機能する。なお、反射面とは、本実施例では鏡面処理をなされているものであるが、800~1500μmの波長に対して0より大きな反射率を有する面であればよい。
図3の矢印方向で示すように、ニップ形成部材32の側へ輻射されたハロゲンヒータ31の輻射熱は、その幅方向端部側で第一遮蔽部材35によって遮蔽され、幅方向中央側に輻射された熱がニップ形成部材32へ到達する。従って、定着ベルト22の図3の下側のベルト部分は、幅方向中央側が主にニップ形成部材32を介して加熱されることになる。一方、図3の上側へ輻射されたハロゲンヒータ31の輻射熱は、その幅方向中央側で第二遮蔽部材36によって遮蔽され、幅方向端部側に輻射された熱が定着ベルト22の側へ到達する。従って、定着ベルト22の図3の上部側のベルトは、幅方向端部側が主に加熱されることになる。以上で説明した、各遮蔽部材の、それぞれの方向における遮蔽領域をまとめたものを表1に示す。
このように、各遮蔽部材の、定着ベルト22の周方向および幅方向における遮蔽領域が異なることで、遮蔽部材によりハロゲンヒータ31からの伝熱経路を区画することができる。具体的には、定着ベルト22の幅方向中央側と端部側とで異なる伝熱経路を設けることができる。
特に本実施形態では、各遮蔽部材に開口部を設けることで、開口部が設けられた領域を、熱を遮蔽しない領域とし、各遮蔽部材の遮蔽領域を変化させている(図4参照)。
また本実施形態では、ハロゲンヒータ31が、定着装置5内の他の部材に対して相対移動可能に設けられる。ハロゲンヒータ31の相対移動の方向は、ニップ形成部材32に対する接離方向である(図2の両矢印参照)。ハロゲンヒータ31の相対移動の方法としては、ハロゲンヒータ31を他の部材に対して移動可能な構成としてもよいし、これとは反対に、定着ベルト22やハロゲンヒータ31を除く定着ベルト22の内側の各部材、および、加圧ローラ23を、ハロゲンヒータ31に対して移動可能な構成としてもよい。例えば、定着ベルト22内部に、ニップ形成部材32を加圧ローラ23側へ付勢するバネ等の付勢部材を設け、加圧ローラ23のニップ形成部材32に対する圧接力が可変な構成とする。このような構成で、加圧ローラ23の圧接力を小さくすると、付勢部材の付勢力によってニップ形成部材32が加圧ローラ23側へ付勢され、定着ベルト22、および、ハロゲンヒータ31を除く定着ベルト22の内側の各部材を加圧ローラ23側へ移動させることができ、加圧ローラ23の圧接力を大きくすることにより、その反対方向へ移動させることもできる。
ハロゲンヒータ31を図2の上方向へ相対移動させることにより、ニップ形成部材32から離間させ、定着ベルト22の上側部分に接近させることができる。これにより、定着ベルト22の幅方向端部側の加熱量を増やし、幅方向中央側の加熱量を減らすことができる。またこれとは逆に、ハロゲンヒータ31を図2の下方向へ相対移動させることにより、定着ベルト22の幅方向端部側の加熱量を減らし、幅方向中央側の加熱量を増やすことができる。
以上のように、本実施形態では、各遮蔽部材によって幅方向の異なる位置(つまり、中央側と端部側)で異なる伝熱経路を設ける。そして、ハロゲンヒータ31を相対移動可能とすることで、一方の経路の伝熱量を増やし、他方の経路の伝熱量を減らすことができる。これにより、状況に応じてそれぞれの伝熱経路の加熱量を増減させることが可能になる。従って、本実施形態のようにヒータを1本のみ設けた構成であっても、定着ベルト22の発熱量を幅方向で部分的に増減させることが可能になり、定着ベルト22の幅方向の温度ムラを抑制することができる。これにより、定着ベルト22の温度ムラを抑制し、定着ベルト22の部分的な温度不足による用紙への定着不良や、定着ベルト22の部分的な過熱による劣化および損耗を防止することができる。また、無駄な発熱によるエネルギー消費を低減し、定着装置の省エネルギー化を実現することができる。
上記のように定着ベルト22の幅方向の温度ムラが生じる例として、例えば以下のものがある。
まず、定着装置5の立ち上げ時には、定着ベルト22の熱が、定着ベルト22をその幅方向端部側で保持するフランジやそのフランジを保持する側板に伝わって逃げてしまうことで、定着ベルト22の幅方向端部側が中央側と比較してその温度が上昇しづらい。一方で、立ち上げ動作後、印刷時には、小サイズ紙を連続で通紙すると、定着ベルト22の幅方向端部側の非通紙領域でその熱が用紙に奪われず端部側の温度が中央側に比べて大きくなりやすい。
上記の事情を考慮して、本実施形態の制御の一例として、通常時および立ち上げ時には、定着ベルト22の幅方向端部側の温度ダレを考慮してハロゲンヒータ31を定着ベルト22の上側部分に接近させる。装置の立ち上げ時にこのような制御をすることで、定着装置5の立ち上げ時間を短縮することができる。一方で、小サイズ紙が連続される場合等、定着ベルト22の幅方向端部の温度が異常昇温しやすい場合には、ハロゲンヒータ31を図2の下方向へ相対移動させることで、幅方向端部側への過剰な熱供給を防止する、といったような使い分けが可能になる。このような構成とすることで、装置の立ち上げ時、および、小サイズ紙の連続通紙時のそれぞれで定着ベルト22の幅方向の温度ムラを抑制することができ、両方の状況に対応することができる。
特に本実施形態では、ハロゲンヒータ31が、主にニップ形成部材32を介して定着ベルト22を加熱する図2の下側への伝熱経路では、定着ベルト22の幅方向中央側を加熱し、定着ベルト22を直接加熱する図の上側への伝熱経路では、定着ベルト22の幅方向端部側を加熱している。このような伝熱経路の分担により、小サイズ紙連続通紙時の定着ベルト22の幅方向端部側の過剰な温度上昇を抑制することができる。つまり、定着ベルト22は、ニップ形成部材32と比較して薄くその熱容量も小さいため、幅方向にその熱が伝達しやすいが、一方で、本実施形態のニップ形成部材32は、相対的に熱容量が大きく、幅方向に熱が伝達しにくい。従って、ハロゲンヒータ31が定着ベルト22を直接加熱する図の上側への伝熱経路では、幅方向端部側を加熱させることで、幅方向端部側に伝達された熱が定着ベルト22の幅方向に伝達しやすい構成とすることができ、小サイズ紙連続通紙時の端部温度上昇を抑制することができる。
さらに本実施形態では、ハロゲンヒータ31の相対位置が、定着ベルト22の幅方向中央側と一端側にそれぞれ設けられた温度センサ28により制御される。つまり、各温度センサ28の検知結果により、幅方向中央側と端部側いずれかの温度が相対的に低い場合には、そちら側の加熱量が大きくなるように、ハロゲンヒータ31の相対位置を変更することができる。これにより、的確にハロゲンヒータ31の相対位置を変更し、定着ベルト22の幅方向の温度ムラを効果的に抑制することができる。相対移動させる定着ベルト22の温度の閾値の一例として、定着ベルト22の幅方向中央側あるいは端部側のいずれか一方の温度が150度以上になった場合である。この場合、150度を超えた一方側の加熱量が小さくなり他方側の加熱量が大きくなるように、ハロゲンヒータ31の相対位置を変更する。
また、印刷動作開始時に、ハロゲンヒータ31を図2の上側へ相対移動させる構成とすることもできる。上記のように、画像形成装置に印刷の指令が出されて定着ベルト22を定着温度まで加熱する間には、定着ベルト22の幅方向端部側で温度ダレが生じやすい。このため、ハロゲンヒータ31による加熱開始時に、端部側の加熱量が大きくなるようにハロゲンヒータ31を相対移動させることができる。一方で、印刷動作開始後、つまり、定着ベルト22が定着温度に到達し、1枚目の用紙が定着ニップNに到達した後には、小サイズ紙が印刷される場合等、端部側の温度が高くなりすぎることがあるため、ハロゲンヒータ31を図2の下側へ相対移動させて幅方向端部側の加熱量を小さくすることができる。これらの制御により、定着ベルト22の幅方向の温度ムラを抑制することができる。このような制御は上記の温度センサ28を設けない定着装置5であっても可能である。
さらに、印刷される用紙のサイズに応じて、ハロゲンヒータ31の相対位置を変更することもできる。つまり、印刷動作が開始されて小サイズ紙が通紙されると、幅方向端部側の温度が高くなるため、ハロゲンヒータ31を図の下側へ相対移動させることができる。ハロゲンヒータ31の移動量は、用紙のサイズや枚数によって決定することができる。さらに上記の制御と組み合わせて、印刷開始動作後のハロゲンヒータ31を図の下側へ相対移動させるタイミングを、通紙される用紙のサイズに応じて前後させてもよい。
次に、上記のハロゲンヒータ31を相対移動させる機構の具体的な構成について、図6~図9を用いて説明する。
図6(a)~(c)に示すように、ベルト支持部材40は、主としてベルト支持部40aと側板支持部40bとで構成される。ちなみに図6に示すベルト支持部材40は定着ベルト22の幅方向一端部の外側に配置されるもので、定着ベルト22の他端部の外側には、これと対をなす別の支持部材が配置される。
ベルト支持部40aは、定着ベルト22の端部に向くように突出しており、その部分円筒部を定着ベルト22に内挿して定着ベルト22を吊架し、定着ベルト22の幅方向の移動を規制すると共に、定着ベルト22が定着ニップNで加圧ローラ23とニップ形成部材32に挟み込まれて回転する際、定着ニップN以外で定着ベルト22の回転を案内する。側板支持部40bは、その外周部、例えば上下端面に溝40cを有し、この溝40cが装置側板に外嵌することで、ベルト支持部材40が装置側板にスライド移動可能に支持される。
更に側板支持部40bには、ステー33、そして、第一遮蔽部材35および第二遮蔽部材36の長手方向端部を支持する孔部である第1支持部40dと、ハロゲンヒータ31を相対移動可能に支持する孔部である第2支持部40eとが設けられている。
第1支持部40dは、ベルト支持部材40のそれぞれ対応する部分を、ステー33、そして、第一遮蔽部材35および第二遮蔽部材36の長手方向端部から外嵌することで、これらの部材を支持する。
第2支持部40eは、ベルト支持部材40が装置側板に対してスライド移動する方向に長くなった角丸長方形をした溝(長穴形状の溝)であり、ハロゲンヒータ31を長手方向から挿し込むことで、ハロゲンヒータ31を支持する。第2支持部40eは図示例では角丸長方形をした溝であるが、一般的な長方形でもよく、用紙搬送方向でのハロゲンヒータ31の変位を僅かな程度に抑えることができる限り、楕円形、多角形でもよい。
図7に、ベルト支持部材40を移動させることで、ハロゲンヒータ31を定着ベルト22等の他の部材に対して相対移動させる機構の一例を示す。この接離機構は、ベルト支持部材40を定着ニップ側(図の右側)に加圧する第1の加圧レバー41と、加圧脱圧カム42と、両端にコロを備え加圧脱圧カム42によって回動する第2の加圧レバー43と、第1、第2の各加圧レバー41,43の夫々の一端に張り渡された加圧スプリング44とから構成されている。加圧脱圧カム42の回転にしたがって装置側板に一端を固定支持された第1の加圧レバー41の回動し、この第1の加圧レバー41の回動により、これにつながったベルト支持部材40がスライド移動する。
上記のベルト支持部材40を移動させることで、ベルト支持部材40に支持される定着ベルト22等の各部材を移動させ、ハロゲンヒータ31のこれらの部材に対する相対的な位置関係を変更する。なお、後述するように、ハロゲンヒータ31自身の位置も完全に固定されているわけではなく、ベルト支持部材40の移動によりハロゲンヒータ31の位置も変化する。
次に、このようなベルト支持部材40の用紙搬送方向に直交する方向(図の左右方向)のスライド移動により、ベルト支持部材40の第2支持部40eに差し込まれたハロゲンヒータ31が第2支持部40e内で変位する様子について、図8(a)および図8(b)に基づいて説明する。
図8(a)に示すように、ステー33,33、および、第一遮蔽部材35、第二遮蔽部材36は、第1支持部40dのそれぞれ対応する部分に外嵌されてベルト支持部材40に支持されている。
装置側板に固定された細板状若しくは細長片状の部材である押し当て部材45は、ベルト支持部材40の第2支持部40eと共にハロゲンヒータ31の変位に関わる調整機構を構成する。押し当て部材45は、各ベルト支持部材40よりもステー33の長手方向外側であって定着ニップとハロゲンヒータ31端部の間に1つずつ配置され、ベルト支持部材40がスライド移動しても押し当て部材45の装置側板への固定位置は変わらないようになっている。
図8(a)および図8(b)に示すように、ベルト支持部材40の図の左右方向の移動により、ベルト支持部材40に支持される定着ベルト22やステー33などの部材が同じ方向へ移動する。これにより、ハロゲンヒータ31は第2支持部40e内を相対移動し、ハロゲンヒータ31の定着ベルト22等に対する相対位置が変化する。なお、ベルト支持部材40の図の左右方向への移動により、加圧ローラ23の位置は変化しない。つまり、ベルト支持部材40が図の右側へ移動する分だけ、加圧ローラ23が定着ニップNの部分で押しつぶされることになる。また、以下の説明では、ベルト支持部材40が加圧ローラ23から最も離れた図8(a)の位置をベルト支持部材40の離間位置とし、ベルト支持部材40が加圧ローラ23に最も接近した図8(b)の位置をベルト支持部材40の近接位置とする。なお、ベルト支持部材40が離間位置に配置された状態で、ハロゲンヒータ31は定着ベルト22の定着ニップNとは反対側の部分(図2の上側部分で、図8の左側に相当する部分)に最も接近し、ベルト支持部材40の近接位置ではこの逆になる。
第2支持部40eとしての溝のスライド移動方向の長さL(図6b)は次のように設定されている。つまり、ベルト支持部材40が離間位置(図8a参照)に配置された状態では、ハロゲンヒータ31が第2支持部40eの定着ニップ側(図の右側)の端縁に当接している。この状態では、ハロゲンヒータ31が押し当て部材45に軽く接触する程度か、ハロゲンヒータ31が押し当て部材45から僅かに離間するような長さ寸法となっている。そして、ベルト支持部材40が離間位置から近接位置(図8b参照)への移動に伴って、定着ベルト22は加圧ローラ23との圧接部分における押し当て量を増やしながら、図の右側へ移動する。そして、ベルト支持部材40が近接位置まで移動すると、ハロゲンヒータ31が第2支持部40eの定着ニップと反対側(図の左側)の端縁に当接する。またこの状態で、ハロゲンヒータ31は、その定着ニップ側で押し当て部材45に当接され、定着ニップ側への移動が規制されると共に、押し当て部材45はハロゲンヒータ31の当接力により弾性変形する。この結果、図8(a)と図8(b)との比較からも分かるように、ベルト支持部材40が離間位置にある際のハロゲンヒータ31とニップ形成部材との距離(図のH1で、図では第一遮蔽部材35の右側端部までの位置)よりも、ベルト支持部材40が近接位置にある際のハロゲンヒータ31とニップ形成部材との距離(H2)が大きくなる。また、ベルト支持部材40が離間位置にあるときと近接位置にあるときとで、ハロゲンヒータ31のニップ形成部材32に対する位置を決めることができ、ハロゲンヒータ31が周辺部材に接触しないことが保証される。
ちなみに、ベルト支持部材40が離間位置および近接位置を往復してもハロゲンヒータ31がステー33や定着ベルト22に接触しない位置関係をとることができるのであれば、ハロゲンヒータ31をベルト支持部材40の第2支持部40e内で相対移動する際に、ハロゲンヒータ31自身が移動しないような構成とすることもできる。つまり、図8の押し当て部材45に代えて、図9に示すように、固定部材46を用いてハロゲンヒータ31を所定位置に固定支持してもよい。この場合、ハロゲンヒータ31は、ベルト支持部材40が近接位置に配置された際に、定着ベルト22やニップ形成部材32に対して一定のクリアランスを有する一方、ベルト支持部材40が離間位置に配置された際に、に定着ベルト22やステー33に接触しないような相対配置関係をとる。この際、固定部材46が押し当て部材のように弾性変形するものではないので、ベルト支持部材40がニップ形成位置へ正しく移動するために、ベルト支持部材40の第2支持部の定着ニップと反対側端縁は、押し当て部材の実施形態の場合よりも定着ニップから遠くに延びていなくてはならない。
以上の機構により、ハロゲンヒータ31の相対位置を変更することができ、定着ベルト22の幅方向中央側および端部側の加熱量の大小を調整することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
また、遮蔽部材の開口部の配置は、以上で説明したような、一方が定着ベルト22の幅方向中央側、他方が幅方向端部側、といった構成に限らず、適宜必要な配置をとることができる。また、第一遮蔽部材35と第二遮蔽部材36の開口部が幅方向で一部重なるように設けられていてもよい。また、これとは逆に、図10に示すように、幅方向において、いずれの開口部も配置されていない部分があってもよい。つまり、本発明における第一遮蔽部材と第二遮蔽部材の遮蔽領域が異なる、とはその一部が重複する場合も含むものである。さらに、遮蔽部材を三つ以上設けて、幅方向における加熱位置が異なる三つ以上の伝熱経路を設けることも可能である。
第一遮蔽部材35あるいは第二遮蔽部材36の開口部の形状は、図4で示した矩形状に限らない。例えば、図5(a)に示すように、幅方向端部側に向けて段階的に開口長さ(図の上下の長さ)が大きくなる形状であってもよいし、図5(b)に示すような楕円状であってもよい。また、図5(c)に示すように、幅方向中央側に向けてその開口長さが小さくなる形状であってもよい。幅方向に開口部の開口長さが変化する形状とすることで、ハロゲンヒータ31から定着ベルト22あるいはニップ形成部材32に到達する熱量を幅方向で段階的に小さくする等、幅方向に変化させることが可能である。
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すモノクロ画像形成装置に限らず、カラー画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
以上で説明した遮蔽部材による熱の遮蔽とは、完全な熱の遮断を必ずしも意味するものではなく、熱の一部を遮蔽するものも当然含んでいる。例えば、遮蔽部材と他の部材との間から遮蔽する側へ熱の一部が漏れたり、遮蔽部材自身に吸収された熱が反対側へ伝達される場合もあるが、この場合でも遮蔽部材は熱を遮蔽している。