以下、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示した断面正面図である。図2は、搬送ユニットが下方のメンテナンス位置に移動し、クリーニング部が記録部の直下位置に移動した状態を示す図である。インクジェット記録装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えた複合機であり、装置本体11に、操作部47、原稿給送部6、原稿読取部5、画像記録部12、給紙部14、用紙搬送部19、搬送ユニット125、及びクリーニング部8を含んで構成されている。
操作部47は、インクジェット記録装置1が実行可能な各種動作及び処理について、操作者から、画像記録動作実行指示等の指示を受け付ける。操作部47は、操作者への操作案内等を表示する表示部473を備えている。表示部473はタッチパネルになっており、操作者は画面表示されるボタンやキーに触れてインクジェット記録装置1を操作することができる。
インクジェット記録装置1で原稿読取動作が行われる場合について説明する。原稿給送部6により給送されてくる原稿、又はプラテンガラス161に載置された原稿の画像を、原稿読取部5が光学的に読み取り、そして画像データを生成する。原稿読取部5により生成された画像データは、図略の画像メモリー等に保存される。
原稿読取部5は、光源射部及びCCD(Charge Coupled Device)センサー等を有する読取機構163を備えており、原稿読取部5は、光源を有する光照射部を使って原稿を照射し、その反射光をCCDセンサーで受光することによって、原稿から画像を読み取る。
インクジェット記録装置1で画像記録動作が行われる場合について説明する。原稿読取動作により生成された原稿画像データや、画像メモリー等に記憶されている原稿画像データ、ネットワーク接続されたコンピューターから受信した原稿画像データ等に基づいて、画像記録部12が、給紙部14から給紙され用紙搬送部19により搬送される用紙Pに画像を記録する。
給紙部14は、給紙カセット141を備えている。給紙カセット141の上方には、給紙ローラー145が設けられており、給紙ローラー145により給紙カセット141に収容された用紙Pが搬送路190へ向けて繰り出される。
また、給紙部14は、装置本体11の壁面に開閉自在に設けられた手差しトレイ142を備えている。手差しトレイ142にセットされた用紙Pは、給紙ローラー146により搬送路190へ向けて繰り出される。
用紙搬送部19は、給紙部14から排出トレイ151に向けて用紙Pを搬送する搬送路190、搬送路190の適所に設けられた搬送ローラー対191、及び排出ローラー対192を備えている。
給紙部14から給紙された用紙Pは、搬送ローラー対191により搬送路190内を搬送される。また、画像記録部12により画像が記録された用紙Pはフェイスアップで、排紙搬送路193(搬送路190の一部)を通って、排出ローラー対192により排出トレイ151に排出される。
また、用紙搬送部19は、排出ローラー対192を用紙搬送方向に対して直角方向へ移動させて、排出トレイ151に排出する用紙Pを用紙幅方向にずらすオフセット機構(図示せず)を有する。
画像記録部12は、給紙部14から給紙され搬送路190を搬送される用紙Pに原稿画像データに基づく画像を記録するものであり、搬送ユニット125と、吸着ローラー126と、記録部3と、インクタンク122とを備える。
搬送ユニット125は、駆動ローラー125Aと、従動ローラー125Bと、テンションローラー127と、搬送ベルト128と、を備える。搬送ベルト128は、無端状のベルトであり、駆動ローラー125A、従動ローラー125B、及びテンションローラー127に架け渡されている。駆動ローラー125Aは、図略のモーターにより反時計回りに回転駆動されるローラーであり、駆動ローラー125Aが回転駆動されることで、搬送ベルト128が反時計回りに走行するとともに、従動ローラー125B及びテンションローラー127が反時計回りに従動的に回転する。
テンションローラー127は、搬送ベルト128の緊張状態を適切な状態で保つためのローラーである。吸着ローラー126は、搬送ベルト128に接触した状態で従動ローラー125Bに対向配置されており、搬送ベルト128を帯電させることで、給紙部14から給紙された用紙Pを搬送ベルト128に静電的に吸着させるものである。
記録部3は、異なる4色(ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエロー)のインク滴を、用紙搬送部19により搬送されてくる用紙Pに向かって吐出し、画像を順次記録する。インクタンク122には、各色に対応したインクが充填されている。
具体的には、記録部3は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応するラインヘッド31,32,33,34を有している。このため、インクジェット記録装置1は、ラインヘッド型のインクジェット記録装置である。また、記録部3は、ラインヘッド31~34を支持するヘッドフレーム35(図4(A)、図4(B)参照)を有している。ヘッドフレーム35は装置本体11に支持されている。
昇降機構129は、搬送ユニット125を下方から支持しており、搬送ユニット125をラインヘッド31~34に対して上下に昇降させる。即ち、昇降機構129は、搬送ユニット125をラインヘッド31~34に相対的に移動させることにより、搬送ユニット125及びラインヘッド31~34を離間及び接近させる。具体的には、昇降機構129は、記録部3による印刷が可能な記録位置(図1に示される位置)と、前記記録位置から下方へ所定距離を隔てたメンテナンス位置(図2に示される位置)との間で搬送ユニット125を移動させる。
図3は、第1実施形態に係るインクジェット記録装置の主要内部構成を概略的に示した機能ブロック図である。インクジェット記録装置1は、制御ユニット10、原稿給送部6、原稿読取部5、画像記録部12、給紙部14、用紙搬送部19、操作部47、駆動機構88、搬送ユニット125、昇降機構129、洗浄液ポンプ130、及びクリーニング部8を備える。なお、図1に示したインクジェット記録装置1と同様の構成部分については同符号を付し、ここではその詳しい説明を省略する。
給紙部14及び用紙搬送部19は、それぞれローラー駆動部14A,19Aを備える。ローラー駆動部14A,19Aは、モーター、ギア、ドライバー等から構成され、ローラー駆動部14Aは、給紙ローラー145,146に回転駆動力を付与する駆動源として機能を果たす。ローラー駆動部19Aは、搬送ローラー対191及び排出ローラー対192の駆動ローラーに回転駆動力を付与する駆動源として機能を果たす。
制御ユニット10は、プロセッサー、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び専用のハードウェア回路を含んで構成される。プロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はMPU(Micro Processing Unit)等である。制御ユニット10は、制御部100を備えている。
制御ユニット10は、内蔵する不揮発性メモリー等に記憶されている制御プログラムに従って上記プロセッサーが動作することにより、制御部100として機能するものである。但し、制御部100等は、制御ユニット10による制御プログラムに従った動作によらず、ハードウェア回路により構成することも可能である。以下、特に触れない限り、各実施形態について同様である。
制御部100は、インクジェット記録装置1の全体的な動作制御を司る。制御部100は、原稿給送部6、原稿読取部5、画像記録部12、給紙部14、用紙搬送部19、クリーニング部8、操作部47、駆動機構88、搬送ユニット125、昇降機構129、及び洗浄液ポンプ130と接続され、これら各部の駆動制御等を行う。
制御部100は、後述するように洗浄液831を用いてワイパー部材821によってインク吐出面361をワイピングするクリーニング動作の制御と、このクリーニング動作の制御の前に実行される気泡抜き動作の制御とを行う。
ここで、記録部3の構成について、図面を用いて詳細に説明する。図4(A)は、記録部と搬送ユニットとを示した図である。図4(B)は、搬送ユニット及び記録部を上方から見た図である。
搬送ユニット125は、図4(A)に示すように、ラインヘッド31~34の下方に配置されている。搬送ユニット125は、用紙Pをインク吐出面361に対向させつつ搬送する。なお、搬送ベルト128とインク吐出面361との間隙は、画像記録時の用紙Pの表面とインク吐出面361との間隙が例えば1mmとなるように調整される。
記録部3は、図4(B)に示すように、ラインヘッド31~34を備えている。ラインヘッド31~34は、用紙Pの搬送方向D1に垂直な幅方向D2(用紙Pの幅方向)に長いものである。ラインヘッド31~34の幅は、搬送される最大幅の用紙Pの幅に対応する長さを有する。ラインヘッド31~34のそれぞれは、用紙Pの搬送方向D1に沿って所定間隔を隔てられて、ヘッドフレーム35に固定されている。ラインヘッド31~34のそれぞれは、複数(例えば3個)の記録ヘッド36を有する。このため、記録部3は、12個の記録ヘッド36を備えている。
記録ヘッド36は、インクが吐出されるインク吐出口371を有する複数のインクノズル37を有する。なお、図4(B)では、複数のインクノズル37は、1列に配置された態様で簡略して示しているが、後述する図5(B)に示すように千鳥状に3列に配置されている。記録ヘッド36の下面は、インク吐出口371が設けられたインク吐出面361である。本実施形態では、ラインヘッド31は、幅方向D2に沿って3つの記録ヘッド36が千鳥状に配列されている。また、他のラインヘッド32~34それぞれも、ラインヘッド31と同じように、幅方向D2に沿って3つの記録ヘッド36が千鳥状に配列されている。
記録部3は、搬送ユニット125によって搬送される用紙Pに対して各記録ヘッド36の各インクノズル37からインクが吐出されることにより用紙Pに画像を記録する。ラインヘッド31~34のインクの吐出方式としては、例えばピエゾ素子を利用してインクを吐出させるピエゾ方式、加熱により気泡を発生させてインクを吐出させるサーマル方式などが採用される。
図1に示すように、インクタンク122は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応するインクが収容されたインクタンク41,42,43,44を備えている。インクタンク41~44は、不図示のインクチューブによって同色のラインヘッド31~34のそれぞれに接続されている。ラインヘッド31~34には、インクタンク41~44それぞれからインクが補給される。ここで、インクとしては、例えば溶剤及び水に対して、各色に対応する色材などを含有させたものが用いられる。
クリーニング部8は、図2に示すように搬送ユニット125が前記メンテナンス位置にあるときに、後述する気泡抜き動作と、その後のクリーニング動作(パージ動作を含む)とを行うことにより、ラインヘッド31~34各々の記録ヘッド36の機能を回復させる装置である。クリーニング部8は、図1、図5(A)に示すように、インクトレイ81、ワイパーユニット82と、を有している。図5(A)は、クリーニング部のインクトレイ及びワイパーユニットが記録部の下方に配置された状態を示す一部破断側面図である。図5(B)は、記録ヘッドのインク吐出面を見た図である。
インクトレイ81は、それぞれの記録ヘッド36のインクノズル37から排出されるインクを受ける。インクトレイ81は、不図示の第1移動機構により水平方向(図1における左右方向)に移動可能に支持されている。前記第1移動機構は、例えば、モーターの回転軸に連結されたギアの回転運動を直線運動に変換するラック-ピニオン機構などを利用してインクトレイ81を水平方向に移動させる駆動機構88である。インクトレイ81は、通常時(印刷時)は、記録部3よりも搬送方向D1の下流側に退避した退避位置(図2の一点鎖線で示される位置を参照)に配置されている。
そして、インクトレイ81は、クリーニング動作を行うための指示が入力されると、昇降機構129により搬送ユニット125が前記メンテナンス位置に移動されることでラインヘッド31~34の対向箇所に生じたスペースに、前記第1移動機構によって移動される(図2の実線で示される位置を参照)。また、インクトレイ81は、鉛直方向(図1における上下方向)に昇降可能に支持されている。インクトレイ81は、ラインヘッド31~34の対向箇所に移動すると、昇降機構129により搬送ユニット125が前記メンテナンス位置から所定距離だけ上昇させられることで、上方向に移動する。
ワイパーユニット82は、それぞれのインク吐出面361に付着したインクなどを洗浄する複数のワイパー部材821を、複数のステイ822を介して一対のサイドフレーム823に支持した構成を有する。また、ワイパーユニット82は、幅方向D2に沿って移動可能である。特に、複数のワイパー部材821は、インク吐出面361に接触して洗浄液供給部83からワイピング方向D21に移動可能である(後述する図9参照)。
複数のワイパー部材821は、ワイピング方向D21に沿って移動することにより洗浄液供給部83から供給される洗浄液831(図8参照)によってインク吐出面361を洗浄する。
ここで、複数のワイパー部材821は、例えばエラストマーにより、厚みが1mm~2mmの板状に形成されており、弾性を有する。エラストマーとしては、例えば、ウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、スチレンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムが挙げられる。
複数のステイ822は、搬送方向D1に沿って延びると共に一対のサイドフレーム823に対して連結されている。本実施形態では、複数のステイ822の数は、3本である。各ステイ822には、4つのワイパー部材821が固定されている。即ち、複数のワイパー部材821の数は、記録ヘッド36の数に対応して12個である。
一対のサイドフレーム823は、第2移動機構(不図示)によって幅方向D2に沿って往復移動可能である。前記第2移動機構は、前記ラック-ピニオン機構などの駆動機構88である。例えば、ラックとして機能するサイドフレーム823に対し、ピニオンギア(不図示)を介して回転力を付与することで、サイドフレーム823が幅方向D2に沿って往復移動する。これにより、複数のワイパー部材821を含めたワイパーユニット82の全体が幅方向D2に沿って往復移動する。
記録ヘッド36は、図5(A)及び図5(B)に示すように、インク吐出面361よりもワイピング方向D21の上流側に洗浄液供給部83が設けられている。洗浄液供給部83は、ワイパー部材821によるインク吐出面のワイピングに用いる洗浄液831を供給する洗浄液供給口834を有する洗浄液供給面865を備え、インク吐出面361よりもワイピング方向D21の上流側に設けられている。
洗浄液供給部83は、洗浄液供給面865に連続してワイピング方向D21の上流側に位置すると共にワイピング方向D21の上流側に進むにつれて洗浄液供給面865に対して上方側に傾斜した傾斜面866を備えている。
記録部3は、図4(B)に示すように、12個の記録ヘッド36を備えるため、複数(12個)の洗浄液供給部83を有する。複数(12個)の洗浄液供給部83は、インク吐出面361を洗浄するための洗浄液831を供給する。洗浄液供給部83は、ワイパー部材821によるインク吐出面361の洗浄時に、収容空間832に収容された洗浄液831を収容空間832に連通する洗浄液ノズル833を介して供給する。
後述する図8(A)に示すように、洗浄液831は、インク吐出面361の洗浄時に洗浄液ノズル833に設けられた洗浄液供給口834から半球状に突出した状態で供給される。一方、洗浄液831は、インク吐出面361の洗浄時以外では、洗浄液ノズル833の内部に凹状メニスカスを形成する。ここで、凹状メニスカスは、洗浄液ノズル833の内径、収容空間832が洗浄液ノズル833の内部に作用させる負圧などを調整することで形成することができる。
また、記録ヘッド36は、図5(A)及び図5(B)に示すように、インク吐出面361よりもワイピング方向D21の下流側に飛び散り防止部材84が設けられている。飛び散り防止部材84は、ワイパー部材821によるインク吐出面361のワイピング後にワイパー部材821が接触する傾斜面841を有する。この傾斜面841は、インク吐出面361に連続してワイピング方向D21の下流側に位置し、ワイピング方向D21の下流側に進むにつれてインク吐出面361に対して上方側に傾斜している。このため、ワイパー部材821は、飛び散り防止部材84の傾斜面841に当接しながらワイピング方向D21に進むに連れて、当該ワイパー部材821の撓みが徐々に小さくなっていき、最終的にワイパー部材821が傾斜面841から緩やかに離れる。このため、飛び散り防止部材84を有さない構成に比べて、液の飛び散りが低減できる。また、飛び散り防止部材84は、例えばポリアセタール樹脂(POM)により形成されている。記録ヘッド36のインク吐出面361は、例えばフッ素系の撥水膜処理が施されている。このため、飛び散り防止部材84の撥水性は、インク吐出面361よりも低い。このため、洗浄液が飛び散り防止部材84に残ったとしても、その液滴高さが低いことから、用紙に液滴が接触することを低減できる。
洗浄液収容部85は、図5(A)に示すように、洗浄液831を収容する。ここで、洗浄液831としては、例えばインクから色材を除いたものを使用できる。即ち、洗浄液831としては、溶剤及び水を主成分とするものを使用できる。また、洗浄液831には、必要に応じて界面活性剤、防腐防かび剤などが添加される。
図6は、1つのラインヘッドに洗浄液を供給するための洗浄液流路を模式的に示した図である。図6では、ラインヘッド31についての洗浄液流路87を示す。洗浄液流路87は、洗浄液収容部85からの洗浄液831を、複数(例えば3個)の記録ヘッド36の洗浄液供給部83に案内するための配管である。洗浄液流路87は、ラインヘッド31~34毎に設けられている。すなわち、洗浄液流路87は、色毎に1経路としている。なお、他のラインヘッド32~34の洗浄液流路87は、ラインヘッド31の場合と同じである。
洗浄液流路87は、縦管状部材871と横管状部材872とを備える。縦管状部材871は、一端が洗浄液供給部83に接続され、かつ、当該一端から他端までが洗浄液供給部83の上方に延びる縦配管であり、図6では斜線を付している。横管状部材872は、一端が縦管状部材871の上端側に接続され、かつ、当該一端から他端までが水平方向に延びる横配管である。横管状部材872の容量は、例えば、洗浄液供給部83及び縦管状部材871の合計容量の5倍である。
また、横管状部材872は、洗浄液831を縦管状部材871の方向に案内する逆止弁873を備えている。これにより、洗浄液831が洗浄液収容部85の方に逆戻りすることを防止でき、洗浄液831の押し出し制御を安定して行うことができる。
洗浄液ポンプ130は、洗浄液流路87において洗浄液831を移動させて洗浄液供給口834から洗浄液831を押し出す動力を付与するものである。洗浄液ポンプ130の出力側には洗浄液流路87が接続され、洗浄液ポンプ130の入力側には、洗浄液収容部85に接続された入力側流路が接続されている。洗浄液ポンプ130は、洗浄液流路87毎に1つ、すなわち、色毎に1つとしている。なお、洗浄液ポンプ130は、特許請求の範囲における駆動部の一例となる。
また、図6に示すように、洗浄液ポンプ130から、同色の3個の記録ヘッド36の各洗浄液供給部83までの各流路長L1、L2、L3は同じとしている。これにより、縦管状部材871及び横管状部材872で構成される洗浄液流路87において、各洗浄液供給部83での押し出し量を同じとすることができる。
次に、第1実施形態に係るインクジェット記録装置1の制御ユニット10で行われる処理の一例について、図面を説明する。図7(A)は、第1実施形態に係るインクジェット記録装置で行われる処理の一例を示したフローチャートである。
図7(A)に示すように、制御部100は、メンテナンス開始か否かを判定する(S1)。具体的には、制御部100は、例えば、インクジェット記録装置1の電源オンから印刷開始前の予め定められた時間が経過した場合に、メンテナンス開始と判定し(S1でYES)、図2に示すように、搬送ユニット125をメンテナンス位置に移動させ、クリーニング部8を記録部3の直下位置に移動させる。なお、メンテナンス開始タイミングは、上記の場合に限らず、インクジェット記録装置1の電源オフの操作を受け付けたとき、インクジェット記録装置1の稼働時間が予め定められた時間を経過したとき、インクジェット記録装置1の印刷枚数が予め定められた累計枚数を超えたときなどの各種のタイミングであってもよい。
制御部100は、メンテナンス開始と判定した場合(S1でYES)、予め定められた実行条件(つまり、全系気泡抜き動作の制御を行うか否かを判定するための条件)の成立の有無を判定する(S2)。制御部100は、クリーニング動作の制御の前において予め定められた実行条件が成立しているときに限って、全系気泡抜き動作の制御を行う。前記予め定められた実行条件は、例えば、クリーニング動作の制御の実行回数が予め定められた複数回数(例えば15回)に到達することである。具体的には、制御部100は、クリーニング実行回数が予め定められた複数回数(例えば15回)に到達していない場合(S2でNO)、全系気泡抜き動作とは別の気泡抜き動作の制御(以下、適宜に「縦管気泡抜き制御」と呼ぶことがある)とを行う(S3)。
ここで、S3における気泡抜き動作の制御(縦管気泡抜き制御)について説明する。図8(A)~図8(E)は、クリーニング動作前に行われる気泡抜き動作を説明するための一部破断側面図である。
制御部100は、クリーニング部8が記録部3の直下位置に移動された状態(図8(A)参照)において、昇降機構129を駆動して搬送ユニット125を前記メンテナンス位置から所定距離だけ上昇させ、インクトレイ81をインク吐出面361の直下のパージ位置に配置する(図8(B)参照)。これにより、クリーニング部8の複数のワイパー部材821は、それぞれ対応する記録ヘッド36に隣接する洗浄液供給部83の傾斜面866の直下に位置する(図8(B)参照)。このとき、複数のワイパー部材821の先端は、洗浄液供給面865を含む平面よりも上方に位置させられる。ワイパー部材821の先端が傾斜面866の直下領域かつ洗浄液供給面865を含む平面の上方領域に配置される位置は、気泡抜き動作におけるワイパー部材821の移動開始位置である。
制御部100は、下記の(i)~(iii)を含む気泡抜き動作の制御(縦管気泡抜き制御)を行う(S3)。
制御部100は、(i)洗浄液供給部83及び縦管状部材871の合計容量の0.5倍以上で0.9倍以下の量の洗浄液831を洗浄液供給口834から押し出す(図8(B)参照)。上記合計容量の0.5倍以上で0.9倍以下の量の洗浄液831が好適であることは、後述する図10に示す実験データにより確認された。なお、インクトレイ81に排出された洗浄液831は、インクトレイ81の底部に設けられた排出口からインクチューブ(不図示)を通じて所定の廃棄インク貯留部に排出される。
続いて、制御部100は、前記第2移動機構(不図示)を駆動してワイパーユニット82をワイピング方向D21に沿って水平移動させることにより、(ii)ワイパー部材821を、当該洗浄液供給面865よりもワイピング方向D21の上流側の位置である移動開始位置からインク吐出面の手前位置までワイピング方向D21に移動させる(図8(C)及び図8(D)参照)。
続いて、制御部100は、昇降機構129を駆動して搬送ユニット125を所定距離だけ下降させて前記メンテナンス位置に戻すことにより、(iii)ワイパー部材821を図8(E)に示すように洗浄液供給面865から離間させる制御を行う。
一方、制御部100は、クリーニング実行回数が予め定められた複数回数(例えば15回)に到達している場合(S2でYES)、縦管気泡抜き制御ではなく、全系気泡抜き動作の制御を行う(S4)。なお、制御ユニット10が内蔵する不揮発性メモリーには、クリーニングが実行される毎に、クリーニング実行回数が記憶される。
制御部100は、クリーニング実行回数が予め定められた複数回数(例えば15回)に到達している場合(S2でYES)、全系気泡抜き動作の制御を行う(S4)。図7(B)は、全系気泡抜き処理の一例を示したフローチャートである。
制御部100は、全系気泡抜き時の洗浄液831の押し出し設定が、複数回押し出し設定であるか否かを判定する(S41)。具体的には、制御ユニット10が内蔵する不揮発性メモリーには、洗浄液831の押し出し設定が予め記憶されている。制御部100は、不揮発性メモリーに予め記憶されている、洗浄液831の押し出し設定が1回であれば、1回で押し出すと判定し、洗浄液831の押し出し設定が複数回であれば、複数回にわたって押し出すと判定する。
制御部100は、全系気泡抜き時の洗浄液831の押し出し設定が、複数回押し出し設定であると判定した場合(S41でYES)、複数回押し出しによる全系気泡抜き動作の制御を行う(S42)。
制御部100は、下記の(iA)、(ii)及び(iii)を含む全系気泡抜き動作の制御を行う(S42)。全系気泡抜き動作の制御は、前述の縦管気泡抜き制御の場合と比べて洗浄液831の押し出し量が多くなっている点が異なり、ワイパーユニット82の動作については図8(A)~図8(E)に示すように前述の縦管気泡抜き制御の場合と同じである。
制御部100は、(iA)洗浄液供給口834から洗浄液831を複数回にわたって押し出す場合には、横管状部材872の容量の0.5倍以上で1倍以下の量の洗浄液831を、当該複数回押し出しの合計量が横管状部材872の容量の1.5倍以上となるように複数回にわたって洗浄液供給口834から押し出す(図8(B)参照)。前記の押し出し内容が好適であることは、後述する図11に示す実験データにより確認された。
続いて、制御部100は、(ii)ワイパー部材821を、当該洗浄液供給面865よりもワイピング方向D21の上流側の位置である移動開始位置からインク吐出面の手前位置までワイピング方向D21に移動させる(図8(C)及び図8(D)参照)。続いて、制御部100は、(iii)ワイパー部材821を図8(E)に示すように洗浄液供給面865から離間させる制御を行う。なお、上記(ii)及び(iii)については、前述の縦管気泡抜き制御の場合の(ii)及び(iii)と同じであるため、ここでの詳細な説明を省略する。
一方、S41において、制御部100は、全系気泡抜き時の洗浄液831の押し出し設定が、1回押し出し設定であると判定した場合(S41でNO)、1回押し出しによる全系気泡抜き動作の制御を行う(S43)。前記の押し出し内容が好適であることは、後述する図11に示す実験データにより確認された。
制御部100は、下記の(iB)、(ii)及び(iii)を含む全系気泡抜き動作の制御を行う(S43)。制御部100は、(iB)洗浄液供給口834から洗浄液831を1回で押し出す場合には、横管状部材872の容量の1.5倍以上の量の洗浄液831を1回で洗浄液供給口834から押し出し、上記(ii)及び(iii)を行う(S43)。
図7(A)に示すように、制御部100は、縦管気泡抜き制御の処理(S3)、又は、全系気泡抜き制御の処理(S4)をした後、クリーニング動作の制御を行う(S5)。図9(A)~図9(E)は、クリーニング動作を説明するための一部破断側面図である。
図9(A)に示すように、制御部100は、パージインク45を記録ヘッド36に供給し、インクノズル37のインク吐出口371からパージインク45を排出させる。これにより、インクノズル37内の増粘インク、異物、気泡などがインクノズル37に供給されたパージインク45と共にインクトレイ81に向けて排出される。このようなパージ動作が行われることにより、インクノズル37の目詰まりが解消される。なお、インクトレイ81に排出されたインクなどは、インクトレイ81の底部に設けられた排出口からインクチューブ(不図示)を通じて所定の廃棄インク貯留部に排出される。
前記パージ動作が終了した場合、クリーニング部8は、クリーニング動作を行う。クリーニング動作は、インク吐出面361に付着したパージインク45などをワイパー部材821によって拭き取るための動作である。クリーニング動作では、制御部100は、予め定められた量(例えば1.5mL)の洗浄液831を押し出し、洗浄液831が洗浄液供給部83の洗浄液供給口834から半球状に突出されて供給される(図9(A)参照)。なお、前記予め定められた量(例えば1.5mL)は、各ラインヘッド31~34の合計の押し出し量、つまり、4色合計分の押し出し量である。また、洗浄液831の供給は、パージインク45の排出と同時に、又はパージインク45の排出前或いは排出後に行ってもよい。
図9(B)~図9(D)に示すように、制御部100は、洗浄液831の供給が終了した場合、前記第2移動機構(不図示)を駆動してワイパーユニット82をワイピング方向D21に沿って水平移動させる。具体的には、制御部100は、ワイパー部材821を前記移動開始位置に位置させ(図9(B)参照)、前記移動開始位置から、飛び散り防止部材84に接触する位置である終了位置までワイパー部材821を移動させる(図9(C)、図9(D)参照)。このとき、ワイパー部材821は、傾斜面866、洗浄液供給口834、及びインク吐出面361を経て、飛び散り防止部材84に接触して移動する。
また、図9(D)に示すように、複数のワイパー部材821は、インク吐出面361に接触して移動するときに、インク吐出面361に付着したパージインク45などを拭き取る。複数のワイパー部材821によって拭き取られた残存インクなどは、洗浄液831と共にワイパー部材821の表面を伝って下方に移動し、インクトレイ81に落下する。
続いて、制御部100は、昇降機構129を駆動して搬送ユニット125を所定距離だけ下降させて前記メンテナンス位置に戻すことにより、図9(E)に示すようにワイパー部材821を飛び散り防止部材84から離間させる。
その後、制御部100は、昇降機構129を駆動して搬送ユニット125を前記メンテナンス位置に降下させ(図2参照)、前記第1移動機構を駆動してクリーニング部8のインクトレイ81を前記退避位置に復帰させる(図1参照)。また、制御部100は、昇降機構129を駆動して搬送ユニット125を前記記録位置(図1に示される位置)に復帰させる。そして、制御部100は、図7(A)に示す処理を終了させる。
ここで、縦管気泡抜きの実験データについて、図10を用いて説明する。図10は、縦管気泡抜きの実験データの結果を示す図である。ラインヘッド31は、図6に示すように、洗浄液供給部83及び縦管状部材871を3組有する。つまり、1色では、洗浄液供給部83及び縦管状部材871が3組ある。このため、4色では、洗浄液供給部83及び縦管状部材871が12組(=3組×4色)ある。この洗浄液供給部83及び縦管状部材871の12組の合計容量は、例えば4mLである。
縦管状部材871と洗浄液供給口834の近傍に予め空気を導入させてから、洗浄液供給口834の気泡抜き動作、つまり、洗浄液831の押し出し量をそれぞれ、4.0mL、3.6mL、2.8mL、2.0mL、1.2mLとした気泡抜き動作を行ってから、クリーニング動作を行う実験を行った。各押し出し量での実験回数Nをそれぞれ10回行って、記録ヘッド36のクリーニング動作の終了後に、飛び散り防止部材84に泡がなければ○、泡があれば×として実験した。図10に示す実験データにより、上記合計容量の0.5倍以上で0.9倍以下(図10の倍率Aが0.5以上で0.9以下)の量の洗浄液831が好適であるが確認された。
次に、全系気泡抜きの実験データについて、図11を用いて説明する。図11は、全系気泡抜きの実験データの結果を示す図である。ラインヘッド31は、図6に示すように、横管状部材872を3本有する。つまり、1色では、横管状部材872が3本ある。このため、4色では、横管状部材872が12本(=3本×4色)ある。この横管状部材872の12本の合計容量は、例えば20mLである。
横管状部材872に予め空気を導入させてから、横管状部材872の気泡抜き動作、つまり、洗浄液831の押し出し量を30mLで1回の押し出し、20mLを1回又は2回の押し出し、14mLを1回~3回の押し出し、10mLを1回~3回の押し出し、6.0mLを1回~6回の押し出し、とした全系気泡抜き動作を行ってから、クリーニング動作を行う実験を行った。各押し出し量での実験回数Nをそれぞれ10回行って、記録ヘッド36のクリーニング動作の終了後に、飛び散り防止部材84に泡がなければ○、泡があれば×として実験した。
図11に示す実験データにより、洗浄液831の押し出し量を30mLで1回の押し出しが好適であるが確認された。すなわち、横管状部材872の容量(=20mL)の1.5倍(図11の倍率Bが1.5)以上の量(=30mL)の洗浄液831を1回で洗浄液供給口834から押し出すことが好適である。
また、図11に示す実験データにより、複数回の押し出しであれば、洗浄液831の押し出し量を20mLで2回の押し出し、洗浄液831の押し出し量を14mLで3回の押し出し、洗浄液831の押し出し量を10mLで3回の押し出しが好適であるが確認された。すなわち、横管状部材872の容量(=20mL)の0.5倍以上で1倍以下(図11の倍率Bが0.5以上で1.0以下)の量(=10mL~20mL)の洗浄液831を、当該複数回押し出しの合計量が横管状部材872の容量(=20mL)の1.5倍以上となるように複数回にわたって洗浄液供給口834から押し出すことが好適である。
上記第1実施形態によれば、洗浄液流路87は、一端が洗浄液供給部83に接続され、かつ、当該一端から他端までが当該洗浄液供給部83の上方に延びる縦管状部材871と、一端が縦管状部材871の上端側に接続され、かつ、当該一端から他端までが水平方向に延びる横管状部材872とを備える。洗浄液831の押し出しがない限り、縦管状部材871に存在する気泡を当該縦管状部材871に止めることができ、横管状部材872に存在する気泡を当該横管状部材872に止めることができ、縦管状部材871と横管状部材872とで気泡を切り分けることができる。また、縦管状部材871は、鉛直方向の流路を形成するものであり、縦管状部材871に存在する気泡を、概ね下端側と上端側とに二分して纏めることができ、下端側と上端側との間の流路部分には気泡が存在しない又はし難くすることができる。これにより、洗浄液831の供給量を抑制しつつ、気泡抜き制御を好適に実現することが可能な洗浄液流路を提供することができる。また、制御部100は、記録ヘッド36のインク吐出面361をワイピングするクリーニング動作の制御の前に、洗浄液流路87のうちの少なくとも一部の洗浄液831を洗浄液供給口834から押し出すことにより、洗浄液流路87の気泡抜き動作の制御を行う。すなわち、クリーニング動作の制御を実行する前に、気泡抜き動作の制御を行うので、単にクリーニング動作の制御を実行するだけの構成に比べて、用紙汚れによる画像不良の発生を低減することができる。
また、制御部100は、気泡抜き動作の制御(縦管気泡抜き制御)として、図10に示すように、(i)洗浄液供給部83及び縦管状部材871の合計容量の0.5倍以上で0.9倍以下の量の洗浄液831を洗浄液供給口834から押し出すことにより、洗浄液供給部83に存在する気泡及び縦管状部材871の下端側に存在する気泡を洗浄液831と共に押し出すことができ、洗浄液供給口834における洗浄液831には泡がない状態とすることができる。ところで、上記合計容量の1倍の量の洗浄液831を洗浄液供給口834から押し出してしまうと、縦管状部材871の上端側に存在する気泡が洗浄液供給口834に到達してしまい、この気泡が洗浄液供給口834で泡となる。これに対して、上記合計容量の0.9倍以下の量の洗浄液831に制限しているので、縦管状部材871の上端側に存在する気泡を洗浄液供給口834に到達させないようにすることができ、縦管状部材871の上端側に存在する気泡に起因する泡の発生を防止でき、洗浄液供給口834における洗浄液831には泡がない状態とすることができる。そして、(ii)ワイパー部材821をワイピング方向D21に移動させ、(iii)ワイパー部材821を洗浄液供給面865から離間させるので、洗浄液供給面865に泡が残ることがない。このため、気泡抜き動作の制御を好適に実行することができる。そして、上記の気泡抜き動作後にクリーニング動作の制御が行われる。すなわち、泡のない洗浄液831を用いてワイパー部材821によってインク吐出面361をワイピングするクリーニング動作の制御が行われるので、記録ヘッド36のインク吐出面361に泡が残ることがない。これにより、用紙汚れによる画像不良の発生を低減することができる。
また、制御部100は、クリーニング動作の制御として、記録ヘッド36のインク吐出口371からパージインク45を押し出すと共に、洗浄液供給口834から洗浄液831を押し出し、ワイパー部材821を、移動開始位置からインク吐出面361を経て飛び散り防止部材84に接触する位置である終了位置までワイピング方向D21に移動させ、ワイパー部材821を終了位置から離間させる制御を行う。このため、ワイパー部材821が飛び散り防止部材84から離間するので、インク吐出面361に液残りを生じさせない。また、飛び散り防止部材84により、ワイパー部材821が離れる際の液(インク又は洗浄液)の飛び散りを防止することができる。
また、洗浄液供給部83の傾斜面は、洗浄液供給面865に連続してワイピング方向D21の上流側に位置し、ワイピング方向D21の上流側に進むにつれて洗浄液供給面865に対して上方側に傾斜している。移動開始位置は、ワイパー部材821の先端が傾斜面の直下領域かつ洗浄液供給面865を含む平面の上方領域に予め定められた位置としている。これにより、ワイパー部材821を洗浄液供給面865及びインク吐出面361に好適に接触させることができる。
また、制御部100は、全系気泡抜き動作の制御として、(iA)洗浄液供給口834から洗浄液831を複数回にわたって押し出す場合には、横管状部材872の容量の0.5倍以上で1倍以下の量の洗浄液831を、当該複数回押し出しの合計量が横管状部材872の容量の1.5倍以上となるように複数回にわたって洗浄液供給口834から押し出すことにより、洗浄液供給部83に存在する気泡、縦管状部材871に存在する気泡及び横管状部材872に存在する気泡を洗浄液831と共に全て押し出すことができ、洗浄液供給口834における洗浄液831には泡がない状態とすることができる。また、制御部100は、全系気泡抜き動作の制御として、(iB)洗浄液供給口834から洗浄液831を1回で押し出す場合には、横管状部材872の容量の1.5倍以上の量の洗浄液831を1回で前記洗浄液供給口834から押し出すことによっても、洗浄液供給部83に存在する気泡、縦管状部材871に存在する気泡及び横管状部材872に存在する気泡を洗浄液831と共に全て押し出すことができ、洗浄液供給口834における洗浄液831には泡がない状態とすることができる。また、全系気泡抜き動作の制御は、クリーニング動作の制御の前に毎回実行されるのではなく、クリーニング動作の制御の前において予め定められた実行条件が成立しているときに限って実行されるので、洗浄液831の消費量を抑制することができる。そして、(ii)ワイパー部材821をワイピング方向D21に移動させ、(iii)ワイパー部材821を洗浄液供給面865から離間させるので、洗浄液供給面865に泡が残ることがない。このため、気泡抜き動作の制御を好適に実行することができる。そして、上記の気泡抜き動作後にクリーニング動作の制御が行われる。すなわち、泡のない洗浄液831を用いてワイパー部材821によってインク吐出面361をワイピングするクリーニング動作の制御が行われるので、記録ヘッド36のインク吐出面361に泡が残ることがない。これにより、用紙汚れによる画像不良の発生を低減することができる。
また、全系気泡抜き動作の制御は、クリーニング動作の制御の実行回数が予め定められた複数回数に到達するときに実行される。すなわち、全系気泡抜き動作の制御が複数回に1回実行される。これにより、洗浄液831の消費量を抑制することができる。
次に、第2実施形態に係るインクジェット記録装置1について説明する。図12は、第2実施形態に係るインクジェット記録装置の主要内部構成を概略的に示した機能ブロック図である。
前述の第1実施形態では、クリーニング動作の制御の実行回数が予め定められた複数回数(例えば15回)に到達すると、全系気泡抜き動作の制御を行っているが、記録ヘッド36の周囲温度がインクジェット記録装置1の電源ON時に印刷許可温度よりも低く、その後に当該記録ヘッド36の周囲温度が印刷許可温度に到達することが1回又は複数回あった場合に、全系気泡抜き動作の制御を行う点が、前述の第1実施形態とは異なる。
第2実施形態の画像記録部12は、図12に示すように、図4(B)に示すラインヘッド31~34毎に、記録ヘッド36へ至るインクの供給経路上でインクを加熱可能なヒーターH1と、ヒーターH1で加熱されたインクの温度を検出するインク温度センサーTS1と、記録ヘッド36の周囲温度を検出する周囲温度センサーTS2と、を更に備える。
制御部100は、インク温度センサーTS1が検出したインクの温度が印刷許可温度であるか否かを判定し、インクの温度が前記印刷許可温度であると判定した場合に記録部3による印刷を許可し、周囲温度センサーTS2が検出した記録ヘッド36の周囲温度が前記印刷許可温度であるか否かを判定する。
そして、制御部100は、前記予め定められた実行条件として、記録ヘッド36の周囲温度が当該インクジェット記録装置1の電源オンに印刷許可温度よりも低く、その後に記録ヘッド36の周囲温度が印刷許可温度に到達することが1回又は複数回あった場合に、全系気泡抜き動作の制御を行う。
ところで、記録ヘッドにヒーターを装備したインクジェット記録装置においては、記録ヘッドの周囲温度(言い換えれば装置内温度)が低温から高温まで変化し、当該低温時でも外気温よりも高くなる。液体の特性として、溶存する空気量は、低温の方が溶存濃度は高く、高温の方が溶存濃度は低い。このとき、洗浄液中に微小気泡などがあるとこれを起点として気泡が大きく成長する。再度、洗浄液流路内の液温が低くなると、洗浄液流路を透気した空気が洗浄液へ溶け込むため、温度起伏の繰り返しによって、洗浄液流路内が気泡に満たされてしまい、最悪の場合、押し出し動作を行っても、所定量の洗浄液が洗浄液供給口834から出ず、この状態が続くと、インク吐出面361に固着インクが残るなどのクリーニング不良が生じてしまう。なお、クリーニング不良になると、インク吐出口371が詰まり(例えばノズル詰まり)、飛翔不安定による白筋、キャップ状態でインクの乾燥が所定より速いために、間欠吐出不良の画像不具合が生じてしまう。
そこで、全系気泡抜き動作の制御は、記録ヘッド36の周囲温度が当該インクジェット記録装置1の電源オンに印刷許可温度よりも低く、その後に記録ヘッド36の周囲温度が印刷許可温度に到達することが1回又は複数回あった場合に実行される。例えば、温度起伏に起因して洗浄液流路87内に気泡が発生する場合には、上記したように単なる気泡抜き動作の制御では押し出しきれないが、第2実施形態によれば、温度起伏に起因して洗浄液流路87内に気泡が発生している蓋然性が高いときに、全系気泡抜き動作の制御を行うことができ、温度起伏に起因して洗浄液流路87内に発生した気泡を全て押し出すことができる。これにより、クリーニング不良を低減でき、間欠吐出不良の画像不具合の発生を防止できる。
また、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。また、上記実施形態では、本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態として複合機を用いて説明しているが、これは一例に過ぎず、例えば、プリンター機能を有した他のインクジェット記録装置でもよい。
また、上記実施形態では、図1乃至図12を用いて上記実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。