JP7265064B1 - 水溶液中の抽出剤の回収方法及び、金属水溶液からの金属の分離回収方法 - Google Patents

水溶液中の抽出剤の回収方法及び、金属水溶液からの金属の分離回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水溶液に溶解したネオデカン酸やホスホン酸エステル系抽出剤を回収することができる水溶液中の抽出剤の回収方法及び、金属水溶液からの金属の分離回収方法を提供する。【解決手段】ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液から、当該ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する方法であって、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収するときの平衡pHを5.5以下とする。【選択図】なし

Description

本発明は、水溶液中の抽出剤の回収方法及び、金属水溶液からの金属の分離回収方法に関する。
リチウムイオン電池はハイブリッド自動車用として急速に用途が広がっている。更にはユニットの高容量化により大型電池の生産量が急増することが予想される。また、リチウムイオン電池の需要拡大に伴い、リチウムイオン電池からの有価金属回収方法の確立が求められている。
リチウムイオン電池は、主に正極、負極、セパレーター、筐体からなっており、正極はアルミニウム箔等の集電体上にマンガン、コバルト、ニッケル及びリチウム等を含む正極活物質がフッ素系等のバインダーを介して接着した構造となっている。
リチウムイオン電池のリサイクル方法としては、使用済みリチウムイオン電池を焼却、破砕して選別した後の原料を用いて酸浸出を行った後、得られた浸出液から溶媒抽出によってそれぞれの金属を抽出分離する方法が提案されている。
これに関連して、特許文献1では、リチウム及びニッケルを含有する水溶液に対してネオデカン酸を抽出剤として使用することで、ニッケルを選択的に油相に抽出することが記載されている。
特開2011-74410号公報
抽出に使用した後の溶媒は、逆抽出及びスカベンジングを経て再利用することが可能である。そのため、溶媒抽出法による金属回収法は経済的な方法である。しかしながら、本発明者の研究によれば、溶媒に含ませることがあるネオデカン酸やホスホン酸エステル系抽出剤は水に難溶性であるにもかかわらず、これらの抽出剤を含む溶媒による溶媒抽出時においては、抽出剤が有機相(溶媒)から水相側に相当量溶解して逸損していることが分かった。このことは抽出剤の消費量を増加させ、処理コストを押し上げることに繋がる。
そこで、水溶液に溶解したネオデカン酸やホスホン酸エステル系抽出剤を回収することができる水溶液中の抽出剤の回収方法及び、金属水溶液からの金属の分離回収方法を提供する。
一の水溶液中の抽出剤の回収方法は、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液から、当該ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する方法であって、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収するときの平衡pHを5.5以下とし、前記平衡pHの下、比重差により前記水溶液から前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を分離させ、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収するというものである。
他の水溶液中の抽出剤の回収方法は、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液から、当該ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する方法であって、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収するときの平衡pHを5.5以下とし、前記水溶液を溶媒と接触させ、前記平衡pHの下、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を前記水溶液から前記溶媒に移行させた後、当該溶媒を分離させ、前記溶媒中に前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収するというものである。
一の金属水溶液からの金属の分離回収方法は、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む溶媒で金属水溶液を溶媒抽出し、前記金属水溶液に含まれる金属を抽出する溶媒抽出工程と、前記溶媒抽出工程で前記金属を抽出した後の抽出後液から、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する回収工程と、を含む金属水溶液からの金属の分離回収方法であって、前記回収工程で回収するときの平衡pHを5.5以下として、前記溶媒抽出工程で抽出するときの平衡pHよりも低くし、前記回収工程で、前記平衡pHの下、比重差により前記抽出後液から前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を分離させ、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収するというものである。
他の金属水溶液からの金属の分離回収方法は、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む溶媒で金属水溶液を溶媒抽出し、前記金属水溶液に含まれる金属を抽出する溶媒抽出工程と、前記溶媒抽出工程で前記金属を抽出した後の抽出後液から、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する回収工程と、を含む金属水溶液からの金属の分離回収方法であって、前記回収工程で回収するときの平衡pHを5.5以下として、前記溶媒抽出工程で抽出するときの平衡pHよりも低くし、前記回収工程で、前記抽出後液を溶媒と接触させ、前記平衡pHの下、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を前記抽出後液から前記溶媒に移行させた後、当該溶媒を分離させ、前記溶媒中に前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収するというものである。
上記の水溶液中の抽出剤の回収方法及び、金属水溶液からの金属の分離回収方法によれば、水溶液に溶解したネオデカン酸やホスホン酸エステル系抽出剤を回収することができる。
抽出剤としてネオデカン酸を用いてニッケル、コバルト及びマンガンを抽出する際の、平衡pHに対する各金属の抽出率の関係を表すグラフである。 発明例に係る金属の分離回収方法のフローチャートである。 金属の分離回収方法の他の例を示すフローチャートである。
本発明に係る金属水溶液から溶媒抽出法を用いて金属を分離回収する方法の一実施形態においては、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液から、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する方法であって、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収するときの平衡pHを、金属回収時の平衡pHよりも低くすることを含む。
上記の方法が案出された経緯は次のとおりである。
本発明者は、金属を抽出するために選択した平衡pHが所定の値以上であると、ネオデカン酸やホスホン酸エステル系抽出剤の水溶性が高まることを見出した。より具体的に説明すると、例えばニッケルの抽出効率を高めるために抽出時におけるニッケル水溶液の平衡pHを6~8とすると、当該pH領域においてはネオデカン酸の水溶性が高く、ネオデカン酸が水相へ移行してしまうことが分かった。
これに対し、本発明者はネオデカン酸やホスホン酸エステル系抽出剤が低pH領域では油溶性が高くなることを見出し、水相へ移行したネオデカン酸やホスホン酸エステル系抽出剤をpH調整によって再度有機相へ移行することで、抽出剤を効果的に回収できることを見出した。この知見の下、実施形態の方法では、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収するときの平衡pHを、金属回収時の平衡pHよりも低くする。
それにより、金属水溶液から溶媒抽出法を用いて金属を分離回収する方法において、溶媒抽出後の抽出後液に溶解したネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収し、経済的に溶媒抽出を実施し、安定した操業をすることが可能となる。この方法は、特にリチウムイオン電池の正極活物質を含む廃材のリサイクル技術に適用することができる。
以下に、上記の実施形態の詳細について具体例を示しながら説明する。
<溶媒抽出工程>
溶媒抽出工程においては、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む溶媒で金属水溶液を溶媒抽出し、対象の金属を抽出する。抽出とは、金属水溶液中に存在する対象の金属の少なくとも一部が有機相に移行していればよく、必ずしもその全てが有機相に移行していることまでは要しない。金属水溶液中の金属の種類には特に制限はないが、本発明は、対象の金属を溶媒抽出する際の平衡pHが所定の値以上(例えば平衡pHが6以上)となり、ネオデカン酸やホスホン酸エステル系抽出剤が水相側に移行しやすいケースに好適に使用できる。
例えば、ニッケルをネオデカン酸により溶媒抽出する場合、ニッケルの抽出効率を高めるために溶媒抽出時の平衡pHを6~8とする。このとき、ネオデカン酸が水相へ移行しやすい。ここで、本発明を適用することでネオデカン酸を回収し、再利用率を高めることができるようになる。
金属水溶液としては、特に制限はないが、リチウムイオン電池の正極活物質を含む廃材を酸浸出して得られた浸出後液に由来するものが挙げられる。具体例としては、正極活物質メーカーから出てくる廃正極活物質、電池メーカーから出てくる正極活物質を焼却・乾燥したもの、アルミニウム箔等の集電体にバインダーを介して正極活物質が接着された正極材、正極材から正極活物質を分離したもの、一般に電池滓や電池破砕粉と呼ばれる電池そのものを必要に応じて焼却・破砕・篩別などして正極活物質を分離したようなものを硫酸等で酸浸出して得られた浸出後液である。また、浸出後液から、マンガン、コバルト、銅、アルミニウム、鉄等の少なくとも一部を回収した後のものであってもよい。これらの金属は、中和処理、溶媒抽出、硫化処理など公知の処理を組み合わせることにより回収可能である。典型的には、金属水溶液の一例としてのニッケル水溶液は、溶媒抽出によりコバルトを抽出した後の抽出後液である。この場合、ニッケル水溶液はリチウムも含有することがある。その他の典型的な例としては、金属水溶液の他の例としてのコバルト水溶液は、溶媒抽出によりコバルトを抽出し、逆抽出した後の逆抽出後液である。この場合、コバルト水溶液はマグネシウムも含有することが多い。その他、マンガンを含むマンガン水溶液や、ニッケルおよびコバルトを含むニッケルコバルト水溶液も、金属水溶液の典型的な例となる。
ニッケル及びリチウムを含有する水溶液をそのまま溶媒抽出工程における金属水溶液として溶媒抽出の対象としてもよいが、これらを濃縮するために、いったん両者を溶媒抽出した後に、逆抽出する操作を行うことも可能である。このときの抽出剤としては、例えば2-エチルヘキシルホスホン酸2-エチルヘキシルやジ-2-エチルヘキシルリン酸が挙げられる。ニッケル及びリチウムを抽出したこれらの有機相に対して逆抽出を繰り返すことにより、逆抽出液中のニッケルとリチウムの濃度が上昇し、ニッケルとリチウムを濃縮することができる。この逆抽出時の平衡pHは2~4であることが好ましい。これよりpHが低いとニッケルとリチウムを逆抽出するのに無駄な酸となり、コストがかかる。また、これよりもpHが高いとニッケルとリチウムの水相への移行が不十分となり、逆抽出液のニッケルとリチウムの濃度が十分に上昇しない。上述の濃縮する工程を行った場合は、ニッケルとリチウムを濃縮した逆抽出液が、溶媒抽出工程における金属水溶液として溶媒抽出の対象となる。
溶媒抽出工程で用いる抽出剤は、ニッケル、コバルト及びマンガンのうち少なくとも1つを抽出する観点からネオデカン酸のカルボン酸系抽出剤とし、具体的にはシェル化学社製のVersatic Acid 10(VA-10ともいう。)が好ましい。または、ホスホン酸エステル系抽出剤としてもよく、具体的には2-エチルヘキシルホスホン酸2-エチルヘキシル(商品名:PC-88A、Ionquest801)としてもよい。抽出剤は、典型的には炭化水素系有機溶剤で希釈して使用することができる。有機溶剤としては芳香族系、パラフィン系、ナフテン系等が挙げられ、例えばシェルゾールD70(「シェルゾール」はシェル化学社の登録商標)を用いることができる。本発明の一実施形態においては、抽出剤中の有機酸濃度が10~30体積%となるように希釈することができ、粘度、分相性、抽出速度、抽出容量の理由により、20~25体積%となるように希釈することが好ましい。
抽出の手順は常法に従えばよい。一例を挙げれば、金属水溶液(水相)と溶媒(有機相)を接触させ、典型的にはミキサーでこれらを撹拌混合(例:200~500rpmで5~60分)し、ニッケルやコバルト、又はマンガンのイオンを抽出剤と反応させる。抽出は、水相の温度を常温(例:15~25℃)~50℃で実施し、抽出速度、分相性、有機溶剤の蒸発の理由により30~40℃で実施することが好ましい。その後、セトラーにより、混合した有機相と水相を比重差により分離する。溶媒抽出は繰り返し行ってもよく、例えば有機相と水相が向流接触するようにした多段方式とすることもできる。O/A比(水相に対する有機相の体積比)は、抽出したい金属の含有量によるが、ミキサーセトラーでの操業を考慮すると0.1~10とするのが一般的であり、1~5が好ましい。なお、後述の逆抽出、スカベンジング及びネオデカン酸を回収する工程においても、水相は上記と同様の温度とすることが好ましい。
上述のニッケル水溶液からネオデカン酸を含む溶媒でニッケルを抽出する時の平衡pHは、高すぎるとリチウムまで抽出されてしまう一方で、低すぎるとニッケルの抽出率が低下することから、6~8とするのが好ましく、6.5~7.5とするのが更により好ましい。また、前述のように多段方式とする場合は、水相が最後に有機相と接触するときの平衡pHを6~8とするのが好ましく、6.5~7.5とするのが更により好ましい。なお、ニッケル抽出時は抽出剤から水素イオンが放出されるので、溶液のpHが低下してくる。このためアルカリ剤を添加し、pHを保持しながらニッケルの抽出を行ってもよい。使用するアルカリ剤は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることができる。但し、当該pH領域においてはネオデカン酸の水溶性が高く、抽出時にネオデカン酸が有機相から水相へ移行しやすい。水相へ移行したネオデカン酸は後述する回収工程で回収する。
上述のコバルト水溶液からネオデカン酸を含む溶媒でコバルトを抽出する時の平衡pHは、高すぎるとマグネシウムまで抽出されてしまう一方で、低すぎるとコバルトの抽出率が低下することから、6~8とするのが好ましく、6~7とするのが更により好ましい。また、前述のように多段方式とする場合は、水相が最後に有機相と接触するときの平衡pHを6~8とするのが好ましく、6~7とするのが更により好ましい。当該pH領域においても抽出時にネオデカン酸が有機相から水相へ移行しやすいため、水相へ移行したネオデカン酸は後述する回収工程で回収する。
上述のマンガン水溶液からネオデカン酸を含む溶媒でマンガンを抽出する時の平衡pHは、6~8とするのが好ましく、より多くのマンガンを抽出しつつ、不純物の抽出を抑制する観点から6.5~8とするのが更により好ましい。また、前述のように多段方式とする場合は、水相が最後に有機相と接触するときの平衡pHを6~8とするのが好ましく、6.5~8とするのが更により好ましい。当該pH領域においても抽出時にネオデカン酸が有機相から水相へ移行しやすいため、水相へ移行したネオデカン酸は後述する回収工程で回収する。
上述のニッケルコバルト水溶液からホスホン酸エステル系抽出剤を含む溶媒でコバルトを抽出する際、例えば平衡pHは6程度とするが、操業によっては6~8程度にばらつく場合がある。当該pH領域においても抽出時にホスホン酸エステル系抽出剤が有機相から水相へ移行しやすいため、水相へ移行したホスホン酸エステル系抽出剤は後述する回収工程で回収する。
抽出後の、ニッケルなどの金属を含有する溶媒(有機相)に対しては、逆抽出を行うことができる。逆抽出は硫酸、塩酸等の酸性水溶液を使用して、ミキサー等で撹拌混合(例:200~500rpmで5~60分)することにより実施することができる。逆抽出液としては、製品品質、設備腐食防止、排水中の塩化物イオン濃度の理由により硫酸を使用することが好ましい。逆抽出時のpHは、1.0~4.0、さらには1.5~2.0とすることが好適である。O/A比については特に問わないが、ミキサーセトラーでの操業を考慮すると0.1~10とするのが一般的である。逆抽出することにより、金属の多くを水相側に移動させることができる。これによって、水相側に移動した金属を晶析や電解採取などによって更に処理することができる。例えば、逆抽出によって水相側に移行したニッケルやコバルトを、結晶化によりニッケル塩やコバルト塩を晶析させて回収することが可能である。また、電解採取して金属ニッケルや金属コバルトとして回収することも可能である。この場合は、ニッケルなどを回収した後の電解後液を再び逆抽出液として使用することが可能である。
逆抽出後の溶媒(有機相)に対しては、溶媒(有機相)中に残っている金属を除くことを目的としてスカベンジングを実施することができる。スカベンジングは、硫酸、塩酸等の酸性水溶液を使用して、ミキサー等で撹拌混合(例:200~500rpmで5~60分)することにより実施することができる。スカベンジング液としては、製品品質、設備腐食防止、排水中の塩化物イオン濃度の理由により硫酸を使用することが好ましい。スカベンジング時のpHは、-1.0~1.0程度に調整することが好ましい。O/A比については特に問わないが、ミキサーセトラーでの操業を考慮すると0.1~10とするのが一般的である。スカベンジングすることにより、ニッケルなどの金属の逆抽出後に溶媒(有機相)中に残っている金属の多くを水相側に移動させることができる。これによって、溶媒を再利用することができる。
ニッケルを分離した後のリチウムを含む水溶液(抽出後液)に対しては、アルカリ剤を添加した後、炭酸ガスを吹き込むか炭酸化剤を添加することで炭酸リチウムを沈殿させ回収することが可能である。アルカリ剤には水酸化ナトリウムまたはアンモニア水が使用できる。炭酸ガスの吹き込み又は炭酸化剤の投入時のpHを8~11にすることで効率よく炭酸リチウムの生成が進む。また、炭酸ガス吹き込み時には炭酸リチウムの生成とともにpHが低下するので、適宜アルカリを添加して、炭酸化のpHを8~11に保持することでリチウムの回収率を向上させることができる。
溶媒抽出工程で金属を抽出した後の抽出後液中のTOCは、200mg/L以上であることが好ましい。この条件下であれば、後述する回収工程により、溶媒側へネオデカン酸を移行させる効果が期待される。更に、抽出後液中のTOCは440mg/L以上であることがより好ましい。この条件下では、金属を抽出した後の抽出後液に多くのネオデカン酸が含まれることとなるため、後述する回収工程により、効率的に溶媒側へネオデカン酸を移行させることが可能となる。
溶媒抽出工程は複数の抽出工程を含み、溶媒抽出工程で使用する溶媒と金属水溶液は互いに逆の順序で複数の抽出工程を経るとともに、複数の抽出工程のうち、金属水溶液が最後に経る抽出工程における平衡pHを6~8とすることが好ましい。この条件下では、金属を抽出した後の抽出後液に多くのネオデカン酸やホスホン酸エステル系抽出剤が含まれることとなるため、後述する回収工程により、効率的に溶媒側へネオデカン酸やホスホン酸エステル系抽出剤を移行させることが可能となる。
上述したような溶媒抽出工程を行うと、その抽出後液として、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液が得られる。ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液は、次に述べる回収工程に供される。回収工程で溶媒と接触させる前の上記の水溶液は、pHが6~8となっていることがある。
<回収工程>
回収工程においては、溶媒抽出工程によって生じたネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液(抽出後液)から、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する。ネオデカン酸やホスホン酸エステル系抽出剤の水溶性はpHに依存するので、これらの抽出剤を回収する時の平衡pHを硫酸溶液等の酸を添加して調整することによって、上記の水溶液から抽出剤を回収することが可能となる。
回収工程は、溶媒抽出工程で抽出するときの平衡pHよりも低い平衡pHの条件下で実施するのが好ましい。溶媒抽出工程が複数の抽出工程を含む場合、回収工程は、溶媒抽出工程に含まれる複数の抽出工程のうち、金属水溶液が最後に経る抽出工程における平衡pHよりも低い平衡pHの条件下で実施するのが好ましい。一方で、回収工程における平衡pHは低すぎても効果が飽和するとともにpH調整に要する薬品コストが高くなることから、1.0以上とするのが好ましく、2.0以上とするのがより好ましい。また、抽出剤としてネオデカン酸を用いる場合は、抽出剤の有機相への移行率を高くすることが可能な5.5以下とすることが好ましい。抽出剤としてホスホン酸エステル系抽出剤を用いる場合は、同様の理由から5.5以下、さらに5.0以下とすることが好ましい。
回収工程では、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液を溶媒と接触させ、上記の平衡pHの下で、水溶液中のネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を溶媒に移行させた後、水相から溶媒を分離させることで、溶媒中にネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収することができる。図2に示す例では、回収工程に、スカベンジング後の溶媒及び、抽出1後の水相であるネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液を送り、そこで、それら溶媒と水溶液とを混合させる等して接触させ、上記の平衡pHに調整する。これにより、水溶液中のネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤が溶媒に移行する。そして、比重分離等により溶媒を水相から分離させた後、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む当該溶媒を抽出1で用いている。
あるいは、上記の平衡pHの下で、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液から、当該ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を分離させ、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収することもできる。より詳細には、図3に例示するように、抽出1後の水相であるネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液を回収工程に送り、回収工程で、硫酸等の添加により該水溶液を上記の平衡pHに調整する。ここでは、図2とは異なり、水溶液は溶媒と接触させずに単独で、回収工程に送られる。そして、比重分離等を行うと、上記の水溶液からネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤が分離する。これにより得られるネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤は有機相として、抽出1で使用することができる。
図3に示す例では、回収工程で得られる有機相は、水溶液から回収されたものだけであり、それほど量が多くならないか又はかなり微量である。これに関し、回収工程から抽出1に送られる有機相の量に応じて、抽出1に有機相を適宜追加できるように、必要であれば、スカベンジングと抽出1との間に有機相タンクを設け、スカベンジング後の有機相をその有機相タンクに溜めておくことができる。
図2に示すように、水溶液を溶媒と接触させてネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する場合、回収工程で使用する溶媒は、溶媒抽出工程で使用した溶媒に含まれるネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤と同一のネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含むことが好ましい。こうすることで、これらの抽出剤を再利用しやすくなる。
また、図2に示すように、水溶液を溶媒と接触させてネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する場合、回収工程で使用する溶媒は、好ましくは溶媒抽出工程後の有機相に由来する。そのような溶媒は、例えば溶媒抽出工程で使用された溶媒であって、その後、例えば逆抽出及び/又はスカベンジング、好ましくは両者を実施するなどして抽出金属が除去されたことで、再生された溶媒が該当する。これにより、溶媒再利用のための循環系が構築可能となる。
回収工程で回収されたネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含有する溶媒は、上述したように、溶媒抽出工程の溶媒として使用することが好ましい。これによって、水相に移行したネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収した後に同一プロセス内でスムーズに再利用可能となる。
図2に示すように、水溶液を溶媒と接触させてネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する場合、回収工程において、該溶媒を溶媒抽出工程後の抽出後液にミキサー等で撹拌しながら接触させることで有機相(溶媒)と水相(抽出後液)の接触効率が高まり、ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤の回収率が向上する。回収工程ではO/A比については特に問わないが、ミキサーセトラーでの操業を考慮すると0.1~10とするのが一般的である。
以下、本発明の実施例を説明するが、実施例は例示目的であって発明が限定されること を意図しない。
<予備試験1:ネオデカン酸によるニッケル、コバルト及びマンガンの抽出率測定>
水溶液中のニッケル、コバルト及びマンガンを溶媒抽出するのに適した平衡pHを把握するため、金属水溶液に対してネオデカン酸で溶媒抽出を行い、平衡pHを変化させたときの各金属の抽出率を測定した。
水相として、ニッケルを31g/L、コバルトを10g/L、マンガンを10g/Lの濃度で含む金属水溶液を用意した。有機相として、VA-10を25体積%、シェルゾールD70を75体積%含有する溶媒を使用した。これらをO/A比=1になるように混合し、適宜pHを調整しながら撹拌を行った。その後、静置により水相と有機相を分離し、溶媒抽出前後の金属量から抽出率を求めた。
結果を図1に示す。図1は、ニッケル、コバルト及びマンガンを抽出する際の、平衡pHに対する各金属の抽出率の関係を表すグラフである。なお、溶媒への各金属の抽出率は、溶媒抽出を行う前における金属水溶液中の各イオン濃度と液量から算出した量に対して、当該溶媒に対してその後に逆抽出を行って得られた逆抽出後液の各イオン濃度と液量から算出した量の割合から算出したものである。
図1より、ニッケル、コバルト共に平衡pH=6で50%前後の抽出率が得られていることが分かる。マンガンについても平衡pH=6で抽出率が上昇し始めており、pH=6.5で50%以上の抽出率が得られていることが分かる。すなわち、ニッケル、コバルト及びマンガンの少なくとも1つをネオデカン酸で溶媒抽出するときは、平衡pHを6以上とすることが好ましい点を確認することができた。
<予備試験2:TOCの測定による水溶液中のネオデカン酸の溶解量の把握>
水中に存在する有機物の総量を炭素の量で表す指標として、TOC(全有機炭素)が知られている。ここで、水溶液中のネオデカン酸の溶解量をTOCで把握できるかを検証するため、ネオデカン酸を含まない水溶液(ネオデカン酸を含まない溶媒と純水とを混合撹拌した後に当該溶媒から分離させた水溶液)のTOCと、ネオデカン酸を含む水溶液のTOCの値を比較した。
ネオデカン酸を含まない水溶液として、以下の条件で作成したものを用意した。水相として純水、有機相としてシェルゾールD70を用意し、これらをO/A比=1になるように混合し、撹拌を行った。その後、静置により水相と有機相を分離した。分離した水相を、ネオデカン酸を含まない水溶液とした。
ネオデカン酸を含む水溶液は、次のようにして用意した。リチウムイオン電池の正極活物質を含む廃材を硫酸浸出して得られた浸出後液から、銅、鉄、アルミニウム、マンガン及びコバルトを溶媒抽出、中和処理、及び硫化処理などを経て分離した。最後にネオデカン酸としてVA-10を用いた溶媒抽出によりニッケルを分離して得られた抽出後液を、ネオデカン酸を含む水溶液とした。
最後に、ネオデカン酸を含まない水溶液のTOCと、ネオデカン酸を含む水溶液のTOCを測定した。TOCは全有機体炭素計(島津製作所製)により測定した。
結果を表1に示す。ネオデカン酸を含まない水溶液は、TOCが66mg/Lであり、所定量のシェルゾールD70が含まれていることを確認できた。一方、ネオデカン酸を含む水溶液中のTOCは66mg/Lよりも大幅に高く、670mg/Lであった。このことから、水溶液中にネオデカン酸が含まれる場合はTOCが高くなること、すなわち、TOCの測定によって間接的に水溶液中のネオデカン酸の溶解量を把握できることを確認できた。
Figure 0007265064000001
<予備試験3:溶媒抽出時における各種抽出剤の水相への溶解度測定>
溶媒抽出時において、抽出剤の違いによる水相中への溶解度の違いを把握するため、金属水溶液に対して各種抽出剤で溶媒抽出を行ったときの水相のTOCを測定し、抽出剤濃度を計算した。
水相として、ニッケルを10g/Lの濃度で含む金属水溶液を用意した。有機相として、ジ-2-エチルヘキシルリン酸(商品名:D2EHPA)を25体積%、シェルゾールD70を75体積%含有する溶媒、PC-88Aを25体積%、シェルゾールD70を75体積%含有する溶媒、VA-10を25体積%、シェルゾールD70を75体積%含有する溶媒の3種類をそれぞれ使用した。水相と、上記有機相のうちの1種類とをO/A比=1になるように混合し、平衡pH=7に調整しながら振とう機で20分撹拌を行った。その後、静置により水相と有機相を分離した。最後に、分離後の水相のTOCを測定した。予備試験2と同様、TOCは全有機体炭素計(島津製作所製)により測定した。そして、TOC、各抽出剤の分子量および比重をもとに、水相に溶解した抽出剤濃度を計算により求めた。なお、予備試験2でシェルゾールD70が水相に移行することによってTOCが上昇する現象は確認されているものの、抽出剤が水相に移行することによるTOCの上昇量と比べて影響は軽微であったため、ここではシェルゾールD70の移行によるTOCの上昇は考慮せずに計算した。このような試験を、3種類の有機相のそれぞれについて行った。
結果を表2に示す。D2EHPAを抽出剤としたときの抽出剤の水相への溶解度と比べ、PC-88AやVA-10を抽出剤としたときの溶解度の方が高いことが確認された。
このことから、抽出剤としてネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を用いると水相側に抽出剤が相当量溶解して逸損する可能性がある点を確認できた。
Figure 0007265064000002
<例1:ネオデカン酸の水溶性のpH依存性の検証>
次に、ネオデカン酸の水溶性がpHに依存するかを検証するため、ネオデカン酸を含む水溶液のpHを変化させたときのTOCを測定した。
ネオデカン酸を含む水溶液として、リチウムイオン電池の正極活物質を含む廃材を硫酸浸出して得られた浸出後液から、銅、鉄、アルミニウム、マンガン及びコバルトを溶媒抽出、中和処理、及び硫化処理などを経て分離し、最後にネオデカン酸としてVA-10を用いた溶媒抽出によりニッケルを分離した後の抽出後液を用意した。
上述の抽出後液に400g/Lの硫酸を添加し、pHを7.2~0.6まで変化させたときの抽出後液中のTOCを測定した。予備試験と同様、TOCは全有機体炭素計(島津製作所製)により測定した。
結果を表3に示す。pH5.5以下になると急激にTOCが減少していることが新たに分かった。すなわち、抽出後液中に溶けていたVA-10が分離されていることが分かる。また、pH5.5以下の条件下ではいずれの条件でもTOCが200mg/L未満となっていることから、少なくともネオデカン酸を含む水溶液のTOCが200mg/L以上であるとき、pHを5.5以下とすることで水溶液中に溶けているネオデカン酸の少なくとも一部を分離することができることが分かる。このとき、抽出後液の上に油膜状の層が形成されていることも分かった。油膜状の層が形成される理由は必ずしも明らかではないが、pHの低下に伴い抽出後液中に溶けていたVA-10の溶解度が低下し、抽出後液との比重差によってVA-10が抽出後液の上に分離されたものと考えられる。
Figure 0007265064000003
<例2:溶媒との接触によるネオデカン酸の回収可能性の検証>
次に、ネオデカン酸を含む水溶液を溶媒と接触させることによってネオデカン酸を回収できるかを検証するため、ネオデカン酸を含む水溶液を溶媒と接触させ、pHおよびO/A比を変化させたときのTOCを測定した。
ネオデカン酸を含む水溶液として、リチウムイオン電池の正極活物質を含む廃材を硫酸浸出して得られた浸出後液から、銅、鉄、アルミニウム、マンガン及びコバルトを溶媒抽出、中和処理、及び硫化処理などを経て分離し、最後にネオデカン酸としてVA-10を用いた溶媒抽出によりニッケルを分離した後の抽出後液を用意した。また、溶媒として、シェルゾールD70を用意した。
水溶液(水相)と溶媒(有機相)を接触させ、所定のO/A比になるように撹拌した。その後、静置により水相と有機相を分離した。pHを調整する際は、2g/Lの硫酸を適宜添加した。このようにpH及びO/A比を変化させたときの抽出後液中のTOCを測定した。予備試験と同様、TOCは全有機体炭素計(島津製作所製)により測定した。
結果を表4に示す。溶媒抽出時の平衡pHを5.0(pH5.5以下)にすると急激にTOCが減少していることが確認できた。すなわち、抽出後液中に溶けていたVA-10が有機相側に移行していることが分かる。なお、pHを5.0に固定してO/A比を変化させたが、O/A比を変化させたいずれの条件でもTOCが減少していることを確認できた。
Figure 0007265064000004
<例3:ネオデカン酸によるニッケル回収プロセスヘの適用効果の検証>
次に、ニッケル回収プロセスにネオデカン酸回収工程を導入した際の適用効果を検証すべく、後述のニッケル抽出後液と、ニッケルを回収した有機相を接触させることでネオデカン酸回収工程を行い、ネオデカン酸回収工程の前後におけるニッケル抽出後液のTOCを測定した。
当該試験のフローチャートを図2に示す。ここでは、リチウムイオン電池の正極活物質を含む廃材を硫酸浸出して得られた浸出後液から、銅、鉄、アルミニウム及びマンガンを溶媒抽出、中和処理、及び硫化処理などを経て分離し、最後にコバルトを溶媒抽出により分離した後の金属水溶液(コバルト抽出後液)から、図2に示すように、ニッケルを溶媒抽出した。
当該試験によるニッケル回収プロセスについて順を追って説明する。まず、処理対象の金属水溶液であるコバルト抽出後液から、溶媒抽出工程によってニッケルを抽出した。具体的には、コバルト抽出後液は、抽出1及び抽出2の工程において、有機相と水相が向流接触するようにした二段の溶媒抽出を受ける。抽出1の工程では、O/A比=1、平衡pH=6.9~7.0とした。抽出2の工程では、O/A比=1、平衡pH=6.6~6.8とした。各抽出段階における平衡pHは、必要に応じて水酸化ナトリウム溶液を添加することにより調整した。有機相としては、抽出1及び抽出2共に、VA-10を25体積%、シェルゾールD70を75体積%含有するものを使用した。
二段階の溶媒抽出後、ニッケルを抽出した有機相に対して逆抽出及びスカベンジングを順に行った。逆抽出では、硫酸酸性のニッケル電解後液を使用し、O/A比=1、pH=1.5~2.0の条件とした。スカベンジングでは、200g/Lの硫酸を使用し、O/A比=1の条件とした。
スカベンジング後の有機相を溶媒として使用し、抽出1及び抽出2の工程を経た水相(ニッケル抽出後液)から、図示しないミキサーセトラーでネオデカン酸を連続的に回収した。この回収の条件は、O/A比=1とした。なお、硫酸等の添加によるpH調整は実施しなかった。
ネオデカン酸を回収する前のニッケル抽出後液と、ネオデカン酸を回収した後のニッケル抽出後液中のTOCを測定した。予備試験と同様、TOCは全有機体炭素計(島津製作所製)により測定した。
結果を表5に示す。抽出1及び抽出2の工程を経た水相(ニッケル抽出後液)のpHは6.7であり、TOCが440mg/Lであったが、ネオデカン酸回収工程を経た後のpHは4.1(pH5.5以下)に低下し、TOCは87mg/Lに減少した。すなわち、VA-10が有機相に移行していることが理解できる。
ネオデカン酸を回収した後の有機相は、適宜成分調整した上で抽出1の抽出剤として使用可能である。このように、本発明によれば抽出剤を回収しながら、回収した抽出剤を循環使用することが可能となる。
Figure 0007265064000005
<例4:ホスホン酸エステル系抽出剤によるコバルト回収プロセスヘの適用効果の検証>
最後に、ホスホン酸エステル系抽出剤を用いた溶媒抽出によって金属水溶液からコバルトを抽出する際に、平衡pHの変化による抽出剤の水相中への溶解度に対する影響を検証すべく、金属水溶液に対して溶媒抽出を行ったときの水相の平衡pHを調整し、TOCを測定した。
水相として、コバルトを10g/Lの濃度で含む金属水溶液を用意した。有機相として、PC-88Aを25体積%、シェルゾールD70を75体積%含有する溶媒を使用した。
これらをO/A比=1になるように混合し、撹拌を行うことで溶媒抽出し、コバルトの抽出を行った。溶媒抽出時の平衡pHは適宜調整した。その後、静置により水相と有機相を分離し、分離した水相(コバルト抽出後液)のTOCを測定した。予備試験と同様、TOCは全有機体炭素計(島津製作所製)により測定した。
結果を表6に示す。溶媒抽出時の平衡pHを5.0以下にすることで、TOCが低い値を示すことを確認できた。すなわち、コバルト抽出後液に対するPC-88Aの溶解が抑制されていることが分かる。
このことから、水溶液に多くのPC-88Aが溶解した場合であっても、水溶液のpHを少なくとも5.0以下に調整して溶媒と接触させることでホスホン酸エステル系抽出剤を回収することが可能であることがわかる。
Figure 0007265064000006

Claims (15)

  1. ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液から、当該ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する方法であって、
    前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収するときの平衡pHを5.5以下とし、
    前記平衡pHの下、比重差により前記水溶液から前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を分離させ、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する水溶液中の抽出剤の回収方法。
  2. ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む水溶液から、当該ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する方法であって、
    前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収するときの平衡pHを5.5以下とし、
    前記水溶液を溶媒と接触させ、前記平衡pHの下、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を前記水溶液から前記溶媒に移行させた後、当該溶媒を分離させ、前記溶媒中に前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する水溶液中の抽出剤の回収方法。
  3. 前記ホスホン酸エステル系抽出剤を回収するときの平衡pHを5.0以下とする請求項1又は2に記載の水溶液中の抽出剤の回収方法。
  4. 前記水溶液中のTOCが200mg/L以上である請求項1又は2に記載の水溶液中の抽出剤の回収方法。
  5. 前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する前における前記水溶液のpHが6~8である請求項1又は2に記載の水溶液中の抽出剤の回収方法。
  6. ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む溶媒で金属水溶液を溶媒抽出し、前記金属水溶液に含まれる金属を抽出する溶媒抽出工程と、
    前記溶媒抽出工程で前記金属を抽出した後の抽出後液から、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する回収工程と、
    を含む金属水溶液からの金属の分離回収方法であって、
    前記回収工程で回収するときの平衡pHを5.5以下として、前記溶媒抽出工程で抽出するときの平衡pHよりも低くし、
    前記回収工程で、前記平衡pHの下、比重差により前記抽出後液から前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を分離させ、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する金属水溶液からの金属の分離回収方法。
  7. ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む溶媒で金属水溶液を溶媒抽出し、前記金属水溶液に含まれる金属を抽出する溶媒抽出工程と、
    前記溶媒抽出工程で前記金属を抽出した後の抽出後液から、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する回収工程と、
    を含む金属水溶液からの金属の分離回収方法であって、
    前記回収工程で回収するときの平衡pHを5.5以下として、前記溶媒抽出工程で抽出するときの平衡pHよりも低くし、
    前記回収工程で、前記抽出後液を溶媒と接触させ、前記平衡pHの下、前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を前記抽出後液から前記溶媒に移行させた後、当該溶媒を分離させ、前記溶媒中に前記ネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を回収する金属水溶液からの金属の分離回収方法。
  8. 前記回収工程で用いられる溶媒が、前記溶媒抽出工程で用いられる溶媒に含まれるネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤と同一のネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む請求項に記載の金属水溶液からの金属の分離回収方法。
  9. 前記溶媒抽出工程で用いられる溶媒はネオデカン酸を含請求項6又は7に記載の金属水溶液からの金属の分離回収方法。
  10. 前記溶媒抽出工程で用いられる溶媒はホスホン酸エステル系抽出剤を含み、
    前記回収工程で回収するときの平衡pHを5.0以下とする請求項6又は7に記載の金属水溶液からの金属の分離回収方法。
  11. 前記溶媒抽出工程で前記金属を抽出した後の抽出後液中のTOCが200mg/L以上である請求項6又は7に記載の金属水溶液からの金属の分離回収方法。
  12. 前記溶媒抽出工程で前記金属を抽出した後の抽出後液のpHが6~8である請求項6又は7に記載の金属水溶液からの金属の分離回収方法。
  13. 前記溶媒抽出工程は複数の抽出工程を含み、
    前記溶媒抽出工程で使用する溶媒と前記金属水溶液は互いに逆の順序で前記複数の抽出工程を経るとともに、
    前記複数の抽出工程のうち、前記金属水溶液が最後に経る抽出工程における平衡pHを6~8とする請求項12に記載の金属水溶液からの金属の分離回収方法。
  14. 前記回収工程で使用する溶媒は、前記溶媒抽出工程を経た後の有機相に由来する請求項に記載の金属水溶液からの金属の分離回収方法。
  15. 前記回収工程で回収されたネオデカン酸またはホスホン酸エステル系抽出剤を含む溶媒を、前記溶媒抽出工程の溶媒として使用する請求項6又は7に記載の金属水溶液からの金属の分離回収方法。
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