JP7264684B2 - 建物 - Google Patents

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本発明は柱と梁の架構構造と、これを有する建物に関する。
従来から中空構造の柱や梁が知られている。特許文献1,2には中空構造の柱が、特許文献3には中空構造の柱と梁が開示されている。中空構造の柱や梁を用いることにより建物の軽量化や物量低減が可能となる。柱や梁がプレキャスト構造の場合、揚重機の小型化や施工性の向上が可能となる。
特開2004-332236号公報 特開2018-150770号公報 特開平6-101268号公報
通常、柱や梁の端部、すなわち柱と梁の接合部では自重や地震力による大きな応力が掛かるため、中空構造の柱や梁では断面が不足し、必要な剛性や強度が確保できない可能性がある。
本発明は、柱と梁の接合部の近傍で柱や梁の剛性及び強度を確保することが容易な柱と梁の架構構造を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、建物は、柱と、梁と、柱と梁の接合部と、を有し、柱と梁の少なくともいずれかは、接合部の近傍に、接合部に向かって断面積の減少する欠損部を有する。本発明の他の態様によれば、建物は、柱と、梁と、柱と梁の接合部と、を有し、柱と梁の少なくともいずれかは、接合部から離れた欠損部を有する。いずれの態様でも、欠損部は少なくとも梁に設けられ、梁に設けられた欠損部のみが配管またはダクトを収容し、配管またはダクトは、欠損部の内部を、建物の外壁側の端部の近傍まで延びている。
本発明の一態様によれば、柱と梁の少なくともいずれかの、柱と梁の接合部の近傍に、接合部に向かって断面積の減少する欠損部が設けられる。本発明の他の態様によれば、柱と梁の少なくともいずれかに、接合部から離れた欠損部が設けられる。従って、本発明によれば、柱と梁の接合部の近傍で柱や梁の剛性及び強度を確保することが容易な柱と梁の架構構造を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る架構構造の側面図である。 図1に示す架構構造の分割パターンを説明する模式図である。 図1のA部詳細図である。 中空部の形状を示す斜視図である。 中空部の様々な形状を示す、梁の中心線と直交する断面図である。 中空部の様々な形状を示す、梁の中心線と平行な断面図である。 中空部の様々な形状を示す、梁の中心線と直交する断面図である。 建物内での配管、ダクト等の引き回しを説明する模式図である。
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面及び以下の説明において、X方向は梁の長手方向、Y方向は梁の幅方向であり、X方向とY方向は水平面内で互いに直交している。Z方向はX方向及びY方向と直交し、柱の延びる鉛直方向である。以下に述べる実施形態はPCa(プレキャスト)構造の建物ないし柱と梁の架構構造を対象とするが、本発明は、コンクリート及び鉄筋を現場施工する鉄筋コンクリート構造の建物ないし柱と梁の架構構造にも適用することができる。
図1には、建物1は柱3と梁4の架構構造2を有している。梁4の上には図示しない床スラブが設けられている。柱3と梁4はいずれも延在する方向に一定の断面形状を有している。柱3と梁4は概ね直方体形状の接合部5で接合されている。接合部5は鉄筋が密集する領域であるため、後述の欠損部6は設けられておらず、無垢のコンクリートで形成されている。PCa構造では、接合部5は柱3または梁4の一部として設けることができる。図2(a)は梁4と接合部5を一体化したPCa部材にPCa構造の柱3を接合する構成を、図2(b)は柱3と接合部5を一体化したPCa部材にPCa構造の梁4を接合する構成を示している。図示は省略するが、梁4と柱3を別々のPCa部材として製作し、接合部5を現場打ちコンクリートで施工してもよい。以下、梁4を対象に説明するが、本発明は柱3についても同様に適用することができる。
図3は図1のA部詳細図を示している。梁4は接合部5の近傍に欠損部6を有している。欠損部6は梁4の内部の中空部6、すなわち、梁4の内部のコンクリートの打設されていない閉じた内部空間である。図4は中空部6の形状を示す斜視図、図5は図3のA-A線に沿った、すなわち梁4の中心線C4と直交する断面図を示している。中空部6はコンクリートが打設されていない限り様々な構成が可能である。図5(a)に示す例では中空部6には何も存在しておらず、中空部6とその周囲のコンクリート部7との間は薄板8で仕切られている。薄板8は特に限定されないが、コンクリートを保持する機能が必要とされることから、金属、木材、樹脂などの板で形成することが好ましい。金属を用いた場合、薄板8を補強部材としても利用することができる。図5(b)に示す例では中空部6にコンクリートよりも軽量な充填部材9が充填されている。充填部材9としては例えば発泡スチロールが挙げられる。充填部材9は中実構造とするのが好ましい。中実構造の充填部材9は、発泡スチロールのような軽量部材であっても圧縮力に対して大きく変形することがないため、コンクリートを保持する部材として用いることができる。充填部材9はコンクリートの打設後は埋め殺しにされる。図5(c)に示す例では中空部6に配管12やダクト13が収容されている。本例を用いた建物1の構造については後述する。梁4の内部には主筋10とせん断補強筋11が設けられているが、中空部6は元々鉄筋のないエリアであるため、鉄筋の配置への影響はほとんど生じない。なお、鉄筋が不足する場合は高強度鉄筋を用いることもできる。
図3,4を参照すると、中空部6は接合部5に向かって断面積が減少している。より詳細には、中空部6は、梁4の長手方向Xに沿って延びる断面積一定部61と、断面積一定部61に接続された断面積漸減部62と、を有している。断面積一定部61は、梁4の長手方向Xに沿って断面積(梁4の長手方向Xと直交する断面の面積)が一定の部分である。断面積漸減部62は、断面積(梁4の長手方向Xと直交する断面の面積)が接合部5に向かって漸減する部分である。漸減とは単調に減少することだけでなく、ステップ状に減少することを含む。断面積漸減部62は断面積一定部61と接合部5との間に位置している。断面積一定部61と断面積漸減部62は梁4の中心線C4に対して点対称の形状を有している。断面積一定部61は概ね直方形形状である。断面積漸減部62は概ね四角錐形状であり、四角錐形状の頂部が接合部5に対向している。このため、本実施形態では接合部5の近傍でコンクリート部7の断面積を確保することが容易である。図示は省略するが、断面積一定部61を円筒形状として、断面積漸減部62を円錐形状としてもよい。接合部5の近傍では一般に大きな応力が掛かるため、主に圧縮応力を負担するコンクリート部7の断面積が不足することがある。その場合、従来は柱3や梁4の断面積を長手方向Xに一律に増加させるか、接合部5の近傍にハンチを設けていた。しかし、接合部5から少しは離れたところでコンクリート部7の断面積が不足する場合、ハンチで対処するのは困難であり、結局梁4や柱3の断面積を長手方向Xに一律に増加させることとなり、建物設計への影響が大きい。本実施形態では、大きな圧縮応力の発生しない部位でコンクリート部7を中空部6に置換しているため、柱3や梁4の断面への影響が抑えられる。なお、不足する断面積を補うため、コンクリートとして高強度コンクリートを用いることも可能である。
中空部6は接合部5の近傍に設けられている。本実施形態では中空部6は接合部5から離れている。中空部6と接合部5との間のコンクリート部7は無垢のコンクリートからなる。中空部6と接合部5との間のギャップGの大きさ、すなわち「接合部5の近傍」の範囲は、コンクリート部7の必要断面積に応じて適宜設定することができる。梁せいDと同程度以上のギャップGを確保すれば、コンクリート部7の必要断面積を確保することは容易である。一方、場合によっては中空部6の端部(本実施形態では断面積漸減部62の四角錐形状の頂部)が接合部5に接していてもよい(G=0でもよい)。これより、ギャップGは概ね0~1.5D程度の範囲で設定することが好ましい。なお、柱3に設けられる中空部6については、柱3が正方形断面の場合、Dは柱3の延在方向Zと直交する断面における一辺の長さと考えればよく、柱3が長方形断面の場合、Dは柱3の延在方向Zと直交する断面における梁4と平行なX方向の長さと考えればよい。
中空部6の形状は上述の四角錐形状に限定されない。例えば、図6(a)に示すように断面積漸減部62は概ね四角錐台形状を有していてもよい。この場合、四角錐台形状の2つの平行な面62A,62Bのうち面積の小さい面62Aが接合部5に対向している。本実施形態では中空部6を形成する薄板8または充填部材9の製作性が向上する。図示は省略するが、断面積一定部61を円筒形状または楕円筒形状として、断面積漸減部62を円錐台形状または楕円錐台形状としてもよい。あるいは、図6(b)に示すように、断面積漸減部62は概ね半球形状を有していてもよい。あるいは、図6(c)に示すように、断面積漸減部62は概ね半長球形状を有していてもよい。図6(b)、6(c)の場合、断面積一定部61は円形断面とすることが好ましい。半球形状や半長球形状の先端部を、四角錐台形状や円錐台形状のように平面状にカットしてもよい。
図6(d)に示すように、中空部6は断面積一定部61だけで構成されていてもよい。この場合、中空部6を形成する薄板8または充填部材9の製作性がさらに向上する。接合部5の近傍でコンクリート量が不足する可能性があるため、中空部6は接合部5から離れた位置に設けられている。ギャップGは概ね0.5~1.5D程度の範囲で設定することが好ましい。本実施形態では、断面積一定部61の断面形状として、矩形、円形、楕円形などの様々な形状を容易に採用することができる。
欠損部6は梁4の外面に露出していてもよい。図7はこのような梁4の断面形状を有している。図7(a)を参照すると、欠損部6は梁4の側面に開口している。図7(b)を参照すると、欠損部6は梁4の両側側面に開口している。梁4の上面と下面に欠損部6がなく、梁4としての一体性が確保できる限り、欠損部6の位置は制約されない。欠損部6へのアクセスが容易であるため、例えば化粧版14を設置して欠損部6を建物1の内部空間から仕切り、欠損部6に配管12などを設置してもよい。この場合、配管12などのメンテナンスを容易に行うことができる。逆に、欠損部6の内部が視認できるようにすることで、デザイン上の利用も可能である。
梁4の欠損部6に配管12やダクト13を収容することで、居室の開放感の向上が可能となる。図8(a)は従来の建物(例えば集合住宅)におけるダクト13の引き回しルートの一例を示している。ダクト13は特に限定されないが、例えば換気扇に接続された排気ダクトが考えられる。ダクト13は建物内部の換気扇などに接続された端部19から、居室21の天井15下を梁4の側方に沿って延び、建物の外壁20に設けられた排気口16に接続されている。図8(b)は図8(a)のA-A線に沿った断面図である。このようなダクト13を建物内部に通す場合、美観上の理由から、ダクト13をボード等の乾式パネル17などで囲っている。このため、ダクト13の引き回しルートに沿った広い範囲が下がり天井18となる。図8(c)は本実施形態の建物1におけるダクト13などの引き回しルートの一例を示している。図8(d)は図8(c)のA-A線に沿った断面図である。ダクト13を収容する欠損部6が梁4に設けられているため、少なくともダクト13の端部19から建物1の外壁20の近傍までのエリアでは下がり天井18とする必要がなく、居室21の開放感の向上が可能となる。
以上説明した実施形態によれば、柱3や梁4を軽量化することが可能となる。柱3と梁4の重量は建物全体の6割程度を占め、本実施形態では柱3と梁4の重量は4割程度削減できる。従って、建物の重量は25%程度低減することになる。これによって、主にコンクリートの物量が低減する。コンクリートの物量が低減することはコンクリートの温度管理上も好ましく、マスコン対策が容易となる。建物の重量が軽減することで、杭などの基礎構造の簡素化も可能となる。また、建物がPCa構造の場合、現場で用いる揚重機の小型化(小容量化)が可能となる。
1 建物
2 柱と梁の架構構造
3 柱
4 梁
5 接合部
6 中空部(欠損部)
61 断面積一定部
62 断面積漸減部
12 配管
13 ダクト
G ギャップ

Claims (8)

  1. 柱と、梁と、前記柱と前記梁の接合部と、を有し、前記柱と前記梁の少なくともいずれかは、前記接合部の近傍に、前記接合部に向かって断面積の減少する欠損部を有する建物であって
    前記欠損部は少なくとも前記梁に設けられ、前記梁に設けられた前記欠損部のみが配管またはダクトを収容し、前記配管またはダクトは、前記欠損部の内部を、前記建物の外壁側の端部の近傍まで延びている、建物。
  2. 前記欠損部は前記接合部から離れている、請求項1に記載の建物。
  3. 柱と、梁と、前記柱と前記梁の接合部と、を有し、前記柱と前記梁の少なくともいずれかは、前記接合部から離れた欠損部を有する建物であって
    前記欠損部は少なくとも前記梁に設けられ、前記梁に設けられた前記欠損部のみが配管またはダクトを収容し、前記配管またはダクトは、前記欠損部の内部を、前記建物の外壁側の端部の近傍まで延びている、建物。
  4. 前記欠損部は、前記柱または前記梁に沿って延びる断面積一定部と、前記断面積一定部と前記接合部との間にあって断面積が前記接合部に向かって漸減する断面積漸減部と、を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の建物。
  5. 前記断面積漸減部は概ね四角錐形状を有し、前記四角錐形状の頂部が前記接合部に対向する、請求項4に記載の建物。
  6. 前記断面積漸減部は概ね四角錐台形状を有し、前記四角錐台形状の2つの平行な面のうち面積の小さい面が前記接合部に対向する、請求項4に記載の建物。
  7. 前記欠損部は前記柱または前記梁の内部の中空部である、請求項1から6のいずれか1項に記載の建物。
  8. 前記欠損部は前記柱または前記梁の外面に露出している、請求項1から6のいずれか1項に記載の建物。
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